説明

車両用空調装置

【課題】冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を1つのケースに収容する場合に、組立作業性及び他の部品のレイアウト性を良好にしながら、冷却用熱交換器で発生した凝縮水の洩れを未然に防止する。
【解決手段】ケース5は、底壁部24を有し、上方に開放するように形成された下ケース部材21と、下方に開放するように形成された上ケース部材20とに分割されて両ケース部材20、21が組み合わされてなる。加熱用熱交換器4は、下ケース部材21の開放部からケース5の内部に挿入されて両ケース部材20、21で挟まれるように配置されている。下ケース部材21の底壁部24には、冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排水するための排水孔30が形成されている。排水孔30の開口中心部Aと、上ケース部材20及び下ケース部材21の分割面Xとを結ぶ直線が、水平面Lに対し15゜以上傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の車両用空調装置として、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器と、これら熱交換器を収容するケースとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この空調装置は、ケース内に導入された空気を冷却用熱交換器や加熱用熱交換器を通過させることによって調和空気を生成するように構成されており、冷却用及び加熱用熱交換器を1つのケースに収容したことで、空調装置をコンパクトにまとめることができるようになっている。また、調和空気の生成時に冷却用熱交換器に発生した凝縮水は、ケースの底壁部に形成された排水孔を通ってケース外部に排水されるようになっている。
【特許文献1】特開2008−62803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1のように冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器の両方を1つのケースに収容する構造を採用した場合、空調装置のコンパクト化を図ることができる反面、製造現場で両熱交換器を1つのケースに組み付けなければならず、組立作業が煩雑になってしまう虞れがある。
【0004】
そこで、ケースの側壁部に熱交換器の挿入孔を形成しておき、その挿入孔から熱交換器をケース内部に挿入して組み付けることが考えられる。しかし、凝縮水の発生量が多い状況では、凝縮水がケースの底壁部に一時的に溜まってしまうことがあり、このような場合に、車両が斜面や凹凸のある道路を走行すると凝縮水が挿入孔からケース外部へ洩れてしまう虞れがある。このことは、挿入孔をケースの底壁部から上方に離しておくことである程度解決可能であるが、そのようにした場合には、熱交換器のケースへの組み付け位置を底壁部から上に大きく離さざるを得ず、熱交換器が、ケースに組み付けられる他の部品の邪魔になってしまい、該部品のレイアウト性が悪化する。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を1つのケースに収容する場合に、組立作業性及び他の部品のレイアウト性を良好にしながら、冷却用熱交換器で発生した凝縮水の洩れを未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、ケースを上ケース部材と下ケース部材とに分割して、熱交換器をこれらケース部材の少なくとも一方の開放部からケースの内部に挿入して両ケース部材で挟むようにし、さらに、ケースの分割面の位置を排水孔の開口よりも所定以上高い位置となるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、冷却用熱交換器と、加熱用熱交換器と、該両熱交換器を収容するケースとを備え、該ケースに導入された空気を上記冷却用熱交換器乃至上記加熱用熱交換器を通過させて調和空気とするように構成された車両用空調装置において、上記ケースは、底壁部を有し、上方に開放するように形成された下ケース部材と、下方に開放するように形成された上ケース部材とに分割されて両ケース部材が組み合わされてなり、上記冷却用熱交換器及び上記加熱用熱交換器は、上記上ケース部材及び上記下ケース部材の少なくとも一方の開放部から上記ケースの内部に挿入されて該両ケース部材で挟まれるように配置され、上記下ケース部材の底壁部には、上記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排水するための排水孔が形成され、上記排水孔の開口中心部と、上記上ケース部材及び上記下ケース部材の分割面とを結ぶ直線が、水平面に対し15゜以上傾斜している構成とする。
