説明

車両用灯具

【課題】ファントム現象を抑制しつつ高い光の利用効率を有する車両用灯具を提供する。
【解決手段】長尺の導光体と、導光体の少なくとも一端に設けられ、導光体へ光を入射させる光源と、導光体の少なくとも一部の上方に配置され、前端が導光体よりも灯具前方側に延出する遮光部材と、を備えた車両用灯具において、導光体の灯具後方側の側面に光源からの光を導光体内部で反射して導光体から灯具前方に出射させる反射部が設け、導光体を光の出射範囲が導光体を含み遮光部材の下方に位置する空間領域内となるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファントム現象の発生が防止された車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のデザインの多様化に伴い、透明樹脂からなるライトガイドが車両用灯具に用いられている。このライトガイドは、入射された光を内部で反射を繰り返しながら導光させ、全体として発光する部材である。ライトガイドは曲がった形状に形成することができるので、曲線を用いたデザインの車両用灯具に用いられることが多い。このようなライトガイドは、例えば特許文献1等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-235153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、朝方や夕方には、太陽光は地平面に対して小さい角度をなしている。このとき、太陽光は車両用灯具の内部まで入射してリフレクタまで到達し、リフレクタが太陽光をライトガイドへ向けて反射し、ライトガイドから前方に反射光が出射する。このため、ライトガイドが点灯しているように見えることがある。また、ライトガイドに入射した太陽光がライトガイドの内部で内面反射され、ライトガイドが点灯しているように見えることもある。これらの現象をファントム現象と呼んでいる。
【0005】
ストップランプ等の車両用灯具でファントム現象が発生すると、意図しないときにストップランプが点灯してしまうように外部から見えてしまうおそれがある。車両用前照灯においても、ターンシグナルランプでファントム現象が生じてしまうと、周囲に誤った情報を与えてしまうおそれがある。
【0006】
そこで本発明者らは、太陽光が車両用灯具に入射しないようにライトガイドの上方に太陽光を遮断する庇を設けることを検討した。しかし、単に庇を設けただけでは、車両用灯具の光源からの光もこの庇で遮られてしまい、光の利用効率が低下してしまう。
【0007】
そこで本発明は、ファントム現象を防止しつつ光の利用効率を高めた車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明によれば、
長尺の導光体と、
前記導光体の少なくとも一端に設けられ、前記導光体へ光を入射させる光源と、
前記導光体の少なくとも一部の上方に配置され、前端が前記導光体よりも灯具前方側に延出する遮光部材と、を備え、
前記導光体の灯具後方側の側面には、前記光源からの光を前記導光体内部で反射して前記導光体から灯具前方に出射させる反射部が設けられ、
前記導光体は、光の出射範囲が前記導光体を含み前記遮光部材の下方に位置する空間領域内となるように形成されている車両用灯具が提供される。
【0009】
また、上記本発明に係る車両用灯具において、前記遮光部材の前記前端の下部を通過し前記導光体の前面に接する仮想直線と、水平面とがなす角度が10°〜20°のいずれかの値となるように、前記遮光部材の前記前端が設定されていてもよい。
【0010】
また、上記本発明に係る車両用灯具において、前記導光体の鉛直断面において、前記反射部は後方に突出した凸状であってもよい。
【0011】
また、上記本発明に係る車両用灯具において、前記導光体の鉛直断面において、前記導光体の前面が前方に突出した長円状であってもよい。
【0012】
また、上記本発明に係る車両用灯具において、前記導光体は、前記光源からの光を前記反射部の前方に集光させるように形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用灯具によれば、遮光部材により太陽光が導光体へ入射することを防止しつつ、この遮光部材を避けて前方へ出射するように導光体が形成されている。したがって、太陽光が入射することにより発生するファントム現象を防止し、かつ、光の利用効率の高い車両用灯具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
【図2】図1に示す車両用灯具のライトガイド及びエクステンションの斜視図である。
【図3】参考例に係るライトガイド及びエクステンションの断面図である。
