説明

車両用灯具

【課題】導光体を用いた車両用灯具において、光利用効率を向上する。
【解決手段】車両用灯具10は、カバー12とランプボディ14とから構成された灯室16内に、LED22と、LED22からの光を入射する入射面20aを有する導光体20とが設けられている。入射面20aには、微細凹凸構造が形成されている。該微細凹凸構造は、可視光波長以下のピッチで形成された凹部または凸部を含む。また、該微細凹凸構造は、アスペクト比1以上の凹部または凸部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に導光体を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用前照灯に搭載されるクリアランスランプや、車両後方に設けられるテールランプとして、棒状の導光体の端部にLEDを配置し、線状の発光が得られるように構成された車両用灯具が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146722号公報
【特許文献2】特開2010−272469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導光体を用いた車両用灯具においては、LEDからの光が導光体に入射する際に、光の一部が導光体の入射面で反射する。この導光体の入射面における反射により、光の利用効率が低下する。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、導光体を用いた車両用灯具において、光の利用効率を高めることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源を搭載するための光源搭載部と、光源からの光を入射する入射面を有する導光体とを備える。入射面には微細凹凸構造が形成されている。
【0007】
この態様によると、入射面における反射が減り、入射面から導光体内に入る光を増やすことができる。その結果、光の利用効率を高めることができる。
【0008】
微細凹凸構造は、可視光波長以下のピッチで形成された凹部または凸部を含んでもよい。
【0009】
微細凹凸構造は、ピッチ10nmから1000nmの凹部または凸部であってもよい。
【0010】
微細凹凸構造は、アスペクト比1以上の凹部または凸部を含んでもよい。
【0011】
入射面は、平面部と傾斜部とを備え、平面部および/または傾斜部に微細凹凸構造が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導光体を用いた車両用灯具において、光の利用効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具を概略的に示す図である。
【図2】図2(a)および図2(b)は、本実施形態に係る導光体を説明するための図である。
【図3】導光体の入射面における測定ポイントを示すための図である。
【図4】図4は、第1実施例に係る導光体の入射面の原子力間顕微鏡像を示す。
【図5】第1実施例に係る導光体の入射面の反射率特性を示す図である。
【図6】第1実施例に係る導光体の透過率特性を示す図である。
【図7】第2実施例に係る導光体の入射面の反射率特性を示す図である。
【図8】第2実施例に係る導光体の透過率特性を示す図である。
【図9】第3実施例に係る車両用灯具の一部を破断した正面図である。
【図10】第3実施例に係る車両用灯具の要部分解斜視図である。
【図11】図9のIII−III線に沿ったLEDを含むインナーレンズの拡大断面図である。
【図12】図9のIV−IV線に沿ったLEDを含むインナーレンズの拡大断面図である。
【図13】図11においてLEDが発光したときに出射される光の光路図である。
【図14】図12においてLEDが発光したときに出射される光の光路図である。
【図15】インナーレンズの導光凹部の拡大図である。
【図16】インナーレンズの導光凹部に形成した微細凹凸構造の原子力間顕微鏡像を示す図である。
【図17】第3実施例に係るインナーレンズの平面部の反射率特性を示す図である。
【図18】第3実施例に係るインナーレンズの傾斜部の反射率特性を示す図である。
【図19】第3実施例に係るインナーレンズの配光特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具10を概略的に示す。本実施形態に係る車両用灯具10は、昼間に点灯させて歩行者や対向車に車両の存在を知らせるデイタイムランニングランプとして用いられる。車両用灯具10は、走行ビーム用ランプ、すれ違いビーム用ランプ等を含むコンビネーションヘッドランプに組み込まれてもよい。
