説明

車両用空調装置

【課題】エンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期等でもエンジン冷却水の温度を、簡単な構成で急速に上昇させることができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】三方電磁切換弁13からコンデンサ14、膨張弁16、エバポレータ7aを迂回するようにして、圧縮機11を結ぶ流路に接続された第2の冷媒循環配管路9bと、三方電磁切換弁13による流路方向の切り換えにより、第2の冷媒循環配管路9bを流れる圧縮機11から吐出されたガス状の冷媒と、暖房用冷却水循環回路10のヒータコア8a側に流入するエンジン冷却水との間で熱交換する水−冷媒熱交換器25と、冷媒の循環方向に沿って第2の冷媒循環配管路9bの水−冷媒熱交換器25と圧縮機11との間の流路に設けた、水−冷媒熱交換器25での熱交換により凝縮された気液二相冷媒を減圧してガス状の冷媒に相変化させる膨張器21とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジン冷却水を利用して車室内の暖房を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置は、エンジン冷却水を利用した暖房装置および冷凍サイクルを利用した冷房装置を設けているのが普通である。
【0003】
この種の暖房装置では、車室内の暖房時に、エンジン冷却水を車室内空調用のヒータコア(車室内熱交換器)に循環させると共に、ヒータコア通過風を車室内の吹出口から吹き出させるようにして車室内を暖房可能にするものが知られている。
【0004】
このような車両用空調装置により車室内の暖房を行う場合、エンジン冷却水の水温が充分に上昇するまでは車室内に吹き出される空気の温度が低く、乗員が快適と感じるまで長い時間を要する必要があった。
【0005】
これの解消方法としては、外気温度が低い場合に冷房装置を作動させると共に、この冷房装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱を利用して冷却水を加熱して、加熱された冷却水をヒータコアに供給することにより、ヒータコアで車室内の空気を暖める冷却水式の暖房方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1には、いわゆる冷房用のモードと4種類の暖房用のモードがある。このうち暖房用モードの中に、エンジン冷却水の温度が低い場合には、冷凍サイクルの高圧冷媒を熱源として、エンジン冷却水を加温する方式である。また別の暖房モードでは、高圧冷媒を熱源とし、室内側の熱交換器でその熱を空調風の加熱に使うことで、暖房を実現している。
【0007】
また、他の解消方法としては、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に冷房装置を作動させると共に、この冷房装置の圧縮機で圧縮される高圧冷媒の熱で車室内の空気を直接加熱するようにしたヒートポンプ式の暖房方法も考えられる。なお、以下の説明では、冷房装置によるヒートポンプ式の暖房方法を冷房装置のヒートポンプ運転として用いる。
【0008】
このヒートポンプ運転する方法では、圧縮機で圧縮された高圧冷媒の熱で車室内の空気を加熱する際、高圧冷媒から熱が奪われて高圧冷媒が凝縮して高圧凝縮液冷媒になる。このため、再び冷媒を圧縮機で圧縮させるには、凝縮液冷媒を膨張・減圧手段で膨張させて低圧液冷媒にした後、熱交換器で低圧液冷媒に吸熱させることにより、低圧液冷媒をガス化させて冷媒ガスにする必要がある。
【0009】
この熱交換器で低圧液冷媒に吸熱させる際には、熱交換器の周囲の空気の温度の熱が奪われて、熱交換器の周囲の空気の温度が低下する。従って、低圧液冷媒を熱交換器で冷媒ガスにする際に車室内の暖房に影響を与えないようにするために、熱交換器には車室外に配設された外部熱交換器を用いる必要がある。このため、冷房装置をヒートポンプ運転する方法では、外気温度が低くなるほど、高圧冷媒の熱による車室内の空気の加熱量を増加させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−310227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した冷却水式の暖房方法では、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期の車室内暖房を快適に行うために、複数の熱交換器や多数の逆止弁,多数の電磁弁等を車両用空調装置(空調システム)に用いる必要があり、車両用空調装置の部品点数の増加や重量の増大を招き易い構造となり、製品コストの上昇が否めないものであった。しかも、この部品点数の増加は、車両用空調装置の構造を複雑にしていた。
【0012】
また、上述した冷房装置では、低外気温時に車室外部のコンデンサや車室内のエバポレータ内に多量の冷媒が滞留しているために、この低外気温時に単にヒートポンプ運転により車室内を暖房しようとしたときに、コンデンサやエバポレータ内の冷媒を暖房のために有効に利用できず、充分な暖房性能が発揮できないものであった。
【0013】
しかも、このような冷房装置のヒートポンプ運転では、外気温度が低くなるに従って暖房能力が低下する傾向があり、冷却水の温度を急速に上昇させることが難しかった。
【0014】
