説明

車両用空調装置

【課題】空調用ケースの空気通路を流れる空気の圧力損失を低下させることにより、大風量を確保して快適な空調を行えるようにするとともに、通風時の騒音を低下させて車室の静粛性を高める。
【解決手段】冷却用熱交換器3を収容する空調用ケース9に、空気の導入口と吹出口41a、42aを形成する。空調用ケース9の内部には空気通路Aを形成する。空気通路Aに、冷却用熱交換部3を配置する。冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向を空気通路Aの幅方向と一致させる。冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向の寸法を400mm以上に設定する。空気通路Aの最小面積部A1の寸法をTmとし、冷却用熱交換部3の空気通過面の寸法をTeとしたとき、Tm/Teの値を0.27以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置は、車室の前端部に配設されたインストルメントパネルの内部に収容されている(例えば、特許文献1参照)。この空調装置は、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を収容する空調用ケースを備えている。空調用ケースには、空調用空気を導入するための導入口と、空調風が吹き出す吹出口とが形成されている。空調用ケースの内部には、導入口から吹出口まで延びる空気通路が形成され、この空気通路の途中に上記冷却用及び加熱用熱交換器が空気流れ方向に並んで配置されている。そして、上記導入口から空気通路に導入された空調用空気が冷却用及び加熱用熱交換器を通過することで空調風となり、この空調風が吹出口から吹き出して車室の各部に供給されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−254921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の空調装置のように空調用空気を空調用ケースに導入して空気通路を経て吹出口から吹き出させるようにした場合には、空調用ケース内の空気の流れにおいて管路抵抗によって圧力損失が発生するのは避けられない。この圧力損失が大きいと、十分な風量が得られずに快適な空調を行えない虞れがあるとともに、特に大風量時に騒音が大きくなって車室の静粛性が損なわれてしまう。
【0004】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空調用ケースの空気通路を流れる空気の圧力損失を低下させることにより、大風量を確保して快適な空調を行えるようにするとともに、通風時の騒音を低下させて車室の静粛性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、車両に搭載される車両用空調装置であって、熱交換器によって構成された熱交換部と、上記熱交換部を収容する空調用ケースとを備え、上記空調用ケースには、空気の導入口と吹出口とが形成されるとともに、内部に上記導入口と上記吹出口とを連通させるように延びる空気通路が形成され、上記熱交換部は、その空気通過面の幅方向を上記空気通路の幅方向と一致させた状態で、該空気通路に配置され、上記空気通過面の幅方向の寸法が400mm以上に設定され、上記空気通路は、上記熱交換部よりも下流側の領域において最も小さい流路断面積の最小断面積部を有し、この最小面積部の流路断面の幅方向に直交する方向の寸法をTmとし、上記空気通過面の幅方向に直交する方向の寸法をTeとしたとき、Tm/Teの値が0.27以上に設定されている構成とする。
【0006】
この構成によれば、空調用ケースの導入口から空気通路に導入された空気は、空気通路を流れて熱交換部を通過した後、吹出口から吹き出す。空気が空気通路を流れるとき、熱交換部の空気通過面の幅方向の寸法(We)が400mm以上に設定されているので、Weを変化させていったときの空気通路の圧力損失係数の変化をシミュレーションして示す図7から明らかなように、空気通路を流れる空気の圧力損失が十分に低くなる。さらに、Tm/Teの値が0.27以上に設定されているので、Tm/Teの値を変化させていったときの圧力損失係数の変化をシミュレーションして示す図8及び図9から明らかなように、空気通路を流れる空気の圧力損失が十分に低くなる。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、Tm/Teの値が0.40以上に設定されている構成とする。
【0008】
この構成によれば、図8及び図9に示すシミュレーションの結果より、空気通路の流れる空気の圧力損失をより一層低くすることが可能になる。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、空気通路には、冷却用熱交換器によって構成された冷却用熱交換部と加熱用熱交換器によって構成された加熱用熱交換部とが空気流れ方向に並んで配置され、上記両熱交換部の空気通過面の幅方向の寸法が400mm以上に設定されている構成とする。
【0010】
この構成によれば、2つの熱交換部を空気通路に並べて配置したことによる圧力損失の上昇を小さくすることが可能になる。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、空調用ケースは、車室のインストルメントパネル内部において熱交換部の幅方向が車両の幅方向と一致するように、かつ、車両の助手席側に偏位して配置される構成とする。
【0012】
この構成によれば、インストルメントパネル内部の運転席側にスペースを確保することが可能になる。
【0013】
請求項5の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、空調用ケースは、車室のインストルメントパネル内部において熱交換部の幅方向が車両の幅方向と一致するように、かつ、車両幅方向中央部に配置され、上記空調用ケースの車両幅方向両側には、乗員の足下に空調風が吹き出すフット吹出口がそれぞれ形成されている構成とする。
【0014】
この構成によれば、空調用ケースの幅方向両側のフット吹出口から運転席乗員及び助手席乗員の各足下に空調風が吹き出す。
【0015】