【0015】
車両用灯具10は、ランプボディ14と、ランプボディ14の前面開口部を覆う透明なカバー12とを備える。ランプボディ14とカバー12は、灯室16を形成しており、該灯室16内には、発光ユニット18と、導光体20とが設けられている。
【0016】
図1では、図示を簡略化するために、真っ直ぐな棒状の導光体20を図示しているが、導光体20の形状は特に限定されず、導光体20が組み込まれるランプボディの形状に応じて様々な形状をとることができる。本実施形態において、導光体20の断面形状は略円形状である。導光体20は、一方の端面が発光ユニット18から光を入射する入射面20aとされている。また、導光体20の側面のうち前面20bは平面状に形成されている。また、導光体20の側面のうち背面20cには、光を拡散させるためのステップ20dが形成されている。このように形成された導光体20は、入射面20aから入射した光を内部で導光しながら、前面20bから外部に出射する。
【0017】
発光ユニット18は、導光体20の入射面20aに向けて光を照射するLED22と、LED22に電流を供給する基板24とを備える。LED22は、1mm四方程度の大きさの発光部(発光チップ)を有する白色発光ダイオードであって、光出射面を導光体20の入射面20aに向けて基板24上に搭載されている。
【0018】
以上のように構成された車両用灯具10の動作について説明する。図1には、車両用灯具10から出射される光の光路を破線で示している。車両用灯具10において、LED22に電流が供給されると、LED22から出射された光は入射面20aより導光体20内に入射する。導光体20内に入射した光は、導光体20内を反射を繰り返しながら進行する。導光体20内を進む光は、背面20cに形成されたステップ20dにより拡散され、前面20bから導光体外に出射される。
【0019】
図2(a)および図2(b)は、本実施形態に係る導光体20を説明するための図である。図2(a)は導光体20の入射面20a近傍を示す。本実施形態において、導光体20の入射面20aは平坦面とされているが、入射面20aの形状は特に限定されない。図2(a)に示すように、導光体20の入射面20aへの入射光は、その一部が反射光となり、残りが導光体20内に入射する透過光となる。入射面20aで反射する反射光を減らすことができれば、導光体20内に入射する透過光を増やすことができ、その結果、車両用灯具10から照射される光量を増やすことができる。言い換えると、車両用灯具10の光利用効率を向上できる。
【0020】
図2(b)は導光体20の入射面20aの拡大図である。本実施形態においては、図2(b)に示すように、導光体20の入射面20aに微細凹凸構造26が形成されている。この微細凹凸構造26は、可視光波長(380nm〜780nm)以下のピッチPで形成された凹部または凸部を含むナノパターンである。
【0021】
図2(b)では凹部または凸部のピッチPは一定となっているが、入射面20a上には様々なピッチPの凹部または凸部がランダムに存在してよい。より具体的には、微細凹凸構造26は、可視光波長以下のピッチPの凹部または凸部を含んでいればよく、それに加えて可視光波長以下のピッチPよりも大きいピッチの凹部または凸部が存在していてもよい。例えば、微細凹凸構造26は、ピッチ10nmから1000nmの凹部または凸部から構成されていてもよい。また、微細凹凸構造26の凹部または凸部は、アスペクト比が1以上であることが好ましい。ここで、アスペクト比とは、凹部または凸部の高さを幅で割った値である。
【0022】
通常、光が空気中から屈折率が空気よりも高い物質に入射する場合、境界面において光の一部が反射する。しかしながら、上記のような微細凹凸構造26を入射面20a上に形成した場合、光は境界面を認識しにくくなるので、反射光が減少し、透過光が増加する。従って、入射面20aに微細凹凸構造26を形成した導光体20を用いることにより、光利用効率を向上した車両用灯具10を実現できる。
【0023】
導光体20の材料としては、例えばアクリルやポリカーボネートなどの可視光に対して透明な樹脂を用いることができる。導光体20を射出成形により形成する場合、微細凹凸構造26は、表面にナノオーダの微細凹凸構造を形成した金型を用いることにより形成できる。微細凹凸構造26の形成方法は特に限定されず、例えばエッチングなど方法により入射面20aに微細凹凸構造26を形成してもよい。
【0024】
