車両用空調装置
【課題】熱交換器に流入する空気の風速分布を均一化、かつ整流化し、低圧損で低騒音のエアコンユニットを可能にしたフィルタを有する車両用空調装置を提供する。
【解決手段】送風ファン120と熱交換器130とが車両の左右方向に隣接して配置され、ファンからの空気の流れが略90°方向を変えて熱交換器を通過するようにされた熱交換器の空気流上流側の前面に配置されたフィルタ170の構造が、フィルタの通気抵抗をフィルタ通過空気の風速に対して徐々に変化させるようにして、これによって、熱交換器を通る空気の風速分布を均一にしている。この場合、ひだ折りされたフィルタの折ひだピッチP又は折ひだの山高さhを、複数段階又は無段階にわたって変える。
【解決手段】送風ファン120と熱交換器130とが車両の左右方向に隣接して配置され、ファンからの空気の流れが略90°方向を変えて熱交換器を通過するようにされた熱交換器の空気流上流側の前面に配置されたフィルタ170の構造が、フィルタの通気抵抗をフィルタ通過空気の風速に対して徐々に変化させるようにして、これによって、熱交換器を通る空気の風速分布を均一にしている。この場合、ひだ折りされたフィルタの折ひだピッチP又は折ひだの山高さhを、複数段階又は無段階にわたって変える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空気を浄化するためのフィルタを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置のHVAC(Heating Ventilating and Air-Conditioning)ユニットでは、図13(a)に示すように車両の左右方向にエバポレータ(熱交換器)8に隣接して送風ファン1が置かれている、いわゆるブロワオフセット置き方式が採用されている。この場合、図13(b)に示すようなひだ折りフィルタ7が、空気流れからみて送風ファン1の上流側に配置されている。そして、熱交換器8の上流側で、熱交換器と対向するケース部6の壁面階段状に形成し、各段部を傾斜させることで、ファン1に近い側から離れるに伴って、ケース部6の壁面と熱交換器8間の間隔を徐々に小さくして、熱交換器8に流入する空気の流れを均一化させている。しかしながら、送風ファン1から放出される空気の流れ方向は、熱交換器8の前で空気流れの方向を略90°変えられているため、熱交換器の上流側のケース部6内は非常に複雑な流れの場となっており、単にケース部6の壁面を各段部が傾斜した階段状に形成しただけで、風速分布が均一化されているとはいえないものである。また、上記従来の車両用空調装置では、ケース部の壁面を階段状に形成する必要があったため、車両の前後方向の幅A(mm)を小さくすることができなかった。そこで、本出願人は、フィルタには整流効果があることに着目して、本発明に致ったものである。
【0003】
ところで従来技術のフィルタ構造として、特許文献1乃至4が知られている。特許文献1に示されているフィルタ部材は、図14(a),(b)に示すようにダクト内を流れる空気の流速に対応してフィルタ7の折りひだのピッチPを徐々に変化させ、流速の大きな空気を折りひだピッチPの小さい、即ちろ過面積の大きい部分で受け、流速の小さな空気を折りひだピッチPの大きい、即ちろ過面積の小さい部分で受けることで、フィルタ部材全体においてフィルタの単位面積を通過する空気の流速を均一化させてダストの捕捉効率(一定時間当たりの単位面積当たりのダストの捕捉量)のばらつきをなくすものである。
【0004】
しかしながら、フィルタ7の折りひだのピッチPにはその通気抵抗が最小となる最適ピッチというものがあり、最適ピッチよりも小さなピッチにすると山と谷の間隔が狭くなるため、流体摩擦の影響で通気抵抗が大きくなる。したがって、流速の最も大きい空気をうける部分を最適ピッチにしないとフィルタ単位面積当たりの流速を均一化できない。
また、特許文献1は、流速の大きい中央部を折りひだピッチPを小さくし、流速の小さい周辺部を折りひだピッチPを大きくし、フィルタ単位面積当たりの通過空気の流速を均一化させてダストの捕捉効率のばらつきをなくすことが目的であり、フィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。風速分布を均一化させるには、上記とは逆に流速の小さな空気を圧力損失が最小の最適ピッチの部分で受けなければならない。その理由は、最適ピッチにおいては空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタを通過する風量が小さくなり、圧力損失は小さい。一方、最適ピッチよりもピッチを小さくすると、折りひだの山と谷の間隔が小さくなるため流体摩擦の影響が大きくなり、最適ピッチよりもピッチを大きくすると空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタを通過する風量が大きくなるため、圧力損失が大きくなるからである。それ故、特許文献1は、フィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。
【0005】
また、特許文献2の空気清浄器には、図15(a),(b)に示すようにフィルタ7とカウルトップとの間で形成される通気路の上流側路幅を大きくまた下流側路幅を小さくするフィルタ構造とすることで、フィルタ7の集塵能力が減退しない集塵作用を得ることが示されている。
しかしながら、このフィルタ構造は、折りひだの山高さhを徐々に変化させてはいるが、通気抵抗を変えることでフィルタ通過空気の風速分布を均一化するものではない。
【0006】
更に特許文献3の内燃機関のエアークリーナに使用されるエアークリーナエレメントには、図16(a),(b)に示すように褶曲形成した山高さを中心部から外端部に向けて徐々に高くしてフィルタエレメント全面に亘って空気を均一な流速で通過させてろ過することで、エアークリーナの薄型、小型化、軽量化しようとするフィルタ構造が示されている。
しかしながら、上記ブロワオフセット(セミセンタ)置きHVACユニットでは、車両の左右方向にエバポレータに隣接してブロワが配置されていて、ブロワ近傍から離れていくに従い流れが速くなる風速分布となっている。このため、エバポレータの前にフィルタを配設する場合、この形状ではフィルタ通過空気の風速分布を均一化させることはできないという問題がある。
【0007】
更にまた、特許文献4のフィルタユニットには、図17(a),(b)に示されるように空気吹出面の単位面積当たりのフィルタ面積を変化させることで、クリーンルーム内の清浄度の高くない自由空間3と搬送通路等の清浄度の高い特定の高清浄域4とで吹き出し風速を相違させるものが示されている。しかしながら、この特許文献4のフィルタユニットは、フィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。そして、フィルタ7の吹き出し側の面は平坦になっていて吸い込み側の山高さhを変化させている。
このように、上記特許文献1乃至4のフィルタは、いずれもフィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。
この特許文献4のフィルタユニットは、空気吹き出し面の単位面積あたりのフィルタろ材面積を変化させることで、吹き出し風速を変化させることが目的である。
【0008】
【特許文献1】特開平11−76729号公報
【特許文献2】実開平6−18021号公報
【特許文献3】特開昭62−79827号公報
【特許文献4】特開昭64−34420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタによって熱交換器に流入する流入空気の風速分布を均一化させ、かつ整流化することを可能にし、かつこれによって低圧力損失を可能にすると共に、車両の前後方向の幅を薄くする(A>B)ことができる車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載のフィルタ構造を提供する。
請求項1に記載の車両用空調装置は、吸入口から吸入した空気を車両の左右方向に水平に又は上下方向に垂直に流す第1通風路101aと、第1通風路からの空気流の流れの方向を略90°変えて、吹出口に向かって送出する第2通風路101bが形成されている空調ケース101内に、車両の前部方向から吸入した空気を車両の左右方向又は上下方向に送出する送風ファン120と、この送風ファン120に車両の左右方向又は上下方向に並んで設けられ、かつ第2通風路内に配置される熱交換器130と、第2通風路内で熱交換器130の上流側に配置されるフィルタ170とを内蔵していて、フィルタ170は、フィルタ通過空気の風速に対してフィルタの通気抵抗が送風ファン120に近い側を小さくし、送風ファン120から離れるに伴って大きくなるようにしたものであり、これにより、熱交換器130を通る空気の風速分布を均一に、かつ整流化することができる。
【0011】
請求項2の車両用空調装置は、フィルタ170がひだ折り形状に折り込まれていて、折りひだピッチPが送風ファン120に近い側がフィルタの通気抵抗が最も小さい最適ピッチPoであり、送風ファン120から離れるに伴って最適ピッチPoよりも大きく又は小さくなるようにしたものであり、このように、フィルタ170の折りひだピッチPを変えることによってフィルタ通過空気の風速分布を均一にすることができる。
請求項3の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだピッチPを複数段階に分け、各段階においては折りひだピッチPは同じにされているものである。この場合では、折りひだピッチを1山毎に変えるのに比べて、フィルタの製作コストを低く抑えることができる。
【0012】
請求項4の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだピッチPを無段階に徐々に大きく又は小さくしたものであり、これにより、極め細かなフィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成できる。
請求項5の車両用空調装置は、フィルタ170がひだ折り形状に折り込まれていて、空気流れの上流側では各折りひだの山の頂部位置が車両の左右方向に水平な平面又は上下方向に垂直な平面から同じ高さ位置にあり、熱交換器130側では各折りひだの谷の底部位置が異なる高さ位置にあり、送風ファン120に近い側が折りひだの山高さhが高く、送風ファン120から離れるに伴って折りひだの山高さhが低くなっているものであり、このように、フィルタ170の折りひだの山高さhを変えることによってでも、フィルタ通過空気の風速分布を均一にすることができる。折りひだの山高さhが高い程空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が小さくなり、通気抵抗は小さくなる。従って、熱交換器130を通る空気の風速分布を均一化できる。
【0013】
請求項6の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだの山高さhを複数段階に分けて、各段階においては折りひだの山高さhが同じにされている。この場合では、折りひだの山高さhを1山毎に変えるのに比べて、フィルタの製作コストを低く抑えることができる。
