説明

車両用灯具ユニット

【課題】
部品点数の削減による低コスト化を実現することが可能で、なおかつ、各レンズの位置決めを精度よく行うことが可能な車両用灯具ユニットを提供する。
【解決手段】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された複数枚のレンズを含むレンズ群と、前記複数枚のレンズを保持する鏡筒と、前記レンズ群の車両後方側に配置され、前記レンズ群を透過して前方に照射される光を放射する光源と、を備えた車両用灯具ユニットにおいて、前記複数枚のレンズのうち少なくとも一つのレンズと前記鏡筒とは、前記一つのレンズの外周部と前記鏡筒の内周面とが固定された状態で一体成形されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具ユニットに係り、特に、複数枚のレンズを含む投影レンズを備えた車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押さえリング等の固定手段を用いて投影レンズを鏡筒に固定するように構成されたプロジェクタ型の車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1においては、投影レンズは、鏡筒の先端側から鏡筒内に挿入されて位置決めされた後、押さえリング等の固定手段を用いて鏡筒に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−341696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具においては、投影レンズの色収差を補正するには、追加のレンズを何らかの固定手段を用いて鏡筒に固定しなければならないため、部品点数及び作業工数が増大し、全体的にコストが増大するという問題がある。また、投影レンズを鏡筒に固定する際の組み付け誤差、追加のレンズを鏡筒に固定する際の組み付け誤差が累積するため、各レンズを精度よく鏡筒に固定することができないという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の削減による低コスト化を実現することが可能で、なおかつ、各レンズの位置決めを精度よく行うことが可能な車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された複数枚のレンズを含むレンズ群と、前記複数枚のレンズを保持する鏡筒と、前記レンズ群の車両後方側に配置され、前記レンズ群を透過して前方に照射される光を放射する光源と、を備えた車両用灯具ユニットにおいて、前記複数枚のレンズのうち少なくとも一つのレンズと前記鏡筒とは、前記一つのレンズの外周部と前記鏡筒の内周面とが固定された状態で一体成形されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、複数枚のレンズのうち少なくとも一つのレンズと鏡筒とは一体成形され、一つの部品として構成されているため、部品点数の削減による低コスト化を実現することが可能となる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明によれば、一つのレンズと鏡筒とは一体成形され、一つの部品として構成されているため、人手で一つのレンズと鏡筒とを組み合わせる工程を省略することが可能となる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、一つのレンズと鏡筒とは一体成形されているため、他のレンズを、鏡筒(及びこれに一体成形されたレンズ)に対して高精度に位置決めすることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記投影レンズは、凹レンズ、凸レンズを含む1群二枚の構成であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、色収差が補正されるように適切に設計された凹レンズ及び凸レンズを用いることで、色収差に起因して配光パターンに色分離が生ずるのを防止することが可能な車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記投影レンズは、色収差を低減するための回折格子が設けられたレンズ面を含む回折レンズ、凸レンズを含む1群二枚の構成であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、色収差が補正されるように適切に設計された回折レンズ及び凸レンズを用いることで、色収差に起因して配光パターンに色分離が生ずるのを防止することが可能な車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、前記複数枚のレンズのうち少なくとも一つのレンズと前記鏡筒とは、それぞれ樹脂を金型に注入し、冷却、固化させることで一体成形されており、前記鏡筒の周面には漏光防止処理が施されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、樹脂からなる鏡筒から光源の光が漏れて制御できない光(漏光、迷光)となるのを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品点数の削減による低コスト化を実現することが可能で、なおかつ、各レンズの位置決めを精度よく行うことが可能な車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両用前照灯として用いられる車両用灯具ユニット10の斜視図である。
