説明

車両用灯具

【課題】一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体を備えた車両用灯具において、灯具正面方向への光照射を効率的に行えるようにした上で、その導光体が均一に発光して見えるようにする。
【解決手段】導光体20に対して、その左端面20aから入射した光を、その後面20cの各一般部20c0とその右側に隣接する各反射素子20sとで順次内面反射させて、その前面20dから灯具前方へ向けて出射させる構成とする。その際、複数の一般部20c0のうち一部の一般部20c0を、他の一般部20c0よりも灯具前方側に変位した前方変位部20c1〜20c5として形成する。これにより、これら各前方変位部20c1〜20c5で反射した光については、その右側に隣接する反射素子20sに入射する光の量を略零にして、導光体20の中で繰返し反射する光の量を多くし、導光体20における右端面20bの近傍領域まで光を導くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、導光体を備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば「特許文献1」や「特許文献2」に記載されているように、光源からの出射光を、導光体に対して、その一端面から入射させた後、その後面に形成された複数の反射素子で内面反射させて、その前面から灯具前方へ向けて出射させるように構成された車両用灯具が知られている。
【0003】
その際「特許文献2」に記載された車両用灯具においては、その導光体の後面に形成された複数の反射素子が、断面楔状の凹溝として導光体の長手方向に互いに所定間隔をおいて形成された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−226739号公報
【特許文献2】特開2002−367404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導光体を備えた車両用灯具において、その導光体が一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びている場合には、上記「特許文献2」に記載されているように、複数の反射素子を、断面楔状の凹溝として導光体の長手方向に互いに所定間隔をおいて形成し、これら各反射素子による内面反射を、その一端面側に隣接する後面の一般部において内面反射した光に対して行う構成とすることが、灯具正面方向への光照射を効率的に行う上で好ましい。
【0006】
しかしながら、このような内面反射構造を採用した場合には、後面の一般部で反射した光の多くが、その他端面側に隣接する反射素子に入射してしまうので、導光体の中で繰返し反射する光の量が少なくなってしまい、導光体における他端面の近傍領域まで光を導くことができなくなり、このため、灯具正面方向から観察したとき、導光体が均一に発光して見えるようにすることが困難となってしまう、という問題がある。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体を備えた車両用灯具において、灯具正面方向への光照射を効率的に行うことができるようにした上で、その導光体が均一に発光して見えるようにすることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、導光体の後面の形状に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体に対して、光源からの出射光を、上記一端面から入射させた後、該導光体の後面に形成された複数の反射素子で内面反射させて、該導光体の前面から灯具前方へ向けて出射させるように構成された車両用灯具において、
上記複数の反射素子が、断面楔状の凹溝として上記導光体の長手方向に互いに所定間隔をおいて形成されており、
これら各反射素子による内面反射が、該反射素子の上記一端面側に隣接する上記後面の一般部において内面反射した光に対して行われるように構成されており、
上記複数の一般部のうち一部の一般部が、他の一般部よりも灯具前方側に変位した前方変位部として形成されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオード等が採用可能である。
【0011】
上記「導光体」は、一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びるように形成されていれば、その具体的な形状は特に限定されるものではなく、その際、直線状に傾斜してもよいし曲線状に傾斜してもよい。
【0012】
上記「導光体の長手方向」とは、一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる方向を意味するものである。
【0013】
上記「複数の反射素子」は、断面楔状の凹溝として導光体の長手方向に互いに所定間隔をおいて形成されていれば、その間隔の具体的な値は特に限定されるものではなく、その際、必ずしも等間隔で形成されていなくてもよい。また、これら各「反射素子」あるいは各「一般部」による「内面反射」は、全反射により行われるものであってもよいし、その表面に鏡面処理を施すことにより通常の鏡面反射として行われるものであってもよい。
【0014】
