説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では配光制御手段を駆動手段に対して確実に水平に維持することが難しい点にある。
【解決手段】光照射装置17のロアーシャフト21にロアーベアリング23を設け、支持部材2にロアーベアリングホルダ13を設け、ロアーベアリングホルダ13と支持部材2との間に、ロアーベアリングホルダ13を支持部材2に水平に維持する水平維持部を、設ける。この結果、光照射装置17を支持部材2に対して確実に水平に維持することができ、光照射装置17からの光の照射方向を正確にかつ確実に可変制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ヘッドランプ、フォグランプ、コーナリングランプ、カーブランプ、ベンディングランプ、スイブルランプなどの車両用灯具であって、車両の走行状況に応じて光の照射方向を追従変化させる、たとえば、適応型照明システムAFS(Adaptive Front−lighting System)を備える車両用灯具に関するものである。なお、この明細書、特許請求の範囲において、「路面など」とは、路面およびその路面上の人(歩行者など)や物(先行車や対向車や道路標識や建物など)などを言う。また、この明細書、特許請求の範囲において、「水平」とは、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際に、垂直軸に対して直角である水平のことを言う。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、この車両用灯具について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1にそれぞれ対応する。この車輌用灯具(1)は、光源バルブ(8)からの光を制御して所望の配光を得る配光制御手段(5)と、前記配光制御手段(5)を回動させて照射方向を変化させる駆動手段(6)とを有し、前記駆動手段(6)に設けられた出力軸(18)と前記配光制御手段(5)に設けられた回転軸(11)とが嵌合により連結されているものである。そして、この車輌用灯具(1)は、駆動手段(6)を駆動させることにより、出力軸(18)および回転軸(11)を介して配光制御手段(5)が左右方向に回動して照射方向が左右に変化するものである。
【0003】
この車輌用灯具(1)は、出力軸(18)と回転軸(11)とを嵌合連結したものであるから、リンク連結と比較して、遊びやガタが小さいので、配光制御手段(5)を精確に左右に回動させて照射方向を正確に制御させることができる。ところが、この車輌用灯具(1)は、出力軸(18)と回転軸(11)とを嵌合連結したものであるから、配光制御手段(5)を駆動手段(6)に対して確実に水平(回転軸(11)に対して直角)に維持する点において課題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−152671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では配光制御手段を駆動手段に対して確実に水平に維持することが難しい点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、光照射装置の回転軸にベアリングを設け、一方、支持部材にベアリングホルダを設け、このベアリングホルダと支持部材との間に、ベアリングホルダを支持部材に水平に維持する水平維持部を、設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用灯具は、ベアリングホルダにより、ベアリングを介して回転軸を支持部材に回転可能に支持し、また、水平維持部により、ベアリングホルダを支持部材に水平に維持することができる。この結果、この発明の車両用灯具は、光照射装置を支持部材に対して確実に水平(回転軸に対して直角)に維持することができる。これにより、この発明の車両用灯具は、光照射装置からの光の照射方向を正確にかつ確実に可変制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例中の「上、下、前、後、左、右」は、ドライバーが車両の前進方向を見た際の「上、下、前、後、左、右」である。
【実施例】
【0009】
