説明

車両用灯具

【課題】消費電力を抑制しつつ、短時間でカバーレンズの外側表面上の雪を除去する。
【解決手段】カバーレンズ1への着雪を抑制するように構成された車両用灯具において、カバーレンズ1の外側表面に滑雪用コーティング2を施すと共に、カバーレンズ1に超音波振動子3を接合した。好ましくは、カバーレンズ1の外縁部1aから離れた位置であって、すれ違いビーム用光源4より高い位置に超音波振動子3を配置した。車両の運転席に配置された超音波振動子駆動スイッチが運転者によってONされると、超音波振動子3が駆動され、それにより、超音波振動子3が発生した振動がカバーレンズ1に伝播する。その結果、カバーレンズ1が振動し、カバーレンズ1の外側表面上の雪が滑り落とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーレンズへの着雪を抑制するように構成された車両用灯具に関し、特には、消費電力を抑制しつつ、短時間でカバーレンズの外側表面上の雪を除去することができる車両用灯具に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、無風時の車両の停車中であってもカバーレンズの外側表面上の雪を除去することができる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、カバーレンズへの着雪を抑制するように構成された車両用灯具が知られている。この種の車両用灯具の例としては、例えば特開2006−32138号公報、特開2006−86067号公報などに記載されたものがある。特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、ヒータ用金属線がカバーレンズに設けられ、ヒータ用金属線が発生した熱によってカバーレンズ上の雪が溶かされ、それにより、カバーレンズへの着雪が抑制されている。
【0004】
詳細には、特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、ヒータ用金属線に対する通電が開始されると、ヒータ用金属線が発熱し、それに伴って、カバーレンズが昇温し、それにより、カバーレンズ上の雪が溶かされる。
【0005】
ところで、ヒータ用金属線に対する通電が開始されてから、カバーレンズ上の雪が溶ける程度にカバーレンズが昇温するまでには、比較的長い時間を要する。そのため、特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、カバーレンズ上の雪を除去する必要が生じた時点から、カバーレンズ上の雪が実際に除去されるまでに、長い時間を要してしまう。
【0006】
更に、特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、カバーレンズ上の雪が一度除去された後においても、ヒータ用金属線に対する通電が中止され、カバーレンズ上に雪が再び付着すると、その雪を除去するのに長い時間を要してしまう。そのため、特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、カバーレンズ上に雪が再び付着しないようにするために、ヒータ用金属線に通電し続ける必要があり、その結果、消費電力が増大してしまう。
【0007】
また、特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、カバーレンズに付着した雪によって光源からの照射光が遮られないようにするために、つまり、光源からの照射光の光路上の雪を溶かすために、ヒータ用金属線が光源からの照射光の光路上に配置されている。そのため、特開2006−32138号公報および特開2006−86067号公報に記載された車両用灯具では、ヒータ用金属線によって、光源からの照射光が悪影響を受けてしまったり、車両用灯具の外観が損なわれたりするおそれがある。
【0008】
また、従来から、カバーレンズの外側表面に撥水性コーティングが施された車両用灯具が知られている。この種の車両用灯具の例としては、例えば特開平6−330363号公報に記載されたものがある。特開平6−330363号公報に記載された車両用灯具のようにカバーレンズの外側表面に撥水性コーティングを施すことによっても、カバーレンズへの着雪を抑制することができる。
【0009】
ところで、カバーレンズの外側表面に撥水性コーティングが施されている場合、車両の走行中や、車両の停車中であっても風が吹いている時には、撥水性コーティングによってカバーレンズへの着雪を抑制することができるものの、無風時の車両の停車中には、撥水性コーティングによってカバーレンズへの着雪を十分に抑制することができない。
【0010】
【特許文献1】特開2006−32138号公報
【特許文献2】特開2006−86067号公報
【特許文献3】特開平6−330363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記問題点に鑑み、本発明は、消費電力を抑制しつつ、短時間でカバーレンズ上の雪を除去することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【0012】
詳細には、本発明は、無風時の車両の停車中であってもカバーレンズ上の雪を除去することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【0013】