そこで、本発明は、エンジン冷却水を用いて車室内の暖房を行う際に、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期等でもエンジン冷却水の温度を、簡単な構成で急速に上昇させることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の車両用空調装置は、冷媒を、圧縮機、車室外の冷媒凝縮用のコンデンサ、第1の冷媒減圧手段、車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータを介して前記圧縮機に戻して循環させる冷媒循環配管路と、エンジン冷却水を車室内のヒータコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路と、前記冷媒の循環方向に沿って前記冷媒循環配管路の前記圧縮機と前記コンデンサとの間の流路に設けた、前記冷媒の流路方向を切り換える切換え手段と、前記流路切換え手段から前記コンデンサ、前記第1の冷媒減圧手段、前記エバポレータを迂回するようにして、前記圧縮機を結ぶ流路に接続されたバイパス流路と、前記切換え手段による流路方向の切り換えにより、前記バイパス流路を流れる前記圧縮機から吐出されたガス状の冷媒と、前記暖房用冷却水循環回路の前記ヒータコア側に流入する前記エンジン冷却水との間で熱交換する水−冷媒熱交換器と、前記冷媒の循環方向に沿って前記バイパス流路の前記水−冷媒熱交換器と前記圧縮機との間の流路に設けた、前記水−冷媒熱交換器での熱交換により凝縮された気液二相冷媒を減圧してガス状の冷媒に相変化させる第2の冷媒減圧手段とを備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載の車両用空調装置は、前記切換え手段による流路方向の切り換えにより、前記圧縮機から吐出されて前記バイパス流路の前記水−冷媒熱交換器の上流側を流れる冷媒と前記第2の冷媒減圧手段により減圧されて相変化された冷媒との間で熱交換する冷媒内部熱交換器を備えていることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の車両用空調装置は、前記切換え手段による流路方向の切り換えにより、前記圧縮機から吐出されたガス状の冷媒を前記バイパス流路の前記水−冷媒熱交換器での熱交換により凝縮し、該水−冷媒熱交換器の下流側から流れる冷媒と前記第2の冷媒減圧手段により減圧されて相変化された冷媒との間で熱交換する冷媒内部熱交換器を備えていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載の車両用空調装置は、前記冷媒循環配管路の前記第2の冷媒減圧手段と前記圧縮機との間にアキュムレータを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載の車両用空調装置によれば、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に車室内の暖房を行う際において、エンジン冷却水の温度を短時間で高温度に上昇させ、加熱されたエンジン冷却水をヒータコアに循環供給することで、外気温度が低い場合でもエンジン始動後に直にヒータコアで暖められた空気で車室内の暖房を行うことが可能となる。
【0020】
更に、圧縮冷媒の熱を利用してエンジン冷却水を加熱させるための装置構成を複雑にすることなくシンプルに構成することができるので、重量増加とコスト上昇を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用空調装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態1における車両用空調装置の空調ユニットの概略構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態1における車両用空調装置の制御系を示す図。
【図4】本発明の実施形態1における車両用空調装置の冷凍サイクルを示した図。
【図5】本発明の実施形態2に係る車両用空調装置の概略構成を示す図。
【図6】本発明の実施形態2における車両用空調装置の冷凍サイクルを示した図。
【図7】本発明の実施形態3に係る車両用空調装置の概略構成を示す図。
【図8】本発明の実施形態3における車両用空調装置の冷凍サイクルを示した図。
【図9】本発明の実施形態4に係る車両用空調装置の概略構成を示す図。
【図10】本発明の実施形態4における車両用空調装置の冷凍サイクルを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
【0023】
図1において、1は車両(自動車)の車室、2は車両のエンジンルーム、3はエンジンルーム2内に配設された水冷式のエンジンである。このエンジン3には、エンジン冷却のためのエンジン冷却水を流す周知のウォータジャケット(図示せず)が設けられている。
【0024】
また、車室1の前部に設けられたインストルメントパネル(図示せず)内には、車両用空調装置(車両用空調システム)4の空調ユニット5が配設されている。
【0025】
図2に示すように、この空調ユニット5は、ブロワユニット6、クーラユニット7、ヒータユニット8を備えている。尚、空調ユニット5のクーラユニット7、ヒータユニット8内には、ブロワユニット6から送風される空気が流れる一連の風路5aが形成されている。
【0026】
ブロワユニット6は、ブロワ(送風ファン)6aを有すると共に、インテークユニット6bを有する。このインテークユニット6bは、外気取入口6b1と内気取入口6b2を有すると共に、外気取入口6b1と内気取入口6b2の開閉用のインテークドア6cを有する。このインテークドア6cは、ドア駆動部6c1により駆動(回動)させられて、外気取入口6b1と内気取入口6b2の開閉又は開度を調整し、車室外の外気と車室内の内気との流量吸込量を調整可能に設けられている。