以下、この実施例における車両用灯具の構成について説明する。この実施例における車両用灯具1は、支持部材(ブラケット)2を備える。前記支持部材2は、図1および図3に示すように、垂直部3と、前記垂直部3の下縁に一体に設けられている水平部4とから構成されている。前記垂直部3には、円形の開口部5が設けられている。また、前記垂直部3の前記開口部5の上縁には、ほぼ半円形形状の凹部の取付部6が設けられている。
【0010】
前記支持部材2の水平部4の上面および下面は、図10に示すように、水平線(もしくは水平面であって、図10および図12中の一点鎖線にて示す)H−Hに対して傾斜する抜き度面となっている。前記水平部4には、円形の透孔7が設けられているとともに、長溝8が前記透孔7の直径方向(前後方向)に設けられている。前記水平部4の前記透孔7および前記長溝8の縁部が中板部9を構成する。
【0011】
前記水平部4の下面(前記垂直部3と反対側の面)には、複数本、この例では、3本の取付ボス部10が一体に突設されている。前記3本の取付ボス部10の端面(下端面)は、取付面(図示せず)と同一の平面をなす。すなわち、前記3本の取付ボス部10の端面(下端面)は、同一の平面の取付面上にそれぞれ載置する。
【0012】
前記中板部9の下面(前記水平部4の下面)には、180°に位置する2個のストッパ11と、第2水平維持部の凸部12とがそれぞれ一体に設けられている。また、前記中板部9の下面には、ロアーベアリングホルダ13を前記透孔7および前記長溝8中に挿入する位置を示す三角形の第1マーク14と、前記ロアーベアリングホルダ13を回転させる方向を示す矢印の第2マーク15と、前記ロアーベアリングホルダ13が前記支持部材2に取り付けられる位置を示す四角形の第3マーク16とがそれぞれ刻印されている。
【0013】
また、この実施例における車両用灯具1は、光を路面などに照射する光照射装置17を備える。前記光照射装置17は、図1および図2に示すように、プロジェクタタイプのランプユニットである。前記光照射装置17は、光源(図示せず)と、前期光源からの光を反射させるリフレクタ18と、前記リフレクタ18からの光を外部に照射する投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)19とを備えるものである。なお、前記光照射装置17においては、すれ違い用の配光パターンやモータウエイ用の配光パターンなどのように、カットオフラインを有する配光パターンを照射する場合には、前記リフレクタ18からの反射光の一部をカットオフするシェードを備える場合がある。
【0014】
前記光照射装置17には、回転軸としてのアッパーシャフト20とロアーシャフト21とが上下に一直線上に設けられている。前記回転軸のアッパーシャフト20、ロアーシャフト21には、アッパーベアリング22、ロアーベアリング23が設けられている。一方、前記支持部材2には、アッパーベアリングホルダ24と前記ロアーベアリングホルダ13とがそれぞれ設けられている。前記アッパーベアリングホルダ24は、前記支持部材2の取付部6に2本のスクリュー25により取り付けられている。一方、前記ロアーベアリングホルダ13は、前記支持部材2の中板部9に取り付けられている。前記アッパーシャフト20、前記ロアーシャフト21は、前記アッパーベアリングホルダ24、前記ロアーベアリングホルダ13により、前記アッパーベアリング22、前記ロアーベアリング23を介して前記支持部材2に回転可能に支持されている。この結果、前記光照射装置17は、前記開口部5中に位置していて前記支持部材2に回転可能に支持されることとなる。
【0015】
さらに、この実施例における車両用灯具1は、駆動装置(ギアードモータ)26を備える。前記駆動装置26は、図1に示すように、ケーシング27と、前記ケーシング27中に収納されているモータ(図示せず)と、前記ケーシング27に回転可能に支持されている出力軸28と、前記出力軸28と前記モータとの間に設けられていて前記モータの回転力を前記出力軸28に伝達する回転力伝達機構(図示せず)とから構成されているものである。前記ケーシング27には、3個の取付片部29が一体に設けられている。
【0016】
前記駆動装置26の3個の取付片部29が前記支持部材2の3本の取付ボス部10に3本のスクリュー30により取り付けられている。この結果、前記駆動装置26は、前記3本の取付ボス部10の下面であって、同一の平面の取付面上に取り付けられることとなる。このとき、前記出力軸28は、前記取付面に対して垂直となる。そして、前記出力軸28と前記ロアーシャフト21とは、一体に連結されている。この結果、制御装置(図示せず)からの制御信号により前記駆動尾装置26が駆動して、前記ロアーシャフト21を介して前記光照射装置17が前記回転軸のアッパーシャフト20、ロアーシャフト21の回転中心線周りに回転することとなる。
