説明

車両用空調装置の通風ユニット

【課題】車両用空調装置の通風ユニットにおいて、フィルタ有り仕様と、フィルタ無し仕様とに対処するための、通風抵抗板の取付け時における作業コスト、及び部品点数を削減する。
【解決手段】フィルタエレメント20を収容する空間20aが、内外気切替箱6の外気取入口3、または内気取入口4の風の流れの下流側に配設され、外気取入口3または内気取入口4と一体に成型された通気抵抗板25を備えている。これにより、通風ユニット21にとって既存の部分である外気取入口3または内気取入口4に、切り取り可能な通気抵抗板25を一体成型品として備えることができるから、従来のような通気抵抗板一体型のフィルタ支持枠が不要である。また、外気取入口3と内気取入口4は、外部に開放しているため、容易に外部から通気抵抗板25を切取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内の空気を空調する車両用空調装置において、フィルタエレメントが収納可能な空間を有する通風ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の車両用空調装置の通風ユニットが知られている。図7は特許文献1に係る従来の通風抵抗板付き保持枠に格納されるフィルタエレメントの斜視図である。この図7のように、通風ユニットの中にフィルタエレメント20を収納する保持枠50があり、この保持枠50に一体に通風抵抗板25が切り取り可能に成型されている。具体的には、図7に示すように、フィルタエレメント20と、該フィルタエレメント20を保持して通風路内に固定する保持枠50とによりフィルタアッセンブリを構成している。
【0003】
そして、保持枠50は、フィルタエレメント20と同等の通気抵抗を有する、除去可能な通気抵抗板25を備えている。フィルタ有り仕様の場合には、保持枠50から通気抵抗板25をニッパ等で切り取り、保持枠50にフィルタエレメント20を取り付けた状態で、空調ダクト内に装着する。
【0004】
また、フィルタ無し仕様の場合には、保持枠50に通気抵抗板25を付けたままの状態で、上記保持枠50を通風路内に装着する。このため、フィルタ無し仕様からフィルタ有り仕様に変更する場合には、保持枠50から通気抵抗板25を除去して、フィルタエレメント20を取り付ければ良いので、簡単な作業で済む。また、仕様を変更しても通気抵抗が変化しないので、通気抵抗の変化によって生じる不具合を防止できる。
【0005】
上記通気抵抗板25は、保持枠50とともに樹脂で一体成型され、フィルタ有り仕様では、保持枠50から通気抵抗板25を切り取って、保持枠50にフィルタエレメント20を嵌め込んで使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−264056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の技術によると、別部品である通風抵抗板を取り付けるための保持枠が必要となるため、部品点数が多くなりコストが高くなる。また、フィルタ無仕様からフィルタ有仕様へ変更する際に、車両から保持枠を取出してから、ニッパで通風抵抗板を切取るという作業になるため作業コストがかかる。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、車両用空調装置の通風ユニットにおいて、フィルタ有り仕様とフィルタ無し仕様とに対処するための通風抵抗板の取付け時における作業コスト、及び部品点数を削減することにある。
【0009】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、導入空気が流れる通風路内に、フィルタエレメント(20)を配するフィルタ有り仕様と、フィルタエレメント(20)を配しないフィルタ無し仕様との二種類を選択できるようにした車両用空調装置の通風ユニット(21)であって、通風路に、外気から導入空気を取り入れる外気取入口(3)と、車両の室内からの空気である内気から導入空気を取り入れる内気取入口(4)とを有する内外気切替箱(6)を有し、フィルタエレメント(20)が、内外気切替箱(6)の外気取入口(3)または内気取入口(4)の風の流れの下流側に配設される空間(20a)を有し、内外気切替箱(6)の外気取入口(3)または内気取入口(4)は、外気取入口(3)または内気取入口(4)と一体に成型されたフィルタエレメント(20)と同等の通気抵抗を有する切り取り可能な通気抵抗板(25)を備えていることを特徴としている。
【0011】