上記「前方変位部」は、導光体の後面における他の一般部よりも灯具前方側に変位していれば、他の一般部に対して灯具前方側に平行移動するように変位しているものであってもよいし、いずれかの方向に傾斜した状態で変位しているものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体に対して、光源からの出射光を、その一端面から入射させた後、その後面に形成された複数の反射素子で内面反射させて、その前面から灯具前方へ向けて出射させるように構成されているが、上記複数の反射素子は、断面楔状の凹溝として導光体の長手方向に互いに所定間隔をおいて形成されており、これら各反射素子による内面反射が、その一端面側に隣接する後面の一般部(すなわち反射素子が形成されていない部分)において内面反射した光に対して行われる構成となっているので、灯具正面方向への光照射を効率的に行うことができる。
【0016】
その上で、本願発明に係る車両用灯具においては、導光体の後面における複数の一般部のうち一部の一般部が、他の一般部よりも灯具前方側に変位した前方変位部として形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、仮に、上記一部の一般部が前方変位部として形成されていないとした場合には、この一般部で反射した光の多くは、その他端面側に隣接する反射素子に入射してしまうこととなる。これに対し、本願発明のように前方変位部として形成された構成とすることにより、この前方変位部で反射した光のうち、その他端面側に隣接する反射素子に入射する光の量を少なくすることまたはこれを零にすることができる。このため、この前方変位部に到達した光の多くまたはそのすべてを導光体の前面へ向けて内面反射させることができる。したがって、導光体の中で繰返し反射する光の量を多くして、導光体における他端面の近傍領域まで光を導くことができる。そしてこれにより、灯具正面方向から観察したとき、導光体が均一に発光して見えるようにすることができる。
【0018】
このように本願発明によれば、一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体を備えた車両用灯具において、灯具前方への光照射を効率的に行うことができるようにした上で、その導光体が均一に発光して見えるようにすることができる。
【0019】
上記構成において、前方変位部の前方変位量が、その一端面側の端縁位置と他端面側の端縁位置とで互いに異なる値に設定された構成とすれば、この前方変位部で反射した光の方向を適宜調整することができる。そしてこれにより、導光体の中で繰返し反射する光の分布を適宜変化させて、導光体の均一発光を容易に実現することができる。
【0020】
その際、前方変位部の前方変位量が、導光体の一端面に近い位置にある前方変位部においては、その他端面側の端縁位置よりも一端面側の端縁位置の方が大きい値に設定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、導光体の一端面に近い位置にある前方変位部に到達する光源からの光は、その光量がかなり大きいものとなるので、この光を前方変位部において導光体の他端面側へ向けて大きな角度で反射させることにより、導光体の均一発光を一層確実に実現することができる。
【0022】
一方、前方変位部の前方変位量が、導光体の一端面から遠い位置にある前方変位部においては、その一端面側の端縁位置よりも他端面側の端縁位置の方が大きい値に設定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0023】
すなわち、導光体の一端面から遠い位置にある前方変位部に到達した光源からの光を、この前方変位部において導光体の他端面側へ向けて小さな角度で反射させることにより、この反射光を導光体の他端面から抜け出させてしまうことなく、導光体の他端面の近傍において、その後面の一般部および反射素子で順次内面反射させることができ、これにより光源からの光を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す平断面図
【図2】図1のII部詳細図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】図2のIV−IV線断面図
【図5】図1のV部詳細図
【図6】(a)は、上記実施形態の導光体の要部を示す平断面図、(b)は、上記実施形態の変形例を示す、(a)と同様の図
【図7】上記実施形態の作用効果を説明するための比較例を示す、図2と略同様の図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す平断面図である。
【0027】
同図に示すように、この車両用灯具10は、車両の右後端部に設けられるテールランプであって、ランプボディ12とこのランプボディ12の前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、車幅方向に曲線状に延びる導光体20と、この導光体20の左端面20aの近傍に配置された発光ダイオード30とが組み込まれた構成となっている。
【0028】
なお、本実施形態の説明において、「前方」や「後方」等の前後方向の向きは、車両用灯具10としての向きであって、車両としての向きとは逆になっている。
【0029】
透光カバー14は、灯具前方側へ膨らむ曲面に沿って形成されている。
【0030】