【図2】(a)車両用灯具ユニット10の正面図、(b)光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図である。
【図3】(a)車両用灯具ユニット10(変形例)の正面図、(b)光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図である。
【図4】車両用前照灯として用いられる車両用灯具ユニット20の斜視図である。
【図5】(a)は正面図、(b)光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図、(c)図5(b)中の円内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具ユニット10について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は車両用前照灯として用いられる車両用灯具ユニット10の斜視図、図2(a)は正面図、図2(b)は光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図である。
【0021】
図1に示すように、車両用灯具ユニット10は、いわゆるダイレクトプロジェクション型の灯具ユニットであり、放熱部材11、光源12、鏡筒13、第1レンズ14、第2レンズ15等を備えている。
【0022】
放熱部材11は、車両前後方向に延びる光軸AX(灯具光軸)に対して直交する車両前方側の鉛直面11a及び車両後方側の鉛直面11bを含むベース板11c、車両後方側の鉛直面11bに固定された放熱フィン11dを含んでいる。
【0023】
光源12は、放熱部材11の車両前方側の鉛直面11aに固定された基板K上に実装された複数の青色LEDチップ12a(例えば、1mm角のチップ×8)を含んでいる。各LEDチップ12aは、発光面を車両前方側に向けて、光軸AXに対して直交する水平線Hに沿って一列かつ光軸AXに対して対称に配置されている。各LEDチップ12aは黄色蛍光体(例えば、YAG蛍光体)で覆われている。各LEDチップ12aはこれに接続された制御装置(図示せず)からの制御に従い、個別に点灯制御される。光源12から発生する熱量は放熱部材11の作用により放熱される。なお、光源12は、ハロゲン電球、HID電球、LD(レーザーダイオード)等であってもよい。
【0024】
鏡筒13は、放熱部材11の車両前方側の鉛直面11aに固定された円形の基端部13a、当該基端部13aから光軸AXに沿って車両前方側に延びる円筒形状の筒体13b等を備えている。鏡筒13(基端部13a)は、その軸(中心軸)が光軸AXと一致するように放熱部材11の車両前方側の鉛直面11aに固定されている。
【0025】
本実施形態では、図2(b)に示すように、鏡筒13の内周面13cには、光源12側から鏡筒13の先端側に向かって順に(すなわち、光源12側から照射方向に向かって順に)、第1レンズ14、第2レンズ15が配置されている。第1レンズ14及び第2レンズ15の光軸と鏡筒13の軸とは略一致している。なお、第2レンズ15及び第1レンズ14は色収差が補正されるように公知の手法により適切に設計されている。また、第1レンズ14と第2レンズ15の配置順は、上記とは逆であってもよい。すなわち、第1レンズ14と第2レンズ15の配置順は問わない。
【0026】
なお、第1レンズ14と第2レンズ15とは、密着して配置されていてもよいし、ある程度の間隔をおいて配置されていてもよい。両者を密着する場合には、透明の接着層(好ましくはレンズ材料と近い屈折率の接着層)で両者間の隙間を埋めて両者を密着固定するのが好ましい。このように密着させることで、フレネルロスが低減しより効率が向上する。
【0027】
第1レンズ14は、車両前方側表面が凹面で車両後方側表面が凹面の凹レンズ(比較的パワーの小さい凹レンズ)である。なお、色収差を補正する観点からは、第1レンズ14は、低屈折高分散の材料がより好ましい。
【0028】
第1レンズ14と鏡筒13とは、金型を用いて第1レンズ14の外周面と鏡筒13の内周面とが固定された状態で高精度に一体成形され、一つの部品として構成されている(図2(b)、図3(b)参照)。
【0029】
このように第1レンズ14と鏡筒13とは金型を用いて一体成形され、一つの部品として構成されているため、人手で第1レンズ14と鏡筒13とを組み合わせる工程を省略することが可能となる。また、後述のように、第2レンズ15を、第1レンズ14に対して高精度に位置決めすることが可能となる。
【0030】
次に、第1レンズ14と鏡筒13とを一体成形する方法について説明する。
【0031】
例えば、図2(b)に示すように、同一の透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)を、金型に注入し、冷却、固化させることで第1レンズ14と鏡筒13とを一体成形することが考えられる(一般的な射出成形)。この場合、透明樹脂からなる鏡筒13から光源12の光が漏れて制御できない光(漏光、迷光)となる恐れがある。これを防止するため、鏡筒13の外周面に対して黒色等の塗装やシボ加工などの表面処理(漏光防止処理)を施すのが好ましい。
【0032】