更に、本発明は、光源からの照射光が遮られてしまうのを回避しつつ、カバーレンズ上の雪を除去することができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、カバーレンズへの着雪を抑制するように構成された車両用灯具において、前記カバーレンズの外側表面に滑雪用コーティングを施すと共に、前記カバーレンズに超音波振動子を接合したことを特徴とする車両用灯具が提供される。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、前記カバーレンズのうち、光源からの照射光の光路上から外れた位置に前記超音波振動子を配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具が提供される。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、すれ違いビーム用光源と、走行ビーム用光源とを設け、前記走行ビーム用光源より前記すれ違いビーム用光源に近い位置であって、前記すれ違いビーム用光源より高い位置に前記超音波振動子を配置したことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具が提供される。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前記カバーレンズの外縁部から離れた位置であって、前記光源より高い位置に前記超音波振動子を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具が提供される。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、カバーレンズ側の接合面と超音波振動子側の接合面とを相補形状に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用灯具が提供される。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、前記超音波振動子から前記カバーレンズへの振動伝播方向が前記カバーレンズの厚さ方向にほぼ一致するように前記超音波振動子を前記カバーレンズに接合したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用灯具が提供される。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、接着後に硬化する接着剤によって前記超音波振動子を前記カバーレンズに接合したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用灯具が提供される。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、前記カバーレンズの外側表面上の積雪を感知するための感知手段を設け、前記感知手段によって前記カバーレンズの外側表面上の積雪が感知された時に前記超音波振動子を駆動することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用灯具が提供される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の車両用灯具では、滑雪用コーティングがカバーレンズの外側表面に施され、超音波振動子がカバーレンズに接合されている。詳細には、請求項1に記載の車両用灯具では、超音波振動子が駆動され、振動がカバーレンズに加えられると、カバーレンズの外側表面上の雪が、滑り落とされる。
【0023】
そのため、請求項1に記載の車両用灯具によれば、カバーレンズの外側表面上の雪がヒータ用金属線によって溶かされる場合よりも、消費電力を抑制しつつ、短時間でカバーレンズの外側表面上の雪を除去することができる。詳細には、請求項1に記載の車両用灯具によれば、無風時の車両の停車中であってもカバーレンズの外側表面上の雪を除去することができる。
【0024】
請求項2及び3に記載の車両用灯具では、超音波振動子が、カバーレンズのうち、光源からの照射光の光路上から外れた位置に配置されている。詳細には、請求項2及び3に記載の車両用灯具では、すれ違いビーム用光源と、走行ビーム用光源とが設けられている。更に、超音波振動子が、走行ビーム用光源よりすれ違いビーム用光源に近い位置であって、すれ違いビーム用光源より高い位置に配置されている。つまり、請求項2及び3に記載の車両用灯具では、超音波振動子が、すれ違いビーム用光源からの照射光の光路上から外れた位置であって、走行ビーム用光源からの照射光の光路上から外れた位置に配置されている。
【0025】
そのため、請求項2及び3に記載の車両用灯具によれば、光源からの照射光が超音波振動子によって遮られてしまうのを回避しつつ、カバーレンズの外側表面上の雪を除去することができる。
【0026】
本発明者等の研究では、超音波振動子をカバーレンズの外縁部上に配置した場合よりも、超音波振動子をカバーレンズの外縁部から離れた位置に配置した場合の方が、超音波振動子によってカバーレンズの外側表面上の雪を効率良く滑り落とすことができる点が確認された。
【0027】
更に、本発明者等の研究では、超音波振動子を光源より低い位置に配置した場合よりも、超音波振動子を光源より高い位置に配置した場合の方が、超音波振動子によってカバーレンズの外側表面上の雪を効率良く滑り落とすことができる点が確認された。
【0028】
これらの点に鑑み、請求項4に記載の車両用灯具では、超音波振動子が、カバーレンズの外縁部から離れた位置であって、光源より高い位置に配置されている。そのため、請求項4に記載の車両用灯具によれば、超音波振動子がカバーレンズの外縁部上に配置されている場合や、超音波振動子が光源より低い位置に配置されている場合よりも、カバーレンズの外側表面上の雪を効率良く滑り落とすことができる。