【図4】図2に示すライトガイド及びエクステンションの断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両用灯具のライトガイド及びエクステンションの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る車両用灯具を、図1,2を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用灯具の断面図である。車両用灯具は、灯具前方に開口する開口部を有するランプボディ1と、透明樹脂製のアウターカバー2とを備えている。アウターカバー2は、ランプボディ1の開口部を前方から閉塞するように配置され、ランプボディ1との間に灯室Sを形成している。
【0017】
灯室Sの内部には、灯具前方へ光を出射する第1灯具ユニット3と、第2灯具ユニット4とが設けられている。第1灯具ユニット3は、光源バルブ31と、光源バルブ31からの光を反射させるリフレクタ32とを備えている。リフレクタ32は断面放物型の反射面を備え、光源バルブ31はリフレクタ32の焦点Fのやや灯具後方に配置されている。これにより、リフレクタ32は、光源バルブ31からの光を灯具前方に向かって拡散させる。
【0018】
図2は、第2灯具ユニット4を図1の矢印IIから見た斜視図である。図2に示すように、第2灯具ユニット4は、長尺のライトガイド5(導光体)と、光源としてのLED41と、エクステンション6とを備えている。
【0019】
LED41はライトガイド5の側方に、その出射軸をライトガイド5の側方端部5aに向けて配置されている。これにより、LED41からの光はライトガイド5の側方端部5aから入射される。
【0020】
長尺のライトガイド5は、その長手方向が車両用灯具の幅方向(左右方向)に延在するように配置されている。ライトガイド5は透明樹脂から形成されており、側方端部5aから入射されたLED41からの光は、ライトガイド5の周面で内部反射を繰り返し、長手方向に導光される。また、ライトガイド5は、図1に示すように、断面略円形状の主要部51と、主要部51から後方に突出した後方突出部52とを備えている。
【0021】
LED41からの光は、ライトガイド5の長手方向に対して略平行に、小さな入射角(ライトガイド5の周面の垂線を基準とした場合の入射角)をなすように入射されている。これにより、ライトガイド5内を導光される光は、ライトガイド5の周面に小さな入射角で入射し、再びライトガイド5内部に向かって反射される。ライトガイド5中を導光される光のうち後方突出部52で反射された光は、ライトガイド5の前面51aに大きな入射角で入射する。このため、後方突出部52で反射された光がライトガイド5の前面51aから灯具前方に向かって出射する。
【0022】
エクステンション6は、ライトガイド5の灯具後方側に配置され、ランプボディ1の内面を灯具前方側から遮蔽する。図2に示すように、エクステンション6はライトガイド5の長手方向に沿って延在している。エクステンション6の灯具前方側の意匠面6aには、車両用灯具の美観を向上させるために、光沢感のある鏡面処理が施されている。
【0023】
上述のように構成される車両用灯具において、第1灯具ユニット3がリフレクタ32の形状に発光し、第2灯具ユニット4がライトガイド5の形状に発光する。これにより、車両用灯具を異なる二つの灯具ユニットを用いて様々な態様に発光させることができ、車両用灯具の意匠性が向上されている。
【0024】
本発明者らは、このように構成される車両用灯具において、ファントム現象の発生を防止することを検討した。特に、第2灯具ユニット4では、ライトガイド5中を導光させながらライトガイド5全体を発光させるため、LED41からの光がライトガイド5中で光が減衰しやすい。このため、第2灯具ユニット4の光度は、第1灯具ユニット3の光度よりも小さい。ゆえに、第2灯具ユニット4の点灯時と非点灯時とで光度の差が大きくないので、ファントム現象が生じたときに点灯状態と非点灯状態の区別がつきにくい。そこで、本発明者らは、特に第2灯具ユニット4でファントム現象の発生を防止する構造を検討した。
【0025】
図3は、参考例に係る車両用灯具の第2灯具ユニット104の断面拡大図である。この参考例に係る車両用灯具は、上述と同様に第1灯具ユニットと第2灯具ユニット104を備え、第2灯具ユニット104の構成が上述の実施形態の車両用灯具と異なる。まず、参考例に係る車両用灯具の第2灯具ユニット104を用いて、ファントム現象を詳細に説明する。
【0026】
参考例に係る車両用灯具の第2灯具ユニット104は従来から知られている一般的なライトガイド105とエクステンション106とを備えた灯具ユニットである。第2灯具ユニット104は、図3に示すように、断面が略円形状のライトガイド105と、ライトガイド105の後方に設けられたエクステンション106と、を備えている。
