説明

車両用灯具ユニット

【課題】機能の異なる複数のランプ(例えば、ロービーム用ヘッドランプとデイタイムランニングランプ)の両立が可能な車両用灯具ユニットを提供する。
【解決手段】車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズであって、上下に分割されたレンズ部と組み合わされて第1ランプを構成する第1ランプ構成要素と、前記投影レンズのうち凹部に対応する部分と組み合わされて第2ランプを構成する第2ランプ構成要素と、を備えており、前記投影レンズと第1半導体発光素子との間に配置された第1シェードと、前記上下に分割されたレンズ部を透過する光を遮らないように配置された第2シェード及び第2半導体発光素子と、を備えており、前記第2半導体発光素子は、その発光面を前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分に向けた状態で、当該凹部に対応する部分と前記第2シェードとの間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具ユニットに係り、特に、機能の異なる複数のランプ(例えば、ロービーム用ヘッドランプとデイタイムランニングランプ)の両立が可能な車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の分野においては、図9に示すように、ロービーム用ヘッドランプAや昼間前方へ車両の存在を示すために用いられるデイタイムランニングランプT等の各種ランプを配置した車両用灯具200が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bosch Automotive Handbook(7th edition) P968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1においては、機能の異なるランプ(例えば、ロービーム用ヘッドランプA、デイタイムランニングランプT)を別個のランプとして構成して車両前部の異なる箇所に配置する構成であるため(図9参照)、その構成上、限られたスペースに機能の異なる複数のランプ(例えば、ロービーム用ヘッドランプA、デイタイムランニングランプT)を配置することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、機能の異なる複数のランプ(例えば、ロービーム用ヘッドランプとデイタイムランニングランプ)の両立が可能な車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズであって、車両前方からの見かけ上、上下に分割されたレンズ部として視認されるように、車両前方側表面のうち前記光軸近傍に、略水平方向に延びる凹部が形成された投影レンズと、前記上下に分割されたレンズ部と組み合わされて第1ランプを構成する第1ランプ構成要素と、前記投影レンズのうち前記凹部に対応する部分と組み合わされて第2ランプを構成する第2ランプ構成要素と、を備えており、前記第1ランプ構成要素は、前記投影レンズの車両後方側焦点より後方側かつ前記光軸近傍に、略上向きに光を放射するように配置された第1半導体発光素子と、第1焦点が前記第1半導体発光素子近傍に設定され、第2焦点が前記投影レンズの車両後方側焦点近傍に設定された回転楕円系の反射面であって、前記第1半導体発光素子からの光が入射するように、前記第1半導体発光素子の上方に配置された反射面と、前記第1半導体発光素子からの光の一部を遮光するように、前記投影レンズと前記第1半導体発光素子との間に配置された第1シェードと、を備えており、前記第2ランプ構成要素は、前記第1半導体発光素子からの光のうち前記上側のレンズ部を透過する光の光路と前記第1半導体発光素子からの光のうち前記下側のレンズ部を透過する光の光路との間のスペースに、前記上下に分割されたレンズ部を透過する光を遮らないように配置された第2シェード及び第2半導体発光素子と、を備えており、前記第2シェードは、前記第1半導体発光素子からの光が前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分に入射しないように、前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分を覆っており、前記第2半導体発光素子は、その発光面を前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分に向けた状態で、当該凹部に対応する部分と前記第2シェードとの間に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、上側のレンズ部と下側のレンズ部との間に凹部が配置されているため、第1半導体発光素子からの光のうち上側のレンズ部を透過する光の光路と第1半導体発光素子からの光のうち下側のレンズ部を透過する光の光路との間には、上下のレンズ部を透過する光が通過しないスペースが形成され、このスペースに、他のランプ機能を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子、第2シェード)を配置することが可能となる。