説明

車両用灯具

【課題】構成部品点数が少なく構造簡潔な光学ユニットを備えた車両用灯具で、プリント配線基板に搭載した点灯制御回路が結露の影響を受けない灯具を提供する。
【解決手段】所定の導体パターン23が設けられたプリント配線基板21と、プリント配線基板21の所定位置に搭載された光源であるLED26と、プリント配線基板21の他の所定位置に搭載された、LED26の点灯を制御する点灯制御回路28とを備えた光学ユニット20が、灯室S内に収容された車両用灯具で、プリント配線基板21をブラケット17に担持させて水平方向に配置し、ブラケット17に固定されて前方に開口する防滴カバー18で点灯制御回路28を覆った。光学ユニット20の構造が簡潔となって、灯室S内への組み付けが容易で、制御回路28が結露の影響を受けず、LED26の長期の安定した点灯制御が保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源であるLEDを搭載したプリント配線基板と、LEDの点灯を制御する点灯制御回路を搭載したプリント配線基板と、を備えた光学ユニットを灯室内に収容した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、2つの光学ユニット(例えば、標識灯ユニットと前照灯ユニット)を内蔵した所謂コンビネーション型の車両用前照灯が知られている。
【0003】
第1の光学ユニットである標識灯ユニットとしては、例えば、車幅灯として機能するクリアランスランプユニット、方向指示器として機能するターンシグナルランプユニット、夜間以外の時間帯において点灯して標識機能を発揮するデイタイムランニングランプユニットがあり、第2の光学ユニットである前照灯ユニットの近傍に配置されている。
【0004】
標識灯ユニットは、ランプボディに固定されたブラケットの第1の基板取付部に取着した第1のプリント配線基板と、該第1のプリント配線基板に搭載した複数の光源であるLEDと、各LEDの照射軸に正対するように基板取付部に取着した複数のリフレクター(リフレクターユニット)とを備えて構成されている。
【0005】
また、標識灯ユニットの背後には、点灯制御回路(光源であるLEDの点灯を制御する点灯制御回路)を搭載一体化した第2のプリント配線基板がブラケットの第2の基板取付部に取着されて、標識灯ユニットの後方に離間して配置されており、第1,第2のプリント配線基板は、配線により電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−241921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記した特許文献1では、LEDを搭載一体化した第1のプリント配線基板と、点灯制御回路を搭載一体化した第2のプリント配線基板とがそれぞれ別体で構成されており、両プリント配線基板を電気的に接続するための配線が不可欠である等、標識灯ユニットを構成する部品点数が多く、標識灯ユニットの構造が複雑であるため、以下の問題があった。
【0008】
第1には、灯室内における標識灯ユニット全体の占める割合が大きく、それだけ灯室内における標識灯ユニットの配設位置が制約される。
【0009】
第2には、標識灯ユニットの構造が複雑となる分、灯具の組み立て工程が面倒である。
【0010】
さらに、前記した特許文献1では、第2のプリント配線基板の上面側に搭載された点灯制御回路がカバー等の部材で覆われることなく灯室内に露出しているため、昼夜あるいは点・消灯時の灯室内外の温度差に起因して灯室内(例えば、灯室を画成する前面カバーの裏面やランプボディの上面壁裏面)に発生した結露が、水滴となって下方の点灯制御回路に落下(侵入)し、点灯制御回路における絶縁が不十分となって、LEDの適正な点灯制御を妨げるという第3の問題もあった。
【0011】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたもので、その第1の目的は、光学ユニットの構成部品点数を少なくすることで、構造が簡潔な光学ユニットを備えた車両用灯具を提供することにある。
【0012】
また、その第2の目的は、プリント配線基板に搭載された点灯制御回路を防滴カバーで覆うことで、点灯制御回路が灯室内に発生する結露の影響を受けることのない車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した第1,第2の目的を解決するために、請求項1に係る車両用灯具においては、
灯室内に、
