車両用空調システム及びその暖房始動方法
【課題】簡単且つ経済的に、低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン内の暖房を迅速に行うことを可能にする。
【解決手段】車両用空調システム10は、コンプレッサ16を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路18を備える。ヒートポンプ循環路18には、冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサ20と、前記コンデンサ20から送られる前記冷媒体を減圧させる膨張弁22と、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータ24と、前記冷媒体と前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータ26と、キャビン14から排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータ30とが配設される。ヒートポンプ循環路18の外部には、個別の熱源である電源44を介して空調用空気を加熱するための第2ヒータ42が配置され、前記第2ヒータ42は、制御部48により稼動される。
【解決手段】車両用空調システム10は、コンプレッサ16を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路18を備える。ヒートポンプ循環路18には、冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサ20と、前記コンデンサ20から送られる前記冷媒体を減圧させる膨張弁22と、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータ24と、前記冷媒体と前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータ26と、キャビン14から排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータ30とが配設される。ヒートポンプ循環路18の外部には、個別の熱源である電源44を介して空調用空気を加熱するための第2ヒータ42が配置され、前記第2ヒータ42は、制御部48により稼動される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行うためのヒートポンプ式の車両用空調システム及びその暖房始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば、内燃エンジンを組み込むエンジン自動車、エンジンと二次電池(又は二次電池と燃料電池等)とを併用するハイブリッド自動車、電気自動車及び燃料電池自動車等の自動車に対応して、種々の車両用空調システムが採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている電気自動車用空調装置は、図17に示すように、コンプレッサ1aから吐出された熱交換媒体が、メインコンデンサ2a、サブコンデンサ3a、膨張弁4a、車内側熱交換器5a及び前記コンプレッサ1aの順で巡回するヒートポンプサイクルを有している。サブコンデンサ3a及び車内側熱交換器5aは、ユニット6a内に配設されるとともに、前記サブコンデンサ3aに近接して、電気ヒータ7aが設けられている。
【0004】
そして、エアコン制御装置8aは、外気導入モードが選択されている場合に、外気温度TOUTが、低温側設定温度TLよりも低い場合に、電気ヒータ7aへの通電を行っている。一方、エアコン制御装置8aは、外気温度TOUTが、高温側設定温度THを上回ったときに、電気ヒータ7aへの通電を停止している。
【0005】
また、特許文献2に開示されている自動車用空気調和装置は、ヒートポンプ式空気調和装置であり、図18に示すように、送風機1bにより取り入れられた空気を車室内に向かって送るための通風ダクト2bを有しており、この通風ダクト2b内には、エバポレータ3b及び第1コンデンサ4bが配設されている。通風ダクト2bの外には、第2コンデンサ5bが配設されており、第1コンデンサ4bは、主に暖房運転時に作用し、前記第2コンデンサ5bは、主に冷房運転時に作用している。
【0006】
エバポレータ3b、第1コンデンサ4b及び第2コンデンサ5bは、配管によりリキッドタンク6bや膨張弁7bとともに、コンプレッサ8bに連結されて、冷凍サイクルを構成している。通風ダクト2b内には、第1コンデンサ4bの上流側近傍に、電気加熱ヒータとしてのPTCヒータ9bが設置されている。このPTCヒータ9bは、暖房性能が不足しがちな起動時や低負荷時に、通電されることによって、暖房性能不足を補うことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−268035号公報
【特許文献2】実開平7−5825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、外気温度TOUTが高温側設定温度THを上回ったときにのみ、電気ヒータ7aがオフされている。このため、外気温度TOUTが高温側設定温度TH以下の低温条件下では、キャビン(車室)の温度に関わらず、電気ヒータ7aがオンされている。従って、電気消費量が増加してしまい、ヒートポンプ自体の高効率運転が遂行されないという問題がある。
【0009】
しかも、特に外気温度が低いときに、車内側熱交換器5aを低温の空調用空気が通過することで、前記車内側熱交換器5aで結露が発生し易い。これにより、結露した水分が車内側熱交換器5aで凍結するおそれがある。
【0010】
また、上記の特許文献2では、PTCヒータ9bは、エバポレータ3bを通過した冷却空気を加熱して昇温させ、第1コンデンサ4bに送り込まれる空気の温度を高くすることにより、前記第1コンデンサ4bの熱交換率を下げる機能を有している。このため、コンプレッサ8bの吐出圧力が上昇するものの、外気温度にのみ依存するため、効率的な暖房運転が遂行されないという問題がある。
【0011】
しかも、PTCヒータ9bの効率的な運転が考慮されないという問題がある。その上、特許文献1と同様に、外気温度が低温である際に、エバポレータ3bに結露が発生するおそれがある。
【0012】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的に、低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン内の暖房を迅速に行うことが可能な車両用空調システム及びその暖房始動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムに関するものである。
【0014】
車両用空調システムは、圧縮機を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサと、前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータと、前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記圧縮機から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータを通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータと、前記ヒートポンプ循環路から分岐する分岐路に配置され、キャビンから排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータと、前記ヒートポンプ循環路の外部に配置され、前記冷媒体とは異なる熱源により前記空調用空気を加熱する第2ヒータと、暖房始動時に前記冷媒体のみで前記キャビンの温度が調整可能になるまで、前記第2ヒータを稼動させる制御部とを備えている。
【0015】
また、第2ヒータは、出力調整可能に構成されることが好ましい。
【0016】
さらに、ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられることが好ましい。
【0017】
さらにまた、制御部は、キャビンの温度が上昇するのに伴い、第2ヒータの出力を小さく調整することが好ましい。
【0018】
また、車両用空調システムは、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、前記外気取り入れ口の下流には、第1エバポレータ、第1ヒータ及び第2ヒータの順に配置されることが好ましい。
【0019】
さらに、車両用空調システムは、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、前記外気取り入れ口の下流には、第2ヒータ、第1エバポレータ及び第1ヒータの順に配置されることが好ましい。
【0020】
さらにまた、車両用空調システムは、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、前記外気取り入れ口の下流には、第1エバポレータ、第2ヒータ及び第1ヒータの順に配置されることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムの暖房始動方法に関するものである。
【0022】
暖房始動方法は、第1ヒータの作用下に、冷媒体と熱交換された空調用空気をキャビンに送出する工程と、前記キャビンへの送出温度を検出する工程と、前記送出温度が目標送出温度よりも低いと判断された際、第2ヒータを駆動させて前記空調用空気を加熱する工程と、前記第2ヒータの駆動後に、前記送出温度が前記目標送出温度を超えたと判断された際、前記第2ヒータの駆動を停止する工程とを有している。
【0023】
さらに、暖房始動方法は、キャビンの温度が上昇するのに伴って、高効率化の観点で第2ヒータの出力を小さくすることが好ましい。
【0024】