あるいは、図3(b)に示すように、第1レンズ14を透明樹脂(例えば、アクリルやポリカーボネイト)で成形し、同一金型内で鏡筒13を不透明樹脂(例えば、黒色樹脂)で成形することで両者を一体成形することも考えられる(2色成形)。このようにすれば、第1レンズ14にはレンズに適した性質を持つ樹脂を用い、鏡筒13には当該第1レンズ14を保持する鏡筒に適した性質を持つ樹脂を用いることが可能となる。
【0033】
あるいは、金型内に挿入した非透明材料製(例えば、金属製)鏡筒13の周りに透明樹脂(例えば、アクリルやポリカーボネイト)を注入することで第1レンズ14を成形し、両者を一体成形することも考えられる(インサート成形)。
【0034】
あるいは、金型内に挿入した透明材料製(例えば、ガラス製)第1レンズ14の周りに樹脂(例えば、アクリルやポリカーボネイト又黒色樹脂)を注入することで鏡筒13を成形し、両者を一体成形することも考えられる(インサート成形)。
【0035】
図2(b)に示すように、鏡筒13の内周面13cの先端近傍には、周方向に延びるリング状の当接面13dが形成されている。
【0036】
第2レンズ15は、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面又は凸面の非球面凸レンズ(比較的パワーの大きい凸レンズ)である。なお、色収差を補正する観点からは、第2レンズ15は、低屈折高分散の材料がより好ましい。
【0037】
図2(b)に示すように、第2レンズ15は、車両後方側表面のうち外周領域(リング状の領域)がリング状の当接面13dに当接するまで、鏡筒13の先端側から鏡筒13内に挿入されている。これにより、第2レンズ15は、光軸AX方向に関し、鏡筒13(及びこれに一体成形された第1レンズ14、及び、光源12)に対して位置決めされる。
【0038】
第2レンズ15は鏡筒13に嵌合している。これにより、第2レンズ15は、その径方向に関し、鏡筒13(及びこれに一体成形された第1レンズ14、及び、光源12)に対して位置決めされる。
【0039】
上記のように第1レンズ14と鏡筒13とは金型を用いて高精度に一体成形されているため、第2レンズ15を、鏡筒13(及びこれに一体成形された第1レンズ14、及び、光源12)に対して高精度に位置決めすることが可能となる。
【0040】
当該位置決めされた第2レンズ15は、公知の固定手段(例えば、スナップフィット構造、溶着、ネジ、接着剤)を用いて鏡筒13に固定される。
【0041】
スナップフィット構造は、鏡筒13の先端に爪部(鏡筒13と同様の樹脂で一体成形された弾性のある爪部)を設け、この爪部を第2レンズ15に係合させることで第2レンズ15を固定する構造である。溶着は、樹脂で成形された第2レンズ15と鏡筒13とを固定する方法である。溶着は、例えば、樹脂で成形された第2レンズ15と鏡筒13との接合面(第2レンズ15の外周領域(リング状の領域)が当接したリング状の当接面13d)にレーザー光を照射することで行われる。なお、公知の押さえリングを用いても、上記のように位置決めされた第2レンズ15を鏡筒13に固定することが可能である。
【0042】
上記のように位置決め固定された第2レンズ15の光軸と、第1レンズ14の光軸及び鏡筒13の軸とは略一致する。また、第2レンズ15と第1レンズ14とからなるレンズ群の車両後方側焦点F(合成焦点)は光源12近傍に位置する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、第1レンズ14と鏡筒13とは金型を用いて一体成形され、一つの部品として構成されているため、部品点数の削減による低コスト化を実現することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、第1レンズ14と鏡筒13とは金型を用いて一体成形され、一つの部品として構成されているため、人手で第1レンズ14と鏡筒13とを組み合わせる工程を省略することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、第1レンズ14と鏡筒13とは金型を用いて高精度に一体成形されているため、第2レンズ15を、鏡筒13(及びこれに一体成形された第1レンズ14、及び、光源12)に対して高精度に位置決めすることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、光源12から放射される光(光源12の光源像)は、第2レンズ15と第1レンズ14とからなるレンズ群を透過し前方に照射される。第2レンズ15と第1レンズ14とからなるレンズ群の色収差が補正されているため、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前端部前方約25mに配置されている)上に、光源12の投影像の輪郭の色収差に起因する滲みがよく補正され、車両用前照灯として好ましい配光を形成することが可能となる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、色収差が補正されるように適切に設計された凹レンズである第1レンズ14及び凸レンズである第2レンズ15を用いることで、色収差に起因して配光パターンに色分離が生ずるのを防止することが可能な車両用灯具ユニット10を構成することが可能となる。
【0048】
なお、投影される光源像により形成される配光パターンはすれ違いビームでもよいし、走行ビームでもよいし、その中間的なビームパターンでもよい。