請求項7の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだの山高さhを無段階に徐々に低くしたものであり、これにより、極め細かなフィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成できる。
【0014】
請求項8の車両用空調装置は、フィルタ170を構成するろ材の目付け量Mを送風ファン120に近い側を小さくし、送風ファン120から離れるに伴って大きくしたものであり、このように、フィルタ170のろ材の粗密によってでも、フィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成することができる。
請求項9の車両用空調装置は、フィルタ170のろ材の目付け量Mを複数段階に分け、各段階においては目付け量Mは同じにされている。この場合では、目付け量Mを無段階に変えるのに比べて、フィルタの製作コストを低く抑えることができる。
【0015】
請求項10の車両用空調装置は、フィルタ170のろ材の目付け量Mを無段階に徐々に小さくしたものであり、これにより、極め細かなフィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成できる。
請求項11の車両用空調装置は、熱交換器130の空気流れ上流側であって、熱交換器と対向する空調ケース101の壁面106cが、熱交換器130と平行に形成されているものであり、これにより、空調ケース101の当該壁面106cを傾斜状に形成する必要がなく、車両用空調装置の車両の前後方向での幅B(mm)を薄くする(A>B)ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の車両用空調装置について説明する。まず、車両用空調装置の一般的な構成について説明する。図1は、車両用空調装置の概略の全体構成を示す図である。車両用空調装置100は、車両の車室内を冷暖房(空調)する車室内空調手段に相当するものであり、車室内に設けられた各種の吹出口から空調風を吹出すことによって車室内を空調している。車両用空調装置100は、主としてインストルメントパネル内に装設されていて、空調ケース101の入口側には、エア送り込み用のブロワファン120(後述の送風ファン120に相当)が設置され、ファンモータ121により回転されるようになっている。ブロワファン120の吸入側には、内外気切替箱110が設けられて、ここに内外気切替用ドア111が配設され、この内外気切替用ドア111の切り替えにより、車室内又は車室外からの内気吸入口102又は外気吸入口103の一方が選択的に開放される状態と、両吸入口102,103が半開きされる状態とを採り得るようになっている。
【0017】
ブロワファン120の下流側には、空気冷却用手段であるエバポレータ130(後述の熱交換器130に相当)が配設されている。エバポレータ130には、図示しないコンプレッサ、コンデンサ及び膨張弁等からなる冷凍サイクルを循環する冷媒が導入されるようになっており、送風空気を冷却している。また、エバポレータ130の上流側には、これに隣接してフィルタ170が配置され、車室内の空気を浄化するようにしている。
エバポレータ130の下流側には、空気加熱用手段であるヒータコア140が配設されている。ヒータコア140には、一般には図示しないエンジンの冷却水が導入され、その熱によって送風空気を加温している。
【0018】
ヒータコア140の上流側には、エアミックスドア150が配設され、このエアミックスドア150の回動により、エバポレータ130の通過空気に対するヒータコア140への導入割合が変更されて、送風空気の温度調整が行われるようになっている。
この温度調整された空気が、モード切替ドア160等の複数のドアによって選択され、各吹出口104(デフロスト吹出口、フェース吹出口、フット吹出口)から吹出されることによって、車室内の乗員に快適な温度環境を与えるようになっている。
【0019】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態の車両用空調装置、ブロワオフセット置きHVAC(Heating Ventilating and Air-Conditioning)ユニット、の特徴部分を示す図であり、図3(a)は、第1実施形態のフィルタの斜視図であり、図3(b)は、第1実施形態のフィルタの説明図である。
本発明の車両用空調装置は、送風機ユニットAと空調ユニットBの2つの部分に大別され、送風機ユニットAは、車室内前部の計器盤(図示せず)の中央部から助手席側にオフセット(右ハンドル車では車両左右(幅)方向の左側にオフセット)した位置に配置されている。これに対し、空調ユニットBは、車室内前部の計器盤の中央部に配置されている。
【0020】
送風機ユニットAは、車室内空気と車室外空気を切替導入する内外気切替箱(図1を参照)を備えており、この内外気切替箱の下流に遠心式多翼ファン(シロッコファン)からなる送風ファン120が設けられている。送風ファン120は、車両の前部方向に開口した吸入口を有し、車両の左右(幅)方向に送出する空気通路を形成する樹脂製の送風機ケース(スクロールケーシング)105内に収納されている。また、送風ファン120には、これを駆動するためのモータ(図1を参照)が組み付けられている。送風ファン120の回転軸は、車両の上下方向を向くように配置され、この送風ファン120の回転により内外気切替箱から送風機ケース105の吸入口を通して吸入された空気は、送風機ケース105の車両の左右方向を向いた送出口に向かって略水平方向(車両の左右方向)に送風されるようになっている。
【0021】
一方、空調ユニットBは樹脂製の熱交換器ケース106を有している。この熱交換器ケース106は概略箱状をしていて、車両の前部側の部位(壁面)106cが閉鎖され、車両の後部側の部位106bが空気流下流の通風路に接続する接続部とされていると共に、送風機ケース105の送出口と対向する側面の下部には、空気入口106aが設けられていて、送風機ケースの送出口と接続されている。熱交換器ケース106の内部において、車両の最も前部側の部位には、空気入口部106aからの送風空気が流入する空気流入空間106dが形成されている。この空気流入空間106dの下流側である熱交換器ケース106の車両の後部側の部位(接続部位)106bには、冷凍サイクルを構成するエバポレータ(熱交換器)130が車両の左右方向に水平に設置されている。
【0022】
このようにして、前記した車両用空調装置の空調ケース101の一部は、送風機ケース105と熱交換器ケース106とより構成されていて、車両の前部方向に開口した吸入口から入った空気を、送風ファン120により流れの方向を変えて第1通風路101a内を車両の左右(幅)方向に水平に流し、その後、第2通風路101bの空気流入空間106dで空気流の流れの方向を略90°変えて、車両の後部方向へと送出する空気の連続した第1、第2通風路101a,101bを形成している。なお、送風機ケース105の送出口と熱交換器ケース106の空気入口部106aとを直接に接続せずに、車両の左右方向に水平な連通ダクトを介して接続するようにしてもよい。また、空気流れを車両の左右方向から上方に90°変えるようにしてもよい。
また、送風ファン120と熱交換器130とは、空調ケース101内において車両の左右方向に隣接して配置(オフセット配置)されている。
【0023】
本発明の車両用空調装置では、熱交換器130は、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁、エバポレータ、気液分離器等で構成される閉回路中を冷媒が流れる冷凍サイクル内のエバポレータである。エバポレータ130の構成は様々であるが、例えばアルミニウム等の耐食性に優れた一対の金属薄板を最中のように合わせて接合した偏平状のチューブと、アルミニウム製のコルゲートフィンとが交互に積層されて、熱交換コア部を構成している。送風空気は、この熱交換コア部のチューブ外を通過する際に、チューブ内を流れる冷媒と熱交換して冷却される。
【0024】
また、本実施形態の車両用空調装置では、熱交換器130の上流側で熱交換器130と対向する熱交換器ケース106(空調ケース101)の車両の前部側の閉鎖された部位(壁面)106cと、熱交換器ケース106(空調ケース101)の車両の後部側の接続部位106bに水平に配置された熱交換器130とは、平行になっている。したがって、空気流入空間106dは扁平な直方体形状となっている。
【0025】
熱交換器ケース106(空調ケース101)内の熱交換器130の上流側には、熱交換器130に隣接し、熱交換コア部の略全面を覆うようにして、本発明の特徴であるフィルタ170が、車両の左右方向に水平に設けられていて、熱交換器130を通過する前の空気の除塵及び整流化を図っている。フィルタ170は、活性炭の粒子を混在させて脱臭機能をもたせるか、又は活性炭を混在させない一連の不織布又はろ紙を波状にプリーツ加工することによって、ひだ折り形状に折り込まれている。なお「ひだ折り形状」とは、山(凸部)と谷(凹部)とが交互に連続して波状(コルゲート状)をなしている形状をいう。また、フィルタ170には枠体174が設けられている。図4は、ひだ折りの折ひだピッチP(mm)と通気抵抗(ΔP)との関係を示すグラフである。この場合、「折ひだピッチP」は、連続する2つの山の頂部間の間隔である。この図から、折ひだピッチPが4〜7mmのときが最適ピッチPoで通気抵抗が最も小さく、最適ピッチPoより上下に外れるに従って通気抵抗が大きくなることが分かる。以下、空気の通気抵抗が最も小さい折ひだピッチPを最適ピッチPoと称する。
【0026】
すなわち、フィルタ170の折ひだピッチPが最適ピッチPo(4〜7mm)においては、空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が小さくなり、通気抵抗は小さい。最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを小さくすると、折ひだの山と谷との間隔が小さくなるため流体摩擦の影響が大きくなり、最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを大きくすると、空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が大きくなるため、通気抵抗が大きくなる。
【0027】
このことから、図3に示される第1実施形態のフィルタでは、フィルタ170を3つの第1〜第3区分171,172,173から構成し、それぞれの区分171〜173のひだ折りの折ひだピッチPを3段階に徐々に変えている。即ち、送風ファン120近傍のフィルタ170の第1区分171では、通気抵抗の最も低い最適ピッチPoでひだ折りされており、第2区分172、第3区分173と送風ファン120から離れるに従って、折ひだピッチPを大きくして通気抵抗の高いピッチP1,P2でひだ折りされている。なお、各区分71〜73では同じ折ひだピッチPとなっている。
この場合、図4に示すように、最適ピッチPoで折られた第1区分のフィルタ171の通風抵抗をΔPoとすると、第2区分のフィルタ172の通気抵抗ΔP1を(1.2〜18)ΔPoとなるようにし、第3区分のフィルタ173の通気抵抗ΔP2を(1.8〜2.5)ΔPoとなるようにすることが好ましい。