【0008】
この構成によれば、熱交換器をケースに組み付ける際には、上ケース部材及び下ケース部材の少なくとも一方の開放部からケース内部に挿入して両ケース部材で挟めばよく、ケースの側壁部に熱交換器を挿入するための挿入孔を形成することなく、熱交換器をケースに容易に組み付けることが可能になる。そして、下ケース部材の排水孔の開口中心部と、ケースの分割面とを結ぶ直線が、水平面に対し15゜以上傾斜しているので、分割面を排水孔の開口よりも十分に高い所に位置付けることが可能になる。よって、凝縮水が上ケース部材と下ケース部材との間からケース外部に洩れなくなる。
【0009】
また、上記の如く熱交換器の位置に関わらず、分割面の位置によって凝縮水の洩れを防止できるので、熱交換器の位置は自由に設定可能になり、熱交換器を他の部品の邪魔にならないように配置することが可能になる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器の少なくとも一方は、熱交換媒体が流通するチューブを有するととともに、該チューブの延びる方向が水平面に対し15゜以下の角度となるように、横置きされている構成とする。
【0011】
この構成によれば、熱交換器を横置きにすることで、ケースの高さ寸法を短くすることが可能になる。
【0012】
第3の発明では、第1または2の発明において、下ケース部材の内部には、熱交換器を載置するための載置部が形成され、上記熱交換器は、上記下ケース部材の開放部から挿入されるように構成されているものとする。
【0013】
この構成によれば、熱交換器の組付時に、熱交換器を下ケース部材の開放部から内部に挿入して載置部に載置することで仮保持することが可能になる。
【0014】
第4の発明では、第1から3のいずれか1つの発明において、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器の少なくとも一方には、熱交換媒体の供給管及び排出管が接続され、上記供給管及び上記排出管は、上ケース部材及び下ケース部材の間からケース外部へ延びるように形成され、上記ケースには、上記供給管及び上記排出管の周囲をシールするシール部が設けられている構成とする。
【0015】
この構成によれば、供給管及び排出管を両ケース部材の間に配置するだけで、ケースに対し簡単に組み付けることが可能になる。そして、供給管及び排出管の周囲がシール部によりシールされるので、ケース内に導入された空気が外部に洩れ難くなる。
【0016】
第5の発明では、第4の発明において、ケースのシール部は、供給管と排出管との間に挿入されるように形成されている構成とする。
【0017】
この構成によれば、供給管と排出管との間を確実にシールすることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を、上ケース部材及び下ケース部材の少なくとも一方の開放部からケースの内部に挿入して該両ケース部材で挟むようにしたので、組立作業性を良好にできる。また、下ケース部材の排水孔の開口中心部と、ケースの分割面とを結ぶ直線を15゜以上傾斜させたので、分割面を排水孔の開口よりも十分に高い所に位置付けることができ、凝縮水がケース部材の間から洩れるのを未然に防止できる。さらに、そのように熱交換器の位置に関わらず凝縮水の洩れを未然に防止できるので、熱交換器の位置を他の部品の邪魔にならないように設定でき、該部品のレイアウト性を良好にできる。
【0019】
第2の発明によれば、熱交換器を横置きにしたので、ケースの高さ寸法を短くでき、空調装置のレイアウト自由度を向上できる。
【0020】
第3の発明によれば、熱交換器を下ケース部材の開放部からケースの内部に挿入して載置部に載置することで、組立時に下ケース部材に仮保持させておくことができ、組立作業性をより一層良好にできる。
【0021】
第4の発明によれば、熱交換器の供給管及び排出管を上ケース部材と下ケース部材との間からケース外部へ延びるように形成したので、供給管及び排出管をケースに対し簡単に組み付けることができる。そして、供給管及び排出管の周囲をケースのシール部でシールして空気を洩れにくくすることができるので、風量の低下を防止できる。
【0022】