【0027】
そして、この外気取入口6b1から取り入れられた外気または内気取入口6b2から取り入れられた内気、或いは外気取入口6b1及び内気取入口6b2から取り入れられた外気と内気の混合された空気は、ブロワ(送風ファン)6aによりクーラユニット7へ送風されるようになっている。
【0028】
このクーラユニット7には冷房用冷媒が循環するエバポレータ(空気冷却用の熱交換器)7aが設けられている。そして、ブロワユニット6により送風される取入空気は、エバポレータ7aの図示しないエア通路を通過する際に、エバポレータ7aが熱交換により冷却することができるようになっている。そして、このエバポレータ7aを通過した空気はヒータユニット8へ送られるようになっている。
【0029】
ヒータユニット8内には、エンジンの冷却水が循環するヒータコア(空気加熱用の熱交換器)8aが設けられている。また、ヒータコア8aの側部(図では下部)には当該ヒータコア8aを迂回するバイパス風路8bが設けられ、またヒータコア8aの前面にはミックスドア8cが設けられている。そして、このミックスドア8cは、ドア駆動部8c1により駆動(回動)されられて、ヒータコア8aの上流側の図示しないエア通路(エア風路)の開度を調節することにより、ヒータコア8aのエア通路内を流れる空気の量とバイパス風路8bを流れる空気の量との比率を調節できるようになっている。
【0030】
このヒータコア8aの下流には混合室8dが形成され、この混合室8dには室内のデフロストグリル、ベントグリル及びフットグリルへそれぞれ連通する吹出口8eが設けられている。
【0031】
図1に示す車両用空調装置4は、冷媒循環配管路9と、暖房用冷却水循環配管路10を有する。この冷媒循環配管路9は、冷房用の冷凍サイクル(即ち冷房サイクル)を行わせる第1の冷媒循環配管路9aと、冷却水加熱用の冷凍サイクル(暖房用加熱サイクル)を行わせる第2の冷媒循環配管路9bを有する。
【0032】
この第1の冷媒循環配管路9aは、エンジン3の起動により駆動される圧縮機11と、一端が圧縮機11の図示しない冷媒出口(冷媒出口側)に接続された第1の冷媒配管12aと、三方電磁切換弁13が途中に介装されたこの第1の冷媒配管12aの他端に接続され且つ車室1外に配設された冷媒凝縮用のコンデンサ14を有する。
【0033】
また、第1の冷媒循環配管路9aは、冷媒入口(図示せず)がコンデンサ14の冷媒出口(図示せず)に接続されたリキッドタンク15と、一端がリキッドタンク15の冷媒出口(図示せず)に接続された第2の冷媒配管12bと、この第2の冷媒配管12bの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された膨張弁16と、この膨張弁16の冷媒出口(図示せず)が接続された上述の空気冷却用のエバポレータ7aを有する。
【0034】
この膨張弁16は、エバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)から吐出(流出)する冷媒温度及び冷媒圧力を感知(検知)して、エバポレータ7aの冷媒入口(図示せず)に流入する液体冷媒の流量を負荷にあった冷媒流量になるように調整し、即ちエバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)から吐出される(流出する)冷媒が設定した目標の(所定の)温度・圧力の過熱状態(過熱度)になるように、エバポレータ7aの冷媒入口(図示せず)に流入する液体冷媒の流量を調整するようになっている。この構成には、周知の構成を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
更に、第1の冷媒循環配管路9aは、一端がエバポレータ7aの冷媒出口(図示せず)に接続された第3の冷媒配管12cと、第3の冷媒配管12cの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された第1逆止弁17と、この第1逆止弁17の冷媒出口(図示せず)に一端が接続された第4の冷媒配管12dと、この第4の冷媒配管12dと圧縮機11の冷媒入口(図示せず)を接続する気液分離用のアキュムレータ18等を備えている。
【0036】
そして、圧縮機11から吐出される冷媒は、第1の冷媒配管12a、三方電磁切換弁13、コンデンサ14、リキッドタンク15、第2の冷媒配管12b、膨張弁16、エバポレータ7a、第3の冷媒配管12c、第1逆止弁17、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18の順に流れた後に、圧縮機11に戻されて循環する第1の冷凍サイクルを繰り返すことができるようになっている。
【0037】
この際、圧縮機11は冷媒ガスを圧縮して高温高圧の圧縮冷媒(圧縮冷媒ガス)にし、コンデンサ14は圧縮冷媒の熱を外気に放熱して圧縮冷媒を冷却することにより凝縮させて液体冷媒(凝縮冷媒、冷媒液)にし、リキッドタンク15は液体冷媒を貯留し、膨張弁16はリキッドタンク15からの高圧の液体冷媒を膨張させて低圧の液体冷媒(凝縮冷媒)にするようになっている。
【0038】
この膨張弁16からの液体冷媒は、エバポレータ7a内に供給されて風路5a内の空気の熱を吸熱し(奪い)、風路5a内の空気を冷却する際に、蒸発させられて冷媒ガスになる。この冷媒ガスは、第3の冷媒配管12c、第1逆止弁17、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18を介して圧縮機11に戻される。
