説明

車両用空気調和装置故障診断システム及び故障診断装置

【課題】現在の空気調和装置の稼働状況から故障可能性を推測できるようにする。
【解決手段】室内熱交換器15の空気出入口の空気の温湿度を基に該空気出入口の空気のエンタルピー差を算出し、室内熱交換器用の送風機13の電流値から風量を算出し、算出されたエンタルピー差と風量とから空気調和装置1の冷房能力又は暖房能力を算出する冷房/暖房能力算出部と、冷房/暖房能力算出部で算出された能力が、予め定めておいた許容範囲内にあるか否かを判断して、空気調和装置1の故障の可能性を診断する故障診断部と、を有する空気調和装置の故障診断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置、特に車両用空気調和装置の故障診断に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空気調和装置故障診断システムとして、例えば、現在の冷凍サイクルの状態を示す複数のサイクルパラメータ(温度、湿度、圧力等)の値に対応するレベル値と、サイクルパラメータの種類及び故障要因により決定される重み係数との積により、空気調和装置の故障可能性を診断するものがある(特許文献1参照)。
また、冷凍サイクルの状態を示すサイクルパラメータ(温度、圧力等)の値に対応するレベル値と、サイクルパラメータの種類及び故障部位により決定される重み係数との積により、冷凍サイクル機器の各部品のある時点状態量を算出し、これに過去の時点状態量を加えて、空気調和装置の故障可能性を診断するものがある(特許文献2参照)。
さらに、空調機の各部のパラメータ(温度、湿度、圧力等)に重み係数を積算して、設備機器の冷媒関連部品の故障の有無を診断するものもある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−99934号公報(段落0029)
【特許文献2】特開2010−25475号公報(段落0026−0027)
【特許文献3】特許第3979232号公報(段落0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2では、重み係数の決定が不可欠であり、その分処理が複雑になる。
また、特許文献3では、特定の冷媒関連部品の故障の有無を判断するもので、複数の冷媒関連部品の故障の有無を判断することはできない。
【0005】
また、従来の故障診断手法においては、各故障箇所の特定は自動で行われず、故障箇所を特定するためには、各機器の故障可能性が高い部位を非破壊または破壊検査する必要があった。このため、直ぐに故障箇所を特定することが出来ないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に対応するものであり、第1に現在の空気調和装置の稼働状況から故障可能性をより簡易に推測できるようにすること、第2に空気調和装置の故障要因又は故障箇所を素早く特定できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用空気調和装置故障診断システムは、圧縮機、凝縮器、減圧器及び蒸発器を冷媒が循環する冷媒回路と、前記蒸発器用の送風機とを有した車両用空気調和装置と、前記車両用空気調和装置に接続されて該空気調和装置を動作させ、該空気調和装置の故障を診断する故障診断装置と、を備え、前記故障診断装置は、前記蒸発器(または凝縮器)の空気出入口の空気の温湿度を基に算出した該空気出入口の空気のエンタルピー差と、前記蒸発器(または凝縮器)用送風機の動作電流値から算出した風量とから、前記車両用空気調和装置の冷房(または暖房)能力を算出する冷房(または暖房)能力算出部と、前記冷房(または暖房)能力算出部で算出された冷房(または暖房)能力が、温度・湿度の運転環境によって予め定められるようにプログラミングされている冷房(または暖房)能力の許容範囲内にあるか否かを判断して、前記車両用空気調和装置の故障の可能性を診断する故障診断部と、を有する。