さらにまた、ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられるとともに、暖房始動方法は、前記ヒートポンプ循環路内の圧力が規定値以上である際、強力に除湿が必要な場合、送出温度が目標送出温度を超えても、送出温度安定化の観点で第2ヒータの駆動を継続することが好ましい。
【0025】
また、暖房始動方法は、除湿暖房モードである際、強力に除湿が必要な場合、送出温度が目標送出温度を超えても、第2ヒータの駆動を継続することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、ヒートポンプ循環路の外部に、個別の熱源により空調用空気を加熱するための第2ヒータが配置されている。従って、第2ヒータは、キャビンの暖房熱源として良好に機能し、ヒートポンプとの併用により前記キャビンを迅速に昇温させることができる。
【0027】
しかも、外気温度が低く、ヒートポンプの熱源が不足する際にも、キャビンから排出される熱媒体を、第2エバポレータを介して前記ヒートポンプの熱源として利用することが可能になる。これにより、簡単且つ経済的に、凍結を防止して低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン内の暖房を迅速に行うことができる。
【0028】
さらに、ヒートポンプのみでキャビンの暖房が可能な状態になった際には、第2ヒータの駆動が停止される。このため、ヒートポンプのみによる高効率運転が容易に遂行可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調システムの概略ブロック図である。
【図2】前記車両用空調システムの暖房運転時の概略説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る暖房始動方法を説明するフローチャートである。
【図4】第2ヒータの有無によるキャビン温度及び送出温度の説明図である。
【図5】暖房性能の説明図である。
【図6】消費電力の説明図である。
【図7】前記車両用空調システムの除湿暖房運転時の概略説明図である。
【図8】前記車両用空調システムの冷房運転時の概略説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調システムの概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る暖房始動方法を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る車両用空調システムの概略説明図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る車両用空調システムの概略説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る暖房始動方法を説明するフローチャートである。
【図14】第2ヒータの有無によるキャビン温度及び送出温度の説明図である。
【図15】暖房性能の説明図である。
【図16】消費電力の説明図である。
【図17】特許文献1に開示されている電気自動車用空調装置の説明図である。
【図18】特許文献2に開示されている自動車用空気調和装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用空調システム10は、自動車(車両)12に搭載されており、乗員用のキャビン(車室)14の空調を行う。
【0031】
空調システム10は、コンプレッサ(圧縮機)16を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路18を備える。ヒートポンプ循環路18には、冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサ20と、前記コンデンサ20から送られる前記冷媒体を減圧させる膨張弁22と、前記膨張弁22を通過した前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータ24と、前記コンプレッサ16から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータ24を通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータ(コンデンサ)26とが配置される。
【0032】
ヒートポンプ循環路18から分岐路28が分岐するとともに、前記分岐路28には、キャビン14から排出される熱媒体(キャビン14からの排熱気体)と冷媒体で熱交換を行う第2エバポレータ30が配置される。
【0033】
コンデンサ20は、例えば、ラジエータを構成しており、自動車12の前方側に配置されるとともに、前記コンデンサ20の両側には、電磁弁32aと逆止弁34とが配置される。ヒートポンプ循環路18には、コンデンサ20と平行に第1バイパス路36aが設けられ、前記第1バイパス路36aには、電磁弁32bが配置される。
【0034】
膨張弁22は、空調用空気を冷却する第1エバポレータ24から送出された冷媒体の温度を検出する手段(図示せず)を有する。この膨張弁22は、第1エバポレータ24から送出された冷媒体の温度に応じて、開度を自動的に変更させることにより、冷媒体流量を変更可能に構成される。
【0035】
ヒートポンプ循環路18には、膨張弁22に近接する部位と、分岐路28の入り口側との接続部位に対応して、三方弁38aが配置される。ヒートポンプ循環路18には、第1エバポレータ24をバイパスする第2バイパス路36bの出口部と前記ヒートポンプ循環路18との接続部位に対応して、三方弁38bが配置される。第2エバポレータ30は、自動車12の後部側に配置される(図2参照)。
【0036】
第1エバポレータ24と第1ヒータ26との間には、前記第1エバポレータ24により冷却された空調用空気を前記第1ヒータ26を迂回させてキャビン14に送出するためのエアミックスダンパ40が設けられる。第1ヒータ26の下流側に近接して、第2ヒータ42が配置される。第2ヒータ42は、電気ヒータで構成されており、個別の電源(熱源)44を備えることにより、ヒートポンプ循環路18とは個別に構成される。
【0037】
自動車12には、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口46が形成される。この外気取り入れ口46の下流には、第1エバポレータ24、第1ヒータ26及び第2ヒータ42の順に配置される。第2ヒータ42は、出力調整可能であり、暖房始動時に冷媒体のみでキャビン14の温度が調整可能になるまで、制御部(ECU)48により稼動される(図1参照)。制御部48は、空調システム10全体の駆動制御を行う。
【0038】
このように構成される空調システム10の動作について、第1の実施形態に係る暖気始動方法との関連で、図3に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0039】
先ず、空調システム10の暖房がオンされると(ステップS1中、YES)、ステップS2に進んで、コンプレッサ16が駆動される。コンプレッサ16は、例えば、最低回転数を維持して駆動される。このため、コンプレッサ16からヒートポンプ循環路18に送出される冷媒体は、図2に示すように、第1ヒータ26に供給され、この第1ヒータ26で空調用空気と熱交換(放熱)を行い、前記空調用空気を昇温させる。
【0040】
第1ヒータ26から排出される冷媒体は、電磁弁32aが閉塞される一方、電磁弁32bが開放されるため、放熱器であるコンデンサ20を迂回して第1バイパス路36aを通り、膨張弁22に送られる。膨張弁22で減圧された冷媒体は、三方弁38aを介して分岐路28に分岐され、第2エバポレータ30に導入される。第2エバポレータ30では、冷媒体がキャビン14内の熱源と熱交換を行った後、第1エバポレータ24を迂回して第2バイパス路36bから膨張弁22を通って、再度、コンプレッサ16に送られる。
【0041】
次に、ステップS3に進んで、キャビン14に送出される空調用空気の温度(以下、送出温度ともいう)が検出される。この送出温度が閾値(予め設定される目標送出温度)以下であると判断されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進んで、コンプレッサ16の回転数が最大回転数であるか否かが判断される。
【0042】
コンプレッサ16の回転数が最大回転数であると判断されると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進んで、送出温度が閾値以下であるか否かが判断される。そして、送出温度が閾値以下であると判断されると(ステップS5中、YES)、ステップS6に進んで、第2ヒータ42が駆動される。
【0043】
なお、ステップS3で、送出温度が閾値を超えていると判断されると(ステップS3中、NO)、ステップS7に進んで、コンプレッサ16の回転数が低減される。一方、ステップS4で、コンプレッサ16の回転数が最大回転数以下で判断されると(ステップS4中、NO)、ステップS8に進んで、前記コンプレッサ16の回転数の増加が行われる。
【0044】
ステップS6では、制御部48を介して第2ヒータ42が駆動されるため、第1ヒータ26から送出される空調用空気は、前記第2ヒータ42を介してさらに昇温された後、キャビン14に送出される。従って、図4に示すように、キャビン14に送出される空調用空気は、ヒートポンプと第2ヒータ42とにより加温されている。このため、ヒートポンプのみによる加温に比べて、キャビン14の温度が迅速に昇温し、目標送出温度まで一気に上昇させることができる。ここで、目標送出温度は、外気温度、車内温度及び日射等から決定される。
【0045】
そして、送出温度(吐気温度)が閾値(目標送出温度)以上であると判断されると(ステップS9中、YES)、ステップS10に進んで、第2ヒータ42の出力が低下される。また、キャビン温度が閾値未満であると判断された際には(ステップS9中、NO)、ステップS11に進んで、第2ヒータ42の出力が増加される。