所定の導体パターンが設けられたプリント配線基板と、前記プリント配線基板の所定位置に搭載された光源であるLEDと、前記プリント配線基板の他の所定位置に搭載された、前記LEDの点灯を制御する点灯制御回路とを備えた光学ユニットとを収容した車両用灯具であって、
前記プリント配線基板をブラケットに担持させて水平方向に配置し、
前記点灯制御回路を前記ブラケットに固定されて前方に開口する防滴カバーで覆うように構成した。
【0014】
(作用)プリント配線基板には、LEDの導電路を構成する第1の導体パターンと、前記第1の導体パターンに導通する、点灯制御回路の導電路を構成する第2の導体パターンが形成され、第1の導体パターン形成領域にLEDが搭載され、第2導体パターン形成領域に点灯制御回路が搭載されている。
【0015】
即ち、従来ではそれぞれ別体に構成されていた、光源であるLED搭載用のプリント配線基板と、LEDの点灯を制御する点灯制御回路搭載用のプリント配線基板とが、共通のプリント配線基板として構成されているため、従来技術では不可欠であった2つのプリント配線基板を電気的に接続する配線が省かれる等、光学ユニットを構成する部品点数が少なく、光学ユニットの構造が簡潔となって、光学ユニット全体がコンパクトとなるとともに、光学ユニットの灯室内への組み付けも容易である。
【0016】
また、従来技術のように、2つのプリント配線基板どうしを電気的に接続する配線が不要となるので、振動等に起因したプリント配線基板と接続用配線間の接続部での断線が発生しない。
【0017】
また、昼夜あるいはLEDの点・消灯時の灯室内外の温度差に起因して灯室内に生じた結露が水滴となって下方に落下するが、点灯制御回路を覆う防滴カバーが水滴の点灯制御回路への侵入(落下)を阻止する。
【0018】
なお、プリント配線基板の点灯制御回路搭載領域が防滴カバーの前面側開口部から挿入するように、プリント配線基板をブラケットに対しスライドさせることで、点灯制御回路が防滴カバーに覆われた形態にプリント配線基板をブラケットに組み付けることができる。
【0019】
請求項2においては、請求項1に記載の車両用灯具において、前記プリント配線基板に、LEDの照射光を灯室前方に配光するリフレクターを取着し、該リフレクターの背面側に前記点灯制御回路を搭載するように構成した。
【0020】
(作用)LEDの照射光がリフレクターで反射されて灯室前方所定方向に向かう光となって、光学ユニットによる灯具前方所定方向への配光量が増える。
【0021】
点灯制御回路がリフレクターの背面側に設けられることで、点灯制御回路がリフレクターの配光形成作用を妨げることもない。
【0022】
灯具の前方から灯室内が透けて見えるが、銀白色のリフレクターが点灯制御回路を隠すことで、灯具の見栄えが向上する。
【0023】
請求項3においては、請求項1または2に記載の車両用灯具において、前記防滴カバーを、合成樹脂で構成した前記ブラケットに一体成形するように構成した。
【0024】
(作用)ブラケットと防滴カバーが合成樹脂で一体成形されているので、防滴カバーをブラケットに固定する手段が不要となる。
【0025】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具において、前記灯室内の前記光学ユニットの上方に第2の光学ユニットを収容するように構成した。
【0026】
(作用)灯室内には、光学ユニットと機能の異なる第2の光学ユニットが収容されて、多機能のランプを備えた車両用灯具が構成されている。
【0027】
光学ユニットの光源であるLEDは、第2の光学ユニット点灯による熱の影響(例えば、第2の光学ユニットの点灯により灯室内が高温となって、LEDの発光量が低下する等の影響)を受け易いが、熱の伝達され難い第2の光学ユニット下方に光学ユニットを配置したので、LEDは第2の光学ユニット点灯による熱の影響を受けにくい。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る車両用灯具によれば、第1には、光学ユニット全体がコンパクトとなるので、灯室内の光学ユニット配設位置の自由度が上がり、光学ユニットを灯室内所定位置に配設した斬新な車両用灯具を提供できる。
【0029】
第2には、光学ユニットの灯室内への組み付けが容易となるので、灯具の組み立て工程が簡単になる。
【0030】
第3には、光学ユニットの導電路が断線しにくいので、光学ユニットの耐久性が保証される。
【0031】
第4には、点灯制御回路が結露の影響を受けないので、LEDの長期の安定した点灯制御が保証される。
【0032】