また、このシステムは、前記圧縮機の動作電流値、前記蒸発器(または凝縮器)用送風機の動作電流値、前記冷媒回路の高圧側冷媒圧力値及び低圧側冷媒圧力値、前記圧縮機の冷媒吐出温度から前記凝縮器内の冷媒飽和温度を引いた値、及び前記圧縮機の冷媒吸込温度から前記蒸発器内の冷媒飽和温度を引いた値の各実測値を、予め定めた前記各値の許容範囲と比較して該許容範囲を逸脱したものを求め、前記許容範囲を逸脱したものの組み合わせから、前記車両用空気調和装置の所定の故障要因を特定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用空気調和装置故障診断システムによれば、車両用空調装置の故障の前兆がより簡易に予測でき、さらに故障要因を特定できるので、迅速に故障修理などの対応が可能であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における車両空調システムを示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1における空気調和装置の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1における空気調和装置の冷凍サイクル回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1における故障予備診断システムの概略図である。
【図5】本発明の実施の形態1における故障予備診断のためのセンサの配置箇所を示す配置図である。
【図6】本発明の実施の形態1における故障予備診断のフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2における故障要因特定システムの概略図である。
【図8】本発明の実施の形態2における故障要因特定のためのデータの測定または取得部位を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2における故障要因特定のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2における故障要因または故障個所を特定するロジック表である。
【図11】本発明の実施の形態1及び2における故障診断装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両用空気調和装置故障診断システムについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る車両空調システムの例を示す概略図である。一般的に車両は先頭車両7と中間車両6からなり、各車両には空気調和装置1と空調制御器2が搭載されている。先頭車両7には運転室3があり、運転室3には車両情報制御装置4が搭載され、運転室空調装置5が別途搭載されていることもある。
各車両に搭載される空調制御器2は、各空気調和装置1または車両に設置している各センサにより車内温度、車内湿度、及び外気温度を検知した情報を取り込み、車両情報制御装置4からは乗車率、年月日、及び車両のドアの開閉に係るデータを受信している。これらのデータから車両内の基準温度が決定され、空気調和装置1の制御が行われる。
【0012】
図2は、空気調和装置1の構成を示す概略図である。空気調和装置1は、室外装置部8と室内装置部9で構成されて壁16で仕切られている。室外装置部と室内装置部は個別の筐体を有するセパレートタイプでも良い。
以下、冷房運転についての構成・動作を説明するが、冷媒の流れを逆とする暖房運転についても構成可能である。
室外装置部8は、室外熱交換器10、室外熱交換器用の送風機11、及び圧縮機14を有している。室内装置部9は、リターン口12、室内熱交換器用の送風機13、室内熱交換器15、及びキャピラリーチューブ(または膨張弁を含む減圧器)17を有している。室外熱交換器10と、圧縮機14と、室内熱交換器15と、キャピラリーチューブ17とは、それぞれ配管で繋がっており、その配管中を冷媒が循環することで、室外装置部8と室内装置部9との間で熱のやり取りが行われる。
室外装置部8では、圧縮機14の駆動により、冷媒が常温常圧から高温高圧に変化する。圧縮機14を出た冷媒は室外熱交換器10に入る。そこでは室外熱交換器用の送風機11の駆動により、空気が室外熱交換器10を通過することで、冷媒の熱は奪われる。これにより、冷媒は高温高圧から常温高圧になり液化する。
室内装置部9では、液冷媒はキャピラリーチューブ17を通過し、急激に圧力が低下し、常温高圧から低温低圧の液冷媒となる。次に、液冷媒は、室内熱交換器15で周囲環境の熱を奪い、低温低圧から常温常圧になり、気化する。
室内装置部9では、リターン口12から車内の空気が流入し、室内熱交換器用の送風機13により室内熱交換器15を通過して車内に排出される。その際、空気は冷媒の気化により熱を奪われ低温となる。
【0013】
図3は、空気調和装置1の冷凍サイクル回路図である。冷媒は、圧縮機14、室外熱交換器(凝縮器)10、キャピラリーチューブ17、室内熱交換器(蒸発器)15の順に矢印18の方向に循環する。その際、常温の空気が矢印19の方向に室外熱交換器10を通過し、冷媒の熱を奪って高温の空気として放出される。また、高温の空気が矢印20の方向に室内熱交換器15を通過し、冷媒が気化されて低温の空気が放出される。
