説明

車両用灯具

【課題】車両用灯具を構成するハウジングのレンズ取付溝と該レンズ取付溝に挿入されたレンズのレンズ脚部を、予めレンズ取付溝内に充填された接着剤とレンズ取付溝を貫通する貫通部材とにより気密に封止固定する機構(気密封止機構)において、両者間の気密性を確実に確保しながら簡易的な方法によって低コストで組み付けることが可能な気密封止機構を実現することにある。
【解決手段】予め接着剤9が充填された、ハウジング1のレンズ取付溝3内に、両側に夫々所定の間隔で設けられた第1のリブ6及び第2のリブ8を備えた、レンズ4のレンズ脚部4aを挿入して接着剤9に浸漬し、レンズ取付溝3を構成する外側壁10からレンズ脚部4aを貫通して内側壁11に至るステープル12を所定の間隔で複数個打ち込んだ構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものであり、詳しくは、車両用灯具を構成するハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用灯具として図11に示す構成のものが開示されている。それは、ハウジング80の開口端部にレンズ取付溝81が設けられていると共に、レンズ82の開口端部には前記レンズ取付溝81内に挿入可能なレンズ脚部83が設けられている。
【0003】
そして、予めシール材84が充填されたハウジング80のレンズ取付溝81内にレンズ脚部83を挿入してシール材84内に浸漬させ、これによりレンズ脚部83がシール材84を介してレンズ取付溝81に係合されている。
【0004】
更に、レンズ脚部83とレンズ取付溝81との係合部には、レンズ取付溝81の外壁85からレンズ脚部83を貫通してレンズ取付溝81の内壁86に至るストレート針87が打ち込まれており、これにより、レンズ脚部83とレンズ取付溝81がストレート針87を介して機械的に締結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−207635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記構成の車両用灯具において、ストレート針をレンズ脚部とレンズ取付溝との係合部に打ち込む方法として、ストレート針を直接打ち込む方法と、加熱した長尺線材を圧入して圧入した部分を切断することにより針部材とする方法(特開平1−238902号公報に開示)が考えられる。
【0007】
そのうち、ストレート針87を直接打ち込む方法は、打ち込み時の衝撃によってレンズ脚部83に打ち込み方向に向かう力が加わり、レンズ脚部83に移動変位が生じる。すると、レンズ脚部83の両面側に位置するシール材84にもレンズ脚部83の移動変位による力が加わり変位が生じる。その結果、レンズ脚部83とシール材84との界面で剥離を生じ、両者間の気密性が損なわれる恐れがある。
【0008】
一方、加熱した長尺線材を圧入する方法は、大掛かりな装置を必要とし、製造コストのコストアップに繋がる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、車両用灯具を構成するハウジングのレンズ取付溝と該レンズ取付溝に挿入されたレンズのレンズ脚部を、予めレンズ取付溝内に充填されたシール材(接着剤)により気密に封止固定する機構(気密封止機構)において、両者間の気密性を確実に確保しながら簡易的な方法によって低コストで組み付けることが可能な気密封止機構を実現することにある。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、ハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具であって、前記ハウジングには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び深さを有するレンズ取付溝が形成され、前記レンズには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び長さを有するレンズ脚部が形成されると共に、前記レンズ脚部には外面側と内面側の夫々に所定の幅及び所定の高さで前記レンズの前面側から開口端部側に延びる第1のリブと第2のリブが夫々前記環状方向所定の間隔で形成され、前記レンズ取付溝に前記レンズ脚部が挿入されて前記レンズ取付溝に充填された接着剤に前記レンズ脚部の少なくとも一部が浸漬され、前記レンズ取付溝の外側壁から、前記接着剤、前記レンズ脚部及び前記接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材が環状方向に所定の間隔で打ち込まれていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記レンズ脚部と前記内側壁との間に位置する前記第2のリブと、前記打込部材との距離は3mm以下であり、前記レンズ脚部と前記外側壁との間に位置する前記第1のリブと、前記打込部材との距離は10mm以下であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、ハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