説明

車両用空気浄化装置

【課題】透過膜によるガス交換を効果的に行うことが可能な車両用空気浄化装置を提供する。
【解決手段】外気と接触する第1の面21aと、その反対側の面であって内気と接触する第2の面21bとを有し、第1の面21a側の第1第1空間43と第2の面21b側の第2第2空間44の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜21と、第1第1空間43に外気の流れBを発生させる外気流れ発生手段23、24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を直接導入することなく車室内の酸素濃度および二酸化炭素濃度を快適濃度に維持する車両用空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、特許文献1にてこの種の車両用空気浄化装置を提案している。この従来技術では、酸素および二酸化炭素を選択的に透過させ、酸素および二酸化炭素以外の物質を透過させない性質を持つ透過膜の片面側に内気を接触させるとともに、透過膜の他面側に外気を接触させている。
【0003】
そして、車室内の乗員の呼吸によって、内気の酸素濃度が外気の酸素濃度よりも低下するとともに内気の二酸化炭素濃度が外気の二酸化炭素濃度よりも上昇すると、内気と外気の濃度差によって他面側の外気の酸素のみが透過膜を透過して車室内に導入されるとともに片面側の内気の二酸化炭素のみが透過膜を透過して車室外に放出される。
【0004】
換言すれば、車室外と車室内とで酸素と二酸化炭素のみがガス交換される。これにより、外気を直接導入することなく車室内の酸素濃度および二酸化炭素濃度を快適濃度に維持できるので、大気中の汚染物質が車室内に侵入することを防止できる。
【特許文献1】特開2004−203367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の詳細な検討によると、この従来技術では、透過膜の片面側近傍および他面側近傍の空気が淀んでいると、ガス交換された空気が透過膜の表面近傍に滞留してしまうので、透過膜の片面側と他面側の濃度差がすぐになくなってしまい、ガス交換が十分に行われなくなるという問題があることがわかった。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、透過膜によるガス交換を効果的に行うことが可能な車両用空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、外気と接触する第1の面(21a)と、その反対側の面であって内気と接触する第2の面(21b)とを有し、第1の面(21a)側の第1空間(43)と第2の面(21b)側の第2空間(44)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜(21)と、
第1空間(43)に外気の流れ(B)を発生させる外気流れ発生手段(23、24)とを備えることを第1の特徴とする。
【0008】
これによると、第1空間(43)に外気の流れ(B)が発生するので、透過膜(21)によってガス交換された外気が第1空間(43)に滞留することを回避できる。このため、第1空間(43)と第2空間(44)の濃度差がすぐになくなってしまうことを回避できるので、ガス交換を効果的に行うことができる。
【0009】
本発明は、具体的には、外気流れ発生手段が、外気を圧送する外気送風機(24)であるので、外気送風機(24)によって第1空間(43)に強制的に外気の流れ(B)を発生させることができる。
【0010】
また、本発明は、具体的には、外気流れ発生手段が、第1空間(43)と、第1空間(43)よりも静圧が低い低圧空間(11b、62)とを連通する連通路(23)であってもよい。
【0011】
これによると、第1空間(43)と低圧空間(11b、62)との静圧差によって第1空間(43)の外気を低圧空間(11b、62)に吸い出すことができるので、簡素な構成によって第1空間(43)に外気の流れ(B)を発生させることができる。
【0012】
本発明は、より具体的には、車室内(12)に向かって空気が流れる空気通路を形成する空調ケース(11)と、空調ケース(11)内に配置され空気を冷却する冷却用熱交換器(28)と、空調ケース(11)内と車室外とを連通し冷却用熱交換器(28)で発生する凝縮水を車室外に排水する排水部(11b)とを備える車両用空調装置(10)に適用される車両用空気浄化装置であって、
低圧空間が排水部(11b)である。
【0013】
これによると、排水部(11b)では空調ケース(11)内を流れる空気の一部が凝縮水とともに車室外へと流れているので、排水部(11b)の静圧が第1空間(43)よりも低くなっている。
【0014】
したがって、第1空間(43)と排水部(11b)とを連通すれば、第1空間(43)の外気を排水部(11b)に吸い出すことができるので、既存の排水部(11b)を利用して第1空間(43)に外気の流れ(B)を発生させることができる。
【0015】
また、本発明は、より具体的には、低圧空間が、車両外部であって車両走行時に走行風が流れる空間(62)であってもよい。
【0016】
また、本発明は、具体的には、第1の面(21a)のうち外気の流れ(B)方向下流側部位が外気の流れ(B)方向上流側部位よりも下方に傾斜するように透過膜(21)が配置されている。
【0017】
これによると、外気とともに進入して第1の面(21a)に付着する雨滴や粉塵等を、外気の流れ(B)と重力の両者を利用して第1の面(21a)から排除できる。このため、第1の面(21a)に雨滴や粉塵等が付着することによって酸素および二酸化炭素の透過性能が低下することを防止できる。
【0018】
また、本発明は、具体的には、第1の面(21a)を重力方向と平行になるように透過膜(21)を配置すれば、第1の面(21a)に付着する雨滴や粉塵等に重力をより作用させることができるので、第1の面(21a)から雨滴や粉塵等をより効果的に排除できる。
【0019】
また、本発明は、具体的には、透過膜(21)が波状に折られており、
透過膜(21)の折り目が延びる方向(C)が外気の流れ(B)方向と平行になるように透過膜(21)が配置されている。
【0020】
