説明

車両用空調装置

【課題】コンプレッサの駆動を抑える省動力化を可能としながら、ウインドガラスの防曇を行なう。
【解決手段】エアコンECUは、イグニッションスイッチがオンされると、走行開始判定フラグFsをリセットした後、車速を検出し、車速が設定速度を超えると走行開始判定フラグをセットする(ステップ100〜106)。これと並行して、DEFスイッチのオン操作がなされたか否かを確認し、DEFスイッチがオンされると、走行開始判定フラグを確認し、走行開始判定フラグがリセットされているときには、DEFモードを解除したときにコンプレッサを停止可能とする通常防曇制御に設定して省動力化を図り、走行開始判定フラグがセットされているときには、DEFモードを解除した後もコンプレッサを駆動する継続防曇制御に設定し、ウインドガラスの曇りが生じるのを抑える(ステップ120〜126)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられて車室内を空調する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置(以下、エアコンとする)は、コンプレッサ(圧縮機)を駆動することにより、車室内へ空調風として吹き出す空気を、エバポレータ(凝縮器)によって冷却すると共に水分除去(除湿)を図るようにし、エンジン冷却水が通過するヒータコア(加熱用熱交換器)をバイパスする空気と、ヒータコアを通過して加熱された空気を混合することにより、所望の温度の空調風を生成するようにしている。
【0003】
また、エアコンには、空調風の吹出し口として、乗員の足元へ向けて開口された足元吹出し口、乗員へ向けて開口されたレジスタ吹出し口及び、ウインドガラスへ向けて開口されたデフロスタ吹出し口が設けられ、吹出し口に応じて空調風の吹出しモードが設定されている。エアコンでは、要求される空調状態等に応じて設定される吹出しモード又は、乗員が選択した吹出しモードに基づいて、該当吹出しモードに対応する吹出し口から空調風を吹き出すようになっている。
【0004】
例えば、ウインドガラスの曇りを除きたいときには、デフロスタ吹出し口に対応するモード(例えば、DEFモード)を選択することにより、デフロスタ吹出し口から空調風が吹き出される。
【0005】
このようなエアコンにおいては、冷房運転時や、DEFモードでは、コンプレッサの駆動を必要とするが、暖房運転時には、コンプレッサの駆動を停止することができる。また、一般に、冷房運転時には、主としてレジスタ吹出し口から空調風を吹き出すFACEモードが選択され、暖房運転時には、足元吹出し口から空調風を吹き出すFOOTモード又は、足元吹出し口とレジスタ吹出し口から空調風を吹き出すBI−LEVELモードが選択される。
【0006】
ところで、エアコンでは、エアコンが停止状態であったり、暖房運転時などでコンプレッサの駆動が停止しているときに、DEFモードが選択されることにより、コンプレッサを駆動する防曇制御が一般的となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
一方、車両の走行環境や車室内の空調状態によっては、ウインドガラスの曇りが解消されることでDEFモードをオフすると、再びウインドガラスに曇りが生じてしまうことがあり、このために、DEFモードのオン/オフ操作を繰り返さなければならないことがある。
【0008】
ここから、特許文献2では、DEFスイッチをオフしたときに、空調状態が定常状態であると、DEFスイッチをオンする前の除湿能力が得られるようにし、空調状態が過渡状態であれば、DEFスイッチをオンする前の除湿能力に戻すように提案している。
【0009】
しかしながら、車室内の空調状態は、空調運転に伴って変化すると共に、走行を継続することによる環境変化(走行環境の変化)によっても変化する。このために、特許文献2の提案では、不必要にコンプレッサの駆動停止を制限してしまう可能性が生じる。
【特許文献1】特開平7−285316号公報
【特許文献2】特開平6−72140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、コンプレッサの駆動を抑える省動力化を可能としながら、ウインドガラスの確実な防曇を可能とする車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、デフロスタ吹出し口からウインドガラスへ向けて空調風を吹き出すモード及び、レジスタ吹出し口のみから車室内の乗員へ向けて空調風を吹き出すモードを、少なくとも含む吹出しモードの何れかで空調風を吹出して車室内を空調する車両用空調装置であって、空調運転を行うときの運転条件を設定する運転条件設定手段と、前記運転条件設定手段で前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されることにより冷凍サイクルを形成するコンプレッサを駆動すると共に、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードの選択が解除されることによりコンプレッサの駆動を停止可能とする第1の駆動制御手段と、前記運転条件設定手段で前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されることにより前記コンプレッサを駆動すると共に、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードの選択が解除された後もコンプレッサの駆動停止を禁止する第2の駆動制御手段と、イグニッションスイッチがオンされた後の車両が走行を開始したか否かを判定する走行開始判定手段と、前記運転条件設定手段で前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたときに、前記走行開始判定手段の判定結果に基づいて前記第1又は第2の駆動制御手段を設定する駆動設定手段と、前記運転条件設定手段で設定された運転条件に基づいて空調運転を行うと共に、前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたときに前記駆動設定手段の設定に基づいた前記コンプレッサの駆動制御を行う空調制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードモード、レジスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードを含む複数の吹出しモードから何れかの吹出しモードが選択されると、選択された吹出しモードで空調風を吹出して車室内を空調する。