説明

車両用空気調和装置

【課題】送風ダクト内に複数のフィルタが上下に段状に設けられる車両用空気調和装置であって、前記送風ダクト内部からフィルタを容易に取り出すことの出来る車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】送風ダクト7内には、複数のフィルタ5a,5bが上下に段状に設けられ、送風ダクト7の側壁7aの下部には、フィルタ5a,5bを出し入れするための開口17が形成されているとともに、該開口17は送風ダクト7内の所定位置に配設した上段フィルタ5aの下端が開口17の上端60よりも低くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風ダクト内部からフィルタを容易に取り出すことの出来る車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、送風ダクト内に空気濾過用のフィルタが配置される車両用空気調和装置として、フィルタ周辺に他の機器が配置されることから、送風ダクトの側壁に形成するフィルタ出入り用の開口を小さく設定して、該開口から複数のフィルタを順次送風ダクト内に挿入するようにしたものがある。
【0003】
例えば特許文献1には、空調用のケース内に冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器が収納された車両用空気調和装置であって、冷却用熱交換器の上流側の送風ダクト内に複数のフィルタが上下2段に配置された車両用空気調和装置が開示されている。この車両用空気調和装置の送風ダクトには、下段のフィルタに対応する位置にフィルタ出入り用の開口が形成されており、開口上端部の送風ダクト内面には、フィルタ装着時に使用される仮止めリブが設けられている。上段フィルタを装着する際には、開口から送風ダクト内に挿入した上段フィルタが仮止めリブを迂回するように上段フィルタを奥に押し込んだ状態のまま、上段フィルタを送風ダクト内の上側に持ち上げ、さらに上段フィルタの下端部が仮止めリブの上に乗るように上段フィルタを引き戻して、上段フィルタの下端部を仮止めリブに係止させるようになっている。このように仮止めリブが使用されることで、ケース内に挿入した上段フィルタの下側に下段フィルタを挿入するスペースが確保される。そして、このスペースに下段フィルタが挿入される際に、上段フィルタが下段フィルタに連れられて奥に送り込まれることで、上段フィルタの下端は仮止リブから離れるとともに、上段フィルタは下段フィルタの上に設置されるようになっている。
【特許文献1】特許第3891149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1の車両用空気調和装置において、ケース内のフィルタを取り出す際には、先に下段フィルタを開口から引き出した後に、上段フィルタを開口から引き出す必要がある。しかしながら、下段フィルタが開口から引き出される際に、上段フィルタは、下段フィルタの動きに連れられて該下段フィルタの引き出される方向に移動する。その結果、上段フィルタの下端部が再度仮止めリブの上に乗るようになり、上段フィルタは仮止めリブに係止された状態になる。このため、上段フィルタを開口から取り出すためには、ケース内に手を挿入して、上段フィルタの下端を仮止めリブから外す必要がある。この際には、ケース内に挿入した手を上方に曲げて上段フィルタの下端部を掴んで無理矢理下方に押し下げる作業や、あるいは上段フィルタの下端部を掴んで上段フィルタを奥に押し込んで、仮止めリブから上段フィルタの下端部を外した状態のままで、上段フィルタを下方に下げる作業が必要となる。このような作業が必要であるために、取り外し作業が非常に煩わしいこととなっている。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、送風ダクト内に複数のフィルタが上下に段状に設けられる車両用空気調和装置であって、前記送風ダクト内部からフィルタを容易に取り出すことの出来る、特にフィルタが上下に複数設けられ、送風ダクトの側面下方に形成した開口から上段に位置するフィルタを容易に取り出すことの出来る車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、送風ダクト内に複数のフィルタが上下に段状に設けられる車両用空気調和装置であって、前記送風ダクトの側壁の下部には、前記フィルタを出し入れするための開口が形成されているとともに、該開口は前記送風ダクト内の所定位置に配設した上段フィルタの下端が前記開口上端よりも低くなるように形成されていることを特徴とする車両用空気調和装置である。
【0007】
