説明

車両用空調装置

【課題】暖房時に乗員が足元を冷たいと感じるのを回避することのできる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空気を吸い込んでその空気を冷却又は暖めて排出する空調ユニット13と、空調ユニット13に連結され車室外の空気を空調ユニット13へ導く外気ダクト14と、空調ユニット13に連結され車室12内の空気を空調ユニット13へ導く吸込側内気ダクト15と、空調ユニット13に連結され空調ユニット13で冷却又は暖められた空気を車室12内へ導く吹出側内気ダクト16A,16Bとを備えた車両用空調装置10であって、車室12内に開口された吸込側内気ダクト15の吸込口15Aを、前部シート18よりも後方の床部17Aに設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置に係り、特に、車室内の空気を循環させる際に使用されるダクト構造に改良を加えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車両用空調装置が搭載されている。このような車両用空調装置においては、一般に冷房機能と暖房機能とを有し、乗員の操作により冷房モードと暖房モードとを切り換えられるようになっている。そして、冷房モードでは、空調ユニットが車室内の空気を吸引して再冷却した後、車室内に再び供給する内気循環方式が主に実行され、暖房モードでは、空調ユニットが外気を吸引して加熱した後、車室内に供給する外気導入方式が主に実行される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−50013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、暖房効率向上を目的として、暖房モードにおいても内気循環方式を採用した車両用空調装置が提案されている。このような車両用空調装置においては、前席乗員前方のインストルメントパネルの下部に設けられた吸込口で車室内の空気を吸引しているため、暖房モード時に内気循環方式で採用すると、車両後方から吸込口へ向かう空気の流れが生じる。
【0005】
しかしながら、暖房モード時に車両後方から前記吸込口へ向かう空気の流れが生じると、充分に暖まっていない冷たい空気(例えば、冷えていないがあまり暖かくない後部シート付近の空気)が乗員の足や下腿部を通過するため、いわゆる冷気戻り(冷たい空気が乗員の足元を抜ける)が発生し、乗員は足元が冷たいと感じてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明の課題は、暖房時に乗員が足元を冷たいと感じるのを回避することのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置は、空気を吸い込んでその空気を冷却又は暖めて排出する空調ユニットと、前記空調ユニットに連結され車室外の空気を該空調ユニットへ導く外気ダクトと、前記空調ユニットに連結され車室内の空気を該空調ユニットへ導く吸込側内気ダクトと、 前記空調ユニットに連結され該空調ユニットで冷却又は暖められた空気を前記車室内へ導く吹出側内気ダクトとを備えている。そして、本発明に係る車両用空調装置は、前記車室内に開口された前記吸込側内気ダクトの吸込口を、前部シートよりも後方の床部に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内に開口された吸込側内気ダクトの吸込口を、前部シートよりも後方の床部に設けたことにより、冷たい空気が乗員の足元を通過する前に、その冷たい空気は吸込口から吸い込まれてしまい、これにより、冷気戻りを防止することができる。その結果、乗員は自分の足元が冷たいと感じるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の基本的な機能を説明する図である。
【図2】実施例1による車両用空調装置の構成図である。
【図3】実施例2による車両用空調装置の構成図である。
【図4】実施例3による車両用空調装置の構成図である。
【図5】図4に示した車両用空調装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施例4による車両用空調装置の構成図である。
【図7】図6に示した車両用空調装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例5による車両用空調装置の構成図である。
【図9】実施例6による車両用空調装置を示しており、(a)は吸込側内気ダクトが1系統の場合の図、(b)は吸込側内気ダクトが2系統の場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明に係る車両用空調装置の基本的な機能を説明している。この車両用空調装置10は、車両(ここでは、乗用車)11の車室12内の前部に設けられ、空気を吸い込んでその空気を冷却又は暖めて排出する空調ユニット13と、空調ユニット13に連結され車室12外の空気(以下、外気という)を空調ユニット13へ導く外気ダクト14と、空調ユニット13に連結され車室12内の空気(以下、内気という)を空調ユニット13へ導く吸込側内気ダクト15と、空調ユニット13に連結され空調ユニット13で冷却又は暖められた空気を車室12内へ導く吹出側内気ダクト16A,16Bとを備えている。ここで、吹出側内気ダクト16Aは空調ユニット13で冷却された空気を車室12内に導き、吹出側内気ダクト16Bは空調ユニット13で暖められた空気(温風)を車室12内に導く。
