説明

車両用空調システム

【課題】車室の好適な空調を実現しつつ、車両への搭載性に優れた車両用空調システムを提供する。
【解決手段】本発明の車両用空調システムは、エンジン3と、ラジエータ5と、エンジン3とラジエータ5とを接続し、エンジン冷却液が循環可能な熱交換媒体流路7、9と、暖房用ペルチェモジュール11と、冷房用ペルチェモジュール13とを備えている。暖房用ペルチェモジュール11は、第1ペルチェ素子17と第1フィン19とを有している。冷房用ペルチェモジュール13は、第2ペルチェ素子27と第2フィン29とを有している。ラジエータ5はエンジン冷却液の熱を車室外に放出可能である。この車両用空調システムにおいて、第1ペルチェ素子17及び第2ペルチェ素子27の各他面17b、27b側は、熱交換媒体流路7、9と当接しており、熱的に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両用空調システムが開示されている。この車両用空調システムは、排熱回収器と、ラジエータと、ペルチェモジュールと、熱交換媒体としての水が循環可能な熱交換媒体流路とを備えている。
【0003】
排熱回収器には、車両を駆動させるモータ等の排熱が回収されるようになっている。ペルチェモジュールは、一面側と他面側とで放熱面と吸熱面とを切り替え可能なペルチェ素子と、ペルチェ素子の一面側に熱的に接合された一面側熱交換器と、ペルチェ素子の他面側に熱的に接合された他面側熱交換器とを有している。熱交換媒体流路は、排熱回収器と車ラジエータとペルチェモジュールの他面側熱交換器とを接続している。
【0004】
この車両用空調システムでは、ペルチェ素子の放熱面と吸熱面との切り替え操作と、熱交換媒体流路の切り替え操作とにより車室の空調を行う。
【0005】
具体的には、車室の暖房を行う場合、ペルチェ素子の一面側を放熱面とし、他面側を吸熱面とする。また、排熱回収器と他面側熱交換器とを連通させ、他面側熱交換器及び排熱回収器とラジエータとを非連通とする。これにより、熱交換媒体流路内の水が排熱回収器内の熱によって加熱される。この水の熱が他面側熱交換器においてペルチェ素子の他面側から吸熱される。この吸熱された熱は、一面側熱交換器内において、周りの空気に対して放熱される。この放熱によって加熱された空気が車室に供給され、車室の暖房が行われる。
【0006】
一方、車室の冷房を行う場合、ペルチェ素子の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とする。また、ラジエータと他面側熱交換器とを連通させ、他面側熱交換器及びラジエータと排熱回収器とを非連通とする。これにより、一面側熱交換器においてペルチェ素子の一面側から吸熱され、一面側熱交換器の周りの空気が冷却される。この冷却された空気が車室に供給されることにより、車室の冷房が行われる。なお、ペルチェ素子の他面側からの放熱を受けて加熱された他面側熱交換器内及び熱交換媒体流路内の水は、ラジエータによって車室外の空気と熱交換されることにより冷却される。
【0007】
また、特許文献2には他の構成の車両用空調システムが開示されている。この車両用空調システムは、ラジエータと、暖房用ペルチェモジュールと、冷房用ペルチェモジュールと、水が循環可能な熱交換媒体流路とを備えている。熱交換媒体流路は、ラジエータと暖房用ペルチェモジュールと冷房用ペルチェモジュールとを接続している。
【0008】
この車両用空調システムでは、車室の暖房を行う場合、暖房用ペルチェモジュールを作動させる。これにより、暖房用ペルチェモジュールは、熱交換媒体流路内の水から吸熱を行うとともに、周りの空気に対して放熱を行う。この放熱によって加熱された空気が車室に供給され、車室の暖房が行われる。
【0009】
一方、車室の冷房を行う場合、冷房用ペルチェモジュールとラジエータとを作動させる。これにより、冷房用ペルチェモジュールは、熱交換媒体流路内の水へ放熱を行うとともに、周りの空気に対して吸熱を行う。この吸熱によって冷却された空気が車室に供給され、車室の冷房が行われる。
【0010】
また、車室の除湿を行う場合、暖房用ペルチェモジュールと冷房用ペルチェモジュールとラジエータとを作動させる。これにより、冷房用ペルチェモジュールによって冷却され、湿度が低くなった空気を暖房用ペルチェモジュールによって再加熱する。こうして、温度調整が行われた空気が車室に供給され、車室の除湿が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−35268号公報
