説明

車両用空調装置

【課題】空調ケースにおける外形寸法の大型化を抑制しつつ、省エネルギー化が可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10では、送風機16とは別に、車室内の空気を吸い込んで、車室内へ空気を吹き出させる空気流れを形成する補助ファン42を含む。補助ファン42は、一方の吹き出し通路であるデフ吹き出し通路28から車室内の空気を吸い込み、他方の吹き出し通路であるフェイス吹き出し通路29へ吹き出すので、補助ファン42によって吹き出される空気はエバポレータ22を通過していない。補助ファン42によって送風される空気と、エバポレータ22を通過した冷風とをフェイス吹き出し通路29にて混合させることによって、フェイス吹き出し通路29から空調された空気を吹き出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内の空調を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置として、特許文献1に記載の技術が開示されている。特許文献1に記載の車両用空調装置では、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器が空調ケース内に配置される。また蒸発器をバイパスして空気を流すバイパス通路が形成されている。バイパス通路を形成することによって、バイパス通路を通過する風量の分、蒸発器を通過する風量を減少させることができる。これによって要求される温度に応じて、蒸発器を通過させて冷却する風量と、バイパス通路を通過させて冷却しない風量とを調整することができる。したがって蒸発器の必要冷却能力を低減させ、圧縮機の駆動力を節減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−81121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の車両用空調装置では、圧縮機の駆動力を低減して省エネルギー化を図ることができるが、バイパス通路が蒸発器の側面に形成されるので、空調ケースの外形寸法が大きくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、空調ケースにおける外形寸法の大型化を抑制しつつ、省エネルギー化が可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、車室内に送風される空気が通過する空気通路を内部に形成する空調ケース(11)と、
空気通路に空気を送風する送風手段(16)と、
空気通路全体を横断するように空調ケース内に設けられ、送風手段によって送風された空気を冷却して下流側に冷風を供給する冷却手段(22)と、
冷却手段よりも下流側に設けられ、冷却手段を通過した空気を車室内における複数の部位に吹き出すための複数の吹き出し通路(28〜30)と、
複数の吹き出し通路のうちの2つの吹き出し通路における一方の吹き出し通路(28)から車室内の空気を吸い込み、他方の吹き出し通路(29)へ吹き出す空気流れを形成する補助送風手段(42)と、を含むことを特徴とする車両用空調装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明に従えば、車両用空調装置は、空気通路に空気を送風する送風手段とは別に、車室内の空気を吸い込んで、車室内へ空気を吹き出させる空気流れを形成する補助送風手段を含む。本発明の補助送風手段は、一方の吹き出し通路から車室内の空気を吸い込み、他方の吹き出し通路へ吹き出すので、補助送風手段によって吹き出される空気は冷却手段を通過していない。補助送風手段によって送風される空気と、冷却手段を通過した空気とを他方の吹き出し通路にて混合させることによって、他方の吹き出し通路から空調された空気を吹き出させることができる。したがって補助送風手段によって送風する風量に応じて、冷却手段を通過する風量を減少させることができる。これによって冷却手段の必要冷却能力を低減させることができるので、冷却手段の駆動力を節減することができる。また本発明では、前述の従来技術のようにバイパス通路を空調ケース内に形成する必要がないので、空調ケースが大型化することを抑制することができる。
【0009】
また請求項2に記載の発明では、2つの吹き出し通路は、2つの吹き出し通路の間に他の吹き出し通路がないように配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に従えば、2つの吹き出し通路は、2つの吹き出し通路の間に他の吹き出し通路がないように配置されるので、2つの吹き出し通路は隣接している。2つの吹き出し通路が隣接しているので、補助送風手段における空気流れを形成するための動力を、吹き出し通路が隣接していない構成に比べて、少なくすることができる。
【0011】
さらに請求項3に記載の発明では、2つの吹き出し通路を繋ぐ連結通路(40)をさらに含み、
補助送風手段は、連結通路に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明に従えば、2つの吹き出し通路を繋ぐ連結通路をさらに含み、補助送風手段は、連結通路に設けられる。これによって既存の複数の吹き出し通路を有する車両用空調装置に、本発明の連結通路と補助送風手段とを付与するだけで、前述した本発明を作用および効果を達成することができる。
【0013】
さらに請求項4に記載の発明では、複数の吹き出し通路および連結通路は、空調ケース外に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明に従えば、複数の吹き出し通路および連結通路は、空調ケース外に形成されるので、連結通路と補助送風手段とを有さない既存の車両用空調装置の空調ケースと、本発明の空調ケースとの共用化をすることが可能となる。これによって空調ケースの汎用性を向上することができる。