なお、従来のプロジェクタ型の車両用灯具ユニット(例えば、特開2006−269271号公報参照)においては、投影レンズに凹部が形成されておらず、上記デッドスペース(上側のレンズ部を透過する光の光路と下側のレンズ部を透過する光の光路との間のスペース)が形成されないため、他のランプ機能を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子、第2シェード)を配置することができない。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、プロジェクタ型の車両用灯具ユニットのデッドスペース(上側のレンズ部を透過する光の光路と下側のレンズ部を透過する光の光路との間のスペース)に、他のランプ機能を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子、第2シェード)を配置することが可能となるため、サイズを拡大することなく(又は、ほとんど拡大することなく)、一つのプロジェクタ型の車両用灯具ユニットで、機能の異なる複数のランプを両立させることが可能となる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明によれば、投影レンズに形成された凹部(及び、第2シェード)の作用により、車両前方からの見かけ上、投影レンズが上下のレンズ部に分割された多眼の車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記投影レンズの前記凹部の鉛直方向寸法が15mm以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記投影レンズの前記凹部の鉛直方向寸法を15mm以下とすることで、上側のレンズ部と下側のレンズ部とを一つの発光領域として視認させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機能の異なる複数のランプ(例えば、ロービーム用ヘッドランプとデイタイムランニングランプ)の両立が可能な車両用灯具ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の車両用灯具ユニット10をその光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【図2】(a)車両用灯具ユニット10の正面図、(b)車両用灯具ユニット10(変形例)の正面図、(c)車両用灯具ユニット10(変形例)の正面図である。
【図3】(a)第1半導体発光素子12の斜視図、(b)第2半導体発光素子15の斜視図である。
【図4】第1半導体発光素子12の指向特性の例である。
【図5】ロービーム用配光パターンP1の例である。
【図6】DRL用配光パターンP2の例である。
【図7】各レンズ部11A、11Bに対する明るさ感が一致(又は略一致)することを説明するための図である。
【図8】本実施形態の車両用灯具ユニット10(変形例)をその光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。
【図9】従来の車両用灯具200の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具ユニットについて図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態の車両用灯具ユニット10は、DRL(デイタイムランニングランプ)又は車両用前照灯(兼ポジションランプ)として機能するコンビネーション型の車両用灯具ユニットであり、自動車等の車両の前面の左右両側にそれぞれ少なくとも1つ配置されている。車両用灯具ユニット10には、その光軸調整が可能なように公知のエイミング機構(図示せず)が連結されている。
【0016】
図1は、車両用灯具ユニット10をその光軸AXを含む鉛直面で切断した縦断面図である。図2(a)は車両用灯具ユニット10の正面図、図2(b)は車両用灯具ユニット10(変形例)の正面図、図2(c)は車両用灯具ユニット10(変形例)の正面図である。
【0017】
