説明

車両用空調装置

【課題】本発明は、吸着剤の再生を実施しても窓が曇る心配のない車両用空調装置の提供を課題とする。
【解決手段】内気導入ダクト11の吸着剤14より下流側と空調ダクトの出口46との間に、第1ダクト38を掛け渡し、内気導入ダクト11の吸着剤14より上流側から、車外へ第2ダクト43を延ばし、この第2ダクトの入口41よりも上流側位置にて、内気導入ダクト11に、この内気導入ダクト11の内圧が車室の圧力より高いとき閉じるシャッタ機構13を設ける。
【効果】吸着剤14を通過して湿気を含んだ外気は、車室内を通過することなく車外へ排出される。吸着剤14を乾燥させる際に、窓の曇りを防止するために取込まれる空気の量を調節する必要がなく、短時間で吸着剤14を乾燥させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置に、車室内を温めるためのヒータが搭載される。温められたヒータに空気を接触させると空気が温められ、この温められた空気を車室内に送ることにより車室内が温められる。即ち、空気とヒータとの熱交換により車室内は温められる。
【0003】
このような車両用空調装置には、各種の構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−48143号公報(図1、図2)
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の技術の基本構成を説明する図であり、空調装置100は、(a)に示すようにヒータ101で温められた空気が、ブロア102を作動させることにより、内気ダクト103から送風管104を通り、矢印(1)で示すように車室内に送られる。車室内を温めた空気は、車室から矢印(2)で示すように内気ダクト103へ戻ってくる。
このとき、内気ダクト103へ戻ってくる空気は、車室内の乗員の汗や呼吸により生ずる湿気を含んでいる。これらの水分は、吸着剤105により吸着され除湿される。
【0005】
所定時間が経過すると、吸着剤105が多量の水分を吸着し、吸着剤105の吸着能力が低下する。従って、吸着剤105が再度水分を吸着することができるよう、吸着剤105を再生させる必要がある。
【0006】
吸着剤105を再生させるために、制御部106はアクチュエータ107を作動させ、(b)に示すように、インテークドア108を内気ダクト103と外気ダクト109との間まで回動させる。このようにすることにより、ブロア102から車室に向かって送られる空気に、外気を取入れることができる。
【0007】
矢印(3)で示すように乾燥した外気を取入れ、矢印(4)及び(5)で示すように外気を含んだ空気を循環させることにより、ヒータ101に送られる空気は、乾燥した空気となる。この乾燥した空気がヒータ101により温められた上で吸着剤105を通過することにより、吸着剤105に吸着された水分は再び空気中に戻される。これにより、吸着剤105に吸着した水分が取除かれ、吸着剤105は再生される。
吸着剤105から水分を受取った湿気を多く含む空気は、車室内を経由して車外へと排出される。
【0008】
以上のように、湿気を多く含む空気が車室内へ吹込まれるため、車両の窓が曇ることがある。
吸着剤の再生を実施しても窓が曇る心配のない車両用空調装置の提供が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、吸着剤の再生を実施しても窓が曇る心配のない車両用空調装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車室の空気である内気を内気導入ダクトで導入し、この内気導入ダクトに内気の水分を吸着して徐湿する吸着剤を介在させ、車外の空気である外気を外気導入ダクトで導入し、前記内気導入ダクトと外気導入ダクトとの出口にインテークドアを設けて前記内気と外気の導入を選択できるようにし、ブロアで吸引加圧した前記内気又は外気をヒータで温め、空調ダクトの出口から車室内などへ吹き出すようにした車両用空調装置において、
前記空調ダクトの出口と前記内気導入ダクトの前記吸着剤より下流側との間に、第1ダクトを掛け渡し、