また、LEDは、たとえ同じ出力の規格品であってもその発光量(明るさ)が等級差によって異なる(ばらつく)ため、プリント配線基板に搭載した点灯制御回路は、LEDの等級にマッチ(対応)したもの(発光量が少ないLEDに対しては、発光量を増すことで一定の発光量となるように調整できる点灯制御回路)であることが望ましい。
【0033】
しかし、従来では、LED搭載用プリント配線基板と点灯制御回路搭載用プリント配線基板とが別体で構成されているため、LEDを搭載したプリント配線基板と、点灯制御回路を搭載したプリント配線基板とは、それぞれ別々の工程で組み立てられる。このため、LED搭載プリント配線基板と点灯制御回路搭載プリント配線基板を、光学ユニットとして灯室内に組み付けるに先立って、LEDと点灯制御回路が互いにマッチ(対応)しているか否かを確認する必要があった。
【0034】
詳しくは、LEDには、例えば、同じ規格品でも発光量(明るさ)の異なるランク1〜5があって、LED搭載工程では、ランク1のLEDを搭載したプリント配線基板からランク5のLEDを搭載したプリント配線基板までの5種類のLED搭載プリント配線基板が製造される。一方、点灯制御回路搭載工程では、ランク1〜5のLEDにそれぞれマッチ(対応)する点灯制御回路をそれぞれプリント配線基板に搭載した、クラス1〜5までの5種類の点灯制御回路搭載プリント配線基板が製造される。
【0035】
このため、従来では、LED搭載プリント配線基板と点灯制御回路搭載プリント配線基板を光学ユニットとして灯室内に組み付ける工程に先立って、LED搭載プリント配線基板のランク(LEDのランク)と点灯制御回路搭載プリント配線基板のクラス(点灯制御回路のクラス)がマッチ(対応)しているか否か(例えば、ランク1〜5とクラス1〜5がそれぞれマッチする)を確認する工程が必要であった。
【0036】
即ち、従来では、プリント配線基板に搭載されているLEDのランクと、プリント配線基板に搭載されている点灯制御回路のクラスが、マッチするか否かを確認する工程が必要な分、光学ユニットの組み付け工程に時間がかかるし、この確認工程のための設備が必要な分、製造コストがかさむ、という問題があった。
【0037】
然るに、請求項1では、LED搭載用のプリント配線基板と、LEDの点灯を制御する点灯制御回路搭載用のプリント配線基板とが共通のプリント配線基板として構成されているため、プリント配線基板にLEDを搭載し、引き続き行う点灯制御回路を搭載する工程において、LEDのランクと点灯制御回路のクラスがマッチすることを確認した上で、LEDおよび点灯制御回路をプリント配線基板に搭載できる。
【0038】
このため、LED・点灯制御回路搭載工程により製造された、LEDおよび点灯制御回路を搭載したプリント配線基板は、LEDのランクと点灯制御回路のクラスが必ずマッチ(対応)したものとなるため、従来必要であった、プリント配線基板に搭載されているLEDのランクと、プリント配線基板に搭載されている点灯制御回路のクラスが、マッチするか否かを確認する工程が省かれて、光学ユニットを灯室内に組み付ける工程に要す時間が大幅に短縮されるし、前記したLEDのランクと点灯制御回路のクラスのマッチを確認するための工程設備が不要となって、灯具の製造コストが低減される。
【0039】
請求項2によれば、灯具前方所定方向への配光量が増えるので、所定方向からの車両用灯具の被視認性が向上する。
【0040】
また、灯室内の点灯制御回路はリフレクターに隠れて灯具の前方から見えないので、見栄えのよい車両用灯具が提供される。
【0041】
請求項3によれば、光学ユニットの灯室内への組み付けがいっそう容易となるので、灯具の組み立て工程がさらに簡単になる。
【0042】
請求項4によれば、光学ユニットの光源であるLEDは第2の光学ユニット点灯による熱の影響を受けにくいので、光学ユニットによる安定した発光量が長期にわたり確保できる車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施例である車両用前照灯の概略正面図である。
【図2】同車両用前照灯の水平断面図(図1の線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】同車両用前照灯の水平断面図(図1の線III−III線に沿う断面図)である。
【図4】標識灯ユニット(デイタイムランニングランプ)の縦断面図である。
【図5】プリント配線基板を担持するブラケットの斜視図である。
【図6】点灯制御回路を覆う防滴カバーの縦断面図である。
【図7】プリント配線基板の平面図である。