図1に示すように、車両用灯具ユニット10は、車両前後方向に延びる光軸AX上に配置されたレンズ11、レンズ11の車両後方側焦点F11より後方側かつ光軸AX近傍に配置された第1半導体発光素子12、第1半導体発光素子12の上方に配置された反射面13、反射面13で反射された第1半導体発光素子12からの光の一部を遮光するように、レンズ11と第1半導体発光素子12との間に配置された第1シェード14、光軸AX上に配置された第2半導体発光素子15、第1半導体発光素子12からの光がレンズ11の車両後方側表面のうち凹部11aに対応する部分に入射しないように、レンズ11の車両後方側表面のうち凹部11aに対応する部分を覆う第2シェード16、ヒートシンク17、レンズホルダー18、装飾部材としてのエクステンション19等を備えている。
【0018】
図1に示すように、レンズ11は、ヒートシンク17等に固定されたレンズホルダー18に保持されて車両前後方向に延びる光軸AX上に配置されている。
【0019】
レンズ11は、例えば、車両前方側表面が凸面で車両後方側表面が平面の平凸非球面の投影レンズである。レンズ11は、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)を、金型に注入し、冷却、固化させることで成形された透明樹脂製レンズであってもよいし、ガラス製レンズであってもよい。レンズ11は、正面視で円形、楕円形であってもよいし、正面視でn角形(nは3以上の整数)の形状となるようにその外周がカットされた形状又はその他形状であってもよい。
【0020】
レンズ11の車両前方側表面のうち光軸AX近傍には、車両前方側表面から車両後方側表面に向かって延び、かつ、水平方向(図1中紙面に直交する方向)に延びる凹部11aが形成されている。凹部11aの内壁11bとレンズ11の車両前方側表面とがなす角は面取りされている。
【0021】
凹部11aは、上下に分割されたレンズ部11A、11Bを透過してロービーム用配光パターンを形成する第1半導体発光素子12からの光を遮らない高さ寸法h(例えば、15[mm]以下)とされている。なお、凹部11aの光軸AX方向寸法d(深さ)は特に限定されない。
【0022】
この凹部11aにより、車両前方からの見かけ上、レンズ11を、一つのレンズとしてではなく凹部11aを境界として上下に分割されたレンズ部11A、11Bとして視認させることが可能となる(図2(a)参照)。
【0023】
凹部11aは、レンズ11の車両前方側表面のうち光軸AX近傍に配置されていてもよいし(図2(a)参照)、あるいは、レンズ11の車両前方側表面のうち光軸AX近傍から上又は下に若干シフトした位置に配置されていてもよい(図2(b)参照)。前者の場合、車両前方からの見かけ上、レンズ11が同一形状・同一サイズのレンズ部11A、11Bに分割されているように視認させることが可能となる。後者の場合、車両前方からの見かけ上、レンズ11が異なる形状・異なるサイズのレンズ部11A、11Bに分割されているように視認させることが可能となる。なお、凹部11aは、水平方向に対して若干傾いた方向に延びていてもよい(図2(c)参照)。
【0024】
まず、上下に分割されたレンズ部11A、11Bと組み合わされてロービーム用配光パターンを形成する第1ランプ(本実施形態では、プロジェクタ型の車両用灯具ユニットであるヘッドランプ)を構成する第1ランプ構成要素について説明する。
【0025】
第1ランプ構成要素は、第1半導体発光素子12、反射面13、第1シェード14等からなる。
【0026】
図3(a)は、第1半導体発光素子12の斜視図である。
【0027】
第1半導体発光素子12は、例えば、複数のLEDチップ12a(例えば、1mm角の青色LEDチップ×4)である。各LEDチップ12aは蛍光体(例えば、黄色蛍光体であるYAG蛍光体)で覆われている。LEDチップ12aは4つに限られず、1〜3又は5つ以上であってもよい。各LEDチップ12aは、DRL用配光パターンより明るさが求められるロービーム用配光パターンを形成するために、第2半導体発光素子15の各LEDチップ15aより高輝度のものが用いられる。
【0028】
各LEDチップ12aは、略上向き(図1中、斜め後方上向きを例示)に光を放射するようにヒートシンク17の上面17aに固定された第1基板KA上に実装されて、レンズ11の車両後方側焦点F11より後方側かつ光軸AX近傍に配置されている。各LEDチップ12aは、その一辺を光軸AXに直交する水平線に沿わせて所定間隔で一列(図1中紙面に直交する方向)にかつ光軸AXに対して対称となるように配置されている(図3(a)参照)。
【0029】
第1基板KAは、車両前端側KAaが車両後端側KAbより上方に位置するように水平面に対して傾斜して配置されている(図1参照)。これにより、各LEDチップ12aの軸AX12aが斜め後方上向きとなっている。なお、第1基板KAは、車両前端側KAaと車両後端側KAbとが同一水平面上に位置するように水平姿勢で配置されていてもよい。
【0030】
第1半導体発光素子12には、電源ケーブルCを介して点灯回路(図示せず)が電気的に接続されている。第1半導体発光素子12は、点灯回路から定電流が供給されることで点消灯制御される。第1半導体発光素子12から発生する熱量はヒートシンク17の作用により放熱される。
【0031】
