説明

車両用灯具

【課題】導光体の後面側からの抜け光を導光体内に戻して、照射方向に確実に配光制御することで、光源の光を効率良く出射することができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10の導光体20は、LED光源17の光α2を導光部22の前面23側から車両正面の照射方向27へ向けて内面反射させる第1拡散ステップ24を有している。第1拡散ステップ24の単体は、出射光α1が入射する入射面である第1ステップ面25と、出射光α1が出射する出射面26とから構成されている。反射部材30は、導光体20の後面近傍で一定の間隔28を保って配置され、出射光α1を導光体20の第1拡散ステップ24へ向けて反射する第2拡散ステップ31を前面に有し、出射光α1を反射する反射面である第2ステップ面32を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用灯具に関し、特にLED光源の光を近傍に配置した導光体に入射させ、該導光体から照射方向に向けて出射させる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具一例として、ランプボディと前面カバーで画成された灯室内に、前面カバーに沿って配置された帯状の導光体と、該導光体の近傍に配置されたLED光源とにより所定配光を形成する車両用灯具が知られている。導光体は、後面側に拡散ステップを有する反射面を備えており、LED光源からの入射光を拡散ステップで反射させて、前面側の出射面から照射方向に出射させている。
【0003】
しかし、前記導光体は、前面カバーの形状や配光パターンにより様々な湾曲形状をしており、湾曲率が大きくなると拡散ステップで反射せずに、後面側に漏れ出てしまう、所謂、抜け光が発生していた。この抜け光を防止するために、導光体の後面側近傍に反射部材を配置して、拡散ステップから後面側に漏れ出た抜け光を反射部材で拡散反射させて導光体内に戻すようにしている車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−109654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記車両用灯具において、導光体の後面側近傍に反射部材を配置しただけでは、導光体内から一度漏れ出た抜け光を導光体内に戻して、所定方向に配光制御するのは難しかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、導光体の後面側からの抜け光を導光体内に戻して、照射方向に確実に配光制御することで、光源の光を効率良く出射することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、光源と、該光源の光軸方向に沿って配置され、前記光源の近傍に入射部を有し、該入射部から入った入射光を導光する導光部と、該導光部の後面に形成され、前記入射光を前記導光部の前面から照射方向へ向けて内面反射する第1ステップと、を有する導光体と、該導光体の後面近傍で且つ前記導光部に沿って配置され、前記導光部の後面から後方に出射された出射光を、前記導光体の前記第1ステップへ向けて反射する第2ステップを前面に有する反射部材と、を備えることを特徴とする車両用灯具により達成される。
【0008】
上記構成の車両用灯具によれば、後面に第1ステップを有する導光体と、該導光体の後面側近傍に配置され、前面に第2ステップを有する反射部材とを備えているので、導光体の後面側から漏れた抜け光を反射部材の第2ステップで反射させて、第1ステップから再び導光体内に確実に戻すことができる。これにより、導光体の前面から効率良く出射させることができると共に、照射方向へ向けて精度良く配光制御することができる。
【0009】
また、上記構成の車両用灯具において、前記反射部材の形状は、前記導光体の長手方向の形状に対応した形状であることが望ましい。
【0010】
このような構成の車両用灯具によれば、反射部材の形状が導光体の長手方向の形状に対応しているので、例えば、導光体が湾曲状の曲線形状であれば、反射部材も同じ湾曲状の曲線形状となり、導光体と反射部材との間隔を一定に保つことができる。これにより、導光体が曲線形状であっても高精度な配光制御が可能である。また、灯具意匠に対応させて反射部材を配置できるので、見栄えの良好な車両用灯具を得ることができる。
【0011】
また、上記構成の車両用灯具において、前記第1ステップおよび前記第2ステップは、複数の三角状ステップから成り、前記第2ステップ側の反射面の傾斜角度は、前記第1ステップ側の対応する出射面から前記反射部材へ向けて出射される出射光の出射角度と、前記反射部材からの反射光が前記第1ステップ側の入射面に入射する入射角度と、によって決定されることが望ましい。
【0012】
このような構成の車両用灯具によれば、導光体から反射部材へ向けて出射される出射光の出射角度と、反射部材から導光体に入射される入射角度と、によって反射部材の反射面の傾斜角度が決まる。