【図8】プリント配線基板の2個取りを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の実施例である車両用前照灯を、図1〜図6を参照して説明する。
【0045】
車両用前照灯10は、車両の前端部における左右両端部(車幅方向両端部)に取り付けられて配置されている。
【0046】
車両用前照灯10は、前方が開口するランプボディ12と、ランプボディ12の前面開口部周縁部に組み付けられた前面カバー14とを備え、ランプボディ12と前面カバー14によって灯室Sが画成されている。
【0047】
灯室Sには、図1及び図2に示すように、灯室内下方の車両の前面側(車幅方向内側)から側面側(回り込み側)に亘って配置された第1の光学ユニットである標識灯ユニット(デイタイムランニングランプ)20と、灯室内上方の車両の前面側(車幅方向内側)に配置された第2の光学ユニットである前照灯ユニット40と、同じく灯室内上方の車両の側面側に配置された第3の光学ユニットである標識灯ユニット(ターンシグナルランプ)60とが収容されている。
【0048】
前照灯ユニット40は、すれ違いビーム形成用ランプ41と走行ビーム形成用ランプ42が左右に隣接するようにランプブラケット15に組み付け一体化されるとともに、ランプボディ12の背面壁とランプブラケット15間に介装されたエイミング機構(図示せず)によって、上下方向及び左右方向に傾動調整(ランプ41,42の光軸を上下方向及び左右方向に傾動調整)できるように構成されている。
【0049】
なお、すれ違いビーム形成用ランプ41は、主として放物面リフレクター41aと光源バルブ41bで構成され、走行ビーム形成用ランプ42は主として楕円反射鏡42aと光源バルブ42bと投射凸レンズ42cで構成されている。図2の符号13は、ランプボディ12の背面壁に設けた開口部12aに装着された取り外し可能なバックカバーである。
【0050】
また、標識灯ユニット60を構成するターンシグナルランプは、被視認性に優れるように、車両の側面側に配置されており、ランプボディ12に固定された放物面リフレクター61aと、ランプボディ12の背面壁に設けたバルブ挿着孔12bに挿着されて、その発光部がリフレクター61aの前方に延出する光源バルブ61bで構成されている。
【0051】
また、標識灯ユニット20を構成するデイタイムランニングランプは、被視認性向上の観点から横長の形状に形成されて、灯室S内下方の車両の前面側から側面側(回り込み側)に亘って配置されている。
【0052】
デイタイムランニングランプ20は、図3や図7に示すように、所定の導体パターン23が設けられたプリント配線基板21と、プリント配線基板21の所定位置に搭載された光源であるLED26と、プリント配線基板21の他の所定位置に搭載された、LED26の点灯を制御する点灯制御回路28と、プリント配線基板21に取着されて、LED26の照射光を灯室S前方に反射するリフレクター27とを備えて構成されている。
【0053】
プリント配線基板21は、たとえば厚さ1.6mmの樹脂製基板上に所定の導体パターン23が形成されるとともに、導体パターン23におけるLED26搭載用ランド部(端子)および点灯制御回路28搭載用ランド部(端子)を除いて導体パターン23を覆うように絶縁性保護膜が積層形成された構造となっている。
【0054】
また、導体パターン23は、図7に示すように、LED26の導電路を構成する第1の導体パターン23Aと、第1の導体パターン23Aに導通し、点灯制御回路28の導電路を構成する第2の導体パターン23Bで構成されている。
【0055】
詳しくは、プリント配線基板21は、図7に示すように、全体が平面視略矩形状に形成された第1の導体パターン形成領域と21A、その側縁部から灯室後方に向かって舌片状に延出する第2の導体パターン形成領域21Bで構成され、第1の導体パターン形成領域21AにはLED26が搭載され、第2導体パターン形成領域21Bには点灯制御回路28が搭載されている。
【0056】
また、プリント配線基板21上面に搭載されたLED26の背後には、図3に示すように、LED26に対応する複数のリフレクター27aを左右方向に一体化したリフレクターユニット27が取着されている。図4における符号17aは、リフレクターユニット27をプリント配線基板21に固定するための締結ねじである。
【0057】
リフレクターユニット27の各リフレクター27aは、図4に示すように、対応するLED26の照射軸に正対するように配置されて、LED26の発光がリフレクターユニット27(リフレクター27a)によって灯室S前方に反射配光される。各リフレクター27aの内側には拡散ステップが形成されており、リフレクター27aで反射された光は拡散光として前方に配光される。