次に、本発明者が試作した導光体の実施例について説明する。図3は、導光体20の入射面20aにおける測定ポイントを示すための図である。図3には、以下に説明する反射率特性の測定ポイント(入射面20aの中央部)が図示されている。
【0025】
図4は、第1実施例に係る導光体の入射面の原子力間顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)像を示す。第1実施例に係る導光体の成形条件は、樹脂:アクリル、金型温度:110℃、樹脂温度:260℃、保圧:120MPa、冷却時間:300sである。図4は、図3に示す測定ポイントにおけるAFM像である。
【0026】
図5は、第1実施例に係る導光体の入射面の反射率特性を示す。ここでは、図3に示す測定ポイントについて、分光測定器を用いて反射率を測定した。図5において、縦軸は反射率(%)であり、横軸は波長(nm)である。図5には、本実施例に係る導光体の反射率特性の他に、比較例として入射面に微細凹凸構造が形成されていない導光体の反射率特性を図示している(符号Ref)。
【0027】
図5に示すように、微細凹凸構造が形成されていない導光体においては、380nm〜780nmの可視光波長全域において反射率は約4%であった。一方、本第1実施例に係る導光体では、可視光波長全域にわたり反射率は2%以下であった。このように、アクリルを用いた導光体において、入射面に微細凹凸構造を形成することにより、入射面における反射率を低減できることが分かる。
【0028】
図6は、第1実施例に係る導光体の透過率特性を示す。図6において、縦軸は透過率(%)であり、横軸は波長(nm)である。図6に示す透過率特性は、導光体の入射面に照射した光のうち、何パーセントの光が導光体の入射面を透過したかを示す。図6には、本第1実施例に係る導光体の透過率特性の他に、比較例として微細凹凸構造が形成されていない導光体の透過率特性を図示している(符号Ref)。
【0029】
図6から、本第1実施例に係る導光体は、可視光波長の広い範囲にわたり比較例に係る導光体と比較して、高い透過率を達成できることが分かる。導光体内により多くの光が入射することにより、車両用灯具から照射される光量を増やすことができる。
【0030】
次に、第2実施例に係る導光体を示す。第2実施例に係る導光体の成形条件は、樹脂:ポリカーボネート、金型温度:120℃、樹脂温度:280℃、保圧:160MPa、冷却時間:100sである。
【0031】
図7は、第2実施例に係る導光体の入射面の反射率特性を示す。ここでも、図3に示す測定ポイントについて、分光測定器を用いて反射率を測定した。図7において、縦軸は反射率(%)であり、横軸は波長(nm)である。
【0032】
図7に示すように、本第2実施例に係る導光体においても、可視光波長全域にわたり反射率は2%以下であった。このように、ポリカーボネートを用いた導光体においても、入射面に微細凹凸構造を形成することにより、入射面における反射率を低減できることが分かる。
【0033】
図8は、第2実施例に係る導光体の透過率特性を示す。図8において、縦軸は透過率(%)であり、横軸は波長(nm)である。図8には、本第2実施例に係る導光体の透過率特性の他に、比較例として微細凹凸構造が形成されていない導光体の透過率特性を図示している(符号Ref)。
【0034】
図8から、本第2実施例に係る導光体においても、可視光波長の広い範囲にわたり比較例に係る導光体と比較して、高い透過率を達成できることが分かる。導光体内により多くの光が入射することにより、車両用灯具から照射される光量を増やすことができる。
【0035】
図9は、本発明の第3実施例に係る車両用灯具の一部を破断した正面図である。また、図10は、本発明の第3実施例に係る車両用灯具の要部分解斜視図である。
【0036】
図9に示す車両用灯具30は、車両右側のテール&ストップランプとして用いられる。車両用灯具30は、バックアップランプ、ターンシグナルランプ等を含むリアコンビネーションランプに組み込まれてもよい。また、図9に示す車両用灯具30は、デイタイムランニングランプやクリアランスランプなど、種々のランプに組み込まれてもよい。
【0037】