また、ウインドガラスに曇りが生じたときに、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出す吹出しモードで空調運転を行うことにより、冷凍サイクルによって除湿された空気を空調風としてウインドガラスへ向けて吹出して、ウインドガラスの曇りを除去することができる。なお、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードとしては、主としてデフロスタ吹出し口から空調を吹き出すDEFモード、ウインドガラスと乗員の足元へ向けて空調風を吹き出すFOOT/DEFモードを含むことができる。
【0013】
このデフロスタ吹出し口の選択を解除したときにコンプレッサの停止を可能とする第1の駆動制御手段による制御と、デフロスタ吹出し口の選択が解除された後も、コンプレッサを駆動する第2の制御手段による制御が可能となっている。
【0014】
一方、ウインドガラスの曇りは、車両の駐車中と走行中では、ウインドガラスに曇りを生じさせる要因が異なる。
【0015】
ここから、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたタイミングが、イグニッションスイッチがオンされてから走行を開始するまでの間か、走行開始後かを走行開始判定手段によって判定し、この判定結果に基づいて第1又は第2の駆動制御手段に設定する。
【0016】
これにより、コンプレッサを適性に駆動して、ウインドガラスの曇りを抑える。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記駆動設定手段が、前記走行開始判定手段が車両の走行開始前と判定しているときに前記第1の駆動制御手段に設定し、走行開始後と判定しているときに前記第2の駆動制御手段に設定する、ことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、車両走行前と判定されているときには、第1の駆動制御手段に設定し、走行開始後と判定されるときには、第2の駆動制御手段に設定する。
【0019】
これにより、駐車中の曇りを除去した後も、コンプレッサが駆動され続けるのを防止して、省動力化を図り、また、走行中にウインドガラスに曇りが生じるのを抑えることができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記第2の駆動制御手段により前記コンプレッサが駆動されているとき、前記運転条件設定手段で前記レジスタ吹出し口のみから空調風を吹き出すモードが選択されることにより前記コンプレッサの停止禁止を解除する、ことを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードを解除した後も、第2の駆動制御手段によってコンプレッサを駆動しているときに、レジスタ吹出し口のみから空調風を吹き出すモードが選択されたときに、コンプレッサの停止禁止を解除する。
【0022】
これにより、ウインドガラスに曇りが生じる可能性の低いときに、コンプレッサを不必要に駆動するのを防止することができる。
【0023】
このような本発明においては、請求項4に記載するように、前記走行開始判定手段が、車両の走行速度を検出する速度検出手段を含み、前記速度検出手段の検出速度が予め設定した設定速度に達したときに、車両走行が開始されたと判定する、ことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、デフロスタ吹出し口から空調風を吹出しモードの選択が、車両のイグニッションスイッチがオンされてから走行を開始するまでと、走行開始後で、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードを解除したときに、コンプレッサの駆動を続けるか否かの設定することにより、ウインドガラスの曇りの要因に応じた最適なコンプレッサの駆動が可能となる。
【0025】
また、本発明では、車両の走行開始前にデフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたときに、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードの解除によってコンプレッサを停止可能とし、走行開始後にデフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたときに、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモード解除後もコンプレッサを駆動することにより、必要なコンプレッサの駆動を抑える省動力化を図りながら、走行中のウインドガラスの曇りを防止することができる。
【0026】
さらに、本発明では、レジスタ吹出し口のみから空調風を吹き出すモードが選択されたときに、コンプレッサの停止禁止を解除することにより、より一層の省動力化を図ることができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1には、本実施の形態に適用した車両用空調装置(以下、エアコン10とする)の概略構成を示している。
【0028】
このエアコン10には、コンプレッサ12、コンデンサ14、エキスパンションバルブ16及びエバポレータ18によって、冷媒を循環する冷凍サイクルが形成されている。
【0029】
コンプレッサ12は、回転駆動されることにより冷媒を圧縮し、高温高圧の冷媒を送り出す。コンデンサ14は、この冷媒を冷却して液化し、エバポレータ18では、液化された冷媒が気化するときに、エバポレータ18を通過する空気を冷却する。
