説明

車両用灯具

【課題】スペース面での有効利用を図ることができると共に、意匠面で良好にすることができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、前面カバー12とランプボディ11からなる灯室13内に複数の光源14が配置されている。また、ミリ波レーダ17のミリ波レーダ本体部22が灯室13内に配置されている。さらに、ミリ波レーダ17のアンテナ部21がLED14と前面カバー12との間に配置されている。このアンテナ部21には、複数のLED14に対応して複数に分割された透過部25が設けられており、LED14から出射された発光光αが透過部25を透過して前面カバー12側に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波を発信してミリ波を反射した対象物までの離間距離や相対速度を検出するミリ波レーダを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具の一例として、ヘッドライトのハウジングのリフレクタを除いたパネルにレーザレーダ機構を搭載した車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−236803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に開示された車両用灯具では、灯具正面にレーザレーダ機構が配置されているため、レーザレーダ機構と光源とのスペース配分が難しく、レーザレーダ機構のスペース確保が難しかった。
【0005】
また、灯具正面にレーザレーダ機構が配置されていることで、前面のデザインを考慮した意匠面で良好とは言い難かった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スペース面での有効利用を図ることができると共に、意匠面で良好にすることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、前方が開口したランプボディとその前方開口部に取り付けられた透明な前面カバーとで形成された灯室内に複数の光源を備え、ミリ波を発信するミリ波レーダを備えた車両用灯具であって、
前記ミリ波レーダは、少なくともミリ波の発信を制御するミリ波レーダ本体部と、ミリ波を灯具前方に発信するアンテナ部とを備え、該アンテナ部は、前記光源と前記前面カバーとの間に設けられると共に、前記光源に対応して複数に分割された透過部を備え、前記光源から照射された光は、前記透過部を透過して灯具前方に照射されることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0008】
上記構成の車両用灯具によれば、ミリ波レーダのアンテナ部が光源と前面カバーとの間に設けられ、複数に分割された透過部を備えることで、省スペース化を図ることができる。また、ミリ波レーダ本体を正面から見えない位置に配置することができ、前面の見栄えを良好にすることができる。このとき、複数の光源から発せられる光は、透過部を通過して前方に向けて照射されるため、アンテナ部が光源から照射された光を遮ることはない。
【0009】
また、上記構成の車両用灯具において、前記ミリ波レーダのアンテナ部は、発信したミリ波を灯具前方に反射させる反射部を備え、該反射部が前記光源からの光を透過させる前記透過部を有していることが望ましい。
【0010】
このような構成の車両用灯具によれば、反射部の透過部を通過させて複数の光源からの光を前方に照射することができる。また、ミリ波レーダ本体部を灯室内の下部や側部等のスペース面で余裕のある場所に設置できるため、スペースの有効利用を図ることができる。
【0011】
また、上記構成の車両用灯具において、前記ミリ波レーダ本体部は、前記灯室内または前記ランプボディの外側に設置されていることが望ましい。
【0012】
このような構成の車両用灯具によれば、ミリ波レーダ本体部をスペース面で余裕のある灯室内またはランプボディの外側に設置することで、光源の発熱の影響を受け難い場所にミリ波レーダ本体部を設置することができる。これにより、ミリ波レーダ本体部への熱による障害を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用灯具によれば、スペース面での有効利用を図ることができると共に、意匠面で良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明の複数の好適な実施形態を説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1および図2は本発明に係る車両用灯具の第1実施形態を示すもので、図1は本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の水平断面図、図2は図1の車両用灯具に適用されるミリ波レーダのアンテナ部の正面図である。なお、説明中の前後左右は、車両の方向に順じており、図1中の左が車両の後方である。