【0029】
請求項5に記載の車両用灯具では、カバーレンズ側の接合面と超音波振動子側の接合面とが相補形状に形成されている。換言すれば、請求項5に記載の車両用灯具では、超音波振動子がカバーレンズに対して隙間なく接合されている。そのため、請求項5に記載の車両用灯具によれば、超音波振動子が隙間を介してカバーレンズに接合されている場合よりも、超音波振動子が発生した振動をカバーレンズに効率良く伝播することができる。
【0030】
本発明者等の研究では、超音波振動子からカバーレンズへの振動伝播方向がカバーレンズの厚さ方向に対して垂直になるように超音波振動子をカバーレンズに接合した場合よりも、超音波振動子からカバーレンズへの振動伝播方向がカバーレンズの厚さ方向にほぼ一致するように超音波振動子をカバーレンズに接合した場合の方が、超音波振動子によってカバーレンズの外側表面上の雪を効率良く滑り落とすことができる点が確認された。
【0031】
この点に鑑み、請求項6に記載の車両用灯具では、超音波振動子からカバーレンズへの振動伝播方向がカバーレンズの厚さ方向にほぼ一致するように超音波振動子がカバーレンズに接合されている。そのため、請求項6に記載の車両用灯具によれば、超音波振動子からカバーレンズへの振動伝播方向がカバーレンズの厚さ方向に対して垂直になるように超音波振動子がカバーレンズに接合されている場合よりも、超音波振動子によってカバーレンズの外側表面上の雪を効率良く滑り落とすことができる。
【0032】
請求項7に記載の車両用灯具では、接着後に硬化する接着剤によって超音波振動子がカバーレンズに接合されている。そのため、請求項7に記載の車両用灯具によれば、接着後も比較的軟らかい接着剤によって超音波振動子がカバーレンズに接合されている場合よりも、超音波振動子が発生した振動をカバーレンズに効率良く伝播することができる。
【0033】
請求項8に記載の車両用灯具では、カバーレンズの外側表面上の積雪を感知するための感知手段が設けられている。更に、感知手段によってカバーレンズの外側表面上の積雪が感知された時に、超音波振動子が駆動される。そのため、請求項8に記載の車両用灯具によれば、カバーレンズの外側表面上の雪によって光源からの照射光が遮られていると車両の運転者が感じる前に、カバーレンズの外側表面上の雪を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の車両用灯具の第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態の車両用灯具の正面図、図2は図1のX−X断面図である。図1および図2において、1はカバーレンズを示しており、1aはカバーレンズ1の外縁部を示しており、2はカバーレンズ1の外側表面に施された例えばフッ素系、シリコーン系などの滑雪用コーティングを示している。3はカバーレンズ1の内側表面に接合された超音波振動子を示しており、4はすれ違いビーム用光源を示しており、4’はすれ違いビーム用リフレクタを示している。5は走行ビーム用光源を示しており、5’は走行ビーム用リフレクタを示している。
【0035】
第1の実施形態の車両用灯具では、図1および図2に示すように、カバーレンズ1への着雪を抑制するために、滑雪用コーティング2がカバーレンズ1の外側表面に施されている。更に、超音波振動子3がカバーレンズ1の内側表面に接合されている。
【0036】
図3はすれ違いビーム用光源4からの照射光の光路を示した図である。第1の実施形態の車両用灯具では、図1に示すように、超音波振動子3が、走行ビーム用光源5よりすれ違いビーム用光源4に近い位置に配置されている。更に、図2および図3に示すように、超音波振動子3が、すれ違いビーム用光源4より高い位置に配置されている。詳細には、超音波振動子3が、すれ違いビーム用リフレクタ4’より高い位置に配置されている。換言すれば、図1および図3に示すように、超音波振動子3が、カバーレンズ1のうち、すれ違いビーム用光源4からの照射光の光路上から外れた位置であって、走行ビーム用光源5からの照射光の光路上から外れた位置に配置されている。
【0037】
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、図1および図2に示すように、超音波振動子3が、カバーレンズ1の外縁部1aから少し離れた位置であって、すれ違いビーム用光源4より高い位置に配置されている。
【0038】
図4はカバーレンズ1および超音波振動子3の拡大分解図である。第1の実施形態の車両用灯具では、図4に示すように、カバーレンズ側の接合面1bと、超音波振動子側の接合面3aとが、相補形状に形成されている。詳細には、カバーレンズ側の接合面1bと、超音波振動子側の接合面3aとが、共に平面状に形成されている。第2の実施形態の車両用灯具では、代わりに、カバーレンズ側の接合面1bを凹状に形成すると共に、超音波振動子側の接合面3aをカバーレンズ側の接合面1bと相補形状の凸状に形成することも可能である。
【0039】
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、接着後に硬化する接着剤によって、超音波振動子3がカバーレンズ1に接合されている。つまり、第1の実施形態の車両用灯具では、カバーレンズ側の接合面1bと超音波振動子側の接合面3aとの間に隙間が残されたり、軟らかい接着剤が配置されたりするのに伴って、超音波振動子3からカバーレンズ1へ伝播する振動が小さくなってしまうことが回避されている。
【0040】
図5は超音波振動子3が発生した振動の伝播方向とカバーレンズ1の厚さ方向との関係を示した図である。第1の実施形態の車両用灯具では、図5に示すように、超音波振動子3からカバーレンズ1への振動伝播方向(図5中の矢印の方向)が、カバーレンズ1の厚さ方向にほぼ一致するように、超音波振動子3がカバーレンズ1に接合されている。