【0030】
エバポレータ18では、空気が冷却されるときに、空気中の水分が結露するようになっており、これにより、エバポレータ18を通過する空気中の水分除去(除湿)がなされる。また、エキスパンションバルブ16は、液化された冷媒を急激に減圧することにより霧状にしてエバポレータ18へ供給するようにしており、これにより、エバポレータ18での冷媒の気化効率、すなわち、エバポレータ18を通過する空気の冷却効率の向上が図られるようにしている。
【0031】
エアコン10は、空調ダクト20を備えており、この空調ダクト20内に、エバポレータ18が配設されている。また、空調ダクト20の一端側には、複数の空気取入口22が形成されている。
【0032】
ここで、エアコン10では、空気取入口22として、エアコン10によって空調される図示しない車室内に向けて開口された内気取入口22A及び、車外に向けて開口されて空調ダクト20と車外を連通可能とする外気導入口22Bが形成されている。また、空調ダクト20には、内気取入口22Aと外気導入口22Bを開閉するモード切換ダンパ24及び、ブロワファン26が設けられている。
【0033】
エアコン10では、内気循環モードと外気導入モードの選択が可能となっており、内気循環モードが選択されることにより、モード切換ダンパ24によって内気取入口22Aを開放すると共に、外気導入口22Bを閉塞する。これにより、ブロワファン26が回転駆動されることにより、車室内の空気が内気取入口22Aから吸引されて、エバポレータ18へ向けて送り込まれる。
【0034】
また、エアコン10では、外気導入モードが選択されることにより、モード切換ダンパ24によって内気取入口22Aを閉塞すると共に、外気導入口22Bを開放し、車外の空気が外気導入口22Bから吸引されてエバポレータ18へ送り込まれるようにしている。
【0035】
一方、空調ダクト20には、他端側に、複数の空気吹出し口が形成されている。エアコン10では、空気吹出し口として、車両の図示しないウインドガラスへ向けて開口されたデフロスタ吹出し口28、車室内の乗員等へ向けて開口されたレジスタ吹出し口30及び、乗員の足元へ向けて開口された足元吹出し口32が形成されている。デフロスタ吹出し口28は、センタデフロスタ吹出し口28A及びサイドデフロスタ吹出し口28Bを含んでおり、レジスタ吹出し口30は、車幅方向の中央部に設けられるセンタデフロスタ吹出し口30A及び、運転席側及び助手席側に設けられたサイドデフロスタ吹出し口30Bを含んでおり、足元吹出し口32は、前席側の足元吹出し口32Aと後席側の足元吹出し口32Bを含んでいる。
【0036】
また、空調ダクト20には、切換ダンパ34が設けられており、この切換ダンパ34によって、デフロスタ吹出し口28、レジスタ吹出し口30及び足元吹出し口32のそれぞれを選択的に開閉可能となっている。
【0037】
エアコン10では、空調風の吹出しモードとして、デフロスタ吹出し口28を選択するDEFモード、レジスタ吹出し口30を選択するFACEモード、足元吹出し口32を選択するFOOTモード、レジスタ吹出し口30及び足元吹出し口32を選択するBI−LEVELモード及び、デフロスタ吹出し口28と足元吹出し口32を選択するDEF/FOOTモードが設定されている。
【0038】
エアコン10では、吹出しモードが設定されることにより、設定された吹出しモードに応じた空気吹出し口から空調風が吹き出されるように切換ダンパ34が作動される。
【0039】
一方、空調ダクト20内には、ヒータコア36及びエアミックスダンパ38が設けられている。エアコン10では、エバポレータ18を通過した空気が、エアミックスダンパ38によって、ヒータコア36を通過する空気と、ヒータコア38をバイパスする空気に分けられる。このとき、エアコン10では、エアミックスダンパ38によって、ヒータコア36を通過する空気の流量が制御される。すなわち、エアミックスダンパ36の開度に応じた比率の空気がヒータコア38を通過するようになっている。
【0040】
ヒータコア36には、車両の図示しないエンジンとの間でエンジン冷却水が循環されるようになっており、ヒータコア36は、ヒータコア36を通過する空気とエンジン冷却水との間で熱交換を行うことにより、通過する空気を加熱するようになっている。
【0041】
エアコン10では、ヒータコア36を通過することにより加熱された空気と、ヒータコア36をバイパスすることによりエバポレータ18によって冷却された空気又はエバポレータ18を通過した時のままの温度の空気を混合することにより、所定温度の空調風を生成し、生成した温度の空調風を、空気吹出し口から車室内へ吹き出すことにより、車室内を空調するようにしている。
【0042】
図2には、エアコン10の制御部の概略構成を示している。図2に示されるように、エアコン10には、エアコン10の作動を制御するエアコンECU40が設けられている。
【0043】
このエアコンECU40には、コンプレッサ12の駆動/停止(オン/オフ)を行なう電磁クラッチ42が接続されている。本実施の形態に適用するエアコン10としては、エンジンの駆動力が伝達されることにより回転駆動されるものであっても良く、このときに、電磁クラッチ42のオン/オフによってエンジンの駆動力が断続されることにより、コンプレッサ12のオン/オフが行なわれる。
【0044】
なお、コンプレッサ12としては、可変容量コンプレッサであることが好ましい。また、コンプレッサ12としては、電気モータ(コンプレッサモータ)によって駆動されるものであっても良く、このときには、エアコンECU40が、コンプレッサモータのオン/オフ及び回転数を制御すれば良い。
【0045】
エアコンECU40には、ブロワファン26(図1参照)を駆動するブロワモータ44、モード切換ダンパ24を駆動するアクチュエータ46A、切換ダンパ34を駆動するアクチュエータ46B及び、エアミックスダンパ38を駆動するアクチュエータ46Cが接続されており、これにより、エアコンECU40によって、空気吹出し口から吹き出される空調風の風量(以下、ブロワ風量とする)、内気循環モードと外気導入モードの切換、空気吹出し口の切換及び、エアミックスダンパ38の開度が制御されるようになっている。