第5の発明によれば、熱交換器の供給管と排出管との間にシール部を挿入するようにしたので、供給管と排出管との間を確実にシールできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の分解斜視図であり、この空調装置1は、自動車の室内に搭載されるものである。この空調装置1は、送風ファン2、冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4が1つのケース5(図3に示す)に収容された、いわゆるフルセンタタイプの空調装置1であり、車室前端に配設されたインストルメントパネル(図示せず)内において車幅方向中央部に収容されている。このインストルメントパネルには、ベント吹出口及びデフロスタ吹出口が形成されており、これら吹出口には、インストルメントパネル内部に設けられたベントダクト及びデフロスタダクト(共に図示せず)の下流端部がそれぞれ接続されている。
【0025】
尚、この実施形態では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0026】
空調装置1は、上記送風ファン2、冷却用熱交換器3、加熱用熱交換器4及びケース5の他に、冷却用熱交換器3に接続される膨張弁(図示せず)を内蔵した膨張弁ブロック6と、内外気切替箱(図示せず)とを備えている。送風ファン2の回転により内外気切替箱を介してケース5内に導入された空気を冷却用熱交換器3を通過させ、その空気を必要に応じて加熱用熱交換器4を通過させることにより調和空気を生成した後、ベントダクトやデフロスタダクト等によって車室の各部に供給できるようになっている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ケース5の前側上部には、送風ファン2を収容するスクロールケーシング10がその中心線を左右方向に向けた形状となるように一体に形成されている。ケース5のスクロールケーシング10よりも下方には、冷却用熱交換器3、加熱用熱交換器4及び温度調節ダンパ(図示せず)を収容する熱交換器収容部11が設けられている。ケース5のスクロールケーシング10よりも後方には、調和空気の吹出方向を切り替えるための吹出方向切替ダンパ(図示せず)を収容する吹出方向切替部12が設けられている。
【0028】
ケース5は、全体が樹脂材で構成されており、上下方向の中間部に設定された上下分割面X(図3に仮想線で示す)によって上ケース部材20と下ケース部材21とに分割されている。さらに、上ケース部材20は、図1に示すように、左右方向の中央部に設定された左右分割面(図示せず)によって左ケース部材22と右ケース部材23とに分割されている。左右分割面は、上下方向に延びている。
【0029】
上下分割面Xは、具体的には、熱交換器収容部11の上下方向中間部に位置している。従って、スクロールケーシング10、熱交換器収容部11の上側部分及び吹出方向切替部12は、上ケース部材20に形成され、熱交換器収容部11の下側部分は、下ケース部材21に形成されることになる。上ケース部材20は、下方に開放する開放部20a(図2及び図4に示す)を有し、下ケース部材21は、上方に開放する開放部21aを有している。下ケース部材21は、ケース5の底壁部24も有している。
【0030】
上下分割面Xは、ケース5の前端部から前後方向中央部近傍まで下降傾斜しながら延びて上方へ屈曲した後、ケース5の後端部へ向けて下降傾斜しながら延びている。上下分割面Xの最も下に位置する部分は、後端部である。図4に示すように、この上下分割面Xの形状に対応して上ケース部材20の下端部の形状及び下ケース部材21の上端部の形状が設定されることになる。
【0031】
図2に示すように、左ケース部材22には、スクロールケーシング10の左半分、熱交換器収容部11の上側の左半分及び吹出方向切替部12の左半分が形成され、右ケース部材23には、スクロールケーシング10の右半分、熱交換器収容部11の上側の右半分及び吹出方向切替部12の右半分が形成されている。
【0032】
スクロールケーシング10の左側壁には、吸い込み孔10aが形成されており、吸い込み孔10aの周囲には、内外気切替箱が吸い込み孔10aに連通するように取り付けられるようになっている。内外気切替箱は、車室外の空気と車室内の空気との一方を選択的に取り入れるように構成された従来周知のものであるため、詳細な構造の説明は省略する。
【0033】
図1に示すように、スクロールケーシング10の右側壁には、送風ファン2をスクロールケーシング10の内部に挿入するためのファン挿入孔10bが形成されている。このファン挿入孔10bと吸い込み孔10aとは同軸上に位置している。スクロールケーシング10に収容される送風ファン2は、遠心式ファンであり、回転軸が左右方向に向いている。送風ファン2には、モーター27の出力軸が連結されている。モーター27は、ファン挿入孔10bを閉塞する円形の閉塞板28に固定されている。この閉塞板28の周縁部がスクロールケーシング10の右側壁に締結固定されている。内外気切替箱から吸い込まれた空気は、スクロールケーシング10の内部をその下部から後部、上部、前部へと順に流れた後、下部から流出して熱交換器収容部11内に流入するようになっている。