前記内気導入ダクトの前記吸着剤より上流側から、車外へ第2ダクトを延ばし、この第2ダクトの入口よりも上流側位置にて、前記内気導入ダクトに、この内気導入ダクトの内圧が車室の圧力より高いとき閉じるシャッタ機構を設け、
前記吸着剤を乾燥させるモードでは、前記インテークドアで前記内気導入ダクトの出口を塞ぎ、ヒータで温められた外気が前記第1ダクトを通って、前記内気導入ダクトに吹き込まれ、温められた外気で前記吸着剤を乾燥させ、前記吸着剤を通過することで水分を含んだ外気は前記第2ダクトを通じて車外へ排出されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、車室の空気である内気を内気導入ダクトで導入し、この内気導入ダクトに内気の水分を吸着して徐湿する吸着剤を介在させ、車外の空気である外気を外気導入ダクトで導入し、前記内気導入ダクトと外気導入ダクトとの出口にインテークドアを設けて前記内気と外気の導入を選択できるようにし、ブロアで吸引加圧した前記内気又は外気をヒータで温め、空調ダクトの出口から車室内などへ吹き出すようにした車両用空調装置において、
前記空調ダクトの出口と前記内気導入ダクトの前記吸着剤より上流側との間に、第1ダクトを掛け渡し、この第1ダクトの出口よりも上流側位置にて、前記内気導入ダクトに、この内気導入ダクトの内圧が車室の圧力より高いとき閉じるシャッタ機構を設け、
前記内気導入ダクトの前記吸着剤より下流側から、車外へ第2ダクトを延ばし、
前記吸着剤を乾燥させるモードでは、前記インテークドアで前記内気導入ダクトの出口を塞ぎ、ヒータで温められた外気が前記第1ダクトを通って、前記内気導入ダクトに吹き込まれ、温められた外気で前記吸着剤を乾燥させ、前記吸着剤を通過することで水分を含んだ外気は前記第2ダクトを通じて車外へ排出されるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、シャッタ機構は、アクチュエータを備えず、内気導入ダクトの内圧が車室の圧力より高いときに圧力差により閉じ、車室の圧力が内気導入ダクトの内圧より高いときに圧力差により開かれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ヒータで温められた空気を導く第1ダクトの出口に対して、吸着剤を挟んで第2ダクトの入口を設ける。吸着剤を乾燥させる再生モードでは、ヒータで温められた外気が内気導入ダクトに吹き込まれ、温められた外気で吸着剤を乾燥させ、吸着剤を通過することで水分を含んだ外気は第2ダクトを通じて車外へ排出される。即ち、吸着剤を通過して湿気を含んだ外気は、車室内を通過することなく車外へ排出される。このため、窓の曇りを心配する必要がない。
【0014】
また、従来のように湿った空気を一旦車室内へ吹き込む場合には、窓ガラスが曇らないように空気の量を絞る必要があるが、本発明によれば、その必要はなく多量の空気を流すことができる。結果、再生時間の大幅な短縮が可能となる。
【0015】
加えて、請求項1に係る発明では、第1ダクトの出口を吸着剤よりも下流側に配置し、第2ダクトの入口を吸着剤よりも上流側に配置する。即ち、内気を循環させる内気モードと、吸着剤を乾燥させる再生モードとで空気の流れる方向が逆になる。これにより、再生の効率を高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、ヒータで温められた空気を導く第1ダクトの出口に対して、吸着剤を挟んで第2ダクトの入口を設ける。吸着剤を乾燥させるモードでは、ヒータで温められた外気が内気導入ダクトに吹き込まれ、温められた外気で吸着剤を乾燥させ、吸着剤を通過することで水分を含んだ外気は第2ダクトを通じて車外へ排出される。即ち、吸着剤を通過して湿気を含んだ外気は、車室内を通過することなく車外へ排出される。このため、窓の曇りを心配する必要がない。
【0017】
また、従来のように湿った空気を一旦車室内へ吹き込む場合には、窓ガラスが曇らないように空気の量を絞る必要があるが、本発明によれば、その必要はなく多量の空気を流すことができる。結果、再生時間の大幅な短縮が可能となる。
【0018】