具であって、前記ハウジングには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び深さを有するレンズ取付溝が形成され、前記レンズには、3又に分岐し夫々が所定の幅及び長さを有すると共に互いに所定の間隔を保って並設された3又のレンズ脚部が、環状の開口端部に該開口端部に沿って形成され、前記レンズ取付溝の外側壁及び内側壁が前記3又のレンズ脚部のうち両外側に位置するレンズ脚部に覆うように被嵌されると共に、中側に位置するレンズ脚部が前記レンズ取付溝に挿入されて前記レンズ取付溝に充填された接着剤に少なくともその一部が浸漬され、前記レンズ取付溝の外側壁から、前記接着剤、前記レンズ脚部及び前記接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材が環状方向に所定の間隔で打ち込まれていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、ハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具であって、前記ハウジングには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び深さを有するレンズ取付溝が形成され、前記レンズには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び長さを有するレンズ脚部が形成され、前記レンズ取付溝に前記レンズ脚部が挿入されると共に、前記レンズ取付溝の内側壁と前記レンズ脚部との間にエクステンテンションの延設された端部が挿入されて前記レンズ取付溝に充填された接着剤に前記レンズ脚部の少なくとも一部が浸漬され、前記レンズ取付溝の外側壁から、前記接着剤、前記レンズ脚部及び前記接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材が環状方向に所定の間隔で打ち込まれていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項5に記載された発明は、請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、前記打込部材は、線材を加工して略コ字状又は直線状としたものであり、前記打込部材が略コ字状の場合は一対の針状先端部を前記ハウジングの開口端部に或いは前記レンズの開口端部に沿った環状方向に略平行に位置させて打ち込まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用灯具は、ハウジングとレンズとによる気密封止機構を、予め接着剤が充填された、ハウジングのレンズ取付溝内に両面側の夫々に所定の間隔で第1のリブと第2のリブとが設けられた、レンズのレンズ脚部を挿入して位置決めをすると共に、レンズ取付溝の外側壁から接着剤、レンズ脚部及び接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材を所定の位置に打ち込む構成とした。
【0016】
これにより、打込部材の打ち込みによる衝撃力がレンズ脚部に加わっても、該レンズ脚部の両面側の夫々に設けられた第1のリブ及び第2のリブによってレンズ脚部がレンズ取付溝の内側壁方向及び外側壁方向のいずれの方向にも移動変位するのが抑制される。
【0017】
その結果、硬化中の接着剤が、レンズ脚部の両面の夫々との界面で剥離するのが防止され、気密性の高い封止機構となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる実施形態を構成するハウジングの開口端部の縦断面図である。
【図2】同じく、実施形態を構成するレンズの開口端部の縦断面図である。
【図3】実施形態の気密封止機構の縦断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図3のB矢視図である。
【図6】本発明の車両用灯具の上面図である。
【図7】他の実施形態の気密封止機構の縦断面図である。
【図8】図6のC矢視図である。
【図9】他の実施形態の気密封止機構の縦断面図である。
【図10】図8のD矢視図である。
【図11】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図10を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0020】
図1は本発明の車両灯灯具に係わる実施形態を構成するハウジングの開口端部の縦断面図であり、図2は同じく、実施形態を構成するレンズの開口端部の縦断面図であり、図3はハウジングの開口端部とレンズの開口端部とによる気密封止機構の縦断面図であり、図4は図3のA−A線に沿う断面図であり、図5は図3のB矢視図であり、図6は車両用灯具の上面図である。
【0021】
ハウジング1は図1のように、環状の開口端部2に従来のハウジングと同様に該開口端部2に沿って環状に所定の幅(w1)及び深さを有するレンズ取付溝3が設けられている。一方、レンズ4は図2のように、環状の開口端部5に従来のレンズと同様に該開口端部5に沿って前記レンズ取付溝3内に挿入可能な所定の幅(w2)及び長さを有するレンズ脚部4aが環状に設けられていると共に、レンズ脚部4aには該レンズ脚部4aの側面から立ち上がって側方に延びるストッパ部4bが環状に設けられている。