この発明においては、車両用空調装置(1)の通風ユニット(21)にとって既存の部分である外気取入口(3)、または内気取入口(4)に切り取り可能な通気抵抗板(25)を一体成型品として備えて、内外気切替箱(6)の外気取入口(3)または内気取入口(4)の風の流れの下流側の空間(20a)に、フィルタエレメント(20)が配設可能であるから、切り取り可能な通気抵抗板(25)を形成するための、通気抵抗板と一体に形成されたフィルタ支持枠が不要であり、フィルタ支持枠としてコストの安いもの、またはフィルタ支持枠無しでも構成することができる。また、外気取入口(3)と内気取入口(4)は、外部に開放しているため、容易に外部から通気抵抗板(25)を切り取ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、通気抵抗板(25)は、通気抵抗板(25)と内外気切替箱(6)の外気取入口(3)または内気取入口(4)との間が、一体成型された切り取り可能な連結部(26)で橋絡されていることを特徴としている。
【0013】
この発明においては、通気抵抗板(25)と、外部に露出する外気取入口(3)または内気取入口(4)との間が、一体成型された切り取り可能な連結部(26)で橋絡されているから、切り取り作業が容易であり、製造コストの削減、及び部品点数の削減が可能である。
【0014】
請求項3に記載の発明では、内外気切替箱(6)は、外気取入口(3)または内気取入口(4)の風流れ下流側に外気取入口(3)または内気取入口(4)から空気を吸い込むファン(8a)を有し、通気抵抗板(25)は、外気取入口(3)または内気取入口(4)のファン(8a)に近い側の縁部分に隣接して形成され、ファン(8a)に遠い側の縁部分と通気抵抗板(25)の間が開放された吸込開口部(27)を形成していることを特徴としている。
【0015】
この発明においては、ファン(8a)に近い側の縁部分に、通気抵抗板(25)が隣接して形成され、ファン(8a)に遠い側の縁部分と通気抵抗板25の間に、開放された吸込開口部(27)を形成しているから、流速が大きい風が、吸込開口部(27)を流れ、比較的流速の小さい風が、通気抵抗板(25)にさえぎられながら流れるため、風切り音等による騒音の発生を抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、内外気切替箱(6)は、外気取入口(3)または内気取入口(4)を天方向に有し、ファン(8a)を地方向に有し、通気抵抗板(25)は、外気取入口(3)または内気取入口(4)の地方向の側の縁部分に隣接して形成され、ファン(8a)に遠い天方向側の縁部分と通気抵抗板(25)の間に、開放された吸込開口部(27)を形成していることを特徴としている。
【0017】
この発明においては、通気抵抗板(25)を切り取るときに、通気抵抗板(25)が、外気取入口(3)または内気取入口(4)の地方向の側の縁部分に隣接して形成され、換言すれば、下側に設けられているため、切り取り作業がやり易くなる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、通気抵抗板(25)は、切り取った後の落下を防止するために、通気抵抗板(25)を保持するための凸部(28)または凹部(40)を有することを特徴としている。
【0019】
この発明においては、切り取った通気抵抗板(25)が、内外気切替箱(6)内に落下するのを凸部(28)または凹部(40)により防止できるため、作業効率を向上させることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、凸部(28)または凹部(40)は、指でつまむことのできる通気抵抗板(25)と一体成型された取っ手(28)、溝部(40a、40b)、孔部のうちいずれかからなることを特徴としている。
【0021】
この発明においては、通気抵抗板(25)を保持するための部分を、取っ手(28)、溝部(40a、40b)、孔部のうちいずれかから構成することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、外気取入口(3)または内気取入口(4)は、外気取入口(3)または内気取入口(4)の開口部分を横切る格子枠(29)を有し、通気抵抗板(25)は、切り取り可能な複数のセグメントの集合からなり、各セグメントは、格子枠(29)と共に一体成型され、セグメントと格子枠(29)の間が、一体成型された切り取り可能な連結部(26)で橋絡されていることを特徴としている。
【0023】