加えて、請求項2に係る発明では、第1ダクトの出口を吸着剤よりも上流側に配置し、第2ダクトの入口を吸着剤よりも下流側に配置する。これにより、第1ダクトを迂回して第2ダクトを配置する必要や、逆に第2ダクトを迂回して第1ダクトを設ける必要がなくなる。それぞれのダクトを迂回せずに配置することができることにより、車両用空調装置のコンパクト化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、シャッタ機構はアクチュエータを備えない。高価なアクチュエータを備えないことにより、シャッタ機構を安価に製造することができ、車両用空調装置も安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る空調装置を説明する図であり、車両用空調装置10は、車室の空気である内気を導入するための内気導入ダクト11と、この内気導入ダクト11の入口12に設けられ車室の内圧と内気導入ダクト11の内圧との差により開かれるシャッタ機構13と、このシャッタ機構13の下流に配置され内気に含まれる水分を吸着し除湿する吸着剤14と、入口16が車外に繋げられ車外の空気である外気を導入する外気導入ダクト17と、この外気導入ダクト17の出口18を塞ぐように配置され回動することにより内気と外気の導入を選択するインテークドア20と、このインテークドア20の下流に配置されフィルタ21を介してエバポレータ23に向かって空気を送るブロア24と、エバポレータ23の下流に配置されエバポレータ23を通過した空気を温めるヒータ25と、このヒータ25の上端に回動軸26が配置され回動することによりヒータ25を通過する空気の割合を調節するエアミックスドア27と、このエアミックスドア27の上方に配置されヒータ25を通過することにより温度が調節された空気を車内の窓に向かって吹出す第1吹出し口29と、この第1吹出し口29を塞ぐようにして配置され回動することにより第1吹出し口29から吹出される空気の割合を調節する第1調節ドア31と、この第1調節ドア31の右側に配置され温度が調節された空気を乗員の顔に向かって吹出す第2吹出し口32と、この第2吹出し口32を塞ぐようにして配置され回動することにより第2吹出し口32から吹出す空気の割合を調節する第2調節ドア33と、この第2調節ドア33の下方に配置され温度が調節された空気を乗員の足に向かって吹出す第3吹出し口34と、この第3吹出し口34の左方に入口36が設けられ内気導入ダクト11に出口37が繋げられる第1ダクト38と、第1ダクトの出口37から吸着剤14を挟んで入口41が設けられ出口42が車外に繋げられる第2ダクト43と、この第2ダクトの出口42に配置され第2ダクト43から車外に向かって空気が排出される力によって開かれるドア44とからなる。
【0021】
第1から第3吹出し口29、32、34及び第1ダクトの入口36を、まとめて空調ダクトの出口46という。即ち、ヒータ25の下流に配置される空気の出口が空調ダクトの出口である。
【0022】
ブロア24は、軸47を介して接続されるモータ48により作動され、このモータ48は、制御部49の指令により作動される。制御部49は、車室内の空調パネルが操作されることにより、この操作に基づいてモータ48に指令を出す。
【0023】
インテークドア20は、制御部51からの指令を受けたモータ52により内気導入ダクトの出口53まで回動される。この制御部51は、車室内の空調パネルを操作することにより、この操作に基づいてモータ52に指令を出す。
【0024】
同様に制御部55の指令によりモータ56、57、58が作動され、モータ56、57、58により、エアミックスドア27、第1調節ドア31、第2調節ドア33が回動される。エアミックスドア27、第1調節ドア31、第2調節ドア33はそれぞれP1、P2、P3まで回動される。
【0025】
なお、ヒータ25には、エンジン冷却水を用いるヒータコアの他PTCヒータ等の電気ヒータであっても用いることができる。
また、シャッタ機構13は内気導入ダクト11の内圧と車室の内圧との差により開かれる機械的な構造の他、シャッタ機構にモータを介して制御部を接続し、制御部の指令により作動するような電気的な構造とすることもできる。