【0015】
また請求項5に記載の発明では、連結通路の通路断面積を調整する調整手段(43)と、
車室内の空調要求に応じて、冷却手段の冷却能力、送風手段の送風量、補助送風手段の送風量、および調整手段の調整量を調整する制御手段(21)と、をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明に従えば、調整手段と制御手段とをさらに含み、制御手段は、冷却手段の冷却能力、送風手段の送風量、補助送風手段の送風量、および調整手段の調整量を調整する。調整手段および補助送風手段と制御するので、冷却手段を通過して冷風と、連結通路を通過した空気流れとの混合度合いを制御することができる。これによって他方の吹き出し通路から吹き出される空気の温度を調整することができる。したがって他方の吹き出し通路と、2つの吹き出し通路を除く他の吹き出し通路とを別の空調風を吹き出させることができる。
【0017】
さらに請求項6に記載の発明では、空調ケース内の冷却手段の下流側に設けられ、空気を加熱して下流側に温風を供給する加熱手段(23)と、
冷却手段を通過した冷風と加熱手段を通過した温風との風量比率を調整するエアミックス手段(24)と、をさらに含み、
制御手段は、車室内の空調要求に応じて、冷却手段の冷却能力、送風手段の送風量、補助送風手段の送風量、調整手段の調整量、およびエアミックス手段の調整量を調整することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明に従えば、加熱手段およびエアミックス手段をさらに含むので、冷風と温風とを用いて、車室内に吹き出す空気の温度を制御することができる。また調整手段および補助送風手段と制御するので、冷却手段を通過した冷風と、加熱手段を通過した温風と、連結通路を通過した空気流れとの混合度合いを制御することができる。これによって他方の吹き出し通路から吹き出される空気の温度を冷却および加熱することによって、高精度に調整することができる。したがって他方の吹き出し通路と、2つの吹き出し通路を除く他の吹き出し通路とを別の空調風を吹き出させることができる。
【0019】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両用空調装置10の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用空調装置10の制御に係る構成を示すブロック図である。
【図3】基本的な空調制御処理を示したフローチャートである。
【図4】第2実施形態の車両用空調装置10Aの概略構成を示す模式図である。
【図5】第3実施形態の車両用空調装置10Bの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図3を用いて説明する。図1は、車両用空調装置10の概略構成を示す模式図である。図2は、車両用空調装置10の制御に係る構成を示すブロック図である。車両用空調装置10は、車室内空調運転の実施可能な装置である。
【0023】
図1に示すように、車両用空調装置10は、空調ケース11、および空調ケース11と車室内の所定部位に開口する各吹出口(図示せず)を接続する各吹き出し用ダクト31〜33を含んで構成されている。空調ケース11はたとえば複数のケース部材からなり、その材質はたとえばポリプロピレンなどの樹脂成形品である。空調ケース11は、自動車の車室内の前方付近に設けられている。
【0024】
空調ケース11は、空気が流れる空気通路として、冷風が流れる冷風通路12、温風が流れる温風通路13および冷風および温風が混ざり合う混合部14を内部に形成する。空調ケース11には、外気や内気を切り替え可能に取り入れる内外気切替箱15と、車室内または車室外の空気を空調用部品に送風するための送風機16と、この送風機16よりも下流に配置された空調用部品とが、上流からこの順に設けられている。内外気切替箱15および送風機16は、たとえば車室内前方部に設置されたインストルメントパネル(図示せず)の裏側で車両中央部から助手席寄りの位置に設けられており、空調用部品はインストルメントパネルの裏側で車両中央部付近に設けられている。
【0025】
空調ケース11の最も上流側には、内外気切替箱15を構成する部分であり、車室内の空気(以下、「内気」ともいう)を取り入れる内気吸込口17、および車室外の空気(以下、「外気」ともいう)を取り入れる外気吸込口18が形成されている。
【0026】
内気吸込口17および外気吸込口18の内側には、内外気切替ドア19が回動自在に設けられている。この内外気切替ドア19は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、吸込口モードを内気循環モードおよび外気導入モード等に切り替えることが可能である。
【0027】
内外気切替ドア19の下流側には、空気清浄手段として機能するフィルタ20が設けられる。フィルタ20は、たとえば細かい塵埃を取り除く除塵フィルタ部と、空気清浄手段としての脱臭フィルタ部とをあわせた複合フィルタなどである。除塵フィルタ部は、たとえばひだ折りした不織布などから成り、空気中の塵や液状粒子(たとえばニコチンおよびタール)などを捕捉して除去するものである。また脱臭フィルタ部は、たとえばハニカム担体に添着された活性炭より成り、空気中の臭いを除去するものである。
【0028】
送風機16は、遠心多翼ファンとこれを駆動するモータとからなり、遠心多翼ファンの周囲はスクロールケーシングで囲まれている。送風機16の吹出口16aは遠心多翼ファンの遠心方向に伸びるダクトによってエバポレータ22に至る空気通路と接続されている。送風機16は、モータへの印加電圧に応じて、回転速度が決定される。モータへの印加電圧がエアコンECU21からの制御信号に基づいて制御されることにより、送風機16の送風量は制御される。