導光体20は、比較的長さが短い導光柱であって、その左端面20aから右端面20bへ向けて灯具後方側へ傾斜して延びるように形成されている。その際、この導光体20は、灯具前方側へ膨らむ曲線Cに沿って湾曲して延びるように形成されている。
【0031】
曲線Cは、透光カバー14の曲面形状に略沿って水平方向に延びる曲線であって、導光体20の左端面20aの位置においては、その接線方向が後方側へ10°程度傾斜した方向に延びており、また、その右端面20bの位置においては、その接線方向が後方側へ40°程度傾斜した方向に延びている。
【0032】
図2は、図1のII部詳細図である。また、図3は、図2のIII−III線断面図であり、図4は、図2のIV−IV線断面図である。
【0033】
これらの図にも示すように、導光体20は、曲線Cと直交する平面に沿った断面形状が矩形形状に設定されている。すなわち、この導光体20は、曲線Cを略中心にして、その後面20cと前面20dとが互いに平行に延びる鉛直曲面で形成されている。
【0034】
そして、この導光体20の後面20cには、その左右両端部以外の部分に、複数の反射素子20sが、曲線Cに沿った左右方向(すなわち導光体20の長手方向)に略等間隔をおいて形成されている。これら各反射素子20sは、上下方向に延びる断面楔状の凹溝として構成されており、その左側の斜面が反射面を構成している。その際、各凹溝の左側の斜面は、曲線Cと直交する平面に対して20〜40°程度傾斜した平面で構成されており、一方、その右側の斜面は、曲線Cと略直交する平面で構成されている。
【0035】
発光ダイオード30は、その発光中心Oを曲線C上に位置させるとともに、その発光チップ30aの発光面を後方側へ10°程度傾斜した方向へ向けた状態で配置されている。この発光ダイオード30は、光源支持部材32に固定支持されており、この光源支持部材32は、ランプボディ12に固定支持されている。
【0036】
導光体20は、その左右両端部において導光体支持部材22、24にそれぞれ固定支持されている。その際、導光体20の左端部を支持する導光体支持部材22は、光源支持部材32に固定支持されており、また、その右端部を支持する導光体支持部材24は、ランプボディ12に固定支持されている。
【0037】
そして、本実施形態に係る車両用灯具10においては、その発光ダイオード30からの出射光を、導光体20に対して、その左端面20aから入射させた後、その後面20cに形成された複数の反射素子20sで内面反射させて、その前面20dから灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0038】
その際、各反射素子20sによる内面反射は、該反射素子20sの左側に隣接する後面20cの一般部20c0において内面反射した光に対して行われるように構成されている。その際、これら各一般部20c0および各反射素子20sでの内面反射は、いずれも全反射により行われるように構成されている。
【0039】
図2に示すように、導光体20の後面20cを構成している複数の一般部20c0のうち、図中2点鎖線で示す一部の一般部20c0は、他の一般部20c0よりも灯具前方側に変位した前方変位部20c1〜20c5として形成されている。具体的には、これら前方変位部20c1〜20c5は、導光体20の左端面20aからその長手方向の中央位置をやや越えた位置までの範囲にわたって、2つ置きの間隔で5箇所に配置されている。
【0040】
これら5つの前方変位部20c1〜20c5のうち、導光体20の左端面20aから2つ目と3つ目の前方変位部20c2、20c3は、後面20cの一般部20c0に対して、その両側の反射素子20sの前端位置まで灯具前方側へ平行移動させるようにして形成されているが、それ以外の前方変位部20c1、20c4、20c5は、その前方変位量が、左側の端縁位置と右側の端縁位置とで互いに異なる値に設定されている。
【0041】
その際、導光体20の左端面20aから1つ目の前方変位部20c1は、その前方変位量が、右側の端縁位置よりも左側の端縁位置の方が大きい値に設定されており、その左側の端縁位置は、反射素子20sの前端位置と一致している。一方、導光体20の左端面20aから4つ目と5つ目の前方変位部20c4、20c5は、その前方変位量が、左側の端縁位置よりも右側の端縁位置の方が大きい値に設定されており、その右側の端縁位置は、反射素子20sの前端位置と一致している。
【0042】
図1に示すように、導光体20の右端面20bは、曲線Cと直交する平面で構成されているが、その左端面20aは、これとは異なる面で構成されている。
【0043】
すなわち、図2に示すように、この導光体20の左端面20aには、その前後方向の中間領域に、発光ダイオード30からの出射光を灯具後方側へ屈折させるようにして導光体20に入射させる第1入射部20a1が形成されている。
【0044】
また、この導光体20の左端面20aにおける前後方向の中間領域の、第1入射部20a1の前方向に隣接する位置には、発光ダイオード30からの出射光を灯具前方側へ屈折させるようにして導光体20に入射させる第2入射部20a2が形成されている。
【0045】
さらに、この導光体20の左端面20aには、第2入射部20a2の前方側に、発光ダイオード30からの出射光を灯具後方側へ屈折させるようにして導光体20に入射させる第3入射部20a3が形成されるとともに、第1入射部20a1の後方側に、発光ダイオード30からの出射光を灯具前方側へ屈折させるようにして導光体20に入射させる第4入射部20a4が形成されている。