【0012】
そして、本発明に係る車両用空調装置10では、車室12内に開口された吸込側内気ダクト15の吸込口15Aが車室12の床部17に、特に、床部17のうち前部シート18(前部シート18における座部18Aの前縁部)よりも後方の床部17Aに設けられている。なお、19は前部シート18よりも後方に配置された後部シートである。
【0013】
暖房は、足元から暖め、頭寒足熱の環境を作ることが快適性の観点からも暖房効率の観点からも効果的である。しかし、温風は冷たい空気に比べ軽いため、上層に向かって拡散する性質があり、頭寒足熱の環境を作ることは難しかった。また、暖房効率を上げるために内気循環暖房を行っても、従来の空調装置では吸込口が前部シート18の前方(前部シート18に着座した乗員M1の足元前方)に設置されていたため、車室12内の後方から乗員M1の足元を通って前方に向かう冷たい風の流れ(冷気戻り)が生じ、乗員M1が寒く感じる。
【0014】
本発明に係る車両用空調装置10においては、これら2つの問題を解決することが可能となる。図1において、ハッチング部分20は吸込側内気ダクト15の吸込口が配置される領域を示している。以下、本発明に係る車両用空調装置10の具体的な実施例について説明する。なお、本発明に係る車両用空調装置10は、空調ユニット13で冷却された空気を、吹出側内気ダクト16Aを介して車室12内に吹き出す冷房モードの機能も有するが、以下の各実施例では、空調ユニット13で暖められた空気を車室12内に吹き出す暖房モードについてのみ説明する。
【0015】
《実施例1》
図2は、実施例1による車両用空調装置10の構成を説明する図である。図2に示すように、車両11の車室12内には、その前部にインストルメントパネル21が設置され、このインストルメントパネル21の内部に空調ユニット13が収納されている。また、車室12内には前部シート18が、その後方に後部シート19がそれぞれ配置されている。これら前部シート18及び後部シート19は車室12の床部17Aに取り付けられている。なお、前部シート18はバケットシートであって、運転席と助手席からなっている。また、後部シート19は3人掛けのベンチシートであって、車幅方向に沿って設置されている。
【0016】
空調ユニット13には外気ダクト14が結合され、この外気ダクト14の先端部は車両11の外部(外気)に連通している。また、空調ユニット13には吸込側内気ダクト15及び吹出側内気ダクト16A,16Bがそれぞれ結合されている。このうち、吹出側内気ダクト16Aの先端部は、車室12内(インストルメントパネル21の表面)に開口されている。また、吹出側内気ダクト16Bの先端部は、前部シート18に座った乗員M1の足元付近に開口している。
【0017】
空調ユニット13に結合された吸込側内気ダクト15は、インストルメントパネル21に沿って下方に向けて延設され、さらに車室12の下側前部付近で車両後部側へほぼ直角に折り曲げられ、その折り曲げ部15Bは車室12の床部17Aの下面(フロアパネルの下面)に沿って車両後部に向かって延設されている。折り曲げ部15Bの後部は、上方に折り曲げられ、前部シート18の座部18Aの後部付近で車室12の床部17A(つまり、フロアパネル)を貫通して配置されている。そして、吸込側内気ダクト15は、車室12の床部17Aを貫通した後、車両前方に向けて折り曲げられ、その折り曲げ部15Cの先端部に前側吸込口としての吸込口15Aが設けられている。吸込口15Aは、前部シート18の座部18Aのほぼ中央下方に位置し、乗員M1の足元に対向配置されている。
【0018】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0019】
暖房モードで内気循環をさせる場合、空調ユニット13で暖められた空気(温風)は、吹出側内気ダクト16Bを介して車室12内に供給される。空調ユニット13は、内気を吸込側内気ダクト15を介して吸引しており、吹出側内気ダクト16Bから車室12内に供給された温風は、主に乗員M1の足元の方へ向かって流れる。そして温風は、乗員M1の足元を暖めた後、吸込口15Aから吸込側内気ダクト15内へ吸い込まれ、車室12の床部17Aの下側を通って空調ユニット13に戻される。
【0020】
このように、本実施例では、吹出側内気ダクト16Bから車室12内に供給された温風を前部シート18下方の吸込口15Aで吸い込む構成であるため、車室12の前側下部(インストルメントパネル21の下部から吸込口15Aまでの領域)に暖かい空気の層(空気の循環層)が形成され、乗員M1にとって頭寒足熱の環境を実現することができる。この場合、後部シート19の下方には暖かい空気の層が形成されにくく、前部シート18の下方のみを効率良く暖めることができる。
【0021】