【0046】
ステップS10で、第2ヒータ42の出力が低下された後、所定の時間だけ保持される(ステップS12)。さらに、ステップS13に進んで、送出温度が閾値以上であるか否かが判断される。第2ヒータ42の出力が低下され、且つ送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS13中、YES)、ステップS14に進んで、第2ヒータ42が設定最低出力以下であるか否かが判断される。第2ヒータ42が設定最低出力以下で有ると判断されると(ステップS14中、YES)、ステップS15に進んで、該第2ヒータ42の稼動が停止される。
【0047】
また、ステップS13において、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS13中、NO)、ステップS16に進んで、第2ヒータ42の出力増加が行われる。
【0048】
このように、第1の実施形態では、ヒートポンプ循環路18の外部に、個別の熱源である電源44を介して空調用空気を加熱するための第2ヒータ(電気ヒータ)42が配置されている。このため、ヒートポンプ循環路18を循環する冷媒体では、キャビン14の温度を目標送出温度まで上昇し難い際に、第2ヒータ42をキャビン14の暖房熱源として良好に機能させることができ、前記キャビン14の温度を迅速に昇温させることができるという利点がある(図4及び図5参照)。
【0049】
しかも、第1の実施形態では、送出温度が閾値以上であると判断された際には、ヒートポンプによる暖房を継続する一方、第2ヒータ42の出力を低下させている。そして、ヒートポンプのみによりキャビン温度が目標送出温度を維持し得ると判断された際には、第2ヒータ42がオフされている。従って、補助熱源である第2ヒータ42の消費電力は、図6に示すように、有効に低減され、ヒートポンプのみによる高効率運転が遂行可能になるという効果がある。
【0050】
さらにまた、第1の実施形態では、ヒートポンプ循環路18に分岐路28を介して第2エバポレータ30が接続されている。第2エバポレータ30は、暖房運転時に、キャビン14から排出される排熱気体を熱源として冷媒体に吸熱処理を施すことにより、前記冷媒体の温度を一層高めることができる。
【0051】
これにより、特に外気温度が低く、ヒートポンプの熱源が不足する際にも、第2エバポレータ30を介してキャビン14から排出される排熱気体を前記ヒートポンプの熱源として利用することが可能になる。このため、簡単且つ経済的に、低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン14内の暖房を迅速に行うことができる。
【0052】
また、第1の実施形態では、外気取り入れ口46の下流には、第1エバポレータ24、第1ヒータ26及び第2ヒータ42の順に配置されている。従って、空調用空気は、第1ヒータ26により温度上昇が行われた後、第2ヒータ42を介してさらに温度上昇がなされ、キャビン14には、高温の空調用空気が送出されてキャビン温度の上昇が迅速に遂行される。これにより、キャビン14から排出される排熱気体の温度も上昇しており、第2エバポレータ30による吸熱量も増加し、ヒートポンプの吸熱性能が向上して暖房性能も一層向上するという効果がある。
【0053】
次に、空調システム10による除湿暖房運転について、図7を参照しながら説明する。
【0054】
この除湿暖房運転時には、三方弁38bが操作されることにより、第2バイパス路36bが閉塞されて、第1エバポレータ24がヒートポンプ循環路18に接続される。このため、コンプレッサ16の作用下に、ヒートポンプ循環路18に送出される冷媒体は、第1ヒータ26を通って放熱された後、膨張弁22を通過して低圧及び低温となり、第2エバポレータ30で吸熱された後、第1エバポレータ24に送られる。
【0055】
第1エバポレータ24では、空調用空気から吸熱することにより、前記空調用空気が一旦冷却された後、第1ヒータ26の放熱作用下に昇温され、さらに第2ヒータ42によって昇温された後、キャビン14に送出される。従って、空調用空気は、第1エバポレータ24で冷却されることにより、外気から取り込まれた空気に含まれる水蒸気が除去されて、除湿処理が施されることになる。
【0056】
その際、第1エバポレータ24を通過する空調用空気が低温であっても、第2エバポレータ30によりキャビン14から排出される高温低湿度の熱源から十分な吸熱がなされており、前記第1エバポレータ24に流入される冷媒体が暖められている。これにより、除湿暖房運転時でも、第2エバポレータ30が凍結することがなく、連続運転が可能になる。
【0057】
さらにまた、空調システム10による冷房運転が、図8に示されている。
【0058】
この冷房運転時には、電磁弁32aが開放されるとともに、電磁弁32bが閉塞されて、コンデンサ20がヒートポンプ循環路18に接続される。一方、三方弁38a、38bの切替作用下に、分岐路28がヒートポンプ循環路18から遮断され、且つ第1エバポレータ24が前記ヒートポンプ循環路18に接続される。そして、エアミックスダンパ40は、全閉姿勢に配置される。
【0059】
このため、コンプレッサ16の作用下に、圧縮されて高温となった冷媒体は、第1ヒータ26を通過してコンデンサ20で冷却された後、膨張弁22でさらに低温及び低圧の冷媒体となった後、第1エバポレータ24に供給される。従って、第1エバポレータ24では、低温の冷媒体が通過して空調用空気と熱交換することにより、前記空調用空気が冷却される一方、冷媒体は、吸熱後に膨張弁22からコンプレッサ16に戻される。
【0060】
第1エバポレータ24により冷却された空調用空気は、エアミックスダンパ40の閉塞によって第1ヒータ26及び第2ヒータ42で暖められることがなく、キャビン14に送出されるため、前記キャビン14の冷房が行われる。
【0061】
なお、第1の実施形態では、キャビン14の温度が昇温するのに従って、補助ヒータである第2ヒータ42の出力を低下させているが、場合によっては、前記電気ヒータ42を継続して使用することが好ましい。
【0062】
例えば、図1に示すように、ヒートポンプ循環路18に圧力センサ50及び温度センサ51が設けられており、キャビン14の温度が目標送出温度に上昇するとともに、前記ヒートポンプ循環路18におけるヒートポンプ圧力及び温度が規定値以上の値である際には、コンプレッサ16の回転数を上昇させることができないため、第2ヒータ42を継続使用することが好ましい。また、除湿暖房時に、空調用空気の温度が目標送出温度まで上昇しない場合や、強力除湿が必要な際に、瞬時にガラスの曇り除湿が必要な場合等に、第2ヒータ42を継続使用することが好ましい。
【0063】
一方、キャビン14の温度が目標送出温度に到達する前に、第2ヒータ42をオフすることにより、省エネ運転を一層向上させることもできる。例えば、日射量が十分にあり、第2ヒータ42を停止してもキャビン14の温度が上昇している際や、エコモード等の運転者の意思により前記第2ヒータ42を停止する際等に好適である。
【0064】
図9は本発明の第2の実施形態に係る車両用空調システム60の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る空調システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても、同様にその詳細な説明は省略する。
【0065】
空調システム60では、外気取り入れ口46の下流に、第2ヒータ42、第1エバポレータ24及び第1ヒータ26の順に配置される。
【0066】
このように構成される第2の実施形態の暖房始動方法について、図10に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。なお、第1の実施形態に係る暖房始動方法と同一の工程については、その詳細な説明は省略する。
【0067】
空調システム60の暖房がオンされると(ステップS101中、YES)、ステップS102に進んで、コンプレッサ16が最大回転数で運転を開始する。そして、外気温度、キャビン温度又は冷媒体温度が、閾値以下であると判断されると(ステップS103中、YES)、ステップS104に進む。ステップS104では、キャビン14に送出される空調用空気の送出温度が、閾値以下であると判断されると(ステップS104中、YES)、ステップS105に進んで、コンプレッサ16が最大回転数の回転を維持しながら、第2ヒータ42がオンされる。
【0068】
さらに、送出温度が閾値(目標送出温度)以上であると判断されると(ステップS106中、YES)、ステップS107に進んで、第2ヒータ42の出力が低下される。この状態を、所定の時間だけ保持した後(ステップS108)、送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS109中、YES)、ステップS110に進んで、第2ヒータ42が、設定最低出力であるか否かが判断される。第2ヒータ42が、設定最低出力以下であると判断されると(ステップS110中、YES)、ステップS111に進んで、第2ヒータ42の駆動が停止される。
【0069】
なお、ステップS106で、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS106中、NO)、ステップS112に進んで、第2ヒータ42の出力が増加される。一方、ステップS109で、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS109中、NO)、ステップS113に進んで、第2ヒータ42の出力が増加される。
【0070】
ステップS111において、第2ヒータ42の駆動が停止された後、送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS114中、YES)、コンプレッサ16の回転数が低減され、ステップS118で暖房がオンされているか否かが判断される。オンされていると判断されると(ステップS118中、YES)、ステップS114の送出温度判定に戻る一方、オンされていないと判断されると(ステップS118中、NO)、暖房停止に移行する。