これによると、透過膜(21)が波状に折られているので、透過膜(21)の表面積を大きくすることができる。さらに、透過膜(21)の折り目が延びる方向(C)が外気の流れ(B)方向と平行になるように透過膜(21)が配置されているので、第1の面(21a)に付着する雨滴や粉塵等が外気の流れによって折り目に沿って移動することができる。このため、折り目が第1の面(21a)に付着した雨滴や粉塵等の排除の妨げとなることを回避できる。
【0021】
また、本発明は、具体的には、車室外と車室内(12)とを連通し、外気を車室内(12)に導入する外気導入通路(19)と、
外気導入通路(19)を開閉可能な開閉手段(63)と、
開閉手段(63)を開閉駆動する駆動手段(65)と、
外気を車室内(12)に導入する必要性があると判定したときには外気導入通路(19)を開くように開閉手段(63)を制御し、外気を車室内(12)に導入する必要性がないと判定したときには外気導入通路(19)を閉じるように開閉手段(63)を制御する制御手段(45)とを備える。
【0022】
これによると、外気を車室内(12)に導入する必要性があるときのみ外気を車室内(12)に導入するので、外気中の汚染物質(排気ガス、粉塵等)が車室内(12)に侵入することを抑制できる。
【0023】
また、本発明は、外気と接触する第1の面(21a)と、その反対側の面であって内気と接触する第2の面(21b)とを有し、第1空間(43)と第2空間(44)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜(21)と、
第2空間(44)に内気の流れ(A)を発生させる内気流れ発生手段(15)とを備えることを第2の特徴とする。
【0024】
これによると、第2空間(44)に内気の流れ(A)が発生するので、透過膜(21)によってガス交換された内気が第2空間(44)に滞留することを回避できる。このため、第1空間(43)と第2空間(44)の濃度差がすぐになくなってしまうことをより回避できるので、ガス交換を効果的に行うことができる。
【0025】
本発明は、具体的には、内気流れ発生手段が、内気を圧送する内気送風機(15)であるので、内気送風機(15)によって第2空間(44)に強制的に内気の流れ(A)を発生させることができる。
【0026】
本発明は、より具体的には、車室内(12)に向かって空気を送風する空調用送風機(15)と、空気が流れる空気通路を形成する空調ケース(11)と、空調ケース(11)内に配置され空気を冷却する冷却用熱交換器(28)とを備える車両用空調装置(10)に適用される車両用空気浄化装置であって、
内気送風機が空調用送風機(15)である。
【0027】
これにより、既存の空調用送風機(15)を利用して第2空間(44)に内気の流れ(A)を発生させることができるので、コストの低減と体格の小型化とを図ることができる。
【0028】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。図1は本発明による車両用空気浄化装置を搭載した車両の概要を示す模式図である。本実施形態による車両用空気浄化装置は車両用空調装置10と一体化された構成になっている。
【0030】
車両用空調装置10の空調ケース11は車室内12の最前部に配置される計器盤(図示せず)の内側部に配置され、車室内12へ向かって流れる空気の通路を形成する。車室内12と車両エンジンルーム13は隔壁(ダッシュボード)14により仕切られている。
【0031】
空調ケース11は、ポリプロピレンのようなある程度の弾性を有し、機械的強度に優れた樹脂にて成形されている。空調ケース11の上流端には空調用送風機15が配置され、空調用送風機15のケース16に遠心式送風ファン17が収納され、駆動用モータ18にて送風ファン17を回転駆動する。なお、空調用送風機15は本発明における内気送風機に該当するものである。
【0032】
空調用送風機15のケース16には内気吸入口16aが設けられ、この内気吸入口16aから車室内12の空気(内気)を導入する。空調用送風機15の送風ファン17が回転すると、図1の矢印Aのように内気吸入口16aから導入された内気が空調ケース11側へ向かって送風される。
【0033】
空調用送風機15のケース16の上面には開口部16bが開口しており、この開口部16bには車室外の空気(外気)を導入する外気導入ダクト19の一端部19aが接続されている。外気導入ダクト19の他端部19bは隔壁(ダッシュボード)14の上部に接続され、車両の外気吸入口20と連通している。この外気導入ダクト19はポリプロピレン等の樹脂にて成形される管状部材であり、外気吸入口20を通じて外気を導入する。
【0034】
外気導入ダクト19の一端部19a側部位には、車室内12の二酸化炭素と車室外の酸素とをガス交換する透過膜21(詳細は後述)と、透過膜21を支持する支持部材22(詳細は後述)とが配置されている。外気導入ダクト19はこの透過膜21によって閉塞されているので、常に外気が空調用送風機15のケース16内に直接流入しないようになっている。
【0035】
外気導入ダクト19のうち透過膜21近傍の壁面には、外気導入ダクト19内の外気を車室外に排出する外気排出口19cが開口しており、外気排出口19cは外気排出ホース23を介して車室外(本例では車両下方)に連通している。
【0036】
外気排出ホース23の中間部には外気を圧送する外気送風機24が配置され、外気送風機24のケース25に遠心式送風ファン26が収納され、駆動用モータ27にて送風ファン26を回転駆動する。
【0037】
外気送風機24の送風ファン26が回転すると、図1の矢印B、Cのように外気導入ダクト19内の外気が外気排出ホース23を介して車室外に排出される。なお、遠心式送風ファン26の代わりに軸流式送風ファンを用いてもよい。
【0038】
次に、空調用送風機15の下流側には冷却用熱交換器として蒸発器28が配置されている。この蒸発器28は車両エンジン(図示せず)により駆動される圧縮機29を持つ冷凍サイクルに設けられるものであって、蒸発器28に流入した低圧冷媒が空調用送風機15の送風空気から吸熱して蒸発することにより送風空気を冷却する。
【0039】
本例では、圧縮機29として、電磁クラッチ30の断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を使用しており、車両エンジンの動力が電磁クラッチ30を介して伝達される。なお、圧縮機29として、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機を使用してもよい。
【0040】