【0034】
ケース5の熱交換器収容部11は、スクロールケーシング10よりも左右両方向に張り出した形状となっており、ケース5の略下半部において前後方向両端に亘って形成されている。
【0035】
図3に示すように、ケース5の底壁部24は、前後方向の中央部が最も下に位置するように形成されている。すなわち、底壁部24の前半部24aは、後側へ向かって下降傾斜しており、後半部24bは、前側へ向かって下降傾斜している。前半部24aの傾斜角度は、後半部24bの傾斜角度よりも大きくなっている。また、底壁部24の前後方向中央部は、右側へ向けて緩く傾斜している。つまり、底壁部24の前後方向中央部の右端が最も低くなっている。尚、空調装置1を車両に搭載すると、図3のような姿勢となる。
【0036】
図3及び図4に示すように、底壁部24の前後方向中央部の右端には、冷却用熱交換器3に発生した凝縮水を排水するための排水孔30が形成されている。排水孔30の上流端は、底壁部24の内面に開口している。排水孔30は、上流端開口から右側へ向けて下降傾斜して延びており、下流端はケース5の外面に開口している。この排水孔30の下流端開口には、図示しないが、車室外部へ延びる排水ホースが接続されるようになっている。
【0037】
この排水孔30の上流端と上下分割面Xとの位置関係は、図3に示すように、上流端の開口中心部Aと、上下分割面Xのうち最も低い部位Bとを結ぶ直線が、水平面Lに対し15゜以上傾斜するように設定されている。これにより、下ケース部材21の上端部が排水孔30の開口に対し十分に高い所に位置することになる。このように下ケース部材21の上端部と排水孔30の開口との位置関係を設定しているのは、詳細は後述するが、冷却用熱交換器3で発生した凝縮水が底壁部24にある程度溜まっても、上ケース部材20と下ケース部材21との間から洩れないようにするためである。
【0038】
図1に示すように、下ケース部材21の底壁部24における前部の左右両側には、冷却用熱交換器3の下部の左右両側が嵌るように形成された冷却用熱交換器載置部21b(図1には右側のもののみ示す)がそれぞれ設けられている。また、下ケース部材21の左右両側壁には、それぞれ、加熱用熱交換器4の周縁部が載置される加熱用熱交換器載置部21c(図1には右側のもののみ示す)がケース5内へ膨出する段差をなすように設けられている。加熱用熱交換器載置部21cは、前後方向に延びている。
【0039】
ここで、冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4の構造について説明する。冷却用熱交換器3は、扁平チューブとコルゲートフィンとを交互に並べて設けたコア3aと、チューブの両端部にそれぞれ配設された一対のタンク3b、3bとを備えており、冷凍サイクルの一要素を構成するエバポレータで構成されている。タンク3b、3b内には仕切板(図示せず)が配設されており、この仕切板によって熱交換器3内の冷媒(熱交換媒体)の流れパターンが形成されている。この冷却用熱交換器3は、一方のタンク3bが上側に位置し、他方のタンク3bが下側に位置するように縦置きされ、かつ、チューブ及びフィンの並ぶ方向が左右方向となるようにしてケース5内に収容されるようになっている。上側のタンク3bの右端部には、膨張弁ブロック5が取り付けられている。膨張弁ブロック5はケース5の側壁を貫通して外部に臨んでいる。膨張弁ブロック5には、冷媒の供給管31及び排出管32の基端部が接続されている。これら供給管31及び排出管32は前方へ延びており、その前側はケース5に設けられたブラケット(図示せず)に支持され、車両のダッシュパネル(図示せず)を貫通してエンジンルーム(図示せず)に突出するようになっている。
【0040】
加熱用熱交換器4は、扁平チューブとコルゲートフィンとを交互に並べて設けたコア4aと、チューブの両端部にそれぞれ配設された一対のタンク4b、4bとを備えており、エンジンの冷却水(熱交換媒体)が流通するヒータコアで構成されている。加熱用熱交換器4は、一方のタンク4bが前側に位置し、他方のタンク4bが後側に位置するように横置きされ、かつ、チューブ及びフィンの並ぶ方向が左右方向となるようにしてケース5内に収容されるようになっている。加熱用熱交換器4は、冷却用熱交換器3から後側へ離れ、かつ、チューブの延びる方向が水平面に対し15゜以下となるように配置されている。加熱用熱交換器4の前側タンク4bの右端部には、エンジン冷却水の供給管33及び排出管34の基端部が接続されている。図4にも示すように、これら供給管33及び排出管34は、前側タンク4bの上下方向に間隔をあけて並んでおり、図3に示すように、上ケース部材20と下ケース部材21との間からケース5外部へ延びるように形成されている。供給管33及び排出管34の先端側は、上記冷却用熱交換器3の供給管31及び排出管32と同様に、ダッシュパネルを貫通してエンジンルームに突出するようになっている。