図4は、第1半導体発光素子12(LEDチップ12a)の指向特性の例である。第2半導体発光素子15(LEDチップ15a)の指向特性も同様である。
【0032】
指向特性とは、第1半導体発光素子12(LEDチップ12a)上の軸AX12a上光度を100%とした場合の、第1半導体発光素子12(LEDチップ12a)に対して所定角度傾いた方向の光度の割合のことであり、第1半導体発光素子12(LEDチップ12a)が放射する光の広がりを表している。光度の割合が50%となる角度が半値角である。図4では、±60度が半値角である。
【0033】
なお、第1半導体発光素子12は、略点状に面発光する発光チップを有する素子状の光源であればよく、LEDチップ12aに限定されない。例えば、第1半導体発光素子12は、LEDチップ以外の発光ダイオードやレーザダイオードであってもよい。
【0034】
図1に示すように、反射面13は、第1焦点F113が第1半導体発光素子12近傍に設定され、第2焦点F213がレンズ11の車両後方側焦点F11近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)である。
【0035】
反射面13は、第1半導体発光素子12から略上向きに放射される光のうち第1半導体発光素子12の軸AX12aに対して狭角方向に放射される相対的に高い光度の光(例えば、半値角付近から内の光。図4では±60度内の光)が入射するように、第1半導体発光素子12の側方(図1中、車両後方側の側方)からレンズ11に向かって延びて、第1半導体発光素子12の上方を覆っている。第1半導体発光素子12から放射されて反射面13に入射する光は、当該反射面13で反射されてレンズ11の車両後方側焦点F11近傍で集光した後、レンズ11(下側のレンズ部11B)を透過して前方に照射される。
【0036】
第1シェード14は、レンズ11の車両後方側焦点F11から第1半導体発光素子12側に延びるミラー面14aを含んでいる。第1シェード14の前端縁は、レンズ11の車両後方側の焦点面に沿って凹に湾曲している。ミラー面14aに入射し上向きに反射される光はレンズ11(上側のレンズ部11A)で屈折して路面方向に向かう。すなわち、ミラー面14aに入射した光がカットオフラインを境に折り返されてカットオフライン以下の配光パターンに重畳される形となる。
【0037】
上側のレンズ部11Aと下側のレンズ部11Bとの間に凹部11aが配置されているため、第1半導体発光素子12からの光のうち上側のレンズ部11Aを透過する光の光路と第1半導体発光素子12からの光のうち下側のレンズ部11Bを透過する光の光路との間には、上下のレンズ部11A、11Bを透過する光が通過しないスペースSが形成され(図1参照)、このスペースSに、他のランプ機能(本実施形態では、デイタイムランニングランプ又はポジションランプ)を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子15、第2シェード16)を配置することが可能となる。
【0038】
なお、従来のプロジェクタ型の車両用灯具ユニット(例えば、特開2006−269271号公報参照)においては、投影レンズに凹部が形成されておらず、上記デッドスペース(上側のレンズ部を透過する光の光路と下側のレンズ部を透過する光の光路との間のスペースS)が形成されないため、他のランプ機能を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子15、第2シェード16)を配置することができない。
【0039】
次に、レンズ11のうち凹部11aに対応する部分と組み合わされてDRL用配光パターン又はポジションランプ用配光パターンを形成する第2ランプ(本実施形態では、デイタイムランニングランプ兼ポジションランプ)を構成する第2ランプ構成要素について説明する。
【0040】
第2ランプ構成要素は、第2半導体発光素子15、第2シェード16等からなる。第2半導体発光素子15、第2シェード16は、スペースSに、上下に分割されたレンズ部11A、11Bを透過する光を遮らないように配置されている。
【0041】
図3(b)は、第2半導体発光素子15の斜視図である。
【0042】
第2半導体発光素子15は、例えば、複数のLEDチップ15a(例えば、1mm角の青色LEDチップ×4)である。各LEDチップ15aは蛍光体(例えば、黄色蛍光体であるYAG蛍光体)で覆われている。LEDチップ15aは4つに限られず、1〜3又は5つ以上であってもよい。
【0043】
各LEDチップ15aは、その軸AX15aに対して狭角方向に放射される相対的に高い光度の光がレンズ11のうち凹部11aに対応する部分(レンズ11の中央部)を透過して前方に照射されるように、その発光面をレンズ11の車両後方側表面のうち凹部11aに対応する部分に向けた状態で、第2シェード16に固定された第2基板KB上に実装されて、当該凹部11aに対応する部分と第2シェード16との間に配置されている。各LEDチップ15aの軸AX15aは光軸AXと略同一の方向に延びている。各LEDチップ15aは、その一辺を光軸AXに直交する水平線に沿わせて所定間隔で一列(図1中紙面に直交する方向)にかつ光軸AXに対して対称となるように配置されている(図3(b)参照)。