請求項6の発明では、請求項4の発明において、空調用ケースには、インストルメントパネルに設けられたインパネダクトの上流端開口と吹出口とを接続する中間ダクトが取り付けられる構成とする。
【0016】
すなわち、空調用ケースを車両の助手席側に偏位して配置する際には、右ハンドル車と左ハンドル車とで空調用ケースの位置が異なることから、吹出口の位置も異なる場合がある。この場合に、空調用ケースを変更することなく、中間ダクトのみを右ハンドル車用のものと左ハンドル車用のものとに変更することで吹出口とインパネダクトとの接続が可能になる。
【0017】
請求項7の発明では、請求項4から6のいずれか1つの発明において、空調用ケースには、インストルメントパネル内部に配置された車両搭載機器を避ける凹部が形成されている構成とする。
【0018】
この構成によれば、車両搭載機器を避けて空調用ケースを配置することが可能になる。
【0019】
請求項8の発明では、請求項1から7のいずれか1つの発明において、送風機が、空調用ケースの幅方向中間部に配置されている構成とする。
【0020】
請求項9の発明では、請求項1から7のいずれか1つの発明において、送風機が、空調用ケースの側方に配置されている構成とする。
【0021】
請求項10の発明では、請求項1から9のいずれか1つに記載の発明において、熱交換部は、空気通路の幅方向に複数の熱交換器を並設して構成されているものとする。
【0022】
この構成によれば、空気通過面の幅方向の寸法が400mm以上という幅の広い熱交換部を、幅の狭い複数の熱交換器を組み合わせて構成することが可能になる。幅の狭い熱交換器においては、幅の広い熱交換器に比べて各々の空気通過面の温度分布を容易に均一化することが可能であり、ひいては、熱交換部の空気通過面の温度分布の均一化が可能になる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、熱交換部の空気通過面の幅方向の寸法を400mm以上とし、さらに、空気通路の最小断面積部の流路断面において幅方向に直交する方向の寸法Tmを、上記空気通過面の幅方向に直交する方向の寸法Teで除した値を0.27以上としたので、空気通路を流れる空気の圧力損失を十分に低くすることができる。これにより、大風量を確保して快適な空調を実現できるとともに、通風時の騒音を低下させて車室の静粛性を高めることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、Tm/Teの値を0.40以上としたので、空気通路を流れる空気の圧力損失をより一層低くできる。
【0025】
請求項3の発明によれば、空気通路に冷却用熱交換部及び加熱用熱交換部を空気流れ方向に並べて配置し、これらの空気通過面の幅方向の寸法を400mm以上としたので、2つの熱交換部を設けた場合の圧力損失を低く抑えることができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、空調用ケースをインストルメントパネル内部の助手席側に偏位して配置したので、熱交換部の幅方向の寸法を400mm以上として幅広な熱交換部とした場合に、運転席乗員が運転操作を行うためのスペースを確保できる。
【0027】
請求項5の発明によれば、空調用ケースを車両の幅方向中央部に配置し、この空調用ケースの幅方向両側にフット吹出口をそれぞれ形成したので、運転席乗員及び助手席乗員の各足下に同じように空調風を供給することができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、空調用ケースにインパネダクトと吹出口とを接続する中間ダクトを取り付けるようにしたので、右ハンドル車と左ハンドル車とで空調用ケースを共通化してコスト低減を図ることができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、インストルメントパネル内に配置された車両搭載機器と空調用ケースとの干渉を回避することができる。
【0030】
請求項8の発明によれば、フルセンタタイプの空調装置とすることができる。
【0031】
請求項9の発明によれば、セミセンタタイプの空調装置とすることができる。
【0032】
請求項10の発明によれば、複数の熱交換器を並べて熱交換部を構成したので、熱交換部の空気通過面の温度分布を容易に均一化できる。これにより、空調用ケースの吹出口から吹き出す空気の温度分布を均一化でき、より快適な空調を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用空調装置1を示すものである。この車両用空調装置1は、乗用自動車の車室の前端部に配設されたインストルメントパネルIP(図2に仮想線で示す)の内部に収容され、該インストルメントパネルIP及び車体のダッシュパネルDPに固定されるようになっている。この自動車は、車両右側にステアリングホイールが配設された右ハンドル車である。尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、また、車両後側を単に「後」といい、また、車幅方向左側を単に「左」といい、また、車幅方向右側を単に「右」というものとする。
【0035】
上記空調装置1は、送風ファン2と、冷却用熱交換器Eによって構成された冷却用熱交換部3と、加熱用熱交換器Hによって構成された加熱用熱交換部4と、これらを収容する空調用ケース9とを備えており、送風ファン2、冷却用熱交換部3及び加熱用熱交換部4が空調用ケース9の幅方向である左右方向略中央部に配置されて集約された、いわゆるフルセンタタイプの空調装置である。空調用ケース9は、図3及び図4に示すように、左側ケース構成部材9aと、右側ケース構成部材9bと、底部構成部材9cとを組み合わせてなる。これら左側ケース構成部材9a、右側ケース構成部材9b及び底部構成部材9cは樹脂製である。図3〜図5に示すように、上記左側ケース構成部材9aと、右側ケース構成部材9bとの分割面は、空調用ケース9の左右方向略中央部に位置している。また、左側ケース構成部材9a及び右側ケース構成部材9bと、底部構成部材9cとの分割面は、空調用ケース9の下部に位置している。
【0036】
上記空調用ケース9の前部上側には、左右両側に空調用ケース9の一部を構成するインテーク部6がそれぞれ設けられている。各インテーク部6は、車室外の空気と、車室内の空気との一方を選択して空調用ケース9内に導入するためのものである。図3に示すように、インテーク部6の前壁部には、矩形状の外気導入口10が形成されている。この外気導入口10は、ダッシュパネルDPの上部に配設されているカウル(図示せず)に形成された開口に接続されるようになっている。