従って、本実施形態のフィルタ170の構造では、流速の小さな送風ファン120近傍は通気抵抗の最も低い最適ピッチPoとし、送風ファン120から離れて流速が大きくなるにしたがい、最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを大きくして通気抵抗を高めているので、フィルタ通過空気の風速分布を均一化することができる。なお、上記実施形態では、フィルタ170を3つの段階に区分しているが、3つに限定されるものではなく、要は複数の段階に区分すればよいものである。なお、フィルタ170を4段以上にした場合は、最適ピッチPoでひだ折りされたフィルタから最も離れたフィルタの通気抵抗ΔPは、最適ピッチの通風抵抗ΔPoの1〜2.5倍の範囲となるようにフィルタのひだ折りは形成される。
【0028】
また、本実施形態ではフィルタ170を熱交換器(エバポレータ)130の上流側に設置することで、従来のように熱交換器上流側で、熱交換器130と対向する空調ケース101の壁面106cを階段状の傾斜面にする必要がなく、送風機ケース105と接続している熱交換器ケース105の壁面106cを車両の左右方向に水平に配置された熱交換器130と平行にするだけであるので、空調ケース101の構造を簡素化でき、製作上のコストも低減できる。また、空調ケース101の壁面106cを傾斜面にする必要がないので、車両前後方向(HVACのL方向)に小型化(A>B)が可能である。
【0029】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態のフィルタを示している。この第2実施形態は、フィルタ170を3つの区分71,72,73から構成し、各区分のひだ折りの折ひだピッチPを3段階に徐々に変えていることは、第1実施形態と同じであるが、第1実施形態では、送風ファン1側から離れるに伴って各区分の折ひだピッチPを最適ピッチPoより大きくしているが、この第2実施形態では、送風ファン1近傍のフィルタ7の第1区分71では、通気抵抗Paの最も低い最適ピッチPoでひだ折りされていて、第2区分72、第3区分と送風ファン1から離れるに伴って折ひだピッチPを小さくして流体摩擦の影響が大きく、通気抵抗ΔPの大きなピッチとしている。この場合でも、第1実施形態のフィルタと同様の作用効果を奏するものである。なお、フィルタ170の区分けは3つに限定されるものではなく、複数であればよいものである。
【0030】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態のフィルタを示している。この第3実施形態では、フィルタ170を3つの区分171,172,173から構成し、送風ファン120近傍の第1区分171の折ひだピッチPを最適ピッチPoにし、送風ファン1から離れるに伴って第2区分172では折ひだピッチPを最適ピッチPoより大きくし、また第3区分173では折ひだピッチPを最適ピッチPoよりも逆に小さくしたものである。このように、送風ファン120に近いフィルタ171の区分の折ひだピッチPを最適ピッチPoとし、送風ファン120から離れるに伴って、各区分172,173の折ひだピッチPを最適ピッチPoより大きくしたものと小さくしたものとを混在させることも可能である。この場合でも、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0031】
(第4実施形態)
図7(a),(b)は、第4実施形態のフィルタを示している。この第4実施形態では、フィルタ170のひだ折りされた折ひだピッチPを、フィルタ流入風速分布に対応して無段階に徐々に小さくしている。即ち、流速の小さい送風ファン120近傍においては、フィルタ170の折ひだピッチPが最も大きく、送風ファン120から離れるに従って折ひだピッチPを徐々に小さくしている。なお、この場合、送風ファン120近傍の最も大きな折ひだピッチPを最適ピッチPoにする必要がある。送風ファン120近傍の1つだけを最適ピッチPoにするのではなく、送風ファン側から教えて所定個数の折りひだピッチPを最適ピッチPoの範囲内にしてもよい。また、フィルタ170を無段階にした場合は、4段以上にした場合と同様に最適ピッチPoでひだ折りされたフィルタから最も離れたフィルタの通風抵抗ΔPは、最適ピッチの通風抵抗ΔPoの1〜2.5倍の範囲となるようにフィルタのひだ折りは形成される。
この第4実施形態では、フィルタ170の通過空気の風速分布を更に精度良く均一化できる。
【0032】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態のフィルタを示している。第4実施形態では、送風ファン120近傍から離れるに伴って、フィルタ170の折ひだピッチPが最適ピッチPoから無段階にピッチを小さくしているが、この第5実施形態では、最適ピッチPoから無段階にピッチを大きくしている。
この場合でも、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0033】
(第6実施形態)
図9(a),(b)は、第6実施形態のフィルタを示している。この第6実施形態では、フィルタ170の折ひだピッチPを徐々に変化させるのではなく、ひだ折りされた折ひだの山高さhを三段階に分けて徐々に変化させている。ここで折ひだの山高さhは、隣接する山の頂部と谷の底部間の間隔を称している。即ち、フィルタ170の折ひだの山高さhが高い程、空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が小さくなり、通気抵抗は小さくなる。
【0034】
そこで第6実施形態では、第1実施形態と同様にフィルタ170を3つの第1〜第3区分171,172,173に区分けして、それぞれの区分171〜173でのフィルタ170のひだ折りされた折ひだ170aの山高さhを徐々に小さくしている。即ち、送風ファン120近傍の流速の小さな第1区分171では、折ひだの山高さhを最も高くし、送風ファン120から離れる第2区分172、第3区分173に行くに従って、折ひだの山高さhを低くしている。このようにして、フィルタ170の通過空気の風速分布を均一化できる。なお、この場合、第1〜第3区分171〜173のそれぞれのフィルタ170の空気流れの上流側の各折ひだの山の頂部位置170Tは、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にされており、熱交換器130側では各折ひだの谷の底部位置170Lは、各区分毎に異なる高さ位置にある。即ち、第1〜第3区分171〜173のフィルタの各折ひだ170aの谷の底部位置170Lは、階段状に高くなっている。このようにすることにより、送風ファン120から離れている、熱交換器の上流の空気流入空間106dの奥部まで空気が行き渡るようになる。
なお、上記第6実施形態でも、フィルタ170を3つの第1〜第3区分171〜173に分けたもので説明しているが、3つ以外の区分に分けて、フィルタ170の折ひだの山高さhを何段階にも分けてもよい。
【0035】
第1〜第3区分171〜173のそれぞれのフィルタ170の空気流れの上流側の各折ひだの山の頂部位置170Tは、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にし、熱交換器側では各折ひだの谷の底部位置170Lで、異なる高さ位置にしている。これは、上流側ではなく下流側の各折ひだの山の頂部位置170Tを車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にした場合を想定すると、風速分布を均一化させるためには送風ファン120から近い側から離れた側に向かってひだ高さが低くなるようにフィルタ170を形成することとなる。すると、このフィルタ170の上流側の形状により送風ファン120から離れた熱交換器130の上流の空気流入空間106dが急拡大形状になるので、ブロワ側から空気流入空間106dに流入した空気は、この急拡大形状により奥部までさらに行き渡るようになる。これでは送風ファン120から離れた部分のフィルタ170の圧損を高くすることで得られる効果(風速分布を均一にする効果)を相殺してしまう。それに対し、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にし、熱交換器130側における各折ひだの谷の底部位置170Lで、異なる高さ位置にすることで、フィルタ170の形状が空気流入空間106dにおける空気流れに影響を与えることはない。
【0036】
(第7実施形態)
図10(a),(b)は、第7実施形態のフィルタを示している。この第7実施形態では、フィルタ170のひだ折りされた折ひだの高さhを、フィルタ流入風速分布に対応して無段階に徐々に低くしている。即ち、流速の小さい送風ファン120近傍においては、フィルタ170の折ひだの高さhが最も高く、送風ファン120から離れるに従って折ひだの高さhを徐々に低くしている。この場合、フィルタ170の折ひだピッチPは変えていない。また、この場合でも、フィルタ170の空気流れの上流側の折ひだの山の頂部位置170Tは、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にあるようにする必要がある。フィルタ170の熱交換器130に対面する上側では、各折ひだ170aの谷の底部位置170Lが異なる高さ位置、即ち送風ファン120から離れるに従ってその底部位置170Lが徐々に高くなっている。この第7実施形態でも、フィルタ170の通過空気の風速分布を更に精度良く均一化できる。
【0037】
(第8実施形態)
先の実施形態では、フィルタ170の形状である折ひだピッチPや折ひだの山高さhを変えることによって通気抵抗を変えているが、第8実施形態として、図11に示すようにフィルタ170自体の通気抵抗をろ材の単位面積当りの重さを表わす目付け量M(g/cm2)(疎密)を変えることによって行ってもよい。即ち、送風ファン120近傍では、目付け量Mを小さくし、送風ファン120から離れるに伴って目付け量Mを大きくする。この場合、複数段階に分けて目付け量Mを変えてもよいし、無段階で徐々に目付け量Mを変えてもよい。更には、フィルタ170の折ひだピッチP、折ひだの山高さh及び目付け量Mの3者を種々組み合わせて、フィルタ170の通気抵抗を徐々に変えるようにしてもよい。
【0038】
(第9実施形態)
前記した第1〜第8実施形態においては、車両用空調装置100において、送風ファン120と熱交換器130とが車両の左右方向(幅方向)に配置された状態にあるものとして説明しているが、第9実施形態では、送風ファン120と熱交換器130とを車両の上下方向(高さ方向)に配置した車両用空調装置100に、本発明のフィルタ170を適用したものである。第9実施形態における車両用空調装置100も、その基本的形態は、図1と同様であり、空調ケース101の入口側には、送風ファン120が設置され、その下流側には、空気冷却用手段であるエバポレータ(熱交換器130)が配置され、更にその下流側には、空気加熱用手段であるヒータコア140が配設されている。ヒータコア140の上流側には、エアミックスドア150が配置され、その回動により、エバポレータ(熱交換器)130の通過空気に対するヒータコア140への導入割合が変更されて、送風空気の温度調整が行われるようになっている。この温度調整された空気が、モード切替ドア160等の複数のドアによって選択され、各吹出口104(デフロスト吹出口、フェース吹出口、フット吹出口等)から車室内に吹き出されるようになっている。
【0039】