【0046】
また、エアコンECU40には、室内温度(室温)を検出する室温センサ48、外気温度(外気温)を検出する外気温センサ50、日射量を検出する日射センサ52、エバポレータ18を通過した空気の温度(エバポレータ後温度)を検出するエバポレータ後温度センサ54、エンジン冷却水の温度(水温)を検出する水温センサ56等と共に、操作パネル58が接続されている。
【0047】
図3には、操作パネル58の一例を示している。この操作パネル58には、設定温度、ブロワ風量、吹出しモードなどの操作状態、運転状態などの各種の情報表示がなされるディスプレイ60を備えている。
【0048】
また、操作パネル58には、エアコン10をオンするエアコンスイッチ62、オフするオフスイッチ64と共に、温度設定を行なう温度設定スイッチ66、オートモードを選択するオートスイッチ68、マニュアル操作でブロワ風量を設定するブロワスイッチ70、吹出しモードを選択する吹出しモードスイッチ72、内気循環モードと外気導入モードを切り換える吸込みモードスイッチ74と共に、吹出しモードとしてDEFモードを選択するDEFスイッチ76が設けられている。
【0049】
ここで、吸込みモードスイッチ74が操作されることにより、内気循環モードと外気導入モードとの切換が行なわれ、温度設定スイッチ66のアップ操作(スイッチ上部の操作)及びダウン操作(スイッチ下部の操作)によって、ディスプレイ60に表示されて設定温度が変更される。
【0050】
また、吹出しモードスイッチ72が操作されることにより、吹出しモードの設定が、FACEモード、BI−LEVELモード、FOOTモード、FOOT/DEFモードの間で、順に切換られると共に、ディスプレイ60には、選択された吹出しモードに応じた表示がなされ、DEFスイッチ76が操作されることにより、吹出しモードがDEFモードに切換られる。
【0051】
エアコン10では、エアコンスイッチ62によってオンされることにより、コンプレッサ12を用いた空調運転を行い、オフスイッチ64の操作によって空調運転がオフされ、オートモードスイッチ68が操作されることによりオートモードでの空調運転を行う。
【0052】
また、エアコン10では、ブロワスイッチ70の操作によってブロワ風量を設定すると共に、吹出しモードスイッチ72の操作によって吹出しモードを選択することにより、マニュアル操作での空調運転が可能となっている。
【0053】
なお、エアコンスイッチ62のオフ状態で、ブロワスイッチ70を操作して風量設定を行なうことにより、設定風量での送風が行なわれる。また、エアコンスイッチ62、オートモードスイッチ68、吸込みモードスイッチ74及びDEFスイッチ76には、それぞれのオン状態で点灯するランプ78が設けられており、ディスプレイ60の表示と各ランプ78の点灯状態で、エアコン10の設定状態の確認が可能となっている。
【0054】
図2に示されるエアコンECU40では、操作パネル58のスイッチ操作によって温度設定がなされて空調運転が指示されると、室温センサ48、外気温センサ50、日射センサ52等によって環境条件を検出し、環境条件と設定温度に基づいて、車室内を設定温度とする目標吹出し温度を設定する。また、オートモードに設定されていると、エアコンECU40では、目標吹出し温度に基づいてブロワ風量及びエアミックスダンパ38の開度を設定し、これらの設定に基づいて、各機器の作動を制御する。
【0055】
ここで、目標吹出し温度TAOは、設定温度TSET、室温Tr、外気温To、日射量STから得られる。
【0056】
AO=K・TSET−K・To−K・Tr−K・ST+C
(ただし、K、K、K、K及びCは予め設定している定数)
また、オートモードに設定されているときのブロワ風量は、室温Tr、設定温度TSET、予め設定している温度などを基準温度とし、この基準温度と目標吹出し温度TAOとの差から設定することができる。このとき、予め設定している最少風量と最大風量の範囲で、基準温度と目標吹出し温度TAOの差が小さければ、ブロワ風量を低くし、差が大きくなるにしたがって風量が増加するように設定する。エアコンECU40は、設定したブロワ風量に応じた電圧でブロワモータ44を回転駆動する。
【0057】
また、目標吹出し温度TAOの空調風は、ヒータコア36を通過した空気とヒータコア38をバイパスした空気が混合されることにより得られ、このときの混合比rは、エアミックスダンパ38の開度となる。
【0058】
ここから、混合比rは、エバポレータ18を通過した空気の温度(エバポレータ後温度Te)と、ヒータコア36を通過した空気の温度(ヒータコア後温度Th)から、
r=(TAO−Te)/(Th−Te)
とすることができる。ここで、ヒータコア後温度Thは、エンジン冷却水の水温Twとヒータコア36の熱効率から算出することができ、エアコンECU40では、目標吹出し温度TAO、エバポレータ後温度センサ54によって検出されるエバポレータ後温度Te及び水温センサ56によって検出されるエンジン冷却水の水温Twに基づいてエアミックスダンパ36の開度を設定する。
【0059】
さらに、オートモードでは、吹出しモードを目標吹出し温度TAOに基づいて設定する。このとき、目標吹出し温度TAOが低い冷房運転時には、FACEモードに設定し、目標吹出し温度TAOが高くなるにしたがって、BI−LEVELモード、FOOTモードに設定し、暖房運転時には、主として足元吹出し口32から空調風(暖房風)が吹き出されるように設定する。
【0060】
エアコンECU40では、これらの設定ないし操作パネル58上での設定(選択)に基づいて空調運転を行う。このように、エアコン10の基本的構成は、公知の構成となっている。
【0061】
ところで、エアコンECU40では、DEFスイッチ76が操作されることにより、防曇制御を実行する。この防曇制御では、吹出しモードをDEFモードに設定すると共に、コンプレッサ12をオンする。このとき、エアコン10が停止中か、コンプレッサ12がオフしているときであっても、コンプレッサ12をオンする。これにより、エバポレータ18によって除湿された空調風がデフロスタ吹出し口28からウインドガラスへ向けて吹きだされるようにしている。