【0014】
図4は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置1の故障予備診断システムの概略図である。診断される空気調和装置1は、測定ラック24に取り付けられ、故障診断装置23により診断される。故障診断装置23には電力供給配線21と温湿度検知配線22が備えられ、それらの配線は空気調和装置1に接続されている。
電力供給配線21は圧縮機14、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13のそれぞれに電力を供給する。温湿度検知配線22は、室内熱交換器15の空気の出入口に設けられた温湿度センサ25(図5参照)に接続されている。
圧縮機14、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13のそれぞれに供給される電力の各電流値及び各電圧値は、故障診断装置23に蓄積される。また温湿度検知配線22から得られる温度データ及び湿度データも故障診断装置23に蓄積される。センサ類は、測定ラック24に予め用意しておくとよい。
電力供給配線21を空気調和装置1に取り付けることで、故障診断装置23から、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13、圧縮機14、室外熱交換器10、及び室内熱交換器15等の空気調和装置1の構成機器を動かすことが出来る。
【0015】
図5は、温湿度センサ25の取り付け位置を概略的に示した配置図である。図示のように、少なくとも室内熱交換器15の風上側と風下側に、それぞれ温湿度センサ25が取り付けられる。
【0016】
図6は、図4に示すシステムで行われる故障予備診断のフローチャートである。まず、故障診断装置23から空気調和装置1に電力を供給し、空気調和装置1を運転させる(S1)。そして温湿度センサ25の変化があまり見られなくなったタイミングで、電力供給配線21を流れる電流値(圧縮機14、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13の各電流値)が予め定めた許容範囲内であるか否か判断する(S2)。それらの電流値が、許容範囲内なら、温湿度センサ25により温度及び湿度を測定する(S3)。一方、それらの電流値が許容範囲外であれば、空気調和装置1が故障可能性大または故障とみなして故障箇所診断に進む(S9)。
続いて、温湿度センサ25で測定した空気の温度及び湿度を基に、室内熱交換器15の空気出入口の空気のエンタルピー差を計算し(S4)、さらに室内熱交換器用の送風機13の動作電流値から風量を算出する(S5)。そして、算出されたエンタルピー差と風量から空気調和装置1の冷房能力を算出する(S6)。なお、室内熱交換器15が凝縮器として機能しているときは暖房能力を算出する。
算出された冷房能力が予め定めた許容範囲と比較し、その許容範囲にあるか否かを判断する(S7)。その判断結果が許容範囲外でなければ、すなわち許容範囲内であれば、故障なしとみなして故障要因の特定は行わない(S8)。一方、その判断結果が許容範囲外であれば、空気調和装置1が故障可能性大または故障とみなして、故障要因の特定を行う(S9)。これにより、空気調和装置1の故障可能性を予備診断することができる。
【0017】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置1の故障要因特定システムの概略図である。診断される空気調和装置1は、測定ラック24に取り付けられ、故障診断装置23により診断される。故障診断装置23には、電力供給配線21、温湿度検知配線22、及び冷媒圧力検知配線26が備えられ、それらの各配線は空気調和装置1に接続されている。
電力供給配線21は圧縮機14、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13のそれぞれに電力を供給する。温湿度検知配線22は、空気調和装置1の所定部位に設けられた空気温度センサ27及び冷媒温度センサ28に接続されている。また、冷媒圧力検知配線26の先端には、空気調和装置1の所定部位の冷媒圧力を検知する冷媒圧力センサが接続されている。冷媒圧力ポート29にその冷媒圧力センサを取り付けることができる。