空調ケース11のうち、蒸発器28の下方部分は、蒸発器28で発生する凝縮水(ドレン水)を受ける凝縮水受け部11aを構成している。そして、この凝縮水受け部11aの最低部位から車両下方へ突き出すパイプ状の排水部11bを空調ケース11に配置している。
【0041】
空調ケース11内で、蒸発器28の下流側に車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(加熱用熱交換器)31が配置されている。そして、このヒータコア31の側方にはバイパス通路32が形成されて、ヒータコア31をバイパスして空気が流れるようになっている。
【0042】
蒸発器28とヒータコア31の間に板状ドアからなるエアミックスドア33が回動可能に配置されている。このエアミックスドア33は温度調節手段であり、ヒータコア31を通過する温風とバイパス通路32を通過する冷風との風量割合を調節することにより車室内への吹出空気温度を調節する。ヒータコア31からの温風とバイパス通路32からの冷風がヒータコア31下流側で混合して所望温度の空気を作り出すことができる。
【0043】
さらに、空調ケース11の下流端部には、吹出モード切替部を構成するデフロスタ開口部34とフェイス開口部35とフット開口部36が開口している。デフロスタ開口部34は図示しないデフロスタダクトを介して車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すもので、回動自在な板状のデフロスタドア37により開閉される。
【0044】
また、フェイス開口部35は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すもので、回動自在な板状のフェイスドア38により開閉される。また、フット開口部36は図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すもので、回動自在な板状のフットドア39により開閉される。
【0045】
上記した吹出モードドア37、38、39は共通のリンク機構40に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置41により駆動される。なお、エアミックスドア33も、サーボモータからなる電気駆動装置42により駆動される。
【0046】
なお、本実施形態においては、吹出モードドア37、38、39の開閉により、フェイス開口部35を全開してフェイス開口部35から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモードと、フェイス開口部35とフット開口部36の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモードと、フット開口部36を全開するとともにデフロスタ開口部34を小開度だけ開口して、フット開口部36から主に空気を吹き出し、デフロスタ開口部34から少量の空気を吹き出すフットモードと、デフロスタ開口部34およびフット開口部36を同程度開口することにより、フットモードに比較してフット開口部36からの吹出風量を減少させ、デフロスタ開口部34からの吹出風量を増加させるフットデフロスタモードと、デフロスタ開口部34を全開してデフロスタ開口部34から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとを設定できるようになっている。
【0047】
次に、透過膜21について詳細に説明する。図2は透過膜21と、透過膜21を支持する支持部材22の斜視図である。
【0048】
透過膜21は第1の面21aとその反対側の第2の面21bとを有し、空気中の酸素および二酸化炭素を透過させ、酸素および二酸化炭素以外の物質を透過させない膜である。より具体的には、透過膜21の第1の面21a側の第1空間43(図1、図3を参照)と透過膜21の第2の面21b側の第2空間44(図1、図3を参照)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように、第1空間43から第2空間44へと、あるいは第2空間44から第1空間43へと酸素および二酸化炭素を透過させる。
【0049】
この透過膜21として、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等の高分子を含む有機材料や、セラミック等から構成される膜を用いることができる。本例では、矩形状の透過膜21を三角波状に折っている。
【0050】
図示の都合上、図2では透過膜21の折り目が7本(山折りの折り目が4本、谷折りの折り目が3本)になっているが、実際には無数の折り目が設けられている。このように透過膜21を三角波状に無数に折ることによって透過膜21の表面積を大きくして酸素および二酸化炭素の透過量を増やすことができる。
【0051】
支持部材22は、その中央部に空気流通用の矩形状開口部22aが形成された全体として矩形枠状の部材である。支持部材22のうち矩形状開口部22aの周縁部22bには三角波状に折られた透過膜21の形状に合わせて突出する突出部22cが形成されている。
【0052】
この突出部22cの突出側の端面22dに、透過膜21の第2の面21b側の周縁部が溶着、接着等されて固着している。
【0053】
図3は車両用空調装置10の要部拡大断面図であり、透過膜21近傍の断面図である。本例では、外気導入ダクト19は一端部19a側が下方側に延び、他端部19b側が車両前方側に延びたL字形状を有しており、その断面形状が矩形状に形成されている。本例では、外気導入ダクト19の外気排出口19cは他端部19bと反対側(車両後方側)を向いて開口している。
【0054】
外気導入ダクト19の内部であって外気排出口19cと一端部19aとの間には、支持部材22が当接する受け面19dが外気導入ダクト19と一体成形されている。より具体的には、受け面19dは外気導入ダクト19の内周面の全周から外気導入ダクト19の内方に向かって水平に延びており、その中央部に空気流通用の矩形状開口部19eを形成している。
【0055】
この受け面19dに、支持部材22の下面(透過膜21と反対側の面)が当接している。そして、支持部材22と外気導入ダクト19とがねじやクリップ等の固定手段によって固定されている。
【0056】