【0017】
前記制御装置は、車両に搭載されているコンピュータを使用する。前記制御装置には、各種センサー(図示せず)が接続されている。前記各種センサーは、ターンシグナルスイッチのON信号を検知してターン信号を出力するターンセンサー、ハンドルの操舵方向およびまたは操舵角度およびまたは操舵速度などを検知して操舵信号を出力する操舵センサー、車速を検知して車速信号を出力する車速センサー、GPSや地上局(電子基準点など)から出力される位置情報信号を受信するGPSレシーバー、自車位置や自車姿勢を検知するジャイロセンサーなどである。一方、前記制御装置は、外部信号入力装置としてのインターフェイス回路と、中央演算処理装置・CPUと、ナビゲーションシステム(カーナビゲーション)と、制御信号出力装置としてのモータドライバー回路とからなる。この制御装置は、インターフェイス回路に入力された各種センサーの検知信号に基づいて、中央演算処理装置・CPUおよびナビゲーションシステムで前記光照射装置17の最適な回転角度を決定し、この決定された回転角度に応じた制御信号をモータドライブ回路を介して前記駆動装置26に出力するものである。
【0018】
前記ロアーベアリングホルダ13は、図4および図5に示すように、中空状の円筒形状をなす。一端面(上端面)が開口し、他端面(下端面)が閉塞し、かつ、前記他端面には、前記ロアーシャフト21が挿通する円形の透孔が設けられている。前記ロアーベアリングホルダ13の内面および外面には、複数本の圧入リブ31がそれぞれ上下方向(円筒形状の前記ロアーベアリングホルダ13の軸方向)に一体に設けられている。
【0019】
前記ロアーベアリングホルダ13には、前記ロアーベアリング23が圧入保持されている。すなわち、図15に示すように、前記ロアーベアリング23の外輪32が前記ロアーベアリングホルダ13に固定されており、前記ロアーベアリング23の内輪33が回転可能である。前記内輪33中に前記ロアーシャフト21が圧入固定されている。
【0020】
前記ロアーベアリングホルダ13と前記支持部材2とには、前記ロアーベアリングホルダ13を前記支持部材2に水平に取り付けるための取付構造が設けられている。前記取付構造は、前記支持部材2に設けられている前記中板部9と、前記ロアーベアリングホルダ13に設けられている挟み込み部とから構成されている。
【0021】
前記挟み込み部は、前記ロアーベアリングホルダ13の上端部および下端部の外面に直径方向に一体に設けられている2個の上側突起34および2個の下側突起35からなる。前記2個の上側突起34と前記2個の下側突起35とは、ほぼ直交する。前記2個の上側突起34の幅は、前記長溝8の幅よりも小さい。前記2個の下側突起35の幅は、前記長溝8幅よりも大きい。
【0022】
また、図4および図5に示すように、前記挟み込み部の前記下側突起35には、係合凸部40が設けられている。前記係合凸部40は、前記ロアーベアリングホルダ13の取付回転方向に対して上り勾配に傾斜する傾斜面41と、前記傾斜面41の頂点からほぼ垂直な段部をなす垂直面42とを有する。一方、前記中板部9には、前記係合凸部40の垂直面42に係合して前記ロアーベアリングホルダ13の逆回転を防止する係合部が設けられている。前記係合部は、この例では、前記長溝8の端面から構成されている。
【0023】
つぎに、前記支持部材2に前記ロアーベアリングホルダ13の取り付け方について説明する。まず、図6に示すように、前記支持部材2の水平部4の下側から前記ロアーベアリングホルダ13を前記上側突起34側からセットする。すなわち、前記ロアーベアリングホルダ13の下側突起35を第1マーク14に合わせる。このとき、前記下側突起35の一端面が前記支持部材2の2個のストッパ11の一端に向き合う。また、前記下側突起35の上面および前記係合凸部40の傾斜面41が前記支持部材2の中板部9の下面上に載置し、かつ、前記ロアーベアリングホルダ13の上側突起34が前記支持部材2の長溝8に位置する。
【0024】