車両用灯具30は、矩形の容器状をしたランプボディ31と、このランプボディ31の前面開口に取着されたアウターレンズ32とで構成された灯室内に組み込まれている。車両用灯具30は、図10の要部分解斜視図に示すように、複数のLED33を回路基板34に配列搭載した光源部35と、この光源部35の前面側に配置された複数のインナーレンズ36,37を平板部38を介して一体化した透光部材からなる複合インナーレンズ39とで構成されている。そして、LED33から出射した光を複合インナーレンズ39に入射させ、この複合インナーレンズ39において屈折し、あるいは内面反射させて複合インナーレンズ39内を導光した上で所要の配光特性で出射させるように構成されている。また、光源部35は複数のLED33に印加する電流を切り替えることにより発光強度が変化され、低光度で発光されたときにはテールランプとして機能し、高光度で発光されたときにはストップランプとして機能するように構成されている。
【0038】
図11は、図9のIII−III線に沿ったLEDを含むインナーレンズの拡大断面図、図12は、図9のIV−IV線に沿った同じく拡大断面図である。また、図13と図14はそれぞれ、図11,図12においてLEDが発光したときに出射される光の光路図である。
【0039】
これらの図において、LED33はLEDチップ211をベース212に表面実装し、半球型の封止樹脂213で覆った構成であり、ベース212に設けた電極214を通して電流を通流することによりLEDチップ211が発光し、封止樹脂213を通して所要の特性で光が出射される。通流する電流を制御することにより発光強度を低光度と高光度に切り替えることが可能である。また、本第3実施例では、4つのLED33を回路基板34に枡目状に配置して搭載するとともに、複合インナーレンズ39はこれら4つのLED33のそれぞれに対応して4つのインナーレンズ36と37を上下左右に配置した一体化した複合型レンズとして構成したものである。
【0040】
複合インナーレンズ39の構成を詳細に説明する。4つのインナーレンズ36,37において、上下に配置された同一符号のインナーレンズ36又は37は同じ構成であるが、左右に配置されたインナーレンズ36と37は一部の構成において相違している。先ず、図11および図13を参照してインナーレンズ36の構成について説明する。インナーレンズ36は概ね碗状に形成されており、その中心軸は車両用灯具30の光軸Oxとなり、かつLED33の光軸に一致されている。インナーレンズ36の光軸Oxを含む底面には後述する形状に凹設した導光凹部40が形成され、LED33はこの導光凹部40内に配置され、LED33から出射した光は、この導光凹部40の内面からインナーレンズ36内に導光される。
【0041】
本第3実施例において、導光凹部40は平面部40aと傾斜部40bとから構成されている。平面部40aは、ほぼ光軸Oxに対して垂直な平面に形成されている。傾斜部40bは、導光凹部40の内周面であり、光軸Oxに対して傾斜した面として形成されている。より具体的には、傾斜部40bは、LED33の発光点を焦点とする凸面よりも若干曲率半径が大きな曲線を円周方向に包絡した曲面として構成されている。これにより、LED33から出射した光のうち、平面部40aに投射された光はこの平面部40aで屈折されてインナーレンズ36内に導光され、傾斜部40bに投射された光は同じく屈折されたときに拡散度合いが抑えられた光線、ここでは平行に近い光線に絞られてインナーレンズ36の周側面に向けて導光されることになる。
【0042】
インナーレンズ36の内底面41aは、導光凹部40の平面部40aに対応して光軸Oxにほぼ垂直な平面に形成されており、導光凹部40の平面部40aに入射されてインナーレンズ36内に導光された光は内底面41aで若干屈折されてインナーレンズ36を透過し、光軸Oxに対し上下にほぼ20°の範囲で前方に向けて光を出射して照射を行う中心前方照射領域A0として構成されている。
【0043】
インナーレンズ36の中心前方照射領域A0の周囲の周辺部位は、光軸Ox方向に2つの領域に区画されており、底面側に位置する周辺部位は中帯前方照射領域A1として構成されている。この中帯前方照射領域A1では、外周面41bはLED33の発光光を光軸Ox方向(前方方向)へ向け反射させる略放物面として構成されており、導光凹部40の傾斜部40bから入射されて導光されてくる光の一部を光軸Oxに沿って向けた平行光として反射する。また、中帯前方照射領域A1の内周面41cは、LED33の発光点を頂点とする円錐面として構成されるとともに、その前側端面34dは断面が光軸Oxに向けた凸球面で光軸Oxを中心とする円環面として形成されており、外周面41bで反射された平行光を集光するように屈折し、光軸Oxに対し左右にそれぞれ略20°の範囲で前方に向けて出射する。
【0044】