【0041】
詳細には、第1の実施形態の車両用灯具では、車両の運転席に配置された超音波振動子駆動スイッチ(図示せず)が運転者によってONされると、超音波振動子3が駆動され、それにより、超音波振動子3が発生した振動がカバーレンズ1に伝播する。その結果、カバーレンズ1が振動し、カバーレンズ1の外側表面上の雪が滑り落とされる。そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、カバーレンズ1の外側表面上の雪がヒータ用金属線によって溶かされる場合よりも、短時間でカバーレンズ1の外側表面上の雪を除去することができる。詳細には、第1の実施形態の車両用灯具によれば、無風時の車両の停車中であってもカバーレンズ1の外側表面上の雪を除去することができる。
【0042】
次いで、第1の実施形態の車両用灯具では、超音波振動子駆動スイッチがONされてから所定時間が経過すると、超音波振動子3への駆動信号の供給が停止され、運転者によって超音波振動子駆動スイッチが再びONされるまで、駆動信号が超音波振動子3に供給されない。そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、カバーレンズ1の外側表面上の雪がヒータ用金属線によって溶かされる場合よりも、カバーレンズ1の外側表面上の雪を除去するのに必要な電力消費量を低減することができる。
【0043】
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、超音波振動子3が、図3に示すように、すれ違いビーム用光源4からの照射光の光路上から外れた位置であって、図1に示すように、走行ビーム用光源5からの照射光の光路上から外れた位置に配置されている。そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、すれ違いビーム用光源4および走行ビーム用光源5からの照射光が超音波振動子3によって遮られてしまうのを回避しつつ、カバーレンズ1の外側表面上の雪を除去することができる。
【0044】
第1の実施形態の車両用灯具では、図1に示すように、すれ違いビーム用光源4と、走行ビーム用光源5とが別個に設けられ、超音波振動子3が、走行ビーム用光源5の上側には配置されず、すれ違いビーム用光源4の上側にのみ配置されているが、第3の実施形態の車両用灯具では、代わりに、すれ違いビーム用配光パターンを形成するための光源および走行ビーム用配光パターンを形成するための光源として共通の光源を用い、その光源の上側に超音波振動子を配置することも可能である。
【0045】
以下、本発明の車両用灯具の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の車両用灯具は、後述する点を除き、上述した第1の実施形態の車両用灯具とほぼ同様に構成されている。従って、第4の実施形態の車両用灯具によれば、後述する点を除き、上述した第1の実施形態の車両用灯具とほぼ同様の効果を奏することができる。
【0046】
図6は第4の実施形態の車両用灯具の断面図である。図6において、6はカバーレンズ1の外側表面上の積雪を感知するためのセンサである。
【0047】
第1の実施形態の車両用灯具では、車両の運転席に配置された超音波振動子駆動スイッチ(図示せず)が運転者によってONされると、超音波振動子3が駆動されるが、第4の実施形態の車両用灯具では、代わりに、センサ6によってカバーレンズ1の外側表面上の積雪が感知されると、超音波振動子3が駆動される。そのため、第4の実施形態の車両用灯具によれば、カバーレンズ1の外側表面上の雪によってすれ違いビーム用光源4からの照射光が遮られていると車両の運転者が感じる前に、カバーレンズ1の外側表面上の雪を除去することができる。つまり、第4の実施形態の車両用灯具によれば、カバーレンズ1の外側表面上の雪によってすれ違いビーム用光源4からの照射光が遮られてしまう状況を回避することができる。
【0048】
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、超音波振動子駆動スイッチがONされてから所定時間が経過すると、超音波振動子3への駆動信号の供給が停止されるが、第4の実施形態の車両用灯具では、代わりに、超音波振動子1によってカバーレンズ1の外側表面上の雪が除去され、カバーレンズ1の外側表面上の雪がセンサ6に感知されなくなると、超音波振動子3への駆動信号の供給が停止される。
【0049】
第5の実施形態では、上述した第1から第4の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0050】
本発明者等は、カバーレンズ1に対して超音波振動子3A,3B,3Cを装着する位置について比較検討を行った。図7は比較検討に用いられた車両用灯具の正面図、図8は図7のX’−X’断面図である。比較例1、比較例2および実施例では、超音波振動子3A,3B,3Cとして、長さ175mm、幅25mm、厚さ2.55mmのものを用い、超音波振動子3A,3B,3Cの厚さ方向の共振周波数を800kHzに設定した。
【0051】
図7および図8に示すように、比較例1では、カバーレンズ1の外縁部1a上であって、すれ違いビーム用光源4より高い位置に超音波振動子3Aを配置した。また、比較例1では、超音波振動子3Aからカバーレンズ1への振動伝播方向(図8中の矢印の方向)がカバーレンズ1の厚さ方向に対してほぼ垂直になるように、超音波振動子3Aをカバーレンズ1に接合した。その結果、比較例1では、超音波振動子3Aによってカバーレンズ1の外側表面上の雪を殆ど滑り落とすことができなかった。