この状態で、前記ロアーベアリングホルダ13を第2マーク15に示す方向、図6においては、時計方向に回転させる。すると、前記係合凸部40の傾斜面41が前記中板部9の下面をスライドしながら乗り上げて行き、それに伴って前記下側突起34が撓む。そして、図7に示すように、前記ロアーベアリングホルダ13がほぼ90°回転したところで、前記2個の下側突起35の他端面が前記2個のストッパ11の他端面にそれぞれ当たる。このとき、図10および図11に示すように、前記中板部9が前記上側突起34の下面と前記下側突起35の上面との間に差し込まれて、前記ロアーベアリングホルダ13が前記支持部材2に水平に取り付けられることとなる。また、図14に示すように、前記係合凸部40の垂直面42が前記中板部9の係合部(前記長溝8の端面)に達していて、前記下側突起35の撓みが開放され、撓んでいた前記下側突起35が元の形状に復帰して前記係合凸部40の垂直面42が前記中板部9の係合部に係合する。この結果、前記ロアーベアリングホルダ13を逆に回転させようとしても、前記係合凸部40の垂直面42と前記中板部9の係合部との係合により、前記ロアーベアリングホルダ13を逆に回転させことができない。一方、前記ロアーベアリングホルダ13を図6に示す時計方向にさらに回転させようとしても、前記下側突起35の他端面と前記ストッパ11の他端面との当たりにより、前記ロアーベアリングホルダ13を同方向に回転させることができない。これにより、前記ロアーベアリングホルダ13は、前記支持部材2に回転方向に対してロックされることとなる。なお、軸方向は、前記中板部9と挟み込み部(前記上側突起34および前記下側突起35)との挟み込みによりロックされている。
【0025】
前記ロアーベアリングホルダ13と前記支持部材2との間には、前記ロアーベアリングホルダ13を前記支持部材2に水平に維持する第1水平維持部と第2水平維持部とが設けられている。
【0026】
前記第1水平維持部は、断面円弧形状部36と、前記断面円弧形状部36が線接触する第1平面部37とから構成されている。前記断面円弧形状部36は、図10中の二点鎖線で示す円の一部からなる形状であって、前記上側突起34の下面に設けられている。一方、前記第1平面部37は、前記水平部4の上面に設けられている。前記第2水平維持部は、前記中板部9の下面に設けられている前記凸部12と、前記凸部12が当接する第2平面部39とから構成されている。前記第2平面部39は、図11に示すように、前記下側突起35の上面に設けられている。
【0027】
前記ロアーベアリングホルダ13が前記支持部材2に取り付けられたとき、すなわち、前記下側突起35の他端面が前記ストッパ11の他端面にそれぞれ当たっているとき。このときは、図10に示すように、前記上側突起34が前記水平部4の上面の傾斜方向(抜き方向)に対してほぼ直交する。このために、前記上側突起34の下面の前記断面円弧形状部36が前記水平部4の上面の前記第1平面部37に線接触する(図10中の黒丸部分を参照)。一方、図11に示すように、前記中板部9の下面の前記凸部12が前記下側突起35の上面の前記第2平面部39に当接する。このために、前記下側突起35が水平に維持される。また、前記上側突起34は、前記下側突起35の水平維持に倣って水平に維持される。この結果、前記ロアーベアリングホルダ13は、前記支持部材2に水平に維持される。
【0028】
この実施例にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0029】
まず、車両が直進している状態においては、光照射装置17の光軸(図示せず)と、車両の前後方向とがほぼ一致する。ここで、車両がたとえば左旋回状態(車両が左に旋回する前の状態もしくは車両が左に旋回している状態)に入ると、各種センサーが車両の左旋回状態を検知して検知信号を制御装置に出力する。この制御装置が各種センサーの検知信号に基づいて、光照射装置17の最適な回転角度を演算し、この演算された回転角度に応じた制御信号を駆動装置26に出力する。すると、駆動装置26は、制御信号に基づいて駆動する。この駆動装置26の駆動力(回転力)が出力軸28およびロアーシャフト21に伝達されて、光照射装置17は、回転軸のアッパーシャフト20およびロアーシャフト21の回転中心線周りに左方向に回転する。そして、光照射装置17が演算された回転角度分回転したところで、駆動装置26の駆動が停止して、光照射装置17の回転も停止する。この結果、光照射装置17の光軸が車両の前後方向に対して左方向に演算された回転角度分回転した状態となる。
【0030】
