説明

車両用灯具

【課題】ネジを用いることなくフック構造のみでレンズに高いシールを確保することによってコストダウンを図ることができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジング2とその開口部周縁にフック構造によって係脱可能に取り付けられたターンレンズ4によって画成される灯室内に少なくともターンバルブ(光源)を収容して成る車両用灯具において、前記フック構造を、前記ターンレンズ4を横方向にスライドさせて該ターンレンズ4の前記ハウジング2との係合を解除した後に当該タターンレンズ4を横方向に対して直角方向に取り外し可能に構成するとともに、該フック構造を前記ターンレンズ4の上下にそれぞれ配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとその開口部周縁にフック構造によって着脱可能に取り付けられたレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車のリヤコンビネーションランプにおいては、バルブの交換を行うことができるようにレンズをフック構造によってハウジングに着脱可能に取り付ける構造が採用されている。ここで、自動二輪車のリヤコンビネーションランプにおけるレンズのフック構造による取付構造の従来例を図4〜図7に基づいて以下に説明する。
【0003】
即ち、図4はリヤコンビネーションランプの正面図、図5は同リヤコンビネーションランプの側面図、図6は図5のB部拡大詳細図、図7(a),(b)は図6のC−C線断面図である。
【0004】
図4及び図5に示すリヤコンビネーションランプ101は、ハウジング102と該ハウジング102の車両後方に開口する開口部を覆う車幅方向中央のテールレンズ103とその左右のターンレンズ104によって画成された不図示の灯室内に光源である1個のテールバルブと左右2個のターンバルブを収容して構成されている。ここで、中央のテールレンズ103は、4本のネジ105によってハウジング102に着脱可能に締結されており、左右の各ターンレンズ104は、テールレンズ103側の内端縁がテールレンズ103によってハウジング102との間に挟み込まれ、外端縁の1箇所がフック構造によって係止されることによってハウジング102に着脱可能に取り付けられている。
【0005】
ここで、左右の各ターンレンズ104をハウジング102に係止するためのフック構造の詳細を図6及び図7に示すが、このフック構造は、ターンレンズ104の外端縁の1箇所に形成された係合爪104aと、ハウジング102の左右の各側端に形成された矩形の係合孔102aによって構成されており、ターンレンズ104の係合爪104aをハウジング102の係合孔102aに係合させることによってターンレンズ104の外端縁の1箇所がハウジング102に係止されて固定される。
【0006】
而して,左右のターンバルブの何れか一方が切れたためにこれを交換する必要がある場合には、ネジ105を回して中央のテールレンズ103をハウジング102から取り外した後、一方のターンレンズ104を横方向(図6の紙面垂直方向奥側(図7(b)の矢印a方向))にスライドさせる。すると、ターンレンズ104の係合爪104aとハウジング102の係合孔102aとの係合が外れるため、ターンレンズ104を横方向に対して直角の手前側(図6及び図7(b)の矢印b方向)に取り外すことができる。
【0007】
ところで、フック構造によるレンズのハウジングへの固定に関して、特許文献1にはフック構造を周囲シール部の近傍に配置した構成が提案され、特許文献2には分解可能なレンズのフック固定構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−165244号公報
【特許文献2】特開2001−312907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図5〜図7に示すフック構造はターンレンズ104を横方向にスライドさせて係合爪104aの係合孔102aとの係合を解除する構成となっており、ターンレンズ104の上下方向の移動が規制されているため、該フック構造はターンレンズ104の外端縁に設置位置が限定されるという問題があった。即ち、フック構造をターンレンズ104の上下2箇所に設けた場合には、ターンレンズ104は横方向と上下方向の移動が阻止されるため、該ターンレンズ104をハウジング102から取り外すことができない。
【0010】
上述のように、図5〜図7に示すフック構造はターンレンズ104の外端縁に設置位置が限定されるため、このフック構造のみではターンレンズ104のシール性が不十分である場合には、ターンレンズ104の上部又は下部をネジによってハウジング102に固定する必要があり、部品点数と組付工数が増大してコストアップを招くという問題があった。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ネジを用いることなくフック構造のみでレンズに高いシールを確保することによってコストダウンを図ることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、ハウジングとその開口部周縁にフック構造によって係脱可能に取り付けられたレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具において、前記フック構造を、前記レンズを横方向にスライドさせて該レンズの前記ハウジングとの係合を解除した後に当該レンズを横方向に対して直角方向に取り外し可能に構成するとともに、該フック構造を前記レンズの上下にそれぞれ配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レンズの上下に配置されたフック構造は、レンズの横方向へのスライドを許容し、該レンズを横方向にスライドさせて該レンズのハウジングとの係合を解除した後に該レンズを横方向に対して直角方向に取り外し可能とするため、レンズの上下がフック構造によってハウジングに固定される。このため、レンズに高いシール性を確保するためにネジを用いてレンズの上又は下をハウジングに固定する必要がなく、レンズに高いシール性を確保しつつ、部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る車両用灯具の正面図である。
【図2】本発明に係る車両用灯具の側面図である。