【0039】
第2の冷媒循環配管路9bは、圧縮機11と、第1の冷媒配管12aの途中に介装された三方電磁切換弁13と、一端が三方電磁切換弁13に接続され第1バイパス冷媒配管19aと、車室1外に配設され且つ第1バイパス冷媒配管19aの他端に冷媒入口(図示せず)が接続された冷媒凝縮用(及び冷却水加熱用)の冷媒用熱交換器20を有する。
【0040】
更に、第2の冷媒循環配管路9bは、一端が冷媒用熱交換器20の冷媒出口(図示せず)に接続された第2バイパス冷媒配管19bと、車室1外に配設され且つ第2バイパス冷媒配管19bの他端に接続された膨張器21と、一端が膨張器21の冷媒出口(図示せず)に接続された第3バイパス冷媒配管19cと、この第3バイパス冷媒配管19cの他端と第1逆止弁17の冷媒出口(図示せず)に接続した第4の冷媒配管12dの途中とを接続する第2逆止弁22と、前記アキュムレータ18を有する。
【0041】
そして、圧縮機11から吐出される冷媒は、三方電磁切換弁13、第1バイパス冷媒配管19a、冷媒用熱交換器20、第2バイパス冷媒配管19b、膨張器21、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18の順に流れた後に、圧縮機11に戻されて循環する第2の冷凍サイクルを繰り返すことができるようになっている。
【0042】
暖房用冷却水循環配管路10は、エンジン3のウォータジャケット(図示せず)内の流路と、図示しないウォータポンプによりこのウォータジャケットの冷却水出口(図示せず)から吐出される冷却水をヒータコア8aに流した後にエンジン3のウォータジャケット内の流路に戻す冷却水循環流路23を有する。
【0043】
この冷却水循環流路23は、エンジン3のウォータジャケットの冷却水出口(図示せず)とヒータコア8aの冷却水入口(図示せず)を接続する第1の冷却水流路23aと、ヒータコア8aの冷却水入口(図示せず)を接続する第1の冷却水出口(図示せず)とエンジン3のウォータジャケットの冷却水入口(図示せず)とを接続する第2の冷却水流路23bを有する。
【0044】
更に、第1の冷却水流路23aの途中には水用熱交換器24が介装されている。水用熱交換器24と冷媒用熱交換器20は、互いに熱交換可能に一体的に接続されて水−冷媒熱交換器25を構成している。なお、水用熱交換器24内には、第1の冷却水流路23aの途中が通るように配設されている。
【0045】
このように、水−冷媒熱交換器25を構成する水用熱交換器24と冷媒用熱交換器20が互いに熱交換可能に一体的に接続されて、水用熱交換器24と冷媒用熱交換器20との間で熱の授受を行うことができるようになっている。この熱の授受により、圧縮機11から冷媒用熱交換器20に供給される高温高圧の圧縮冷媒の熱で水用熱交換器24内のエンジン冷却水を加熱すると共に、この加熱によりガス状の高圧冷媒は冷媒用熱交換器20内で吸熱されて凝縮し液体冷媒となる。
【0046】
上述した空調ユニット5のブロワ6a、圧縮機11及び三方電磁切換弁13等の動作は、図3に示すコントロールユニット(制御部)26からの制御信号によって制御される。
【0047】
また、第1の冷却水流路23aの途中には、冷却水温度を検出して検出信号を水温信号(温度信号)として出力する図示しない信号通信システムの水温検出センサ27(図3参照)が設けられている。この水温検出センサ27からの検出信号はコントロールユニット26に入力されるようになっている。更に、図3に示すように、コントロールユニット26には、冷房スイッチ28からの操作信号(ON・OFF信号)及び暖房スイッチ29からの操作信号(ON・OFF信号)が入力されるようになっている。
【0048】
尚、水温検出センサ27はエンジン3のウォータジャケット、又は冷却水循環流路23の少なくとも一方に設け、信号通信システムを介して検出信号をコントロールユニット26に入力する。なお、暖房スイッチ29からの操作信号(ON・OFF信号)は、コントロールユニット26により自動的に、あるいは乗員の手動操作によって出力される。
【0049】
また、本実施形態の車両用空調装置4では、アキュムレータ18が、圧縮機11の上流側に配置されている。これは、暖房時に必要な冷媒量を確保するためである。即ち、低外気温時には、コンデンサ14やエバポレータ7aに冷媒が滞留する(長期放置や低外気温による冷媒移動のため)。そこで、いざ暖房運転をしようとしても、必要冷媒が冷媒ライン(コンデンサ14やエバポレータ7a)に滞留していると充分な暖房性能が発揮できない。よって、エンジン初期起動時には、冷媒回収モードにして冷媒回収を行い、暖房に必要な冷媒量をアキュムレータ18に確保するとよい。
【0050】
次に、上記した本実施形態における車両用空調装置4の運転動作について説明する。
【0051】
(通常の冷房運転)
エンジン3の始動後に冷房スイッチ28からのON信号がコントロールユニット26に入力されると、コントロールユニット26は通常の冷房運転の制御を開始する。
【0052】
この際、コントロールユニット26は三方電磁切換弁13を作動制御して、この三方電磁切換弁13により、圧縮機11の冷媒出口と第1バイパス冷媒配管19aとの連通を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口とコンデンサ14の冷媒入口を連通させる。
【0053】