車両用空調装置100は、送風機ユニットAと空調ユニットBの2つの部分に大別され、第9実施形態では送風機ユニットAは、車室内前部の計器盤(図示せず)の略中央部に位置し、空調ユニットBは、車両の上下方向に送風機ユニットAに隣接して配置されている。送風機ユニットAは、車室内空気と車室外空気を切替導入する内外気切替箱(図1を参照)を備えており、この内外気切替箱の下流に遠心式多翼ファン(シロッコファン)からなる送風ファン120が設けられている。送風ファン120は、車両の前部方向に開口した吸入口を有し、車両の上下方向(図12では下方向)に送出する空気通路を形成する樹脂製の送風機ケース(スクロールケーシング)105内に収納されている。また、送風ファン120は、これを駆動するためのモータ(図1を参照)が組み付けられている。送風ファン120の回転軸は、車両の左右(幅)方向を向くように配置され、この送風ファン120の回転により内外気切替箱から送風機ケース105の吸入口を通して吸入された空気は、送風機ケース105の車両の上下方向(図12では下方向)を向いた送出口に向かって略垂直方向(車両の上下方向)に送風されるようになっている。
【0040】
一方、空調ユニットBは樹脂製の熱交換器ケース106を有している。この熱交換器ケース106は概略箱状をしていて、車両の前部側の部位(壁面)106eが閉鎖され、車両の後部側の部位106bが空気流下流の通風路に接続する接続部とされていると共に、送風機ケース105の送出口と対向する上面には、空気入口部106aが設けられていて、送風機ケース105の送出口と接続されている。熱交換器ケース106の内部において、車両の最も前部側の部位には、空気入口部106aからの送風空気が流入する流入空間106dが形成されている。この空気流入空間106dの下流側である熱交換器ケース106の車両の後部側の部位(接続部位)106bには、冷凍サイクルを構成するエバポレータ(熱交換器)130が車両の上下方向に垂直に設置されている。
【0041】
このようにして、前記した車両用空調装置の空調ケース101の一部は、送風機ケース105と熱交換器ケース106とより構成されていて、車両の前部方向に開口した吸入口から入った空気を、送風ファン120により流れの方向を変えて第1通風路101a内を車両の上下(高さ)方向に略垂直に流し、その後、空気流入空間106dで空気流の流れの方向を略90°変えて、第2通風路101b内を車両の後部方向へと送出する空気の連続した第1、第2通風路101a,101bを形成している。即ち、送風機120と熱交換器130とは、空調ケース101内に車両の上下方向に隣接して配置されている。
【0042】
熱交換器130は、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁、エバポレータ、気液分離器等で構成される閉回路中を冷媒が流れる冷凍サイクル内のエバポレータであり、熱交換機ケース106内を両ヘッダが上下方向に配置された垂直方向に設置されている。熱交換器130が設置された熱交換器ケース106の下面には、ドレン水を排出するためのドレン口107が設けられている。したがって、空気流は熱交換器130の熱交換コア部のチューブ外を略水平に前後方向に流れることで、上下方向にチューブ内を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。
【0043】
また、第9実施形態では、略垂直方向(上下方向)に設置された熱交換器130の上流側で熱交換機130と対向する熱交換器ケース106(空調ケース101)の車両の前部側の閉鎖された部位(壁面)106eは、送風ファン120から遠ざかるにつれ熱交換器130に近ずくように傾斜しており、この傾斜壁面106eと熱交換器130とで送風ファン120からの送風空気が流入する、断面が逆台形状の空気流入空間106dが形成されている。これは、図12に送風機ケースの逆出口の風速分布で示すように、送風機ケース(スクロールケーシング)105の送出口から吹き出される空気流は、慣性力により、スクロール外周側(巻き終わり側)で流速が速いため、熱交換器ケース106の傾斜壁面106eと熱交換器130間の間隔を徐々に小さくして熱交換器130に流入する空気の流れを均一化させるためである。
【0044】
熱交換器ケース106(空調ケース101)内の熱交換器130の上流側には、熱交換器130に隣接し、熱交換コア部の略全面を覆うようにして、本発明の特徴であるフィルタ170が、車両の上下方向に垂直に設けられていて、熱交換器130を通過する前の空気の除塵及び整流化を図っている。フィルタ170は、第1実施形態と同様と同様に3つの第1区分〜第3区分171,172,173から構成し、それぞれの区分171〜173のひだ折りの折ひだピッチPを3段階に徐々に変えている。即ち、送風ファン120近傍の車両上下方向の上段に位置する第1区分のフィルタ171では、通気抵抗の最も低い最適ピッチPoでひだ折りされており、中段に位置する第2区分のフィルタ172では、折ひだピッチPをやや大きくして通気抵抗のやや高いピッチP1でひだ折りされ、下段に位置する第3区分のフィルタ173では、更に折ひだピッチPを大きくして通気抵抗の高いピッチP2でひだ折りされている。
【0045】
このように、第9実施形態のフィルタ170の構造でも、流速の小さな送風ファン120近傍は通気抵抗の最も低い最適ピッチPoとし、送風ファン120から離れて流速が大きくなるにしたがい、最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを大きくして(P1,P2)通気抵抗を高めているので、熱交換器130への空気流入空間106dが断面逆台形状に形成されていることと相俟って、フィルタ通過空気の風速分布を一層均一化することができる。なお、上記実施形態では、フィルタ170を3つの段階に区分しているが、3つに限定されるものではなく、要は複数の段階に区分すればよい。
【0046】
第9実施形態で説明したように、送風機120と熱交換器130とが空調ケース101内に車両の上下方向に隣接して配置されている車両用空調装置100にも、本発明の特徴とするフィルタ構造は適用できるものであり、当然、第2〜第8実施形態で説明したフィルタ構造も適宜採用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】車両用空調装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態の車両用空調装置の特徴部分を説明する図である。
【図3】(a)は第1実施形態のフィルタの斜視図であり、(b)は第1実施形態のフィルタの説明図である。
【図4】ひだ折りされたフィルタの折ひだピッチPと通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図5】第2実施形態のフィルタの側面図である。
【図6】第3実施形態のフィルタの側面図である。
【図7】(a)は第4実施形態のフィルタの設置図であり、(b)は第4実施形態のフィルタの斜視図である。
【図8】第5実施形態のフィルタの側面図である。
【図9】(a)は第6実施形態のフィルタの設置図であり、(b)は第2実施形態のフィルタの斜視図である。
【図10】(a)は第7実施形態のフィルタの設置図であり、(b)は第7実施形態のフィルタの斜視図である。
【図11】第8実施形態のフィルタの目付け量を粗密に変えたものを説明する図である。
【図12】本発明の第9実施形態の車両用空調装置の特徴部分を説明する図である。
【図13】(a)は従来のフィルタを設置した空調装置の断面図であり、(b)は、従来のフィルタの斜視図である。
【図14】(a)は特許文献1の従来技術のフィルタの断面図であり、(b)はダスト内の流速分布を示すグラフである。
【図15】(a)は特許文献2の従来技術のフィルタの設置図であり、(b)はそのフィルタの斜視図である。
【図16】(a)は特許文献3の従来技術のフィルタの断面図であり、(b)はそのフィルタの平面図である。
【図17】(a)は特許文献4の従来技術のフィルタの設置図であり、(b)は、そのフィルタの部分斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
101 空調ケース
105 送風機ケース
106 熱交換器ケース
120 送風ファン
130 熱交換器(エバポレータ)
170 フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空気を浄化するためのフィルタを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置のHVAC(Heating Ventilating and Air-Conditioning)ユニットでは、図13(a)に示すように車両の左右方向にエバポレータ(熱交換器)8に隣接して送風ファン1が置かれている、いわゆるブロワオフセット置き方式が採用されている。この場合、図13(b)に示すようなひだ折りフィルタ7が、空気流れからみて送風ファン1の上流側に配置されている。そして、熱交換器8の上流側で、熱交換器と対向するケース部6の壁面階段状に形成し、各段部を傾斜させることで、ファン1に近い側から離れるに伴って、ケース部6の壁面と熱交換器8間の間隔を徐々に小さくして、熱交換器8に流入する空気の流れを均一化させている。しかしながら、送風ファン1から放出される空気の流れ方向は、熱交換器8の前で空気流れの方向を略90°変えられているため、熱交換器の上流側のケース部6内は非常に複雑な流れの場となっており、単にケース部6の壁面を各段部が傾斜した階段状に形成しただけで、風速分布が均一化されているとはいえないものである。また、上記従来の車両用空調装置では、ケース部の壁面を階段状に形成する必要があったため、車両の前後方向の幅A(mm)を小さくすることができなかった。そこで、本出願人は、フィルタには整流効果があることに着目して、本発明に致ったものである。
【0003】
ところで従来技術のフィルタ構造として、特許文献1乃至4が知られている。特許文献1に示されているフィルタ部材は、図14(a),(b)に示すようにダクト内を流れる空気の流速に対応してフィルタ7の折りひだのピッチPを徐々に変化させ、流速の大きな空気を折りひだピッチPの小さい、即ちろ過面積の大きい部分で受け、流速の小さな空気を折りひだピッチPの大きい、即ちろ過面積の小さい部分で受けることで、フィルタ部材全体においてフィルタの単位面積を通過する空気の流速を均一化させてダストの捕捉効率(一定時間当たりの単位面積当たりのダストの捕捉量)のばらつきをなくすものである。
【0004】
しかしながら、フィルタ7の折りひだのピッチPにはその通気抵抗が最小となる最適ピッチというものがあり、最適ピッチよりも小さなピッチにすると山と谷の間隔が狭くなるため、流体摩擦の影響で通気抵抗が大きくなる。したがって、流速の最も大きい空気をうける部分を最適ピッチにしないとフィルタ単位面積当たりの流速を均一化できない。
また、特許文献1は、流速の大きい中央部を折りひだピッチPを小さくし、流速の小さい周辺部を折りひだピッチPを大きくし、フィルタ単位面積当たりの通過空気の流速を均一化させてダストの捕捉効率のばらつきをなくすことが目的であり、フィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。風速分布を均一化させるには、上記とは逆に流速の小さな空気を圧力損失が最小の最適ピッチの部分で受けなければならない。その理由は、最適ピッチにおいては空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタを通過する風量が小さくなり、圧力損失は小さい。一方、最適ピッチよりもピッチを小さくすると、折りひだの山と谷の間隔が小さくなるため流体摩擦の影響が大きくなり、最適ピッチよりもピッチを大きくすると空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタを通過する風量が大きくなるため、圧力損失が大きくなるからである。それ故、特許文献1は、フィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。