【0044】
レンズ11のうち、第2半導体発光素子15から放射された光が透過するレンズ部分(主に、中央部、例えば、凹部11aの底面の形状)は、これを透過する光が上下左右方向に拡散されて、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの上下左右幅がDRL用配光パターンに適した上下左右幅となるように設計された形状(例えば、凸レンズ面又は凹レンズ面)とされている。なお、レンズ11のうち、第2半導体発光素子15から放射された光が透過するレンズ部分(主に、中央部)の車両後方側の焦点は、例えば、第2半導体発光素子15近傍に設定されている。
【0045】
第2半導体発光素子15には、電源ケーブルを介して点灯回路(図示せず)が電気的に接続されている。第2半導体発光素子15は、点灯回路から定電流が供給されることで点消灯制御される。
【0046】
第2半導体発光素子15から放射される光のうち第2半導体発光素子15の軸AX15aに対して狭角方向に放射される相対的に高い光度の光(例えば、図4では±25度内の光)は、主にレンズ11のうち凹部11aに対応する部分(レンズ11の中央部)を透過して、前方に照射される。
【0047】
第2シェード16は、第1半導体発光素子12からの光がレンズ11の車両後方側表面のうち凹部11aに対応する部分に入射しないように、レンズ11の車両後方側表面のうち凹部11aに対応する部分を覆っている(図1参照)。第2シェード16は、例えば、樹脂を、金型に注入し、冷却、固定させることで、一体成形されている。
【0048】
第2シェード16は、高さ寸法が凹部11aの高さ寸法hと略同一で、幅寸法が凹部11aの幅寸法wと略同一の水平方向に延びるプレート状の遮光部材16a(図2(a)参照)、遮光部材16aの上端縁から前方斜め上方に延びる上遮光部材16b(図1参照)、遮光部材16aの下端縁から前方斜め下方に延びる下遮光部材16c(図1参照)を含んでおり、これら各遮光部材16a〜16cがレンズ11の車両後方側表面のうち凹部11aに対応する部分を覆っている。上遮光部材16b及び下遮光部材16aが斜め上方及び斜め下方に延びている理由(すなわち、上遮光部材16b及び下遮光部材16aが水平面に対して傾斜して配置されている理由)は、上下のレンズ部11A、11Bを透過する光を遮らないようにするためである。シェード16は、レンズ11の凹部11aを通して車両前方から視認される(図2(a)参照)。
【0049】
本実施形態では、レンズ11に凹部11aが形成されていることに加え、当該凹部11aを通して第2シェード16が視認される構成であるため、車両前方からの見かけ上、レンズ11を、一つのレンズとしてではなく第2シェード16を境界として上下に分割されたレンズ部11A、11Bとして視認させることが可能となる(図2(a)参照)。なお、第2シェード16の表面にアルミ蒸着等の鏡面処理を施すことで、この効果をさらに高めることが可能となる。
【0050】
次に、上記構成の車両用灯具ユニット10の動作例について説明する。
【0051】
点灯回路(図示せず)に接続されたスイッチ(図示せず)によりロービームが選択された場合、点灯回路(図示せず)は、第2半導体発光素子15に定電流I1(ロービーム時の定電流I1<DRL時の定電流I2)を供給し、第1半導体発光素子12に定電流I3を供給する。これにより、第1半導体発光素子12及び第2半導体発光素子15が点灯する(第2半導体発光素子15はDRLが選択された場合より減光された状態で点灯する)。
【0052】
この場合、第2半導体発光素子15からの光は、後述のDRL選択時と同様の光路を辿る。これにより、仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、水平線H−Hより上及び下で水平方向に拡がるポジションランプ用配光パターンに適した配光パターンが形成される。
【0053】
一方、第1半導体発光素子12からの光は、次の光路を辿る。
【0054】
すなわち、第1半導体発光素子12から放射されて反射面13に入射する光は、当該反射面13で反射されてレンズ11の車両後方側焦点F11近傍で集光した後、レンズ11(下側のレンズ部11B)を透過して前方に照射される。また、反射面13で反射されてミラー面14aに入射し上向きに反射される光はレンズ11(上側のレンズ部11A)で屈折して路面方向に向かう。すなわち、ミラー面14aに入射した光がカットオフラインを境に折り返されてカットオフライン以下の配光パターンに重畳される形となる。
【0055】