【0062】
また、この防曇制御は、通常、DEFモードから吹出しモードスイッチ72を操作して、FOOTモード、BI−LEVELモード又はFACEモードに切換得られることにより終了し、エアコン10は、DEFスイッチ76が操作される前の動作状態又は、新たに設定された動作状態に戻るようになっている。
【0063】
一方、図示しないイグニッションスイッチがオンされた直後で、DEFモードが操作されるときには、外気温が低いために、停止している車両のウインドガラスに曇りが生じているので、この曇りを除去するためにDEFスイッチ76が操作される。このときには、一旦、ウインドガラスの曇りを除去すると、ウインドガラスの曇りが再発する可能性は低い。
【0064】
これに対して、車両が走行中に車室内の湿度が上昇することによりウインドガラスに曇りが生じ、この曇りを除去するためにDEFスイッチ76が操作される。このときには、ウインドガラスの曇りが除かれてDEFモードから他の吹出しモードに変更されると、ウインドガラスの曇りが再発する可能性が高い。
【0065】
ここから、エアコンECU40では、DEFスイッチ76が操作されるタイミングによって、コンプレッサ12のオフを禁止するか、コンプレッサ12のオフを許可するかを切り換えるようにしている。すなわち、エアコンECU40では、DEFスイッチ76が操作されるタイミングによって、防曇制御を終了するタイミングを切り換えるようにしている。
【0066】
また、エアコンECU40では、防曇制御を切り換えるタイミングとして、イグニッションスイッチがオンされて車両が走行を開始するタイミングとしている。
【0067】
ここから、エアコンECU40には、車両の走行速度を検出する速度検出手段として車速センサ80が接続しており、エアコンECU40では、車速センサ80によって車両が所定の走行速度に達したか否かを検出するようになっている。
【0068】
ここで、エアコンECU40では、イグニッションスイッチがオンされてから車両が走行を開始するまでの間に、DEFスイッチ76が操作されたときには、DEFスイッチ76の再操作によるオフ(DEFモードのオフ操作)又は、他の吹出しモードなどに切換られることにより、防曇制御を終了し、コンプレッサ12のオフが可能となるようにする。
【0069】
これに対して、車両が走行を開始した後にDEFスイッチ76が操作されたときには、原則的にイグニッションスイッチがオフされるまでは、コンプレッサ12の停止を禁止するようにしている。
【0070】
一方、室温に対して外気温が高くなると、ウインドガラスに曇りが生じ難くなり、DEFモードを選択する必要が無くなる。また、このような環境下では、エアコン10を運転するときには、FACEモードとなっている。
【0071】
ここから、エアコンECU40では、車両が走行を開始したときに、DEFモードが選択されたためにコンプレッサ12のオフを禁止している状態で、FACEモードが選択されることにより、コンプレッサ12のオフ禁止を解除するようにしている。
【0072】
これにより、エアコンECU40では、DEFスイッチ76が頻繁に操作されるのを防止しながら、ウインドガラスに曇りが発生してしまうのを防止している。
【0073】
エアコン10では、防曇制御として、操作パネル58のスイッチ操作に応じてウインドガラスの曇防止を行なう通常防曇制御と、DEFスイッチ76が頻繁に操作されるのを防止する継続防曇制御が設定されており、車両の走行状態に対するDEFスイッチ76の操作タイミングに基づいて、通常防曇制御又は継続防曇制御を切り換えるようにしている。
【0074】
ここで、本実施の形態の作用としてエアコン10の防曇制御を説明する。
【0075】
エアコン10では、イグニッションスイッチがオンされることにより動作可能となり、操作パネル58のスイッチ操作によって設定温度TSETと共に運転条件が設定されることにより空調運転を開始する。
【0076】
このとき、エアコンECU40では、エアコンスイッチ62のオン操作がなされることにより、コンプレッサ12を駆動した空調運転を行う。なお、コンプレッサ12を駆動した空調運転においては、必要に応じてコンプレッサ12のオン/オフを行なうことにより、省動力を図るようにしている。
【0077】
エアコンECU40では、エアコンスイッチ62がオン操作されると、設定温度TSET、室温Tr、外気温To、日射量STを読み込み、目標吹出し温度TAOを設定すると共に、目標吹出し温度TAOに基づいてエアミックスダンパ38の開度を設定する。
【0078】
また、エアコンECU40では、オートモードスイッチ68がオンされることにより、目標吹出し温度TAOに基づいて、ブロワ風量及び吹出しモードを設定し、これらの設定に基づいて空調運転を行う。
【0079】
また、エアコンECU40では、吹出しモードスイッチ72によって吹出しモードが設定され、ブロワスイッチ70によってブロワ風量が設定されると、これらの設定に基づいたマニュアルモードでの空調運転を行う。
【0080】
ところで、エアコン10には、デフロスタ吹出し口28からウインドガラスへ向けて空調風を吹き出すDEFモード又はFOOT/DEFモードが設定されており、DEFスイッチ76の操作によってDEFモードが選択されたとき、又は、吹出しモードスイッチ72の操作によってFOOT/DEFモードが選択されることにより、ウインドガラスの曇りを防止する防曇制御を行うようになっている。
【0081】
ここで、エアコンECU40によって実行する防曇制御を説明する。
【0082】
図4(A)には、エアコンECU40での車両の走行開始判定処理の概略を示している。このフローチャートは、イグニッションスイッチがオンされることにより実行され、最初のステップ100では、走行開始判定フラグFsをリセットする(Fs=0)。
【0083】
この後、ステップ102では、速度センサ80によって検出する車両の走行速度vを読み込み、次のステップ104では、速度vが予め設定している速度(設定速度vs、例えば、vs=1km/h)を超えているか否かを確認する。
【0084】
ここで、イグニッションスイッチをオンした後、車両10が暖機運転などを行っているために、停車状態であれば、ステップ104で否定判定してステップ102に戻る。