【0005】
また、特許文献2の空気清浄器には、図15(a),(b)に示すようにフィルタ7とカウルトップとの間で形成される通気路の上流側路幅を大きくまた下流側路幅を小さくするフィルタ構造とすることで、フィルタ7の集塵能力が減退しない集塵作用を得ることが示されている。
しかしながら、このフィルタ構造は、折りひだの山高さhを徐々に変化させてはいるが、通気抵抗を変えることでフィルタ通過空気の風速分布を均一化するものではない。
【0006】
更に特許文献3の内燃機関のエアークリーナに使用されるエアークリーナエレメントには、図16(a),(b)に示すように褶曲形成した山高さを中心部から外端部に向けて徐々に高くしてフィルタエレメント全面に亘って空気を均一な流速で通過させてろ過することで、エアークリーナの薄型、小型化、軽量化しようとするフィルタ構造が示されている。
しかしながら、上記ブロワオフセット(セミセンタ)置きHVACユニットでは、車両の左右方向にエバポレータに隣接してブロワが配置されていて、ブロワ近傍から離れていくに従い流れが速くなる風速分布となっている。このため、エバポレータの前にフィルタを配設する場合、この形状ではフィルタ通過空気の風速分布を均一化させることはできないという問題がある。
【0007】
更にまた、特許文献4のフィルタユニットには、図17(a),(b)に示されるように空気吹出面の単位面積当たりのフィルタ面積を変化させることで、クリーンルーム内の清浄度の高くない自由空間3と搬送通路等の清浄度の高い特定の高清浄域4とで吹き出し風速を相違させるものが示されている。しかしながら、この特許文献4のフィルタユニットは、フィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。そして、フィルタ7の吹き出し側の面は平坦になっていて吸い込み側の山高さhを変化させている。
このように、上記特許文献1乃至4のフィルタは、いずれもフィルタ通過空気の風速分布を均一化させて圧力損失を下げるものではない。
この特許文献4のフィルタユニットは、空気吹き出し面の単位面積あたりのフィルタろ材面積を変化させることで、吹き出し風速を変化させることが目的である。
【0008】
【特許文献1】特開平11−76729号公報
【特許文献2】実開平6−18021号公報
【特許文献3】特開昭62−79827号公報
【特許文献4】特開昭64−34420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタによって熱交換器に流入する流入空気の風速分布を均一化させ、かつ整流化することを可能にし、かつこれによって低圧力損失を可能にすると共に、車両の前後方向の幅を薄くする(A>B)ことができる車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載のフィルタ構造を提供する。
請求項1に記載の車両用空調装置は、吸入口から吸入した空気を車両の左右方向に水平に又は上下方向に垂直に流す第1通風路101aと、第1通風路からの空気流の流れの方向を略90°変えて、吹出口に向かって送出する第2通風路101bが形成されている空調ケース101内に、車両の前部方向から吸入した空気を車両の左右方向又は上下方向に送出する送風ファン120と、この送風ファン120に車両の左右方向又は上下方向に並んで設けられ、かつ第2通風路内に配置される熱交換器130と、第2通風路内で熱交換器130の上流側に配置されるフィルタ170とを内蔵していて、フィルタ170は、フィルタ通過空気の風速に対してフィルタの通気抵抗が送風ファン120に近い側を小さくし、送風ファン120から離れるに伴って大きくなるようにしたものであり、これにより、熱交換器130を通る空気の風速分布を均一に、かつ整流化することができる。
【0011】
請求項2の車両用空調装置は、フィルタ170がひだ折り形状に折り込まれていて、折りひだピッチPが送風ファン120に近い側がフィルタの通気抵抗が最も小さい最適ピッチPoであり、送風ファン120から離れるに伴って最適ピッチPoよりも大きく又は小さくなるようにしたものであり、このように、フィルタ170の折りひだピッチPを変えることによってフィルタ通過空気の風速分布を均一にすることができる。
請求項3の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだピッチPを複数段階に分け、各段階においては折りひだピッチPは同じにされているものである。この場合では、折りひだピッチを1山毎に変えるのに比べて、フィルタの製作コストを低く抑えることができる。
【0012】
請求項4の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだピッチPを無段階に徐々に大きく又は小さくしたものであり、これにより、極め細かなフィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成できる。
請求項5の車両用空調装置は、フィルタ170がひだ折り形状に折り込まれていて、空気流れの上流側では各折りひだの山の頂部位置が車両の左右方向に水平な平面又は上下方向に垂直な平面から同じ高さ位置にあり、熱交換器130側では各折りひだの谷の底部位置が異なる高さ位置にあり、送風ファン120に近い側が折りひだの山高さhが高く、送風ファン120から離れるに伴って折りひだの山高さhが低くなっているものであり、このように、フィルタ170の折りひだの山高さhを変えることによってでも、フィルタ通過空気の風速分布を均一にすることができる。折りひだの山高さhが高い程空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が小さくなり、通気抵抗は小さくなる。従って、熱交換器130を通る空気の風速分布を均一化できる。
【0013】
請求項6の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだの山高さhを複数段階に分けて、各段階においては折りひだの山高さhが同じにされている。この場合では、折りひだの山高さhを1山毎に変えるのに比べて、フィルタの製作コストを低く抑えることができる。
請求項7の車両用空調装置は、フィルタ170の折りひだの山高さhを無段階に徐々に低くしたものであり、これにより、極め細かなフィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成できる。
【0014】
請求項8の車両用空調装置は、フィルタ170を構成するろ材の目付け量Mを送風ファン120に近い側を小さくし、送風ファン120から離れるに伴って大きくしたものであり、このように、フィルタ170のろ材の粗密によってでも、フィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成することができる。
請求項9の車両用空調装置は、フィルタ170のろ材の目付け量Mを複数段階に分け、各段階においては目付け量Mは同じにされている。この場合では、目付け量Mを無段階に変えるのに比べて、フィルタの製作コストを低く抑えることができる。
【0015】
請求項10の車両用空調装置は、フィルタ170のろ材の目付け量Mを無段階に徐々に小さくしたものであり、これにより、極め細かなフィルタ通過空気の風速分布の均一化を達成できる。
請求項11の車両用空調装置は、熱交換器130の空気流れ上流側であって、熱交換器と対向する空調ケース101の壁面106cが、熱交換器130と平行に形成されているものであり、これにより、空調ケース101の当該壁面106cを傾斜状に形成する必要がなく、車両用空調装置の車両の前後方向での幅B(mm)を薄くする(A>B)ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に従って本発明の実施の形態の車両用空調装置について説明する。まず、車両用空調装置の一般的な構成について説明する。図1は、車両用空調装置の概略の全体構成を示す図である。車両用空調装置100は、車両の車室内を冷暖房(空調)する車室内空調手段に相当するものであり、車室内に設けられた各種の吹出口から空調風を吹出すことによって車室内を空調している。車両用空調装置100は、主としてインストルメントパネル内に装設されていて、空調ケース101の入口側には、エア送り込み用のブロワファン120(後述の送風ファン120に相当)が設置され、ファンモータ121により回転されるようになっている。ブロワファン120の吸入側には、内外気切替箱110が設けられて、ここに内外気切替用ドア111が配設され、この内外気切替用ドア111の切り替えにより、車室内又は車室外からの内気吸入口102又は外気吸入口103の一方が選択的に開放される状態と、両吸入口102,103が半開きされる状態とを採り得るようになっている。
【0017】
ブロワファン120の下流側には、空気冷却用手段であるエバポレータ130(後述の熱交換器130に相当)が配設されている。エバポレータ130には、図示しないコンプレッサ、コンデンサ及び膨張弁等からなる冷凍サイクルを循環する冷媒が導入されるようになっており、送風空気を冷却している。また、エバポレータ130の上流側には、これに隣接してフィルタ170が配置され、車室内の空気を浄化するようにしている。
エバポレータ130の下流側には、空気加熱用手段であるヒータコア140が配設されている。ヒータコア140には、一般には図示しないエンジンの冷却水が導入され、その熱によって送風空気を加温している。
【0018】
ヒータコア140の上流側には、エアミックスドア150が配設され、このエアミックスドア150の回動により、エバポレータ130の通過空気に対するヒータコア140への導入割合が変更されて、送風空気の温度調整が行われるようになっている。
この温度調整された空気が、モード切替ドア160等の複数のドアによって選択され、各吹出口104(デフロスト吹出口、フェース吹出口、フット吹出口)から吹出されることによって、車室内の乗員に快適な温度環境を与えるようになっている。
【0019】
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態の車両用空調装置、ブロワオフセット置きHVAC(Heating Ventilating and Air-Conditioning)ユニット、の特徴部分を示す図であり、図3(a)は、第1実施形態のフィルタの斜視図であり、図3(b)は、第1実施形態のフィルタの説明図である。
本発明の車両用空調装置は、送風機ユニットAと空調ユニットBの2つの部分に大別され、送風機ユニットAは、車室内前部の計器盤(図示せず)の中央部から助手席側にオフセット(右ハンドル車では車両左右(幅)方向の左側にオフセット)した位置に配置されている。これに対し、空調ユニットBは、車室内前部の計器盤の中央部に配置されている。
【0020】