【特許文献2】特開2010−195287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記特許文献1に開示された車両用空調システムは、構造が複雑であり、大型化によって車両への搭載性が低下してしまう。また、この車両用空調システムでは、ペルチェモジュールによって冷却された空気を再加熱できないことから、車室の除湿を行う場合に車室の暖房効果が低下してしまう。
【0013】
一方、上記特許文献2に開示された車両用空調システムでは、除湿による車室の空調効果が低下という問題は生じ難くなっているものの、車両を走行させる駆動源の熱を車外に放出するためのラジエータが別途必要になる。このため、この車両用空調システムでは、複数のラジエータを備えることによる大型化が顕著となり、やはり車両への搭載性が低下してしまう。
【0014】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車室の好適な空調を実現しつつ、車両への搭載性に優れた車両用空調システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の車両用空調システムは、車両を駆動させる駆動源と、
車室外に配置されるラジエータと、
該駆動源と該ラジエータとの間を熱交換媒体が循環可能に接続する熱交換媒体流路と、
一面側及び他面側の一方が放熱面となり、他方が吸熱面となる第1ペルチェ素子と、該一面側に熱的に接合された第1熱交換器とを有する第1ペルチェモジュールと、
一面側及び他面側の一方が放熱面となり、他方が吸熱面となる第2ペルチェ素子と、該一面側に熱的に接合された第2熱交換器とを有する第2ペルチェモジュールとを備え、
前記第1ペルチェ素子の前記他面側及び前記第2ペルチェ素子の前記他面側は、前記熱交換媒体流路と熱的に接合されていることを特徴とする(請求項1)。
【0016】
本発明の車両用空調システムでは、車室の暖房を行う場合、第1ペルチェ素子の一面側を放熱面とし、他面側を吸熱面とした状態で第1ペルチェモジュールを作動させる。これにより、第1ペルチェ素子の吸熱面が熱交換媒体流路内の熱交換媒媒体から吸熱を行なうとともに、第1ペルチェ素子の放熱面側の第1熱交換器が周りの空気を加熱する。そして、この加熱された空気が車室に供給され、車室の暖房が行われる。なお、第1ペルチェモジュールに代えて、第2ペルチェ素子の一面側を放熱面とし、他面側を吸熱面とした状態で第2ペルチェモジュールを作動させることによっても車室の暖房を行うことができる。
【0017】
また、車室の冷房を行う場合、第1ペルチェ素子の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とした状態で第1ペルチェモジュールを作動させる。これにより、第1ペルチェ素子の放熱面が熱交換媒体流路内の熱交換媒媒体に放熱を行うとともに、第1ペルチェ素子の吸熱面側の第1熱交換器が周りの空気を冷却する。そして、この冷却された空気が車室に供給され、車室の冷房が行われる。なお、第1ペルチェ素子からの放熱を受けて加熱された熱交換媒体の熱、すなわち、冷房時における第1ペルチェモジュールの排熱は、ラジエータによって車室外へ放出される。これにより、熱交換媒体は再度冷却されることとなる。また、第1ペルチェモジュールに代えて、第2ペルチェ素子の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とした状態で第2暖房用ペルチェモジュールを作動させることによっても車室の冷房を行うことができる。
【0018】
さらに、車室の除湿を行う場合、第1ペルチェ素子の一面側を放熱面とし、他面側を吸熱面とした状態で第1ペルチェモジュールを作動させるとともに、第2ペルチェ素子の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とした状態で第2ペルチェモジュールを作動させる。これにより、第2熱交換器による冷却で除湿された空気は、第1熱交換器によって再加熱されることで温度調整がなされる。そして、この温度調整がされた空気が車室に供給されることで車室の空調効果が妨げられることなく、車室の除湿が行われる。なお、上記の冷房時と同様、除湿時に生じた第2ペルチェモジュールの排熱もラジエータによって車室外へ放出される。また、第1ペルチェ素子の一面側を吸熱面とし、他面側を放熱面とした状態で第1ペルチェモジュールを作動させ、第2ペルチェ素子の一面側を放熱面とし、他面側を吸熱面とした状態で第2ペルチェモジュールを作動させることによっても、車室の除湿を行うことができる。