【0071】
また、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS114中、NO)、ステップS116に進んで、コンプレッサ16の回転数が最大値であるか否かが判断される。コンプレッサ16の回転数が最大値ではないと判断されると(ステップS116中、NO)、ステップ117に進んで、前記コンプレッサ16の回転数が高められる。
【0072】
このように、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
さらに、第2の実施形態では、外気取り入れ口46の下流に、第2ヒータ42、第1エバポレータ24及び第1ヒータ26の順に配置されている。このため、外気取り入れ口46の最上流に配置された電気ヒータである第2ヒータ42を介して、取り入れられた外気である空調用空気を昇温することが可能になり、第1ヒータ26の入り口温度を高めることができる。
【0074】
従って、ヒートポンプサイクルの高圧上昇が容易に図られ、ヒートポンプによる送出温度を高くすることが可能になる。これにより、第2ヒータ42の能力を小さく設定することができる。しかも、比較的高電圧の第2ヒータ42は、ヒートポンプの上流側に配置されるため、外力による前記第2ヒータ42の損傷等を良好に回避することが可能になる。
【0075】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る車両用空調システム70の概略構成説明図である。
【0076】
空調システム70では、外気取り入れ口46の下流に、第1エバポレータ24、第2ヒータ42及び第1ヒータ26の順に配置される。このため、第2ヒータ42が第1ヒータ26の上流に配置されており、前記第1ヒータ26が極低温の外気に晒されることがない。従って、ヒートポンプを構成する第1ヒータ26は、高温且つ高圧の状態を容易に維持することができるという利点がある。
【0077】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る車両用空調システム80の概略構成説明図である。
【0078】
空調システム80は、温水ヒータである第2ヒータ82を備えるとともに、外気取り入れ口46の下流に、第1エバポレータ24、前記第2ヒータ82及び第1ヒータ26の順に配置される。第2ヒータ82には、熱源84が温水循環路86を介して接続される。熱源84は、特に排熱が多量に存在する車両において、例えば、エンジン冷却水又は排気熱等から回収された熱を利用した温水を温水循環路86を介して、第2ヒータ82に循環させる。
【0079】
このように構成される空調システム80による暖房始動方法について、図13に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0080】
先ず、空調システム80の暖房がオンされると(ステップS201中、YES)、ステップS202に進んで、熱源84である温水温度が閾値以下であるか否かが判断される。温水温度が閾値以下であると判断されると(ステップS202中、YES)、ステップ203に進んで、コンプレッサ16がオンされる。そして、ヒートポンプによる空調用空気の送出温度が、閾値以下であると判断されると(ステップS204中、YES)、ステップS205に進む。
【0081】
ステップS205では、コンプレッサ16の回転数が最大値であると判断されると(ステップS205中、YES)、ステップS206に進んで、送出温度が閾値以下であると判断されると(ステップS206中、YES)、ステップS207に進んで、温水温度が閾値以上であるか否かが判断される。温水温度が閾値以上であると判断されると(ステップS207中、YES)、ステップS208に進んで、第2ヒータ82がオンされる。
【0082】
さらに、送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS209中、YES)、ステップS210に進む。ステップS210では、コンプレッサ16が作動中であると判断されると(ステップS210中、YES)、ステップS204に戻される一方、前記コンプレッサ16が停止していると判断されると(ステップS210中、NO)、ステップS201に戻される。
【0083】
また、ステップS204で、送出温度が閾値を超えていると判断されると(ステップS204中、NO)、ステップS211に進んで、コンプレッサ16の回転数が低減される。一方、ステップS205で、コンプレッサ16の回転数が最大回転数未満であると判断されると(ステップS205中、NO)、ステップS212に進んで、前記コンプレッサ16の回転数が増加される。
【0084】
この第4の実施形態では、図14に示すように、ヒートポンプと第2ヒータ82とを併用することにより、送出温度を一気に目標送出温度まで上昇させることができるとともに、暖房性能の向上及びヒートポンプの消費電力の低減が容易に図られる(図15及び図16参照)。
【0085】
なお、第1〜第4の実施形態を示したが、キャビン熱回収可能な第2エバポレータと第2ヒータとを有するシステムであれば、キャビン温度の上昇と共に第2ヒータ補助能力の削減が可能であり、本発明は、それに有用である。
【符号の説明】
【0086】
10、60、70、80…空調システム
12…自動車 14…キャビン
16…コンプレッサ 18…ヒートポンプ循環路
20…コンデンサ 22…膨張弁
24、30…エバポレータ 26、42、82…ヒータ
28…分岐路 40…エアミックスダンパ
44…電源 46…外気取り入れ口
48…制御部 84…熱源
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行うためのヒートポンプ式の車両用空調システム及びその暖房始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば、内燃エンジンを組み込むエンジン自動車、エンジンと二次電池(又は二次電池と燃料電池等)とを併用するハイブリッド自動車、電気自動車及び燃料電池自動車等の自動車に対応して、種々の車両用空調システムが採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている電気自動車用空調装置は、図17に示すように、コンプレッサ1aから吐出された熱交換媒体が、メインコンデンサ2a、サブコンデンサ3a、膨張弁4a、車内側熱交換器5a及び前記コンプレッサ1aの順で巡回するヒートポンプサイクルを有している。サブコンデンサ3a及び車内側熱交換器5aは、ユニット6a内に配設されるとともに、前記サブコンデンサ3aに近接して、電気ヒータ7aが設けられている。
【0004】
そして、エアコン制御装置8aは、外気導入モードが選択されている場合に、外気温度TOUTが、低温側設定温度TLよりも低い場合に、電気ヒータ7aへの通電を行っている。一方、エアコン制御装置8aは、外気温度TOUTが、高温側設定温度THを上回ったときに、電気ヒータ7aへの通電を停止している。
【0005】
また、特許文献2に開示されている自動車用空気調和装置は、ヒートポンプ式空気調和装置であり、図18に示すように、送風機1bにより取り入れられた空気を車室内に向かって送るための通風ダクト2bを有しており、この通風ダクト2b内には、エバポレータ3b及び第1コンデンサ4bが配設されている。通風ダクト2bの外には、第2コンデンサ5bが配設されており、第1コンデンサ4bは、主に暖房運転時に作用し、前記第2コンデンサ5bは、主に冷房運転時に作用している。
【0006】
エバポレータ3b、第1コンデンサ4b及び第2コンデンサ5bは、配管によりリキッドタンク6bや膨張弁7bとともに、コンプレッサ8bに連結されて、冷凍サイクルを構成している。通風ダクト2b内には、第1コンデンサ4bの上流側近傍に、電気加熱ヒータとしてのPTCヒータ9bが設置されている。このPTCヒータ9bは、暖房性能が不足しがちな起動時や低負荷時に、通電されることによって、暖房性能不足を補うことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−268035号公報
【特許文献2】実開平7−5825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、外気温度TOUTが高温側設定温度THを上回ったときにのみ、電気ヒータ7aがオフされている。このため、外気温度TOUTが高温側設定温度TH以下の低温条件下では、キャビン(車室)の温度に関わらず、電気ヒータ7aがオンされている。従って、電気消費量が増加してしまい、ヒートポンプ自体の高効率運転が遂行されないという問題がある。
【0009】
しかも、特に外気温度が低いときに、車内側熱交換器5aを低温の空調用空気が通過することで、前記車内側熱交換器5aで結露が発生し易い。これにより、結露した水分が車内側熱交換器5aで凍結するおそれがある。
【0010】
また、上記の特許文献2では、PTCヒータ9bは、エバポレータ3bを通過した冷却空気を加熱して昇温させ、第1コンデンサ4bに送り込まれる空気の温度を高くすることにより、前記第1コンデンサ4bの熱交換率を下げる機能を有している。このため、コンプレッサ8bの吐出圧力が上昇するものの、外気温度にのみ依存するため、効率的な暖房運転が遂行されないという問題がある。
【0011】
しかも、PTCヒータ9bの効率的な運転が考慮されないという問題がある。その上、特許文献1と同様に、外気温度が低温である際に、エバポレータ3bに結露が発生するおそれがある。
【0012】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的に、低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン内の暖房を迅速に行うことが可能な車両用空調システム及びその暖房始動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムに関するものである。