【0046】
図3に示すように、これら第1〜第4入射部20a1〜20a4は、発光ダイオード30の発光中心Oからの出射光を、水平面に対して略平行な光となるように入射させるシリンドリカルレンズとしてそれぞれ構成されている。
【0047】
図1に示すように、導光体20の後方側には、導光体20から漏れた光を該導光体に再入射させるためのリフレクタ40が配置されている。このリフレクタ40は、導光体20の後面20cに沿って延びるように配置されており、ランプボディ12に固定支持されている。このリフレクタ40は、その前面に、上下方向に延びる複数の反射素子40sが鋸歯状に形成された構成となっている。その際、これら複数の反射素子40sは、導光体20の後面20cに形成された複数の反射素子20sと略同じピッチで形成されている。
【0048】
そして、本実施形態に係る車両用灯具10においては、発光ダイオード30からの出射光を、導光体20に対して、その左端面20aから入射させた後、その後面20cに到達した光を該後面20cの各一般部20c0で全反射により内面反射させた後、その右側に隣接する反射素子20sで全反射により内面反射させて、その前面20dから略灯具正面方向へ向けて出射させるようになっている。その際、後面20cの各一般部20c0で内面反射した後、その右側に隣接する反射素子20sに入射しなかった光および後面20cの各前方変位部20c1〜20c5で内面反射した光については、前面20dで全反射により内面反射させた後、後面20cに再度到達させるようになっている。
【0049】
また、前面20dで内面反射した後、各反射素子20sに直接到達した光(あるいは、左端面20aから入射した後、各反射素子20sに直接到達した光)は、この反射素子20sで全反射することなく、この反射素子20sから導光体20の後方側へ漏れ出る光となるが、導光体20の後方側には、リフレクタ40が配置されているので、その反射素子40sにおいて、前方へ向けて反射した後、導光体20の後面20cから導光体20に再入射し、その前面20dから略灯具正面方向へ向けて出射することとなる。
【0050】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0051】
本実施形態に係る車両用灯具10は、その左端面20a(すなわち一端面)から右端面20b(すなわち他端面)へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体20に対して、発光ダイオード30(すなわち光源)からの出射光を、その左端面20aから入射させた後、その後面20cに形成された複数の反射素子20sで内面反射させて、その前面20dから灯具前方へ向けて出射させるように構成されているが、複数の反射素子20sは、断面楔状の凹溝として導光体20の長手方向に略等間隔をおいて形成されており、これら各反射素子20sによる内面反射が、その左側(すなわち一端面側)に隣接する後面20cの一般部20c0(すなわち反射素子20sが形成されていない部分)において内面反射した光に対して行われる構成となっているので、灯具正面方向への光照射を効率的に行うことができる。
【0052】
その上で、本実施形態に係る車両用灯具10においては、導光体20の後面20cを構成する複数の一般部20c0のうち一部の一般部20c0が、他の一般部20c0よりも灯具前方側に変位した前方変位部20c1〜20c5として形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0053】
図7は、本実施形態の作用効果を説明するための比較例を示す、図1と略同様の図である。
【0054】
同図に示すように、この従来例の導光体2は、その基本的な形状は本実施形態の導光体20と同様であって、その後面2cに複数の反射素子2sが略等間隔をおいて形成された構成となっているが、その後面2cの一般部2c0がいずれも前方変位部として形成されていない点で本実施形態の場合と異なっている。
【0055】
このような導光体2に対して、その左端面2aから入射した発光ダイオード30からの光は、直接またはその前面2dで反射した後、その後面2cに到達するが、この後面2cの各一般部2c0で反射した光の多くは、その右側に隣接する反射素子2sに入射してしまうので、導光体2の中で繰返し反射する光の量が少なくなってしまい、導光体2における右端面2bの近傍領域まで光を導くことができない。このため、灯具正面方向から観察したとき、導光体2が均一に発光して見えるようにすることは困難である。
【0056】
その点、本実施形態に係る車両用灯具10においては、図2に示すように、複数の一般部20c0のうち5つの一般部20c0が、前方変位部20c1〜20c5として形成されているので、これら各前方変位部20c1〜20c5で反射した光のうち、その右側に隣接する反射素子20sに入射する光の量を少なくすることまたはこれを零にすることができる。具体的には、前方変位部20c1で反射した光のうち、その右側に隣接する反射素子20sに入射する光の量は僅かであり、それ以外の各前方変位部20c2〜20c5で反射した光のうち、その右側に隣接する反射素子20sに入射する光の量は零である。
【0057】