【0019】
このように、この車両用空調システムでは、車室の空調の切り替え、すなわち、車室の暖房、冷房及び除湿の切り替えを行うに当たって、熱交換媒体流路を切り替える必要がない。また、この車両用空調システムでは、駆動源が熱交換媒体流路に接続されており、この駆動源は、熱交換媒体流路内の熱交換媒体によって冷却されることとなる。このため、駆動時における駆動源の熱、すなわち、排熱は、熱交換媒体とラジエータとを介して車室外に放出される。このため、この車両用空調システムでは、車室の空調時に第1ペルチェモジュールや第2ペルチェモジュールから生じる排熱と、駆動源から生じる排熱とを共に、熱交換媒体とラジエータによって車外に放出することが可能となる。このため、この車両用空調システムでは、駆動源を冷却するためのラジエータを別途に設ける必要がない。これらのため、この車両用空調システムでは、大型化を抑制することが可能となる。
【0020】
したがって、本発明の車両用空調システムによれば、車室の好適な空調を実現できるとともに、車両への優れた搭載性を実現することが可能となる。
【0021】
特に、この車両用空調システムでは、車室の暖房を行う際、第1、2ペルチェ素子の各一面側を放熱面とし、各他面側を吸熱面とした状態で第1、2ペルチェモジュールをそれぞれ作動させることもできる。この場合、第1、2熱交換器のそれぞれによって周りの空気を加熱できるため、周りの空気をより加熱することが可能となる。このため、より高温の空気を車室に供給することが可能となり、より強く車室の暖房を行うことができる。
【0022】
同様に、車室の冷房を行う際、第1、2ペルチェ素子の各一面側を吸熱面とし、各他面側を放熱面とした状態で第1、2ペルチェモジュールをそれぞれ作動させることができる。この場合も、第1、2熱交換器のそれぞれによって周りの空気を冷却できるため、周りの空気をより冷却することが可能となる。このため、より低温の空気を車室に供給することが可能となり、より強く車室の冷房を行うことができる。
【0023】
本発明の車両用空調システムにおいては、複数個の第1ペルチェモジュールや複数個の第2ペルチェモジュールを採用することが可能である。また、第1ペルチェモジュールと第2ペルチェモジュールとの個数は同一でも良く、異なっても良い。
【0024】
駆動源としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン及び天然ガスエンジン等の内燃式のエンジン、モータ、インバータやコンバータ等によって構成されたパワーコントロールユニット(PCU)等の駆動回路及びバッテリ等を採用することができる。これらのエンジンやモータ等を組み合わせて駆動源とすることもできる。また、熱交換媒体としては、水の他、LLC(ロングライフクーラント)からなる冷却液等の液体や空気等の気体を採用することが可能である。
【0025】
また、第1、2熱交換器としては、例えば、放熱又は吸熱用のフィンの他、内部を熱交換媒体が流通可能な空調用の熱交換器(ラジエータ等)を採用することができる。なお、第1、2熱交換器はそれぞれ同種のものを採用しても良く、それぞれ異なるものを採用しても良い。
【0026】
本発明の車両用空調システムにおいて、第1ペルチェ素子は一面側が放熱面とされつつ前記他面側が吸熱面とされて、第1ペルチェモジュールは暖房用ペルチェモジュールとして用いられ得る。そして、第2ペルチェ素子は一面側が吸熱面とされつつ他面側が放熱面とされて、第2ペルチェモジュールは冷房用ペルチェモジュールとして用いられることが好ましい(請求項2)。
【0027】
この場合、例えば、熱交換媒体流路において、暖房用ペルチェモジュールよりも熱交換媒体の下流側となる位置に駆動源を設けることにより、第1ペルチェ素子による吸熱を受け、冷却された状態の熱交換媒体を駆動源の冷却に利用することが可能となる。つまり、暖房時における暖房用ペルチェモジュールの排熱を駆動源の冷却に利用することで、この場合における車両用空調システムでは、より好適に駆動源の冷却を行うことが可能となる。