以上により、図5に示すように、仮想鉛直スクリーン(例えば、車両前面から約25m前方に配置されている)上に、第1シェード14によって規定されるカットオフラインCLを上端縁に含むロービーム用配光パターンに適した配光パターンP1が形成される。
【0056】
次に、点灯回路(図示せず)に接続されたスイッチ(図示せず)によりDRLが選択された場合、点灯回路は、第2半導体発光素子15に定電流I2(ロービーム時の定電流I1<DRL時の定電流I2)を供給する。これにより、第2半導体発光素子15が点灯する(第1半導体発光素子12は点灯しない)。
【0057】
この場合、第2半導体発光素子15からの光は、次の光路を辿る。
【0058】
すなわち、第2半導体発光素子15から放射される光のうち第2半導体発光素子15の軸AX15aに対して狭角方向に放射される相対的に高い光度の光(例えば、図4では±25度内の光)は、レンズ11のうち凹部11aに対応する部分(レンズ11の中央部)を透過して、前方に照射される。レンズ11のうち凹部11aに対応する部分(レンズ11の中央部)を透過する第2半導体発光素子15からの光は、当該凹部11aに対応する部分(レンズ11の中央部)の作用によって、上下左右幅がDRL用配光パターンに適した上下左右幅となるように拡散される。
【0059】
これにより、図6に示すように、仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、水平線H−Hより上及び下(例えば、水平線H−Hより上10度から下10度にかけての範囲)で水平方向に拡がるDRL用配光パターンに適した第2配光パターンP2が形成される。
【0060】
なお、レンズ11のうち、第2半導体発光素子15から放射された光が透過するレンズ部分(主に、中央部、例えば、凹部11aの底面の形状)を適切に設計することで、欧州で求められる水平線H−Hより上10度から下5度にかけての範囲に拡散するDRL用配光パターン、北米で求められる水平線H−Hより上5度から下5度にかけての範囲に拡散するDRL用配光パターンを形成することが可能となる。
【0061】
なお、車両用灯具ユニット10は、各配光パターンP1、P2が仮想鉛直スクリーン上の適正範囲を照射するように公知のエイミング機構(図示せず)により光軸調整されている。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、上側のレンズ部11Aと下側のレンズ部11Bとの間に凹部11aが配置されているため、第1半導体発光素子12からの光のうち上側のレンズ部11Aを透過する光の光路と第1半導体発光素子12からの光のうち下側のレンズ部11Bを透過する光の光路との間には、上下のレンズ部11A、11Bを透過する光が通過しないスペースSが形成され(図1参照)、このスペースSに、他のランプ機能を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子15、第2シェード16)を配置することが可能となる。
【0063】
すなわち、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、プロジェクタ型の車両用灯具ユニットのデッドスペース(上側のレンズ部11Aを透過する光の光路と下側のレンズ部11Bを透過する光の光路との間のスペースS)に、他のランプ機能を実現するための第2ランプ構成要素(例えば、第2半導体発光素子15、第2シェード16)を配置することが可能となるため、サイズを拡大することなく(又は、ほとんど拡大することなく)、一つのプロジェクタ型の車両用灯具ユニットで、機能の異なる複数のランプ(本実施形態では、ヘッドランプ、デイタイムランニングランプ、ポジションランプ)を両立させることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、レンズ11に形成された凹部11a(及び、第2シェード16)の作用により、車両前方からの見かけ上、レンズ11が上下のレンズ部11A、11Bに分割された多眼の車両用灯具ユニットを構成することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態の車両用灯具ユニット10によれば、第1半導体発光素子12から放射されて反射面13に入射する光が、当該反射面13で反射されてレンズ11の車両後方側焦点F11近傍で集光する構成であるため、レンズ11(上下のレンズ部11A、11B)全体が光っているように視認させることが可能となる。これにより、図7に示すように、車両前方のある視点E(水平線H−Hより上のある視点)から見た上側のレンズ部11A及び下側のレンズ部11Bに対する明るさ感を一致(又は略一致)させることが可能となる。
【0066】
次に、変形例について説明する。
【0067】