【0058】
LED26および点灯制御回路28を搭載し、リフレクターユニット27を取着一体化したプリント配線基板21は、図3,4,6に示すように、ランプボディ12に固定されて灯室S内に延出する合成樹脂製ブラケット17に担持されて水平に配設されている。図3における符号17bは、プリント配線基板21をブラケット17に固定するための締結ねじ、図6における符号17cは、ブラケット17をランプボディ12に固定するための締結ねじである。
【0059】
また、ブラケット17には、図5,6に示すように、前後方向に開口する防滴カバー18が一体成形されており、プリント配線基板21の点灯制御回路28搭載領域21a(灯室後方に延出する第2の導体パターン形成領域21B)が防滴カバー18で覆われることで、点灯制御回路28が結露の影響を受けないように構成されている。
【0060】
即ち、昼夜、あるいは前照灯ユニット40の点・消灯時の灯室S内外の温度差に起因して、灯室S内(例えば、前面カバー14裏面やランプボディ12上面壁)に結露が発生し、この結露が水滴となって下方に落下するおそれがあるが、点灯制御回路28を覆う防滴カバー18が水滴の点灯制御回路28への侵入(落下)を阻止する。このため、点灯制御回路28が水滴によって誤動作することがないので、LED26の的確な点灯制御が確保されている。
【0061】
なお、プリント配線基板21の点灯制御回路28搭載領域21aを防滴カバー18の前面側開口部18aに挿入するように、プリント配線基板21をブラケット17に対し図6矢印A方向にスライドさせることで、点灯制御回路28が防滴カバー17に覆われた形態にプリント配線基板21をブラケット17に組み付けることができる。
【0062】
また、発光量が大きい前照灯ユニット40が点灯することで、灯室S内が高温となり、灯室S内に配置されている標識灯ユニット20の光源であるLED26の発光量が低下したり、点灯制御回路28を構成する電子部品の特性が低下する等の影響がでるおそれがある。
【0063】
然るに、本実施例では、標識灯ユニット(デイタイムランニングランプ)20は、点灯時に高温となる前照灯ユニット40の下方に配置されており、前照灯ユニット40で発生した熱は、灯室S内の空気の対流により、主に灯室S内上方に伝達されて、灯室S内下方には伝達され難いので、標識灯ユニット(デイタイムランニングランプ)20の光源であるLED26や点灯制御回路28は、前照灯ユニット40点灯による熱の影響をそれだけ受けにくい。
【0064】
さらに、本実施例では、照射軸が上方を向くようにLED26が搭載され、さらに点灯制御回路28が搭載されたプリント配線基板21の上面側には、リフレクターユニット27(リフレクター27a)が配置されているため、熱の影響を受け易いLED26や点灯制御回路28は、高温となる前照灯ユニット40から少なくともリフレクターユニット27(リフレクター27a)の高さ相当離間する形態となって、それだけLED26や点灯制御回路28が熱の影響を受け難い。
【0065】
また、プリント配線基板21を製造するには、樹脂製基板B上に銅等の導電膜を全面的に形成し、次いで、所定のエッチングマスクを用いて導電膜をエッチングすることにより、所定の配線用導体パターン23(23A,23B)を形成する。次いで、第1の導体パターン23AにおけるLED搭載用ランド部(端子)および第2の導体パターン23Bにおける点灯制御回路搭載用ランド部(端子)を除いて、導体パターン23(23A,23B)を覆うように絶縁性保護膜を全面的に積層形成する。次いで、所定のランド部(端子)にLED26および点灯制御回路28を搭載した後、外形が所定の形状となるように、導体パターン23,絶縁性保護膜を積層一体化した樹脂製基板Bをカットすることで、LED26および点灯制御回路28を搭載一体化したプリント配線基板21ができあがる。
【0066】
なお、プリント配線基板21は、略矩形状の第1の導体パターン形成領域21Aの一側縁部から第2導体パターン形成領域21Bが舌片状に延出する形状であるが、本実施例では、図8に示すように、プリント配線基板21を回転対称に配置して、1枚の樹脂製基板Bから2個のプリント配線基板21を製造(2個取り)することで、廃棄材料の無駄を少なくしている。
【0067】