また、本実施例では、従来のように内気をインストルメントパネル21の下部、つまり乗員M1の足元前方で吸引したときに起こる冷気戻りも生じないため、乗員M1はこれまでの空調に比べより速やかに暖かく感じることができ、快適性が向上する。
【0022】
《実施例2》
図3は実施例2を示している。本実施例では、車室12の床部17Aの下面に沿って配置された、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bが後部シート19の下方まで延設され、後部シート19の下方から内気を吸い込むように構成されている。すなわち、折り曲げ部15Bは、後部シート19の下方において、上方へ向けて折り曲げられて車室12の床部17A(つまり、フロアパネル)を貫通している。そして、吸込側内気ダクト15は、車室12の床部17Aを貫通した後、車両前方に向かって折り曲げられ、その折り曲げ部15Dの先端部に後側吸込口としての吸込口15Eが設けられている。吸込口15Eは、後部シート19の座部19Aの下方で、座部19Aの中央より若干前方寄りに位置し、後部シート19に着座した乗員M2の足元に対向配置されている。本実施例では、前部シート18の下方には、内気を吸い込むための吸込口は設けられていない。他の構成は実施例1の場合と同様である。
【0023】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0024】
暖房モードで内気循環をさせる場合、空調ユニット13で暖められた空気(温風)は、吹出側内気ダクト16Bを介して車室12内に供給される。空調ユニット13は内気を吸込側内気ダクト15を介して吸引しており、吹出側内気ダクト16Bから車室12内に供給された温風は、主に乗員M2の足元の方へ向かって流れる。そして温風は、乗員M1,M2の足元を暖めた後、吸込口15Eから吸込側内気ダクト15内へ吸い込まれ、車室12の床部17Aの下側を通って空調ユニット13に戻される。
【0025】
このように、本実施例では、吹出側内気ダクト16Bから車室12内に供給された温風を後部シート19の下方の吸込口15Eで吸い込む構造であるため、車室12の下部(インストルメントパネル21の下部から吸込口15Eまでの広い領域)に暖かい空気の層(空気の循環層)が形成され、乗員M2だけでなく乗員M1にとっても頭寒足熱の環境を実現することができる。
【0026】
《実施例3》
図4は実施例3を示している。本実施例では、前部シート18の下方及び後部シート19の下方に吸込側内気ダクト15の吸込口が設けられている。すなわち、前部シート18の下方には吸込口15Aが、後部シート19の下方には吸込口15Eがそれぞれ設けられている。吸込口15Eには開閉バルブ15Fが設けられている。
【0027】
また、本実施例では、後部シート19の座部19Aには、後部シート19に乗員M2が着座しているか否かを検知する、着座検知手段としての着座センサ22が設けられている。この着座センサ22での検知信号は、制御手段としての制御部23に入力される。そして制御部23は、着座センサ22からの検知信号に基づいて開閉バルブ15Fの開閉を制御する。なお、制御部23は空調ユニット13内に搭載されている。他の構成は実施例1及び実施例2と同様である。
【0028】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0029】
暖房モードで内気循環をさせる場合、空調ユニット13で暖められて吹出側内気ダクト16Bを介して車室12内に供給された温風は、その一部が乗員M1の足元を通って吸込口15Aから吸い込まれるとともに、残りが乗員M2の足元を通って吸込口15Eから吸い込まれる。これにより、乗員M1の足元と乗員M2の足元を同時に暖めることができる。
【0030】
ここで、後部シート19に乗員M2が着座していない場合は、後部シート19の下方に温風を流す必要がないので、吸込口15Eの開閉バルブ15Fを閉じて前部シート18の下方側だけに温風が流れるようにする。このときの制御フローを図5に示す。
【0031】
図5において、先ず、制御部23は着座センサ22から信号を取り込んで、後部シート19に乗員M2が着座しているか否かを判断する(ステップS11)。乗員M2が着座していると判断したときは、制御部23は、開閉バルブ15Fを開いて、内気が吸込口15Eから吸込側内気ダクト15を介して空調ユニット13に流れ込むように制御する(ステップS12)。このとき、前部シート18下方の吸込口15Aからは、常時、内気が吸い込まれ空調ユニット13へ戻されている。
【0032】
ステップS11において、乗員M2が着座していないと判断したときは、制御部23は、開閉バルブ15Fを閉じて、内気を吸込口15A側だけから吸い込んで空調ユニット13に流れ込むように制御する(ステップS13)。
【0033】
そして、空調スイッチがオンか否かを判断し(ステップS14)、オンの場合はステップS11へ戻り上記一連の処理を続行し、オフの場合は上記一連の処理を中止する。
【0034】
本実施例によれば、前部シート18に乗員M1が、後部シート19に乗員M2がそれぞれ着座しているときは、乗員M1,M2の双方の足元を同時に暖めることができる。また、後部シート19に乗員がいないときは前部シート18の下方にだけ暖かい空気の層が形成され、乗員M1の足元のみを効率良く暖めることができる。