したがって、透過膜21は、第1の面21aが外気導入ダクト19の一端部19aと反対側(本例では上方側)を向き、第2の面21bが一端部19a側(本例では下方側)を向いて外気導入ダクト19に固定されている。また、本例では、透過膜21の折り目が延びる方向(図2、図3の矢印D)が略水平かつ外気排出口19c側(本例では車両後方側)を向いている。
【0057】
次に、本実施形態における電気制御部の概要を図1に基づいて説明すると、空調用電子制御装置45はCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。空調用電子制御装置45には、空調制御のために、温水温度Tw、車室内温度(内気温)Tr、車室外温度(外気温)Tam、日射量Ts、蒸発器冷却度合としての蒸発器吹出温度Te等を検出する各センサ群46〜50から検出信号が入力される。
【0058】
さらに、車室内の計器盤周辺に配置される空調操作パネル51には、乗員により手動操作される下記の操作部材が備えられ、この操作部材の操作信号も空調用電子制御装置45に入力される。
【0059】
空調操作パネル51の操作部材としては、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ52、空調用送風機15の風量切替信号を発生する風量スイッチ53、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ54、冷凍サイクルの圧縮機29用の電磁クラッチ30のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ55、空調の自動制御モードを設定するオートスイッチ56等が設けられている。
【0060】
なお、吹出モードスイッチ54は、本例では、フェイス、バイレベル、フット、フットデフロスタの各モードをマニュアル設定するためのスイッチと、デフロスタモード専用のデフロスタスイッチとに分けて設けてある。
【0061】
空調用送風機15のファン駆動用モータ18は駆動回路57により印加電圧が制御され、このモータ印加電圧の制御により空調用送風機15の回転速度を調整する。外気送風機24のファン駆動用モータ27は駆動回路58により印加電圧が断続され、このモータ印加電圧の断続により外気送風機24の回転が断続される。
【0062】
また、圧縮機29の電磁クラッチ30への電源供給は駆動回路59により断続される。空調用電子制御装置45には、車両エンジンのイグニッションスイッチ60を介して車載バッテリ61から電源が供給される。
【0063】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。車両エンジンのイグニッションスイッチ60がオンされて空調用電子制御装置45に電源が供給された状態において、空調操作パネル51のオートスイッチ56が投入されると、空調用電子制御装置45がROMに記憶している空調装置制御プログラムを実行する。
【0064】
空調装置制御プログラムが実行されると、空調操作パネル51の操作信号やセンサ群46〜50により検出された検出信号が読込まれる。そして、これらの信号に基づいて、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。
【0065】
この目標吹出温度TAOは温度設定スイッチ52により設定した設定温度Tsetに内気温Trを維持するために必要な車室内吹出空気温度であり、以下の数式(1)により算出される。
【0066】
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(1)
ここで、Trは内気温センサ47により検出される内気温、Tamは外気温センサ48により検出される外気温、Tsは日射量センサ49により検出される日射量、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインおよびCは補正用の定数である。
【0067】
そして、空調用電子制御装置45は目標吹出温度TAOに基づいて、吹出風量に相当する空調用送風機15の送風ファン駆動用モータ18への印加電圧(ブロワ電圧)を決定する。すなわち、目標吹出温度TAOが低温側(冷房側)および高温側(暖房側)で風量大(ブロワ電圧:Hi)、両者の中間的な温度域(中間領域)では風量小(ブロワ電圧:Lo)となるよう、ブロワ電圧が制御される。
【0068】
また、空調用電子制御装置45は目標吹出温度TAOに基づいて、吹出モードを決定する。すなわち、TAOが低温側ではフット吹出口36を全閉しフェイス吹出口35のみから空調風を吹き出すFACEモード、TAOが高温側では、フェイス吹出口35を全閉しフット吹出口36のみから空調風を吹き出すFOOTモードが選択される。また、両者の間の領域のTAOではフェイス吹出口35およびフット吹出口36を同時に開口して、両吹出口19a、19bより空調風を吹き出すバイレベルモードが選択される。
【0069】
これら選択される吹出モードに応じて、電気駆動装置41が制御されて、吹出モードドア37、38、39の開度が設定される。
【0070】
さらに、空調用電子制御装置45はエアミックスドア33の開度θを以下の数式(2)に基づき算出する。
【0071】
θ=(TAO−Te)/(Tw−Te)×100(%)…(2)
なお、Teは蒸発器温度センサ50により検出された蒸発器吹出温度信号であり、Twは水温センサ46により検出された水温信号である。
【0072】
このエアミックスドア開度θ=0(%)は最大冷房位置(図1のエアミックスドア33の破線位置)であり、蒸発器28通過後の冷風の全量がヒータコア31を通過せず、すなわちヒータコア31をバイパスして冷風のまま下流側へ流れる。
【0073】
θ=100(%)は最大暖房位置(図1のエアミックスドア33の実線位置)であり、蒸発器28通過後の冷風の全量がヒータコア31に流入して、ヒータコア31により加熱される。
【0074】
このエアミックスドア開度θに応じて、エアミックスドア33の電気駆動装置42が駆動されエアミックスドア33の実際の開度が設定される。
【0075】
以上のような車室内空調制御により、目標吹出温度TAOに応じて、吹出口35、36から乗員に向けて空調風が吹き出されるときの吹出風量、吹出口および吹き出し空気温度等の作動条件が設定される。この結果、車室内の温度は設定された温度Tsetとなるよう空調制御される。
【0076】
さらに、本実施形態では、空調用送風機15の送風ファン駆動用モータ18にブロワ電圧が印加されると、外気送風機24の送風ファン駆動用モータ27に一定の電圧が印加されるようになっている。換言すれば、外気送風機24は空調用送風機15と連動してオンオフ作動する。