【0016】
図1および図2に示すように、本発明の第1実施形態である車両用灯具10は、前方側が開口された形状で車体側に固定される樹脂製のランプボディ11と、ランプボディ11の前方開口部から取り付けられた無色、赤色、橙色等の透明樹脂製の前面カバー12とで区画された灯室13を形成している。この灯室13内に、複数の光源である発光素子(LED)14と、エクステンションリフレクタ15と、透過部材16と、ミリ波レーダ17とを備えるリアコンビネーションランプである。
【0017】
複数のLED14は、基板18上にそれぞれ実装されており、基板18がランプボディ11の後板19に取り付けられている。LED14は、通電によって前面カバー12に向けて発光光αを出射する。
【0018】
エクステンションリフレクタ15は、LED14と前面カバー12との間に組み付けられており、透過部材固定用の開口部20を有する。エクテンションリフレクタ15は、LED14の発光光αを前面カバー12に向けて効率よく反射させる。
【0019】
透過部材16は、例えば、無色、赤色、橙色等に着色された透明樹脂製の板部材であって、エクテンションリフレクタ15の開口部20に組み付けられている。透過部材16は、LED14の基板18に対してわずかに傾斜して配置されて、LED14の発光光αを透過させる。
【0020】
ミリ波レーダ17は、例えば、76GHz〜77GHzのミリ波を発信するとともに、ミリ波の反射波を受信するためのアンテナ部21を備えている。また、アンテナ部21から発信するミリ波およびアンテナ部21で受信した反射波を制御するミリ波レーダ本体部22を備えている。また、ミリ波レーダ17のアンテナ部21は、LED14と前面カバー12との間に配置されている。詳しくは、透過部材16の前面カバー12側に組み付けられており、リード部23がミリ波レーダ本体部22内に電気的に接続されている。
【0021】
アンテナ部21は、矩形のパターンを有する複数の分割された受発信部24がリード部23を通じて電気的に接続されている。また、複数の受発信部24および複数のリード部23の間に、予め定められた開口面積を有する複数の分割された透過部25が形成されている。また、アンテナ部21は、透過部材16上に貼り付けられているため、透過部材16に入射した発光光αは、透過部25を通過して前面カバー12に向けて進行する。
【0022】
ミリ波レーダ本体部22は、前面カバー12とLED14との間において、ランプボディ11の内板26の中央部に取り付けられている。このミリ波レーダ本体部22は、アンテナ部21から発信されてから、対象物で反射してきた反射波βをアンテナ部21で受信する。これにより、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数偏差などを演算処理等することで、対象物との距離や相対速度を測定し、自車の速度をアクティブに調整することができる。
【0023】
具体的には、不図示のコントロールユニットにより、アクセルの開度を調整したり、後続車に警告を発する制御信号等を発信して、後続車との車間距離を一定に保つようにする制御動作が行われる。なお、後進時も同様に後方の対象物との距離等を測定して、対象物との衝突を回避するための制御動作が行われる。
【0024】
このような車両用灯具10において、LED14の発光光αは、透過部材16を介してアンテナ部21の透過部25を通過して、前面カバー12から車両後方に向けて照射される。このとき、ミリ波レーダ本体部22が駆動されることで、アンテナ部21の透過部材16の前面からミリ波βを車両後方に向けて発信させることができる。
【0025】
以上説明したように、第1実施形態の車両用灯具10によれば、ミリ波レーダ17のミリ波レーダ本体部22が、前面カバー12とLED14との間で、ランプボディ11の内板26の中央部に取り付けられている。これにより、ミリ波レーダ本体部22を灯室13内のスペース面で余裕のある場所に設置でき、スペースの有効利用を図ることができる。
【0026】
また、アンテナ部21が、LED14と前面カバー12との間の透過部材16に取り付けられている。これにより、アンテナ部21とLED14とのスペース配分をし易くすることができる。また、ミリ波レーダ本体部22が、エクステンションリフレクタ15によって前方から見えない位置に設置できるので、前面からの見栄えを良好にすることができる。このとき、複数のLED14から出射される発光光αは、複数のLED14に対応してアンテナ部21上に分割された複数の透過部25を通過する。したがって、LED14の発光光αは、アンテナ部21で遮られることなく、前面カバー12から車両後方に向けて照射される。
【0027】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の車両用灯具に係る第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。なお、以下の各実施形態において、上述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0028】