この発明においては、通気抵抗板(25)は、切り取り可能な複数のセグメントの集合からなり、外気取入口(3)または内気取入口(4)の格子枠(29)と共に一体成型されているため、各格子枠(29)内に各セグメントを設けることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明では、車両用空調装置(1)の内外気切替箱(6)の空気流れの下流側の空調ダクト(12)内に、空気を冷房及び暖房する空調手段(9、10、13)を有し、かつ車室内の乗員の上半身方向に空調風を吹出すフェイス吹出口(14)と、乗員足元に空調風を吹出すフット吹出口(15)を有し、外気取入口(3)と、内気取入口(4)とのうち、内気取入口(4)の方にのみ通気抵抗板(25)が形成されていることを特徴としている。
【0025】
この発明においては、次の点を考慮している。すなわち、車両用空調装置(1)は、夏季の非常に暑いときにフェイス吹出口(14)から内気取入口(4)を通る空調風が、空調ダクト(12)内の通風抵抗が少ない通風経路で比較的風量が多い状態で流れる事が多い。一方、それほど暑くないときは、フット吹出口(15)等を通り、外気取入口(3)を通る空調風が、通風抵抗の大きい通風経路を経由して空調ダクト(12)内を比較的風量が少ない状態で流れることが多い。
【0026】
つまり、内気取入口(4)を通る場合の方が、外気取入口(3)を通る場合よりも大風量である場合が多い。よって、この発明においては、外気取入口(3)と、内気取入口(4)とでは、内気取入口(4)の方が、最大流速で使用する頻度が高いことを考慮して、最大流速時に使用する内気取入口(4)の方にのみに、通気抵抗板(25)が形成されていることにより、通気抵抗作用が大きく発揮され、外気取入口(3)と、内気取入口(4)との両方に通気抵抗板(25)を形成する場合よりも、製造コストを低減することができる。
【0027】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号ないし説明は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を分かり易く示す一例であり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の通風ユニットの正面図である。
【図2】上記実施形態における車両用空調装置の通風ユニットの左側面図である。
【図3】上記実施形態における上記通風ユニットにブロワユニットを結合した状態を示す右側面図である。
【図4】上記実施形態における車両用空調装置の内部構成を示した模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す車両用空調装置の通風ユニットの斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す通風ユニットにおける通風抵抗板の一つのセグメントの一部拡大斜視図である。
【図7】従来の通風抵抗板付き保持枠に格納されるフィルタエレメントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0030】
各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0031】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図4を用いて詳細に説明する。図1は、車両用空調装置の通風ユニットの正面図、図2は左側面図である。図3は上記通風ユニットにブロワユニットを結合した状態を示す右側面図である。更に図4は、この第1実施形態の車両用空調装置の内部構成を示した模式図である。
【0032】
まず、車両用空調装置の模式図である図4に基づいて、全体の構成から説明する。この第1実施形態の車両用空調装置1は、空調ケース2と、空調ケース2と車室内吹出口とを接続する各吹出しダクトで構成されている。空調ケース2は、複数のケース部材からなり、例えばポリプロピレンなどの樹脂成型品である。
【0033】
空調ケース2には、外気や内気を切替え可能に取り入れる内外気切替箱6と、車室内、または車室外の空気をエバポレータ9以降に送風するための送風機8と、送風機8より下流に配置された各種空調ユニット部品とが、上流から順に設けられている。
【0034】
なお、内外気切替箱6および送風機8は、車室内前方部のインストルメントパネルの裏側で、車両中央部から助手席寄りの位置に設けられている。また、空調ユニット部品は、インストルメントパネルの裏側で、車両中央部付近に設けられている。
【0035】
内外気切替箱6には、第1空気取入口としての外気取入口3と、第2空気取入口としての内気取入口4とが開口しており、これらの取入口は、送風機8の吸込口と連通している。なお、外気取入口3または内気取入口4は、必要に応じて、車外または車室内とダクトによって接続されるものである。内外気切替箱6の内部には、外気取入口3、及び内気取入口4の開閉を切り替える内外気切替ドアとしてのロータリドア5が設けられている。