中帯前方照射領域A1のさらに周辺部位は正面から見て円周方向に上下、左右に4つの部位に区画されており、上下周辺部位A2と左右周辺部位A3は断面形状が相違している。上下周辺部位A2は光軸Oxに対して対称な形状であり、周辺前方照射領域として構成されている。この周辺前方照射領域A2において、外周面42aは中帯前方照射領域A1の外周面41bと同様にLED33の発光点を焦点とする回転放物面として構成されており、導光凹部40の傾斜部40bから入射されて導光されてくる光の一部を光軸Oxに沿った平行光として反射する。一方、内周面42bは中心前方照射領域A0の凸球面41dに隣接し、LED33を頂点とする円錐面として形成されるとともに、これにつながる領域は光軸に平行な円筒面42cに形成される。そして、上下周辺部位A2の開口端面は光軸Oxに向けた凸球面42dに形成されており、外周面42aで反射された平行光を集光するように屈折して光軸Oxに沿った方向に出射する。以上の構成はインナーレンズ37についても同じであり、同一符号を付して説明は省略する。
【0045】
一方、インナーレンズ36において、図12および図14に示すように、左右周辺部位A3は側方照射領域として構成されている。この側方照射領域A3の外周面42aの構成は、上下の周辺前方照射領域A2と同じである。すなわち、LED33の発光光を光軸Ox方向(前方方向)へ向け反射させる略放物面として構成されており、導光凹部40の傾斜部40bから入射されて導光されてくる光の一部を光軸Oxに沿った平行光として反射する。また、傾斜部40bの構成も上下の周辺前方照射領域A2と同じである。一方、側方照射領域A3は右周辺部位と左周辺部位とで構成が相違している。右周辺部位は第1の側方照射領域A3R1として構成され、光軸Oxに平行な内周面42eと、所要の曲率半径の凸面を円周方向に包絡した形状とされ、外周面42aで反射された平行光を光軸Oxに対しほぼ45度から90度の範囲で右側に向けて集光しながら反射する凸型反射面42fとで構成されている。また、左周辺部位は第2の側方照射領域A3R2として構成され、開口縁部内面は所要の曲率半径の凸面を円周方向に包絡した形状とされ、外周面42aで反射された平行光を左側に向けて集光しながら反射する凸型反射面42gとして構成されている。さらに、このインナーレンズ36の左側の開口縁部と、これに隣接している左側に配置されたインナーレンズ37の開口縁部との間に微小寸法の間隙43が確保されており、この間隙43に臨む開口縁部外面43aは光軸Oxにほぼ平行な円筒面として形成され、凸型反射面42gで反射した光を光軸Oxに対してほぼ15°から55°の範囲で左側に向けて屈折して出射させるようになっている。
【0046】
他方、インナーレンズ37では、インナーレンズ36に比較すると中心前方照射領域A0と、中帯前方照射領域A1と、その周囲の上下に配置された周辺前方照射領域A2の構成はインナーレンズ36と同じであるので等価な部分に同一符号を付して説明は省略し、インナーレンズ36と構成が異なる左右周辺部位の構成について説明する。図12および図14において、インナーレンズ37の第1の側方照射領域A3L1としての左周辺部位において、外周面42aはインナーレンズ36と同様にLED33の発光光を光軸Ox方向(前方方向)へ向け反射させる略放物面として構成しており、内周面42eは光軸に平行な円筒面で形成され、導光凹部40の傾斜部40bから入射されて導光されてくる光の一部を光軸Oxに沿った平行光として反射する。また、開口縁部の外側の凸型反射面42hは所要の曲率半径の凸面に形成されており、外周面42aで反射された平行光を光軸Oxに対してほぼ45度から90度の範囲で右側に向けて集光しながら反射するように構成されている。右周辺部位の第2の側方照射領域A3L2はインナーレンズ36の第2の側方照射領域A3R2と線対称な形状であり、所要の曲率半径の凸面に形成され、外周面42aで反射された平行光を光軸Oxに対して右側に向けて集光しながら反射する凸型反射面42gとして構成されている。このインナーレンズ37においても、隣接するインナーレンズ36との間に確保されている微小寸法の間隙43に臨む開口縁部外面43aは光軸にほぼ平行な円筒面として形成され、凸型反射面42hで反射した光を光軸Oxに対して15°から55°の範囲で右側に向けて屈折して出射させるようになっている。
【0047】
このように構成された車両用灯具30では、図13および図14に示すように、LED33から出射された光のうち、光軸Oxに対して上下にほぼ20°、左右にほぼ30°の範囲内に向けられた光は、インナーレンズ36,37の導光凹部40の平面部40aにおいて若干屈折されてインナーレンズ36,37内を導光し、インナーレンズ36,37の内底面41aで若干屈折されて出射される。したがって、インナーレンズ36,37の中心前方照射領域A0によって光軸Oxを含む領域において光軸Oxに対し左右にほぼ30°の角度範囲でランプの前方、すなわち車両の後方を照射する。