送風機ユニットAは、車室内空気と車室外空気を切替導入する内外気切替箱(図1を参照)を備えており、この内外気切替箱の下流に遠心式多翼ファン(シロッコファン)からなる送風ファン120が設けられている。送風ファン120は、車両の前部方向に開口した吸入口を有し、車両の左右(幅)方向に送出する空気通路を形成する樹脂製の送風機ケース(スクロールケーシング)105内に収納されている。また、送風ファン120には、これを駆動するためのモータ(図1を参照)が組み付けられている。送風ファン120の回転軸は、車両の上下方向を向くように配置され、この送風ファン120の回転により内外気切替箱から送風機ケース105の吸入口を通して吸入された空気は、送風機ケース105の車両の左右方向を向いた送出口に向かって略水平方向(車両の左右方向)に送風されるようになっている。
【0021】
一方、空調ユニットBは樹脂製の熱交換器ケース106を有している。この熱交換器ケース106は概略箱状をしていて、車両の前部側の部位(壁面)106cが閉鎖され、車両の後部側の部位106bが空気流下流の通風路に接続する接続部とされていると共に、送風機ケース105の送出口と対向する側面の下部には、空気入口106aが設けられていて、送風機ケースの送出口と接続されている。熱交換器ケース106の内部において、車両の最も前部側の部位には、空気入口部106aからの送風空気が流入する空気流入空間106dが形成されている。この空気流入空間106dの下流側である熱交換器ケース106の車両の後部側の部位(接続部位)106bには、冷凍サイクルを構成するエバポレータ(熱交換器)130が車両の左右方向に水平に設置されている。
【0022】
このようにして、前記した車両用空調装置の空調ケース101の一部は、送風機ケース105と熱交換器ケース106とより構成されていて、車両の前部方向に開口した吸入口から入った空気を、送風ファン120により流れの方向を変えて第1通風路101a内を車両の左右(幅)方向に水平に流し、その後、第2通風路101bの空気流入空間106dで空気流の流れの方向を略90°変えて、車両の後部方向へと送出する空気の連続した第1、第2通風路101a,101bを形成している。なお、送風機ケース105の送出口と熱交換器ケース106の空気入口部106aとを直接に接続せずに、車両の左右方向に水平な連通ダクトを介して接続するようにしてもよい。また、空気流れを車両の左右方向から上方に90°変えるようにしてもよい。
また、送風ファン120と熱交換器130とは、空調ケース101内において車両の左右方向に隣接して配置(オフセット配置)されている。
【0023】
本発明の車両用空調装置では、熱交換器130は、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁、エバポレータ、気液分離器等で構成される閉回路中を冷媒が流れる冷凍サイクル内のエバポレータである。エバポレータ130の構成は様々であるが、例えばアルミニウム等の耐食性に優れた一対の金属薄板を最中のように合わせて接合した偏平状のチューブと、アルミニウム製のコルゲートフィンとが交互に積層されて、熱交換コア部を構成している。送風空気は、この熱交換コア部のチューブ外を通過する際に、チューブ内を流れる冷媒と熱交換して冷却される。
【0024】
また、本実施形態の車両用空調装置では、熱交換器130の上流側で熱交換器130と対向する熱交換器ケース106(空調ケース101)の車両の前部側の閉鎖された部位(壁面)106cと、熱交換器ケース106(空調ケース101)の車両の後部側の接続部位106bに水平に配置された熱交換器130とは、平行になっている。したがって、空気流入空間106dは扁平な直方体形状となっている。
【0025】
熱交換器ケース106(空調ケース101)内の熱交換器130の上流側には、熱交換器130に隣接し、熱交換コア部の略全面を覆うようにして、本発明の特徴であるフィルタ170が、車両の左右方向に水平に設けられていて、熱交換器130を通過する前の空気の除塵及び整流化を図っている。フィルタ170は、活性炭の粒子を混在させて脱臭機能をもたせるか、又は活性炭を混在させない一連の不織布又はろ紙を波状にプリーツ加工することによって、ひだ折り形状に折り込まれている。なお「ひだ折り形状」とは、山(凸部)と谷(凹部)とが交互に連続して波状(コルゲート状)をなしている形状をいう。また、フィルタ170には枠体174が設けられている。図4は、ひだ折りの折ひだピッチP(mm)と通気抵抗(ΔP)との関係を示すグラフである。この場合、「折ひだピッチP」は、連続する2つの山の頂部間の間隔である。この図から、折ひだピッチPが4〜7mmのときが最適ピッチPoで通気抵抗が最も小さく、最適ピッチPoより上下に外れるに従って通気抵抗が大きくなることが分かる。以下、空気の通気抵抗が最も小さい折ひだピッチPを最適ピッチPoと称する。
【0026】
すなわち、フィルタ170の折ひだピッチPが最適ピッチPo(4〜7mm)においては、空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が小さくなり、通気抵抗は小さい。最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを小さくすると、折ひだの山と谷との間隔が小さくなるため流体摩擦の影響が大きくなり、最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを大きくすると、空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が大きくなるため、通気抵抗が大きくなる。
【0027】
このことから、図3に示される第1実施形態のフィルタでは、フィルタ170を3つの第1〜第3区分171,172,173から構成し、それぞれの区分171〜173のひだ折りの折ひだピッチPを3段階に徐々に変えている。即ち、送風ファン120近傍のフィルタ170の第1区分171では、通気抵抗の最も低い最適ピッチPoでひだ折りされており、第2区分172、第3区分173と送風ファン120から離れるに従って、折ひだピッチPを大きくして通気抵抗の高いピッチP1,P2でひだ折りされている。なお、各区分71〜73では同じ折ひだピッチPとなっている。
この場合、図4に示すように、最適ピッチPoで折られた第1区分のフィルタ171の通風抵抗をΔPoとすると、第2区分のフィルタ172の通気抵抗ΔP1を(1.2〜18)ΔPoとなるようにし、第3区分のフィルタ173の通気抵抗ΔP2を(1.8〜2.5)ΔPoとなるようにすることが好ましい。
従って、本実施形態のフィルタ170の構造では、流速の小さな送風ファン120近傍は通気抵抗の最も低い最適ピッチPoとし、送風ファン120から離れて流速が大きくなるにしたがい、最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを大きくして通気抵抗を高めているので、フィルタ通過空気の風速分布を均一化することができる。なお、上記実施形態では、フィルタ170を3つの段階に区分しているが、3つに限定されるものではなく、要は複数の段階に区分すればよいものである。なお、フィルタ170を4段以上にした場合は、最適ピッチPoでひだ折りされたフィルタから最も離れたフィルタの通気抵抗ΔPは、最適ピッチの通風抵抗ΔPoの1〜2.5倍の範囲となるようにフィルタのひだ折りは形成される。
【0028】
また、本実施形態ではフィルタ170を熱交換器(エバポレータ)130の上流側に設置することで、従来のように熱交換器上流側で、熱交換器130と対向する空調ケース101の壁面106cを階段状の傾斜面にする必要がなく、送風機ケース105と接続している熱交換器ケース105の壁面106cを車両の左右方向に水平に配置された熱交換器130と平行にするだけであるので、空調ケース101の構造を簡素化でき、製作上のコストも低減できる。また、空調ケース101の壁面106cを傾斜面にする必要がないので、車両前後方向(HVACのL方向)に小型化(A>B)が可能である。
【0029】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態のフィルタを示している。この第2実施形態は、フィルタ170を3つの区分71,72,73から構成し、各区分のひだ折りの折ひだピッチPを3段階に徐々に変えていることは、第1実施形態と同じであるが、第1実施形態では、送風ファン1側から離れるに伴って各区分の折ひだピッチPを最適ピッチPoより大きくしているが、この第2実施形態では、送風ファン1近傍のフィルタ7の第1区分71では、通気抵抗Paの最も低い最適ピッチPoでひだ折りされていて、第2区分72、第3区分と送風ファン1から離れるに伴って折ひだピッチPを小さくして流体摩擦の影響が大きく、通気抵抗ΔPの大きなピッチとしている。この場合でも、第1実施形態のフィルタと同様の作用効果を奏するものである。なお、フィルタ170の区分けは3つに限定されるものではなく、複数であればよいものである。
【0030】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態のフィルタを示している。この第3実施形態では、フィルタ170を3つの区分171,172,173から構成し、送風ファン120近傍の第1区分171の折ひだピッチPを最適ピッチPoにし、送風ファン1から離れるに伴って第2区分172では折ひだピッチPを最適ピッチPoより大きくし、また第3区分173では折ひだピッチPを最適ピッチPoよりも逆に小さくしたものである。このように、送風ファン120に近いフィルタ171の区分の折ひだピッチPを最適ピッチPoとし、送風ファン120から離れるに伴って、各区分172,173の折ひだピッチPを最適ピッチPoより大きくしたものと小さくしたものとを混在させることも可能である。この場合でも、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0031】
(第4実施形態)
図7(a),(b)は、第4実施形態のフィルタを示している。この第4実施形態では、フィルタ170のひだ折りされた折ひだピッチPを、フィルタ流入風速分布に対応して無段階に徐々に小さくしている。即ち、流速の小さい送風ファン120近傍においては、フィルタ170の折ひだピッチPが最も大きく、送風ファン120から離れるに従って折ひだピッチPを徐々に小さくしている。なお、この場合、送風ファン120近傍の最も大きな折ひだピッチPを最適ピッチPoにする必要がある。送風ファン120近傍の1つだけを最適ピッチPoにするのではなく、送風ファン側から教えて所定個数の折りひだピッチPを最適ピッチPoの範囲内にしてもよい。また、フィルタ170を無段階にした場合は、4段以上にした場合と同様に最適ピッチPoでひだ折りされたフィルタから最も離れたフィルタの通風抵抗ΔPは、最適ピッチの通風抵抗ΔPoの1〜2.5倍の範囲となるようにフィルタのひだ折りは形成される。
この第4実施形態では、フィルタ170の通過空気の風速分布を更に精度良く均一化できる。
【0032】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態のフィルタを示している。第4実施形態では、送風ファン120近傍から離れるに伴って、フィルタ170の折ひだピッチPが最適ピッチPoから無段階にピッチを小さくしているが、この第5実施形態では、最適ピッチPoから無段階にピッチを大きくしている。
この場合でも、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0033】