【0029】
送風機16よりも下流に配置された空調用部品は、空気通路全体を横断的に塞ぐように設けられたエバポレータ22と、エバポレータ22を通過してきた空気を加熱するヒータコア23と、エバポレータ22を通過した空気のうちヒータコア23を通過する空気の風量を調整するエアミックスドア24と、冷風通路12と温風通路13が合流する混合部14の下流に設けられたデフ用ドア25、フェイス用ドア26およびフット用ドア27と、を含んでいる。図1は、車両に設置した状態で図の上側が上に、図の下側が下に位置し、図の左側が車両前方に、右側が車両後方に向いている。
【0030】
エバポレータ22は、図示しない冷凍サイクル内の膨張弁で減圧された低温低圧の冷媒を送風機16の送風を受けて内部で蒸発させるものであり、冷媒が流れるチューブの周囲を通過する送風空気を冷却する冷却手段である。エバポレータ22よりも下流には冷風通路12とヒータコア23が設けられており、さらに冷風通路12を通過する空気とヒータコア23に向かう空気との風量割合を調整するエアミックスドア24が設けられている。
【0031】
冷凍サイクルは、図示は省略するが、インバータ57により回転数制御されて冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮液化させる凝縮器、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒を下流に流す気液分離器、液冷媒を減圧膨張させる膨張弁、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるエバポレータ22、およびこれらを環状に接続する冷媒配管等から構成されている。
【0032】
冷凍サイクルを構成する圧縮機は、内蔵された電動モータにより駆動され、回転数制御が可能であり、回転数に応じて冷媒吐出流量が可変である。圧縮機はインバータ57により周波数が調整された交流電圧が印加されてその電動モータの回転速度が制御される。インバータ57は車載電池から直流電源の供給を受け、エアコンECU21により制御される。
【0033】
ヒータコア23は、走行用エンジンの高温の冷却水を熱源として空調ケース11内の空気と熱交換させ、周囲を流れる空気を加熱する加熱手段であり、エバポレータ22よりも空気流れ方向の下流側の通路を部分的に塞ぐように配置されている。ヒータコア23の下流には、温風通路13が空調ケース11内の車両後方側から上方に向けて設けられ、混合部14につながっている。
【0034】
エアミックスドア24は、エバポレータ22よりも下流に設けられた片側枢支式の板状ドアである。エアミックスドア24は、ドア本体の開度が制御されることにより、エバポレータ22で冷却された空気量のうちヒータコア23で加熱する空気量(風量比率)を調整し、ヒータコア23を通る空気とヒータコア23を迂回する空気とが混合部14で混合することにより空気の温調がなされる。
【0035】
混合部14は、エバポレータ22から流れてきた空気とヒータコア23で加熱されて温風通路13を流れてくる空気とが混ざり合う空間であり、下流側でデフ吹き出し通路28、フェイス吹き出し通路29およびフット吹き出し通路30に連通している。この空間で温度調節された空調風は、デフ用ドア25、フェイス用ドア26、フット用ドア27などの各モード吹き出しドアの開度を制御することによって適正な風量割合に調整されて車室内へ供給される。
【0036】
デフ吹き出し通路28は、空調ケース11に形成されるデフ吹き出し用の開口を含む通路であり、接続されたデフ吹出ダクト31を介して車室内に開口するデフ吹出口(図示せず)を含み、デフロスタモードにおいてフロントウィンドウガラス等の車室内側面に沿うように吹き出される空調風(デフ吹き出し)が流通する通路である。デフ用ドア25は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなり、ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して駆動される。デフ吹き出し通路28は吹き出しモードに応じてデフ用ドア25のドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0037】
フェイス吹き出し通路29は、空調ケース11に形成されるフェイス吹き出し用の開口を含む通路であり、接続されたフェイス吹出ダクト32を介して車室内に開口するフェイス吹出口(図示せず)を含む。このフェイス吹出口は乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためにインストルメントパネルの中央部または車室内の両側部で開口しており、主に冷房時に乗員の上半身付近に向けて冷風が吹き出される。フェイス用ドア26は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなる。ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して他のドアとともに駆動される被駆動部である。フェイス吹き出し通路29は吹き出しモードに応じてフェイス用ドア26のドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0038】
フット吹き出し通路30は、空調ケース11に形成されるフット吹き出し用の開口を含む通路であり、接続されたフット吹出ダクト33を介して車室内に開口するフット吹出口(図示せず)を含む。フット吹出口は前席乗員や後席乗員の足元へ空調風を吹き出すための開口であり、主に暖房時に温風が吹き出される。フット用ドア27は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなり、ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して他のドアとともに駆動される。フット吹き出し通路30はドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0039】