【0027】
ライトガイド105は断面略円形状の主要部151と、主要部151から後方に突出した後方突出部152とを備えている。この後方突出部152の背面には、平坦な反射面152aが設けられている。これにより、平坦な反射面152aで反射された光は、主要部151の前面151aによって屈折され、灯具前方の広範囲に拡散するように出射される。なお、図3中のハッチングを施した領域が、ライトガイド105から出射される照射領域X1である。以降の説明では、反射面152aで反射されライトガイド105から出射される光のうちで、最も上方へ向かう光線L1と、最も下方へ向かう光線L2との間で挟まれた領域を照射領域X1と呼ぶ。
【0028】
また、エクステンション106はライトガイド105の灯具後方側に配置されている。このエクステンション106は、ライトガイド105の背面に位置する背面部161と、背面部161からライトガイド105の上部に延出する上側延出部162と、背面部161からライトガイド105の下部に延出する下側延出部163と、を備えている。上側延出部162と下側延出部163はそれぞれ、広範囲に形成されたライトガイド105の照射領域X1を遮らないように形成されている。特に、上側延出部162の前端部162aは、ライトガイド105の断面において、その中心105bよりも後方に位置されている。
【0029】
このように構成された第2灯具ユニット104に対して、地平面HPに対して小さい角度をなす太陽光SLが入射すると、この太陽光SLは何ら遮られることなくエクステンション106の背面部161に入射してしまう。背面部161には鏡面処理が施されているため、入射した太陽光SLは背面部161で反射され、ライトガイド105を通過して灯具前方に出射されてしまう。つまり、LED141が点灯していない場合に、エクステンション106の背面部161で反射された太陽光SLがライトガイド105を発光させてしまい、ファントム現象が生じてしまう。
【0030】
また、ライトガイド105内部に太陽光SLが入射し、反射面152aによって灯具前方へ内面反射してしまうことがある。この場合も、太陽光SLによってライトガイド105が発光し、ファントム現象が生じてしまう。
【0031】
そこでファントム現象の発生を防止するために、図3中に二点鎖線で示すように、エクステンション106の上側延出部162を灯具前方側へ延ばして延長部163を形成し、その前端部163aをライトガイド105よりも灯具前方側に位置させることが考えられる。これにより、太陽光SLが延長部163によって遮られ、太陽光SLがエクステンション106の背面部161に入射しないので、ファントム現象の発生を防止できる。
【0032】
ところが、単純に上側延出部162を灯具前方へ延ばして延長部163を形成すると、図3に示すように、延長部163の一部がライトガイド105の照射領域X1を遮ってしまう。
【0033】
このように、ライトガイド105から出射される光の一部が遮られてしまうと、第2灯具ユニット104の光の利用効率が低下してしまう。ライトガイド105は、上述したようにライトガイド105中で光が減衰しやすく光の利用効率が高くない。このため、エクステンション106によって更に光の利用効率が低下してしまうと好ましくない。
【0034】
そこで本発明者らは、ファントム現象の発生を防止し、かつ、高い光の利用効率を有するライトガイドを用いた第2灯具ユニットを実現するために本発明を考案した。図4は、図2に示した本発明の実施形態に係る車両用灯具の第2灯具ユニット4近傍を拡大して示す断面図である。
【0035】
本発明の第1実施形態に係る車両用灯具に用いられるライトガイド5は、透明樹脂から形成され、内部に光を導光可能な部材である。ライトガイド5は、断面略円形状の主要部51と、主要部51から後方に突出した後方突出部52とを備えている。なお、後方突出部52は、図2に示すようにライトガイド5の長手方向に沿って間欠的に設けられている。
【0036】
図4に示すように、エクステンション6は、ライトガイド5の後方に位置する背面部61と、ライトガイド5の上側に位置し背面部61から灯具前方に延出する上側延出部62と、ライトガイド5の下側に位置し背面部61から灯具前方に延出する下側延出部63と、を備えている。背面部61、上側延出部62、下側延出部63のいずれも、灯具前方に露出する意匠面6aには光沢感のある鏡面処理が施され、意匠性が高められている。
【0037】