【0037】
図1に示すように、各インテーク部6の側壁部には、内気導入口11が形成されている。インテーク部6の内部には、図示しないが、内外気切替ドアが設けられている。この内外気切替ドアは、内気導入口11及び外気導入口10の形状に対応する板状に形成されている。この内外気切替ドアは、図示しない内外気切替用アクチュエータにより作動するようになっている。
【0038】
上記内外気切替用アクチュエータにより内外気切替ドアを作動させて内気導入口11を全閉にすると、外気導入口10が全開になる。これにより、インテーク部6が外気導入モードとなり、インテーク部6には車室外の空気のみが取り入れられるようになる。一方、内外気切替用アクチュエータにより内外気切替ドアを作動させて内気導入口11を全開にすると、外気導入口10が全閉になる。これにより、インテーク部6が内気循環モードとなり、インテーク部6には車室内の空気のみが取り入れられるようになる。
【0039】
上記空調用ケース9の前部上側の左右方向略中央部には、空調用ケース9の一部を構成するファンハウジング14が一体に形成されている。図2に示すように、ファンハウジング14内には、上記送風ファン2が収容され、これらファンハウジング14及び送風ファン2により、送風機15が構成されている。送風ファン2は、多数のブレードを備えた周知の遠心式ファン(シロッコファン)であり、回転軸2aが略水平に左右方向に延びるように配置されている。この送風ファン2は、電動式の駆動モーター(図示せず)によって駆動されるようになっている。
【0040】
上記ファンハウジング14内における送風ファン2の外周には、送風ファン2のブレード間から該送風ファン2の周囲へ向けて吹き出した空気が集合する空気集合通路20が形成されている。この空気集合通路20は、始点である上流端部が送風ファン2の下端部近傍に位置しており、そこから送風ファン2の後方、上方、前方、下方へ順に周り込んでファン2の外周を取り巻くように延びている。従って、この空気集合通路20の終点である下流端部から吹き出す空気の吹出方向Yは、下方に向いている。空気集合通路20の流路断面積は、下流側へ行くほど拡大している。また、上記ファンハウジング14における空気集合通路20の上流端部に対応する部位には、ノーズ部21が形成されている。このノーズ部21は、送風ファン2に接近する方向に湾曲するように形成された湾曲部で構成されている。
【0041】
上記空調用ケース9内には、ファンハウジング14よりも下側に温度調節用通路22が形成されている。この温度調節用通路22の上流端部は、空調用ケース9内の前端部に位置しており、空気集合通路20の下流端部に接続されている。温度調節用通路22の上流側は、空気集合通路20の下流端部から下方へ向けて直線状に延びる流入部23と、この流入部23の下流端部から後方へ屈曲した後、上方へ向けて延びる屈曲通路部24とで構成されている。流入部23は、下側へ行くほど後方に位置するように若干傾斜している。図3に示すように、この流入部23の左右方向の寸法は下流側へ行くほど長くなるように設定されている。つまり、流入部23の流路断面積は下流側へ向かって拡大している。
【0042】
上記温度調節用通路22の屈曲通路部24は、後方へ屈曲しているため、上記空気集合通路20から吹き出す空気の吹出方向Yと交差する方向に延びている。屈曲通路部24の左右方向の寸法は、空調用ケース9の左右方向の内寸と一致しており、この屈曲通路部24の流路断面積は、上記流入部23の下流端部の流路断面積と略等しい。
【0043】
上記屈曲通路部24には、上記冷却用熱交換部3が屈曲通路部24を横切るように収容されている。冷却用熱交換部3を構成する冷却用熱交換器Eは、周知の冷凍サイクルの一要素を構成する冷媒蒸発器であり、上下方向に延びる多数のチューブ及びフィン(共に図示せず)を左右方向に交互に並べて一体化したコアE1と、コアE1の上端部及び下端部に設けられた第1ヘッダタンクE2及び第2ヘッダタンクE3とを備えている。チューブは空気の流れ方向である前後方向に長い断面形状を有する扁平状チューブである。また、フィンは、空気流れ方向に見て波型をなすコルゲートフィンである。これらチューブ、フィン及びヘッダタンクE2、E3は、アルミニウム合金製である。ヘッダタンクE2、E3の内部には、チューブを複数のパスに分けるための仕切部材(図示せず)が配設されている。このパスの数は、仕切部材の数や配設位置により任意に設定することができるようになっている。
【0044】
上記冷却用熱交換器Eの第1ヘッダタンクE2や第2ヘッダタンクE3には、図示しないが、冷媒流入口と冷媒流出口とが形成されている。上記冷却用熱交換器Eの冷媒流入口には、供給用クーラ配管(図示せず)の基端部が膨張弁を介して接続され、冷媒流出口には排出用クーラ配管(図示せず)の基端部が接続されている。これら供給用クーラ配管及び排出用クーラ配管の先端部は、ダッシュパネルDPに形成された貫通孔(図示せず)からエンジンルームに突出するように形成されている。供給用クーラ配管及び排出用クーラ配管の先端部には、エンジンルーム内の配管(図示せず)がそれぞれ接続され、これにより、冷却用熱交換器Eに冷媒が給排されるようになっている。
【0045】
上記冷却用熱交換部3の空気通過面は、上記冷却用熱交換器EのヘッダタンクE2、E3を除いたコアE1のみで構成されており、空気通過方向から見て略矩形状をなしている。冷却用熱交換部3は、その空気通過面の幅方向(チューブ及びフィンの並ぶ方向)を上記屈曲通路部24の幅方向(左右方向)と一致させた状態で、該屈曲通路部24に配置されており、この状態で、空気通過面は略鉛直方向に延び、上記第1ヘッダタンクE2及び第2ヘッダタンクE3が空調用ケース9に保持されている。冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向の寸法は、400mmに設定され、幅方向に直交する方向、即ち、上下方向の寸法は、200mmに設定されている。このように、本実施形態の冷却用熱交換部3は、空気通過面の左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも長い横長形状とされている。
【0046】