デフ吹き出し通路28とフェイス吹き出し通路29とは、連結通路40によって連通される。連結通路40は、フェイス吹出ダクト32とデフ吹出ダクト31とを接続する連結ケース41によって形成される。したがって連結通路40は、空調ケース11外であって、連結ケース41内に形成される通路である。
【0040】
連結ケース41内には、補助ファン42が設けられる。補助ファン42は、デフ吹き出し通路28から空気を吸い込み、フェイス吹き出し通路29へ吹き出す空気流れを形成する補助送風手段である。補助ファン42は、クロスフローファンとこれを駆動する補助ファン用モータとからなり、クロスフローファンの周囲は連結ケース41の内壁で囲まれている。連結ケース41は、スクロールとしても機能する。補助ファン42の吹出口42aは、連結ケース41によって、フェイス吹出ダクト32に接続されている。補助ファン42は、補助ファン用モータへの印加電圧に応じて、回転速度が決定される。補助ファン用モータへの印加電圧がエアコンECU21からの制御信号に基づいて制御されることにより、補助ファン42の送風量は制御される。
【0041】
連結通路40とフェイス吹き出し通路29とが接続される部分には、連結ドア43が設けられる。連結ドア43は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなり、ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して駆動される。連結通路40は吹き出しモードに応じて連結ドア43のドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0042】
このような構成によって、図1に示すように、デフ用ドア25を閉にして、連結ドア43を開にして、フェイス用ドア26を開にして、補助ファン42を駆動させると、デフ吹き出し通路28から内気を吸い込んで、フェイス吹き出し通路29に内気が送風される。フェイス吹き出し通路29には、混合部14で冷風と温風とが混ざり合った空調風が流れているので、この空調風と内気とがさらに連結通路40とフェイス吹き出し通路29との連結部分で混合される。これによってフェイス吹き出し通路29を介して、混合部14を経た空調風と、デフ吹き出し通路28を介して吸い込んだ内気とが混合した空気が、フェイス吹出口から車室内に供給される。
【0043】
次に図2を用いて、エアコンECU21に関して説明する。エアコンECU21は、車室内の空調運転を制御するエアコン電子制御装置であり、マイクロコンピュータと、車室内前方に設けられた操作パネル56上の各種スイッチからの空調要求などの信号および各種のセンサからの信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。各種センサは、たとえば車室内の温度を検出する内気センサ51、外気の温度を検出する外気センサ52、車室内への日射量を検出する日射センサ53、エバポレータ22の後流温度を検出する温度センサ54およびエンジンの冷却水温度を検出する水温センサ55などである。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル56等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。
【0044】
また、操作パネル56には、車両用空調装置10が動作しているときに表示状態になるエアコンECU動作表示部としてのエアコンECUインジケータ(図示せず)が設けられており、エアコンECUインジケータは、エアコンECU21からの命令信号によって表示状態(たとえば点灯状態)または非表示状態(たとえば非点灯状態)に制御される。
【0045】
エアコンECU21は、上記の各サイクル運転時に、エアコン環境情報、エアコン運転条件情報および車両環境情報を受信してこれらを演算し、圧縮機の設定すべき容量等を算出する。そして、エアコンECU21は、演算結果に基づいてインバータ57に対して制御信号を出力し、インバータ57によって圧縮機の出力量は制御される。このように乗員による操作パネル56の操作によって、空調装置の運転・停止および設定温度などの操作信号(空調要求)などがエアコンECU21に入力されて各種センサの検出信号が入力されると、エアコンECU21は、各種の演算結果に基づいて、圧縮機のインバータ57、送風機16、補助ファン42、エアミックスドア24、ウォータポンプ58、内外気切替ドア19、吹出口切替ドア25〜27、連結ドア43等の各機器の運転を制御する。これによってエアコンECU21は、車室内の各吹出口から吹き出される空調風を制御する。
【0046】
次に、エアコンECU21の空調制御処理に関して図3を用いて説明する。図3は、エアコンECU21による基本的な空調制御処理を示したフローチャートである。図3の基本的な空調制御処理がスタートすると、エアコンECU21は以降の各ステップに係る処理を実行していく。ステップ2からステップ9の処理は、たとえば250msに1回行われる。
【0047】
ステップ1では、エアコンECU21内の等の記憶されている各パラメータ等を初期化し、ステップ2に移る。ステップ2では、操作パネル56等からの各種スイッチ信号等を読み込み、ステップ3に移る。ステップ3では、各種センサからの信号を読み込み、ステップ4に移る。
【0048】
ステップ4では、エアコンECU21のROMに記憶された下記の式1を用いて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度を算出し、ステップ5に移る。
【0049】