エクステンション6の上側延出部62は、その前端部62aがライトガイド5よりも前方側に位置するように形成されている。これにより、地平面HPに対して特定角度よりも大きな角度をなす太陽光SLがライトガイド5に入射することを防止している。本実施形態においては、地平面HPに対してなす角度αが20°以上の太陽光SLがライトガイド5に入射しないように、エクステンション6の上側延出部62が灯具前方側に延出されている。なお、太陽光SLは上方からライトガイド5に入射するため、エクステンション6の下側延出部63は灯具前方側へ延ばす必要がない。また、上側延出部62により、エクステンション6の背面部61にも太陽光SLが入射することがない。
【0038】
換言すれば、本実施形態に係る車両用灯具においては、エクステンション6の上側延出部62の前端部62aの下部を通過した外部光が、ライトガイド5に入射しないように、エクステンション6の上側延出部62の前端部62aが設定されている。より具体的には、エクステンション6の上側延出部62の前端部62aの下部を通過しライトガイド5の前面に接する仮想直線HLを仮定し、この仮想直線HLと地平面HPとがなす角度βが10°〜20°のいずれかの値となるように、上側延出部62の前端部62aが設定されている。
【0039】
なお、地平面HPに対してなす角度αが小さい太陽光SLがライトガイド5に入射しないように、エクステンション6の上側延出部62をできるだけ灯具前方に延ばすことが好ましい。しかし、地平面HPと平行な太陽光SLがライトガイド5に入射することまで阻止することは現実的ではない。このため、地平面HPに対してなす角度αが20°以上の太陽光SLがライトガイド5に入射することを阻止するように、エクステンション6の上側延出部62を延ばせば、ファントム現象の抑制には十分である。
【0040】
なお、灯具の配向設計において、地平面HPに対して20°上方付近の光度を、所定の光度以上としなければならない、という制約がある。そこで、ライトガイド5からの光を地平面HPに対して20°上方に出射することができれば、灯具の配向設計が容易となる。このため、地平面HPに対してなす角度αが20°以上の太陽光SLがライトガイド5に入射することを阻止するように設定した。
【0041】
なお、地平面HPに対してなす角度αが10°の太陽光SLは、ファントム現象を特に生じさせやすい。このため、ファントム現象をより確実に阻止するために、地平面HPに対してなす角度αが10°以上の太陽光SLを含む外部光を遮るように、上側延出部62を延ばすように形成してもよい。
【0042】
また、ライトガイド5の後方突出部52の背面に設けられた反射面52aは、後方に向かって突出する凸曲面として形成されている。この反射面52aは、後方突出部52の背面にアルミなどの金属蒸着を施すことにより形成される。
【0043】
ライトガイド5の反射面52aは、ライトガイド5からの照射領域X2が、図4にハッチングを施した領域となるように形成されている。つまり、反射面52aからの反射光がエクステンション6の上側延出部62の下方に位置する空間領域内に限定されることを狙った形状とされている。具体的には、ライトガイド5から灯具前方側に出射される光のうち最も上方に向かう光線L1が、エクステンション6の上側延出部62の前端部62aよりも下側を通過するように、ライトガイド5の後方突出部52の反射面52aが形成されている。
【0044】
なお、ライトガイド5内に導光された光は、様々な入射角度でライトガイド5の周面に入射する。このため、LED5から入射した光はライトガイド5内を導光されていく間に、僅かながらライトガイド5の外部に漏出する。このため、ライトガイド5の外周面全体から光が出射され、意図せずに狙った照射領域X2以外にライトガイド5からの光が照射されている。すなわち、本実施形態における照射領域X2とは、ライトガイド5の反射面52aからの反射光の大部分が通過する領域である。また、反射面52aは、その反射光が照射領域X2を通過するように、その形状が設計されている。
【0045】
なお、エクステンション6の意匠面6aには鏡面処理が施されているため、ライトガイドから漏れ出た光を意匠面6aが反射する。しかし、上述したようにライトガイド5からエクステンション6側に漏れる光は僅かなため、エクステンション6の意匠面6aがライトガイド5の配光に影響を及ぼすことはない。
【0046】
以上のようにライトガイド5の形状が規定されているため、ライトガイド5から出射された光が、灯具前方側に延出されたエクステンション6の上側延出部62に遮られることがない。したがって、第2灯具ユニット4の光の利用効率が低下することがない。よって、本発明の本実施形態によれば、ファントム現象の発生を防止しつつ、高い光の利用効率を有する車両用灯具の第2灯具ユニット4を提供することができる。
【0047】