【0028】
一方、熱交換媒体流路において、暖房用ペルチェモジュールよりも熱交換媒体の上流側となる位置に駆動源を設けることにより、第1ペルチェ素子は、駆動源によって加熱された熱交換媒体からより多くの熱を吸熱することが可能となる。このため、この場合における車両用空調システムでは、より好適に車室の暖房を行うことが可能となる。
【0029】
冷房用ペルチェモジュールは、暖房用ペルチェモジュールよりも熱交換媒体の下流側となる位置に配置されていることが好ましい(請求項3)。この場合、除湿時において、第1ペルチェ素子によって吸熱され、冷却された熱交換媒体に対して第2ペルチェ素子は放熱を行うことが可能となる。このため、第2ペルチェ素子の吸熱面ではより多くの熱を吸熱することが可能となる。このため、第2熱交換器は、周りの空気をより冷却して空気の湿度を十分に下げることが可能となる。このため、この場合における車両用空調システムでは、より好適に車室の除湿を行うことが可能となる。なお、この場合も、第1熱交換器はこの除湿に用いる空気を再加熱可能であることから、車室の空調効果が妨げられ難くなっている。
【0030】
また、暖房用ペルチェモジュール及び冷房用ペルチェモジュールは、車室と連通する空調用ダクト内に配置され得る。そして、空調用ダクトには、車室に外気を供給する状態と内気を供給する状態とを切り替え可能な切替手段が設けられていることが好ましい(請求項4)。
【0031】
外気とは車室外の空気を指し、内気とは車室内の空気を指す。この場合、車両用空調システムでは、これらの外気や内気を加熱、冷却及び除湿することによって、必要に応じて、外気によって車内の空調を行う場合と内気によって車内の空調を行う場合と切り替えることが可能となる。特に、内気は車内の空調に使用されている空気であるため、暖房用ペルチェモジュールや冷房用ペルチェモジュールは、内気に対して、より効率よく加熱または冷却を行うことが可能となり、効率よく車内の空調を行うことが可能となる。
【0032】
この切替手段としては、例えば、開閉弁や電動フラッパ等を採用することができる。切替手段として、開閉弁や電動フラッパを採用した場合、これらの開度を調節することにより、外気と内気との択一的使用の他、外気と内気とを混合させることも可能となる。さらに、その際の外気と内気との混合比率も変更可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例の車両用空調システムを示す模式構造図である。
【図2】実施例の車両用空調システムの一部を示す模式拡大図である。
【図3】実施例の車両用空調システムに係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図4】実施例の実施例の車両用空調システムに係り、除湿時における再加熱の状態を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例の車両用空調システムは、車室の空調としての暖房、冷房及び除湿を行う装置として車両に搭載されている。
【0035】
(実施例)
実施例の車両用空調システムは、エンジン3と、ラジエータ5と、熱交換媒体流路としての配管7、9と、暖房用ペルチェモジュール11と、冷房用ペルチェモジュール13とを備えている。暖房用ペルチェモジュール11と、冷房用ペルチェモジュール13とは、空調用ダクト15内に設けられている。
【0036】
エンジン3は、駆動源として車両を駆動させる。エンジン3には図示しないウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケット内を流通するエンジン冷却液によりエンジン3を冷却することが可能となっている。エンジン3には、ウォータジャケット内にエンジン冷却液を流入させる流入口3aと、ウォータジャケット内からエンジン冷却液を流出させる流出口3bとが形成されている。なお、エンジン3に替えて、モータ及びPCU)等の駆動回路を駆動源として採用することもできる。また、エンジン3とモータ及PCUとを組み合わせ、これらを駆動源として採用しても良い。
【0037】