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C …(1)
ここで、Tsetは、操作パネル56の温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気センサ51にて検出された内気温度、Tamは外気センサ52にて検出された外気温度、Tsは日射センサ53にて検出された日射量である。また、Kset,Kr,KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、このTAOおよび上記各種センサからの信号により、エアミックスドア24のアクチュエータの制御値およびウォータポンプ58の回転数の制御値等を算出する。
【0050】
ステップ5では、ROMに記憶された下記の式2を用いて、エアミックスドア24の開度決定を実行し、ステップ6に移る。
【0051】
開度=((TAO−TE)/(TW−TE))×100(%) …(2)
式2において、TEは温度センサ54が検出するエバポレータ22の後流温度、TWは水温センサ55が検出する冷却水温度である。
【0052】
ステップ6では、ブロワ電圧を決定する処理を実施し、ステップ7に移る。ブロワ電圧は、送風機16に印加される電圧である。ブロワ電圧は、予めROMに記憶されている、目標吹出温度とブロワ電圧との関係を表した制御マップにしたがって決定される。
【0053】
ステップ7では、吸込口モードを決定する処理を実施し、ステップ8に移る。マニュアル運転である場合には、マニュアル設定に準じ、内気循環モードの場合は外気導入率0%に決定し、外気導入モードの場合は外気導入率0%に決定し、ステップ8に移る。またオート運転が設定されている場合には、ROMに記憶された制御マップから目標吹出温度に対応する吸込口モードを決定し、ステップ8に移る。制御マップは、たとえば目標吹出温度が低い温度から高い温度にかけて、内気循環モード、内気と外気の両方を吸い込む内外気導入モード、外気を吸い込む外気導入モードとなるように決定されるような制御マップである。
【0054】
ステップ8では、吹出口モードを決定する処理を実施し、ステップ9に移る。マニュアル運転である場合には、マニュアル設定に準じた吹出口モードに決定し、ステップ9に移る。オート運転である場合には、ROMに記憶された制御マップから目標吹出温度に対応する吹出口モードを決定し、ステップ9に移る。制御マップは、たとえば目標吹出温度が低い温度から高い温度にかけて、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、およびフット/デフロスタモードとなるように決定されるような制御マップである。
【0055】
ステップ9では、圧縮機の回転数の決定を実行し、ステップ10に移る。エアコンECU21は、エバポレータ22の温度(たとえばエバポレータ22が備えるフィンの温度)に基づいて、圧縮機の回転数を決定する。具体的には、予めROMに記憶されたマップにしたがって、エバポレータ22の温度に対応する圧縮機の回転数を演算して決定する。
【0056】
ステップ10では、ウォータポンプ58の作動を決定し、ステップ11に移る。水温がエバポレータ22の温度以下である場合には、ウォータポンプ58を停止する要求を決定し、ステップ11に移る。また水温がエバポレータ22の温度よりも高い場合には、ウォータポンプ58を運転する要求を決定し、ステップ11に移る。
【0057】
ステップ11では、上記各ステップ2〜ステップ9で算出または決定された各制御状態が得られるように、インバータ57、各種アクチュエータ等に対して制御信号を出力し、ステップ12に移る。ステップ11では、エアコンECU21は、たとえばインバータ57に対して、決定された回転数に圧縮機を制御するための制御信号を送信する。インバータ57は、送信された制御信号に基づいて圧縮機のモータを制御する。そして、ステップ12において所定時間の経過を待って、ステップ2に戻り、継続して各ステップが実行される。
【0058】
このように図3は、エアコンECU21の基本的な通常モードにおける空調制御処理を示したフローチャートであるが、省電力モードの場合には、エアコンECU21は補助ファン42と連結ドア43とをさらに制御する。
【0059】
省電力モードとは、エバポレータ22の冷却能力を制限してよい場合のときに、圧縮機の駆動動力を低減する制御モードである。エバポレータ22の冷却能力を制限してよい場合とは、たとえば内気の温度が目標温度に到達し、内気を用いて継続的に目標温度を維持できる場合である。内外気切替箱15を介して導入された内気は、インストルメントパネル内を通過するので、インストルメントパネル内に設けられる発熱体、たとえば電気部品および空調用部品によって取り込んだ内気の温度が上昇する場合がある。このような内外気切替箱15から取り込んだ内気よりも、デフ吹出ダクト31を介して取り込んだ空気の方が、内気の温度に近く、内外気切替箱15から取り込んだ内気よりも温度が低いので、エバポレータ22の冷却能力を制限できる場合がある。
【0060】
このような省動力モードの場合には、図1に示すように、連結ドア43を開にし、補助ファン42を可動させる。そうすることで、デフ吹出ダクト31を介して車室内の空気を吸込み、フェイス吹出ダクト32への流れをつくる。この空気の流れは、エバポレータ22を通過しない流れである。補助ファン42によって発生した流れと、エバポレータ22を通過して冷却されて冷風を混合し、目標とする温度の空気をフェイス吹出口から車室内に供給することができる。フェイス吹出口からの吹出し温度は、補助ファン42に送風される空気と、エバポレータ22を通過した冷風との割合を調整することで制御することができる。
【0061】
補助ファン42によって送風される空気と冷風との割合は、補助ファン42の風量と送風機16の風量とを制御することによって制御される。したがって冷風の割合を高める場合には、送風機16の風量が多くなるように送風機16のモータへの印可電圧が制御される。