圧縮機14、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13のそれぞれに供給される電力の各電流値及び各電圧値は、故障診断装置23に蓄積される。また温湿度検知配線22から得られる温度データも故障診断装置23に蓄積される。さらに冷媒圧力検知配線26から得られる圧力データも故障診断装置23に蓄積される。センサ類は、測定ラック24に予め用意しておくとよい。
電力供給配線21を空気調和装置1に取り付けることで、故障診断装置23から、室外熱交換器用の送風機11、室内熱交換器用の送風機13、圧縮機14、室外熱交換器10、及び室内熱交換器15等の空気調和装置1の構成機器を動かすことが出来る。
【0018】
図8は、故障診断対象の車両用空気調和装置を示すとともに、故障要因特定のためのデータの測定または取得部位を示す図である。
この車両用空調装置の冷媒回路は、図2、図3、図5に示した、圧縮機14、室外熱交換器10、キャピラリーチューブ(減圧器)17、室内熱交換器15の他に、逆止弁30、電磁弁(調整弁)31、サクションストレーナー32を備えた構成となっている。また、室外熱交換器10には室外熱交換器用の送風機(室外送風機)11が、室内熱交換器15には室内熱交換器用の送風機(室内送風機)13がそれぞれ設けられている。この車両用空気調和装置を故障診断装置23で診断する場合には、空気温度センサ27、冷媒温度センサ28、冷媒圧力ポート29に設けられた圧力センサが用いられて、次のようなデータが測定または取得される。
(a)圧縮機の動作電流値(故障診断装置23からの供給電流値により取得)
(b)室外送風機の動作電流値(故障診断装置23からの供給電流値により取得)
(c)室内送風機の動作電流値(故障診断装置23からの供給電流値により取得)
(d)高圧側冷媒圧力値(冷媒圧力センサにより測定)
(e)低圧側冷媒圧力値(冷媒圧力センサにより測定)
(f)圧縮機冷媒吐出温度(冷媒温度センサ28により測定)
(g)室外熱交換器内冷媒飽和温度(高圧側冷媒圧力から冷媒特性により算出)
(h)圧縮機冷媒吸込温度(冷媒温度センサ28により測定)
(i)室内熱交換器内冷媒飽和温度(低圧側冷媒圧力から冷媒特性により算出)
(j)室外送風機の吹出し空気温度(空気温度センサ27により測定)
(k)サクションストレーナー上流温度(冷媒温度センサ28により測定)
(l)サクションストレーナー下流温度(冷媒温度センサ28により測定)
(m)電磁弁上流温度(冷媒温度センサ28により測定)
(n)電磁弁下流温度(冷媒温度センサ28により測定)
上記(a)〜(n)のデータの測定個所若しくは取得対象個所は、図8の中に対応する記号で示している。
なお、空気温度測定箇所、冷媒温度測定箇所及び冷媒圧力測定箇所は、図8に示した箇所に限定されるものではなく、対応する値が測定または取得できる他の場所としてもよい。さらに、各センサの個数も対応する値が測定または取得できる範囲で変更してもよい。
【0019】
図9は、図7に示すシステムで行われる故障要因特定のフローチャートである。以下、これについて説明する。まず、空気調和装置1に各種センサを取り付け、故障診断装置23と接続して運転準備をし(S11)、続いて空気調和装置1の運転を開始する(S12)。そして、図8に示した所定箇所の空気温度、冷媒温度、冷媒圧力を、温湿度検知配線22及び冷媒圧力検知配線26を介して、故障診断装置23に取り込む(S13)。また、電力供給配線21を介して圧縮機14及び室内熱交換器用の送風機13(必要に応じて室外熱交換器用の送風機11も含む)に供給される電流値を、故障診断装置23に取り込む(S13)。
故障診断装置23には、各測定対象に対応する空気温度、冷媒温度、冷媒圧力、及び電流値のそれぞれの許容範囲が、固定値または湿度・温度の関数として予め設定記憶されている。
故障診断装置23は、空気調和装置1から取り込まれた各実測値とそれに対応する各許容範囲内とを比較し、許容範囲から逸脱した測定対象を、その逸脱が許容範囲を上回るのか下回るのかまで求める。
故障診断装置23には、上記測定対象について許容範囲を逸脱した測定対象の組み合わせを基に、空気調和装置1の故障要因または故障箇所を決定するためのロジック表が予め記憶されている。故障診断装置23は、先に求めた許容範囲から逸脱した測定対象を、そのロジック表にあてはめて、空気調和装置1の故障要因または故障個所を特定する(S14)。そして、必要があれば、上記で特定された部品を交換する(S15)。これにより、故障要因の特定とそれに対する対応が迅速に可能となる。
【0020】
図10は、故障診断装置23が備える故障要因または故障箇所特定のロジック表の一例である。このロジック表を基に以下のような判断が行われる。