この後、コントロールユニット26はヒータユニット8のドア駆動部8c1を作動制御して、ミックスドア8cによりヒータコア8aのエア通路の上流側を閉成すると共に、インテークユニット6bのドア駆動部6c1を作動制御して、インテークユニット6bの外気取入口6b1を閉成すると共に内気取入口6b2を開かせる。
【0054】
これに伴い、コントロールユニット26はブロワ6aを作動制御して、内気取入口6b2から車室1内の空気を吸い込ませる。この吸い込まれた空気は、風路5aを流れてエバポレータ7aの図示しないエア通路(エア風路)内を流れて通過した後、ヒータユニット8のバイパス風路8b、混合室8dを介して吹出口8eから車室1内に吹き出される。
【0055】
また、コントロールユニット26は圧縮機11を作動制御して、ガス状の冷媒(冷媒ガス)の圧縮を開始し、高温高圧の圧縮冷媒を第1の冷媒配管12aに吐出する。この圧縮冷媒は、三方電磁切換弁13を介してコンデンサ14に供給されて、コンデンサ14で冷却され、凝縮し液体冷媒(冷媒液)となる。この液体冷媒は、リキッドタンク15に貯留された後、第2の冷媒配管12bを介して膨張弁16に供給されて膨張(減圧)される。
【0056】
この減圧された液体冷媒は車室1内のエバポレータ7aに供給されて、ブロワ6aから送風され且つエバポレータ7aの図示しないエア通路を流れる車室1の空気の熱を吸収し、空気温度を低下させる。この温度が低下した空気は上述したように吹出口8eから車室1内に吹き出されて、車室1内を冷房する。
【0057】
この際、吸熱により膨張弁16からの液体冷媒(冷媒液)は蒸発させられてガス状の冷媒(冷媒ガス)となり、この冷媒(冷媒ガス)は、第3の冷媒配管12c、第1逆止弁17、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18を介して圧縮機11に戻されて循環し、圧縮機11で圧縮される。
【0058】
(外気温度が低い場合の暖房運転)
車両の図示しないイグニッションスイッチをONさせて、エンジン3を始動させると、エンジン3のウォータジャケットのエンジン冷却水の水温が水温検出センサ27で検出され、この水温検出センサ27から温度検出信号が出力され、この温度検出信号がコントロールユニット26に入力される。
【0059】
この状態で、暖房スイッチ29をONさせて、このON信号を車両用空調装置4の暖房運転の指令としてコントロールユニット26に入力すると、コントロールユニット26は,水温検出センサ27の温度検出信号からエンジン冷却水の温度が、車室1内の暖房に必要な温度(所定温度)に達しているか否かを判断する。
【0060】
そして、コントロールユニット26は、冬期等の外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に、エンジン冷却水の温度(水温)が車室1内の暖房に必要な温度(所定温度)に達していないと判断すると、三方電磁切換弁13を作動制御する。
【0061】
この際、コントロールユニット26は三方電磁切換弁13を作動制御して、圧縮機11の冷媒出口とコンデンサ14の冷媒入口を遮断させると共に、圧縮機11の冷媒出口と第1バイパス冷媒配管19aとを連通させる。この状態では、圧縮機11を作動させても、冷媒がコンデンサ14、リキッドタンク15、膨張弁16、エバポレータ7aを流れることはない。
【0062】
この後、コントロールユニット26はヒータユニット8のドア駆動部8c1を作動制御して、ミックスドア8cによりヒータコア8aのエア通路の上流側を開くと共に、インテークユニット6bのドア駆動部6c1を作動制御して、インテークユニット6bの外気取入口6b1を閉成すると共に内気取入口6b2を開かせる。
【0063】
この状態で、コントロールユニット26はブロワ6aを作動制御して、内気取入口6b2から車室1内の空気を吸い込ませる。この吸い込まれた空気は、風路5aを流れてエバポレータ7aの図示しないエア通路(エア風路)内を流れて通過した後、ヒータユニット8のエア通路、混合室8dを介して吹出口8eから車室1内に吹き出される。この状態で、圧縮機11を作動させても、エバポレータ7aには上述したように冷媒が供給されていないので、ブロワ6aで送風される空気がエバポレータ7aのエア通路内を通過しても、空気がエバポレータ7aで冷却されることはない。
【0064】
また、コントロールユニット26は圧縮機11を作動制御して、冷媒ガスを圧縮させ、高温高圧の圧縮冷媒を第1の冷媒配管12aに吐出させる。この圧縮冷媒は、三方電磁切換弁13、第1バイパス冷媒配管19a、冷媒用熱交換器20、第2バイパス冷媒配管19b、膨張器21、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18の順に流れて圧縮機11に戻され循環する。
【0065】
この際、圧縮冷媒は、冷媒用熱交換器20で放熱され凝縮されて液体冷媒(気液二相)になった後、膨張器21に供給される。この液体冷媒は、膨張器21で膨張・減圧されて冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18を通り、圧縮機11に戻される。
【0066】
また、エンジン3のウォータジャケットからのエンジン冷却水は、水用熱交換器24を途中に設けた第1の冷却水流路23aを介してヒータコア8a内に流入した後、ヒータコア8aから流出して第2の冷却水流路23bを介して、エンジン3のウォータジャケットに戻されて循環する。
【0067】
これに伴い、前記圧縮冷媒が冷媒用熱交換器20を流れる際に、冷媒用熱交換器20と水用熱交換器24との間で熱の授受を行い、水用熱交換器24内をヒータコア8a側に流れるエンジン冷却水を加熱する。