【0014】
車両用空調システムは、圧縮機を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサと、前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータと、前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記圧縮機から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータを通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータと、前記ヒートポンプ循環路から分岐する分岐路に配置され、キャビンから排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータと、前記ヒートポンプ循環路の外部に配置され、前記冷媒体とは異なる熱源により前記空調用空気を加熱する第2ヒータと、暖房始動時に前記冷媒体のみで前記キャビンの温度が調整可能になるまで、前記第2ヒータを稼動させる制御部とを備えている。
【0015】
また、第2ヒータは、出力調整可能に構成されることが好ましい。
【0016】
さらに、ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられることが好ましい。
【0017】
さらにまた、制御部は、キャビンの温度が上昇するのに伴い、第2ヒータの出力を小さく調整することが好ましい。
【0018】
また、車両用空調システムは、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、前記外気取り入れ口の下流には、第1エバポレータ、第1ヒータ及び第2ヒータの順に配置されることが好ましい。
【0019】
さらに、車両用空調システムは、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、前記外気取り入れ口の下流には、第2ヒータ、第1エバポレータ及び第1ヒータの順に配置されることが好ましい。
【0020】
さらにまた、車両用空調システムは、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、前記外気取り入れ口の下流には、第1エバポレータ、第2ヒータ及び第1ヒータの順に配置されることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムの暖房始動方法に関するものである。
【0022】
暖房始動方法は、第1ヒータの作用下に、冷媒体と熱交換された空調用空気をキャビンに送出する工程と、前記キャビンへの送出温度を検出する工程と、前記送出温度が目標送出温度よりも低いと判断された際、第2ヒータを駆動させて前記空調用空気を加熱する工程と、前記第2ヒータの駆動後に、前記送出温度が前記目標送出温度を超えたと判断された際、前記第2ヒータの駆動を停止する工程とを有している。
【0023】
さらに、暖房始動方法は、キャビンの温度が上昇するのに伴って、高効率化の観点で第2ヒータの出力を小さくすることが好ましい。
【0024】
さらにまた、ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられるとともに、暖房始動方法は、前記ヒートポンプ循環路内の圧力が規定値以上である際、強力に除湿が必要な場合、送出温度が目標送出温度を超えても、送出温度安定化の観点で第2ヒータの駆動を継続することが好ましい。
【0025】
また、暖房始動方法は、除湿暖房モードである際、強力に除湿が必要な場合、送出温度が目標送出温度を超えても、第2ヒータの駆動を継続することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、ヒートポンプ循環路の外部に、個別の熱源により空調用空気を加熱するための第2ヒータが配置されている。従って、第2ヒータは、キャビンの暖房熱源として良好に機能し、ヒートポンプとの併用により前記キャビンを迅速に昇温させることができる。
【0027】
しかも、外気温度が低く、ヒートポンプの熱源が不足する際にも、キャビンから排出される熱媒体を、第2エバポレータを介して前記ヒートポンプの熱源として利用することが可能になる。これにより、簡単且つ経済的に、凍結を防止して低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン内の暖房を迅速に行うことができる。
【0028】
さらに、ヒートポンプのみでキャビンの暖房が可能な状態になった際には、第2ヒータの駆動が停止される。このため、ヒートポンプのみによる高効率運転が容易に遂行可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調システムの概略ブロック図である。
【図2】前記車両用空調システムの暖房運転時の概略説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る暖房始動方法を説明するフローチャートである。
【図4】第2ヒータの有無によるキャビン温度及び送出温度の説明図である。
【図5】暖房性能の説明図である。
【図6】消費電力の説明図である。
【図7】前記車両用空調システムの除湿暖房運転時の概略説明図である。
【図8】前記車両用空調システムの冷房運転時の概略説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調システムの概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る暖房始動方法を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る車両用空調システムの概略説明図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る車両用空調システムの概略説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る暖房始動方法を説明するフローチャートである。
【図14】第2ヒータの有無によるキャビン温度及び送出温度の説明図である。
【図15】暖房性能の説明図である。
【図16】消費電力の説明図である。
【図17】特許文献1に開示されている電気自動車用空調装置の説明図である。
【図18】特許文献2に開示されている自動車用空気調和装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る車両用空調システム10は、自動車(車両)12に搭載されており、乗員用のキャビン(車室)14の空調を行う。
【0031】
空調システム10は、コンプレッサ(圧縮機)16を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路18を備える。ヒートポンプ循環路18には、冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサ20と、前記コンデンサ20から送られる前記冷媒体を減圧させる膨張弁22と、前記膨張弁22を通過した前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータ24と、前記コンプレッサ16から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータ24を通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータ(コンデンサ)26とが配置される。
【0032】
ヒートポンプ循環路18から分岐路28が分岐するとともに、前記分岐路28には、キャビン14から排出される熱媒体(キャビン14からの排熱気体)と冷媒体で熱交換を行う第2エバポレータ30が配置される。
【0033】
コンデンサ20は、例えば、ラジエータを構成しており、自動車12の前方側に配置されるとともに、前記コンデンサ20の両側には、電磁弁32aと逆止弁34とが配置される。ヒートポンプ循環路18には、コンデンサ20と平行に第1バイパス路36aが設けられ、前記第1バイパス路36aには、電磁弁32bが配置される。
【0034】
膨張弁22は、空調用空気を冷却する第1エバポレータ24から送出された冷媒体の温度を検出する手段(図示せず)を有する。この膨張弁22は、第1エバポレータ24から送出された冷媒体の温度に応じて、開度を自動的に変更させることにより、冷媒体流量を変更可能に構成される。
【0035】
ヒートポンプ循環路18には、膨張弁22に近接する部位と、分岐路28の入り口側との接続部位に対応して、三方弁38aが配置される。ヒートポンプ循環路18には、第1エバポレータ24をバイパスする第2バイパス路36bの出口部と前記ヒートポンプ循環路18との接続部位に対応して、三方弁38bが配置される。第2エバポレータ30は、自動車12の後部側に配置される(図2参照)。
【0036】
第1エバポレータ24と第1ヒータ26との間には、前記第1エバポレータ24により冷却された空調用空気を前記第1ヒータ26を迂回させてキャビン14に送出するためのエアミックスダンパ40が設けられる。第1ヒータ26の下流側に近接して、第2ヒータ42が配置される。第2ヒータ42は、電気ヒータで構成されており、個別の電源(熱源)44を備えることにより、ヒートポンプ循環路18とは個別に構成される。
【0037】
自動車12には、外気を空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口46が形成される。この外気取り入れ口46の下流には、第1エバポレータ24、第1ヒータ26及び第2ヒータ42の順に配置される。第2ヒータ42は、出力調整可能であり、暖房始動時に冷媒体のみでキャビン14の温度が調整可能になるまで、制御部(ECU)48により稼動される(図1参照)。制御部48は、空調システム10全体の駆動制御を行う。
【0038】