内気導入ダクト11の内圧と車室の内圧との差により開かれる構造とした場合は、高価なアクチュエータを備えないことにより、シャッタ機構を安価に製造することができ、車両用空調装置も安価に製造することができる。
さらに、吸着剤14は、ハニカム状ゼオライトや高分子吸着剤等で構成することができる。
【0026】
このような車両用空調装置10の作用を以下に説明する。
図に示すようにエアミックスドア27の先端がP4の位置にある場合は、エバポレータ23を通過した空気の全てがヒータ25を通過することとなり、空気を十分に温めることができる。このような温められた空気は、第1調節ドア31、第2調節ドア33を閉じることにより、第3吹出し口34から吹出される。
【0027】
また、ヒータ25により温められた空気のうち第3吹出し口34から吹出される空気以外の空気は、第1ダクトの入口36から第1ダクト38を通過して、内気導入ダクト11内へと戻される。
【0028】
このように第1、第2吹出し口29、32から車室内に向かって空気を吹出さず、第3吹出し口34のみで車室内に向かって空気を吹出すモードをフットモードという。
フットモードでは、エバポレータ23を通過した空気の全て又は大部分がヒータ25を通過する。即ち、ヒータ25を通過する空気の量が多いため、ヒータ25にかかる負荷が最大になる。このため、フットモードではヒータ25にかかる負荷を軽減すべく、内気を循環させている。
【0029】
第3吹出し口34から矢印(6)で示すように車室内に向かって吹出された温かい空気は、車室内を循環して、ブロア24の作用により矢印(7)で示すように内気導入ダクトの入口12から車両用空調装置10内に戻ってくる。このとき、車室内を循環した空気は乗員の汗や呼吸を吸収して、水分を多く含んだ空気となっている。
【0030】
この水分は、吸着剤14で吸着、除湿される。除湿された空気は、フィルタ21で浄化され、ブロア24を介してエバポレータ23へ送られる。ヒータ25を通過した空気は、再び車室内へ吹出される。このように内気を循環させるモードを内気モードという。即ち、図1に示す状態は内気モード且つフットモードである。
【0031】
内気モードによる運転を行っている場合は、一度温められた空気を再度温め直す。このため、冷たい外気を取り入れる場合に比べ、ヒータ25を温めるのに必要なエネルギを軽減することができる。これにより、ヒータ25にかかる負荷を軽減させることができる。
【0032】
しかし、内気モードでの運転を続けていると、次第に吸着剤14の吸着能力が低下してくる。従って、吸着剤14を乾燥させることにより、吸着剤14を再生させる必要がある。
吸着剤14の再生は、外気を取り入れる外気モードによって行う。外気モードの詳細については次図で説明する。
【0033】
図2は本発明に係る外気モードを説明する図であり、内気モードで所定の時間が経過した場合に、制御部51はモータ52を作動させる。モータ52が作動することにより、インテークドア20は回動され、内気導入ダクト11の出口53が閉じられる。
【0034】
内気導入ダクト11の出口53を閉じた場合であっても、ブロア24は作動し続けている。ブロア24の作用で、矢印(8)で示すように車外から外気が取込まれる。
取込まれた外気は、フィルタ21で浄化された後、ブロア24によりエバポレータ23に向かって送られる。エバポレータ23、ヒータ25を通過した空気は、一部が第3吹出し口34から車室内へ吹出され、残部が矢印(9)で示すように第1ダクトの入口36から第1ダクト38へと取込まれる。
【0035】
第1ダクト38へ取込まれた外気は、内気導入ダクト11に吹込まれる。内気導入ダクト11に吹込まれた外気は、矢印(10)で示すように吸着剤14を通過する。このとき外気は乾燥している上に温められているため、吸着剤14は良好に乾燥される。吸着剤14から水分を受け取って湿った空気は、矢印(11)で示すように、第2ダクト43から車外へ排出される。
【0036】
このとき第2ダクトの出口42に、空気を排出する力により開くドア44を設ける。これにより、空気を排出しない際に車外からの空気の逆流を防ぐことができる。
【0037】