詳しくは、樹脂製基板B上に銅等の導電膜を全面的に形成し、次いで、所定のエッチングマスクを用いて導電膜をエッチングすることにより、それぞれの第2の導体パターン23B,23Bが長手方向に隣り合うように、配線用導体パターン23,23を回転対称に形成する。次いで、第1の導体パターン23AにおけるLED搭載用ランド部(端子)および第2の導体パターン23Bにおける点灯制御回路搭載用ランド部(端子)を除いて2つの導体パターン23,23を覆うように全面的に絶縁性保護膜を積層形成する。次いで、所定のランド部(端子)にLED26および点灯制御回路28を搭載した後、所定の形状となるように樹脂製基板Bをカットすることで、LED26および点灯制御回路28を搭載一体化したプリント配線基板21,21ができあがる。最後にプリント配線基板21,21にリフレクターユニット27,27をそれぞれ取着することで、灯室S内に組み付ける標識灯ユニット20,20が完成する。
【0068】
このように本実施例によれば、以下のような効果が奏される。
【0069】
第1には、標識灯ユニット20全体がコンパクトとなるので、灯室S内の標識灯ユニット20配設位置の自由度が上がり、標識灯ユニット20を灯室S内所定位置に配設した斬新な車両用前照灯を提供できる。
【0070】
第2には、標識灯ユニット20の灯室S内への組み付けが容易となるので、灯具10の組み立て工程が簡単になる。
【0071】
第3には、標識灯ユニット20の導電路が断線しにくいので、標識灯ユニット20の耐久性が保証される。
【0072】
第4には、点灯制御回路28が結露の影響を受けないので、LED26の長期の安定した点灯制御が保証される。
【0073】
また、本実施例によれば、光学ユニット20を灯室S内に組み付ける工程に要す時間を従来に比べて大幅に短縮できるとともに、灯具の製造コストも低減できるという他の効果も奏される。
【0074】
即ち、LED26は、たとえ同じ出力の規格品であってもその発光量(明るさ)が等級差によって異なる(ばらつく)ため、プリント配線基板21に搭載した点灯制御回路28は、LED26の等級にマッチ(対応)したもの(発光量が少ないLED26に対しては、発光量を増すことで一定の発光量となるように調整できる点灯制御回路28)であることが望ましい。
【0075】
しかし、従来では、LED搭載用プリント配線基板と点灯制御回路搭載用プリント配線基板とが別体で構成されているため、LEDを搭載したプリント配線基板と、点灯制御回路を搭載したプリント配線基板とは、それぞれ別々の工程で組み立てられる。このため、LED搭載プリント配線基板と点灯制御回路搭載プリント配線基板を、光学ユニットとして灯室内に組み付けるに先立って、LEDと点灯制御回路が互いにマッチ(対応)しているか否かを確認する必要があった。
【0076】
詳しくは、LED26には、例えば、同じ規格品でも発光量(明るさ)の異なるランク1〜5があって、LED搭載工程では、ランク1のLED26を搭載したプリント配線基板21からランク5のLED26を搭載したプリント配線基板21までの5種類のLED搭載プリント配線基板が製造される。一方、点灯制御回路搭載工程では、ランク1〜5のLED26にそれぞれマッチ(対応)する点灯制御回路28をそれぞれプリント配線基板21に搭載した、クラス1〜5までの5種類の点灯制御回路搭載プリント配線基板が製造される。
【0077】
このため、従来では、LED搭載プリント配線基板と点灯制御回路搭載プリント配線基板を光学ユニットとして灯室内に組み付ける工程に先立って、LED搭載プリント配線基板のランク(LEDのランク)と点灯制御回路搭載プリント配線基板のクラス(点灯制御回路のクラス)がマッチ(対応)しているか否か(例えば、ランク1〜5とクラス1〜5がそれぞれマッチする)を確認する工程が必要であった。
【0078】
したがって、従来では、プリント配線基板に搭載されているLEDのランクと、プリント配線基板に搭載されている点灯制御回路のクラスが、マッチするか否かを確認する工程が必要な分、光学ユニットの組み付け工程に時間がかかるし、この確認工程のための設備が必要な分、製造コストがかさむ、という問題があった。
【0079】
然るに、本実施例では、LED搭載用のプリント配線基板と、LEDの点灯を制御する点灯制御回路搭載用のプリント配線基板とが共通のプリント配線基板21として構成されているため、プリント配線基板21にLED26を搭載し、引き続き行う点灯制御回路28を搭載する工程において、LED26のランクと点灯制御回路28のクラスを確認した上で、LED26および点灯制御回路28をプリント配線基板に搭載できる。
【0080】
このため、LED・点灯制御回路搭載工程により製造された、LED26および点灯制御回路28を搭載したプリント配線基板21は、LED26のランクと点灯制御回路28のクラスが必ずマッチ(対応)したものとなるため、従来必要であった、