【0049】
次に、変形例について説明する。
【0050】
上記実施形態では、車両用灯具ユニット10が、いわゆるダイレクトプロジェクション型の灯具ユニットである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両用灯具ユニット10は、プロジェクタ型の灯具ユニットであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、鏡筒13はその軸に直交する断面が円形の円筒形状の筒体13bを備えており、第1レンズ14、第2レンズ15はその直径が鏡筒13の直径と略同一の、正面視で円形のレンズであるように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、鏡筒13はその軸に直交する断面が矩形の筒体を備えており、第1レンズ14、第2レンズ15は正面視で矩形のレンズであってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第1レンズ14と鏡筒13とを一体成形し、この鏡筒13の先端側から第2レンズ15を挿入して位置決め固定する構成例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2レンズ15と鏡筒13とを一体成形し、この鏡筒13の基端側から第1レンズ14を挿入して位置決め固定する構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、第1レンズ14、第2レンズ15の二枚のレンズを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1レンズ14、第2レンズ15を含む三枚以上のレンズを用いる構成であってもよい。例えば、鏡筒13の基端側から挿入して位置決め固定される第3レンズ(図示せず)をさらに用いる構成であってもよい。
【0054】
また、透過率を高めるために、各レンズ14、15のレンズ面にARコートなどを施してもよい。
【0055】
また、配光パターンをぼかすために、各レンズ14、15のレンズ面(好ましくは第2レンズ15の車両前方側表面)にシボ加工やマイクロテクスチャー(微細な凹凸)などの加工を施してもよい。
【0056】
また、配光パターンを意図的に変形させる目的で、各レンズ14、15のレンズ面の一部を自由曲面にしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態及び各変形例では、第1レンズ14が凹レンズ(屈折レンズ)である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1レンズ14は回折レンズであってもよい。
【0058】
以下、第1レンズ14として回折レンズを用いた車両用灯具ユニット20について図面を参照しながら説明する。
【0059】
図4は第1レンズ14として回折レンズを用いた車両用灯具ユニット20の斜視図、図5(a)は正面図、図5(b)は光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図、図5(c)は図5(b)中の円内の拡大図である。
【0060】
本変形例の車両用灯具ユニット20は、第1レンズ14として回折レンズを用いている点以外、上記実施形態と同様である。
【0061】
屈折レンズである第2レンズ15では短波長の光はよく曲がり、長波長の光は曲がりにくいが、回折レンズである第1レンズ14では逆に長波長の光のほうがよく曲がるという特性を持っている。本変形例ではこの特性に基づき、第1レンズ14と第2レンズ15とを組み合わせて色収差を補正する。なお、第1レンズ14に対して色収差を低減するための回折格子14aを設ける手法については、例えば、国際公開番号WO2009/028686に記載の手法と同様の手法を用いることが可能である。
【0062】
第1レンズ14は、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が凸面の回折レンズである。第1レンズ14の車両前方側表面は、第2レンズ15の車両前方側表面と比べ曲率が大きい凸レンズ面とされている。第1レンズ14は、第2レンズ15と比べて薄肉かつ略均一の肉厚とされている。回折格子14aは、第1レンズ14の車両前方側表面に設けられている。なお、第2レンズ15及び第1レンズ14は色収差が補正されるように公知の手法により適切に設計されている。なお、第1レンズ14と第2レンズ15の配置順は、上記とは逆であってもよい。すなわち、第1レンズ14と第2レンズ15の配置順は問わない。
【0063】
本変形例の車両用灯具ユニット20によっても、上記実施形態の車両用灯具ユニット10と同様の効果を奏することが可能となる。
【0064】
これに加え、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、さらに、以下の効果を奏することが可能となる。
【0065】
従来、車両用灯具の分野においては、色収差を改善する目的で一つの凸レンズの凸レンズ面に回折格子を設けることが知られている(例えば、国際公開番号WO2009/028686)。
【0066】
しかしながら、同公報に記載の凸レンズは厚肉でしかも不均一の肉厚である。
【0067】