【0068】
そして、この加熱されたエンジン冷却水はヒータコア8aに供給されて、ヒータコア8aのエア通路を流れる空気を加熱して暖める。そして、この暖められた空気は、吹出口8eから車室1内に吹き出されて車室1内を暖めることになる。
【0069】
図4は、本実施形態の前記した外気温度が低い場合の暖房運転時における冷媒の相変化と圧力の関係(冷凍サイクル)の概略を示した図である。なお、横軸は比エンタルピー(h)、縦軸は圧力(P)である。
【0070】
図4において、A→Bは、圧縮機11による冷媒の状態変化、B→Cは、冷媒用熱交換器20による冷媒の状態変化、C→Aは、膨張器21による冷媒の状態変化を示している。
【0071】
このように、本実施形態の車両用空調装置4によれば、外気温度が低い場合におけるエンジン始動初期に車室内の暖房を行う際において、前記圧縮冷媒の熱を利用してエンジン3のウォータジャケットからヒータコア8a側に流れるエンジン冷却水の温度を短時間で高温度に上昇させ、加熱されたエンジン冷却水をヒータコア8aに循環供給することで、外気温度が低い場合でもエンジン始動後に直にヒータコア8aで暖められた空気で車室内の暖房を行うことが可能となる。
【0072】
また、本実施形態の車両用空調装置4によれば、前記圧縮冷媒の熱を利用してエンジン3のウォータジャケットからヒータコア8a側に流れるエンジン冷却水を加熱させるための装置構成を複雑にすることなくシンプルに構成することができるので、重量増加とコスト上昇を最小限に抑えることができる。
【0073】
〈実施形態2〉
図5は、本発明の実施形態2に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。なお、前記実施形態1の車両用空調装置と同一機能を有する部材には同一符号を付して説明する。
【0074】
図5に示すように、本発明の本実施形態の車両用空調装置4aは、第4の冷媒配管12dのアキュムレータ18の下流側で、圧縮機11の上流側に配設した第1内部熱交換器30aと、この第1内部熱交換器30aと互いに熱交換可能に一体的に接続された第2内部熱交換器30bを備えている。本実施形態では、一体的に接続された第1内部熱交換器30aと第2内部熱交換器30bとで第1の冷媒内部熱交換器31が構成されている。
【0075】
第2内部熱交換器30bの冷媒入口は、三方電磁切換弁13側にバイパス冷媒配管19を介して接続され、第2内部熱交換器30bの冷媒出口は、冷媒用熱交換器20の冷媒入口側に第1バイパス冷媒配管19aを介して接続されている。他の構成は実施形態1の車両用空調装置と同様であり、重複する説明は省略する。
【0076】
このように、本実施形態における第2の冷媒循環配管路9bは、冷媒の循環方向に沿って、圧縮機11、第1の冷媒配管12a、三方電磁切換弁13、バイパス冷媒配管19、第2の内部熱交換器30b、第1バイパス冷媒配管19a、冷媒用熱交換器20、第2バイパス冷媒配管19b、膨張器21、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18、及び第1内部熱交換器30aを有する。
【0077】
次に、上記した本実施形態における車両用空調装置4aの運転動作について説明する。
【0078】
(通常の冷房運転)
通常の冷房運転時の動作は実施形態1と同様であり、本実施形態では重複する説明は省略する。
【0079】
(外気温度が低い場合の暖房運転)
本実施形態においても、実施形態1と同様に、第2の冷媒循環配管路9bを流れる圧縮冷媒は、冷媒用熱交換器20で放熱され凝縮されて高温高圧の液体冷媒になった後、膨張器21に供給される。この液体冷媒は、膨張器21で膨張・減圧されて冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18、第1内部熱交換器30aを通して圧縮機11に戻される。
【0080】
また、エンジン3のウォータジャケットからのエンジン冷却水は、水用熱交換器24を途中に設けた第1の冷却水流路23aを介してヒータコア8a内に流入した後、ヒータコア8aから流出して第2の冷却水流路23bを介して、エンジン3のウォータジャケットに戻されて循環する。
【0081】
これに伴い、前記圧縮冷媒が冷媒用熱交換器20を流れる際に、冷媒用熱交換器20と水用熱交換器24との間で熱の授受を行い、水用熱交換器24内をヒータコア8a側に流れるエンジン冷却水を加熱する。そして、この加熱されたエンジン冷却水はヒータコア8aに供給されて、ヒータコア8aのエア通路を流れる空気を加熱して暖める。そして、この暖められた空気は、吹出口8eから車室1内に吹き出されて車室1内を暖めることになる。
【0082】
また、膨張器21で膨張・減圧されて得られた冷媒ガスは、アキュムレータ18を通過後に第1内部熱交換器30aに流入する。第1内部熱交換器30aに流入した冷媒ガスは、第2内部熱交換器30bを流れる圧縮機11で圧縮された高温高圧の圧縮冷媒(冷媒ガス)から熱を吸収することで、過熱度を維持することができる。
【0083】
図6は、本実施形態の前記した外気温度が低い場合の暖房運転時における冷媒の相変化と圧力の関係(冷凍サイクル)の概略を示した図である。なお、横軸は比エンタルピー(h)、縦軸は圧力(P)である。
【0084】
図6において、A→Bは、圧縮機11による冷媒の状態変化、B→Cは、第2内部熱交換器30b(a1で示した領域)と冷媒用熱交換器20(a2で示した領域)による冷媒の状態変化、C→Dは、膨張器21による冷媒の状態変化、D→Aは、第1内部熱交換器30a(a3で示した領域)による冷媒の状態変化を示している。