ヒータ25で温められた空気を導く第1ダクトの出口37に対して、吸着剤14を挟んで第2ダクトの入口41を設ける。吸着剤14を乾燥させるモード(外気モード)では、ヒータ25で温められた外気が内気導入ダクト11に吹き込まれ、温められた外気で吸着剤14を乾燥させる。吸着剤14を通過することで水分を含んだ外気は第2ダクト43を通じて車外へ排出される。即ち、吸着剤14を通過して湿気を含んだ外気は、車室内を通過することなく車外へ排出される。このため、車室内の窓が曇る心配がない。
また、車室内の窓を曇らせないように、湿気を含んだ外気を少しずつ排出する必要がない。即ち、吸着剤14を乾燥させる際に車外から取込まれる空気の量(矢印(8))を調節する必要がなく、短時間で吸着剤14を乾燥させることができる。
【0038】
加えて、第1ダクトの出口37を吸着剤14よりも下流側に配置し、第2ダクトの入口41を吸着剤14よりも上流側に配置する。これにより、内気を循環させる内気モード(図1参照)と、吸着剤14を乾燥させるモード(外気モード)とで空気の流れる方向が逆になる。吸着剤14の微細な穴に、内気モードの流れに沿って上流ほど多くの水分子が吸着していることが考えられる。外気モードで空気の流れを逆にすることにより、再生用空気の湿度を徐々に上昇させながら吸着剤14の微細な穴から水分子を簡単に外すことができる。これにより、吸着剤14の再生の効率を更に向上させることができる。
【0039】
外気モードは、このように吸着剤14を乾燥させる場合の他、ヒータ25にかかる負荷が小さい場合にも選択される。ヒータ25にかかる負荷が小さい場合は、外気モードのみによって車両用空調装置10が作動され、内気モードによる運転は行われない。詳細は次図で説明する。
【0040】
図3は本発明に係る車両用空調装置の運転モードを説明する図であり、(a)に示すモードを、デフモードという。即ち、デフモードでは、エアミックスドア27を開くことにより、エバポレータ23を通過した空気がヒータ25を通過する。ヒータを通過した温かい空気は、第1調節ドア31を全開にすることにより、窓に向かって吹付けられ、窓の曇りを除去することができる。
【0041】
デフモードは、乗員が窓の曇りを除去したいときに一時的に選択することが多く、窓の曇りが除去されることにより、その目的を達する。即ち、使用時間が限られているため、デフモードではヒータ25にかかる負荷が小さい。従って、デフモードでは、内気を循環させる内気モードにする必要がない。従って、デフモードでは常に外気モードが選択される。
【0042】
(b)に示すモードを、バイレベルモードという。即ち、バイレベルモードでは、エアミックスドア27の開きを半分くらいにし、エバポレータ23のみを通過する空気とエバポレータ23を通過しヒータ25を通過する空気との割合を半分ずつにする。このようにして温度が調節された空気を、第2調節ドア33を半分開くことにより、第2吹出し口32及び第3吹出し口34から吹出す。
【0043】
バイレベルモードでは、エバポレータ23を通過した空気の半分しかヒータ25を通過しない。即ち、ヒータ25にかかる負荷が小さい。従って、バイレベルモードでは、内気を循環させる内気モードにする必要がない。従って、バイレベルモードでは常に外気モードが選択される。
【0044】
(c)に示すモードをフット/デフモードという。前述したフットモード(図1参照)とデフモード(図3(a)参照)とを同時に行うモードである。即ち、エバポレータ23を通過した空気がヒータ25を通過し、第1吹出し口29及び第3吹出し口34の両方から吹出される。
【0045】
フット/デフモードは、気温が冷たく且つ窓が曇りやすい場合に、選択される。例えば、寒冷地では外気が冷たい上に、外気が冷たいことにより窓が曇りやすい。このような場合に、フット/デフモードで継続的に運転を行う。
【0046】
フット/デフモードでは、エバポレータ23を通過した空気の全て又は大部分がヒータ25を通過するため、ヒータ25にかかる負荷が大きい。従って、フット/デフモードでは、内気モードと外気モードとを切り替えながら使用する必要がある。
車両用空調装置の作用の詳細を次図で説明する。
【0047】