【0085】
これに対して、イグニッションスイッチをオンした後、車両が走行を開始して、速度vが設定速度vsに達すると、ステップ104で肯定判定してステップ106へ移行し、走行開始判定フラグFsをセットする(Fs=1)。
【0086】
すなわち、図5(A)及び図5(B)に示されるように、車両のイグニッションスイッチがオン(IGON)されることにより、走行開始判定フラグFsがリセットされる。これにより、走行開始判定フラグFsがリセット状態であれば、イグニッションスイッチがオンされたときから車両が停車状態であることが示される。
【0087】
この後、車両が走行を開始し、速度vが設定速度vsに達すると、走行開始判定フラグFsがセット(Fs=1)され、車両の走行が開始されたことを示すようにしている。
【0088】
この走行開始判定フラグFsは、車両走行中は、車両の走行が終了してイグニッションスイッチがオフ(IGOFF)されるまで、車両の走行速度vにかかわらず保持される。
【0089】
エアコン10では、イグニッションスイッチがオンされて、操作パネル58のスイッチ操作によって空調運転が指示されると、操作パネル58の設定に基づいた空調運転を開始する。また、エアコン10の空調運転は、操作パネル58のスイッチ操作によってオフされるか、車両が停止してイグニッションスイッチがオフされることにより終了する。
【0090】
一方、エアコン10では、操作パネル58に設けているDEFスイッチ76が操作されるか、吹出しモードスイッチ72の操作によってFOOT/DEFモードが選択されることにより、防曇制御を開始する。このとき、エアコンECU40では、走行開始判定フラグFsに基づいて、通常防曇制御と継続防曇制御を切り換えるようにしている。
【0091】
図4(B)には、防曇制御設定の概略を示している。このフローチャートは、イグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの間、所定の時間間隔で実行され、最初のステップ120では、操作パネル58のDEFスイッチ76がオン操作されたか否かを確認する。なお、ここでは、DEFスイッチ76の操作を例とするが、吹出しモードスイッチ72の操作によってFOOT/DEFモードが選択されたか否かを加えて、デフロスタ吹出し口28からの空調風の吹出しが選択されたか否かを確認するものであっても良い。
【0092】
ここで、ウインドガラスに曇りが生じて、この曇りを除去する(曇りを晴らす)ためにDEFスイッチ76がオン操作されると、ステップ120で肯定判定してステップ122へ移行する。
【0093】
このステップ122では、走行開始判定フラグFsの状態を確認している。このとき、走行開始判定フラグFsがリセット状態(Fs=0)であれば、ステップ122で否定判定してステップ124へ移行し、通常防曇制御に設定する。
【0094】
これに対して、走行開始判定フラグFsがセット状態(Fs=1)であるときは、ステップ122で肯定判定してステップ126へ移行し、継続防曇制御に設定する。すなわち、エアコンECU40では、イグニッションスイッチがオンされた後、車両の走行を開始するまでの間にDEFスイッチ76がオン操作されたときには、通常防曇制御に設定し、車両走行が開始された後は、DEFスイッチ76が操作されると、継続防曇制御に設定するようにしている。
【0095】
図6には、通常防曇制御の概略を示している。この通常防曇制御では、最初のステップ130で操作パネル58上のDEFスイッチ76の表示ランプ78を点灯すると共に、ディスプレイ60の表示をDEFモードに変更する。
【0096】
これと共に、次のステップ132では、コンプレッサ12を駆動する(電磁クラッチ42をオンする)。このとき、コンプレッサ12を停止禁止(電磁クラッチ42のオフ禁止)に設定する。なお、エアコンスイッチ62がオンされてコンプレッサ12が駆動されている状態であれば、コンプレッサ12の停止禁止に設定する。また、DEFモードへの吹出しモードの変更に伴って、切換ダンパ34を作動することにより、デフロスタ吹出し口28から空調風が吹き出されるように設定する。
【0097】
これにより、エアコン10では、DEFモードでの空調運転を開始し、エバポレータ18によって水分除去された空調風が、ウインドガラスへ向けて吹き出され、ウインドガラスの曇り除去が図られる(ステップ134)。
【0098】
このとき、基本的には、操作パネル58の操作状態が継続され、例えば、エアコンスイッチ62の表示ランプ78は、DFEスイッチ76の操作前に消灯状態(エアコンスイッチ62のオフ状態)であれば、消灯状態が保持されるものであっても良い。また、このエアコンスイッチ62の表示ランプ78は、DEFスイッチ76の操作前が消灯状態であるときに、DEFスイッチ76のオン操作によってコンプレッサ12が駆動されることにより、点灯状態となるものであっても良い。
【0099】
一方、ステップ136では、操作パネル58のスイッチ操作がなされたか否かを確認し、何等かのスイッチ操作がなされると、ステップ136で肯定判定してステップ138へ移行する。このステップ138では、DEFモード以外又は、FOOT/DEFモード以外の吹出しモードが選択されたか否かを確認する。
【0100】
ここで、ブロワ風量の変更、エアコンスイッチ62の操作(例えばオフ操作)、設定温度の操作などであるときには、ステップ138で否定判定してステップ140へ移行し、スイッチ操作に基づいた運転条件の変更を行う。このとき、コンプレッサ12の停止禁止を継続する。
【0101】
これにより、車室内の湿度上昇を抑え、車室内の湿度が上昇することによるウインドガラスの曇りを防止する。なお、このときに、例えば、エアコンスイッチ62が操作されたときには、エアコンスイッチ62の表示ランプ78の点灯/消灯が切換られる。
【0102】
これに対して、吹出しモードスイッチ72が操作され、これにより、DEFモード以外又は、DEFモード、FOOT/DEFモード以外が選択されたときには、ステップ138で肯定判定してステップ142へ移行する。
【0103】