【図3】(a),(b)は図1のA部拡大詳細図である。
【図4】従来の車両用灯具の正面図である。
【図5】従来の車両用灯具の側面図である。
【図6】図5のB部拡大詳細図である。
【図7】(a),(b)は図6のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係る車両用灯具の正面図、図2は同車両用灯具の側面図、図3(a),(b)は図1のA部拡大詳細図である。
【0017】
図1及び図2に示す車両用灯具1は、自動二輪車の後部に配置されるリヤコンビネーションランプであって、このリヤコンビネーションランプ1は、車幅方向(図1の左右方向)中央に配置される1つのテールランプと、その左右に配置される2つのターンランプを備えるものである。具体的には、リヤコンビネーションランプ1は、光不透過性樹脂にて一体成形されたハウジング2と該ハウジング2の車両後方に開口する開口部を覆う車幅方向中央のテールレンズ3とその左右のターンレンズ4によって画成された不図示の灯室内に光源である不図示の1個のテールバルブと左右2個の不図示のターンバルブを収容して構成されている。
【0018】
ここで、中央のテールレンズ3と左右のターンレンズ4は光透過性の樹脂によって一体成形されており、中央のテールレンズ3は、4本のネジ5によってハウジング2に着脱可能に締結されている。又、左右の各ターンレンズ4は、テールレンズ3側の内端縁がテールレンズ3によってハウジング2との間に挟み込まれ、上下の2箇所(図2のP1点とP2点)がフック構造によって係止されることによってハウジング2に着脱可能に取り付けられている。
【0019】
ここで、左右の各ターンレンズ4の上下をハウジング2に係止するためのフック構造の詳細を図3に示す。尚、図3にはターンレンズ4の下の点P2に設けられるフック構造を示すが、このフック構造と上の点P1に設けられるフック構造の構成は同じであるため、以下、下側のフック構造についてのみ説明する。
【0020】
フック構造は、ターンレンズ4の下端縁の1箇所(点P1)に形成された突起状の係合爪4aと、ハウジング2の開口部の下端縁の1箇所に形成されたアーチ2Aの一部に形成された係合段部2aによって形成されており、ターンレンズ4がハウジング2に取り付けられている状態では、図3(a)に示すように、ターンレンズ4の係合爪4aはハウジング2のアーチ2Aに形成された係合段部2aに係合している。ここで、ハウジング2に形成されたアーチ2Aは、ターンレンズ4の係合爪4aの横方向(図3(b)の矢印a方向)のスライドを許容する空間を備えており、係合爪4aがハウジング2のアーチ2A内を移動し得る範囲でターンレンズ4はハウジング2に対して横方向にスライドすることができる。
【0021】
而して,左右のターンバルブの何れか一方が切れたためにこれを交換する必要がある場合には、ネジ5を回して中央のテールレンズ3をハウジング2から取り外した後、一方のターンレンズ4を横方向(図3(b)の矢印a方向))にスライドさせる。すると、図3(b)に示すようにターンレンズ4の係合爪4aとハウジング2の係合段部2aとの係合が解除されるため、ターンレンズ4を横方向に対して直角の手前側(図1の紙面垂直方向手前側(図3(b)の矢印b方向))に取り外すことができる。
【0022】
上述のようにして一方のターンレンズ4が取り外されると、切れたターンバルブを新しいものと交換することができ、ターンバルブが交換された後は、前記とは逆の手順でターンレンズ4がハウジング2に係止されて固定される。即ち、ターンレンズ4を係合爪4aとハウジング2の係合段部2aとがずれた状態でハウジング2側(図1の紙面垂直方向奥側)に押し込み、図3(b)に示す状態からターンレンズ4を横方向に沿ってに逆向き(図3(b)の矢印aとは逆方向)にスライドさせる。すると、図3(a)に示すように、ターンレンズ4の係合爪4aがハウジング2の係合段部2aに係合するため、ターンレンズ4がハウジング2に係止されて固定される。
【0023】
そして、最後に中央のテールレンズ3をハウジング2の開口部に被せて4本にネジ5を締め付け、該テールレンズ3をハウジング2に取り付けることによって、ターンバルブの交換作業が完了する。
【0024】
而して、本実施の形態に係るリヤコンビネーションランプ1においては、ターンレンズ4の上下に配置されたフック構造は、ターンレンズ4の横方向へのスライドを許容し、該ターンレンズ4を横方向にスライドさせて該ターンレンズ4のハウジング2の係合段部2aとの係合を解除した後に該ターンレンズ4を横方向に対して直角方向に取り外し可能とするため、ターンレンズ4の上下がフック構造によってハウジング2に固定される。このため、ターンレンズ4に高いシール性を確保するためにネジを用いてターンレンズ4の上又は下をハウジング2に固定する必要がなく、ターンレンズ4に高いシール性を確保しつつ、部品点数と組付工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0025】
尚、以上は本発明を自動二輪車用のリヤコンビネーションランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、レンズをフック構造によってハウジングに着脱可能に取り付ける構成を採用する他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 リヤコンビネーションランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
2A ハウジングのアーチ
2a ハウジングの係合爪
3 テールレンズ
4 ターンレンズ
4a ターンレンズの係合爪
5 ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部周縁にフック構造によって着脱可能に取り付けられたレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具において、
前記フック構造を、前記レンズを横方向にスライドさせて該レンズの前記ハウジングとの係合を解除した後に当該レンズを横方向に対して直角方向に取り外し可能に構成するとともに、該フック構造を前記レンズの上下にそれぞれ配置したことを特徴とする車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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