なお、ライトガイド5の後方突出部52の反射面52aの曲率を大きくすれば、より確実にエクステンション6に遮られることなくライトガイド5からの出射光を灯具前方に照射することができる。しかし、この後方突出部52の反射面52aの曲率を大きくし過ぎると、ライトガイド5からの照射範囲X2が狭くなり過ぎて、ライトガイド5の被視認性が低下する。このため、後方突出部52の反射面52aの曲率は、ライトガイド5から灯具前方側に出射される光のうち最も上方に向かう光線L1が、エクステンション6の上側延出部62の前端部62aの下方近傍を通過する程度とすることが好ましい。
【0048】
なお、近年では車両用灯具の外観意匠性が高めるために、透明度の高い樹脂がライトガイド5に用いられることがある。透明度の高い樹脂は、ライトガイド5にクリアな外観を与えるためである。透明度の高い樹脂でライトガイド5を形成した場合、ライトガイド5の内部を導光される光の減衰率が小さくなる。したがって、エクステンション6の背面部61で反射した太陽光SLがライトガイド5を通過して灯具前方に出射される際、太陽光SLは大きく減衰することなく前方に出射される。このため、ファントム現象が生じた場合に、より車両用灯具の点灯状態と非点灯状態との識別が困難となることがあった。
【0049】
しかしながら、本実施形態に係る車両用灯具によれば、そもそもファントム現象の発生が防止されているので、上述の観点を考慮することなく、ライトガイド5を透明度65%〜85%の透明度の高い樹脂によって形成することができる。したがって、より外観意匠性の高い車両用灯具を提供することができる。なお、ライトガイド5に採用する樹脂の透明度は、ライトガイド5の厚みによって変動する。例えば、ライトガイド5の厚みが小さい場合には透明度の低い樹脂を採用し、ライトガイド5の厚みが大きい場合には透明度の高い樹脂を採用する。
【0050】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る車両用灯具の第2灯具ユニット204近傍を拡大して示す断面図である。上述の図4に示した第1実施形態では、ライトガイド5の後方突出部52の反射面52aを後方に凸の曲面に形成して、ライトガイド5の照射領域X2を所望の空間領域内に収まるように限定した。これに対して、本発明の第2実施形態では、ライトガイド205の主要部251の形状を工夫することにより、ライトガイド205の照射領域X3が所望の空間領域内に限定されている。
【0051】
図5に示したように、第2実施形態に係る車両用灯具も、上述した第1実施形態と同様にライトガイド205とエクステンション206とを備えている。エクステンション206は、第1実施形態と同様に、背面部261、上側延出部262、下側延出部263とを備えている。また、上側延出部262が灯具前方側に延出し、その前端部262aがライトガイド205よりも灯具前方側に位置されている。
【0052】
本実施形態に係るライトガイド205の後方突出部252は、図3に示した参考例に係るライトガイド105と同様に平坦面に形成されている。一方、ライトガイド205の主要部251は、その前面251aが灯具前方に突出するように、長軸が水平方向に延在する略楕円形状とされている。これにより、反射面252aで反射された光は、主要部251の上面及び下面で一度内面反射され、反射面252aよりも前方で焦点F1を結んでからライトガイド205の前方へ出射される。つまり本実施形態に係るライトガイド205においては、ライトガイド205の主要部251が、ライトガイド205からの出射光が照射範囲X3を通過する形状に形成されている。
【0053】
本実施形態においては、図示したように、ライトガイド205から出射する光は、エクステンション206の上側延出部262の前端部262aに近い位置で一度集光されてから拡散する。そのため、ライトガイド205から出射する光の拡散角度θを大きく設定しても、ライトガイド205からの出射光がエクステンション206の上側延出部262で遮られることがない。ライトガイド205の拡散角度θを大きく設定すると、灯具前方の広範囲に光を出射することができるので、第2灯具ユニット204の被視認性を高めることができる。
【0054】
したがって、本実施形態に係る車両用灯具によれば、ライトガイド205からの拡散角度θを大きくして第2灯具ユニット204の被視認性を高めつつ、ファントム現象の防止及び高い光の利用効率を備えた車両用灯具を実現することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、ライトガイド5の内部に焦点F1を設けた例を挙げたが、ライトガイド5の外側に焦点F1を設ける構成としてもよい。
【0056】