上記実施形態では、ロービームが選択された場合、第1半導体発光素子12及び第2半導体発光素子15が点灯する(第2半導体発光素子15はDRLが選択された場合より減光された状態で点灯する)ように説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、ロービームが選択された場合、第1半導体発光素子12のみを点灯し、第2半導体発光素子15を点灯しないようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、レンズ11のうち、第2半導体発光素子15から放射された光が透過するレンズ部分(主に、中央部、例えば、凹部11aの底面の形状)は、これを透過する光が上下左右方向に拡散されて、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの上下左右幅がDRL用配光パターンに適した上下左右幅となるように設計された形状(例えば、凸レンズ面又は凹レンズ面)とされているように説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、図8に示すように、レンズ11のうち、第2半導体発光素子15から放射された光が透過するレンズ部分の前方(すなわち、凹部11a内)に、当該レンズ部分を透過する光が上下左右方向に拡散されて、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの上下左右幅がDRL用配光パターンに適した上下左右幅となるように設計されたレンズ部20を配置してもよい。以上のように、第2半導体発光素子15から放射された光を上下左右方向に拡散する部分は、レンズ11と一体であってもよいし、レンズ11と別部品であってもよい。
【0069】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…車両用灯具ユニット、11…レンズ、11A、11B…レンズ部、11a…凹部、11b…内壁、12…第1半導体発光素子、12a…LEDチップ、13…反射面、14…第1シェード、14a…ミラー面、15…第2半導体発光素子、15a…LEDチップ、16…第2シェード、16a…遮光部材、16b…上遮光部材、16c…下遮光部材、17…ヒートシンク、17a…上面、18…レンズホルダー、19…エクステンション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズであって、車両前方からの見かけ上、上下に分割されたレンズ部として視認されるように、車両前方側表面のうち前記光軸近傍に、略水平方向に延びる凹部が形成された投影レンズと、
前記上下に分割されたレンズ部と組み合わされて第1ランプを構成する第1ランプ構成要素と、
前記投影レンズのうち前記凹部に対応する部分と組み合わされて第2ランプを構成する第2ランプ構成要素と、
を備えており、
前記第1ランプ構成要素は、
前記投影レンズの車両後方側焦点より後方側かつ前記光軸近傍に、略上向きに光を放射するように配置された第1半導体発光素子と、
第1焦点が前記第1半導体発光素子近傍に設定され、第2焦点が前記投影レンズの車両後方側焦点近傍に設定された回転楕円系の反射面であって、前記第1半導体発光素子からの光が入射するように、前記第1半導体発光素子の上方に配置された反射面と、
前記第1半導体発光素子からの光の一部を遮光するように、前記投影レンズと前記第1半導体発光素子との間に配置された第1シェードと、
を備えており、
前記第2ランプ構成要素は、
前記第1半導体発光素子からの光のうち前記上側のレンズ部を透過する光の光路と前記第1半導体発光素子からの光のうち前記下側のレンズ部を透過する光の光路との間のスペースに、前記上下に分割されたレンズ部を透過する光を遮らないように配置された第2シェード及び第2半導体発光素子と、を備えており、
前記第2シェードは、前記第1半導体発光素子からの光が前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分に入射しないように、前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分を覆っており、
前記第2半導体発光素子は、その発光面を前記投影レンズの車両後方側表面のうち前記凹部に対応する部分に向けた状態で、当該凹部に対応する部分と前記第2シェードとの間に配置されていることを特徴とする車両用灯具ユニット。
【請求項2】
前記投影レンズの前記凹部の鉛直方向寸法が15mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51178(P2013−51178A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189610(P2011−189610)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】