具体的には、導光体側で設定する入射角度の反射光と、想定される出射角度の出射光との仮想交点に形成される交点角度の二等分線と直交する垂直線が反射面の傾斜角度となる。これにより、一層高精度な配光制御が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用灯具によれば、導光体の後面近傍で且つ導光体に沿って配置された反射部材が、該導光体の後面から後方に出射された出射光を導光体の第1ステップへ向けて反射する第2ステップを前面に有している。これにより、導光体の後面側からの抜け光を導光体内に戻して、照射方向に確実に配光制御することで、光源の光を効率良く出射することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る一実施形態を示す車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3の要部拡大図であり、反射部材の反射面の傾斜角度を決める手順を示す説明図である。
【図5】本発明に係る別の実施形態を示す車両用灯具の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用灯具の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態である車両用灯具10は、車両後方側が開口された形状で車体側に固定される樹脂製のランプボディ11と、ランプボディ11の開口部に取り付けられた赤色透明や無色透明の前面カバー12とを備えているポジションランプやテールアンドストップランプ等の標識灯に適したものである。
【0017】
車両用灯具10は、ランプボディ11と前面カバー12とで画成された灯室13内に、中心部に配置されたバルブ14とリフレクタ15により、例えばストップランプ配光を形成している。また、前面カバー12に沿って正面視でコ字状に配置された帯状の3個の導光体20と、該導光体20の両端後面側の近傍に取付けられた固定部材16に配置された4個のLED光源17とを備えている。このLED光源17と導光体20により、例えばテールランプ配光を形成している。また、ランプボディ11の開口部周辺には、エクステンション18が配置されている。
【0018】
導光体20の後面側の近傍には、所定間隔を保って反射部材30が配置されている。この反射部材30の形状は、湾曲した導光体20の長手方向の形状に対応して湾曲した形状である。また、反射部材30の材質としては、アルミニウム材の一体成形品であるが、ポリマー材等からなる基板上にアルミニウム蒸着膜等を形成しても良い。
【0019】
図3に示すように、導光体20は、LED光源17の近傍に一端側の入射面21が配置され、前面カバー12に沿って他端方向に湾曲した導光部22と、この導光部22の後面側に配置され、LED光源17の光α2を導光部22の前面23側から車両正面の照射方向27へ向けて内面反射させる三角状の第1拡散ステップ24と、を有している。この第1拡散ステップ24の単体は、出射光α1が入射する入射面である第1ステップ面25と、出射光α1が出射する出射面26とから構成されている。
【0020】
反射部材30は、導光体20の後面近傍で且つ湾曲した導光部22の形状に対応して沿うように一定の間隔28を保って配置され、導光部22の後面から後方に出射された出射光α1を、導光体20の第1拡散ステップ24へ向けて反射する三角状の第2拡散ステップ31を前面に有している。この第2拡散ステップ31は、出射光α1を反射する反射面である第2ステップ面32を有している。第2拡散ステップ31のピッチは、第1拡散ステップ24のピッチに対して、0.5〜2倍の範囲で設定される。また、導光体20と反射部材30との間隔28は、例えば、1mm〜7mm程度が望ましい。
【0021】
入射面21から入射したLED光源17の光α0は、前面23で全反射して他端方向に向って導光される。また、LED光源17の光α1は、第1拡散ステップ24の出射面26から出射され、反射部材30側の第2拡散ステップ31の第2ステップ面32で導光部22方向に全反射する。そして、第1拡散ステップ24の第1ステップ面25から入射して、隣接する出射面26で内面反射してから、車両正面の照射方向27へ向けて出射光α2として前面23から出射される。
【0022】
次に、反射部材30の第2ステップ面32の傾斜角度を決める手順を図4に基づいて説明する。
【0023】
図4に示すように、第2拡散ステップ31側の反射面である第2ステップ面32の傾斜角度θ2は、出射光α3の出射角度β1と、反射光α1の入射角度β2から決定される。出射光α3の出射角度β1は、導光体20の入射面21から入射されて導光部22内を導光され、前面23で内面反射して、出射面26(図中C点)から反射部材30へ向けて出射される、所謂、抜け光の出射角度である。
【0024】
反射光α1の入射角度β2は、導光体20の出射面26から出射され、反射部材30の第2ステップ面32で反射された反射光α1が第1拡散ステップ24側の入射面である第1ステップ面25(図中B点)に入射する入射角度である。なお、出射角度β1、入射角度β2および傾斜角度θ2の基準線は、導光体20の前面23である。
【0025】