上記温度調節用通路22の下流側は、屈曲通路部24の下流端部から分岐して上方へ延びる加熱通路31とバイパス通路32とで構成されている。これら加熱通路31及びバイパス通路32の左右方向の寸法は、上記屈曲通路部24の左右方向の寸法と略同じに設定されている。加熱通路31は、前側へ湾曲しており、冷却用熱交換部3とファンハウジング14との間に位置している。この加熱通路31には、上記加熱用熱交換部4が加熱通路31を横切るように収容されている。
【0047】
上記加熱用熱交換部4を構成する加熱用熱交換器Hは、エンジン(図示せず)の冷却水が流通するヒーターコアであり、前後方向に延びるチューブ及びフィン(共に図示せず)を左右方向に交互に並べて一体化したコアH1と、コアH1の前端部及び後端部に設けられた第1ヘッダタンクH2及び第2ヘッダタンクH3とを備えている。
【0048】
上記加熱用熱交換器Hの第1ヘッダタンクH2や第1ヘッダタンクH3には、図示しないが、エンジンの冷却水の流入口と流出口とが形成されている。上記加熱用熱交換器Hの流入口には、供給用ヒータ配管(図示せず)の基端部が接続され、流出口には排出用ヒータ配管(図示せず)の基端部が接続されている。これら供給用ヒータ配管及び排出用ヒータ配管の先端部は、ダッシュパネルDPの貫通孔からエンジンルームに突出するように形成されている。供給用ヒータ配管及び排出用ヒータ配管の先端部には、エンジンルーム内の配管(図示せず)がそれぞれ接続され、これにより、加熱用熱交換器Hに冷却水が給排されるようになっている。
【0049】
上記加熱用熱交換部4の空気通過面は、上記加熱用熱交換器HのヘッダタンクH2、H3を除いたコアH1のみで構成されており、空気通過方向から見て略矩形状をなしている。加熱用熱交換部4は、その空気通過面の幅方向(チューブ及びフィンの並ぶ方向)を上記加熱通路31の幅方向(左右方向)と一致させた状態で、該加熱通路31に配置されており、この状態で、空気通過面は略水平方向に延び、上記第1ヘッダタンクH2及び第2ヘッダタンクH3が空調用ケース9に保持されている。加熱用熱交換部4の空気通過面の幅方向の寸法は、冷却用熱交換部3と同じ400mmに設定され、幅方向に直交する方向、即ち、前後方向の寸法は、150mmに設定されている。このように、本実施形態の加熱用熱交換部4は、上記冷却用熱交換部3と同様に横長形状とされている。尚、冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向の寸法と、加熱用熱交換部4の空気通過面の幅方向の寸法とは、同じにしてもよいし、異ならせてもよい。
【0050】
上記空調用ケース9内における加熱通路31の上流端部近傍には、加熱通路31の開度とバイパス通路32の開度とを変更するように構成されたエアミックスドア33が収容されている。このエアミックスドア33は、加熱通路31の上流端開口の形状に対応した板状をなしており、左右方向に延びる回動軸周りに回動するようになっている。回動軸には、図示しないが、エアミックスドア用アクチュエータの出力軸が連結されている。また、上記加熱通路31の下流端とバイパス通路32の下流端とは、冷風と温風とを混合させるためのエアミックス空間部34に連通している。
【0051】
上記エアミックスドア用アクチュエータによりエアミックスドア33を回動させて、図2に実線で示すように、加熱通路31の上流端部を全閉にすると、バイパス通路32の上流端部が全開とされる。この状態では、冷却用熱交換部3を通過した空気の全量が加熱通路31を通らずバイパス通路32に流入する。一方、エアミックスドア用アクチュエータによりエアミックスドア33を回動させて、図2に仮想線で示すように、加熱通路31の上流端部を全開にすると、バイパス通路32の上流端部が全閉とされる。この状態では、冷却用熱交換部3を通過した空気の全量が加熱通路31に流入して加熱用熱交換部4を通過する。
【0052】
上記エアミックスドア33が回動範囲の中間位置とされると、冷却用熱交換部3を通過した空気の一部が加熱通路31に流入し、残りがバイパス通路32に流入する。そして、エアミックス空間部34においては、加熱用熱交換部4を通過した温風と、冷却用熱交換部3のみを通過した冷風とが混ざり、調和空気が生成される。
【0053】
上記エアミックスドア33の回動角度は、調和空気の目標温度に応じて任意に設定することができるようになっている。つまり、このエアミックスドア33は、冷却用熱交換部3を通過した空気のうち、加熱用熱交換部4を通過する空気量と、加熱用熱交換部4をバイパスする空気量との比率を変更することで、調和空気の温度を変更するように構成されている。
【0054】
上記空調用ケース9内の上部後側には、調和空気を車室の各部に分配するための空気分配部40が設けられている。この空気分配部40は、ファンハウジング14に接近するように上方へ延びるデフロスタダクト41と、デフロスタダクト41の後側で上方へ延びるベントダクト42と、空調用ケース9の後側を下方へ延びるフットダクト43とを備えている。デフロスタダクト41の上流端部は、エアミックス空間部34に接続され、下流端部には、図5にも示すように、空気が吹き出すデフロスタ吹出口41aが開口している。このデフロスタ吹出口41aには、インストルメントパネルIPの裏面に取り付けられたデフロスタ用インパネダクト7の上流端開口が接続されるようになっている。このデフロスタ用インパネダクト7により、空調風がフロントウインドガラス(図示せず)の内面近傍まで導かれる。
【0055】
また、上記ベントダクト42の上流端部及びフットダクト43の上流端部は、互いに連通するように一体化された状態でエアミックス空間部34に接続されている。ベントダクト42の下流端部には、空気が吹き出すベント吹出口42aが開口している。このベント吹出口42aには、インストルメントパネルIPの裏面に取り付けられたベント用インパネダクト8の上流端開口が接続されるようになっている。このベント用インパネダクト8により、空調風が乗員の上半身近傍まで導かれる。上記デフロスタ吹出口41a及びベント吹出口42aは、空調用ケース9の上端部近傍に位置している。
【0056】