このように構成される空調システム10の動作について、第1の実施形態に係る暖気始動方法との関連で、図3に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0039】
先ず、空調システム10の暖房がオンされると(ステップS1中、YES)、ステップS2に進んで、コンプレッサ16が駆動される。コンプレッサ16は、例えば、最低回転数を維持して駆動される。このため、コンプレッサ16からヒートポンプ循環路18に送出される冷媒体は、図2に示すように、第1ヒータ26に供給され、この第1ヒータ26で空調用空気と熱交換(放熱)を行い、前記空調用空気を昇温させる。
【0040】
第1ヒータ26から排出される冷媒体は、電磁弁32aが閉塞される一方、電磁弁32bが開放されるため、放熱器であるコンデンサ20を迂回して第1バイパス路36aを通り、膨張弁22に送られる。膨張弁22で減圧された冷媒体は、三方弁38aを介して分岐路28に分岐され、第2エバポレータ30に導入される。第2エバポレータ30では、冷媒体がキャビン14内の熱源と熱交換を行った後、第1エバポレータ24を迂回して第2バイパス路36bから膨張弁22を通って、再度、コンプレッサ16に送られる。
【0041】
次に、ステップS3に進んで、キャビン14に送出される空調用空気の温度(以下、送出温度ともいう)が検出される。この送出温度が閾値(予め設定される目標送出温度)以下であると判断されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進んで、コンプレッサ16の回転数が最大回転数であるか否かが判断される。
【0042】
コンプレッサ16の回転数が最大回転数であると判断されると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進んで、送出温度が閾値以下であるか否かが判断される。そして、送出温度が閾値以下であると判断されると(ステップS5中、YES)、ステップS6に進んで、第2ヒータ42が駆動される。
【0043】
なお、ステップS3で、送出温度が閾値を超えていると判断されると(ステップS3中、NO)、ステップS7に進んで、コンプレッサ16の回転数が低減される。一方、ステップS4で、コンプレッサ16の回転数が最大回転数以下で判断されると(ステップS4中、NO)、ステップS8に進んで、前記コンプレッサ16の回転数の増加が行われる。
【0044】
ステップS6では、制御部48を介して第2ヒータ42が駆動されるため、第1ヒータ26から送出される空調用空気は、前記第2ヒータ42を介してさらに昇温された後、キャビン14に送出される。従って、図4に示すように、キャビン14に送出される空調用空気は、ヒートポンプと第2ヒータ42とにより加温されている。このため、ヒートポンプのみによる加温に比べて、キャビン14の温度が迅速に昇温し、目標送出温度まで一気に上昇させることができる。ここで、目標送出温度は、外気温度、車内温度及び日射等から決定される。
【0045】
そして、送出温度(吐気温度)が閾値(目標送出温度)以上であると判断されると(ステップS9中、YES)、ステップS10に進んで、第2ヒータ42の出力が低下される。また、キャビン温度が閾値未満であると判断された際には(ステップS9中、NO)、ステップS11に進んで、第2ヒータ42の出力が増加される。
【0046】
ステップS10で、第2ヒータ42の出力が低下された後、所定の時間だけ保持される(ステップS12)。さらに、ステップS13に進んで、送出温度が閾値以上であるか否かが判断される。第2ヒータ42の出力が低下され、且つ送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS13中、YES)、ステップS14に進んで、第2ヒータ42が設定最低出力以下であるか否かが判断される。第2ヒータ42が設定最低出力以下で有ると判断されると(ステップS14中、YES)、ステップS15に進んで、該第2ヒータ42の稼動が停止される。
【0047】
また、ステップS13において、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS13中、NO)、ステップS16に進んで、第2ヒータ42の出力増加が行われる。
【0048】
このように、第1の実施形態では、ヒートポンプ循環路18の外部に、個別の熱源である電源44を介して空調用空気を加熱するための第2ヒータ(電気ヒータ)42が配置されている。このため、ヒートポンプ循環路18を循環する冷媒体では、キャビン14の温度を目標送出温度まで上昇し難い際に、第2ヒータ42をキャビン14の暖房熱源として良好に機能させることができ、前記キャビン14の温度を迅速に昇温させることができるという利点がある(図4及び図5参照)。
【0049】
しかも、第1の実施形態では、送出温度が閾値以上であると判断された際には、ヒートポンプによる暖房を継続する一方、第2ヒータ42の出力を低下させている。そして、ヒートポンプのみによりキャビン温度が目標送出温度を維持し得ると判断された際には、第2ヒータ42がオフされている。従って、補助熱源である第2ヒータ42の消費電力は、図6に示すように、有効に低減され、ヒートポンプのみによる高効率運転が遂行可能になるという効果がある。
【0050】
さらにまた、第1の実施形態では、ヒートポンプ循環路18に分岐路28を介して第2エバポレータ30が接続されている。第2エバポレータ30は、暖房運転時に、キャビン14から排出される排熱気体を熱源として冷媒体に吸熱処理を施すことにより、前記冷媒体の温度を一層高めることができる。
【0051】
これにより、特に外気温度が低く、ヒートポンプの熱源が不足する際にも、第2エバポレータ30を介してキャビン14から排出される排熱気体を前記ヒートポンプの熱源として利用することが可能になる。このため、簡単且つ経済的に、低温時の効率的な昇温が遂行されるとともに、キャビン14内の暖房を迅速に行うことができる。
【0052】
また、第1の実施形態では、外気取り入れ口46の下流には、第1エバポレータ24、第1ヒータ26及び第2ヒータ42の順に配置されている。従って、空調用空気は、第1ヒータ26により温度上昇が行われた後、第2ヒータ42を介してさらに温度上昇がなされ、キャビン14には、高温の空調用空気が送出されてキャビン温度の上昇が迅速に遂行される。これにより、キャビン14から排出される排熱気体の温度も上昇しており、第2エバポレータ30による吸熱量も増加し、ヒートポンプの吸熱性能が向上して暖房性能も一層向上するという効果がある。
【0053】
次に、空調システム10による除湿暖房運転について、図7を参照しながら説明する。
【0054】
この除湿暖房運転時には、三方弁38bが操作されることにより、第2バイパス路36bが閉塞されて、第1エバポレータ24がヒートポンプ循環路18に接続される。このため、コンプレッサ16の作用下に、ヒートポンプ循環路18に送出される冷媒体は、第1ヒータ26を通って放熱された後、膨張弁22を通過して低圧及び低温となり、第2エバポレータ30で吸熱された後、第1エバポレータ24に送られる。
【0055】
第1エバポレータ24では、空調用空気から吸熱することにより、前記空調用空気が一旦冷却された後、第1ヒータ26の放熱作用下に昇温され、さらに第2ヒータ42によって昇温された後、キャビン14に送出される。従って、空調用空気は、第1エバポレータ24で冷却されることにより、外気から取り込まれた空気に含まれる水蒸気が除去されて、除湿処理が施されることになる。
【0056】
その際、第1エバポレータ24を通過する空調用空気が低温であっても、第2エバポレータ30によりキャビン14から排出される高温低湿度の熱源から十分な吸熱がなされており、前記第1エバポレータ24に流入される冷媒体が暖められている。これにより、除湿暖房運転時でも、第2エバポレータ30が凍結することがなく、連続運転が可能になる。
【0057】
さらにまた、空調システム10による冷房運転が、図8に示されている。
【0058】
この冷房運転時には、電磁弁32aが開放されるとともに、電磁弁32bが閉塞されて、コンデンサ20がヒートポンプ循環路18に接続される。一方、三方弁38a、38bの切替作用下に、分岐路28がヒートポンプ循環路18から遮断され、且つ第1エバポレータ24が前記ヒートポンプ循環路18に接続される。そして、エアミックスダンパ40は、全閉姿勢に配置される。
【0059】
このため、コンプレッサ16の作用下に、圧縮されて高温となった冷媒体は、第1ヒータ26を通過してコンデンサ20で冷却された後、膨張弁22でさらに低温及び低圧の冷媒体となった後、第1エバポレータ24に供給される。従って、第1エバポレータ24では、低温の冷媒体が通過して空調用空気と熱交換することにより、前記空調用空気が冷却される一方、冷媒体は、吸熱後に膨張弁22からコンプレッサ16に戻される。
【0060】
第1エバポレータ24により冷却された空調用空気は、エアミックスダンパ40の閉塞によって第1ヒータ26及び第2ヒータ42で暖められることがなく、キャビン14に送出されるため、前記キャビン14の冷房が行われる。
【0061】
なお、第1の実施形態では、キャビン14の温度が昇温するのに従って、補助ヒータである第2ヒータ42の出力を低下させているが、場合によっては、前記電気ヒータ42を継続して使用することが好ましい。
【0062】
例えば、図1に示すように、ヒートポンプ循環路18に圧力センサ50及び温度センサ51が設けられており、キャビン14の温度が目標送出温度に上昇するとともに、前記ヒートポンプ循環路18におけるヒートポンプ圧力及び温度が規定値以上の値である際には、コンプレッサ16の回転数を上昇させることができないため、第2ヒータ42を継続使用することが好ましい。また、除湿暖房時に、空調用空気の温度が目標送出温度まで上昇しない場合や、強力除湿が必要な際に、瞬時にガラスの曇り除湿が必要な場合等に、第2ヒータ42を継続使用することが好ましい。
【0063】