【0035】
《実施例4》
図6は実施例4を示している。上記実施例1〜3においては、車室12内への温風の吹き出しは吹出側内気ダクト16Bを介して行われている。しかし、吹出側内気ダクト16Bの吹出口は、インストルメントパネル21付近、つまり車室12の前部に設けられているので、後部シート19に着座している乗員M2の足元まで充分な温風が供給されているとは言い難い。
【0036】
そこで、本実施例では、吸込側内気ダクト15を、内気を吸い込む吸込用と、車室12内に空気を供給する吹出用とに共用している。すなわち、本実施例においては、吸込側内気ダクト15の後部は上方に折り曲げられ、前部シート18の座部18Aの後部付近で車室12の床部17A(つまり、フロアパネル)を貫通して配置されている。そして、吸込側内気ダクト15は、車室12の床部17Aを貫通した後、車両後方に向けて折り曲げられ、その折り曲げ部15Gの先端部に吸込口(又は吹出口)15Hが設けられている。吸込口(又は吹出口)15Hは、前部シート18の座部18Aの後縁部下方に位置し、乗員M2の足元に対向配置されている。
【0037】
また、本実施例では、後部シート19の座部19Aには、後部シート19に乗員が着座しているか否かを検知する着座センサ22が設けられている。この着座センサ22での検知信号は制御部23に入力され、制御部23は、着座センサ22からの検知信号に基づいて、吸込側内気ダクト15を、内気を吸い込むための吸込用としたり、車室12内に空気を供給するための吹出用としたりする切替操作を行う。なお、制御部23は空調ユニット13内に搭載されており、上記切替操作を行う機構も空調ユニット13内に設けられている。他の構成は実施例1と同様である。
【0038】
次に、本実施例の作用を図7を用いて説明する。
【0039】
先ず、制御部23は着座センサ22から信号を取り込んで、後部シート19に乗員M2が着座しているか否かを判断する(ステップS21)。乗員M2が着座していると判断したときは、制御部23は、温風を吸込側内気ダクト15を介して折り曲げ部15Gに送り、吹出口15Hから後部シート19の乗員M2の足元に吹き出すよう制御する(ステップS22)。このとき、前部シート18の乗員M1の足元には、吹出側内気ダクト16Bを介して温風が送られている。
【0040】
ステップS21において、後部シート19に乗員M2が着座していないと判断したときは、制御部23は、吸込側内気ダクト15を吹出用から吸込用に切り替えて、内気を吸込口15Hから吸い込み吸込側内気ダクト15を介して空調ユニット13に戻す(ステップS23)。
【0041】
そして、空調スイッチがオンか否かを判断し(ステップS24)、オンの場合はステップS21へ戻り上記一連の処理を続行し、オフの場合は上記一連の処理を中止する。
【0042】
本実施例によれば、後部シート19に乗員M2が座っているときは、その乗員M2の足元に吹出口15Hから温風が供給されるので、乗員M2は素速く暖かく感じることができる。また、後部シート19に乗員が座っていないときは、内気が吸込口15Hから吸い込まれるので、前部シート18の下方に暖かい空気の層が形成され、乗員M1は速く暖かく感じることができる。
【0043】
《実施例5》
図8は実施例5を示している。本実施例では、図4に示した車両用空調装置において、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bの後端部にドラフタ25が取り付けられている。ドラフタ25は筒状部材からなり、吸込側内気ダクト15はドラフタ25を介して外気と連通している。
【0044】
内気循環暖房を行う場合、必ずしも100%内気循環させる必要はなく、暖房に使用する一部の空気(例えば50%)にのみ内気(車室12内の空気)を使用し、残り(例えば50%)は外気(車室外の空気)を使用する場合もある(これを半内気循環という)。半内気循環運転の場合、外気導入に相当する量の内気は、ドラフタ25を通じて車外に排出される。
【0045】
従来の車両では、車室内からドラフタにいたるさまざまな気流の流れが生じ、頭寒足熱の温度分布を実現できない要因の一つとなっていた。
【0046】
本実施例では、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bにドラフタ25を連結した構成とすることで、内気循環のための空気も車外に排出される空気もすべて前部シート18下方の吸込口15A及び後部シート19下方の吸込口15Eで吸引することができる。それにより、半内気循環運転時にも、乗員M1及び乗員M2の足元に暖かい空気の層が形成され、頭寒足熱の理想の温度分布を実現することができる。
【0047】
なお、図2または図3に示した車両用空調装置において、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bの後端部にドラフタ25を取り付けてもよい。
【0048】
《実施例6》
図9は実施例6を示している。図9は、車両11における車室12内の平面を示しており、ルーフパネルを取り除いたときの図である。
【0049】