上記フットダクト43の下流側は、図1に示すように、空調用ケース9の右側に位置する運転席供給部43aと、左側に位置する助手席供給部43bと、左右方向略中央部に位置する後席供給部43cとに分岐している。図4に示すように、運転席供給部43aは、車室の運転席Dr(同図にのみ示す)側へ向けて延び、その下流端開口には、空気が吹き出すフット吹出口43dが開口している。また、助手席供給部43bは、車室の助手席Ps(同図にのみ示す)側へ向けて延び、その下流端開口には、同様にフット吹出口43dが開口している。つまり、空調用ケース9の左右方向両側に、乗員の足下に空調風が吹き出すフット吹出口43d、43dがそれぞれ形成されている。尚、図4に示す符号Fはフロアトンネルである。
【0057】
上記インテーク部6の内部空間、空気集合通路20、温度調節用通路22、エアミックス空間部34、デフロスタダクト41、ベントダクト42及びフットダクト43により、導入口10、11と吹出口41a、42a、43dとを連通させるように延びる空気通路Aが構成されている。
【0058】
また、図3及び図4に示すように、上記底部構成部材9cには、ドレン部16が設けられている。このドレン部16は、冷却用熱交換部4で発生した凝縮水を空調用ケース9の外部に排出するための排出通路(図示せず)を備えている。
【0059】
図2に示すように、空調用ケース9内におけるデフロスタダクト41の上流端部近傍には、第1吹出方向切替ドア45が設けられている。この第1吹出方向切替ドア45は、デフロスタダクト41の上流端部と、ベントダクト42及びフットダクト43の接続部分とを開閉するためのものである。また、空調用ケース9内におけるベントダクト42の上流端部とフットダクト43の上流端部との境界部分近傍には、第2吹出方向切替ドア46が設けられている。この第2吹出方向切替ドア46は、ベントダクト42の上流端部と、フットダクト43の上流端部とを開閉するためのものである。これら第1吹出方向切替ドア45及び第2吹出方向切替ドア46は、エアミックスドア33と同様に、図示しない吹出方向切替用アクチュエータにより回動するようになっている。
【0060】
上記第1吹出方向切替ドア45及び第2吹出方向切替ドア46をそれぞれ回動させることで、吹出モードが切り換えられるようになっている。例えば、第1吹出方向切替ドア45によりデフロスタダクト41の上流端部を閉じ、第2吹出方向切替ドア46によりベントダクト42の上流端部を閉じると調和空気がフットダクト43から吹き出すフットモードとなる。また、第1吹出方向切替ドア45によりデフロスタダクト41の上流端部を開き、ベントダクト42及びフットダクト43の接続部分を閉じると、調和空気がデフロスタダクト41から吹き出すデフロスタモードとなる。このように第1吹出方向切替ドア45及び第2吹出方向切替ドア46を回動させることにより、吹出モードがフット/デフモードや、バイレベルモードにも切り替えられるようになっている。
【0061】
次に、上記のように構成された空調装置1が作動状態にある場合について説明する。送風ファン2の回転により、外気導入口10または内気導入口11から各インテーク部6内に取り入れられた空気は、送風ファン2のブレード間から空気集合通路20に放射状に吹き出す。空気集合通路20に吹き出した空気は、該空気集合通路20で一方向にまとめられる。この空気集合通路20の空気は、図2に示すY方向に流れて温度調節用通路22の流入部23に流入し屈曲通路部24を通って、冷却用熱交換部3を通過する。冷却用熱交換部3を通過した空気は、エアミックスドア33の開度によって加熱通路31ないしバイパス通路32を流れた後、吹出モードに応じてデフロスタダクト41や、ベントダクト42、フットダクト43を経て車室の各部に供給される。このように送風ファン2によって送風された空気が空気通路Aを流れる際には、管路抵抗によって圧力損失が生じる。
【0062】
ここで、上記空調装置1の空気通路Aの一部に対応する仮想モデルMを用いてコンピュータによる圧力損失に関するシミュレーションを行った結果について、図7〜図9に基づいて説明する。モデルMの形状は、図6に示すように、フルクールモードの場合におけるノーズ部21近傍部位からベント吹出口42aまで延びる空気通路Aの概略形状となっている。尚、フルクールモードとは、一般に、夏場の炎天下のように最大の冷房能力が要求される状況で選択され、大風量が必要とされるモードである。すなわち、フルクールモードでは、エアミックスドア33により加熱通路31が全閉とされ、かつ、吹出モードがベントモードとされ、さらに、送風ファン2が最大回転数で回転している。また、シミュレーションに用いるソフトウェアは、従来より圧力損失係数を得る際に用いられているものである。
【0063】
上記空調装置1がフルクールモードにある場合、空気通路Aには、冷却用熱交換部3よりも下流側の領域において最も小さい流路断面積を有する最小断面積部A1(図2に実践で、図6に仮想線で示す)が、エアミックス空間部34に存在する。この最小断面積部A1の位置は、空調用ケース9の形状や、吹出モードにより異なる。尚、シミュレーションを行うにあたり、最小断面積部A1の流路断面の幅方向に直交する方向の寸法をTm(図2に示す)とし、また、上記冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向に直交する方向の寸法をTe(図2に示す)としている。
【0064】
まず、図7に基づいて、上記冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向の寸法(We)を変化させていったときの空気通路A1における圧力損失係数の変化について説明する。この図7におけるタイプAとは、モデルMのベース形状であり、タイプB〜EはモデルMの形状を若干変化させたものである。これら各々についてシミュレーションを行った結果、全タイプに共通して、Weが250mmや350mmでは圧力損失係数が高く、400mm以下になると、250mmのものや350mmのものに比べて十分に低い値となる。Weが450mmでは、さらに低い値となる。つまり、Weが400mm以下では、圧力損失係数が十分に低い値となることが分かり、この結果に基づいて、本実施形態では、冷却用熱交換部3の幅方向の寸法Weを400mmとしている。尚、このシミュレーションの各タイプにおいて、冷却用熱交換部3の空気通過面の面積がタイプ間で互いに同じ値となるようにWeとTeの寸法を設定しており、従って、Weが長くなるほどTeが短くなって空気通過面の形状が長細い形状となる。また、Weの上限値は、乗用自動車への搭載性を考慮すると、650mm以下が好ましく、さらには、インストルメントパネルIP内部に配設されている他の装置や部品との干渉を考慮すると、500mm以下が好ましい。