【0036】
ロータリドア5は、送風機8の吸込口と反対側に位置する回転軸5cを中心として左右に回動可能なように配置されている。
【0037】
送風機8は、遠心多翼ファン(シロッコファン)8aと、これを駆動するモータ7とからなり、遠心多翼ファン8aの周囲は、スクロールケーシングで囲まれている。送風機8の吹出口は、遠心多翼ファン8aの遠心方向に伸びるダクトによって、エバポレータ9の通風入口に至る送風通路と接続されている。
【0038】
送風機8よりも下流に配置された空調ユニット部品は、送風通路全体を横断的に塞ぐように設けられたエバポレータ9と、エバポレータ9を通過してきた空気を加熱するヒータコア10と、エバポレータ9を通過した空気がヒータコア10を通過する風量を調整するエアミックスドア13と、エアミックスチャンバの下流に設けられたデフロスタ吹出量調整ドア17aと、フェイス吹出量調整ドア18と、フット吹出量調整ドア19とを備えている。
【0039】
エバポレータ9は、図示しない冷凍サイクル内の膨張弁で減圧された低温低圧の冷媒を、送風機8の送風を受けて内部で蒸発させるものであり、冷媒が流れるチューブの周囲を通過する送風空気を冷却するものである。
【0040】
ヒータコア10は、走行用エンジン11の高温の冷却水を熱源として、送風空気を加熱するものであり、エバポレータ9よりも空気流れ下流側の通路を部分的に塞ぐように配置されている。
【0041】
エアミックスドア13は、エバポレータ9よりも下流に設けられた片側枢支式の板状ドアであり、ヒータコア10を通る空気量と、ヒータコア10を迂回する空気量との比率を調節するものである。エアミックスドア13の開度を制御することによって、エバポレータ9で冷却された空気量のうち、ヒータコア10で加熱する空気量が調整され、これらの空気が、エアミックスチャンバで混合することにより空気の温調がなされる。
【0042】
そして、内外気切替箱6の空気流れの下流側の空調ダクト12内に形成されたエバポレータ9と、ヒータコア10と、エアミックスドア13とで、空調ダクト12内の空気を冷房及び暖房する空調手段が形成されている。
【0043】
エアミックスチャンバは、エバポレータ9から流れてきた空気と、ヒータコア10で加熱された空気とが混ざり合う空間であり、下流側でデフロスタ吹出口17、フェイス吹出口14、およびフット吹出口15に連通している。
【0044】
この空間で温度調節された空調風は、デフロスタ吹出量調整ドア17a、フェイス吹出量調整ドア18、フット吹出量調整ドア19などの各モード吹出しドアの開度を制御することによって、適正な風量割合で車室内へ供給される。
【0045】
デフロスタ吹出口17は、フロントウィンドウガラスに沿うように空調風を吹き出すための開口であり、この空調風が吹き出されることで、フロントウィンドウガラスの曇り度合いが低減される。
【0046】
フェイス吹出口14は、接続されたフェイス吹出ダクト(図示しない)によって、車室内に臨む車室内フェイス吹出口に連通している。車室内フェイス吹出口は、乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口であり、主に冷房時に使用される。
【0047】
フット吹出口15は、接続されたフット吹出ダクト(図示しない)によって、車室内に臨む図示しない車室内フット吹出口に連通している。上記車室内フット吹出口は、前席乗員や後席乗員の足元へ空調風を吹き出すための開口であり、主に暖房時に使用される。
【0048】
ECU16には、車室内の温度を設定する温度設定手段、車室内の温度を検出する内気温度センサ、外気の温度を検出する外気温度センサ、車室内への日射量を検出する日射センサ、エバポレータ9の後流温度を検出する温度センサ、およびエンジン11の冷却水温度を検出する水温センサなどの、各種センサからの信号が入力される。
【0049】
ECU16は、各種センサからの入力信号に基づいて、所定の制御プログラムを実行して、ロータリドア5、送風機8、エアミックスドア13、デフロスタ吹出量調整ドア17a、フェイス吹出量調整ドア18、およびフット吹出量調整ドア19などの各ドアを駆動するサーボモータ等を制御する。
【0050】
次に、上記空調装置の動作を説明する。ECU16が、内気を取り入れるために、内外気切替ドアであるロータリドア5の開度を制御し、送風機8を運転すると、ロータリドア5が、図4において反時計回りに回転して外気取入口3を閉塞する。
【0051】