【0062】
また省電力モードは、たとえば停車時(アイドリングストップ時も含む)の車両エンジン(圧縮機)停止後にエバポレータ22の蓄冷量の放冷により空気を冷却する場合にも適用される。このような場合にも、図1に示すように、連結ドア43を開にし、補助ファン42を可動させることによって、エバポレータ22を通過する空気の量を減少させることができる。これによってエバポレータ22の蓄冷量に基づく放冷時間を、補助ファン42を用いない場合に比べて長くすることができる。
【0063】
以上説明したように本実施の形態の車両用空調装置10では、送風機16とは別に、車室内の空気を吸い込んで、車室内へ空気を吹き出させる補助ファン42を含む。補助ファン42は、一方の吹き出し通路であるデフ吹き出し通路28から車室内の空気を吸い込み、他方の吹き出し通路であるフェイス吹き出し通路29へ吹き出すので、補助ファン42によって吹き出される空気は冷却手段であるエバポレータ22を通過していない。補助ファン42によって送風される空気と、エバポレータ22を通過した冷風とをフェイス吹き出し通路29にて混合させることによって、フェイス吹き出し通路29から空調された空気を吹き出させることができる。したがって補助ファン42によって送風する風量の分、エバポレータ22を通過する風量を減少させることができる。これによってエバポレータ22の必要冷却能力を低減させることができるので、エバポレータ22の駆動力である圧縮機の駆動力を節減することができる。
【0064】
具体的には、補助ファン42によってエバポレータ22の通過風量が減少するので、冷却するために必要なエバポレータ22の冷却能力を補助ファン42の風量の減少分に比例して小さくすることができる。これによって冷凍サイクルを構成する圧縮機の断続制御よる圧縮機稼働率を低下させて省動力を図ることができる。したがって信号待ち等の車両エンジン停止時における冷房フィーリングをエバポレータ22の凝縮水の蓄冷量にてより長い時間良好に維持できる。
【0065】
また本実施の形態では、従来技術のようにエバポレータ22を迂回するバイパス通路を空調ケース11内に形成する必要がないので、空調ケース11が大型化することを抑制することができる。
【0066】
また本実施の形態では、図1に示すように、2つの吹き出し通路であるフェイス吹き出し通路29とデフ吹き出し通路28との間に他の吹き出し通路がないように配置されるので、2つの吹き出し通路28,29は隣接している。2つの吹き出し通路28,29が隣接しているので、補助ファン42をこれら2つ吹き出し通路28,29の間に配置することによって、一方の吹き出し通路28から吸い込んで他方の吹き出し通路29へ吹き出す補助ファン42を実現することができる。またこれら2つの吹き出し通路28,29が隣接しているので、デフ吹き出し通路28から車室内の空気を吸い込み、フェイス吹き出し通路29へ吹き出す動力を、隣接していない構成に比べて、少なくすることができる。
【0067】
さらに本実施の形態では、補助ファン42は、連結通路40に設けられる。これによって既存の複数の吹き出し通路を有する車両用空調装置10に、連結通路40と補助ファン42とを付与するだけで、前述した本実施の形態の車両用空調装置10の作用および効果を達成することができる。したがって連結通路40と補助ファン42とを有さない既存の車両用空調装置の空調ケース11と、本実施の形態の空調ケース11との共用化をすることが可能となる。これによって空調ケース11の汎用性を向上することができる。
【0068】
連結ケース41は、デフ吹出ダクト31とフェイス吹出ダクト32との間という既存の車両用空調装置では使用していない空間(デッドスペース)に設けられる。したがって連結ケース41と連結ケース41内に補助ファン42を設けても、車両用空調装置10が大型化することを抑制することができる。また本実施の形態では、デフ吹き出し通路28から吸込む構造としているので、車室内上部の空気を循環させることができる。
【0069】
また本実施の形態では、車両用空調装置10は、調整手段である連結ドア43と制御手段であるエアコンECU21とをさらに含む。エアコンECU21は、エバポレータ22の冷却能力、送風機16の送風量、補助ファン42の送風量、および連結ドア43の開閉を個別に制御する。これによってフェイス吹き出し通路29から吹き出される空気の温度を調整することができる。したがってフェイス吹き出し通路29と、デフ吹き出し通路28およびフェイス吹き出し通路29を除く他の吹き出し通路であるフット吹き出し通路30とを別の空調風を吹き出させることができる。
【0070】
さらに本実施の形態では、加熱手段であるヒータコア23およびエアミックス手段であるエアミックスドア24をさらに含むので、冷風と温風とを用いて、車室内に吹き出す空気の温度を制御することができる。これによってフェイス吹き出し通路29から吹き出される空気の温度をさらに高精度に調整することができる。したがってフェイス吹き出し通路29と、フット吹き出し通路30とを別の空調風を吹き出させることができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図4を用いて説明する。図4は、第2実施形態の車両用空調装置10Aの概略構成を示す模式図である。本実施の形態では、連結通路40Aがデフ吹出ダクト31とフェイス吹出ダクト32との間ではなく、空調ケース11内に設けられる点に特徴を有する。
【0072】
図4に示すように、空調ケース11内に連結通路40Aを構成するための連結壁45が、デフ吹き出し用の開口とフェイス吹き出し用の開口との間に形成される。連結壁45は、空調ケース11を構成する外壁のうち前述の2つの開口を繋ぐ部分との間に連結通路40Aを構成する。連結通路40A内には、補助ファン42が設けられる。
【0073】