(第6実施形態)
図9(a),(b)は、第6実施形態のフィルタを示している。この第6実施形態では、フィルタ170の折ひだピッチPを徐々に変化させるのではなく、ひだ折りされた折ひだの山高さhを三段階に分けて徐々に変化させている。ここで折ひだの山高さhは、隣接する山の頂部と谷の底部間の間隔を称している。即ち、フィルタ170の折ひだの山高さhが高い程、空気吹き出し方向における単位面積当たりのフィルタ面積が大きくなるため、単位面積当たりのフィルタ170を通過する風量が小さくなり、通気抵抗は小さくなる。
【0034】
そこで第6実施形態では、第1実施形態と同様にフィルタ170を3つの第1〜第3区分171,172,173に区分けして、それぞれの区分171〜173でのフィルタ170のひだ折りされた折ひだ170aの山高さhを徐々に小さくしている。即ち、送風ファン120近傍の流速の小さな第1区分171では、折ひだの山高さhを最も高くし、送風ファン120から離れる第2区分172、第3区分173に行くに従って、折ひだの山高さhを低くしている。このようにして、フィルタ170の通過空気の風速分布を均一化できる。なお、この場合、第1〜第3区分171〜173のそれぞれのフィルタ170の空気流れの上流側の各折ひだの山の頂部位置170Tは、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にされており、熱交換器130側では各折ひだの谷の底部位置170Lは、各区分毎に異なる高さ位置にある。即ち、第1〜第3区分171〜173のフィルタの各折ひだ170aの谷の底部位置170Lは、階段状に高くなっている。このようにすることにより、送風ファン120から離れている、熱交換器の上流の空気流入空間106dの奥部まで空気が行き渡るようになる。
なお、上記第6実施形態でも、フィルタ170を3つの第1〜第3区分171〜173に分けたもので説明しているが、3つ以外の区分に分けて、フィルタ170の折ひだの山高さhを何段階にも分けてもよい。
【0035】
第1〜第3区分171〜173のそれぞれのフィルタ170の空気流れの上流側の各折ひだの山の頂部位置170Tは、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にし、熱交換器側では各折ひだの谷の底部位置170Lで、異なる高さ位置にしている。これは、上流側ではなく下流側の各折ひだの山の頂部位置170Tを車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にした場合を想定すると、風速分布を均一化させるためには送風ファン120から近い側から離れた側に向かってひだ高さが低くなるようにフィルタ170を形成することとなる。すると、このフィルタ170の上流側の形状により送風ファン120から離れた熱交換器130の上流の空気流入空間106dが急拡大形状になるので、ブロワ側から空気流入空間106dに流入した空気は、この急拡大形状により奥部までさらに行き渡るようになる。これでは送風ファン120から離れた部分のフィルタ170の圧損を高くすることで得られる効果(風速分布を均一にする効果)を相殺してしまう。それに対し、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にし、熱交換器130側における各折ひだの谷の底部位置170Lで、異なる高さ位置にすることで、フィルタ170の形状が空気流入空間106dにおける空気流れに影響を与えることはない。
【0036】
(第7実施形態)
図10(a),(b)は、第7実施形態のフィルタを示している。この第7実施形態では、フィルタ170のひだ折りされた折ひだの高さhを、フィルタ流入風速分布に対応して無段階に徐々に低くしている。即ち、流速の小さい送風ファン120近傍においては、フィルタ170の折ひだの高さhが最も高く、送風ファン120から離れるに従って折ひだの高さhを徐々に低くしている。この場合、フィルタ170の折ひだピッチPは変えていない。また、この場合でも、フィルタ170の空気流れの上流側の折ひだの山の頂部位置170Tは、車両の左右方向に水平な平面から同じ高さ位置にあるようにする必要がある。フィルタ170の熱交換器130に対面する上側では、各折ひだ170aの谷の底部位置170Lが異なる高さ位置、即ち送風ファン120から離れるに従ってその底部位置170Lが徐々に高くなっている。この第7実施形態でも、フィルタ170の通過空気の風速分布を更に精度良く均一化できる。
【0037】
(第8実施形態)
先の実施形態では、フィルタ170の形状である折ひだピッチPや折ひだの山高さhを変えることによって通気抵抗を変えているが、第8実施形態として、図11に示すようにフィルタ170自体の通気抵抗をろ材の単位面積当りの重さを表わす目付け量M(g/cm2)(疎密)を変えることによって行ってもよい。即ち、送風ファン120近傍では、目付け量Mを小さくし、送風ファン120から離れるに伴って目付け量Mを大きくする。この場合、複数段階に分けて目付け量Mを変えてもよいし、無段階で徐々に目付け量Mを変えてもよい。更には、フィルタ170の折ひだピッチP、折ひだの山高さh及び目付け量Mの3者を種々組み合わせて、フィルタ170の通気抵抗を徐々に変えるようにしてもよい。
【0038】
(第9実施形態)
前記した第1〜第8実施形態においては、車両用空調装置100において、送風ファン120と熱交換器130とが車両の左右方向(幅方向)に配置された状態にあるものとして説明しているが、第9実施形態では、送風ファン120と熱交換器130とを車両の上下方向(高さ方向)に配置した車両用空調装置100に、本発明のフィルタ170を適用したものである。第9実施形態における車両用空調装置100も、その基本的形態は、図1と同様であり、空調ケース101の入口側には、送風ファン120が設置され、その下流側には、空気冷却用手段であるエバポレータ(熱交換器130)が配置され、更にその下流側には、空気加熱用手段であるヒータコア140が配設されている。ヒータコア140の上流側には、エアミックスドア150が配置され、その回動により、エバポレータ(熱交換器)130の通過空気に対するヒータコア140への導入割合が変更されて、送風空気の温度調整が行われるようになっている。この温度調整された空気が、モード切替ドア160等の複数のドアによって選択され、各吹出口104(デフロスト吹出口、フェース吹出口、フット吹出口等)から車室内に吹き出されるようになっている。
【0039】
車両用空調装置100は、送風機ユニットAと空調ユニットBの2つの部分に大別され、第9実施形態では送風機ユニットAは、車室内前部の計器盤(図示せず)の略中央部に位置し、空調ユニットBは、車両の上下方向に送風機ユニットAに隣接して配置されている。送風機ユニットAは、車室内空気と車室外空気を切替導入する内外気切替箱(図1を参照)を備えており、この内外気切替箱の下流に遠心式多翼ファン(シロッコファン)からなる送風ファン120が設けられている。送風ファン120は、車両の前部方向に開口した吸入口を有し、車両の上下方向(図12では下方向)に送出する空気通路を形成する樹脂製の送風機ケース(スクロールケーシング)105内に収納されている。また、送風ファン120は、これを駆動するためのモータ(図1を参照)が組み付けられている。送風ファン120の回転軸は、車両の左右(幅)方向を向くように配置され、この送風ファン120の回転により内外気切替箱から送風機ケース105の吸入口を通して吸入された空気は、送風機ケース105の車両の上下方向(図12では下方向)を向いた送出口に向かって略垂直方向(車両の上下方向)に送風されるようになっている。
【0040】
一方、空調ユニットBは樹脂製の熱交換器ケース106を有している。この熱交換器ケース106は概略箱状をしていて、車両の前部側の部位(壁面)106eが閉鎖され、車両の後部側の部位106bが空気流下流の通風路に接続する接続部とされていると共に、送風機ケース105の送出口と対向する上面には、空気入口部106aが設けられていて、送風機ケース105の送出口と接続されている。熱交換器ケース106の内部において、車両の最も前部側の部位には、空気入口部106aからの送風空気が流入する流入空間106dが形成されている。この空気流入空間106dの下流側である熱交換器ケース106の車両の後部側の部位(接続部位)106bには、冷凍サイクルを構成するエバポレータ(熱交換器)130が車両の上下方向に垂直に設置されている。
【0041】
このようにして、前記した車両用空調装置の空調ケース101の一部は、送風機ケース105と熱交換器ケース106とより構成されていて、車両の前部方向に開口した吸入口から入った空気を、送風ファン120により流れの方向を変えて第1通風路101a内を車両の上下(高さ)方向に略垂直に流し、その後、空気流入空間106dで空気流の流れの方向を略90°変えて、第2通風路101b内を車両の後部方向へと送出する空気の連続した第1、第2通風路101a,101bを形成している。即ち、送風機120と熱交換器130とは、空調ケース101内に車両の上下方向に隣接して配置されている。
【0042】
熱交換器130は、コンプレッサ、コンデンサ、膨張弁、エバポレータ、気液分離器等で構成される閉回路中を冷媒が流れる冷凍サイクル内のエバポレータであり、熱交換機ケース106内を両ヘッダが上下方向に配置された垂直方向に設置されている。熱交換器130が設置された熱交換器ケース106の下面には、ドレン水を排出するためのドレン口107が設けられている。したがって、空気流は熱交換器130の熱交換コア部のチューブ外を略水平に前後方向に流れることで、上下方向にチューブ内を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。
【0043】
また、第9実施形態では、略垂直方向(上下方向)に設置された熱交換器130の上流側で熱交換機130と対向する熱交換器ケース106(空調ケース101)の車両の前部側の閉鎖された部位(壁面)106eは、送風ファン120から遠ざかるにつれ熱交換器130に近ずくように傾斜しており、この傾斜壁面106eと熱交換器130とで送風ファン120からの送風空気が流入する、断面が逆台形状の空気流入空間106dが形成されている。これは、図12に送風機ケースの逆出口の風速分布で示すように、送風機ケース(スクロールケーシング)105の送出口から吹き出される空気流は、慣性力により、スクロール外周側(巻き終わり側)で流速が速いため、熱交換器ケース106の傾斜壁面106eと熱交換器130間の間隔を徐々に小さくして熱交換器130に流入する空気の流れを均一化させるためである。
【0044】
熱交換器ケース106(空調ケース101)内の熱交換器130の上流側には、熱交換器130に隣接し、熱交換コア部の略全面を覆うようにして、本発明の特徴であるフィルタ170が、車両の上下方向に垂直に設けられていて、熱交換器130を通過する前の空気の除塵及び整流化を図っている。フィルタ170は、第1実施形態と同様と同様に3つの第1区分〜第3区分171,172,173から構成し、それぞれの区分171〜173のひだ折りの折ひだピッチPを3段階に徐々に変えている。即ち、送風ファン120近傍の車両上下方向の上段に位置する第1区分のフィルタ171では、通気抵抗の最も低い最適ピッチPoでひだ折りされており、中段に位置する第2区分のフィルタ172では、折ひだピッチPをやや大きくして通気抵抗のやや高いピッチP1でひだ折りされ、下段に位置する第3区分のフィルタ173では、更に折ひだピッチPを大きくして通気抵抗の高いピッチP2でひだ折りされている。