ラジエータ5は、その内部をエンジン冷却液が流通可能に構成されており、ラジエータ5内のエンジン冷却液と、ラジエータ5周りの空気との間で熱交換を行うことで、エンジン冷却液の冷却を行うことが可能になっている。このラジエータ5には、ラジエータ5内にエンジン冷却液を流入させる流入口5aと、ラジエータ5内からエンジン冷却液を流出させる流出口5bとが形成されている。また、ラジエータ5の近傍には電動ファン5cが設けられている。この電動ファン5cは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、エンジン冷却液が熱交換媒体に相当する。
【0038】
エンジン3とラジエータ5とは配管7、9によって接続されている。具体的には、エンジン3の流出口3bとラジエータ5の流入口5aとが配管7によって接続されている。また、ラジエータ5の流出口5bとのエンジン3の流入口3aとが配管9によって接続されている。これらの配管7、9内にも上記のエンジン冷却液が流通しており、エンジン冷却液は、エンジン3とラジエータ5との間を循環することが可能となっている。また、配管7には電動ポンプP1が設けられている。この電動ポンプP1は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、電動ポンプP1は配管9に設けられても良い。
【0039】
図2に示すように、暖房用ペルチェモジュール11は、第1ペルチェ素子17と、第1フィン19とを有している。第1ペルチェ素子17は、一面17a側を形成する第1絶縁基板21と、他面17b側を形成する第2絶縁基板23と、第1絶縁基板21と第2絶縁基板23とに挟持された複数個の熱電変換素子25とで構成されている。第1ペルチェ素子17は、一面17a側が放熱面とされ、他面17b側が吸熱面とされている。第1ペルチェ素子17は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。第1ペルチェ素子17の一面17a側には、上記の第1フィン19が熱的に接合した状態で固定されている。また、第1ペルチェ素子17の他面17b側は、配管9と当接しており、暖房用ペルチェモジュール11と配管9とが熱的に接合した状態となっている。
【0040】
第1フィン19は、空調用ダクト15内における空気(外気及び内気)の流通方向に沿って形成された複数枚の放熱板によって形成されており、空気の流通抵抗を低減しつつ、外気や内気と長く接触可能なようになっている。第1フィン19は、空調用ダクト15内において、各放熱板と接触する外気や内気との間で熱交換を行うことが可能となっている。なお、第1フィンとしては、例えば、波状に曲げられてなるコルゲートフィン等を採用することもできる。
【0041】
冷房用ペルチェモジュール13は、第2ペルチェ素子27と、第2フィン29とを有している。第2ペルチェ素子27は、第1ペルチェ素子17と同様であり、一面27a側を形成する第1絶縁基板21と、他面27b側を形成する第2絶縁基板23と、複数個の熱電変換素子25とで構成されている。第2ペルチェ素子27は、一面27a側が吸熱面とされ、他面27b側が放熱面とされている。第2ペルチェ素子27は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。第2ペルチェ素子27の一面27a側には、上記の第2フィン29が熱的に接合した状態で固定されている。また、第2ペルチェ素子27の他面27b側は、配管9と当接しており、冷房用ペルチェモジュール13と配管9とが熱的に接合した状態となっている。
【0042】
第2フィン29は、上記の第1フィン19と同じ構成である。なお、第2フィン29も、コルゲートフィン等によって構成することができる。これらの第1フィン19及び第2フィン29がそれぞれ第1熱交換器及び第2熱交換器に相当する。
【0043】
空調用ダクト15は、筒状の本体31と、本体31の上流側で2本に分岐された筒状の枝管33、35とを有している。一方の枝管33の先端は車室に連通した内気取入口33aとされており、他方の枝管35の先端は車両の外部に連通した外気取入口35aとされている。枝管33、35の合流部分には電動フラッパ37が設けられている。本体31の下流側は車室に連通している。また、本体31内には電動ファン31aが設けられている。電動ファン31a及び電動フラッパ37は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、電動フラッパ37に替えて、内気取入口33a及び外気取入口35aをそれぞれ開閉可能な開閉弁を採用することもできる。