【0077】
外気送風機24がオンされて送風ファン26が回転すると、図1の矢印B、Cのように外気導入ダクト19内の外気が外気排出ホース23を介して車室外に排出される。すなわち、第1空間43に外気の流れBが発生する。一方、第2空間44では空調用送風機15によって内気の流れAが発生する。
【0078】
ところで、本実施形態による車両用空調装置10では、常に外気が空調用送風機15のケース16内に直接流入しないようになっているので、車室内の乗員の呼吸によって内気の酸素濃度が外気の酸素濃度よりも低下し、内気の二酸化炭素濃度が外気の二酸化炭素濃度よりも上昇する。
【0079】
すると、第1空間43の酸素濃度が第2空間44の酸素濃度よりも低下し、第1空間43の二酸化炭素濃度が第2空間44の二酸化炭素濃度よりも上昇するので、透過膜21が第1空間43の酸素を第2空間44へと透過させるとともに、第2空間44の二酸化炭素を第1空間43へと浸透させる。
【0080】
これにより、内気の二酸化炭素と外気の酸素とがガス交換されて、内気の酸素濃度および二酸化炭素濃度を外気の酸素濃度および二酸化炭素濃度に近づけることができるので、内気の酸素濃度および二酸化炭素濃度を快適濃度に維持できる。
【0081】
さらに、透過膜21は酸素および二酸化炭素以外の物質を透過させないので、外気中の汚染物質(排気ガス、粉塵等)が車室内12に侵入することを防止できる。
【0082】
ここで、第1空間43および第2空間44の空気が淀んでいると、ガス交換された空気が第1空間43および第2空間44に滞留してしまうので、第1空間43と第2空間44の濃度差がすぐになくなってしまい、ガス交換が十分に行われなくなってしまうという問題が生じる。
【0083】
そこで、本実施形態では、第1空間43および第2空間44に空気流れを発生させることによって、ガス交換された空気が第1空間43および第2空間44に滞留することを回避して、ガス交換が効果的に行われるようにしている。
【0084】
すなわち、本実施形態では、第1空間43に外気の流れBが発生するので、ガス交換された外気が第1空間43に滞留することを回避できると同時に、第2空間44に内気の流れAが発生するので、ガス交換された内気が第2空間44に滞留することを回避できる。
【0085】
ちなみに、本実施形態では、空調用送風機15による内気の流れAを利用して、ガス交換された内気が第2空間44に滞留することを回避している。このため、第2空間44に内気の流れを発生させるための専用の送風機を空調用送風機15と別個に配置することを回避できる。このため、車両用空調装置10のコストを低減できるとともに、体格を小型ができる。
【0086】
なお、内気の流れAおよび外気の流れBがわずかな流れ(微風)であっても、第1空間43および第2空間44にガス交換された空気が滞留するのを防止することができる。このため、本実施形態では、外気の流れBを発生させるために専用の外気送風機24を配置しているものの、外気送風機24として、空調用送風機15と比較して非常に小型の送風機を用いている。
【0087】
また、本実施形態では、透過膜21の折り目が延びる方向Dが外気排出口19c側を向くように配置されている。換言すれば、透過膜21は、折り目が外気の流れB方向に沿うように配置されているので、外気が透過膜21の第1の面21aをスムーズに流れることができる。このため、透過膜21による酸素および二酸化炭素の透過性能をより向上できる。
【0088】
さらに、透過膜21の折り目が延びる方向Dが外気の流れB方向に沿っているので、外気とともに外気導入ダクト19内に進入して透過膜21の第1の面21aに付着する雨滴や粉塵等を、外気の流れを利用して折り目に沿って外気排出口30へとスムーズに導くことができる。
【0089】
このため、透過膜21の第1の面21aに付着する雨滴や粉塵等を外気排出口30から外気排出ホース23を介して車室外へとスムーズに排出できるので、透過膜21の第1の面21aに雨滴や粉塵等が付着することによって酸素および二酸化炭素の透過性能が低下することを防止できる。
【0090】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、外気送風機24によって外気を圧送することによって第1空間43に外気の流れを発生させているが、本実施形態では、図4に示すように、第1空間43を、第1空間43よりも静圧の低い低圧空間(本実施形態では排水部11b)と連通させることによって第1空間43に外気の流れを発生させている。
【0091】
図4は本実施形態による車両用空調装置10を搭載した車両の概要を示す模式図である。本実施形態では、上記第1実施形態に対して外気送風機24を廃止している。また、上記第1実施形態では外気排出ホース23の下流端部を直接車室外に連通させているが、本実施形態では外気排出ホース23の下流端部を排水部11bに連通させている。
【0092】
本実施形態では、外気排出ホース23の下流端部の静圧が外気導入ダクト19内の圧力静圧よりも低くなる。すなわち、図4の矢印Eのように排水部11bには空調用送風機15による送風空気の一部が流れているので、排水部11bの静圧が低くなる。
【0093】
このため、外気導入ダクト19内の外気が排水部11bに吸い出されるので、第1空間43に外気の流れBを発生させることができる。この結果、上記第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0094】
本実施形態では、上記第1実施形態に対して外気送風機24を廃止できるので、上記第1実施形態と比較してコストを低減できる。
【0095】
(第3実施形態)
上記各実施形態では、透過膜21の折り目が延びる方向Dが略水平になるように透過膜21を配置しているが、本実施形態では、図5に示すように、第1の面21aのうち外気排出口19cに近い側の部位が外気排出口19cから離れる側の部位よりも下方に傾斜するように透過膜21を配置している。
【0096】
図5は本実施形態による車両用空調装置10の要部拡大断面図であり、透過膜21近傍の断面図である。本実施形態では、外気導入ダクト19の内周面の全周から外気導入ダクト19の内方に向かって水平に延びる受け面19dを、外気排出口19cに近い側が外気排出口19cから離れる側よりも下方に傾斜するように形成している。
【0097】