このため、これら各前方変位部20c1〜20c5に到達した光の多くまたはそのすべてを導光体20の前面20dへ向けて内面反射させることができる。したがって、導光体20の中で繰返し反射する光の量を多くして、導光体20における右端面20bの近傍領域まで光を導くことができる。そしてこれにより、灯具正面方向から観察したとき、導光体20が均一に発光して見えるようにすることができる。
【0058】
このように本実施形態によれば、左端面20aから右端面20bへ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体20を備えた車両用灯具10において、灯具前方への光照射を効率的に行うことができるようにした上で、その導光体20が均一に発光して見えるようにすることができる。
【0059】
しかも本実施形態においては、5つの前方変位部20c1〜20c5のうち、3つの前方変位部20c1、20c4、20c5については、その前方変位量が、その左側の端縁位置と右側の端縁位置とで互いに異なる値に設定されているので、これら各前方変位部20c1〜20c5で反射した光の方向を適宜調整することができる。そしてこれにより、導光体20の中で繰返し反射する光の分布を適宜変化させて、導光体20の均一発光を容易に実現することができる。
【0060】
具体的には、導光体20の左端面20aに近い位置にある前方変位部20c1においては、その前方変位量が、右側の端縁位置よりも左側の端縁位置の方が大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0061】
すなわち、導光体20の左端面20aに近い位置にある前方変位部20c1に到達する発光ダイオード30からの光は、その光量がかなり大きいものとなるので、この光を前方変位部20c1において導光体20の右側へ向けて大きな角度で反射させることにより、導光体20の均一発光を一層確実に実現することができる。
【0062】
一方、導光体20の左端面20aから遠い位置にある各前方変位部20c4、20c5においては、その前方変位量が、左側の端縁位置よりも右側の端縁位置の方が大きい値に設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0063】
すなわち、例えば、前方変位部20c5の前方変位量が、仮に、図5において2点鎖線で示すように、左側の端縁位置と右側の端縁位置とで同じ値に設定されているとした場合には、この前方変位部20c5で反射した発光ダイオード30からの光は、導光体20の前面20dで反射した後、その右端面20bに到達して導光体20から抜け出してしまうこととなる。
【0064】
これに対し、図5において実線で示すように、前方変位部20c5の前方変位量が、左側の端縁位置よりも右側の端縁位置の方が大きい値に設定されていることにより、この前方変位部20c5において発光ダイオード30からの光を導光体20の右側へ向けて小さな角度で反射させることができるので、この反射光を導光体20の右端面20bから抜け出させてしまうことなく、導光体20の右端面20bの近傍において、その後面20cの一般部20c0および反射素子20sで順次内面反射させることができる。そしてこれにより、光発光ダイオード30からの光を有効利用することができる。
【0065】
また、図2に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10においては、導光体20の左端面20aにおける前後方向の中間領域に、発光ダイオード30からの出射光を灯具後方側へ屈折させるようにして導光体20に入射させる第1入射部20a1および灯具前方側へ屈折させるようにして導光体20に入射させる第2入射部20a2が形成されているので、その左端面20aの中間領域から入射した発光ダイオード30からの光を前後に振り分けることができる。このため、導光体20が比較的長さが短い導光柱として形成されているにもかかわらず、その左端面20aから入射した発光ダイオード30からの光の一部が、その右端面20bに直接または後面20cや前面20dで内面反射した後に到達してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0066】
上記実施形態においては、導光体20の後面20cを構成する複数の一般部20c0に対して、5つの前方変位部20c1〜20c5が2つ置きの間隔で5箇所に配置されているものとして説明したが、これ以外の間隔で形成された構成とすることも可能であり、また、4箇所以下あるいは6箇所以上に配置された構成とすることも可能である。
【0067】
また、上記実施形態においては、複数の反射素子20sが、導光体20の長手方向に略等間隔をおいて形成されているものとして説明したが、その間隔が徐変したりランダムに変化したりする構成とすることも可能である。
【0068】
さらに、上記実施形態においては、導光体20の左端面2aが平面視において凹凸状に形成されているものとして説明したが、平面視において直線状に形成された構成とすることも可能である。
【0069】
上記実施形態においては、導光体20が、その左端面20aから右端面20bへ向けて灯具後方側へ湾曲して水平方向に延びるように形成されているものとして説明したが、直線状に延びるように形成された構成あるいは水平方向以外の方向に延びるように形成された構成とすることも可能である。
【0070】