【0041】
図4に示すように、上ケース部材20の熱交換器収容部11の内部には、冷却用熱交換器3の上部に当接する冷却用熱交換器保持部20bが形成されている。冷却用熱交換器3は、下ケース部材21の冷却用熱交換器載置部21bと、上ケース部材22の冷却用熱交換器保持部20bとで上下方向に挟まれた状態で固定されるようになっている。
【0042】
また、熱交換器収容部11の後側の下部には、加熱用熱交換器3に上方から当接する加熱用熱交換器保持部20cが形成されている。加熱用熱交換器4は、下ケース部材21の加熱用熱交換器載置部21cと、上ケース部材22の加熱用熱交換器保持部20cとで上下方向に挟まれた状態で固定されるようになっている。
【0043】
また、図1及び図2に示すように、下ケース部材21の後側には、加熱用熱交換器4の左右両端面及び後端面を覆うように上方へ延出する延出板21dが一体成形されている。
【0044】
ケース5には、図5に拡大して示すように、加熱用熱交換器4の供給管33及び排出管34の周囲をシールするシール部40が設けられている。シール部40は、図4にも示すように、供給管33と排出管34との間に挿入されて配置される挿入部材40aと、延出部21dに形成された下側切欠部40bと、上ケース部材20に形成された上側切欠部40cとで構成されている。挿入部材40aは、排出管34の外周面の下側約半分に接触するとともに、供給管33の外周面の上側約半分に接触するように形成されている。上側切欠部40cは、排出管34の外周面の上側約半分及び挿入部材40aの上側約半分が嵌る形状とされている。また、下側切欠部40bは、供給管33の外周面の下側約半分及び挿入部材40aの下側約半分が嵌る形状とされている。
【0045】
また、図1及び図2に示すように、上ケース部材20の吹出方向切替部12には、デフロスタ口45、ベント口46及びフット口47が形成されている。デフロスタ口45には、インストルメントパネル内のデフロスタダクトが接続され、ベント口46には、ベントダクトが接続されるようになっている。また、フット口47には、フットダクト(図示せず)が接続されるようになっている。
【0046】
温度調節ダンパは、加熱用熱交換器4の上方に設けられている。この温度調節ダンパの動作により、冷却用熱交換器3を通過した空気のうち、加熱用熱交換器4を通過する空気の量が変更されるようになっている。これにより、所望温度の調和空気が得られるようになっている。
【0047】
また、温度調節ダンパの上方には、吹出方向切替ダンパが設けられている。この吹出方向切替ダンパの動作により、デフロスタ口45、ベント口46及びフット口47を開閉して調和空気を所望の箇所に供給できるようになっている。
【0048】
また、図示しないが、ケース5の側壁には、加熱用熱交換器4よりも上方に、温度調節ダンパに連結されるリンク及びアクチュエータが設けられるとともに、吹出方向切替ダンパに連結されるリンク及びアクチュエータが設けられている。
【0049】
次に、上記のように構成された空調装置1の製造方法について説明する。まず、図1に示すように、冷却用熱交換器3の下半部を下ケース部材21の開放部21aから該ケース部材21内に挿入して冷却用熱交換器載置部21bに載置する。また、加熱用熱交換器4を同様に下ケース部材21の開放部21aから該ケース部材21内に挿入して加熱用熱交換器載置部21cに載置する。さらに、左ケース部材22及び右ケース部材23に温度調節ダンパや吹出方向切替ダンパを組み付けた後、左ケース部材22と右ケース部材23とを一体化して上ケース部材20を得る。
【0050】
その後、上ケース部材20と下ケース部材21とを一体化する。すなわち、下ケース部材21の冷却用熱交換器3の上半部を上ケース部材20の開放部20aから該上ケース部材20内に挿入していき、上ケース部材20の開放部20aと下ケース部材21の開放部21aとを合わせて両ケース部材20、21をビス等で締結する。すると、冷却用熱交換器3が、下ケース部材21の冷却用熱交換器載置部21bと上ケース部材20の冷却用熱交換器保持部20bとで挟まれるようになるとともに、加熱用熱交換器3も下ケース部材21の加熱用熱交換器載置部21cと上ケース部材20の加熱用熱交換器保持部20cとで挟まれる。このように、両熱交換器3、4をケース5に組み付ける際には、下ケース部材21の開放部21aからケース5内部に挿入して上ケース部材20及び下ケース部材21で挟むことができるため、ケース5の側壁部に挿入孔を形成することなく、冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4をケース5に容易に組み付けることが可能である。
【0051】