夏場の非常に暑いときには、このようにして外気取入口3を閉塞する内気モード側を選択し、エアミックスドア13を駆動し、図4の破線のように、ヒータコア10を閉じて、エバポレータ9を通った冷却された空気で、フェイス吹出口14から乗員の上半身方向に空調風を吹出すことが多い。このときのエアミックスドア13等の制御を、マックスクール(MAX―COOL)制御と呼んでいる。
【0052】
また逆に、冬場の非常に寒いときには、内気モード側を選択し、エアミックスドア13を駆動し、全ての風がヒータコア10を通過する位置にエアミックスドア13を固定して、ヒータコア10を通った暖められた空気で、フット吹出口15から乗員の足元に空調風を吹出すことが多い。このときのエアミックスドア13等の制御をマックスホット(MAX―HOT)制御と呼んでいる。
【0053】
そして、車内から取り込まれた内気は、内気取入口4を通り、内外気切替箱6内で、フィルタ有りの仕様では、フィルタエレメント20が収納された空間20a内を流れ、送風機8の吸込口8bに吸い込まれて、遠心多翼ファン8aの半径方向外方に吹き出され、空調ケース2内の空調ユニット部品側に送風される。
【0054】
一方、ECU16が、外気を取り入れるためにロータリドア5の開度を制御し、送風機
8を運転すると、ロータリドア5が、図4において時計方向に回転し、内気取入口4を閉塞する。
【0055】
そして、車外から取り込まれた外気は、外気取入口3を通り、内外気切替箱6内でフィルタエレメント20が収納される空間20a内を通過し、送風機8の吸込口8bに吸い込まれて遠心多翼ファン8aの半径方向外方に吹き出され、空調ケース2内の空調ユニット部品側に送風される。
【0056】
次に、図1ないし図3に基づいて、図4の通風ユニット21について説明する。この通風ユニット21は、導入空気が流れる通風路内に、フィルタエレメントを配するフィルタ有り仕様と、フィルタエレメント20を配しないフィルタ無し仕様との二種類を選択できるようにされている。
【0057】
図1において、22は、フィルタエレメントを挿入するフィルタ取付け開口部であり、このフィルタ取付け開口部22の奥にフィルタエレメント20が挿入される空間20aを有している。このフィルタエレメント20は、フィルタ部材単体でもよく、フィルタ部材を保持するためのフィルタ保持枠は、有っても無くても良い。
【0058】
通風路には、図2のように、外気から導入空気を取り入れる外気取入口3と、車両の室内からの空気である内気から導入空気を取り入れる内気取入口4とを有する内外気切替箱6を有している。そして、フィルタ有り仕様では、フィルタエレメント20が、内外気切替箱6の外気取入口3または内気取入口4の風の流れの下流側の空間20a内に配設されている。6aは、補強用のリブであり、無くても良い。
【0059】
内外気切替箱6の内気取入口4は、図1のように、フィルタエレメント20と同等の通気抵抗を有する切り取り可能な通気抵抗板25を備えている。通気抵抗板25は、内外気切替箱6の内気取入口4と共に一体成型されている。
【0060】
すなわち、内外気切替箱6の内気取入口4は、合成樹脂の成型品であり、この成型品を、金型を用いて成型するときに、通気抵抗板25が、内外気切替箱6の内気取入口4の内縁部との間が切り取り可能な連結部26で橋絡されて、一体に成型されている。
【0061】
図3のように、外気取入口3及び内気取入口4の風流れ下流側に、外気取入口3または内気取入口4から空気を吸い込む遠心多翼ファン8aを有し、通気抵抗板25は、図1のように、内気取入口4の遠心多翼ファン8aに近い側の縁部分、すなわち図1の内気取入口4の下側の縁部に隣接して形成されている。その結果、遠心多翼ファン8aに遠い側の縁部分と通気抵抗板25の間に、開放された吸込開口部27を形成している。
【0062】
換言すれば、内外気切替箱6は、外気取入口3または内気取入口4を天方向(図1の上方向)に有し、遠心多翼ファン8aを地方向(図1の下方向、つまり手前方向)に有し、通気抵抗板25は、外気取入口3または内気取入口4の地方向の側の縁部分に隣接して形成され、遠心多翼ファン8aに遠い天方向側の縁部分と通気抵抗板25の間に、開放された吸込開口部27を形成している。
【0063】
そして通気抵抗板25は、切り取った後の落下を防止するために、通気抵抗板25を保持するための凸部28を構成する取っ手(把手)28が一体に成型されている。この取っ手28は、内気取入口4の格子枠29の中に、一つずつ形成された通風抵抗板25のセグメントの平面に垂直に突出した三角形の突起部から構成されている。
【0064】
そして、取っ手28は、指でつまむことのでき、取っ手28を、左手で持ちながら、通風抵抗板25のセグメントと格子枠29との間を橋絡する細径の連結部26を、ニッパで切り取るようにされている。また、外気取入口3及び内気取入口4の開口部分を横切る格子状の枠から成る格子枠29は、外気取入口3及び内気取入口4と一体に合成樹脂で成型されている。