【0048】
また、LED33から出射された光のうち、光軸Oxに対して上下にほぼ20°左右にほぼ30°よりも大きな角度で出射された光は、インナーレンズ36,37の導光凹部40の傾斜部40bにおいて直進状態でインナーレンズ36,37に導入される。そして、中帯前方照射領域A1の外周面41bの回転放物面形状によって光軸Oxに沿った平行光として反射されてインナーレンズ36,37内を導光される。導光された光は凸球面41dにおいて集光された状態で光軸Oxに沿った方向に出射される。出射された光は凸球面41dの前方の直近位置で一旦集光されるが、その後は拡散された状態となり、車両後方に向けて光軸Oxを中心にした光軸Oxに対し上下方向に20°、左右方向に30°の楕円状の範囲内に照射される。
【0049】
また、インナーレンズ36,37の各上下の周辺前方照射領域A2では、インナーレンズ36,37の導光凹部40の傾斜部40bからインナーレンズ36,37に導入された光は、当該周辺前方照射領域A2の外周面42aの回転放物面の形状によって光軸Oxに沿った平行光として反射されてインナーレンズ36,37内を導光され、開口端面に形成された凸球面42dにおいて集光された状態で光軸Oxに沿った方向に出射される。出射された光は凸球面42dの前方の直近位置で一旦集光され、その後は拡散された状態となり、車両の後方に向けて光軸Oxに対し左右にほぼ30°の範囲内で照射される。
【0050】
一方、インナーレンズ36,37の左右の各周辺部位で構成される側方照射領域A3では、インナーレンズ36,37の導光凹部40の傾斜部40bからインナーレンズ36,37に導入された光は、当該側方照射領域A3の外周面42aの回転放物面の形状によって光軸Oxに沿った平行光として反射されてインナーレンズ36,37内を導光される。右側に配置されたインナーレンズ36において、第1の側方照射領域A3R1として構成された右周辺部位では、外周面42aで反射された光は開口縁部内面に形成された凸型反射面42fにおいて光軸Oxに対しほぼ45°から90°の範囲で右側に向けて全反射される。この反射された光は一旦集光されるが、その後は拡散光として車両の右方向に出射される。第2の側方照射領域A3R2として構成された左周辺部位では、外周面42aで反射された光は凸型反射面42gで反射され、開口縁部外面43aで屈折されて一旦集光された後、拡散光として光軸に対してほぼ15°から55°の範囲で車両の左側に向けて出射される。このとき、照射される光は凸型反射面42gで反射されたときに一旦集光された上で開口縁部外面43aで屈折されるので、一旦集光された光の集光点を隣接する左側のインナーレンズ37の開口縁部よりも前方に位置させることが可能になり、照射される光はこの集光点から拡散されるので、左側のインナーレンズ37の開口縁部に干渉して光照射の障害になることが防止される。
【0051】
他方、左側のインナーレンズ37の左右の各周辺部位で構成される側方照射領域A3L1,A3L2では、インナーレンズ37の導光凹部40の傾斜部40bからインナーレンズ37に導入された光は当該側方照射領域A3L1,A3L2の外周面42aの回転放物面形状によって光軸Oxに沿った平行光として反射されてインナーレンズ37内を導光される。第1の側方照射領域A3L1として構成された左周辺部位では、外周面42aで反射された光は凸型反射面42hにおいて光軸Oxに対しほぼ45°から90°の範囲で右側に向けて反射される。この反射された光は一旦集光されるがその後は拡散光として車両の右方向に出射される。第2の側方照射領域A3L2として構成された右周辺部位では、外周面42aで反射された光は凸型反射面42gで反射され、開口縁部外面43aで屈折されて一旦集光された後、拡散光として光軸Oxに対してほぼ15°から55°の範囲で車両の右側に向けて出射される。このときにも、照射される光は凸型反射面42gで反射されて集光された上で開口縁部外面43aで屈折されるので、一旦集光された光の集光点を隣接する右側のインナーレンズ36の開口縁部よりも前方に位置させることが可能になり、照射される光はこの集光点から拡散されることになるので、右側のインナーレンズ36の開口縁部に干渉して光照射の障害になることが防止される。
【0052】