図4は本発明に係る車両用空調装置の作用の詳細を説明するフロー図であり、ステップ(以下「ST」とする。)01で第1設定温度T1(例えば75℃)と第2設定温度T2(例えば60℃)を設定し、ST02で内気モード所定時間ti(例えば4分)と外気モード所定時間to(例えば1分)を設定する。
【0048】
次に制御部(図1符号55)は、フットモードになっているかを判断し(ST03)、フットモードになっている場合は、ヒータに接続されるセンサが冷却水の温度Twを計測する(ST04)。
【0049】
ST03でフットモードになっていない場合は、ST06に進み制御部(図1符号55)は、フット/デフモードになっているかを判断する。フット/デフモードでない場合は、制御部(図1符号51)がインテークドアを回動させ外気モードにして(ST07)、終了する。
フット/デフモードになっている場合は、ST04に進む。
【0050】
ST04に戻り、冷却水の温度Twの計測結果は制御部(図1符号51)に送られる。
次に、ST09で制御部(図1符号51)は、冷却水温度Twが第1設定温度T1未満であるかを判断する。冷却水温度Twが第1設定温度T1未満である場合に、制御部(図1符号51)はインテークドアを回動させ、内気モードにする(ST10)。
【0051】
一方、冷却水温度Twが第1設定温度T1以上の場合は、ヒータの加熱能力が十分となるので、制御部(図1符号51)はインテークドアを回動させ、外気モードにする(ST11)。
【0052】
ST11で外気モードにした後、ST12で冷却水温度Twを計測する。このときの冷却水温度Twが第2設定温度T2未満であるかを、制御部(図1符号51)は判断する(ST13)。冷却水温度Twが第2設定温度T2未満であれば、ヒータの加熱能力が不十分となる。冷却水温度Twが第2設定温度T2未満であれば、終了する。
一方、冷却水温度Twが第2設定温度T2以上である場合は、ST12に戻る。
【0053】
ST10に戻り、内気モードとなった後、ST15で制御部(図1符号51)は、内気モードに切替わってからの時間t1の計測を開始する。続いて、ST16で制御部(図1符号51)は、時間t1が内気モード所定時間ti以上であるかを判断する。即ち、所定時間を経過したかを判断する。時間t1が内気モード所定時間ti以上である場合は、制御部(図1符号51)はインテークドアを作動させ、外気モードにする(ST17)。
時間t1が内気モード所定時間ti未満である場合は、ST16に戻る。
【0054】
ST17で外気モードにしたら、ST19で制御部(図1符号51)は、外気モードに切替わってからの時間t2の計測を開始する。次に制御部(図1符号51)は、時間t2が外気モード所定時間to以上であるかを判断する(ST20)。時間t2が外気モード所定時間to以上である場合は終了し、時間t2が外気モード所定時間to未満である場合は、ST20に戻る。
【0055】
以下に本発明に係る車両用空調装置の別実施例を説明する。
図5は図2の別実施例図であり、図2と共通要素は符号を流用して、詳細な説明は省略する。第1ダクトの出口61を吸着剤14の上流側に配置し、第2ダクトの入口62を吸着剤14の下流側に配置した。
このように構成した場合であっても、吸着剤14を乾燥させる際に窓の曇りを心配する必要がなく、短時間で吸着剤14を乾燥させるという本発明の効果を得ることができる。
【0056】
第1ダクトの出口61を吸着剤14よりも上流側に配置し、第2ダクトの入口62を吸着剤よりも下流側に配置する。これにより、第1ダクト63を迂回して第2ダクト64を配置する必要や、逆に第2ダクト64を迂回して第1ダクト63を設ける必要がなくなる。それぞれのダクトを迂回せずに配置することができることにより、車両用空調装置65のコンパクト化を図ることができる。
【0057】
尚、本発明に係る第1ダクトの入口は、実施の形態では第3吹出し口の側方に配置したが、ヒータの下流であってこのヒータ付近に配置することも可能である。即ち、第1ダクトの入口は、ヒータよりも下流側であれば、第3吹出し口の側方に配置される構造に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の車両用空調装置は、四輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る空調装置を説明する図である。