【0065】
次に、図8及び図9に基づいて、Tm/Teの値を変化させていったときの空気通路Aにおける圧力損失係数の変化について説明する。図8は、Weが250mm、350mm、400mm及び450mmである場合のシミュレーション結果を示している。また、図9は、Weが400mm、450mm、550mm及び650mmである場合のシミュレーション結果を、図8に示すグラフよりも縦軸のスケールを拡大して示している。
【0066】
これらシミュレーション結果から明らかなように、Tm/Teが0.27以上になると、0.27よりも小さいものに比べて十分に低い値となる。この結果に基づいて、本実施形態では、Tm/Teの値を0.27としている。また、Tm/Teが0.4以下では、さらに低い値となる。さらに、このシミュレーション結果より、Weが長いほど、圧力損失が低くなる傾向にあることも分かる。尚、このシミュレーションにおいも、冷却用熱交換部3の空気通過面の面積は、同じ値となるようにWeとTeの寸法を設定している。また、Tm/Teの上限値としては、0.90が好ましく、さらには、0.70が好ましい。
【0067】
以上説明したように、この実施形態1に係る車両用空調装置1によれば、冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向の寸法Weを400mmとし、さらに、空気通路Aの最小断面積部A1の流路断面において幅方向に直交する方向の寸法Tmを、冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向に直交する方向の寸法Teで除した値(Tm/Te)を0.27としたので、空気通路Aを流れる空気の圧力損失を十分に低い値にすることができる。これにより、大風量を確保して快適な空調を実現できるとともに、通風時の騒音を低下させて車室の静粛性を高めることができる。
【0068】
このように本実施形態の空調装置1では、圧力損失を小さくできるので、風量を低下させることなく空気通路Aの流路断面積を小さくできる。その結果、空調用ケース9を小型化して軽量化を図ることができるとともに、車室における空調装置搭載用スペースも縮小でき、乗員用空間を広くすることができる。
【0069】
また、空気通路Aに冷却用熱交換部3及び加熱用熱交換部4を空気流れ方向に並べて配置し、これらの空気通過面の幅方向の寸法を共に400mmとしている。従って、加熱通路31に空気が流れるモードにおいても、同様に圧力損失係数を低い値にすることができる。これにより、2つの熱交換部3、4を設けた場合に、流れる空気の圧力損失を小さくすることができる。
【0070】
また、空調用ケース9を車両の左右方向中央部に配置し、この空調用ケース9の左右方向両側にフット吹出口43d、43dをそれぞれ形成したので、運転席乗員及び助手席乗員の各足下に同じように空調風を供給することができる。
【0071】
尚、Weの値は400mmに限られるものではなく、圧力損失が十分に小さくなる400mm以上で650mm以下の範囲であれば任意の値に設定することができる。また、同様に、Tm/Teの値は圧力損失が十分に小さくなる0.27以上で0.90以下の範囲であれば任意の値に設定することができ、例えば、0.40以上とすることで、空気通路Aを流れる空気の圧力損失をより一層低くできる。
【0072】
また、上記実施形態1では、冷却用熱交換部3は、空気通過面が上下方向に延びるように縦置きしているが、例えば、図10に示す変形例1のように、空気通過面が略水平に延びるように横置きするようにしてもよい。また、加熱用熱交換部4は、同図に示すように、空気通過面が傾斜して延びるように傾斜配置してもよい。この変形例1では、冷却用熱交換部3の空気流れ上流側にエアフィルタ49が配設されている。
【0073】
また、上記実施形態1では、ファンハウジング14を空調用ケース9の左右方向略中央部に配置しているが、これに限らず、例えば、図11に示す変形例2のように、空調用ケース9の左側寄りに配置してもよい。これにより、ファンハウジング14の右側にスペースを形成することができ、インストルメントパネルIP内部の車両搭載機器と空調装置1との干渉を防止できる。図示しないが、ファンハウジング14を右側寄りに配置してもよく、この場合には、ファンハウジング14の左側にスペースを形成することができる。
【0074】
また、上記実施形態1では、インテーク部6を空調用ケース9の左右両側にそれぞれ設けているが、これに限らず、例えば、図12に示す変形例3のように、1つに統合して空調用ケース9の左側に設けるようにしてもよい。この場合、図13に示す変形例4のように、インテーク部6の左縁部が空調用ケース9の本体部分から左側へ突出しないように、インテーク部6の位置を設定するようにしてもよい。こうすることで、空調装置1の搭載作業性を良好にすることができる。インテーク部6を1つに統合する場合、空調用ケース9の右側に設けてもよい。
【0075】
また、図14に示す変形例5のように、冷却用熱交換部3を、空気通過面が傾斜して延びるように傾斜配置してもよい。
【0076】
また、図15に示す変形例6のように、加熱通路31をバイパス通路32の後側に配置することにより、加熱用熱交換部4を冷却用熱交換部3の後方に配置してもよい。
【0077】
また、例えば、図16及び図17にそれぞれ示す変形例7及び8のように、エアミックスドア33と、吹出方向切替ドアの一方とをそれぞれロータリタイプのドアで構成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態1では、送風機15を熱交換部3、4の上方に配置しているが、例えば、図18及び図19にそれぞれ示す変形例9及び10のように、熱交換部3、4の前方に配置するようにしてもよい。変形例10では、エアミックスドア33を省略しており、冷却用熱交換部3を通過した空気の全量が加熱用熱交換部4も通過するようになっている。この場合、図示しないが、供給用ヒータ配管には、流量制御弁が設けられており、この流量制御弁により加熱用熱交換部4に流入するエンジン冷却水の流量を調節することで、空調風の温度調節が行われるようになっている。
【0079】