【0044】
暖房用ペルチェモジュール11と冷房用ペルチェモジュール13とは、空調用ダクト15の本体31内に配置されており、冷房用ペルチェモジュール13は、暖房用ペルチェモジュール11よりも配管9内のエンジン冷却液の下流側となる位置に配置されている。また、空調用ダクト15には、配管9が挿通される挿通孔15a、15bが形成されている。
【0045】
以上のように構成された車両用空調システムでは、エンジン3の駆動に応じて制御装置が第1ポンプP1及び電動ファン5cを作動させる。このため、図3に示す実線矢印方向で配管7、9内をエンジン冷却液が循環する。これにより、駆動時のエンジン3の排熱によって加熱されたエンジン冷却液が流出口3bから流出し、配管7を介して流入口5aからラジエータ5内に流入する。ラジエータ5内のエンジン冷却液はラジエータ5周りの空気との間で熱交換される。この際、エンジン冷却液の熱は電動ファン5cを介して車室外に放出される。こうして、ラジエータ5内で冷却されたエンジン冷却液は、流出口5bから流出して配管9を介して流入口3aからエンジン3に至り、駆動時のエンジン3を冷却する。そして、この車両用空調システムでは、エンジン3の駆動による車両の駆動時において、以下のようにして車室の暖房、冷房及び除湿を行う。
【0046】
(車両の駆動時における暖房)
この場合、制御装置は、第1ペルチェ素子17を作動させることで暖房用ペルチェモジュール11を作動させるとともに、電動フラッパ37を作動させ、空調用ダクト15において、枝管33と本体31とを連通させるとともに、枝管35と本体31とを非連通とさせる。また、制御装置は電動ファン31aを作動させて本体31内に内気を導く。これらにより、第1ペルチェ素子17の他面17b、すなわち、吸熱面が配管9内のエンジン冷却液から吸熱を行うとともに、放熱面である第1ペルチェ素子17の一面17aが第1フィン19に対して放熱を行う。このため、第1フィン19が加熱される。このため、第1フィン19と接触した本体31内の内気が加熱される。この際、内気は車室内の空気であることから外気と比較して温度が高く、内気は第1フィン19によって好適に加熱されることとなる。そして、この加熱された内気は、空調用ダクト15及び電動ファン31aを介して車室に供給される。こうして、車室の暖房が行われる。
【0047】
第1ペルチェ素子17からの吸熱により冷却された配管9内のエンジン用冷却液は、流入口3aからエンジン3内に至り、上記のようにエンジン3の冷却を行うこととなる。この車両用空調システムでは、熱交換媒体流路7、9において、暖房用ペルチェモジュール11よりもエンジン冷却液の下流側となる位置にエンジン3が設けられているため、第1ペルチェ素子17による吸熱を受け、更に冷却された状態のエンジン冷却液をエンジン3の冷却に利用することが可能となる。つまり、暖房時における暖房用ペルチェモジュール11の排熱をエンジン3の冷却に利用することで、この車両用空調システムでは、より好適にエンジン3の冷却を行うことが可能となっている。
【0048】
(車両の駆動時における冷房)
この場合も、上記の車両の駆動時における暖房とほぼ同様であり、制御装置は、第2ペルチェ素子27を作動させて冷房用ペルチェモジュール13を作動させる。また、制御装置は、電動フラッパ37及び電動ファン31aを作動させ、本体31内に内気を導く。これらより、第2ペルチェ素子27の他面27bが配管9内のエンジン冷却液に対して放熱を行うとともに、吸熱面である第2ペルチェ素子27の一面27aが第2フィン29に対して吸熱を行う。このため、第2フィン29が冷却される。このため、第2フィン29と接触した本体31内の内気が冷却される。この場合も、内気は外気と比較して温度が低く、内気は第2フィン29によって好適に冷却されることとなる。そして、この冷却された内気が車室に供給され、車室の冷房が行われる。なお、第2ペルチェ素子27からの放熱を受けた配管9内のエンジン用冷却液は、エンジン3の冷却を行った後、ラジエータ5において冷却されることとなる。つまり、冷房時における冷房用ペルチェモジュール13の排熱はエンジン3の排熱と共にラジエータ5によって車室外へ放出されることとなる。
【0049】
(車両の駆動時における除湿)