【0085】
このように、本実施形態の車両用空調装置4aにおいても、前記した実施形態1の車両用空調装置4と同様の効果を得ることができる。
【0086】
更に、本実施形態の車両用空調装置4aは、アキュムレータ18の下流側に配設した第1内部熱交換器30aと、この第1内部熱交換器30aと互いに熱交換可能に一体的に接続された第2内部熱交換器30bを備えている。これにより、第1内部熱交換器30aに流入した低温低圧の冷媒ガスは、第2内部熱交換器30bを流れる圧縮機11で圧縮された高温高圧の圧縮冷媒(冷媒ガス)から熱を吸収することで過熱度を維持できるので、外気温度が低くてエンジン起動時にエンジン冷却水の温度が低い場合等においても、第2の冷媒循環配管路9bを循環する冷媒の冷凍サイクルをより安定化させることができる。
【0087】
〈実施形態3〉
図7は、本発明の実施形態3に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。なお、前記実施形態1、2の車両用空調装置と同一機能を有する部材には同一符号を付して説明する。
【0088】
図7に示すように、本実施形態の車両用空調装置4bでは、膨張器21の下流側にアキュムレータを設けていなく、膨張器21で膨張・減圧されて得られた冷媒ガスがそのまま第1内部熱交換器30aに流入するようにした構成である。本実施形態においても、一体的に接続された第1内部熱交換器30aと第2内部熱交換器30bとで第1の冷媒内部熱交換器31が構成されている。他の構成は実施形態1の車両用空調装置と同様であり、重複する説明は省略する。
【0089】
実施形態2で述べたように、外気温度が低い場合の暖房運転時において、第1内部熱交換器30aに流入した冷媒ガスは、第2内部熱交換器30bを流れる圧縮機11で圧縮された高温高圧の圧縮冷媒(冷媒ガス)から熱を吸収することで、過熱度を維持することができる。よって、アキュムレータを設けていなくても、図8に示すように、安定した冷凍サイクルを構成することができる。
【0090】
なお、図8において、A→Bは、圧縮機11による冷媒の状態変化、B→Cは、第2内部熱交換器30b(a1で示した領域)と冷媒用熱交換器20(a2で示した領域)による冷媒の状態変化、C→Dは、膨張器21による冷媒の状態変化、D→Aは、第1内部熱交換器30a(a3で示した領域)による冷媒の状態変化を示している。このように、アキュムレータを設けていない本実施形態においも、図6に示した実施形態2の冷凍サイクルと略同じような安定した冷凍サイクルを構成することができる。
【0091】
〈実施形態4〉
図9は、本発明の実施形態4に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。なお、前記実施形態1、2の車両用空調装置と同一機能を有する部材には同一符号を付して説明する。
【0092】
図9に示すように、本発明の本実施形態の車両用空調装置4cは、第4の冷媒配管12dのアキュムレータ18の下流側で、圧縮機11の上流側に配設した第1内部熱交換器30aと、この第1内部熱交換器30aと互いに熱交換可能に一体的に接続された第2内部熱交換器30bを備えている。本実施形態では、一体的に接続された第1内部熱交換器30aと第2内部熱交換器30bとで第2の冷媒内部熱交換器32が構成されている。
【0093】
第2内部熱交換器30bの冷媒入口は、冷媒用熱交換器20の冷媒出口側に第2バイパス冷媒配管19bを介して接続され、第2内部熱交換器30bの冷媒出口は、膨張器21の冷媒入口側にバイパス冷媒配管19b1を介して接続されている。他の構成は実施形態2の車両用空調装置と同様であり、重複する説明は省略する。
【0094】
このように、本実施形態における第2の冷媒循環配管路9bは、冷媒の循環方向に沿って、圧縮機11、第1の冷媒配管12a、三方電磁切換弁13、第1バイパス冷媒配管19a、冷媒用熱交換器20、第2バイパス冷媒配管19b、第2内部熱交換器30b、バイパス冷媒配管19b1、膨張器21、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18、及び第1内部熱交換器30aを有する。
【0095】
次に、上記した本実施形態における車両用空調装置4cの運転動作について説明する。
【0096】
(通常の冷房運転)
通常の冷房運転時の動作は実施形態1と同様であり、本実施形態では重複する説明は省略する。
【0097】
(外気温度が低い場合の暖房運転)
本実施形態では、第2の冷媒循環配管路9bの第1バイパス冷媒配管19aを流れる圧縮冷媒は、冷媒用熱交換器20で放熱され凝縮されて液体冷媒になった後、第2バイパス冷媒配管19b、第2内部熱交換器30b、バイパス冷媒配管19b1を通して膨張器21に供給される。この液体冷媒は、膨張器21で膨張・減圧されて冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、第3バイパス冷媒配管19c、第2逆止弁22、第4の冷媒配管12d、アキュムレータ18、第1内部熱交換器30aを通して圧縮機11に戻される。
【0098】
また、エンジン3のウォータジャケットからのエンジン冷却水は、水用熱交換器24を途中に設けた第1の冷却水流路23aを介してヒータコア8a内に流入した後、ヒータコア8aから流出して第2の冷却水流路23bを介して、エンジン3のウォータジャケットに戻されて循環する。
【0099】