また、図20に示す変形例11のように、空調装置1には、インストルメントパネルIPのデフロスタ用インパネダクト7とデフロスタ吹出口41aとを接続するデフロスタ中間ダクト50と、ベント用インパネダクト8とベント吹出口42aとを接続するベント中間ダクト51とを設けてもよい。この変形例11では、図示しないが、空調用ケース9は、その左右方向中心部が車両の左右方向中心部よりも左側、即ち助手席側に偏位して配置されている。このように空調用ケース9を助手席側に偏位させていることから、右ハンドル車と左ハンドル車とでは、空調用ケース9の位置が異なり、従って、デフロスタ吹出口41a及びベント吹出口42aの位置も異なる。一方、インストルメントパネルIPのデフロスタ用インパネダクト7及びベント用インパネダクト8の上流端開口の位置は、右ハンドル車と左ハンドル車とで変更されることはなく、互いに同じ位置とされている。このような場合に、中間ダクト50、51を設けることで、空調用ケース9の形状を変更することなく、空調用ケース9よりも小型の中間ダクト50、51のみを右ハンドル車用のものと左ハンドル車用のものとに変更することで容易に対応できる。これにより、右ハンドル車と左ハンドル車とで空調用ケース9を共通化してコスト低減を図ることができる。
【0080】
また、変形例11おいて、右ハンドル車用の中間ダクト50、51と、左ハンドル車用の中間ダクト50、51とを共通の成形型で製造するようにしてもよい。この場合、成形時に、中間ダクト50、51に、右ハンドル車用の接続用開口と左ハンドル車用の接続用開口とを設けておく。そして、中間ダクト50、51を右ハンドル車に取り付ける場合には、左ハンドル車用の接続用開口を閉塞部材(図示せず)でそれぞれ閉塞する。その後、デフロスタ中間ダクト50の右ハンドル車用の接続用開口とデフロスタ吹出口41aとを接続するとともに、ベント中間ダクト51の右ハンドル車用の接続用開口とベント吹出口42aとを接続する。閉塞部材は、中間ダクト50、51に溶着するようにしてもよいし、ネジ等の締結部材(図示せず)により締結固定するようにしてもよい。また、右ハンドル車用の中間ダクト50、51と、左ハンドル車用の中間ダクト50、51とを共通の成形型で製造する場合に、右ハンドル車用の接続用開口のみを形成するための右ハンドル車用の入れ子と、左ハンドル車用の接続用開口のみを形成するための左ハンドル車用の入れ子とを用意しておき、これら入れ子によって、右ハンドル車用と左ハンドル車用とに対応するようにしてもよい。
【0081】
(実施形態2)
図21及び図22は、本発明の実施形態2に係る車両用空調装置1を示すものである。この実施形態2の空調装置1は、送風機15が空調用ケース9の左側方に配置されている、いわゆるセミセンタタイプである点で実施形態1のものと異なっている。
【0082】
すなわち、ファンハウジング14は、空調用ケース9における熱交換部3、4を収容する本体部分から左側へ離れて配置されている。空調用ケース9の本体部分の内部には、前端部にファンハウジング14から吹き出した空気が流れる導入通路60が左右方向に延びるように形成されている。この導入通路60内の空気が、冷却用熱交換部3を通過するようになっている。図示しないが、ファンハウジング14の上部には、インテーク部が設けられている。
【0083】
この実施形態2に係る車両用空調装置1によっても、実施形態1のものと同様にWe及びTm/Teの値を設定しており、従って、空気通路Aを流れる空気の圧力損失を十分に低い値にすることができる。これにより、大風量を確保して快適な空調を実現できるとともに、通風時の騒音を低下させて車室の静粛性を高めることができる。
【0084】
また、上記実施形態2では、導入通路60を空調用ケース9の前端部に設けたが、例えば、図23及び図24に示す変形例1のように、空調用ケース9側の下端部に設けるようにしてもよい。この変形例では、フットダクトを省略している。
【0085】
また、図25に示す変形例2のように、空調用ケース9の左側の上部に凹部61を形成してもよい。この凹部61は、インストルメントパネルIP内部に配置された車両搭載機器62を避けるためのものであり、この凹部61によって該車両搭載機器62の外面と空調用ケース9の外面との間には、走行時の振動等によって接触しない程度の隙間が確保されるようになっている。凹部61は、空調用ケース9の右側に設けるようにしてもよいし、左右両側に設けるようにしてもよい。上記車両搭載機器62としては、例えば、助手席用エアバッグ装置、ナビゲーション装置、物品収納ボックス等が挙げられる。
【0086】
また、実施形態2において、空調用ケース9の左右方向中心部と車両の左右方向中心部とを一致させるようにしてもよいし、空調用ケース9の左右方向中心部を助手席側に偏位させるようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態1、2では、冷却用熱交換部3を1つの横長形状の冷却用熱交換器Eで構成しているが、これに限らず、複数の冷却用熱交換器Eを空気通路Aの幅方向(左右方向)に並設して構成するようにしてもよい。このようにすることで、空気通過面の幅方向の寸法が400mm以上という幅の広い冷却用熱交換部3を、幅の狭い複数の熱交換器Eを組み合わせて構成することが可能になる。空気通過面の幅方向の寸法が400mm未満の幅の狭い熱交換器Eにおいては、幅の広い熱交換器Eに比べて、各熱交換器Eの空気通過面の温度分布を容易に均一化することが可能である。その結果、冷却用熱交換部3の空気通過面の温度分布が均一化し、よって、空調用ケース9の吹出口41a、42a、43dから吹き出す空気の温度分布を均一化でき、より快適な空調を実現できる。また、チューブアンドフィンタイプの熱交換器Eでは、幅が広いと、その分、チューブの本数やフィンの数が増えることになって、部品点数が増加するとともに各部の接合箇所が増える。このため、幅の広い熱交換器Eの製造は難しくなることが考えられるが、上記のように1つの冷却用熱交換器Eの幅を狭くすることで、冷却用熱交換器Eを容易に製造することができる。この場合、冷却用熱交換器Eの数は、2つが好ましいが3つ以上であってもよい。また、加熱用熱交換部4についても、上記冷却用熱交換部3と同様に、複数の加熱用熱交換器Hで構成してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、冷却用熱交換部3の空気通過面の幅方向の寸法と、加熱用熱交換部4の空気通過面の幅方向の寸法とを共に400mm以上としているが、一方を400mmよりも短くしてもよい。この場合、冷房性能に殆ど影響しない加熱用熱交換部4の空気通過面の幅方向の寸法を400mmよりも短くするのが好ましい。