車室の除湿を行う場合、制御装置は、図4に示すように、暖房用ペルチェモジュール11及び冷房用ペルチェモジュール13を作動させる。また、制御装置は、電動フラッパ37を作動させ、空調用ダクト15において、枝管35と本体31とを連通させるとともに枝管33と本体31とを非連通とさせる。この状態で制御装置は電動ファン31aを作動させて本体31内に外気を導く。これにより、第2フィン29による冷却で除湿された外気は、第1フィン19によって再加熱されて温度調整がなされる。この際、外気は内気と比較して湿度が低いことから、第2フィン29による冷却によって、好適に除湿される。そして、この温度調整がされた外気が車室に供給されることで車室の空調効果が妨げられることなく、車室の除湿が行われる。一方、第1ペルチェ素子17による吸熱及び第2ペルチェ素子27による放熱を受けた配管9内のエンジン冷却液は、流入口3aからエンジン3内に至り、エンジン3の冷却を行う。なお、除湿された外気を再加熱する必要がない場合、制御装置は暖房用ペルチェモジュール11の作動を停止させる。
【0050】
また、この車両用空調システムでは、暖房時及び冷房時において外気を加熱又は冷却し、この加熱又は冷却された外気によって車室の暖房や冷房を行うこともできる。外気が内気と比較して湿度が低い場合、車室の暖房及び冷房中に車室の湿度が上がり難くなる。同じく、除湿時において除湿された内気によって車室の除湿を行うこともできる。天候等により、内気よりも外気の湿度が高い場合には、内気によって好適に車室を除湿できる。また、空調用ダクト15(本体31)と車室とで内気を循環させることで、車室の湿度を一定に維持させ易くなる。さらに、電動フラッパ37の作動を制御することで、枝管33、35をそれぞれ本体31と連通させることも可能である。これにより、外気と内気とを混合させて車室の空調を行うことも可能である。この際の外気と内気との混合比率も変更可能である。
【0051】
このように、この車両用空調システムでは、車室の暖房、冷房及び除湿の切り替えを行うに当たって、熱交換媒体流路7、9を切り替える必要がない。また、この車両用空調システムでは、エンジン3が熱交換媒体流路7、9に接続されており、このエンジン3は、上記のように、熱交換媒体流路7、9内のエンジン冷却液によって冷却されることとなる。このため、駆動時におけるエンジン3の排熱は、エンジン冷却液とラジエータ5とを介して車室外に放出される。このため、この車両用空調システムでは、車室の空調時に暖房用ペルチェモジュール11や冷房用ペルチェモジュール13から生じる排熱と、エンジン3から生じる排熱とを共に、エンジン冷却液とラジエータ5とによって車外に放出することが可能となる。このため、この車両用空調システムでは、エンジン3を冷却するためのラジエータを別途に設ける必要がない。これらのため、この車両用空調システムでは、大型化を抑制することが可能となっている。
【0052】
したがって、この車両用空調システムによれば、車室の好適な空調を実現できるとともに、車両への優れた搭載性を実現することが可能となる。
【0053】
特に、この車両用空調システムにおいて、冷房用ペルチェモジュール13は、暖房用ペルチェモジュール11よりも配管9におけるエンジン冷却液の下流側となる位置に配置されている。このため、除湿時において、第1ペルチェ素子17によって吸熱され、冷却されたエンジン冷却液に対して第2ペルチェ素子27は放熱を行うことが可能となる。このため、第2ペルチェ素子27の吸熱面ではより多くの熱を吸熱することが可能となる。このため、第2フィン29は十分に冷却されることから、第2フィン29は外気を好適に冷却して外気の湿度を十分に下げることが可能となっている。このため、この車両用空調システムでは、好適に車室の除湿を行うことが可能となっている。なお、上記のように、第1フィン19はこの外気を再加熱可能であることから、車室の空調効果が妨げられ難くなっている。
【0054】
また、この車両用空調システムにおいて、暖房用ペルチェモジュール11及び冷房用ペルチェモジュール13は、車室と連通する空調用ダクト15内に配置されている。そして、空調用ダクト15には、車室に外気を供給する状態と内気を供給する状態とを切り替え可能な電動フラッパ37が設けられている。このため、この車両用空調システムでは、必要に応じてこれらの外気及び内気を選択しつつ加熱、冷却及び除湿することによって車室の空調を行うことが可能となっている。このため、この車両用空調システムでは、効率よく車内の空調を行うことが可能となっている。