【図2】本発明に係る外気モードを説明する図である。
【図3】本発明に係る車両用空調装置の運転モードを説明する図である。
【図4】本発明に係る車両用空調装置の作用の詳細を説明するフロー図である。
【図5】図2の別実施例図である。
【図6】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
10、65…車両用空調装置、11…内気導入ダクト、13…シャッタ機構、14…吸着剤、17…外気導入ダクト、18…外気導入ダクトの出口、20…インテークドア、24…ブロア、25…ヒータ、37、61…第1ダクトの出口、38、63…第1ダクト、41、62…第2ダクトの入口、43、64…第2ダクト、46…空調ダクトの出口、53…内気導入ダクトの出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の空気である内気を内気導入ダクトで導入し、この内気導入ダクトに内気の水分を吸着して徐湿する吸着剤を介在させ、車外の空気である外気を外気導入ダクトで導入し、前記内気導入ダクトと外気導入ダクトとの出口にインテークドアを設けて前記内気と外気の導入を選択できるようにし、ブロアで吸引加圧した前記内気又は外気をヒータで温め、空調ダクトの出口から車室内などへ吹き出すようにした車両用空調装置において、
前記空調ダクトの出口と前記内気導入ダクトの前記吸着剤より下流側との間に、第1ダクトを掛け渡し、
前記内気導入ダクトの前記吸着剤より上流側から、車外へ第2ダクトを延ばし、この第2ダクトの入口よりも上流側位置にて、前記内気導入ダクトに、この内気導入ダクトの内圧が車室の圧力より高いとき閉じるシャッタ機構を設け、
前記吸着剤を乾燥させるモードでは、前記インテークドアで前記内気導入ダクトの出口を塞ぎ、ヒータで温められた外気が前記第1ダクトを通って、前記内気導入ダクトに吹き込まれ、温められた外気で前記吸着剤を乾燥させ、前記吸着剤を通過することで水分を含んだ外気は前記第2ダクトを通じて車外へ排出されるようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車室の空気である内気を内気導入ダクトで導入し、この内気導入ダクトに内気の水分を吸着して徐湿する吸着剤を介在させ、車外の空気である外気を外気導入ダクトで導入し、前記内気導入ダクトと外気導入ダクトとの出口にインテークドアを設けて前記内気と外気の導入を選択できるようにし、ブロアで吸引加圧した前記内気又は外気をヒータで温め、空調ダクトの出口から車室内などへ吹き出すようにした車両用空調装置において、
前記空調ダクトの出口と前記内気導入ダクトの前記吸着剤より上流側との間に、第1ダクトを掛け渡し、この第1ダクトの出口よりも上流側位置にて、前記内気導入ダクトに、この内気導入ダクトの内圧が車室の圧力より高いとき閉じるシャッタ機構を設け、
前記内気導入ダクトの前記吸着剤より下流側から、車外へ第2ダクトを延ばし、
前記吸着剤を乾燥させるモードでは、前記インテークドアで前記内気導入ダクトの出口を塞ぎ、ヒータで温められた外気が前記第1ダクトを通って、前記内気導入ダクトに吹き込まれ、温められた外気で前記吸着剤を乾燥させ、前記吸着剤を通過することで水分を含んだ外気は前記第2ダクトを通じて車外へ排出されるようにしたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
前記シャッタ機構は、アクチュエータを備えず、前記内気導入ダクトの内圧が前記車室の圧力より高いときに圧力差により閉じ、前記車室の圧力が前記内気導入ダクトの内圧より高いときに圧力差により開かれることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−137598(P2010−137598A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313229(P2008−313229)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】