プリント配線基板に搭載されているLEDのランクと、プリント配線基板に搭載されている点灯制御回路のクラスが、マッチするか否かを確認する工程が省かれて、光学ユニット20を灯室S内に組み付ける工程に要す時間が大幅に短縮されるし、前記したLEDのランクと点灯制御回路のクラスのマッチを確認するための設備が不要となって、灯具10の製造コストが低減される。
【0081】
なお、前記した実施例では、点灯制御回路28を覆う防滴カバー18がブラケット17に一体成形されていたが、防滴カバー18とブラケット17が別体で構成されて、ねじ締結その他の固定手段によって、両者18,17が一体化された構造であってもよい。
【0082】
また、前記した実施例では、水平に配設されたプリント配線基板21の上面側に、LED26および点灯制御回路28が搭載され、さらにリフレクター27が取着された構造であるが、水平に配設されたプリント配線基板21の下面側に、LED26および点灯制御回路28が搭載され、さらにリフレクター27が取着された構造であってもよい。
【0083】
また、前記した実施例では、LED26および点灯制御回路28を搭載し、リフレクター27を取着したプリント配線基板21が水平に配設されているが、LED26および点灯制御回路28を搭載したプリント配線基板21が、その板巾方向を略垂直にして水平方向に配置されていてもよい。そして、その照射軸が灯室前方に向くようにプリント配線基板21に搭載されたLED26の直射光によって、またはLED26の直射光とプリント配線基板21に取着されたリフレクターユニット27(リフレクター27a)の反射光によって、光学ユニット20の配光が形成される構造であってもよい。
【0084】
また、前記した実施例では、1枚の樹脂製基板Bでプリント配線基板21を2個取りするようになっているが、プリント配線基板21のサイズ(長さ)が小さい場合は、4個取りや6個取りするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 車両用灯具である車両用前照灯
12 ランプボディ
14 前面カバー
S 灯室
17 標識灯ユニット(デイタイムランニングランプ)を担持するブラケット
18 防滴カバー
20 光学ユニットである標識灯ユニット(デイタイムランニングランプ)
21 プリント配線基板
21a プリント配線基板の点灯制御回路搭載領域
21A 第1の導体パターン形成領域
21B 第2の導体パターン形成領域
23 導体パターン
23A LED搭載用の導体パターン
23B 点灯制御回路搭載用の導体パターン
26 光源であるLED
27 リフレクターユニット
27a リフレクター
40 第2の光学ユニットである前照灯ユニット
41 すれ違いビーム形成用ランプ
42 走行ビーム形成用ランプ
60 光学ユニットである標識灯ユニット(ターンシグナルランプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯室内に、
所定の導体パターンが設けられたプリント配線基板と、前記プリント配線基板の所定位置に搭載された光源であるLEDと、前記プリント配線基板の他の所定位置に搭載された、前記LEDの点灯を制御する点灯制御回路とを備えた光学ユニットを収容した車両用灯具であって、
前記プリント配線基板は、ブラケットに担持されて水平方向に配置され、
前記点灯制御回路は、前記ブラケットに固定されて前方に開口する防滴カバーによって覆われたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記プリント配線基板には、LEDの照射光を灯室前方に配光するリフレクターが取着され、該リフレクターの背面側に前記点灯制御回路が搭載されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記防滴カバーは、合成樹脂で構成された前記ブラケットに一体成形されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記灯室内の前記光学ユニットの上方には、第2の光学ユニットが収容されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252892(P2012−252892A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124923(P2011−124923)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】