図3に示すように、本発明の第2実施形態である車両用灯具30は、LED14と透過部材16との間に光集束用レンズ部材31を設置している。また、ミリ波レーダ本体部22が、ランプボディ11内の内板26後部に取り付けられている。この光集束用レンズ部材31は、LED14から出射された発光光αをアンテナ部21の透過部25に集束させて透過するように屈折させる。
【0029】
第2実施形態の車両用灯具30によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、LED14の発光光αが、アンテナ部21に衝突することがなくなって、前面カバー12に向けて効率よく照射することができる。
【0030】
また、ミリ波レーダ17のミリ波レーダ本体部22が、前面カバー12とLED14との間で、ランプボディ11の内板26の後方に取り付けられている。また、アンテナ部21が、LED14と前面カバー12との間の透過部材16に取り付けられている。これにより、アンテナ部21とLED14とのスペース配分をし易くすることができる。また、ミリ波レーダ本体部22が、エクステンションリフレクタ15によって前方から見えない位置に設置できるので、前面からの見栄えを良好にすることができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の車両用灯具に係る第3実施形態について説明する。図4は本発明の第3実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【0032】
図4に示すように、本発明の第3実施形態である車両用灯具40は、LED14と透過部材16との間に光集束用レンズ部材31を設置している。また、ミリ波レーダ本体部22が、ランプボディ11の後板19の内側で、基板18の外側に取り付けられている。これにより、ミリ波レーダ本体部22は、ランプボディ11の後板19内側で、外側のエクステンションリフレクタ15の後部に取り付けられ、前方から見えない位置に設置されている。
【0033】
第3実施形態の車両用灯具40によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、第2実施形態と同様に、LED14の発光光αが、アンテナ部21に衝突することなく前面カバー12に向けて効率よく照射することができる。
【0034】
また、ミリ波レーダ17のミリ波レーダ本体部22が、前面カバー12とLED14との間で、ランプボディ11の後板19内側のエクステンションリフレクタ15の後部に取り付けられている。また、アンテナ部21が、LED14と前面カバー12との間の透過部材16に取り付けられている。これにより、アンテナ部21とLED14とのスペース配分をし易くすることができる。また、ミリ波レーダ本体部22が、外側のエクステンションリフレクタ15の後部に取り付けられ、前方から見えない位置に設置されるので、前面からの見栄えを良好にすることができる。
【0035】
(第4実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の車両用灯具に係る第4実施形態について説明する。図5は本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【0036】
図5に示すように、本発明の第4実施形態である車両用灯具50は、ミリ波レーダ17が、ランプボディ11の後板19の前面側にミリ波を前方に反射する反射部51を備えている。また、ミリ波レーダ本体部22が、前面カバー12とLED14との間で、ランプボディ11の内板26の内側に遮蔽板52を介して取り付けられている。このミリ波レーダ本体部22の側部にアンテナ部21が配置されている。
【0037】
反射部51は、アンテナ部21から発信されたミリ波βを直角方向の前面カバー12へ向けて反射させる。また、前面カバー12を通過して戻ってきたミリ波βを直角方向のアンテナ部21へ向けて反射させる。なお、この反射部51は、エクステンションリフレクタ15に設けられていても良い。
【0038】
また、複数のLED14から出射された発光光αを透過させる透過開口部53が、反射部51に形成されており、透過開口部53に光集束用レンズ部材54が取り付けられている。
【0039】
このような車両用灯具50においては、LED14から出射された発光光αは、光集束用レンズ部材54を介して集束されて、前面カバー12を通過して車体後方に照射される。また、ミリ波レーダ17のアンテナ部21から発信されたミリ波βは、反射部51で直角方向へ反射されて、前面カバー12を通過して車体後方に進行される。そして、前面カバー12を通過して戻ってきたミリ波βは、反射部51で直角方向へ反射してアンテナ部21に受信される。
【0040】