このステップ142では、コンプレッサ12の駆動を停止可能(停止禁止解除)とし、次のステップ144では、操作パネル58の操作状態を運転条件として空調運転を行う通常制御に設定し、通常防曇制御を終了する。このとき、例えば、DEFスイッチ76の操作前の吹出しモードを記憶し、吹出しモードスイッチ72を操作することにより、DEFスイッチ76の操作前の吹出しモードが選択されるものであっても良い。
【0104】
なお、ここでは、DEFモード以外又は、DEFモード、FOOT/DEFモード以外が選択されたときに、コンプレッサ12の停止禁止を解除するようにしているが、例えば、エアコンスイッチ62のオフ操作によってコンプレッサ12が停止されるものであっても良い。また、通常防曇制御は、公知の防曇制御を適用するものであっても良い。
【0105】
一方、図7には、継続防曇制御の概略を示している。なお、図7で図6と同等の処理には、該当ステップ番号を併記してその説明を省略する。
【0106】
本実施の形態に適用した継続防曇制御では、最初のステップ150で、操作パネル58上のDEFスイッチ76の表示ランプ78を点灯すると共に、ディスプレイ60の表示をDEFモードに変更する。また、ステップ152では、コンプレッサ12の停止禁止を設定してコンプレッサ12を駆動する。これにより、DEFモード又はFOOT/DEFモードでの空調運転が開始される(ステップ154)。
【0107】
一方、ステップ156では、操作パネル58のスイッチ操作がなされたか否かを確認し、操作パネル58のスイッチ操作がなされると、ステップ156で肯定判定してステップ158へ移行する。
【0108】
このステップ158では、吹出しモードスイッチ72が操作されたか否かを確認し、吹出しモードスイッチ72以外のスイッチ操作であるときには、ステップ158で否定判定してステップ160へ移行し、操作パネル58のスイッチ操作に基づいた空調運転、すなわち、DEFモード又はFOOT/DEFモードでの空調運転を行う。このときに、コンプレッサ12の停止禁止状態を継続する。
【0109】
ここで、吹出しモードスイッチ72が操作されると、ステップ158で肯定判定してステップ162へ移行する。このステップ162では、吹出しモードとしてFACEモードが選択されたか否かを確認する。
【0110】
このときに、吹出しモードスイッチ72の操作が、FOOTモード、BI−LEVELモードへの変更であるときには、ステップ162で否定判定してステップ164へ移行して、変更された吹出しモードでの空調運転を行う。また、コンプレッサ12に対しては、停止禁止状態を保持する。
【0111】
すなわち、コンプレッサ12を駆動した状態(コンプレッサ12の停止禁止状態)で、FOOTモード、BI−LEVELモードでの空調運転を行う。これにより、除湿された空気が車室内に吹き出され、車室内の湿度上昇が抑えられ、ウインドガラスに曇りが生じ難い状態に保たれる。
【0112】
これに対して、FACEモードが選択されると、ステップ162で肯定判定してステップ166へ移行する。このステップ166では、コンプレッサ12の停止禁止を解除し、通常制御に設定する(ステップ168)。すなわち、継続防曇制御を終了し、FACEモードでの空調運転が開始されるように設定する。このとき、コンプレッサ12の停止禁止が解除されることにより、操作パネル58上の設定、環境状態、車室内の空調状態に応じてコンプレッサ12が停止される。
【0113】
すなわち、継続防曇制御では、吹出しモードがFACEモードに設定されるか、車両の走行が終了してイグニッションスイッチがオフされるまでコンプレッサ12の停止禁止状態としている。
【0114】
このように、エアコン10では、コンプレッサ12が必要以上に駆動されてしまうのを抑える通常防曇制御と、コンプレッサ12の駆動停止を禁止して、車室内をウインドガラスに曇りが生じない状態に保つ継続防曇制御が設定され、車両の走行開始前と、走行開始後で切り換える。
【0115】
このとき、車両の走行開始前にDEFスイッチ76がオン操作されてDEFモードが選択されたときは、通常防曇制御に設定し、車両の走行開始後にDEFスイッチ76がオン操作されたときには、継続防曇制御に設定するようにしている。
【0116】
すなわち、イグニッションスイッチがオンされた直後にDEFモードが選択されたときには、駐車中に生じている曇りを除去することが目的であり、車両が走行を開始したときに、再度、ウインドガラスに曇りが生じるとは限らない。
【0117】
このときに、継続防曇制御が設定されると、コンプレッサ12を不必要に駆動してしまうことになる。特に、駐車中に曇りが生じるときは、外気温が低いときであることが多く、車両が走行したときには、コンプレッサ12の駆動が不要な暖房運転を行うことになり、このときに、コンプレッサ12の駆動を行うことは省動力化の妨げとなってしまう。
【0118】
ここから、エアコンECU40では、車両が走行開始前に、DEFモードが選択されたときには、通常防曇制御に設定し、DEFモードが解除されたときに、コンプレッサ12が停止可能となるようにしている。
【0119】
これに対して、車両が開始した後に生じるウインドガラスの曇りは、走行環境や車室内の空調状態が影響する。このために、ウインドガラスの曇りを除いても、再度、曇りが生じる可能性が高い。
【0120】
ここから、エアコンECU40では、車両が走行を開始した後に、DEFモードが選択されたときには、コンプレッサ12の駆動を継続する継続防曇制御に設定する。これにより、ウインドガラスの曇りが除去されて、FOOTモード又はBI−LEVELモードでの空調運転を行われるときに、コンプレッサ12を駆動し続けることにより、車室内の湿度上昇を抑え、少なくとも車室内の湿度上昇によるウインドガラスの曇りの発生を防止するようにしている。
【0121】
一方、ウインドガラスの曇りは、ウインドガラスの表面温度が低くなることにより生じ易く、走行中の車両では、外気温が高くなるとウインドガラスに曇りが生じ難くなる。また、外気温が高い状態で行う空調運転の吹出しモードは、FACEモードである。
【0122】
ここから、エアコンECU40では、継続防曇制御を行っているときに、吹出しモードとしてFACEモードが選択されたときに、コンプレッサ12の停止禁止を解除する。