以上、本発明を第1実施形態及び第2実施形態を例に挙げて説明したが、本発明は上述の第1実施形態及び第2実施形態に限定されない。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、ライトガイド5,205の後方突出部52,252の反射面52a,252aが金属蒸着を施して形成される例を挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、金属蒸着膜を設けず、入射する光を全反射する複数の微小な反射ステップ部によりこの反射面を形成してもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では直線状に延びるライトガイド5,205を例に挙げて説明したが、ライトガイドを曲線状に形成してもよい。また、ライトガイド5,205の一方の端部にのみLED41を配置した例を挙げて説明したが、ライトガイド5,205の両端にLED41を配置してもよい。
【0059】
また上述の実施形態では、エクステンション6,206の上側延出部62,262を、車幅方向に延びるライトガイド5,205の上方に連続的に設けた例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、ライトガイド5,205の上方に上側延出部62,262を離散的に配置しても、ライトガイド5,205内部に入射する光の一部を上側延出部62,262を遮ることができる。これにより、ファントム現象によって発光するライトガイド5,205の光度を低減することができる。上側延出部62,262によって、ライトガイド5,205の点灯状態と非点灯状態とを明確に識別できる程度に、ライトガイドライトガイド5,205の光度を低減すれば、ライトガイド5,205の上方に上側延出部62,262を部分的に配置してもよい。
【0060】
また上述の実施形態では、ライトガイド5,205を直線状の部材として説明したが、本発明はこの例に限られない。例えばライトガイド5,205を、第1灯具ユニット4の周囲を囲むリング状に形成してもよい。この場合は、ライトガイド5,205の少なくとも一部の上方に上側延出部62,262を配置すれば、ファントム現象の発生を防止することができる。
【0061】
また、本発明の実施形態に係る車両用灯具は、ブレーキランプやターンシグナルランプを備えた車両用標識灯に適用しても良いし、ターンシグナルランプを備えた車両用前照灯に適用しても良い。
【0062】
また、本実施形態に係る車両用灯具は4輪の車両に適用することもできるし、3輪や2輪の車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:ランプボディ、2:アウターカバー、3:第1灯具ユニット、31:光源バルブ、32:リフレクタ、4:第2灯具ユニット、41:LED、5:ライトガイド、51:主要部、52:後方突出部、6:エクステンション、61:背面部、62:上側延出部、63:下側延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の導光体と、
前記導光体の少なくとも一端に設けられ、前記導光体へ光を入射させる光源と、
前記導光体の少なくとも一部の上方に配置され、前端が前記導光体よりも灯具前方側に延出する遮光部材と、を備え、
前記導光体の灯具後方側の側面には、前記光源からの光を前記導光体内部で反射して前記導光体から灯具前方に出射させる反射部が設けられ、
前記導光体は、光の出射範囲が前記導光体を含み前記遮光部材の下方に位置する空間領域内となるように形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記遮光部材の前記前端の下部を通過し前記導光体の前面に接する仮想直線と、水平面とがなす角度が10°〜20°のいずれかの値となるように、前記遮光部材の前記前端が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光体の鉛直断面において、前記反射部は後方に突出した凸状であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光体の鉛直断面において、前記導光体の前面が前方に突出した長円状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記導光体は、前記光源からの光を前記反射部の前方に集光させるように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110047(P2013−110047A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255718(P2011−255718)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】