車両用灯具30をテールランプとして機能させるべく各LED33を低光度で発光したときには、中心前方照射領域A0と中帯前方照射領域A1、さらには周辺前方照射領域A2から出射される光により車両の後方への配光が行われる。また、インナーレンズ36,37の左右周辺部位で構成された第1の側方照射領域A3R1,A3L1から出射される光により車両の右方向へほぼ90°までの範囲の配光が行われ、第2の側方照射領域A3R2,A3L2から出射される光により車両の左方向へほぼ55°までの範囲の配光が行われる。これにより、テールランプに要求される配光を満たすことができる。
【0053】
また、車両用灯具30をストップランプとして機能させるべく各LED33を高光度で発光したときには、中心前方照射領域A0と中帯前方照射領域A1、さらには周辺前方照射領域A2から出射される光により車両の後方への配光が行われる。このとき、インナーレンズ36,37の左右周辺部位で構成された第1および第2側方照射領域A3R1,A3R2,A3L1,A3L2から出射される光により車両の右方向へほぼ90°までの範囲、および左方向へほぼ55°までの範囲の配光が行われることは同じである。これにより、テールランプに要求される配光を満たすことができる。
【0054】
以上は車両右側のテール&ストップランプについて説明したが、車両左側のテール&ストップランプはインナーレンズの形状を左右対称に形成することにより、車両の左方向ヘほぼ90°までの範囲、および右方向へほぼ55°までの範囲の配光を行うことができる。
【0055】
図15は、インナーレンズの導光凹部の拡大図である。上述した車両用灯具30に用いたインナーレンズ36,37は、導光凹部40の平面部40aおよび傾斜部40bから入射した光を導光する導光体として機能している。従って、インナーレンズ36,37の入射面である平面部40aおよび傾斜部40bに図2(a)および図2(b)で説明したような微細凹凸構造を形成することにより、車両用灯具30から照射される光量を増やすことができ、光利用効率を向上できる。
【0056】
インナーレンズ36,37を射出成形により形成する場合、平面部40aおよび傾斜部40bに形成する微細凹凸構造は、表面にナノオーダの微細凹凸構造を形成した金型を用いることにより形成できる。射出成形でインナーレンズ36,37を形成する場合、導光凹部40の形成に図15に示すような入子(金型)50が用いられる。この場合、平面部40aに対応する入子50の平面部50aおよび傾斜部40bに対応する入子50の傾斜部50bにナノオーダの微細凹凸構造が形成される。
【0057】
入子50に微細凹凸構造を形成する工法を簡単に説明すると、まず、入子50に金属ナノ粒子をスパッタすることにより、入子50の平面部50aおよび傾斜部50bに金属ナノ粒子を成膜する。その後、金属ナノ粒子をマスクとしてエッチングを行う。スパッタリングおよびエッチングの方向は、平面部50aに対して垂直な方向であってよい。このエッチングにより入子50の平面部50aおよび傾斜部50bに微細凹凸構造が形成される。
【0058】
図16は、インナーレンズの導光凹部に形成した微細凹凸構造の原子力間顕微鏡(AFM)像を示す。図16は、傾斜部40bのAFM像である。
【0059】
図17は、本発明の第3実施例に係るインナーレンズの平面部の反射率特性を示す。ここでは、図15に示す平面部40aの測定ポイントAについて、分光測定器を用いて反射率を測定した。図17において、縦軸は反射率(%)であり、横軸は波長(nm)である。図17には、本第3実施例に係るインナーレンズの平面部の反射率特性の他に、比較例として微細凹凸構造が形成されていない平面部の反射率特性を図示している(符号Ref)。
【0060】
図17に示すように、微細凹凸構造が形成されていないインナーレンズにおいては、380nm〜780nmの可視光波長全域において反射率は約4%であった。一方、本第3実施例に係るインナーレンズでは、可視光波長全域にわたり反射率は2%以下であった。このように、インナーレンズの入射面における平面部に微細凹凸構造を形成することにより、反射率を低減できることが分かる。
【0061】
図18は、本発明の第3実施例に係るインナーレンズの傾斜部の反射率特性を示す。ここでは、図15に示す傾斜部40bの測定ポイントBについて、分光測定器を用いて反射率を測定した。図18において、縦軸は反射率(%)であり、横軸は波長(nm)である。図18には、本第3実施例に係るインナーレンズの傾斜部の反射率特性の他に、比較例として微細凹凸構造が形成されていない傾斜部の反射率特性を図示している(符号Ref)。
【0062】