一方、キャビン14の温度が目標送出温度に到達する前に、第2ヒータ42をオフすることにより、省エネ運転を一層向上させることもできる。例えば、日射量が十分にあり、第2ヒータ42を停止してもキャビン14の温度が上昇している際や、エコモード等の運転者の意思により前記第2ヒータ42を停止する際等に好適である。
【0064】
図9は本発明の第2の実施形態に係る車両用空調システム60の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る空調システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても、同様にその詳細な説明は省略する。
【0065】
空調システム60では、外気取り入れ口46の下流に、第2ヒータ42、第1エバポレータ24及び第1ヒータ26の順に配置される。
【0066】
このように構成される第2の実施形態の暖房始動方法について、図10に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。なお、第1の実施形態に係る暖房始動方法と同一の工程については、その詳細な説明は省略する。
【0067】
空調システム60の暖房がオンされると(ステップS101中、YES)、ステップS102に進んで、コンプレッサ16が最大回転数で運転を開始する。そして、外気温度、キャビン温度又は冷媒体温度が、閾値以下であると判断されると(ステップS103中、YES)、ステップS104に進む。ステップS104では、キャビン14に送出される空調用空気の送出温度が、閾値以下であると判断されると(ステップS104中、YES)、ステップS105に進んで、コンプレッサ16が最大回転数の回転を維持しながら、第2ヒータ42がオンされる。
【0068】
さらに、送出温度が閾値(目標送出温度)以上であると判断されると(ステップS106中、YES)、ステップS107に進んで、第2ヒータ42の出力が低下される。この状態を、所定の時間だけ保持した後(ステップS108)、送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS109中、YES)、ステップS110に進んで、第2ヒータ42が、設定最低出力であるか否かが判断される。第2ヒータ42が、設定最低出力以下であると判断されると(ステップS110中、YES)、ステップS111に進んで、第2ヒータ42の駆動が停止される。
【0069】
なお、ステップS106で、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS106中、NO)、ステップS112に進んで、第2ヒータ42の出力が増加される。一方、ステップS109で、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS109中、NO)、ステップS113に進んで、第2ヒータ42の出力が増加される。
【0070】
ステップS111において、第2ヒータ42の駆動が停止された後、送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS114中、YES)、コンプレッサ16の回転数が低減され、ステップS118で暖房がオンされているか否かが判断される。オンされていると判断されると(ステップS118中、YES)、ステップS114の送出温度判定に戻る一方、オンされていないと判断されると(ステップS118中、NO)、暖房停止に移行する。
【0071】
また、送出温度が閾値未満であると判断されると(ステップS114中、NO)、ステップS116に進んで、コンプレッサ16の回転数が最大値であるか否かが判断される。コンプレッサ16の回転数が最大値ではないと判断されると(ステップS116中、NO)、ステップ117に進んで、前記コンプレッサ16の回転数が高められる。
【0072】
このように、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
さらに、第2の実施形態では、外気取り入れ口46の下流に、第2ヒータ42、第1エバポレータ24及び第1ヒータ26の順に配置されている。このため、外気取り入れ口46の最上流に配置された電気ヒータである第2ヒータ42を介して、取り入れられた外気である空調用空気を昇温することが可能になり、第1ヒータ26の入り口温度を高めることができる。
【0074】
従って、ヒートポンプサイクルの高圧上昇が容易に図られ、ヒートポンプによる送出温度を高くすることが可能になる。これにより、第2ヒータ42の能力を小さく設定することができる。しかも、比較的高電圧の第2ヒータ42は、ヒートポンプの上流側に配置されるため、外力による前記第2ヒータ42の損傷等を良好に回避することが可能になる。
【0075】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る車両用空調システム70の概略構成説明図である。
【0076】
空調システム70では、外気取り入れ口46の下流に、第1エバポレータ24、第2ヒータ42及び第1ヒータ26の順に配置される。このため、第2ヒータ42が第1ヒータ26の上流に配置されており、前記第1ヒータ26が極低温の外気に晒されることがない。従って、ヒートポンプを構成する第1ヒータ26は、高温且つ高圧の状態を容易に維持することができるという利点がある。
【0077】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る車両用空調システム80の概略構成説明図である。
【0078】
空調システム80は、温水ヒータである第2ヒータ82を備えるとともに、外気取り入れ口46の下流に、第1エバポレータ24、前記第2ヒータ82及び第1ヒータ26の順に配置される。第2ヒータ82には、熱源84が温水循環路86を介して接続される。熱源84は、特に排熱が多量に存在する車両において、例えば、エンジン冷却水又は排気熱等から回収された熱を利用した温水を温水循環路86を介して、第2ヒータ82に循環させる。
【0079】
このように構成される空調システム80による暖房始動方法について、図13に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0080】
先ず、空調システム80の暖房がオンされると(ステップS201中、YES)、ステップS202に進んで、熱源84である温水温度が閾値以下であるか否かが判断される。温水温度が閾値以下であると判断されると(ステップS202中、YES)、ステップ203に進んで、コンプレッサ16がオンされる。そして、ヒートポンプによる空調用空気の送出温度が、閾値以下であると判断されると(ステップS204中、YES)、ステップS205に進む。
【0081】
ステップS205では、コンプレッサ16の回転数が最大値であると判断されると(ステップS205中、YES)、ステップS206に進んで、送出温度が閾値以下であると判断されると(ステップS206中、YES)、ステップS207に進んで、温水温度が閾値以上であるか否かが判断される。温水温度が閾値以上であると判断されると(ステップS207中、YES)、ステップS208に進んで、第2ヒータ82がオンされる。
【0082】
さらに、送出温度が閾値以上であると判断されると(ステップS209中、YES)、ステップS210に進む。ステップS210では、コンプレッサ16が作動中であると判断されると(ステップS210中、YES)、ステップS204に戻される一方、前記コンプレッサ16が停止していると判断されると(ステップS210中、NO)、ステップS201に戻される。
【0083】
また、ステップS204で、送出温度が閾値を超えていると判断されると(ステップS204中、NO)、ステップS211に進んで、コンプレッサ16の回転数が低減される。一方、ステップS205で、コンプレッサ16の回転数が最大回転数未満であると判断されると(ステップS205中、NO)、ステップS212に進んで、前記コンプレッサ16の回転数が増加される。
【0084】
この第4の実施形態では、図14に示すように、ヒートポンプと第2ヒータ82とを併用することにより、送出温度を一気に目標送出温度まで上昇させることができるとともに、暖房性能の向上及びヒートポンプの消費電力の低減が容易に図られる(図15及び図16参照)。
【0085】
なお、第1〜第4の実施形態を示したが、キャビン熱回収可能な第2エバポレータと第2ヒータとを有するシステムであれば、キャビン温度の上昇と共に第2ヒータ補助能力の削減が可能であり、本発明は、それに有用である。
【符号の説明】
【0086】
10、60、70、80…空調システム
12…自動車 14…キャビン
16…コンプレッサ 18…ヒートポンプ循環路
20…コンデンサ 22…膨張弁
24、30…エバポレータ 26、42、82…ヒータ
28…分岐路 40…エアミックスダンパ
44…電源 46…外気取り入れ口
48…制御部 84…熱源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムであって、
圧縮機を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記圧縮機から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータを通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータと、
前記ヒートポンプ循環路から分岐する分岐路に配置され、前記キャビンから排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路の外部に配置され、前記冷媒体とは異なる熱源により前記空調用空気を加熱する第2ヒータと、
暖房始動時に前記冷媒体のみで前記キャビンの温度が調整可能になるまで、前記第2ヒータを稼動させる制御部と、
を備えることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調システムにおいて、前記第2ヒータは、出力調整可能に構成されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調システムにおいて、前記ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項4】