このような本実施の形態での構成では、空調ケース11内に連結通路40Aおよび補助ファン42が設けられるので、本発明を実現するために空調ケース11が大型化することを抑制することができる。また第1実施形態のように、フェイス吹き出し通路29とデフ吹き出し通路28との間に補助ファン42および連結ケース41を設置するためのスペースがない場合には、本実施の形態を好適に用いることができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に関して、図5を用いて説明する。図5は、第3実施形態の車両用空調装置10Bの概略構成を示す模式図である。本実施の形態では、リヤフェイス吹き出し通路29Bとリヤフット吹き出し通路30Bをさらに備え、連結通路40Bがリヤフット吹出ダクト33Bとリヤフェイス吹出ダクト32Bとの間に設けられる点に特徴を有する。
【0075】
リヤフェイス吹き出し通路29Bは、空調ケース11に形成されるリヤフェイス吹き出し用の開口を含む通路であり、接続されたリヤフェイス吹出ダクト32Bを介して車室内の後部座席に開口するリヤフェイス吹出口(図示せず)に接続されている。このリヤフェイス吹出口は後部座席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すために車室天井で開口しており、主に冷房時に乗員の上半身付近に向けて冷風が吹き出される。リヤフェイス用ドア26Bは板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなる。ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して他のドアとともに駆動される被駆動部である。リヤフェイス吹き出し通路29Bは吹き出しモードに応じてリヤフェイス用ドア26Bのドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0076】
リヤフット吹き出し通路30Bは、空調ケース11に形成されるリヤフット吹き出し用の開口を含む通路であり、接続されたリヤフット吹出ダクト33Bを介して車室内の後部座席に開口するリヤフット吹出口(図示せず)に接続されている。リヤフット吹出口は後席乗員の足元へ空調風を吹き出すための開口であり、主に暖房時に温風が吹き出される。リヤフット用ドア27Bは板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなり、ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して他のドアとともに駆動される。リヤフット吹き出し通路30Bはドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0077】
またヒータコア23の下方には、後部座席用エアミックスドア24Bが設けられる。後部座席用エアミックスドア24Bは、エバポレータ22よりも下流に設けられた片側枢支式の板状ドアである。後部座席用エアミックスドア24Bは、ドア本体の開度が制御されることにより、エバポレータ22で冷却された空気量と、ヒータコア23で加熱された空気量とを調整し、ヒータコア23を通る空気とヒータコア23を迂回する空気とが後部座席用エアミックスドア24Bの下流側で混合することにより、リヤフット吹き出し通路30Bおよびリヤフェイス吹き出し通路29Bへの空気の温調がなされる。
【0078】
リヤフット吹き出し通路30Bとリヤフェイス吹き出し通路29Bとは、連結通路40Bによって連通される。連結通路40Bは、リヤフェイス吹出ダクト32Bとリヤフット吹出ダクト33Bとを接続する連結ケース41によって形成される。
【0079】
連結ケース41内には、補助ファン42が設けられる。補助ファン42は、リヤフット吹き出し通路30Bから空気を吸い込み、リヤフェイス吹き出し通路29Bへ吹き出す補助送風手段である。補助ファン42の吹出口42aは、連結ケース41によって、リヤフェイス吹出ダクト32Bに接続されている。
【0080】
このような構成によって、図5に示すように、リヤフット用ドア27Bを閉にして、リヤフェイス用ドア26Bを開にして、補助ファン42を駆動させると、リヤフット吹き出し通路30Bから内気を吸い込んで、リヤフェイス吹き出し通路29Bに内気が送風される。リヤフェイス吹き出し通路29Bには、後部座席用エアミックスドア24Bによって冷風と温風とが混ざり合った空調風が流れているので、この空調風と内気とがさらに連結通路40Bとリヤフェイス吹き出し通路29Bとの連結部分で混合される。これによってリヤフェイス吹き出し通路29Bを介して、後部座席用エアミックスドア24Bを経た空調風と、リヤフット吹き出し通路30Bを介して吸い込んだ内気とが混合した空気が、リヤフェイス吹出口から車室内に供給される。
【0081】
以上、説明したように第3実施形態の車両用空調装置10Bでは、リヤフェイス吹出ダクト32Bとリヤフット吹出ダクト33Bと補助ファン42を設け、リヤフット吹出ダクト33Bから内気を吸い込み、リヤフェイス吹出ダクト32Bに吹き出すように構成される。これによって後部座席の空気を吸い込み、後部座席に送風するので、後部座席で空気を循環させることで前部座席に影響しない後部座席のみの空調制御をすることができる。
【0082】
また後部座席だけが風量を必要とする場合にも、後部座席のみの空調制御によって省動力で車両用空調装置10Bを運転することができる。換言すると、後席専用エアミックスドア24を持つ車両用空調装置と、補助ファン42を組み合わせて後部座席の独立空調を実現することができる。
【0083】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0084】
前述の第1実施形態では、補助ファン42が吸い込み吹き出す2つの吹き出し通路の間に他の吹き出し通路がないように配置されているが、このような構成に限るものではなく、フット吹出ダクト33から吸い込み、フェイス吹出ダクト32へ吹き出すような構成など、複数の吹き出し通路のうち、任意の2つの吹き出し通路を用いる構成であればよい。