上記各実施例で示したように、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bは、車両11の床部17Aの下側に配置されている。この場合、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bを、図9(a)に示すように、車両11の車幅方向中央に1系統設けてもよいし、図9(b)に示すように、運転席18Bの下方及び助手席18Cの下方に2系統設けてもよい。
【0050】
1系統の場合はコストが掛からずに済むという利点があり、2系統の場合は内気の循環効率を向上させることができるという利点がある。
【0051】
なお、吸込側内気ダクト15の折り曲げ部15Bを3系統以上設けてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記各実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記各実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0053】
例えば、実施例2〜4においては、吸込側内気ダクト15の吸込口15Aや15Eを車両前方に向けて配置したが、これら吸込口15Aや15Eを車両前方以外の方向に向けて配置してもよい。この場合、見栄え、前部シート18及び後部シート19の形状等を考慮して、吸込口15Aや15Eの配置方向を適宜選定することができる。
【0054】
また、上記各実施例では、空調ユニット13は1台だけ設けられていたが、空調ユニット13を複数台設けてもよい。
【0055】
また、上記各実施例では、主に前席乗員M1の足元前方の吹出側内気ダクト16Bから温風を吹き出す場合について説明したが、本発明を他の吹き出しモードに適用してもよい。例えば、バイレベルモード(吹出側内気ダクト16A(ベントグリル)と吹出側内気ダクト16Bの両方から吹き出す場合)においても、低い位置で内気を吸い込むことで、車室12内下部に暖かい空気が循環するようになる。これにより、頭寒足熱の環境を作り、かつ足元の冷気戻りも防止することができる。
【0056】
また、上記各実施例では、吹出側内気ダクト16Bから温風を吹き出し、空調ユニット13から離間した吸込口15Aや15E等で内気を吸い込む構成について説明したが、この関係は逆でもよい。例えば、吸込口15Aや15E等から温風を吹き出し、吹出側内気ダクト16Bで内気を吸い込むよう構成してもよい。この場合、吹出側内気ダクト16Bを省略して、空調ユニット13本体で内気を直接吸い込むようにしてもよい。
【0057】
さらに、上記各実施例では、暖房の場合について説明したが、本発明は冷房の場合にも適用できる。また、暖房時のみ本発明における内気循環方式を採用し、冷房時には従来の空調ユニットと同様、空調ユニット13本体で内気の吸引を行ってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 車両用空調装置
11 車両
12 車室
13 空調ユニット
14 外気ダクト
15 吸込側内気ダクト
15A 吸込口(前側吸込口)
15E 吸込口(後側吸込口)
15H 吸込口又は吹出口
15F 開閉バルブ
16A,16B 吹出側内気ダクト
17 床部
18 前部シート
19 後部シート
22 着座センサ(着座検知手段)
23 制御部(制御手段)
25 ドラフタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸い込んでその空気を冷却又は暖めて排出する空調ユニットと、
前記空調ユニットに連結され車室外の空気を該空調ユニットへ導く外気ダクトと、
前記空調ユニットに連結され車室内の空気を該空調ユニットへ導く吸込側内気ダクトと、 前記空調ユニットに連結され該空調ユニットで冷却又は暖められた空気を前記車室内へ導く吹出側内気ダクトとを備えた車両用空調装置であって、
前記車室内に開口された前記吸込側内気ダクトの吸込口を、前部シートよりも後方の床部に設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記吸込口として、前部シートの下方に前側吸込口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記吸込口として、後部シートの下方に後側吸込口を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
後部シートに乗員が着座しているか否かを検知する着座検知手段と、該着座検知手段からの検知信号に基づいて、前記後側吸込口の開閉を制御する制御手段とが設けられ、
前記制御手段は、後部シートに乗員が着座しているときは、前記後側吸込口を開にすることにより、当該後側吸込口を介して前記車室内の後部空間の空気を前記空調ユニットとの間で循環させることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−225117(P2011−225117A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97144(P2010−97144)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】