【0065】
上記構成における作用効果について説明する。図4の車両用空調装置1の通風ユニット21にとって、既存の車両構成部品である図1の内気取入口4に、切り取り可能なセグメントの集合である通気抵抗板25を備えて、内外気切替箱6の内気取入口4の風の流れの下流側にフィルタエレメント20が配設可能である。
【0066】
よって、切り取り可能な通気抵抗板25を形成するための、従来の通気抵抗板と一体に形成されたフィルタ保持枠が不要であり、フィルタエレメント20は、コストの安いもの、または、フィルタ保持枠なしで構成することができる。また、内気取入口4は外部に開放しているため、容易に外部から通気抵抗板25を切り取ることができる。
【0067】
通気抵抗板25は、内外気切替箱6の内気取入口4と共に一体成型され、通気抵抗板25と内外気切替箱6の内気取入口4との間が、一体成型された切り取り可能な連結部26で橋絡されているから、製造コストの削減、部品点数の削減が可能である。
【0068】
また、図3の送風機8内の遠心多翼ファン8aに近い側の縁部分に、通気抵抗板25が隣接して形成され、遠心多翼ファン8aに遠い側の縁部分と通気抵抗板25の間に、開放された吸込開口部27を形成しているから、流速が大きい風が、吸込開口部27を流れ、比較的流速の小さい風が、通気抵抗板25に風流れを妨げられて流れるため、騒音の発生を抑制することができる。
【0069】
また、通気抵抗板25を切り取るときに、通気抵抗板25が内気取入口4の地方向の側の縁部分に隣接して形成されているため、換言すれば、下側に設けられているため、切り取り作業がやり易い。
【0070】
そして、通気抵抗板25は、切り取った後の落下を防止するために、通気抵抗板25の一つのセグメントを保持するために、指でつまむことのできる一体成型された取っ手28を有する。
【0071】
この取っ手28を持って切り取り作業を行うことで、切り取った通気抵抗板25のセグメントが、内外気切替箱6内に落下するのを防止できるため、作業効率を向上させることができる。
【0072】
また、通気抵抗板25は、切り取り可能な複数のセグメントの集合からなるため、内気取入口4を横切る格子枠29の中に、各セグメントを一体に設けることができる。これにより、必要な数だけのセグメントを切り取ることで、通風抵抗の調整を行うこともできる。
【0073】
フィルタ有仕様では、内気取入口4から通気抵抗板25を切り取ってから、フィルタエレメント20を図1のフィルタ取付け開口部22から挿入して取り付ける。このフィルタエレメント20は、フィルタエレメント20として、形状を保持できる程度のもので有ればよく、従来のように、通風抵抗板と一体になった強固な保持枠は、無くても良い。
【0074】
また、この第1実施形態においては、外気取入口3と、内気取入口4とのうち、内気取入口4の方にのみ、通気抵抗板25が形成されている。そして、図4の車両用空調装置1は、夏季の非常に暑いときに、フェイス吹出口14から、内気取入口4を通る空調風が、空調ダクト12内を、通風抵抗が少ない経路で流れ、それほど暑くないときは、フェイス吹出口14等と外気取入口3を通る空調風が、通風抵抗の大きい経路で、空調ダクト12内を流れることが知られている。
【0075】
つまり、外気取入口3と、内気取入口4とでは、内気取入口4の方が空調風の流速が大きい。そこで、空調風の流速が大きい内気取入口4の方にのみに、通気抵抗板25が形成されていることにより、外気取入口3と、内気取入口4との両方に通気抵抗板25を形成する場合よりも、製造コストを低減することができている。
【0076】
換言すれば、遠心多翼ファン8aに最大電圧を印加して最大風量を出すフェイスモードは、内気取入口4を開放する内気モードでの使用頻度が多い。また、フットモードとデフモードとは、風量が比較的少なく、外気モードでの使用頻度が高い。
【0077】
この第1実施形態では、空調風の流速が大きい内気取入口4の方にのみ通気抵抗板25が形成されているので、コストダウンすることができる。そして、空調風の流速が大きい内気取入口4の方に通気抵抗板25を形成した方が、通風抵抗板25による圧力損失増大効果が大きい。
【0078】
一方、外気取入口3に通風抵抗板25が無いが、外気モード時は、風量が比較的小さい。従って、通気抵抗板25が無いことにより、通風抵抗板25による圧力損失増大効果が無いが、もともと風量が少ないため、通風抵抗板25が無くても大きなデメリットは生じない。
【0079】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0080】