本発明によれば、開口に臨む下段フィルタを抜いた後に上段フィルタを抜くときには、上段フィルタの下端が前記開口上端よりも低くなるように位置して保持されているので、上段フィルタの下端部を容易に掴むことができ、簡単に上段フィルタを開口に臨む位置に落下させることが出来る。これにより、送風ダクト内のフィルタを開口から取り出すことが容易になる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記上段フィルタを前記送風ダクト内の所定位置に保持する仮止手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記上段フィルタが前記仮止手段によって前記送風ダクト内の所定位置に保持されることで、下段フィルタが挿入されるスペースが確実に確保されると共に、前記上段フィルタの下端は前記開口上端よりも低くなり、上段フィルタを容易に取り出すことができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記上段フィルタの側縁が弾力的に保持される弾力保持手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記弾力保持手段が撓むことで、前記上段フィルタの側縁を前記弾力保持手段に保持させたり、その保持を解除することが可能になる。これにより、前記上段フィルタを、前記送風ダクト内の所定位置に保持したり、該所定位置から前記開口に臨む位置に落下させることが、簡単な構成で且つ確実に可能になる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、前記弾力保持手段は、前記送風ダクトの側壁に設けたダクト側係合部と、前記ダクト側係合部に係合されるように前記上段フィルタに設けられたフィルタ側係合部とを備え、該ダクト側係合部とフィルタ側係合部との少なくとも一方が、互いが係合又は開放されるように弾力的に変形可能になっていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記ダクト側係合部と前記フィルタ側係合部との少なくとも一方を弾力的に変形させることで、前記上段フィルタを前記送風ダクト内の所定位置に保持すべく前記ダクト側係合部と前記フィルタ側係合部とを係合させたり、前記上段フィルタを開口に臨む位置に落下させるべく前記ダクト側係合部と前記フィルタ側係合部とを開放させることが出来るので、フィルタの取付け/取外し作業が簡単で確実に実施できる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4において、前記開口よりも上側における送風ダクトの側壁には、前記開口の上端から上方に延びて、前記フィルタの開口側の側縁が摺動自在に嵌合して前記フィルタの上下方向の移動をガイドするガイド溝が形成され、前記ガイド溝における片側の側面には、前記フィルタの開口側の側縁に向けて突出する溝側突起が前記ダクト側係合部として形成され、前記上段フィルタには、該上段フィルタが前記溝側突起に保持されるように、該溝側突起に係合するフィルタ側突起が前記フィルタ側係合部として形成され、前記フィルタ側突起は、前記上段フィルタが下方に引っ張られたときに前記フィルタ側突起が該溝側突起に押圧されることでフィルタの幅方向に弾力的に撓む撓み部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、前記ガイド溝が形成されていることで前記送風ダクト内におけるフィルタの上下動が円滑になる。また上段フィルタを下方に引っ張ったときには、フィルタ側突起が形成されている前記撓み部がフィルタの幅方向に撓むので、前記フィルタ側突起は前記溝側突起を通過するようになる。これにより、上段フィルタを開口に臨む位置に軽い作業で容易に落下させることが出来る。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つにおいて、前記車両用空気調和装置の送風ダクト内には、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とが設けられ、該冷却用熱交換器の上流側に前記フィルタが配設されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記フィルタによって浄化された空気が、前記冷却用熱交換器に供給される。特に、冷却用熱交換器の周辺に確保可能な前記開口用のスペースが狭いことから、前記開口が小さなものとなったとしても、フィルタを取付け/取出しできる。更に、上段フィルタを前記送風ダクト内の所定位置で確実に保持できるので、下段フィルタの挿入が容易であり、また、前記所定位置で保持した上段フィルタを簡単に取り出すことが出来るので、前記小さな開口からでも間単且つ容易にフィルタの取付け/取外し作業を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記上段のフィルタは、その下端が前記開口上端よりも低くなるような位置で保持されているため、前記上段フィルタの下端部を容易に掴むことが出来る。これにより、ケース内の上段フィルタを開口から取り出すことが容易になる。