【0052】
また、図7および図8に示すように、比較例2では、カバーレンズ1の外縁部1aから少し離れた位置であって、すれ違いビーム用光源4より低い位置に超音波振動子3Bを配置した。更に、比較例2では、超音波振動子3Bからカバーレンズ1への振動伝播方向(図8中の矢印の方向)がカバーレンズ1の厚さ方向にほぼ一致するように、超音波振動子3Bをカバーレンズ1に接合した。その結果、比較例2では、超音波振動子3Bによってカバーレンズ1の外側表面上の雪を少し滑り落とすことができた。
【0053】
更に、図7および図8に示すように、実施例では、カバーレンズ1の外縁部1aから少し離れた位置であって、すれ違いビーム用光源4より高い位置(第1の実施形態の車両用灯具の超音波振動子3が配置されている位置と同じ位置)に超音波振動子3Cを配置した。更に、実施例では、超音波振動子3Cからカバーレンズ1への振動伝播方向(図8中の矢印の方向)がカバーレンズ1の厚さ方向にほぼ一致するように、超音波振動子3Cをカバーレンズ1に接合した。その結果、実施例では、超音波振動子3Cによってカバーレンズ1の外側表面上の雪を十分に滑り落とすことができた。
【0054】
本発明者等の比較検討では、長さ50〜200mm、幅25〜50mm、厚さ2〜5mmの超音波振動子を図7および図8中の超音波振動子3Cの位置に配置した場合にも、その超音波振動子によってカバーレンズ1の外側表面上の雪を十分に滑り落とすことができた。
【0055】
詳細には、本発明者等の比較検討では、すれ違いビーム用リフレクタ4’の直径の約2分の1より長い長さ(図7の左右方向寸法)を有する超音波振動子3Cを図7および図8に示す位置に配置することにより、カバーレンズ1のうち、すれ違いビーム用リフレクタ4’の前方に位置する部分の外側表面上の雪を十分に滑り落とすことができた。つまり、すれ違いビーム用リフレクタ4’の直径の約2分の1より長い長さを有する超音波振動子3Cを図7および図8に示す位置に配置することにより、すれ違いビーム用配光を確保することができた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態の車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】すれ違いビーム用光源4からの照射光の光路を示した図である。
【図4】カバーレンズ1および超音波振動子3の拡大分解図である。
【図5】超音波振動子3が発生した振動の伝播方向とカバーレンズ1の厚さ方向との関係を示した図である。
【図6】第4の実施形態の車両用灯具の断面図である。
【図7】比較検討に用いられた車両用灯具の正面図である。
【図8】図7のX’−X’断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 カバーレンズ
1a 外縁部
1b 接合面
2 滑雪用コーティング
3 超音波振動子
3a 接合面
4 すれ違いビーム用光源
4’ すれ違いビーム用リフレクタ
5 走行ビーム用光源
5’ 走行ビーム用リフレクタ
6 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーレンズへの着雪を抑制するように構成された車両用灯具において、前記カバーレンズの外側表面に滑雪用コーティングを施すと共に、前記カバーレンズに超音波振動子を接合したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記カバーレンズのうち、光源からの照射光の光路上から外れた位置に前記超音波振動子を配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
すれ違いビーム用光源と、走行ビーム用光源とを設け、前記走行ビーム用光源より前記すれ違いビーム用光源に近い位置であって、前記すれ違いビーム用光源より高い位置に前記超音波振動子を配置したことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記カバーレンズの外縁部から離れた位置であって、前記光源より高い位置に前記超音波振動子を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
カバーレンズ側の接合面と超音波振動子側の接合面とを相補形状に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記超音波振動子から前記カバーレンズへの振動伝播方向が前記カバーレンズの厚さ方向にほぼ一致するように前記超音波振動子を前記カバーレンズに接合したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
接着後に硬化する接着剤によって前記超音波振動子を前記カバーレンズに接合したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記カバーレンズの外側表面上の積雪を感知するための感知手段を設け、前記感知手段によって前記カバーレンズの外側表面上の積雪が感知された時に前記超音波振動子を駆動することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−108500(P2008−108500A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288752(P2006−288752)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】