【0045】
このように、第9実施形態のフィルタ170の構造でも、流速の小さな送風ファン120近傍は通気抵抗の最も低い最適ピッチPoとし、送風ファン120から離れて流速が大きくなるにしたがい、最適ピッチPoよりも折ひだピッチPを大きくして(P1,P2)通気抵抗を高めているので、熱交換器130への空気流入空間106dが断面逆台形状に形成されていることと相俟って、フィルタ通過空気の風速分布を一層均一化することができる。なお、上記実施形態では、フィルタ170を3つの段階に区分しているが、3つに限定されるものではなく、要は複数の段階に区分すればよい。
【0046】
第9実施形態で説明したように、送風機120と熱交換器130とが空調ケース101内に車両の上下方向に隣接して配置されている車両用空調装置100にも、本発明の特徴とするフィルタ構造は適用できるものであり、当然、第2〜第8実施形態で説明したフィルタ構造も適宜採用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】車両用空調装置の全体構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態の車両用空調装置の特徴部分を説明する図である。
【図3】(a)は第1実施形態のフィルタの斜視図であり、(b)は第1実施形態のフィルタの説明図である。
【図4】ひだ折りされたフィルタの折ひだピッチPと通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図5】第2実施形態のフィルタの側面図である。
【図6】第3実施形態のフィルタの側面図である。
【図7】(a)は第4実施形態のフィルタの設置図であり、(b)は第4実施形態のフィルタの斜視図である。
【図8】第5実施形態のフィルタの側面図である。
【図9】(a)は第6実施形態のフィルタの設置図であり、(b)は第2実施形態のフィルタの斜視図である。
【図10】(a)は第7実施形態のフィルタの設置図であり、(b)は第7実施形態のフィルタの斜視図である。
【図11】第8実施形態のフィルタの目付け量を粗密に変えたものを説明する図である。
【図12】本発明の第9実施形態の車両用空調装置の特徴部分を説明する図である。
【図13】(a)は従来のフィルタを設置した空調装置の断面図であり、(b)は、従来のフィルタの斜視図である。
【図14】(a)は特許文献1の従来技術のフィルタの断面図であり、(b)はダスト内の流速分布を示すグラフである。
【図15】(a)は特許文献2の従来技術のフィルタの設置図であり、(b)はそのフィルタの斜視図である。
【図16】(a)は特許文献3の従来技術のフィルタの断面図であり、(b)はそのフィルタの平面図である。
【図17】(a)は特許文献4の従来技術のフィルタの設置図であり、(b)は、そのフィルタの部分斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
101 空調ケース
105 送風機ケース
106 熱交換器ケース
120 送風ファン
130 熱交換器(エバポレータ)
170 フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口から吸入した空気を、車両の左右方向(幅方向)に水平に又は車両の上下方向に垂直に流す第1通風路(101a)と、前記第1通風路からの空気流の流れの方向を略90°変えて、吹出口に向かって送出する第2通風路(101b)が形成されている空調ケース(101)と、
前記空調ケース内に配置され、前記吸入口から吸入した空気を前記第1通風路に向けて車両の左右方向又は上下方向に送出する送風ファン(120)と、
前記空調ケース(101)内であって、前記送風ファン(120)に対して車両の左右方向又は上下方向に並んで設けられ、かつ前記第2通風路内に配置される熱交換器(130)と、
前記第2通風路内であって、前記熱交換器(130)の上流側に配置されるフィルタ(170)と、
を備える車両用空調装置において、
前記フィルタ(170)は、フィルタ通過空気の風速に対して前記フィルタの通気抵抗が前記送風ファン(120)に近い側を小さくし、前記送風ファン(120)から離れるに伴って大きくなるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記フィルタ(170)がひだ折り形状に折り込まれていて、折りひだピッチ(P)が、前記送風ファン(120)に近い側がフィルタの通気抵抗が最も小さい最適ピッチ(Po)であり、前記送風ファン(120)から離れるに伴って最適ピッチ(Po)よりも大きく又は小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記折りひだピッチ(P)が複数段階に分けられていて、各段階においては、前記折りひだピッチ(P)は同じにされていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記折りひだピッチ(P)が無段階に徐々に大きく又は小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記フィルタ(170)がひだ折り形状に折り込まれていて、空気流れ上流側では、各折りひだの山の頂部位置が車両の左右方向に水平な平面又は車両の上下方向の垂直な平面から同じ高さ位置にあり、前記熱交換器側では、各折りひだの谷の底部位置が異なる高さ位置にあり、前記送風ファン(120)に近い側が折りひだの山高さ(h)が高く、前記送風ファン(120)から離れるに伴って前記折りひだの山高さ(h)が低くなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記折りひだの山高さ(h)が複数段階に分けられていて、各段階においては前記折りひだの山高さ(h)が同じにされていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記折りひだの山高さ(h)が無段階に徐々に低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記フィルタ(170)を構成するろ材の目付け量(M)を前記送風ファン(120)に近い側を小さくし、前記送風ファン(120)から離れるに伴って大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記ろ材の目付け量(M)が複数段階に分けられていて、各段階においては目付け量が同じにされていることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記ろ材の目付け量(M)が無段階に徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記熱交換器(130)の空気流れ上流側であって、前記熱交換器(130)と対向する前記空調ケース(101)の壁面(106c)が、前記熱交換器(130)と平行に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項1】
吸入口から吸入した空気を、車両の左右方向(幅方向)に水平に又は車両の上下方向に垂直に流す第1通風路(101a)と、前記第1通風路からの空気流の流れの方向を略90°変えて、吹出口に向かって送出する第2通風路(101b)が形成されている空調ケース(101)と、
前記空調ケース内に配置され、前記吸入口から吸入した空気を前記第1通風路に向けて車両の左右方向又は上下方向に送出する送風ファン(120)と、
前記空調ケース(101)内であって、前記送風ファン(120)に対して車両の左右方向又は上下方向に並んで設けられ、かつ前記第2通風路内に配置される熱交換器(130)と、
前記第2通風路内であって、前記熱交換器(130)の上流側に配置されるフィルタ(170)と、
を備える車両用空調装置において、
前記フィルタ(170)は、フィルタ通過空気の風速に対して前記フィルタの通気抵抗が前記送風ファン(120)に近い側を小さくし、前記送風ファン(120)から離れるに伴って大きくなるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記フィルタ(170)がひだ折り形状に折り込まれていて、折りひだピッチ(P)が、前記送風ファン(120)に近い側がフィルタの通気抵抗が最も小さい最適ピッチ(Po)であり、前記送風ファン(120)から離れるに伴って最適ピッチ(Po)よりも大きく又は小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記折りひだピッチ(P)が複数段階に分けられていて、各段階においては、前記折りひだピッチ(P)は同じにされていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記折りひだピッチ(P)が無段階に徐々に大きく又は小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記フィルタ(170)がひだ折り形状に折り込まれていて、空気流れ上流側では、各折りひだの山の頂部位置が車両の左右方向に水平な平面又は車両の上下方向の垂直な平面から同じ高さ位置にあり、前記熱交換器側では、各折りひだの谷の底部位置が異なる高さ位置にあり、前記送風ファン(120)に近い側が折りひだの山高さ(h)が高く、前記送風ファン(120)から離れるに伴って前記折りひだの山高さ(h)が低くなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記折りひだの山高さ(h)が複数段階に分けられていて、各段階においては前記折りひだの山高さ(h)が同じにされていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記折りひだの山高さ(h)が無段階に徐々に低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記フィルタ(170)を構成するろ材の目付け量(M)を前記送風ファン(120)に近い側を小さくし、前記送風ファン(120)から離れるに伴って大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記ろ材の目付け量(M)が複数段階に分けられていて、各段階においては目付け量が同じにされていることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記ろ材の目付け量(M)が無段階に徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記熱交換器(130)の空気流れ上流側であって、前記熱交換器(130)と対向する前記空調ケース(101)の壁面(106c)が、前記熱交換器(130)と平行に形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−331739(P2007−331739A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342973(P2006−342973)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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