また、車両が右旋回状態に入ると、各種センサーが車両の右旋回状態を検知して検知信号を制御装置に出力する。すると、前記の作用と同様に、制御装置が各種センサーの検知信号に基づいて、光照射装置17の最適な回転角度を演算し、この演算結果を制御信号として駆動装置26に出力する。この駆動装置26が制御信号に基づいて駆動して、この駆動装置26の駆動力(回転力)が出力軸28およびロアーシャフト21に伝達されて、光照射装置17が右方向に回転する。このように、この実施例にかかる車両用灯具1は、車両の旋回方向に光照射装置17を回転させることができるので、光照射装置17からの光を車両の旋回方向に向けることができる。すなわち、この実施例にかかる車両用灯具1は、車両の旋回方向に光を照射することができる。なお、この実施例にかかる車両用灯具1において、車両の旋回に基づいて光照射装置17を回転させる制御は、上記の作用以外にも種々ある。たとえば、上記の制御としては、AFS(Adaptive Front lighting System)に対応したものでも良い。その上、車両の状況や道路状況やドライバーの好みなどにより、制御は、色々と変更することができるものでも良い。
【0031】
この実施例における車両用灯具1は、上記のごとき構成および作用からなり、以下、この実施例における車両用灯具1の効果について説明する。
【0032】
この実施例における車両用灯具1は、アッパーベアリングホルダ24およびロアーベアリングホルダ13により、アッパーベアリング22およびロアーベアリング23を介して回転軸のアッパーシャフト20およびロアーシャフト21を支持部材2に回転可能に支持する。また、この実施例における車両用灯具1は、断面円弧形状部36およびこの断面円弧形状部36が線接触する第1平面部37とから構成されている第1水平維持部と、凸部12およびこの凸部12が当接する第2平面部39とから構成されている第2水平維持部とにより、アッパーベアリングホルダ24およびロアーベアリングホルダ13を支持部材2に水平に維持することができる。この結果、この実施例における車両用灯具1は、光照射装置17を支持部材2に確実に水平に維持することができる。これにより、この実施例における車両用灯具1は、光照射装置17からの光の照射方向を正確にかつ確実に可変制御することができる。
【0033】
特に、この実施例における車両用灯具1は、図10に示すように、第1水平維持部の断面円弧形状部36が第1平面部37に線接触し、かつ、ストッパ11の作用により断面円弧形状部36と第1平面部37との線接触が水平部4の上面の抜き方向に対して直角となる。このために、この実施例における車両用灯具1は、水平部4の上面の抜き度に多少の誤差があっても、また、水平面部4の上面の抜き度を変えても、さらに、水平部4の上面の抜き度を緩和させても、上側突起34が下側突起35に倣って、断面円弧形状部36と第1平面部37との線接触状態が変わらないので、アッパーベアリングホルダ24およびロアーベアリングホルダ13を確実に水平に維持することができる。このように、この実施例における車両用灯具1は、支持部材2、特に水平部4の設計や製造に対して柔軟に対応することができる。
【0034】
また、この実施例における車両用灯具1は、2個の上側突起34の断面円弧形状部36が第1平面部37に抜き方向に対して直角に線接触するので、直径方向に2個の上側突起34を有するロアーベアリングホルダ13を、180°回転させて使用することができる。すなわち、図6に示す状態のロアーベアリングホルダ13を、180°回転させた状態で水平部4にセットして使用することができるので、ロアーベアリングホルダ13の取付向きの制限が無く、ロアーベアリングホルダ13の取付が簡単である。
【0035】
さらに、この実施例における車両用灯具1は、水平部4の下面を1つのスライド金型により形成することができるので、駆動装置26の取付面を構成する3本の取付ボス部10の端面の水平度を容易に保つことができる。これにより、この実施例における車両用灯具1は、光照射装置17を支持部材2にさらに確実に水平に維持することができる。
【0036】
さらにまた、この実施例における車両用灯具1は、係合凸部40と係合部とを設けたので、ロアーベアリングホルダ13を支持部材2に取り付けた際に、下側突起35の撓みが開放されるので、取り付けたという節度感(クリック感)が得られ、しかも、係合凸部40の垂直面42が係合部に係合するので、ストッパ11の作用とにより、ロアーベアリングホルダ13を支持部材2に確実に固定(ロック)することができる。その上、この実施例における車両用灯具1は、ロアーベアリングホルダ13の逆回転防止用の係合凸部40をロアーベアリングホルダ13に一体に設け、かつ、係合部を支持部材2の中板部9に一体に設けたので、部品点数や組立工数などを削減することができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0037】