これに伴い、前記圧縮冷媒が冷媒用熱交換器20を流れる際に、冷媒用熱交換器20と水用熱交換器24との間で熱の授受を行い、水用熱交換器24内をヒータコア8a側に流れるエンジン冷却水を加熱する。そして、この加熱されたエンジン冷却水はヒータコア8aに供給されて、ヒータコア8aのエア通路を流れる空気を加熱して暖める。そして、この暖められた空気は、吹出口8eから車室1内に吹き出されて車室1内を暖めることになる。
【0100】
また、膨張器21で膨張・減圧されて得られた低温低圧の冷媒ガスは、アキュムレータ18を通過後に第1内部熱交換器30aに流入する。第1内部熱交換器30aに流入した冷媒ガスは、第2内部熱交換器30bを流れる冷媒用熱交換器20で放熱され凝縮された高温高圧の液体冷媒から熱を吸収することで、過熱度を維持することができる。
【0101】
図10は、本実施形態の前記した外気温度が低い場合の暖房運転時における冷媒の相変化と圧力の関係(冷凍サイクル)の概略を示した図である。なお、横軸は比エンタルピー(h)、縦軸は圧力(P)である。
【0102】
図10において、A→Bは、圧縮機11による冷媒の状態変化、B→Cは、冷媒用熱交換器20(a2で示した領域)による冷媒の状態変化と第2内部熱交換器30b(a1で示した領域)による冷媒の状態変化、C→Dは、膨張器21による冷媒の状態変化、D→Aは、第2内部熱交換器30b(a1で示した領域)による冷媒の状態変化を示している。
【0103】
このように、本実施形態の車両用空調装置4cにおいても、前記した実施形態1の車両用空調装置4と同様の効果を得ることができる。
【0104】
更に、本実施形態の車両用空調装置4cは、アキュムレータ18の下流側に配設した第1内部熱交換器30aと、この第1内部熱交換器30aと互いに熱交換可能に一体的に接続された第2内部熱交換器30bを備えている。これにより、第1内部熱交換器30aに流入した冷媒ガスは、第2内部熱交換器30bを流れる冷媒用熱交換器20で放熱され凝縮された高温高圧の液体冷媒から熱を吸収することで過熱度を維持できるので、外気温度が低くてエンジン起動時にエンジン冷却水の温度が低い場合等においても、第2の冷媒循環配管路9bを循環する冷媒の冷凍サイクルをより安定化させることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 車室
3 エンジン
4、4a,4b,4c 車両用空調装置
5 空調ユニット
7a エバポレータ
8a ヒータコア
9 冷媒循環配管路
9a 第1の冷媒循環配管路
9b 第2の冷媒循環配管路
10 暖房用冷却水循環配管路
11 圧縮機
13 三方電磁切換弁(切換え手段)
14 コンデンサ
16 膨張弁(第1の冷媒減圧手段)
18 アキュムレータ
20 冷媒用熱交換器
21 膨張器(第2の冷媒減圧手段)
23 冷却水循環流路
24 水用熱交換器
25 水−冷媒熱交換器
30a 第1内部熱交換器
30b 第2内部熱交換器
31 第1の冷媒内部熱交換器(冷媒内部熱交換器)
32 第2の冷媒内部熱交換器(冷媒内部熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を、圧縮機、車室外の冷媒凝縮用のコンデンサ、第1の冷媒減圧手段、車室内の空気冷却及び液体冷媒蒸発用のエバポレータを介して前記圧縮機に戻して循環させる冷媒循環配管路と、
エンジン冷却水を車室内のヒータコアとの間で循環させる暖房用冷却水循環回路と、
前記冷媒の循環方向に沿って前記冷媒循環配管路の前記圧縮機と前記コンデンサとの間の流路に設けた、前記冷媒の流路方向を切り換える切換え手段と、
前記流路切換え手段から前記コンデンサ、前記第1の冷媒減圧手段、前記エバポレータを迂回するようにして、前記圧縮機を結ぶ流路に接続されたバイパス流路と、
前記切換え手段による流路方向の切り換えにより、前記バイパス流路を流れる前記圧縮機から吐出されたガス状の冷媒と、前記暖房用冷却水循環回路の前記ヒータコア側に流入する前記エンジン冷却水との間で熱交換する水−冷媒熱交換器と、
前記冷媒の循環方向に沿って前記バイパス流路の前記水−冷媒熱交換器と前記圧縮機との間の流路に設けた、前記水−冷媒熱交換器での熱交換により凝縮された気液二相冷媒を減圧してガス状の冷媒に相変化させる第2の冷媒減圧手段とを備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記切換え手段による流路方向の切り換えにより、前記圧縮機から吐出されて前記バイパス流路の前記水−冷媒熱交換器の上流側を流れる冷媒と前記第2の冷媒減圧手段により減圧されて相変化された冷媒との間で熱交換する冷媒内部熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記切換え手段による流路方向の切り換えにより、前記圧縮機から吐出されたガス状の冷媒を前記バイパス流路の前記水−冷媒熱交換器での熱交換により凝縮し、該水−冷媒熱交換器の下流側から流れる冷媒と前記第2の冷媒減圧手段により減圧されて相変化された冷媒との間で熱交換する冷媒内部熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記冷媒循環配管路の前記第2の冷媒減圧手段と前記圧縮機との間にアキュムレータを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−225174(P2011−225174A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98883(P2010−98883)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】