次に、上記のように構成された空調装置1の動作について説明する。ケース5内に導入された空気は冷却用熱交換器3を通過する際に冷却された後、温度調節ダンパにより加熱用熱交換器4を通過する量が調整されて所望温度の調和空気とされる。調和空気の吹出方向は、吹出方向切替ダンパにより切り替えられて、車室の所望部位に供給される。
【0052】
空気が冷却用熱交換器3を通過する際、チューブやフィンの表面に凝縮水が発生する。この凝縮水はケース5の底壁部24に滴下して底壁部24の最も低い部位である前後方向中央部の右側に流れた後、排水孔30から外部へ排水される。
【0053】
凝縮水の発生量が多い場合には、凝縮水が底壁部24に溜まり、この状態で車両が斜面や凹凸のある道路を走行すると、凝縮水が上方に飛散したり水面が底壁部24よりも上に位置するようになることがある。このとき、本空調装置1では、排水孔30の上流端の開口中心部Aと、上下分割面Xのうち最も低い部位Bとを結ぶ直線を、水平面Lに対し15゜以上傾斜させているので、下ケース部材21の上端部が十分に高い所に位置することになり、凝縮水が上ケース部材20と下ケース部材21との間からケース5外部に洩れなくなる。
【0054】
排水孔30の上流端の開口中心部Aと、上下分割面Xのうち最も低い部位Bとを結ぶ直線の傾斜角度は20゜以上としておくことで、車両の様々な走行状況において凝縮水の洩れを未然に防止することができるので、傾斜角度としては20゜以上が好ましい。
【0055】
また、この空調装置1では、上記の如く熱交換器3、4の位置に関わらず、上下分割面Xの位置によって凝縮水の洩れを防止できるので、熱交換器3、4の高さ位置を自由に設定できる。これにより、熱交換器3、4の位置は自由に設定可能になり、熱交換器3、4を、各ダンパやダンパに連結されるリンク等の邪魔にならないように配置することが可能になる。
【0056】
以上説明したように、この実施形態に係る空調装置1によれば、冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4を、下ケース部材21の開放部21aからケース5の内部に挿入して上ケース部材20と下ケース部材21とで挟むようにしたので、組立作業性を良好にできる。また、熱交換器3、4を挿入するための挿入孔をケース5の側壁部に形成せずに済み、しかも、排水孔30の開口中心部Aと、上下分割面Xとを結ぶ直線を上記の如く傾斜させたので、上下分割面Xを排水孔30の開口よりも十分に高い所に位置付けることができ、凝縮水が上ケース部材20と下ケース部材21との間から洩れるのを未然に防止できる。さらに、上記の如く熱交換器3、4の位置に関わらず凝縮水の洩れを防止できるので、熱交換器3、4を他の部品の邪魔にならないように配置でき、該部品のレイアウト性を良好にできる。
【0057】
また、加熱用熱交換器4を横置きにしたので、ケース5の高さ寸法を短くでき、空調装置1のレイアウト自由度を向上できる。
【0058】
また、冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4を下ケース部材21の冷却用熱交換器載置部21b及び加熱用熱交換器載置部21cにそれぞれ載置するようにしたので、組立時に熱交換器3、4を下ケース部材21に仮保持させておくことができ、組立作業性をより一層良好にできる。
【0059】
また、加熱用熱交換器4の供給管33及び排出管34を上ケース部材20と下ケース部材21との間からケース5外部へ延びるように形成したので、供給管33及び排出管34を上ケース部材20と下ケース部材21との間に配置するだけで、ケース5に対し簡単に組み付けることができる。そして、供給管33及び排出管34の周囲をシール部40でシールして空気を洩れにくくすることができるので、風量の低下を防止できる。
【0060】
尚、図6及び図7に示す変形例のように、加熱用熱交換器3の供給管33と排出管34とを前後方向にずらして配置した場合には、これに対応するようにシール部50を設けることが可能である。すなわち、上ケース部材20には、供給管33の外周面の上側約半部が嵌る上側切欠部50aと、排出管34の外周面の上側約半部が嵌る上側切欠部50bとが形成され、図7にも示すように、これら上側切欠部50a、50bの間の部位は供給管33と排出管34との間に上から挿入されるようになっている。また、下ケース部材21には、供給管33の外周面の下側約半部が嵌る下側切欠部50cと、排出管34の外周面の下側約半部に嵌る下側切欠部50dとが形成され、これら下側切欠部50c、50dの間の部位は供給管33と排出管34との間に下から挿入されるようになっている。つまり、この変形例のシール部50は、上側切欠部50a、50bと、下側切欠部50c、50dとで構成されている。
【0061】