【0019】
特に、上段フィルタを抜き取る作業において、作業者の手をケース内の奥に挿入して作業する必要がないので、作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の車両用空気調和装置1の内部構造を示しており、図2は、フィルタ交換操作を説明するための図1のX−X線における断面図である。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
車両用空気調和装置1では、前方上部に設けられたファンケーシング2a内に送風ファン2が配設されており、該送風ファン2の作動により、導風ユニット6を通じて車室内外の空気がファンケーシング2a内に導入される。ファンケーシング2a内に導入された空気は、送風ダクト7に送給され、その送風ダクト7の下流側に縦置きされたエバポレータ(冷却用熱交換器)3を通過することによって冷風が生成される。エバポレータ3の空気流出側は、そこから二手に分岐する通風空間8a、8bに臨んでおり、その一方の通風空間8aには温風を生成するヒータコア(加熱用熱交換器)4が配設されている。各通風空間8a,8bの下流端は車両用空気調和装置1の後方上部の空気混合空間9にて合流しており、各通風空間8a,8bを流れる温風および冷風はダンパ10の開閉によって混合割合が調整された後、各切り替えドア11の開閉によって各吹出口12から導出され、空調風として車室に送給される。
【0022】
送風ダクト7におけるエバポレータ3の上流側には、フィルタ5が設置されている。フィルタ5は、上下に段状に設けられた上段フィルタ5aと下段フィルタ5bとから構成されており、該上下段の各フィルタ5a,5bは、互いに外形寸法が略一致する横長長方形をした板状をなしている。そして、フィルタ5は、濾過面がエバポレータ3の空気流入面(上流側)に向くように垂直方向に立った状態で、送風ダクト7内の通風路断面を塞ぐように配置されている。このようにフィルタ5が送風ダクト7内に配置されていることで、車両用空気調和装置1では、フィルタ5によって浄化された空気が、エバポレータ3に供給されるようになっている。
【0023】
図2に示すように、上段フィルタ5aは、例えば不織布で構成された多孔質の濾過材14と、この濾過材14の外周に配設される外枠15とで構成されている。外枠15は、例えばプラスチック製で、左右一対の側枠15a,15bと、これら側枠15a,15bの各上端部を連結する上枠15cと、側枠15a,15bの各下端部を連結する下枠15dとで構成され、濾過材14は、この外枠15によって支持されている。
【0024】
上段フィルタ5aの両側枠15a,15bは、それぞれ上下に長い帯状であり、その幅方向中央部位には、外方に突出するとともに側枠15a,15bの上下端に亘って延びる薄板状のリブ16が側枠15a,15bと一体に形成されている。リブ16の上端部には、それぞれ上端縁に向かって突出量が減少する傾斜面16aが形成されている。また、上段フィルタ5aの下枠15dは、左右に長い帯状であり、その幅方向の両端部には下方に突出する一対の突条部が形成されている。
【0025】
下段フィルタ5bも、上段フィルタ5aと同様、濾過材30と、この濾過材30の外周に配設される外枠25とで構成されており、外枠25は、左右一対の側枠25a,25bと、これら側枠25a,25bの各上端部を連結する上枠25cと、側枠25a,25bの各下端部を連結する下枠25dとで構成されている。また下段フィルタ5bの両側枠25a,25bにおいても、側枠25a,25bの上下端に亘って延びる薄板状のリブ26が側枠25a,25bと一体に形成されており、リブ26の上端部には、それぞれ上端縁に向かって突出量が減少する傾斜面26aが形成されている。また下段フィルタ5bの上枠25cは、左右に長い帯状であり、その幅方向の中央部には上方に突出して、上段フィルタ5aの下枠15dの突条間に嵌合する突起が形成されている。
【0026】
このような構成からなるフィルタ5は、目詰まりを起こして送風能力が低下する前に定期的に交換される。そのフィルタ交換を行うために、送風ダクト7の右側(図2において)の側壁7aの下部には、フィルタ5を出し入れするための開口17が形成されている。開口17は、送風ダクト7の右側の側壁7aの下端部位、換言すれば、下段フィルタ5bの側枠25aと相対する部位に形成されており、開口17の寸法は、上下段のフィルタ5a,5bの寸法よりも僅かに大きく設定されている。そして図1に示すように、開口17が形成された送風ダクト7の側壁7aの外側は、開口17を覆う蓋体18がビス止めされるようになっている。