低圧側冷媒圧力がその許容範囲を下回り、A値とB値がそれらの許容範囲を上回るときは、キャピラリーチューブ17の詰まり、または冷媒のリークがあると判断される。
圧縮機14の動作電流値がその許容範囲を上回り、高圧側冷媒圧力値と低圧側冷媒圧力値がそれらの許容範囲を下回るときは、逆止弁30の故障と判断される。
圧縮機14の動作電流値がその許容範囲を上回り、高圧側冷媒圧力値と低圧側冷媒圧力値がそれらの許容範囲を上回るときは、室外熱交換器用の送風機11の故障、または室外熱交換器10の詰まりと判断される。
室内熱交換器用の送風機13の動作電流値がその許容範囲を下回り、低圧側冷媒圧力値とA値がそれらの許容範囲を下回るときは、室内熱交換器用の送風機13の故障、または室内熱交換器15の詰まりと判断される。
高圧側冷媒圧力値がその許容範囲を下回り、E値がその許容範囲を上回るときは、電磁弁31の故障と判断される。
冷凍サイクル内不凝縮性ガスの混入、冷媒過充填、サクションストレーナー32の詰まりなども、上記と同様にして判断される。
なお、図10の表はあくまでも一例を示したものであり、このようなロジック表を利用することで、故障要因が推定でき、非破壊でいずれの個所が故障しているかを容易に特定することが可能となる。
そして、空気温度、冷媒温度、及び電流値などの測定箇所を増やすことで、図10に示した以外の故障要因も特定可能になる。さらに、あらかじめ作成したロジック表に当てはまらない故障が発生したときは、そのときにおける各測定対象の測定値を蓄積しておくことで、特定できる故障要因の範囲を順次広げていくことも可能となる。
【0021】
図11は、故障診断装置23の構成図を示したものである。上記の説明からわかるように、故障診断装置23は、冷房/暖房能力算出部23a、故障診断部23b、比較判定部23c、故障要因特定部23dを備えている。
冷房/暖房能力算出部23aは、室内熱交換器の空気出入口の空気の温湿度を基に該空気出入口の空気のエンタルピー差を算出し、室内熱交換器用の送風機の電流値から風量を算出し、算出されたエンタルピー差と風量とから空気調和装置の冷房能力又は冷房能力を算出する。
故障診断部23bは、冷房/暖房能力算出部23aで算出された能力が、予め定めておいた許容範囲内にあるか否かを判断して、空気調和装置の故障の可能性を予備診断する。
比較判定部23cは、動作中の空気調和装置における所定部位の電流値、冷媒温度、冷媒圧力、空気温度などと、予め設定しておいたそれらの許容範囲とを比較して、許容範囲を逸脱したものを、許容範囲を上回るか下回るかも含めて求める。たとえば、圧縮機の動作電流値、室外及び/又は室内熱交換器用の送風機の動作電流値、冷媒回路の高圧側冷媒圧力値及び低圧側冷媒圧力値、圧縮機の冷媒吐出温度から室外又は室内熱交換器内の冷媒飽和温度を引いた値、及び圧縮機の冷媒吸込温度から室内又は室外熱交換器内の冷媒飽和温度を引いた値の各実測値を、予め定めた各値の許容範囲と比較して、許容範囲を逸脱したものを求める。
故障要因特定部23dは、図10に示したようなロジック表を基に、比較判定部23cで求めた許容範囲を逸脱したものの組み合わせから、空気調和装置の所定の故障要因または故障個所を特定する。
なお、比較判定部23cで利用する許容範囲のデータは、正常な動作範囲として予め設定したものであり、その範囲は必要に応じて適宜に変更することができる。
また、上記の故障診断装置23は車両用以外の空調装置の故障診断にも利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 空気調和装置、2 空調制御器、3 運転室、4 車両情報制御装置、5 運転室空調装置、6 中間車両、7 先頭車両、8 室外装置部、9 室内装置部、10 室外熱交換器、11 室外熱交換器用の送風機(室外送風機)、12 リターン口、13 室内熱交換器用の送風機(室内送風機)、14 圧縮機、15 室内熱交換器、16 壁、17 キャピラリーチューブ(減圧器)、21 電力供給配線、22 温湿度検知配線、23 故障診断装置、23a 冷房/暖房能力算出部、23b 故障診断部、23c 比較判定部、23d 故障要因特定部、24 測定ラック、25 温湿度センサ、26 冷媒圧力検知配線、27 空気温度センサ、28 冷媒温度センサ、29 冷媒圧力ポート、30 逆止弁、31 電磁弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室外熱交換器、減圧器及び室内熱交換器を冷媒が循環する冷媒回路と、前記熱交換器用の送風機とを有した車両用空気調和装置と、