【0085】
また前述の第1実施形態では、空調ケース11と各吹出ダクト31〜33とは別体に構成されるが、空調ケース11と各吹出ダクト31〜33とを一体に形成してもよい。すなわち、空調ケースに吹出ダクト31〜33として機能する通路を形成してもよい。
【0086】
また前述の第1実施形態では、省電力モードの場合に、補助ファン42が動作するような制御をするが、このような場合の制御に限るものではなく、ユーザが補助ファン42を作動する手動モードの場合には、ユーザの設定に従って補助ファン42および連結ドア43が動作するように制御してもよい。
【0087】
また前述の第1実施形態では、連結ドア43の開閉によって補助ファン42によって送風される空気と、混合部14の下流側の空調風とを混合割合を制御しているが、連結ドア43の開閉に限るものではなく、連結ドア43の開度(調整量)、すなわち連結通路40の通路断面積を制御することによって、混合割合をさらに高精度に制御してもよい。これによってフェイス吹出ダクト32から吹き出される空調風の温度をさらに高精度に制御することができる。
【0088】
また前述の第1実施形態では、連結ドア43およびエアミックスドア24などの各種ドアは、回動軸を中心として回動することにより開閉および冷風および温風の混合割合を調整する構造であるが、このような構造の板ドアに限定するものではない。たとえば、フィルムドア、回動軸を有さないスライドドア、回動軸から半径方向に延びる半径方向側板および周方向に延びる周方向側板とで形成されるロータリ式のドアであってもよい。
【0089】
また前述の第1実施形態では、圧縮機の回転数は、インバータ57により制御される構成であるが、これに限定されるものではない。たとえば、圧縮機は、エンジンにベルト駆動されて冷媒を圧縮するものであってもよい。この場合、圧縮機には、エンジンから圧縮機への回転動力の伝達を断続するクラッチ手段としての電磁クラッチが連結されており、この電磁クラッチは、クラッチ駆動回路等により制御される。電磁クラッチが通電された時に、エンジンの回転動力が圧縮機に伝達されて、エバポレータ22による空気冷却作用が行われ、電磁クラッチの通電が停止した時に、エンジンと圧縮機とが遮断され、エバポレータ22による空気冷却作用が停止するようになる。
【符号の説明】
【0090】
10…車両用空調装置
11…空調ケース
16…送風機(送風手段)
21…エアコンECU(制御手段)
22…エバポレータ(冷却手段)
23…ヒータコア(加熱手段)
24…エアミックスドア(エアミックス手段)
24B…後部座席用エアミックスドア(エアミックス手段)
28…デフ吹き出し通路(複数の吹き出し通路)
29…フェイス吹き出し通路(複数の吹き出し通路)
30…フット吹き出し通路(複数の吹き出し通路)
40…連結通路
42…補助ファン(補助送風手段)
43…連結ドア(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に送風される空気が通過する空気通路を内部に形成する空調ケース(11)と、
前記空気通路に空気を送風する送風手段(16)と、
前記空気通路全体を横断するように前記空調ケース内に設けられ、送風手段によって送風された空気を冷却して下流側に冷風を供給する冷却手段(22)と、
前記冷却手段よりも下流側に設けられ、前記冷却手段を通過した空気を車室内における複数の部位に吹き出すための複数の吹き出し通路(28〜30)と、
前記複数の吹き出し通路のうちの2つの吹き出し通路における一方の吹き出し通路(28)から車室内の空気を吸い込み、他方の吹き出し通路(29)へ吹き出す空気流れを形成する補助送風手段(42)と、を含むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記2つの吹き出し通路は、前記2つの吹き出し通路の間に他の前記吹き出し通路がないように配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記2つの吹き出し通路を繋ぐ連結通路(40)をさらに含み、
前記補助送風手段は、前記連結通路に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記複数の吹き出し通路および前記連結通路は、前記空調ケース外に形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記連結通路の通路断面積を調整する調整手段(43)と、
車室内の空調要求に応じて、前記冷却手段の冷却能力、前記送風手段の送風量、前記補助送風手段の送風量、および前記調整手段の調整量を調整する制御手段(21)と、をさらに含むことを特徴とする請求項3または4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調ケース内の前記冷却手段の下流側に設けられ、空気を加熱して下流側に温風を供給する加熱手段(23)と、
前記冷却手段を通過した冷風と前記加熱手段を通過した温風との風量比率を調整するエアミックス手段(24)と、をさらに含み、
前記制御手段は、車室内の空調要求に応じて、前記冷却手段の冷却能力、前記送風手段の送風量、前記補助送風手段の送風量、前記調整手段の調整量、および前記エアミックス手段の調整量を調整することを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−219029(P2011−219029A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92357(P2010−92357)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】