【0089】
また、本発明は、左ハンドル車に搭載される空調装置にも適用できる。
【0090】
さらに、本発明は、車室の運転席ゾーンと助手席ゾーンとを個別に空調する左右独立温度調整タイプの空調装置に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば、乗用自動車の車室に配設されたインストルメントパネル内部に搭載するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施形態1に係る車両用空調装置を左側上方から見た図である。
【図2】空調装置の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】空調装置の正面図である。
【図4】空調装置を後側から見た図である。
【図5】空調装置の平面図である。
【図6】シミュレーションに用いる空気通路のモデルの形状を示す図である。
【図7】Weと圧力損失係数との関係を示すグラフである。
【図8】Weが250mmから450mmにある場合において、Tm/Teと圧力損失係数との関係を示すグラフである。
【図9】Weが400mmから650mmにある場合において、Tm/Teと圧力損失係数との関係を示すグラフである。
【図10】実施形態1の変形例1に係る図2相当図である。
【図11】実施形態1の変形例2に係る図3相当図である。
【図12】実施形態1の変形例3に係る図3相当図である。
【図13】実施形態1の変形例4に係る図3相当図である。
【図14】実施形態1の変形例5に係る図2相当図である。
【図15】実施形態1の変形例6に係る図2相当図である。
【図16】実施形態1の変形例7に係る図2相当図である。
【図17】実施形態1の変形例8に係る図2相当図である。
【図18】実施形態1の変形例9に係る図2相当図である。
【図19】実施形態1の変形例10に係る図2相当図である。
【図20】実施形態1の変形例11に係る図2相当図である。
【図21】実施形態2に係る空調装置の図5相当図である。
【図22】実施形態2に係る空調装置の図2相当図である。
【図23】実施形態2の変形例1に係る図5相当図である。
【図24】実施形態2の変形例1に係る図2相当図である。
【図25】実施形態2の変形例2に係る図4相当図である。
【符号の説明】
【0093】
1 車両用空調装置
3 冷却用熱交換部
4 加熱用熱交換部
7 デフロスタ用インパネダクト
8 ベント用インパネダクト
9 空調用ケース
10 外気導入口
11 内気導入口
15 送風機
41a デフロスタ吹出口
42a ベント吹出口
43d フット吹出口
50 デフロスタ中間ダクト
51 ベント中間ダクト
61 凹部
62 車両搭載機器
A 空気通路
A1 最小断面積部
E 冷却用熱交換器
H 加熱用熱交換器
IP インストルメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用空調装置であって、
熱交換器によって構成された熱交換部と、
上記熱交換部を収容する空調用ケースとを備え、
上記空調用ケースには、空気の導入口と吹出口とが形成されるとともに、内部に上記導入口と上記吹出口とを連通させるように延びる空気通路が形成され、
上記熱交換部は、その空気通過面の幅方向を上記空気通路の幅方向と一致させた状態で、該空気通路に配置され、
上記空気通過面の幅方向の寸法が400mm以上に設定され、
上記空気通路は、上記熱交換部よりも下流側の領域において最も小さい流路断面積の最小断面積部を有し、この最小面積部の流路断面の幅方向に直交する方向の寸法をTmとし、上記空気通過面の幅方向に直交する方向の寸法をTeとしたとき、
Tm/Teの値が0.27以上に設定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
Tm/Teの値が0.40以上に設定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
空気通路には、冷却用熱交換器によって構成された冷却用熱交換部と加熱用熱交換器によって構成された加熱用熱交換部とが空気流れ方向に並んで配置され、
上記両熱交換部の空気通過面の幅方向の寸法が400mm以上に設定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
空調用ケースは、車室のインストルメントパネル内部において熱交換部の幅方向が車両の幅方向と一致するように、かつ、車両の助手席側に偏位して配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
空調用ケースは、車室のインストルメントパネル内部において熱交換部の幅方向が車両の幅方向と一致するように、かつ、車両幅方向中央部に配置され、
上記空調用ケースの車両幅方向両側には、乗員の足下に空調風が吹き出すフット吹出口がそれぞれ形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
空調用ケースには、インストルメントパネルに設けられたインパネダクトの上流端開口と吹出口とを接続する中間ダクトが取り付けられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
空調用ケースには、インストルメントパネル内部に配置された車両搭載機器を避ける凹部が形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
送風機が、空調用ケースの幅方向中間部に配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
送風機が、空調用ケースの側方に配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
熱交換部は、空気通路の幅方向に複数の熱交換器を並設して構成されていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−126802(P2008−126802A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313054(P2006−313054)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】