【0027】
送風ダクト7の開口17よりも上側の側壁7a(以下、図2において右側の側壁7a)とこれに相対する側壁7b(以下、図2において左側の側壁7b)の内面には、上下段のフィルタ5a、5bのリブ16,26が摺動自在に嵌合するガイド溝22が形成されている。ガイド溝22は、送風ダクト7の内面から内方に突出して、互いに平行に、且つ所定の間隔を空けてそれぞれ上下方向に延びる一対の突条で構成されている。右側の側壁7aに形成されたガイド溝22は、開口17の上端から上方に延びて、その上端が側壁7a上端に位置している。左側の側壁7bの内面に形成されたガイド溝22は、側壁7bの上下端に亘って延びている。上段フィルタ5aは、該フィルタ5aの側縁をなすリブ16が左右のガイド溝22,22に嵌合することよって上下方向の移動がガイドされるとともに、送風ダクト7の上側の所定位置でぐらつかないように支持される。一方、下段フィルタ5bは、該フィルタ5bの一方の側縁をなすリブ26が左側のガイド溝22に嵌合することによって、送風ダクト7の下側の所定位置でぐらつかないように支持される。
【0028】
図3は、右側の側壁7aに形成されたガイド溝22の溝内部を示す概略図である。該側壁7aに形成されたガイド溝22には、上段フィルタ5aの開口17側のリブ16(図2参照)が嵌め込まれるが、該ガイド溝22における片側の側面には、該リブ16に向けて(すなわち溝22内部に向けて)突出する断面略三角状の溝側突起24(ダクト側係合部)が形成されている。そして、上段フィルタ5aには、該溝側突起24に係合する後述のフィルタ側突起29(フィルタ側係合部)が形成されている。これら溝側突起24及びフィルタ側突起29が弾力保持手段として仮止手段を構成している。以下、フィルタ側突起29及び上段フィルタ5aにおけるフィルタ側突起29の形成部分について、図4を用いて詳細に説明する。
【0029】
図4は、図3に示すガイド溝22に嵌め込まれるリブ16の中央部を示す概略図であり、(a)はリブ16の中央部の拡大側面図であり、(b)は(a)のY―Y線断面図である。
【0030】
上段フィルタ5aにおけるリブ16の中央部はL字状に切断されており、該切断線27は、リブ16外縁からフィルタ5aの内側に向かった後、上方に延びており、前記切断線27の上方へ延びる線27aよりも外側部分28(撓み部)28に、前記溝側突起24に係合する断面略三角状のフィルタ側突起29が形成されている。上記のようにリブ16の中央部がL字状に切断されていることから、前記外側部分28は、上段フィルタ5aが上下方向に引っ張られたときに、フィルタ側突起29が溝側突起24によって所定以上の力で押圧されることで、上段フィルタ5aの幅方向に弾力的に撓むようになっている。
【0031】
以上のように構成されたフィルタ側突起29と溝側突起24とは、リブ16の外側部分28が弾力的に撓むことで、互いに係合又は開放されるように弾力的に変形可能になっており、前記係合により上段フィルタ5aの側縁を弾力的に保持する仮止手段として機能する。
【0032】
図5は、フィルタ側突起29が溝側突起24に係合した際における上段フィルタ5aの状態を示す図である。本実施形態では、フィルタ側突起29と上段フィルタ5aの下端50との間の長さAは、溝側突起24と開口17の上端60との間の長さBよりも長くなっており、フィルタ側突起29が溝側突起24に係合した状態では、前記長さの差から、上段フィルタ5aは下端50が開口17の上端60の下方に位置するようになっている。また、フィルタ側突起29が溝側突起24に係合した状態では、上段フィルタ5aの下側に、下段フィルタ5bの高さ分のスペースSが空いた状態になっている。
【0033】
次に、かかる構成の車両用空気調和装置1のフィルタ交換の操作について図6〜9を用いて具体的に説明する。
【0034】
まず、送風ダクト7の側壁7aの外面にビス止めされている蓋体18(図1参照)を取り外して開口17を露出させる。
【0035】
そして図6(a)に示すように、開口17に臨む下段フィルタ5bを開口17から引き出す。この際には、図7(a)に示すようにフィルタ側突起29が溝側突起24に係合していることで、上段フィルタ5aは、図6(b)に示すように両突起24,29によって送風ダクト7の上側の所定位置に保持された状態が保たれ、上段フィルタ5aの下端50は、図5に示すように、開口17の上端60よりも下方に位置している。
【0036】