このため、第1の面21aのうち外気排出口19cに近い側の部位が外気排出口19cから離れる側の部位よりも下方に傾斜するように、透過膜21が外気導入ダクト19に固定されている。
【0098】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0099】
さらに、本実施形態では、第1の面21aが外気の流れBの下流側に向かうにつれて下方に傾斜しているので、第1の面21aに付着する雨滴や粉塵等を、外気の流れを利用するのみならず、重力をも利用して外気排出口30へとスムーズに導くことができる。
【0100】
このため、第1の面21aに雨滴や粉塵等が付着することによって酸素および二酸化炭素の透過性能が低下することをより防止できる。
【0101】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、透過膜21のうち外気排出口19cに近い側の部位が外気排出口19cから離れる側の部位よりも下方に傾斜するように透過膜21を配置しているが、本実施形態では、図6に示すように、透過膜21の第1の面21aを重力方向と平行に配置している。
【0102】
また、上記第2実施形態では、外気排出ホース23の下流端部が排水部11bに連通しているが、本実施形態では、図6に示すように、外気排出ホース23の下流端部が車両外部(本例では車両下方)であって車両走行時の走行風が流れる空間62に連通している。
【0103】
図6は本実施形態による車両用空調装置10の要部を示す模式図であり、透過膜21および空調用送風機15の近傍部位を示している。本実施形態では、外気導入ダクト19を車両前後方向に直線的に延びる形状に形成しており、外気導入ダクト19の一端部(車両後方側端部)19aを空調用送風機15のケース16の開口部16bに水平方向に接続している。
【0104】
さらに、外気導入ダクト19の受け面19dが外気導入ダクト19の一端部19aにおける内周面の全周から外気導入ダクト19の内方に向かって鉛直方向(重力方向)に延びているので、透過膜21は、第1の面21aが重力方向と平行になるように外気導入ダクト19に固定されている。
【0105】
また、外気導入ダクト19の外気排出口19cは透過膜21近傍の壁面にて車両下方を向いて開口している。外気排出ホース23の下流端部は車両下方空間62と直接連通している。
【0106】
図6の矢印Fのように、車両走行時には車両下方空間62に走行風が流れているので、外気排出ホース23の下流端部の静圧が外気導入ダクト19内の静圧よりも低くなる。このため、外気導入ダクト19内の外気が車両下方空間62に吸い出されるので、第1空間43に外気の流れを発生させることができる。この結果、上記第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0107】
さらに、本実施形態では、透過膜21の第1の面21aが重力方向と平行になっているので、透過膜21の第1の面21aに付着する雨滴や粉塵等に重力をより作用させることができるので、雨滴や粉塵等を外気排出口30へと速やかに導くことができる。
【0108】
このため、透過膜21の第1の面21aに雨滴や粉塵等が付着することによって酸素および二酸化炭素の透過性能が低下することを一層防止できる。
【0109】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、外気導入ダクト19の下流端部を透過膜21で閉塞することによって常に外気が空調用送風機15のケース16内に直接流入しないようになっているが、本実施形態では、図7に示すように、外気導入ダクト19の下流端部を開閉する開閉手段63を設けることによって外気の導入と遮断とを切り替え可能にしている。
【0110】
図7は本実施形態による車両用空調装置10の要部を示す模式図である。本実施形態にでは、外気導入ダクト19を通じて空調用送風機15のケース16内に外気を導入するようになっている。したがって、外気導入ダクト19は本発明における外気導入通路に該当する。
【0111】
本実施形態では、外気導入ダクト19の下流端部を開閉する開閉手段63を、透過膜21、支持部材22、および、支持部材22に結合された回転軸64とで構成している。より具体的には、回転軸64が透過膜21の第1の面21aおよび第2の面21bと平行に支持部材22に結合されている。
【0112】
そして、この回転軸64が車両幅方向(図7の紙面垂直方向)に延びるように配置され、回転軸64の両端部が空調用送風機15のケース16の側面壁部の軸受孔(図示せず)により回転可能に保持されている。これにより、透過膜21と支持部材22とが回転軸64と一体に回転する
回転軸64の一端部はサーボモータからなる電気駆動装置65に接続され、電気駆動装置65は空調用電子制御装置45より駆動される。したがって、空調用電子制御装置45により透過膜21の回転位置(開度)が調整される。なお、電気駆動装置65は本発明における駆動手段に該当し、空調用電子制御装置45は本発明における制御手段に該当するものである。
【0113】
図7において開閉手段63の実線位置は外気導入ダクト19の下流端部を全閉する全閉位置を示している。この全閉位置では、透過膜21の第1の面21aが外気導入ダクト19側を向いているので、第1の面21aが外気導入ダクト19内の外気と接触する。また、透過膜21の第2の面21bは空調用送風機15のケース16内の内気と接触する。
【0114】
このため、上記各実施形態と同様に、空調用送風機15のケース16内に外気が直接流入することなく、透過膜21によって内気の二酸化炭素と外気の酸素とがガス交換される。
【0115】
一方、開閉手段63の2点鎖線位置は外気導入ダクト19の下流端部を全開する全開位置を示している。この全開位置では、開閉手段63によって内気吸入口16aが全閉されるので、空調用送風機15のケース16内に内気が導入されず、その代わりに図7の矢印Gのように外気導入ダクト19から外気が導入される。
【0116】
空調用電子制御装置45には、内気の酸素濃度を検出するO2センサ66と、内気の二酸化炭素濃度を検出するCO2センサ67とから検出信号が入力されるようになっている。
【0117】
なお、上記第1実施形態では外気排出口19cが外気導入ダクト19の壁面に開口しているが、本実施形態では外気排出口19cが空調用送風機15のケース16の壁面であって透過膜21近傍部位に車両後方側を向いて開口している。また、本実施形態では外気導入ダクト19の受け面19dを廃止している。