図14は、この発明にかかる車両用灯具の第1変形例を示す一部断面図である。この第1変形例は、下側突起35において、係合凸部40を設けている部分38の肉厚を他の部分よりも薄くする。この第1変形例は、肉薄部38を設けることにより、この肉薄部38の剛性が他の部分よりも低くなるので、ロアーベアリングホルダ13を支持部材2に取り付ける際に、下側突起35の係合凸部40を有する部分が撓みやすくなる。この結果、この第1変形例は、ロアーベアリングホルダ13全体が変形することを防止でき、また、取付の際のトルクを低減でき、さらに、係合凸部40の摩耗を防止することができてロアーベアリングホルダ13の逆回転防止をさらに確実に機能させることができる。
【0038】
また、前記第1変形例において、ロアーベアリングホルダ13に補強リブ43を設ける際に、前記肉薄部38から離れた部分に前記補強リブ43を設けることにより、前記肉薄部38の作用を損なわずに、ロアーベアリングホルダ13の構造を補強することができる。
【0039】
図15は、この発明にかかる車両用灯具の第2変形例を示す一部断面図である。図15(A)はロアーベアリングホルダを示す平面図、図15(B)はロアーベアリングホルダにロアーベアリングを圧入した状態を示す平面図、図15(C)は図15(A)におけるC−C線断面図、図15(D)は図15(B)におけるD−D線断面図である。なお、図15(A)中の格子が施されている部分は、ロアーベアリング23の外輪32が圧接して載置する部分(圧接面)を示す。
【0040】
この第2変形例は、ロアーベアリング23が圧入されるロアーベアリングホルダ13の底面44に複数個この例では8個の受部45を等間隔にかつ径方向に一体に突設したものである。この受部45は、圧入リブ31の間に位置し、かつ、ロアーベアリング23の外輪32が載置する適度の大きさを有する。この第2変形例は、ロアーベアリングホルダ13中にロアーベアリング23を圧入する。すると、ロアーベアリング23の外輪32がロアーベアリング23の圧入リブ31により固定されまた8個の受部45に底面44から底上げされた状態でかつ8個に分割された状態で圧接して載置されている。
【0041】
この第2変形例は、ロアーベアリングホルダ13の底面44に8個の受部45を底上げして設けたので、ロアーベアリング23の外輪32が圧接する面を、底面44と比較して、少ない面積でかつ8個に分割して管理することができる。このために、この第2変形例は、ロアーベアリング23のロアーベアリングホルダ13への圧入高さの管理、また、8個の受部45の各圧接面の平面度の管理が容易となるので、ロアーベアリング23をロアーベアリングホルダ13に傾くことなく確実に同心に固定することができる。
【0042】
また、この第2変形例は、ロアーベアリングホルダ13において、図15(C)に示すように、底面44と受部45の圧接面との間に隙間Tを有する。このために、この第2変形例は、圧入リブ31と底面44との間の角の湾曲を、ロアーベアリング23の外輪32の角の最小湾曲よりも、前記隙間Tを足した分大きくすることができる。この結果、この第2変形例は、ロアーベアリングホルダ13の成形金型の製作が容易となり、また、金型寿命も向上し、さらに、ロアーベアリングホルダ13の角への集中応力が緩和されて機械的強度が向上し、さらにまた、ロアーベアリング23を底面44ではなく受部45の圧接面に圧接するまで圧入するだけでよくロアーベアリング23の圧入不良(圧入不足)を減少することができる。
【0043】
なお、前記の実施例においては、ロアーベアリングホルダ13の例について説明するものである。ところが、この発明においては、アッパーベアリングホルダにも適用してもよいし、アッパーベアリングホルダおよびロアーベアリング彫るだの双方に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示す主な構成部品の分解斜視図である。
【図2】同じく、主な構成部品を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図3】同じく、支持部材を下面側見た状態を示す斜視図である。
【図4】同じく、ロアーベアリングホルダを示す斜視図である。
【図5】同じく、ロアーベアリングホルダを示す正面図である。
【図6】同じく、ロアーベアリングホルダを支持部材にセットした状態を示す底面図である。
【図7】同じく、ロアーベアリングホルダを支持部材に取り付けた状態を示す底面図である。