図5は、本発明の第2実施形態を示す車両用空調装置1(図4)の通風ユニット21の斜視図である。図5において、通気抵抗板25は、内外気切替箱6の内気取入口4と共に一体成型され、通気抵抗板25と内外気切替箱6の内気取入口4の内縁部との間が一体成型された切り取り可能な細径の連結部26で橋絡されている。
【0081】
また、遠心多翼ファン8aに近い側の縁部分の格子枠29は、全閉された全閉部31を有している。そして、この全閉部31に、セグメントの集合からなる通気抵抗板25が隣接して形成されている。また、遠心多翼ファン8aに遠い側の縁部分と、通気抵抗板25の間に、開放された吸込開口部27を形成している。
【0082】
これにより、流速が大きい風が吸込開口部27を流れ、比較的流速の小さい風が通気抵抗板25を介して流れるため、騒音の発生を抑制することができる。また切り取る必要の無い通気抵抗板25部分は、全閉部31として、内外気切替箱6の内気取入口4を横切る格子枠29と一体の樹脂成型品で構成されている。
【0083】
フィルタ有仕様では、内気取入口4から通気抵抗板25を切り取ってから、フィルタエレメント20を図5のフィルタ取付け開口部22から挿入して取り付ける。このフィルタエレメント20は、フィルタエレメント20として、形状を保持できるもので有ればよく、従来の通風抵抗板と一体になった保持枠は不要である。
【0084】
このように、上記第1実施形態及び第2実施形態においては、内外気切替箱6の内気取入口4のみを、通風抵抗板25で塞ぐことで、車両に通風ユニット21(あるいは通風ユニット21と図3のブロワユニット21a)を搭載したまま、通風抵抗板25の切取り作業が行えるので、通風ユニット21を車両から下ろす手間が省ける。ちなみに、外気取入口3に通風抵抗板25を装着した場合には、一度、通風ユニット21を車両から下ろさなければ切取り作業ができない。
【0085】
また、このように、内気取入口4のみに通風抵抗板25を設けた場合においても、最大風量(MAX風量)を出すことがあるフェイスモードは、内気モードでの使用頻度が多いため、通風抵抗板25の効果を発揮し易い。
【0086】
一方、フットモードとデフモードは、外気モードでの使用頻度が高いが、この場合、図4の空調ダクト12等の通風経路の通風抵抗の影響により、風量が小さいので、外気取入口3に切取り可能な通風抵抗板がないことによるデメリットは少ない。
【0087】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図6は、第3実施形態を示す通風ユニットにおける通風抵抗板25の一つのセグメントの一部拡大斜視図である。
【0088】
図6において、通風抵抗板25の一つのセグメントには、凹部40となる溝部40a、40bが一対形成されている。この溝部40a、40bに指、または専用工具を引っ掛けて、通風抵抗板25のセグメントが落ちないように保持して、橋絡部分である細径の連結部26をニッパ等で切り取る。
【0089】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の実施形態では、内気取入口4のみに通風抵抗板25を設けたが、外気取入口3のみ、あるいは、内気取入口4と外気取入口3の双方に通風抵抗板25を形成しても良い。
【0090】
また、通気抵抗板25は、切り取った後の落下を防止するために通気抵抗板25を保持するための凸部または凹部を有するが、凹部の場合、図6のように、溝部で形成してもよく、また、孔部で形成しても良い。
【0091】
なお、このような凹部の場合は、通風抵抗板25として風をさえぎる効果が一部損なわれるが、ピンセット状またはフック状の専用工具を用いれば、指を凹部内に通す必要がないので、溝部や孔部の径を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 車両用空調装置
3 外気取入口
4 内気取入口
6 内外気切替箱
8a ファン
9、10、13 空調手段
12 空調ダクト
14 フェイス吹出口
15 フット吹出口
20 フィルタエレメント
20a 空間
21 通風ユニット
25 通気抵抗板
26 連結部
27 吸込開口部
28 凸部、取っ手
29 格子枠
40 凹部
40a、40b 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入空気が流れる通風路内に、フィルタエレメント(20)を配するフィルタ有り仕様と、前記フィルタエレメント(20)を配しないフィルタ無し仕様との二種類を選択できるようにした車両用空調装置の通風ユニット(21)であって、
前記通風路に、外気から前記導入空気を取り入れる外気取入口(3)と、車両の室内からの空気である内気から前記導入空気を取り入れる内気取入口(4)とを有する内外気切替箱(6)を有し、