【0118】
ところで、冬期には透過膜21の第1の面21aに付着した雨滴が凍結して透過膜21によるガス交換に支障が生じることがある。その他の原因によっても透過膜21に異常が発生して透過膜21によるガス交換に支障が生じることがある。
【0119】
このように、透過膜21によるガス交換に支障が生じると内気の酸素濃度が低下するとともに内気の二酸化炭素濃度が上昇する。そして、内気の酸素濃度が、乗員が快適に過ごせる濃度下限値以下(例えば19.5%以下)に低下してしまったり、内気の二酸化炭素濃度が、乗員が快適に過ごせる濃度上限値以上(例えば5000ppm以上)に上昇してしまったりすると、乗員が不快感を感じてしまう。
【0120】
そこで、本実施形態では、内気の酸素濃度が上述の下限値以下になったとき、または、内気の二酸化炭素濃度が上述の上限値以上になったときには、空調用電子制御装置45が外気を車室内12に導入する必要性があると判定して、開閉手段63を図7の2点鎖線に示す全開位置もしくは半開位置(図示せず)に回転操作する。
【0121】
これにより、図7の矢印Gのように外気が空調用送風機15のケース16内に直接流入するので、内気の酸素濃度および内気の二酸化炭素濃度を速やかに外気と同一濃度にすることができる。このため、透過膜21によるガス交換に異常が発生したときに内気の酸素濃度が低下し過ぎるとともに二酸化炭素濃度が上昇し過ぎて乗員が不快感を感じるという不具合を回避できる。
【0122】
一方、内気の酸素濃度が上述の下限値より高いとき、または、内気の二酸化炭素濃度が上述の上限値より低いときには、空調用電子制御装置45が外気を車室内12に導入する必要性がないと判定して、開閉手段63を全閉位置(図7の実線位置)もしくは半開位置(図示せず)に回転操作する。これにより、上記第1実施形態と同様の効果を発揮できる。
【0123】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、車両用空気浄化装置を車両用空調装置10と一体化しているが、必ずしも車両用空気浄化装置を車両用空調装置10と一体化する必要はない。すなわち、上記各実施形態に対して蒸発器28、ヒータコア31、エアミックスドア33、吹出モードドア37、38、39等を廃止して、車両用空気浄化装置を単体で構成してもよい。
【0124】
このように単体で構成される車両用空気浄化装置の搭載位置は車室内12に限定されることなく、車両エンジンルーム13や車両のトランクルーム等に車両用空気浄化装置を搭載することができる。この場合には、車室内12と車両用空気浄化装置との間で内気を循環させる内気循環ダクトを設ければよい。
【0125】
(2)上記第1実施形態では、外気送風機24は駆動回路58によって回転が断続されるのみなので外気送風機24が一定の送風量で作動するようになっているが、駆動回路58によって外気送風機24の送風量を調整可能にしてもよい。
【0126】
この場合には、内気の酸素濃度または二酸化炭素濃度に基づいて外気送風機24の送風量を調整するようにすれば、内気の酸素濃度または二酸化炭素濃度に応じて透過膜21による酸素および二酸化炭素の透過量(ガス交換量)を調整できる。
【0127】
(3)上記第2実施形態では、外気排出ホース23の下流端部を排水部11bに連通させているが、外気排出ホース23の下流端部を車両エンジンの排気管内に連通させて、排気ガスの流れによる排気管内の静圧低下を利用して外気導入ダクト19内の外気を排気管内に吸い出すようにしてもよい。
【0128】
(4)上記各実施形態では、外気導入ダクト19内の外気を下流側から吸い出すことによって第1空間43に外気の流れを発生させているが、車両の外気吸入口20を車両走行時の走行風による動圧(ラム圧)を受ける位置に配置することによって、ラム圧を利用して外気吸入口20から外気導入ダクト19内に外気を送風して、第1空間43に外気の流れを発生させてもよい。
【0129】
(5)上記第5実施形態では、ガス交換に異常が発生したときに透過膜21を外気導入ダクト19の全開位置もしくは半開位置に回転操作して外気を導入するようにしているが、車両窓ガラスに曇りが発生したときに透過膜21を外気導入ダクト19の全開位置もしくは半開位置に回転操作して外気を導入するようにしてもよい。
【0130】
ここで、車両窓ガラスに曇りが発生したか否かの判定方法については周知の種々の方法を用いればよい。例えば、湿度センサによって内気湿度を検出し、空調用電子制御装置45が内気湿度と内気温Trとに基づいて内気の相対湿度を算出し、内気の相対湿度が100%以上になったときに車両窓ガラスに曇りが発生したと判定すればよい。
【0131】
(6)上記第5実施形態では、開閉手段63を回転操作して外気導入ダクト19を開閉しているが、開閉手段63をスライド操作して外気導入ダクト19を開閉してもよい。
【0132】
(7)上記第5実施形態では、外気導入ダクト19の下流端部を開閉する開閉手段63の一部を透過膜21で構成しているが、必ずしも透過膜21で構成する必要はなく、開閉手段63を透過膜21と別個に構成してもよい。
【0133】
具体的には、例えば、外気導入ダクト19の下流端部の一部を開閉する板ドアを透過膜21と別個に配置すれば、開閉手段63を透過膜21と別個に構成できる。
【0134】
(8)上記第5実施形態では、外気導入ダクト19を通じて外気を導入しているが、必ずしも外気導入ダクト19を通じて外気を導入する必要はなく、外気導入ダクト19とは別個の外気導入通路と、この外気導入通路を開閉する開閉手段を設けることによって、外気を導入するようにしてもよい。
【0135】
(9)上記第1〜第4実施形態では、外気導入ダクト19の一端部19aを空調用送風機15のケース16に接続しているが、外気導入ダクト19の一端部19aを必ずしも空調用送風機15のケース16に接続する必要はなく、空調ケース11の適宜部位に外気導入ダクト19の一端部19aを接続してもよい。
【0136】
(10)上記各実施形態では、第1空間43に外気の流れBが発生するとともに、第2空間44に内気の流れAが発生するようになっているが、必ずしも第1の面27側の空間および第2空間44の両方の空間に同時に空気流れが発生している必要はなく、第1の面27側の空間または第2空間44のいずれか一方の空間のみに空気流れが発生するようにしてもよい。
【0137】