第4実施形態の車両用灯具50によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、ミリ波を前方に反射する反射部51を後板19の前面側に設けるとともに、反射部51の複数の透過部開口53を通過して複数のLED14から出射された発光光αを透過させる。これにより、アンテナ部21と共にミリ波レーダ本体部22が、灯室13内の前面カバー12とLED14との間で、ランプボディ11の内板26の内側で、LED14の発光光αに影響を与えない位置に設置できる。したがって、LED14の発光光αを前面カバー12に向けて効率よく照射することができるとともに、前面からの見栄えを良好にすることができる。
【0041】
(第5実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の車両用灯具に係る第5実施形態について説明する。図6は本発明の第5実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【0042】
図6に示すように、本発明の第5実施形態である車両用灯具60は、ミリ波レーダ17が、ランプボディ11の後板19の前面側にミリ波を前方に反射する反射部51を備えている。また、ミリ波レーダ本体部22が、ランプボディ11とは別体に、ランプボディ11の外側に取り付けられている。また、ミリ波レーダ本体部22の側部に、アンテナ部21を備えている。ミリ波レーダ本体部22は、ランプボディ11とは別体のレーダケース61内に収容されており、レーダケース61の遮蔽板62を通過して受発信が行われる。
【0043】
このような車両用灯具60においては、LED14から出射された発光光αは、光集束用レンズ部材54を介して集束されて、前面カバー12を通過して車体後方に照射される。また、ミリ波レーダ17のアンテナ部21から発信されたミリ波βは、遮蔽板62を通過してから、灯室13内に入り、反射部51で直角方向へ反射して前面カバー12を通過して車体後方に進行される。そして、前面カバー12を通過して戻ってきたミリ波βは、反射部51で直角方向へ反射してから、灯室13の外側にあるアンテナ部21に受信される。
【0044】
第5実施形態の車両用灯具60によれば、第4実施形態の作用効果に加えて、LED14の発熱の影響を受け易い灯室13を避けて、ランプボディ11の外側にミリ波レーダ本体部22とアンテナ部21が設置されている。これにより、ミリ波レーダ本体22およびアンテナ部21への熱による障害を回避することができる。
【0045】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば、LEDの数は、図示したものに限定されることはなく、デザイン面や所望の光量に応じて適宜に設定することができる。また、光源として、図示したLEDに代えてバルブを適用することもできる。
【0047】
また、車両用灯具は、リアコンビネーションランプに代えてフロントコンビネーションランプ等に適用することもできることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【図2】図1の車両用灯具に適用されるミリ波レーダのアンテナ部の正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る車両用灯具の水平断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10,30,40,50,60 車両用灯具
11 ランプボディ
12 前面カバー
13 灯室
14 LED(光源)
21 アンテナ部
22 ミリ波レーダ本体部
25 透過部
51 反射部
53 透過開口部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方が開口したランプボディとその前方開口部に取り付けられた透明な前面カバーとで形成された灯室内に複数の光源を備え、ミリ波を発信するミリ波レーダを備えた車両用灯具であって、
前記ミリ波レーダは、少なくともミリ波の発信を制御するミリ波レーダ本体部と、ミリ波を灯具前方に発信するアンテナ部とを備え、
該アンテナ部は、前記光源と前記前面カバーとの間に設けられると共に、前記光源に対応して複数に分割された透過部を備え、前記光源から照射された光は、前記透過部を透過して灯具前方に照射されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ミリ波レーダのアンテナ部は、発信したミリ波を灯具前方に反射させる反射部を備え、該反射部が前記光源からの光を透過させる前記透過部を有していることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ミリ波レーダ本体部は、前記灯室内または前記ランプボディの外側に設置されていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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