請求項2記載の車両用空調システムにおいて、前記制御部は、前記キャビンの温度が上昇するのに伴い、前記第2ヒータの出力を小さく調整することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調システムにおいて、外気を前記空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、
前記外気取り入れ口の下流には、前記第1エバポレータ、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータの順に配置されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調システムにおいて、外気を前記空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、
前記外気取り入れ口の下流には、前記第2ヒータ、前記第1エバポレータ及び前記第1ヒータの順に配置されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調システムにおいて、外気を前記空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、
前記外気取り入れ口の下流には、前記第1エバポレータ、前記第2ヒータ及び前記第1ヒータの順に配置されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項8】
車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムの暖房始動方法であって、
前記車両用空調システムは、圧縮機を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記圧縮機から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータを通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータと、
前記ヒートポンプ循環路から分岐する分岐路に配置され、前記キャビンから排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路の外部に配置され、前記冷媒体とは異なる熱源により前記空調用空気を加熱する第2ヒータと、
を備え、
前記暖房始動方法は、前記第1ヒータの作用下に、前記冷媒体と熱交換された前記空調用空気を前記キャビンに送出する工程と、
前記キャビンへの送出温度を検出する工程と、
前記送出温度が目標送出温度よりも低いと判断された際、前記第2ヒータを駆動させて前記空調用空気を加熱する工程と、
前記第2ヒータの駆動後に、前記送出温度が前記目標送出温度を超えたと判断された際、前記第2ヒータの駆動を停止する工程と、
を有することを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項9】
請求項8記載の暖房始動方法において、前記キャビンの温度が上昇するのに伴って、前記第2ヒータの出力を小さくすることを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の暖房始動方法において、前記ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられるとともに、
前記ヒートポンプ循環路内の圧力が規定値以上である際、前記送出温度が前記目標送出温度を超えても、前記第2ヒータの駆動を継続することを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項11】
請求項8又は9記載の暖房始動方法において、除湿暖房モードである際、前記送出温度が前記目標送出温度を超えても、前記第2ヒータの駆動を継続することを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項1】
車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムであって、
圧縮機を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記圧縮機から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータを通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータと、
前記ヒートポンプ循環路から分岐する分岐路に配置され、前記キャビンから排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路の外部に配置され、前記冷媒体とは異なる熱源により前記空調用空気を加熱する第2ヒータと、
暖房始動時に前記冷媒体のみで前記キャビンの温度が調整可能になるまで、前記第2ヒータを稼動させる制御部と、
を備えることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調システムにおいて、前記第2ヒータは、出力調整可能に構成されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調システムにおいて、前記ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項4】
請求項2記載の車両用空調システムにおいて、前記制御部は、前記キャビンの温度が上昇するのに伴い、前記第2ヒータの出力を小さく調整することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調システムにおいて、外気を前記空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、
前記外気取り入れ口の下流には、前記第1エバポレータ、前記第1ヒータ及び前記第2ヒータの順に配置されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調システムにおいて、外気を前記空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、
前記外気取り入れ口の下流には、前記第2ヒータ、前記第1エバポレータ及び前記第1ヒータの順に配置されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調システムにおいて、外気を前記空調用空気として取り入れるための外気取り入れ口を有し、
前記外気取り入れ口の下流には、前記第1エバポレータ、前記第2ヒータ及び前記第1ヒータの順に配置されることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項8】
車両に搭載されて乗員用のキャビンの空調を行う車両用空調システムの暖房始動方法であって、
前記車両用空調システムは、圧縮機を介して冷媒体を循環させるヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と外気とで熱交換を行うコンデンサと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記冷媒体と空調用空気とで熱交換を行う第1エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路に配置され、前記圧縮機から送出される前記冷媒体と前記第1エバポレータを通過した前記空調用空気とで熱交換を行う第1ヒータと、
前記ヒートポンプ循環路から分岐する分岐路に配置され、前記キャビンから排出される熱媒体と前記冷媒体とで熱交換を行う第2エバポレータと、
前記ヒートポンプ循環路の外部に配置され、前記冷媒体とは異なる熱源により前記空調用空気を加熱する第2ヒータと、
を備え、
前記暖房始動方法は、前記第1ヒータの作用下に、前記冷媒体と熱交換された前記空調用空気を前記キャビンに送出する工程と、
前記キャビンへの送出温度を検出する工程と、
前記送出温度が目標送出温度よりも低いと判断された際、前記第2ヒータを駆動させて前記空調用空気を加熱する工程と、
前記第2ヒータの駆動後に、前記送出温度が前記目標送出温度を超えたと判断された際、前記第2ヒータの駆動を停止する工程と、
を有することを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項9】
請求項8記載の暖房始動方法において、前記キャビンの温度が上昇するのに伴って、前記第2ヒータの出力を小さくすることを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の暖房始動方法において、前記ヒートポンプ循環路には、圧力センサ及び温度センサが設けられるとともに、
前記ヒートポンプ循環路内の圧力が規定値以上である際、前記送出温度が前記目標送出温度を超えても、前記第2ヒータの駆動を継続することを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【請求項11】
請求項8又は9記載の暖房始動方法において、除湿暖房モードである際、前記送出温度が前記目標送出温度を超えても、前記第2ヒータの駆動を継続することを特徴とする車両用空調システムの暖房始動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−51466(P2011−51466A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201858(P2009−201858)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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