図18に示すように、微細凹凸構造が形成されていないインナーレンズにおいては、380nm〜780nmの可視光波長全域において反射率は約4%であった。一方、本第3実施例に係るインナーレンズでは、可視光波長全域にわたり反射率は2%以下であった。このように、インナーレンズの入射面における傾斜部に微細凹凸構造を形成することにより、反射率を低減できることが分かる。
【0063】
図19は、本発明の第3実施例に係るインナーレンズの配光特性を示す。図19は、インナーレンズの前方√10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に照射される光の光度を示したものである。図19において、横軸は仮想鉛直スクリーンにおける鉛直方向位置(度)を表し、縦軸は照射光の光度(cd)を表す。図19の横軸において、0度はインナーレンズの光軸Oxが仮想鉛直スクリーンと交わる位置を表す。図19には、本第3実施例に係るインナーレンズの配光特性の他に、比較例として微細凹凸構造が形成されていないインナーレンズの配光特性を図示している(符号Ref)。
【0064】
図19に示すように、本第3実施例に係るインナーレンズを用いることにより、微細凹凸構造が形成されていないインナーレンズと比べて全体的に光度が増加している。特に、−10度〜+10度の光軸Ox近傍において光度が高くなっていることが分かる。
【0065】
上記実施例においては、導光凹部40における平面部40aと傾斜部40bの両方に微細凹凸構造を形成したが、平面部40aおよび傾斜部40bのいずれか一方に微細凹凸構造を形成した場合もインナーレンズの光利用効率を向上できる。
【0066】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0067】
例えば、上述の実施形態では、光源としてLEDを例示したが、光源はLEDに限定されない。また、上述の実施形態では、導光体の背面に光を拡散させるためのステップを形成したが、導光体の光拡散構造はこれに限定されない。
【0068】
また、上述の実施形態では、本発明をデイタイムランニングランプに適用したが、これに限定されず、例えばクリアランスランプやテールランプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10、30 車両用灯具、 12 カバー、 14、31 ランプボディ、 16 灯室、 18 発光ユニット、 20 導光体、 20a 入射面、 20b 前面、 20c 背面、 20d ステップ、 22、33 LED、 24 基板、 26 微細凹凸構造、 32 アウターレンズ、 35,36 インナーレンズ、 39 複合インナーレンズ、 40 導光凹部、 40a 平面部、 40b 傾斜部、 50 入子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を搭載するための光源搭載部と、
前記光源からの光を入射する入射面を有する導光体と、
を備える車両用灯具であって、
前記入射面に微細凹凸構造を形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記微細凹凸構造は、可視光波長以下のピッチで形成された凹部または凸部を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記微細凹凸構造は、ピッチ10nmから1000nmの凹部または凸部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記微細凹凸構造は、アスペクト比1以上の凹部または凸部を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記入射面は、平面部と傾斜部とを備え、前記平面部および/または前記傾斜部に微細凹凸構造を形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図4】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−16460(P2013−16460A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58850(P2012−58850)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【出願人】(391007507)伊藤光学工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】