【0022】
更に、レンズ4の開口端部5には、レンズ脚部4aの一方の側(外側)に、前記ストッパ部4bの側面からレンズ脚部4aに沿って該レンズ脚部4aの先端部の方向に延びる、所定の幅及びレンズ脚部4aからの所定の高さ(h1)を有する第1のリブ6が環状方向の所定の位置に設けられている。
【0023】
それと同時に、レンズ脚部4aの他方の側(内側)には、レンズ4の前面部7からレンズ脚部4aに沿って該レンズ脚部4aの先端部の方向に延びる、所定の幅及びレンズ脚部4aからの所定の高さを(h2)有する第2のリブ8が環状方向の所定の位置に設けられている。
【0024】
この場合、レンズ取付溝3の幅(w1)と、レンズ脚部4aの幅(w2)と、第1のリブ6の高さ(h1)と、第2のリブ8の高さ(h2)とは、w1≒h1+W2+h2の関係にあることが好ましい。また、h1とh2とは、h1≒h2の関係にあることが好ましい。
【0025】
これにより、図3及び図4に示すように、ハウジング1とレンズ4との気密封止機構において、ハウジング1のレンズ取付溝3内に接着剤9(例えば、2液型シリコーン系接着材、2液型ウレタン系接着剤、1液型シリコーン系接着剤)を充填し、該接着剤9が硬化する前に、両側に第1のリブ6と第2のリブ8が設けられたレンズ脚部4aをレンズ取付溝3内に挿入する。
【0026】
すると、レンズ取付溝3の幅方向に対するレンズ脚部4aの位置決めが、上記幅(w2)のレンズ脚部4aと、高さ(h1)の第1のリブ6と、高さ(h2)の第2のリブ8とで確実になされる。つまり、第1のリブ6の頂点がレンズ取付溝3の外側壁10の内面に当接した状態にあり、第2のリブ8の頂点がレンズ取付溝3の内側壁11の内面に当接した状態にある。また、レンズ取付溝3の深さ方向に対するレンズ脚部4aの位置決めが、レンズ取付溝3の外側壁10の先端面10aにレンズ脚部4aのストッパ部4bが当接することにより確実になされる。
【0027】
但し、この状態では、レンズ取付溝3に対するレンズ脚部4aの位置決めは一時的にはなされるが互いの仮固定状態は保持されておらず、このままでは、レンズ脚部4aが硬化時の接着剤9の浮力によって浮き上がってしまい、レンズ取付溝3の深さ方向の位置決めが不確実状態で接着剤9が固化してしまうことになる。
【0028】
そこで、レンズ脚部4aがレンズ取付溝3の所定の位置に挿入された時点で、レンズ取付溝3の外側壁10から接着剤9、レンズ脚部4a及び接着剤9を順次貫通して内側壁11に至るステープル12を環状方向の所定の位置に複数箇所打ち込む。これにより、レンズ脚部4aがレンズ取付溝3の所定の位置に挿入されて位置決めされた状態で仮固定され、硬化された接着剤9によってレンズ脚部4aがレンズ取付溝3の所定の位置に固定されて互いに気密に封止される。
【0029】
ステープル12は、例えば、線材を加工して略コ字状に形成したものが用いられ、一対の針状先端部をハウジング1の開口端部2或いはレンズ4の開口端部5に沿った環状方向に略平行に位置させて打ち込まれる(図5参照)。但し、ステープル12の形状は略コ字形状に限られるものではなく、例えば、単純な直線状のものでもよい。
【0030】
このとき、ステープル12の打ち込みの際に、レンズ脚部4aが打ち込みの衝撃で打ち込み方向に向かう力、つまりレンズ取付溝3の内側壁11に向かう力を受けるが、レンズ脚部4aと前記内側壁11との間に位置する第2のリブ8によりレンズ脚部4aの内側壁11側への動きを抑制する。
【0031】
それと同時に、レンズ脚部4aが受けるステープル12の打ち込み時の衝撃は、ステープル12の打ち込み方向のみではなく、その逆方向、つまりレンズ取付溝3の外側壁10方向にも働く。この衝撃力によるレンズ脚部4aの外側壁10側への動きは、レンズ脚部4aと前記外側壁10との間に位置する第1のリブ6により抑制される。
【0032】
そこで、第1のリブ6と、第2のリブ8と、ステープル12との環状方向の位置関係は図4に示すように、ステープル12の位置に対してレンズ脚部4aの前記ステープルを打ち込む方向、つまり内側に設けられた第2のリブ8までの距離Aは、3mm以下であることが好ましい。距離Aが5mm以上となると、ステープル12の打ち込み時にレンズ脚部4aがレンズ取付溝3の内側壁11側に移動変位して、第2のリブ8を設けた目的の移動変位の抑制効果が薄れることになる。
【0033】
これに対し、ステープル12の位置に対して、レンズ脚部4aの前記ステープルを打ち込む方向と反対方向、つまり外側に設けられた第1のリブ6までの距離Bは、距離Aよりも長くても移動変位の抑制効果が得られ、少なくとも10mm以下であれば有効である。
【0034】
ステープル12から第1のリブ6までの距離Bがステープル12から第2のリブ8までの距離Aよりも長くてもよいのは、ステープル12の打ち込み時の衝撃力が打ち込み方向に強く働き、それに比べて打ち込み方向と反対方向に働く力は弱いからである。したがって、ステープル12の打ち込み方向には、打ち込み方向と反対方向よりも第2のリブ8の位置をステープルの近くに配置して、より強力な衝撃力による移動変位に対する抑制効果を得る必要があるからである。