次に、上段フィルタ5aの下端50を掴んで、上段フィルタ5aを下に引っ張る。この際、図7(b)に示すように、フィルタ側突起29は、溝側突起24を乗り越えるように下方に移動することで溝側突起24によって押圧され、この結果、リブの外側部分28はフィルタ5aの幅方向に弾力的に撓む。これにより、フィルタ側突起29は、図7(c)に示すように溝側突起24を通過して、上段フィルタ5aは、図6(c)に示すようにガイド溝22,22にガイドされながら送風ダクト7の下側まで落下する。そして、落下した上段フィルタ5aを開口17から引き出せば、簡単に古いフィルタ5を開口17から取り出すことができる。
【0037】
続いて新しいフィルタ5の装着作業を行う。
【0038】
まず図8(a)に示すように、上段フィルタ5aを開口17から送風ダクト7内に挿入する。この際には、上段フィルタ5aの側枠15bに形成されたリブ16が、左側のガイド溝22に嵌め込まれるまで、上段フィルタ5aを送風ダクト7内に挿入する。
【0039】
続いて、上段フィルタ5aの上端が送風ダクト7の内壁上端に当たるまで、上段フィルタ5aを上方に押し上げる。この際には、左右のリブ16を左右のガイド溝22,22に嵌め込んだ状態で、上段フィルタ5aを上方に移動させる。これにより、上段フィルタ5aは、ガイド溝22,22に案内されてぐらつくことなく簡単に移動する。なお、この上段フィルタ5aの移動時には、フィルタ側突起29が溝側突起24に押圧されることでリブ16の外側部分28はフィルタ幅方向に弾力的に撓み、この結果、図9の(a)(b)(c)の順に示すように、フィルタ側突起29は、溝側突起24の下方から溝側突起24を通過した後、溝側突起24の上方で溝側突起24に係合する。これにより、上段フィルタ5aは、図8(b)に示すように送風ダクト7の上側の所定位置に保持されて、この状態において、上段フィルタ5aの下端50は開口17の上端60よりも下方に位置し、上段フィルタ5aの下側には、下段フィルタ5bの高さ分のスペースSが空いている。
【0040】
続いて、図8(c)に示すように、下段フィルタ5bの上枠25cに形成した突起を上段フィルタ5aの下枠15dの突条間に嵌め込むようにして、下段フィルタ5bを開口17から上段フィルタ5aの下側のスペースSに挿入する。この際、上段フィルタ5aは、溝側突起24によって落下しないように保持されているため、上段フィルタ5aを手で保持しておく必要はなく、簡単に片手だけで下段フィルタ5bを挿入することができる。またこの際には、下段フィルタ5bの挿入側のリブ26の上端部に、傾斜面26aが形成されているため、下段フィルタ5bの上端部が上段フィルタ5aの下端部に引っ掛かることが防止されるために、下段フィルタ5bをケース13内に簡単に挿入することができる。
【0041】
続いて、下段フィルタ5bの上枠25cの突起を上段フィルタ5aの下枠15dの突条間でスライドさせるようにして、下段フィルタ5bを送風ダクト7の奥まで挿入する。この挿入は、下段フィルタ5bの側枠25bに形成されたリブ26が、左側のガイド溝22に嵌め込まれるまで行う。この挿入が完了することで、図2に示したように、上段フィルタ5aと下段フィルタ5bとが送風ダクト7内に上下に段状に設置された状態になる。
【0042】
その後は、下段フィルタ5bの挿入側のリブ26を左側のガイド溝22に嵌め入れて支持させた状態のままで、蓋体18をビス止めして開口17を塞げばフィルタの交換作業は完了する。
【0043】
以上説明した通り、本発明の車両用空気調和装置1によれば、開口17に臨む下段フィルタ5bを抜いた後に上段フィルタ5aを抜くときには、フィルタ側突起29と溝側突起24とが係合していることで、上段フィルタ5aの下端50が開口17上端よりも低くなるように位置して保持される。これにより、上段フィルタ5aの下端部を送風ダクト7の外側から容易に掴むことができ、作業者の手を奥に挿入すること無く、また無理な作業姿勢をとること無く簡単に上段フィルタ5aを開口17に臨む位置に落下させることが出来る。このため、送風ダクト7内のフィルタ5を開口17から簡単に片手で取り出すことが容易になる。
【0044】
また、フィルタ側突起29が形成されたリブ16の外側部分28がフィルタ5aの幅方向に弾力的に撓むことで、上段フィルタ5aの側縁をフィルタ側突起29と溝側突起24とによって保持させたり、その保持を解除することが可能になる。これにより、上段フィルタ5aを、送風ダクト7内の所定位置に保持したり、該所定位置から開口17に臨む位置に落下させることが可能になる。
【0045】
また、フィルタ側突起29を弾力的に変形させることで、上段フィルタ5aを送風ダクト7内の所定位置に保持すべく溝側突起24とフィルタ側突起29とを係合させたり、上段フィルタ5aを開口17に臨む位置に落下させるべく溝側突起24とフィルタ側突起29とを開放させることが出来る。
【0046】