前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)よりも風の流れの下流側に前記フィルタエレメント(20)が配設可能な空間(20a)を有し、
前記外気取入口(3)の内縁部または前記内気取入口(4)の内縁部と一体に成型された前記フィルタエレメント(20)と同等の通気抵抗を有する切り取り可能な通気抵抗板(25)を備えていることを特徴とする車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項2】
前記通気抵抗板(25)と前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)との間が、一体成型された切り取り可能な連結部(26)で橋絡されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項3】
前記内外気切替箱(6)は、前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)から空気を吸い込むファン(8a)を前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)の風流れ下流側に有し、
前記通気抵抗板(25)は、前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)の前記ファン(8a)に近い側の内縁部分に隣接して形成され、前記ファン(8a)に遠い側の縁部分と前記通気抵抗板(25)との間に、開放された吸込開口部(27)を形成していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項4】
前記内外気切替箱(6)は、前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)を天方向に有し、前記ファン(8a)を地方向に有し、
前記通気抵抗板(25)は、前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)の地方向の側の縁部分に隣接して形成され、前記ファン(8a)に遠い天方向側の縁部分と前記通気抵抗板(25)との間に、開放された吸込開口部(27)を形成していることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項5】
前記通気抵抗板(25)は、切り取った後の落下を防止するために、前記通気抵抗板(25)を保持するための凸部(28)または凹部(40)を有することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項6】
前記凸部(28)または前記凹部(40)は、指でつまむことのできる前記通気抵抗板(25)と一体成型された取っ手(28)、溝部(40a、40b)、孔部のうちいずれかからなることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項7】
前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)は、前記外気取入口(3)または前記内気取入口(4)の開口部分を横切る格子枠(29)を有し、
前記通気抵抗板(25)は、切り取り可能な複数のセグメントの集合からなり、前記各セグメントは、前記格子枠(29)と共に一体成型され、前記セグメントと前記格子枠(29)との間が、一体成型された切り取り可能な連結部(26)で橋絡されていることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置の通風ユニット。
【請求項8】
前記内外気切替箱(6)よりも空気流れの下流側に設けられた空調ダクト(12)内に、空気を冷房及び暖房する空調手段(9、10、13)を有し、かつ車室内の乗員の上半身方向に空調風を吹出すフェイス吹出口(14)と、乗員足元に前記空調風を吹出すフット吹出口(15)とを有し、
前記外気取入口(3)と前記内気取入口(4)のうち、前記内気取入口(4)の方にのみ、前記通気抵抗板(25)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置の通風ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−194991(P2011−194991A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63085(P2010−63085)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】