このため、同公報に記載の凸レンズの凸レンズ面に、金型を用いて回折格子を設けるのは極めて困難であるという問題がある。また、同公報に記載の凸レンズの凸レンズ面の曲率が小さいため、当該凸レンズ面に回折格子を設けても十分な回折効率が得られないという問題もある。
【0068】
本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、厚肉でしかも不均一の肉厚の凸レンズ(第2レンズ15)の車両前方側表面(凸面)ではなく、第2レンズ15と比べて薄肉かつ略均一の肉厚の第1レンズ14の車両前方側表面(第2レンズ15の車両前方側表面と比べ曲率が大きい凸レンズ面)に回折格子14aを設ける構成であるため、金型を用いて容易に回折格子14aを設けることが可能となる。
【0069】
また、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、第2レンズ15の車両前方側表面と比べ曲率が大きい凸レンズ面に回折格子14aを設ける構成であるため、回折効率を向上させることが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、色収差が補正されるように適切に設計された回折レンズである第1レンズ14及び凸レンズである第2レンズ15を用いることで、色収差に起因して配光パターンに色分離が生ずるのを防止することが可能な車両用灯具ユニット20を構成することが可能となる。
【0071】
また、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、第1レンズ14として回折レンズを用いているため、第2レンズ15の屈折パワーが抑えられ、全体としてより短焦点化(高NA化)かつ車両用灯具ユニット20の光軸方向寸法の小型化が可能となる。
【0072】
ここで、上記実施形態の車両用灯具ユニット10の光軸方向寸法について検討する。
【0073】
上記実施形態の車両用灯具ユニット10においては、負のパワーを持つ第1レンズ14(凹レンズ)及び正のパワーを持つ第2レンズ15(凸レンズ)を用いて集光させる構成であるため、焦点距離が長くなり、結果として車両用灯具ユニット10の光軸方向寸法が長くなる。
【0074】
これに対して、本変形例の車両用灯具ユニット20においては、正のパワーを持つ凸レンズと同様に機能する第1レンズ14(回折レンズ)及び正のパワーを持つ第2レンズ15(凸レンズ)を用いて集光させる構成であるため、上記実施形態の車両用灯具ユニット10と比べ、焦点距離が短くなり、結果として車両用灯具ユニット20の光軸方向寸法が短くなる。
【0075】
以上のように、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、第1実施形態と比べ、光軸方向寸法の短い車両用灯具ユニット20を構成することが可能となる。
【0076】
また、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、第1レンズ14として回折レンズを用いているため、第2レンズ15等のレンズ肉厚を薄くすることが可能となる。
【0077】
さらに、本変形例の車両用灯具ユニット20によれば、第1レンズ14として回折レンズを用いており、回折面(車両前方側表面)の曲率を大きくすることができるため、特にレンズ周辺部における回折効率を向上させることが可能となる。
【0078】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…灯具ユニット、11…放熱部材、12…光源、12a…チップ、13…鏡筒、13a…基端部、13b…筒体、13c…内周面、13d…当接面、14…第1レンズ、15…第2レンズ、20…灯具ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された複数枚のレンズを含むレンズ群と、
前記複数枚のレンズを保持する鏡筒と、
前記レンズ群の車両後方側に配置され、前記レンズ群を透過して前方に照射される光を放射する光源と、
を備えた車両用灯具ユニットにおいて、
前記複数枚のレンズのうち少なくとも一つのレンズと前記鏡筒とは、前記一つのレンズの外周部と前記鏡筒の内周面とが固定された状態で一体成形されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
【請求項2】
前記レンズ群は、凹レンズ、凸レンズを含む1群二枚の構成であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具ユニット。
【請求項3】
前記レンズ群は、色収差を低減するための回折格子が設けられたレンズ面を含む回折レンズ、凸レンズを含む1群二枚の構成であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具ユニット。
【請求項4】
前記複数枚のレンズのうち少なくとも一つのレンズと前記鏡筒とは、それぞれ樹脂を金型に注入し、冷却、固化させることで一体成形されており、
前記鏡筒の周面には漏光防止処理が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−252838(P2012−252838A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123629(P2011−123629)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】