また、フィルタ側突起29が溝側突起24に係合した状態で、上段フィルタ5aを下方に引っ張ったときには、フィルタ側突起29が形成されているリブ16の外側部分28がフィルタ幅方向に撓むので、フィルタ側突起29は溝側突起24を通過するようになる。これにより、上段フィルタ5aを開口17に臨む位置に落下させることが可能になる。
【0047】
また、上述したガイド溝22が送風ダクト7の側壁7a、7bに形成されていることで、送風ダクト7内におけるフィルタ5の上下動が円滑になる。
【0048】
また、フィルタ側突起29が溝側突起24に係合することで、上段フィルタ5aは送風ダクト7の上側位置に保持される。これにより、図8(c)に示したように、下段フィルタ5bを上段フィルタ5aの下側のスペースに挿入する際には、簡単に片手だけでも下段フィルタ5bを挿入することができるため、フィルタ5の交換作業が容易に行える。
【0049】
また、フィルタ側突起29が、上段フィルタ5aの両方のリブ16に設けられていることで、上段フィルタ5aは、逆の向きにしても開口17に挿入することができ、利便性に優れる。
【0050】
本発明は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0051】
上記実施形態では、フィルタ側突起29と溝側突起24とによって、下段フィルタ5bの挿入時には上段フィルタ5aを上側位置に安定して保持し、且つ上段フィルタ5aの交換時には、上段フィルタ5aを簡単に掴んで下側に落下させるように出来るようになっているが、この機能を達成できれば、上記フィルタ側突起29及び溝側突起24以外の係合構成を適用することが出来る。
【0052】
例えば、上段フィルタ5aは2つ以上設けられてもよい。また上記の実施形態では、送風ダクト7の右側の側壁7aに開口17を設ける構成を示したが、左側の側壁7bに設ける構成であってもよい。また上段フィルタ5aのフィルタ側突起29は、片方のリブ16にのみ設けられてもよい。
【0053】
また上段フィルタ5aにおいて、フィルタ側突起29の形成部分の形状は上記実施形態に限られない。例えば、リブ16の中央部に、該リブ16外縁からフィルタ5aの内側に向かった後、下方に延びている、上記実施形態とは上下逆のL字状に切断した部分を設け、前記切断線の下方へ延びる線よりも外側部分に、フィルタ側突起29を形成するようにしてもよい。或いは、リブ16の中央部に、リブ外縁から斜め上方又は下方に延びるように切断した部分を設け、当該切断線よりも外側部分にフィルタ側突起29を形成するようにしてもよい。或いは、リブ16の中央部に、上下に離隔した2つの位置でリブ外縁から横方向に延びるように切断した部分を設け、上下の切断線の間にフィルタ側突起29を形成するようにしてもよい。また、リブ16の中央部に他の部分よりも薄肉にした部分を設け、該薄肉部分にフィルタ側突起29を設けるようにしてもよい。上記いずれの場合においても、フィルタ側突起29が溝側突起24に押圧されることに応じて、フィルタ側突起29が形成された部分は、フィルタ幅方向に撓むようになる。
【0054】
また、溝側突起24に代えて、フィルタ側突起29が係合する凹部をガイド溝22の側面に設けてもよい。このようにしても、上段フィルタ5aにおけるフィルタ側突起29の形成部分が、上段フィルタ5aの幅方向に撓むことで、上段フィルタ5aを送風ダクト7内の所定位置に保持すべくフィルタ側突起29と凹部とを係合させたり、上段フィルタ5aを開口17に臨む位置に落下させるべくフィルタ側突起29を凹部から開放させることが出来る。また、逆に、フィルタ側突起29に代えて、溝側突起24が係合する凹部を送風ダクト7の側壁7aに設けてもよい。
また上記実施形態では、切断線27によって、フィルタ側突起29が弾力的に変形する構造となっているが、フィルタ側突起29を弾力的に変形できれば、上記切断線以外の構造を適用することが出来る。
【0055】
また、下段フィルタ5bでは、左右の側枠7a,7bのうち一方にリブ16が形成してあれば足り、装着時に開口17に臨む他方の側枠にはリブ16が形成されてなくともよい。
【0056】
また、ガイド溝22やリブ16が設けられないフィルタにも適用できる。この場合、例えば、上段フィルタ5aの開口17側の外枠15aと送風ダクト7の開口17側の側壁7aとに互いに係合する突起24,29等の係合部が設けられるようにすればよく、その詳細説明は省略する。
【0057】
また、溝側突起24及びフィルタ側突起29が係合する位置は、安定して上段フィルタを保持できれば、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記溝側突起24とフィルタ側突起29との係合位置は、開口17の上端60に接近した位置でも良く、逆に上端60から離れた位置でも良い。
【0058】