【0035】
ステープル12の、ハウジング1の開口端部2の環状方向における位置は、図6(車両用灯具の上面図)にあるように、ハウジング1の略中心位置を中心とする略点対称の位置であることが好ましい。これにより、車両用灯具20を構成するハウジング1とレンズ4に対してバランスの取れた位置に配置されることになる。
【0036】
なお、第1のリブ6及び第2のリブ8の夫々のレンズ脚部4aの先端方向の長さは、レンズ脚部4aをレンズ取付溝3内に挿入して位置決めしたときに、予めレンズ取付溝3内に充填された接着剤9に浸漬される長さであってもよい。したがって、レンズ脚部4aの先端方向の長さは、接着剤9の充填条件を考慮して適宜設定されるものである。
【0037】
これにより、レンズ取付溝3の外側壁10とレンズ脚部4aと第1のリブ6とが接着剤9を介して一体化され、同時にレンズ取付溝3の内側壁11とレンズ脚部4aと第2のリブ8とが接着剤9を介して一体化され、レンズ取付溝3に対するレンズ脚部4aの位置決め固定がより確実なものとなっている。
【0038】
そこで、第1のリブ6及び第2のリブ8は、レンズ取付溝3に対するレンズ脚部4aの位置決め機能、ステープル12の打ち込み時の衝撃力によるレンズ脚部4aの移動変位に対する抑制機能を有するものである。
【0039】
以上のように、本発明の車両用灯具に係わるハウジング1とレンズ4との気密封止機構は、予め接着剤9が充填された、ハウジング1のレンズ取付溝3内に両面側の夫々に所定の間隔で第1のリブ6と第2のリブ8とが設けられた、レンズ4のレンズ脚部4aを挿入して位置決めをすると共に、レンズ取付溝3の外側壁10からレンズ脚部4aを貫通して内側壁11に至るステープル12を所定の位置に打ち込んで夫々を仮固定して一体化した状態で接着剤9を硬化することによりハウジング1にレンズ4を気密に封止固定するようにしたものである。
【0040】
これにより、ステープル12の打ち込みによる衝撃力がレンズ脚部4aに加わっても、該レンズ脚部4aの両面側の夫々に設けられた第1のリブ6及び第2のリブ8によってレンズ脚部4aがレンズ取付溝3の内側壁11方向及び外側壁10方向のいずれの方向にも移動変位するのが抑制される。
【0041】
その結果、硬化中の接着剤9が、レンズ脚部4aの両面の夫々との界面で剥離するのが防止され、気密性の高い封止機構となるものである。
【0042】
なお、ハウジングのレンズ取付溝に気密に封止固定されるレンズの開口端部は、上述のような、レンズ取付溝内に挿入可能な所定の幅を有する環状のレンズ脚部からなるものの他に、図7(気密封止機構の縦断面図)及び図8(図7のC矢視図)のような、3又に分岐した3つのレンズ脚部(第1のレンズ脚部15a、第2のレンズ脚部15b及び第3のレンズ脚部15c)からなり、夫々のレンズ脚部15a、15b、15cは所定の幅を有すると共に互いに所定の間隔を保って環状に並設されたものとすることも可能である。
【0043】
この場合、ハウジング1のレンズ取付溝3を構成する外側壁10及び内側壁11が、レンズ15の3つのレンズ脚部15a、15b、15cのうち外側に位置する第1のレンズ脚部15a及び内側に位置する第3のレンズ脚部15cにより覆うように被嵌され、中側に位置する第2のレンズ脚部15bがレンズ取付溝3内に挿入されて接着剤9に浸漬されている。つまり、レンズ取付溝3の外側壁10の外面と第1のレンズ脚部15aの内面が接し、レンズ取付溝3の内側壁11の外面と第3のレンズ脚部15cの内面が接している。
【0044】
そして、レンズ取付溝3の外側壁10から接着剤9、レンズ15の中側のレンズ脚部15b及び接着剤9を順次貫通して少なくともレンズ取付溝3の内側壁11に至るステープル12が、環状方向の所定の位置に複数箇所打ち込まれている。これにより、ハウジング1にレンズ15が気密に封止固定された状態となっている。
【0045】
このような気密封止機構において、ステープル12の打ち込みの衝撃でレンズ取付溝3に挿入された第2のレンズ脚部15bは打ち込み方向に向かう力を受けるが、レンズ15の第1のレンズ脚部15aと第3のレンズ脚部15cとが、ハウジング1のレンズ取付溝3を構成する外側壁10と内側壁11とに嵌合した状態となっているため、打ち込み方向に向かう動きが抑制される。
【0046】
その結果、上述の気密封止機構と同様に、硬化中の接着剤9が、レンズ脚部15bの両面の夫々との界面で剥離するのが防止され、気密性の高い封止効果を得ることができる。
【0047】
また他の気密封止機構として、図9(気密封止機構の縦断面図)及び図10(図9のD矢視図)のように、ハウジング1のレンズ取付溝3内にレンズ4のレンズ脚部4aを挿入して接着剤9に浸漬すると共に、レンズ脚部4aの、レンズ取付溝3を構成する内側壁11側にエクステンション16を延設して該エクステンション16の端部が前記レンズ脚部4aと前記内側壁11の内面の両方に接した状態とし、レンズ取付溝3の外側壁10から接着剤9、レンズ脚部4a及び接着剤9を順次貫通して内側壁11に至るステープル12を環状方向の所定の位置に複数箇所打ち込んだものである。
【0048】