【0055】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0056】
例えば、熱交換媒体流路7、9に、車両に搭載されているバッテリ等を設け、エンジン冷却液によって、エンジン3の他にバッテリ等の冷却を行う構成としても良い。
【0057】
また、複数個の暖房用ペルチェモジュール11や複数個の冷房用ペルチェモジュール13を採用することも可能である。さらに、暖房用ペルチェモジュール11と冷房用ペルチェモジュール13との個数は同一でも良く、異なっても良い。
【0058】
さらに、第1フィン19及び第2フィン29に替えて、内部を水が循環可能に構成された第1、2熱交換器をそれぞれ採用しても良い。この場合、第1熱交換器では、第1ペルチェ素子17の放熱を受けて内部の水が加熱されて温水となる。そして、この第1熱交換器内の温水と、空調ダクト15(本体31)内の外気や内気との間の熱交換により、外気や内気を加熱することが可能となる。同様に、第2熱交換器では、第2ペルチェ素子27の吸熱を受けて内部の水が冷却されて冷水となる。このため、熱交換によって外気や内気を冷却することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、エンジンによって走行される車両、エンジンとモータとによって走行される車両及びモータによって走行される車両における空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
3…エンジン(駆動源)
5…ラジエータ
7、9…配管(熱交換媒体流路)
17a、27a…一面
17b、27b…他面
17…第1ペルチェ素子
19…第1フィン(第1熱交換器)
11…暖房用ペルチェモジュール(第1ペルチェモジュール)
27…第2ペルチェ素子
29…第2フィン(第2熱交換器)
13…冷房用ペルチェモジュール(第2ペルチェモジュール)
15…空調用ダクト
37…電動フラッパ(切替手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動させる駆動源と、
車室外に配置されるラジエータと、
該駆動源と該ラジエータとの間を熱交換媒体が循環可能に接続する熱交換媒体流路と、
一面側及び他面側の一方が放熱面となり、他方が吸熱面となる第1ペルチェ素子と、該一面側に熱的に接合された第1熱交換器とを有する第1ペルチェモジュールと、
一面側及び他面側の一方が放熱面となり、他方が吸熱面となる第2ペルチェ素子と、該一面側に熱的に接合された第2熱交換器とを有する第2ペルチェモジュールとを備え、
前記第1ペルチェ素子の前記他面側及び前記第2ペルチェ素子の前記他面側は、前記熱交換媒体流路と熱的に接合されていることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記第1ペルチェ素子は前記一面側が放熱面とされつつ前記他面側が吸熱面とされて、前記第1ペルチェモジュールは暖房用ペルチェモジュールとして用いられ、
前記第2ペルチェ素子は前記一面側が吸熱面とされつつ前記他面側が放熱面とされて、前記第2ペルチェモジュールは冷房用ペルチェモジュールとして用いられる請求項1記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記冷房用ペルチェモジュールは、前記暖房用ペルチェモジュールよりも前記熱交換媒体の下流側となる位置に配置されている請求項2記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記暖房用ペルチェモジュール及び前記冷房用ペルチェモジュールは、車室と連通する空調用ダクト内に配置され、
該空調用ダクトには、該車室に外気を供給する状態と内気を供給する状態とを切り替え可能な切替手段が設けられている請求項2又は3記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180049(P2012−180049A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45200(P2011−45200)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】