この場合には、第1の面27側の空間および第2空間44の両方の空間に同時に空気流れを発生している場合よりはガス交換効果が劣るものの、第1の面27側の空間および第2空間44のいずれの空間においても空気流れが発生していない場合と比較してガス交換を効果的に行うことができる。
【0138】
(11)上記各実施形態では、透過膜21を三角波状に折っているが、これに限定されるものではなく、例えば矩形波状に折っても同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用空調装置を搭載した車両の概要を示す模式図である。
【図2】図1における透過膜と、透過膜を支持する支持部材の斜視図である。
【図3】図1の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による車両用空調装置を搭載した車両の概要を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態による車両用空調装置の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態による車両用空調装置の要部を示す模式図であり
【図7】本発明の第5実施形態による車両用空調装置の要部を示す模式図である。
【符号の説明】
【0140】
11…空調ケース、15…空調用送風機(内気送風機)、21…透過膜、
21a…第1の面、21b…第2の面、24…外気送風機、
28…蒸発器(冷却用熱交換器)、43…第1空間、44…第2空間、
A…内気の流れ、B…外気の流れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気と接触する第1の面(21a)と、その反対側の面であって内気と接触する第2の面(21b)とを有し、前記第1の面(21a)側の第1空間(43)と前記第2の面(21b)側の第2空間(44)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜(21)と、
前記第1空間(43)に前記外気の流れ(B)を発生させる外気流れ発生手段(23、24)とを備えることを特徴とする車両用空気浄化装置。
【請求項2】
前記外気流れ発生手段が、前記外気を圧送する外気送風機(24)であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気浄化装置。
【請求項3】
前記外気流れ発生手段が、前記第1空間(43)と、前記第1空間(43)よりも静圧が低い低圧空間(11b、62)とを連通する連通路(23)であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気浄化装置。
【請求項4】
車室内(12)に向かって空気が流れる空気通路を形成する空調ケース(11)と、前記空調ケース(11)内に配置され前記空気を冷却する冷却用熱交換器(28)と、前記空調ケース(11)内と車室外とを連通し前記冷却用熱交換器(28)で発生する凝縮水を前記車室外に排水する排水部(11b)とを備える車両用空調装置(10)に適用される車両用空気浄化装置であって、
前記低圧空間が前記排水部(11b)であることを特徴とする請求項3に記載の車両用空気浄化装置。
【請求項5】
前記低圧空間が、車両外部であって車両走行時に走行風が流れる空間(62)であることを特徴とする請求項3に記載の車両用空気浄化装置。
【請求項6】
前記第1の面(21a)のうち前記外気の流れ(B)方向下流側部位が前記外気の流れ(B)方向上流側部位よりも下方に傾斜するように前記透過膜(21)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空気浄化装置。
【請求項7】
前記第1の面(21a)が重力方向と平行になるように前記透過膜(21)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空気浄化装置。
【請求項8】
前記透過膜(21)が波状に折られており、
前記透過膜(21)の折り目が延びる方向(C)が前記外気の流れ(B)方向と平行になるように前記透過膜(21)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空気浄化装置。
【請求項9】
車室外と車室内(12)とを連通し、前記外気を前記車室内(12)に導入する外気導入通路(19)と、
前記外気導入通路(19)を開閉可能な開閉手段(63)と、
前記開閉手段(63)を開閉駆動する駆動手段(65)と、
前記外気を前記車室内(12)に導入する必要性があると判定したときには前記外気導入通路(19)を開くように前記開閉手段(63)を制御し、前記外気を前記車室内(12)に導入する必要性がないと判定したときには前記外気導入通路(19)を閉じるように前記開閉手段(63)を制御する制御手段(45)とを備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用空気浄化装置。
【請求項10】
前記第2空間(44)に前記内気の流れ(A)を発生させる内気流れ発生手段(15)を備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用空気浄化装置。
【請求項11】
外気と接触する第1の面(21a)と、その反対側の面であって内気と接触する第2の面(21b)とを有し、前記第1空間(43)と前記第2空間(44)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜(21)と、
前記第2空間(44)に前記内気の流れ(A)を発生させる内気流れ発生手段(15)とを備えることを特徴とする車両用空気浄化装置。
【請求項12】
前記内気流れ発生手段が、前記内気を圧送する内気送風機(15)であることを特徴とする請求項10または11に記載の車両用空気浄化装置。
【請求項13】
車室内(12)に向かって空気を送風する空調用送風機(15)と、前記空気が流れる空気通路を形成する空調ケース(11)と、前記空調ケース(11)内に配置され前記空気を冷却する冷却用熱交換器(28)とを備える車両用空調装置(10)に適用される車両用空気浄化装置であって、
前記内気送風機が前記空調用送風機(15)であることを特徴とする請求項12に記載の車両用空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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