これにより、ステープル12の打ち込みの衝撃でレンズ取付溝3に挿入されたレンズ脚部4aは打ち込み方向に向かう力、つまりレンズ取付溝3の内側壁11に向かう力を受けるが、レンズ脚部4aと前記内側壁11との間に位置するエクステンション16によりレンズ脚部4aの内側壁11側への動きを抑制する。
【0049】
その結果、上述の気密封止機構と同様に、硬化中の接着剤9が、レンズ脚部4aの両面の夫々との界面で剥離するのが防止され、気密性の高い封止効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1… ハウジング
2… 開口端部
3… レンズ取付溝
4… レンズ
4a… レンズ脚部
4b… ストッパ部
5… 開口端部
6… 第1のリブ
7… 前面部
8… 第2のリブ
9… 接着剤
10… 外側壁
10a… 先端面
11… 内側壁
12… ステープル
15… レンズ
15a… 第1のレンズ脚部
15b… 第2のレンズ脚部
15c… 第3のレンズ脚部
16… エクステンション
20… 車両用灯具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具であって、
前記ハウジングには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び深さを有するレンズ取付溝が形成され、
前記レンズには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び長さを有するレンズ脚部が形成されると共に、前記レンズ脚部には外面側と内面側の夫々に所定の幅及び所定の高さで前記レンズの前面側から開口端部側に延びる第1のリブと第2のリブが夫々前記環状方向所定の間隔で形成され、
前記レンズ取付溝に前記レンズ脚部が挿入されて前記レンズ取付溝に充填された接着剤に前記レンズ脚部の少なくとも一部が浸漬され、
前記レンズ取付溝の外側壁から、前記接着剤、前記レンズ脚部及び前記接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材が環状方向に所定の間隔で打ち込まれていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記レンズ脚部と前記内側壁との間に位置する前記第2のリブと、前記打込部材との距離は3mm以下であり、前記レンズ脚部と前記外側壁との間に位置する前記第1のリブと、前記打込部材との距離は10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
ハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具であって、
前記ハウジングには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び深さを有するレンズ取付溝が形成され、
前記レンズには、3又に分岐し夫々が所定の幅及び長さを有すると共に互いに所定の間隔を保って並設された3又のレンズ脚部が、環状の開口端部に該開口端部に沿って形成され、
前記レンズ取付溝の外側壁及び内側壁が前記3又のレンズ脚部のうち両外側に位置するレンズ脚部に覆うように被嵌されると共に、中側に位置するレンズ脚部が前記レンズ取付溝に挿入されて前記レンズ取付溝に充填された接着剤に少なくともその一部が浸漬され、
前記レンズ取付溝の外側壁から、前記接着剤、前記レンズ脚部及び前記接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材が環状方向に所定の間隔で打ち込まれていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
ハウジングとレンズとによる気密封止機構を有する車両用灯具であって、
前記ハウジングには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び深さを有するレンズ取付溝が形成され、
前記レンズには、環状の開口端部に該開口端部に沿って所定の幅及び長さを有するレンズ脚部が形成され、
前記レンズ取付溝に前記レンズ脚部が挿入されると共に、前記レンズ取付溝の内側壁と前記レンズ脚部との間にエクステンテンションの延設された端部が挿入されて前記レンズ取付溝に充填された接着剤に前記レンズ脚部の少なくとも一部が浸漬され、
前記レンズ取付溝の外側壁から、前記接着剤、前記レンズ脚部及び前記接着剤を順次貫通して内側壁に至る打込部材が環状方向に所定の間隔で打ち込まれていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
前記打込部材は、線材を加工して略コ字状又は直線状としたものであり、前記打込部材が略コ字状の場合は一対の針状先端部を前記ハウジングの開口端部に或いは前記レンズの開口端部に沿った環状方向に略平行に位置させて打ち込まれていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−203992(P2012−203992A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64444(P2011−64444)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】