前記車両用空気調和装置に接続されて該空気調和装置を動作させ、該空気調和装置の故障を診断する故障診断装置と、を備え、
前記故障診断装置は、
前記室内熱交換器の空気出入口の空気の温湿度を基に算出した該空気出入口の空気のエンタルピー差と、前記室内熱交換器用の送風機の動作電流値から算出した風量とから、前記車両用空気調和装置の冷房能力又は暖房能力を算出する冷房/暖房能力算出部と、
前記冷房/暖房能力算出部で算出された能力が、予め定めておいた許容範囲内にあるか否かを判断して、前記車両用空気調和装置の故障の可能性を診断する故障診断部と、
を有することを特徴とする車両用空気調和装置故障診断システム。
【請求項2】
前記圧縮機の動作電流値、前記室内熱交換器用の送風機の動作電流値、前記冷媒回路の高圧側冷媒圧力値及び低圧側冷媒圧力値、前記圧縮機の冷媒吐出温度から前記圧縮機の吐出冷媒が流入する前記室外又は室内熱交換器内の冷媒飽和温度を引いた値、及び前記圧縮機の冷媒吸込温度から前記圧縮機へ向かう冷媒が送られる前記室外又は室内熱交換器内の冷媒飽和温度を引いた値の各実測値を、予め定めた前記各値の許容範囲と比較して該許容範囲を下回って逸脱したもの及び該許容範囲を上回って逸脱したものを求める比較判定部と、
前記比較判定部で求めた前記許容範囲を逸脱したものの組み合わせから、前記車両用空気調和装置の所定の故障要因を特定する故障要因特定部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置故障診断システム。
【請求項3】
前記比較判定部での比較の対象に、前記室外熱交換器内の冷媒飽和温度から前記室外熱交換器用の送風機の吹出し空気温度を引いた値を含めたことを特徴とする請求項2記載の車両用空気調和装置故障診断システム。
【請求項4】
前記圧縮機の冷媒吸入側にサクションストレーナーを設けたものにおいて、前記比較判定部での比較の対象に、前記サクションストレーナーの入口側冷媒温度から出口側冷媒温度を引いた値を含めたことを特徴とする請求項2または3記載の車両用空気調和装置故障診断システム。
【請求項5】
前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間に電磁弁を設けたものにおいて、前記比較判定部での比較の対象に、前記電磁弁の入口側冷媒温度から出口側冷媒温度を引いた値を含めたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両用空気調和装置故障診断システム。
【請求項6】
圧縮機、室外熱交換器、減圧器及び室内熱交換器を冷媒が循環する冷媒回路と、前記熱交換器用の送風機とを有した空気調和装置を故障診断対象とし、前記空気調和装置に接続されて該空気調和装置を動作させ、該空気調和装置の故障を診断する故障診断装置であって、
前記室内熱交換器の空気出入口の空気の温湿度を基に該空気出入口の空気のエンタルピー差を算出し、前記室内熱交換器用の送風機の電流値から風量を算出し、算出された前記エンタルピー差と前記風量とから前記空気調和装置の冷房能力又は暖房能力を算出する冷房/暖房能力算出部と、
前記冷房/暖房能力算出部で算出された能力が、予め定めておいた許容範囲内にあるか否かを判断して、前記空気調和装置の故障の可能性を診断する故障診断部と、
を有することを特徴とする空気調和装置の故障診断装置。
【請求項7】
前記圧縮機の動作電流値、前記室内熱交換器用の送風機の動作電流値、前記冷媒回路の高圧側冷媒圧力値及び低圧側冷媒圧力値、前記圧縮機の冷媒吐出温度から前記圧縮機の吐出冷媒が流入する前記室外又は室内熱交換器内の冷媒飽和温度を引いた値、及び前記圧縮機の冷媒吸込温度から前記圧縮機へ向かう冷媒が送られる前記室外又は室内熱交換器内の冷媒飽和温度を引いた値の各実測値を、予め定めた前記各値の許容範囲と比較して該許容範囲を下回って逸脱したもの及び該許容範囲を上回って逸脱したものを求める比較判定部と、
前記比較判定部で求めた前記許容範囲を逸脱したものの組み合わせから、前記空気調和装置の所定の故障要因を特定する故障要因特定部と、
を有することを特徴とする請求項6記載の空気調和装置の故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−232656(P2012−232656A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101962(P2011−101962)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】