また、上記実施形態では、フィルタ5は、冷却用熱交換器3の直ぐ上流側に設けられているが、フィルタの設置位置は、この位置に限られない。例えば、フィルタ5は、冷却用熱交換器3から離れた位置に設けられてもよい。また、本発明のフィルタ5は、ファン2の上流側位置に設けられるフィルタとして適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の車両用空気調和装置が配置される車両用空調ユニット40の内部構造を示す断面図である。
【図2】図1のX−X線における断面図であり、一部を省略した図を示す。
【図3】開口側の側壁に形成されたガイド溝の溝内部を示す概略図である。
【図4】図3に示すガイド溝に嵌め込まれるリブの中央部を示す概略図である。
【図5】フィルタ側突起が溝側突起に係合した際における上段フィルタの状態を示す断面図である。
【図6】フィルタを送風ダクト内から取り出す際の手順を示す図である。
【図7】フィルタを送風ダクト内から取り出す際におけるガイド溝内部の状態を示す図である。
【図8】フィルタを送風ダクト内に装着する際の手順を示す図である。
【図9】フィルタを送風ダクト内に装着する際におけるガイド溝内部の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用空気調和装置、
3 エバポレータ(冷却用熱交換器)、
4 ヒータコア(加熱用熱交換器)、
5 フィルタ、
5a 上段フィルタ、
7 送風ダクト、
7a 側壁、
17 開口、
22 ガイド溝、
24 溝側突起(ダクト側係合部)、
28 リブの外側部分、
29 フィルタ側突起(フィルタ側係合部)、
50 上段フィルタの下端、
60 開口上端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ダクト内に複数のフィルタが上下に段状に設けられる車両用空気調和装置であって、
前記送風ダクトの側壁の下部には、前記フィルタを出し入れするための開口が形成されているとともに、該開口は前記送風ダクト内の所定位置に配設した上段フィルタの下端が前記開口上端よりも低くなるように形成されていることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記上段フィルタを前記送風ダクト内の所定位置に保持する仮止手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記仮止手段は、前記上段フィルタの側縁が弾力的に保持される弾力保持手段を有することを特徴とする請求項2記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記弾力保持手段は、前記送風ダクトの側壁に設けたダクト側係合部と、前記ダクト側係合部に係合されるように前記上段フィルタに設けられたフィルタ側係合部とを備え、該ダクト側係合部とフィルタ側係合部との少なくとも一方が、互いが係合又は開放されるように弾力的に変形可能になっていることを特徴とする請求項3記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記開口よりも上側における送風ダクトの側壁には、前記開口の上端から上方に延びて、前記フィルタの開口側の側縁が摺動自在に嵌合して前記フィルタの上下方向の移動をガイドするガイド溝が形成され、
前記ガイド溝における片側の側面には、前記フィルタの開口側の側縁に向けて突出する溝側突起が前記ダクト側係合部として形成され、
前記上段フィルタには、該上段フィルタが前記溝側突起に保持されるように、該溝側突起に係合するフィルタ側突起が前記フィルタ側係合部として形成され、
前記フィルタ側突起は、前記上段フィルタが下方に引っ張られたときに前記フィルタ側突起が該溝側突起に押圧されることでフィルタの幅方向に弾力的に撓む撓み部に設けられていることを特徴とする請求項4記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記車両用空気調和装置の送風ダクト内には、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とが設けられ、該冷却用熱交換器の上流側に前記フィルタが配設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空気調和装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−173154(P2009−173154A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13636(P2008−13636)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】