【0123】
これにより、走行環境、車室内の空調状態及び乗員の意思によるコンプレッサ12の停止が可能となり、必要にコンプレッサ12が駆動されるのを防止することができる。
【0124】
なお、本実施の形態では、速度センサ80を用いて車両の速度vを検出し、速度vが設定速度vsを超えることで、車両が走行を開始したと判定するように下が、走行開始判定は、これに限るものではない。例えば、パーキングブレーキスイッチによってパーキングブレーキが解除されたか否かを検出し、パーキングブレーキが解除されることで走行を開始したと判定するようにしても良く、また、変速機のシフトポジションを検出し、シフトポジションがD(ドライブ)レンジとなったことを検出することで、車両が走行を開始したと判定するようにしても良い。
【0125】
また、パーキングブレーキスイッチ、シフトポジションセンサなどの検出結果を組み合わせて、車両が走行を開始したか否かを判定するようにしても良く、さらに、これらに限らず、車両が走行を開始したか否かを的確に判定可能な構成であれば、任意の構成を適用することができる。
【0126】
また、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本発明は、エンジンの駆動力によって駆動される車両のみでなく、電気モータの駆動力によって走行する車両や、エンジンと電気モータの駆動力を用い走行する車両など、任意の構成の車両に適用することができる。
【0127】
また、本発明は、車両に設けられて、冷凍サイクルによって除湿した空調風によって車室内を空調可能とする任意の構成の車両用空調装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本実施の形態に車両用空調装置として適用したエアコンの概略構成図である。
【図2】エアコンの制御の概略構成図である。
【図3】運転条件設定手段の一例を示す操作パネルの概略構成図である。
【図4】(A)は走行開始判定の一例を示す流れ図、(B)は走行開始判定の結果に基づいたコンプレッサの制御設定の一例を示す流れ図である。
【図5】(A)は車両の走行速度の変化の要部の一例を示す線図、(B)は(A)の走行速度の変化に基づいた走行開始判定の判定結果を示す線図である。
【図6】第1の駆動制御手段に対応する防曇制御の概略を示す流れ図である。
【図7】第2の駆動制御手段に対応する防曇制御の概略を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0129】
10 エアコン(車両用空調装置)
12 コンプレッサ
28 デフロスタ吹出し口
30 レジスタ吹出し口
34 足元吹出し口
40 エアコンECU(第1の駆動制御手段、第2の駆動制御手段、走行開始判定手段、駆動設定手段、空調制御手段)
42 電磁クラッチ
58 操作パネル(運転条件設定手段)
72 吹出しモードスイッチ
76 DEFスイッチ
80 速度センサ(速度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフロスタ吹出し口からウインドガラスへ向けて空調風を吹き出すモード及び、レジスタ吹出し口のみから車室内の乗員へ向けて空調風を吹き出すモードを、少なくとも含む吹出しモードの何れかで空調風を吹出して車室内を空調する車両用空調装置であって、
空調運転を行うときの運転条件を設定する運転条件設定手段と、
前記運転条件設定手段で前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されることにより冷凍サイクルを形成するコンプレッサを駆動すると共に、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードの選択が解除されることによりコンプレッサの駆動を停止可能とする第1の駆動制御手段と、
前記運転条件設定手段で前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されることにより前記コンプレッサを駆動すると共に、デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードの選択が解除された後もコンプレッサの駆動停止を禁止する第2の駆動制御手段と、
イグニッションスイッチがオンされた後の車両が走行を開始したか否かを判定する走行開始判定手段と、
前記運転条件設定手段で前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたときに、前記走行開始判定手段の判定結果に基づいて前記第1又は第2の駆動制御手段を設定する駆動設定手段と、
前記運転条件設定手段で設定された運転条件に基づいて空調運転を行うと共に、前記デフロスタ吹出し口から空調風を吹き出すモードが選択されたときに前記駆動設定手段の設定に基づいた前記コンプレッサの駆動制御を行う空調制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記駆動設定手段が、前記走行開始判定手段が車両の走行開始前と判定しているときに前記第1の駆動制御手段に設定し、走行開始後と判定しているときに前記第2の駆動制御手段に設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第2の駆動制御手段により前記コンプレッサが駆動されているとき、前記運転条件設定手段で前記レジスタ吹出し口のみから空調風を吹き出すモードが選択されることにより前記コンプレッサの停止禁止を解除する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記走行開始判定手段が、車両の走行速度を検出する速度検出手段を含み、前記速度検出手段の検出速度が予め設定した設定速度に達したときに、車両走行が開始されたと判定する、ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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