【図8】同じく、ロアーベアリングホルダを支持部材に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図9】同じく、ロアーベアリングホルダを支持部材に取り付けた状態を示す正面図である。
【図10】同じく、図9におけるX−X線断面図である。
【図11】同じく、図9におけるXI−XI線断面図である。
【図12】同じく、ロアーベアリングホルダを支持部材に取り付ける前の状態を示す図9におけるXI−XI線断面図である。
【図13】同じく、ロアーベアリングホルダを支持部材に取り付けた状態を示す底面図である。
【図14】同じく、図13におけるXIV−XIV線断面図である。
【図15】同じく、ロアーベアリングホルダとロアーベアリングとの固定状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用灯具
2 支持部材
3 垂直部
4 水平部
5 開口部
6 取付部
7 透孔
8 長溝
9 中板部
10 取付ボス部
11 ストッパ
12 凸部
13 ロアーベアリングホルダ
14 第1マーク
15 第2マーク
16 第3マーク
17 光照射装置
18 リフレクタ
19 投影レンズ
20 アッパーシャフト
21 ロアーシャフト
22 アッパーベアリング
23 ロアーベアリング
24 アッパーベアリングホルダ
25 スクリュー
26 駆動装置
27 ケーシング
28 出力軸
29 取付片部
30 スクリュー
31 圧入リブ
32 外輪
33 内輪
34 上側突起
35 下方突起
36 断面円弧形状部
37 第1平面部
38 肉薄部
39 第2平面部
40 係合凸部
41 傾斜面
42 垂直面
43 補強リブ
44 底面
45 受部
H−H 水平線
T 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射方向を可変制御することができる車両用灯具において、
支持部材と、
光を路面などに照射する光照射装置と、
前記光照射装置に設けられている回転軸と、
前記回転軸に設けられているベアリングと、
前記支持部材に設けられており、前記ベアリングを介して前記回転軸を前記支持部材に回転可能に支持するベアリングホルダと、
制御装置からの制御信号により駆動して前記回転軸を介して前記光照射装置を回転させる駆動装置と、
前記ベアリングホルダと前記支持部材との間には、前記ベアリングホルダを前記支持部材に水平に維持する水平維持部が設けられている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記水平維持部は、前記ベアリングホルダもしくは前記支持部材のいずれか一方に設けられている断面円弧形状部と、いずれか他方に設けられていて前記断面円弧形状部が線接触する平面部とから構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記水平維持部は、
前記ベアリングホルダもしくは前記支持部材のいずれか一方に設けられている断面円弧形状部と、いずれか他方に設けられていて前記断面円弧形状部が線接触する平面部とから構成されている第1水平維持部と、
前記ベアリングホルダもしくは前記支持部材のいずれか一方に設けられている凸部と、いずれか他方に設けられていて前記凸部が当接する平面部とから構成されている第2水平維持部と、
からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ベアリングホルダもしくは前記支持部材のいずれか一方には、中板部が設けられており、いずれか他方には、挟み込み部が設けられており、
前記中板部および前記挟み込み部は、前記ベアリングホルダを前記支持部材に対して回転させて前記中板部を前記挟み込み部の間に差し込むことにより前記ベアリングホルダが前記支持部材に水平に取り付けられる取付構造を構成し、
前記中板部もしくは前記挟み込み部のいずれか一方には、前記ベアリングホルダの取付回転方向に対して傾斜する傾斜面およびほぼ垂直をなす垂直面を有する係合凸部が設けられており、いずれか他方には、前記係合凸部の垂直面に係合して前記ベアリングホルダの逆回転を防止する係合部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−224898(P2006−224898A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43828(P2005−43828)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】