尚、この実施形態では、ケース5の上ケース部材20を左右に分割しているが、これに限らず、上ケース部材20は一体成形品としてもよい。
【0062】
また、冷却用熱交換器3は縦置きに限られるものではなく、チューブが鉛直面に対し傾斜するように斜めに置くこともできる。
【0063】
また、送風ファン2は、ケース5とは別体のケースに収容するようにしてもよい。
【0064】
また、排水孔30の形成位置は、底壁部24の左側であってもよいし、前部又は後部であってもよい。
【0065】
また、排水孔30の開口中心部Aと、上下分割面Xのうち最も低い部位Bとを結ぶ直線の傾斜角度は、水漏れを考慮すると20゜以上が好ましいが、この角度が大きくなると下ケース部材21が無用に深くなって成形性及び車室内でのレイアウト性が悪化するので、30゜程度が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば、乗用車の室内に搭載するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態に係る空調装置の分解斜視図である。
【図2】加熱用熱交換器が組み付けられた下ケース部材を上ケース部材から分離した状態を示す斜視図である。
【図3】冷却用熱交換器、送風ファン及びモーターを省略した空調装置の右側面図である。
【図4】下ケース部材及び加熱用熱交換器を上ケース部材から分離した状態を示す図3相当図である。
【図5】ケースのシール部近傍の拡大図である。
【図6】変形例に係る図4相当図である。
【図7】変形例に係る図5相当図である。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用空調装置
2 送風ファン
3 冷却用熱交換器
4 加熱用熱交換器
5 ケース
20 上ケース部材
20a 開放部
21 下ケース部材
21a 開放部
21b 冷却用熱交換器載置部
21c 加熱用熱交換器載置部
24 底壁部
30 排水孔
31 冷却用熱交換器の供給管
32 冷却用熱交換器の排出管
33 加熱用熱交換器の供給管
34 加熱用熱交換器の排出管
40 シール部
A 開口中心部
X 上下分割面
L 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用熱交換器と、加熱用熱交換器と、該両熱交換器を収容するケースとを備え、該ケースに導入された空気を上記冷却用熱交換器乃至上記加熱用熱交換器を通過させて調和空気とするように構成された車両用空調装置において、
上記ケースは、底壁部を有し、上方に開放するように形成された下ケース部材と、下方に開放するように形成された上ケース部材とに分割されて両ケース部材が組み合わされてなり、
上記冷却用熱交換器及び上記加熱用熱交換器は、上記上ケース部材及び上記下ケース部材の少なくとも一方の開放部から上記ケースの内部に挿入されて該両ケース部材で挟まれるように配置され、
上記下ケース部材の底壁部には、上記冷却用熱交換器で発生した凝縮水を排水するための排水孔が形成され、
上記排水孔の開口中心部と、上記上ケース部材及び上記下ケース部材の分割面とを結ぶ直線が、水平面に対し15゜以上傾斜していることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器の少なくとも一方は、熱交換媒体が流通するチューブを有するととともに、該チューブの延びる方向が水平面に対し15゜以下の角度となるように、横置きされていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
下ケース部材の内部には、熱交換器を載置するための載置部が形成され、
上記熱交換器は、上記下ケース部材の開放部から挿入されるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器の少なくとも一方には、熱交換媒体の供給管及び排出管が接続され、
上記供給管及び上記排出管は、上ケース部材及び下ケース部材の間からケース外部へ延びるように形成され、
上記ケースには、上記供給管及び上記排出管の周囲をシールするシール部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
ケースのシール部は、供給管と排出管との間に挿入されるように形成されていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−47045(P2010−47045A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210695(P2008−210695)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】