具体的には、導光体20側の設定する入射角度β2の反射光α1と、想定される出射角度β1の出射光α3をD点まで平行移動した仮想線33との仮想交点に形成される交点角度2θ1の二等分線34と直交する垂直線が反射面である第2ステップ面32の傾斜角度θ2となる。これにより、反射部材30からの反射光α1を車両正面の照射方向27へ向けて出射光α2として前面23から出射することができ、高精度な配光制御が実現できる。
【0026】
上述した本実施形態の車両用灯具10によれば、後面に第1拡散ステップ24を有する導光体20と、導光体20の後面側近傍に配置され、前面に第2拡散ステップ31を有する反射部材30とを備えている。これにより、導光体20の後面側から漏れた抜け光α1を反射部材30の第2拡散ステップ31で反射させて、第1拡散ステップ24から再び導光体20内に戻すことができる。よって、導光体20の前面23から効率良く出射させることができると共に、車両正面の照射方向27へ向けて精度良く配光制御することができる。
【0027】
また、反射部材30の形状が導光体20の長手方向の形状に対応しているので、例えば、導光体20が湾曲状の曲線形状であれば、反射部材30も同じ曲線形状となり、導光体20と反射部材30との間隔28を一定に保つことができる。これにより、導光体20が曲線形状であっても高精度な配光制御が可能である。また、灯具意匠に対応させて反射部材30を配置できるので、見栄えの良好な車両用灯具を得ることができる。
【0028】
また、導光体20から反射部材30へ向けて出射される出射光α3の出射角度β1と、反射部材30から導光体20に入射される入射角度β2とによって反射部材30の反射面である第2ステップ面32の傾斜角度θ2を決定することができる。これにより、一層高精度な配光制御が可能となる。
【0029】
次に、本発明に係る車両用灯具の別の実施形態を図5に基づいて説明する。本実施形態は、導光体の構成は上記実施形態と同じであるが、反射部材の構成が異なっている。なお、上記実施形態と同一又は類似構成の部分については、同一符号又は類似符号を付すことで構成及び作用効果の説明は省略する。
【0030】
図5に示すように、本実施形態である車両用灯具の反射部材40は、第2拡散ステップ41の第2ステップ面42が上記反射部材30の第2ステップ面32の傾斜角度θ2と異なり、傾斜角度が逆方向に形成されている。即ち、導光体20の照射方向が車両正面方向ではなく、例えば、ライトベゼル等の前照灯枠材に適用して、歩道側へ照射する視認角方向となる。なお、反射部材40の第2ステップ面42の傾斜角度を決める方法は、上記実施形態の手順と同じである。
【0031】
本実施形態の反射部材40によれば、入射面21から入射したLED光源17の光α0は、前面23で全反射して他端方向に向って導光される。また、LED光源17の光α1は、第1拡散ステップ24の出射面26から出射され、反射部材40側の第2拡散ステップ41の第2ステップ面42で導光部22方向に全反射する。そして、第1拡散ステップ24の第1ステップ面25から入射して、隣接する出射面26で内面反射してから、車両正面方向とは異なる視認角方向である照射方向29へ向けて出射光α2として前面23から出射される。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0033】
10…車両用灯具
11…ランプボディ
12…前面カバー
17…LED光源
18…エクステンション
20…導光体
21…入射面
22…導光部
23…前面
24…第1拡散ステップ
25…第1ステップ面(入射面)
26…出射面
27…照射方向(車両正面)
28…間隔
29…照射方向(視認角)
30、40…反射部材
31、41…第2拡散ステップ
32、42…第2ステップ面(反射面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
該光源の光軸方向に沿って配置され、前記光源の近傍に入射部を有し、該入射部から入った入射光を導光する導光部と、該導光部の後面に形成され、前記入射光を前記導光部の前面から照射方向へ向けて内面反射する第1ステップと、を有する導光体と、
該導光体の後面近傍で且つ前記導光部に沿って配置され、前記導光部の後面から後方に出射された出射光を、前記導光体の前記第1ステップへ向けて反射する第2ステップを前面に有する反射部材と、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記反射部材の形状は、前記導光体の長手方向の形状に対応した形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1ステップおよび前記第2ステップは、複数の三角状ステップから成り、
前記第2ステップ側の反射面の傾斜角度は、前記第1ステップ側の対応する出射面から前記反射部材へ向けて出射される出射光の出射角度と、
前記反射部材からの反射光が前記第1ステップ側の入射面に入射する入射角度と、によって決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−198537(P2011−198537A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62144(P2010−62144)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】