さらに、上記実施形態においては、車両用灯具10が、車両の右後端部に設けられるテールランプである場合について説明したが、車両の左後端部に設けられるテールランプである場合、あるいはテールランプ以外の灯具である場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0072】
図6(a)は、上記実施形態に係る導光体20の要部を示す平断面図であり、同図(b)は、本変形例に係る導光体120の要部を示す平断面図である。
【0073】
同図(b)に示すように、本変形例に係る導光体120は、その後面120cを構成する複数の一般部120c0に対して、5つの前方変位部120c1〜120c5が、2つ置きの間隔で5箇所に配置されている点については、上記実施形態の場合と同様である。また、導光体120の左端面120aから2つ目と3つ目の前方変位部120c2、120c3が、後面120cの一般部120c0に対して、その両側の反射素子120sの前端位置まで灯具前方側へ平行移動させるようにして形成されている点、および、1つ目の前方変位部120c1の前方変位量が、右側の端縁位置よりも左側の端縁位置の方が大きい値に設定されており、4つ目と5つ目の前方変位部120c4、120c5の前方変位量が、左側の端縁位置よりも右側の端縁位置の方が大きい値に設定されている点も、上記実施形態の場合と同様である。
【0074】
ただし、本変形例に係る導光体120は、1つ目の前方変位部120c1においては、その右側の端縁位置が、反射素子120sの前端位置と一致するように形成されており、また、4つ目と5つ目の前方変位部120c4、120c5においては、その左側の端縁位置が、反射素子120sの前端位置と一致するように形成されている点で、上記実施形態の場合と異なっている。
【0075】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。また、本変形例の構成を採用することにより、導光体120の後面120cの形状を単純化することができる。
【0076】
本変形例の構成を採用する代わりに、同図(a)に示す上記実施形態に係る導光体20において、前方変位部20c1を、その右側に位置する反射素子20sを埋めるように延長形成し、また、各前方変位部20c4、20c5を、その左側に位置する反射素子20sを埋めるように延長形成することによっても、本変形例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
なお、上記実施形態および変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0078】
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20、120 導光体
20a、120a 左端面(一端面)
20a1 第1入射部
20a2 第2入射部
20a3 第3入射部
20a4 第4入射部
20b 右端面(他端面)
20c、120c 後面
20c0、120c0 一般部
20c1、20c2、20c3、20c4、20c5、120c1、120c2、120c3、120c4、120c5 前方変位部
20d 前面
20s、120s 反射素子
22、24 導光体支持部材
30 発光ダイオード(光源)
30a 発光チップ
32 光源支持部材
40 リフレクタ
40s 反射素子
C 曲線
O 発光中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面から他端面へ向けて灯具後方側へ傾斜して延びる導光体に対して、光源からの出射光を、上記一端面から入射させた後、該導光体の後面に形成された複数の反射素子で内面反射させて、該導光体の前面から灯具前方へ向けて出射させるように構成された車両用灯具において、
上記複数の反射素子が、断面楔状の凹溝として上記導光体の長手方向に互いに所定間隔をおいて形成されており、
これら各反射素子による内面反射が、該反射素子の上記一端面側に隣接する上記後面の一般部において内面反射した光に対して行われるように構成されており、
上記複数の一般部のうち一部の一般部が、他の一般部よりも灯具前方側に変位した前方変位部として形成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記前方変位部の前方変位量が、該前方変位部における上記一端面側の端縁位置と上記他端面側の端縁位置とで互いに異なる値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記前方変位部の前方変位量が、上記一端面に近い位置にある前方変位部においては、上記他端面側の端縁位置よりも上記一端面側の端縁位置の方が大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記前方変位部の前方変位量が、上記一端面から遠い位置にある前方変位部においては、上記一端面側の端縁位置よりも上記他端面側の端縁位置の方が大きい値に設定されている、ことを特徴とする請求項2または3記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62110(P2013−62110A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199192(P2011−199192)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】