説明

車両用空調装置

【課題】操作性を向上させることのできる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】この車両用空調装置は、空調ダクト内に配設された冷却器及びヒータにより温調された空気をそれらの下流に設けられた複数の吹き出し口から送出して車室内の空調を行う。また、複数の吹き出し口をそれぞれ開閉させる複数のダンパを備え、ノブ76の操作に基づいてダンパの開閉状態を切り替えるとともに、エアコンスイッチ74の操作に基づいて冷却器を作動/停止させる。ここでは、ノブ76を環状に形成するとともに、ノブ76の内側の領域にエアコンスイッチ74を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に操作部の操作を通じて空調用空気の吹き出し口を切り替えることが可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調ダクト内に配設された冷却器及びヒータにより温調された空調用空気をそれらの下流に設けられた複数の吹き出し口から送出して車室内の空調を行う車両用空調装置が周知である。そして従来、このような車両用空調装置としては、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。この特許文献1に記載の空調装置には、空調用空気の吹き出し口を切り替えるための吹き出し口切り替えスイッチや、冷却器を作動/停止させるためのエアコンスイッチなど、当該空調装置を操作するための各種スイッチが設けられている。ちなみに、空調用空気の吹き出し口としては、例えばフロントガラスの内面に向けて空調用空気を送出するデフロスタ吹き出し口や、搭乗者の頭部に向けて空調用空気を送出するフェイス吹き出し口などがある。そして、ユーザによって例えば吹き出し口切り替えスイッチが操作されると、その操作態様に基づいて各吹き出し口が選択的に開閉されて、空調用空気の吹き出し口が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−120553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした車両用空調装置にあっては通常、上記吹き出し口切り替えスイッチとエアコンスイッチとが互いに離間した位置に配設されている。したがって、例えばユーザが空調用空気の吹き出し口の変更に併せて冷却器を作動させたいときには、吹き出し口切り替えスイッチを指で一旦操作した後に、エアコンスイッチまで指を移動させて同スイッチを操作しなければならないため、このことが操作性の悪化を招く一つの要因となっている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作性を向上させることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、空調ダクト内に配設される冷却器及びヒータを通じて温調される空調用空気をそれらの下流に設けられる複数の吹き出し口から送出して車室内の空調を行うにあたり、前記複数の吹き出し口をそれぞれ開閉させる複数のダンパを備え、車両に設けられる操作部の操作に基づいて前記複数のダンパの開閉状態を選択的に切り替えるとともに、同じく車両に設けられるエアコンスイッチの操作に基づいて前記冷却器を作動/停止させる車両用空調装置において、前記操作部が、円環状に形成されるとともに、前記エアコンスイッチが、前記操作部の内側の領域に配設されていることを要旨としている。
【0007】
同構成によれば、ユーザは、操作部を操作しながらエアコンスイッチを操作することができるため、吹き出し口の変更に併せて冷却器を作動させることができる。このため、操作性が向上するようになる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空調装置において、前記操作部は、前記複数のダンパの開閉状態を指定する第1の操作位置とは別の第2の操作位置に操作可能に設けられ、同操作部が前記第2の操作位置に操作されたとき、前記冷却器を作動させることを要旨としている。
【0009】
同構成によれば、ユーザは、操作部を第1の操作位置から第2の操作位置に操作するだけで、吹き出し口を切り替える操作に併せて冷却器を作動させることができるため、操作性が更に向上するようになる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用空調装置において、前記吹き出し口として、車両のフロントガラスの内面に向けて前記空調用空気を吹き出すためのデフロスタ吹き出し口が含まれるとともに、前記ダンパとして、前記デフロスタ吹き出し口を開閉させるデフダンパが含まれて且つ、前記第1の操作位置として、前記デフダンパのみを開状態とするデフポジションが含まれ、前記第2の操作位置が、前記デフポジションに隣接するかたちで設けられていることを要旨としている。
【0011】
こうした車両用空調装置にあっては、例えばフロントガラスに発生した曇りを除去するとき、冷却器によって除湿された空調用空気をデフロスタ吹き出し口から送出することが有効である。この点、上記構成によれば、ユーザは、操作部をデフポジションに操作してデフロスタ吹き出し口のみを開状態としたとき、同操作部をデフポジションに隣接する第2の操作位置に操作すれば、冷却器を作動させることができる。したがって、空調用空気の吹き出し口をデフロスタ吹き出し口に切り替える操作に併せて冷却器を作動させることができるため、特にユーザがフロントガラスに発生した曇りを除去しようとするときに操作性が向上するようになる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の車両用空調装置において、前記吹き出し口として、車両の搭乗者の頭部に向けて前記空調用空気を吹き出すためのフェイス吹き出し口が含まれるとともに、前記ダンパとして、前記フェイス吹き出し口を開閉させるフェイスダンパが含まれて且つ、前記第1の操作位置として、前記フェイスダンパのみを開状態とするフェイスポジションが含まれ、前記第2の操作位置が、前記フェイスポジションに隣接するかたちで設けられていることを要旨としている。
【0013】
同構成によれば、ユーザは、操作部をフェイス吹き出し口に操作してフェイス吹き出し口のみを開状態としたとき、同操作部をフェイス外ポジションに隣接する第2の操作位置まで操作すれば、冷却器を作動させることができる。したがって、空調用空気の吹き出し口をフェイス吹き出し口に切り替える操作に併せて冷却器を作動させることができるため、特にユーザが車室内を短時間で冷却しようとするときに操作性が向上するようになる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の車両用空調装置において、前記エアコンスイッチには、前記第2の操作位置を示す表示部が設けられていることを要旨としている。
【0015】
同構成によるように、第2の操作位置を示す表示部をエアコンスイッチに設けることとすれば、ユーザは操作部の第2の操作位置への操作により冷却器が作動することを容易に認知することができるため、操作性が向上するようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる車両用空調装置によれば操作性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる車両用空調装置の一実施形態についてその概略構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の車両用空調装置についてその電気的な構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の車両用空調装置についてその吹き出し口切り替え用のノブの正面構造を示す正面図。
【図4】同実施形態の車両用空調装置についてその吹き出し口切り替えスイッチの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる車両用空調装置の一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。はじめに、図1及び図2を参照して、本実施形態にかかる車両用空調装置の概略構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、この空調装置では、車室内あるいは車室外の空気が吸入口11を介して空調ダクト10に導入されるとともに、この空気の風量及び温度が空調ダクト10内で調整される。そしてこの空調用空気が空調ダクト10の下流に設けられた吹き出し口12〜14を介して車室内に供給されることで、車室内の空調が行われる。
【0020】
ここで、空調ダクト10において、吸入口11の下流には、ブロアモータ90によって回転駆動されるブロアファン40が設けられている。そしてこの空調装置は、ブロアモータ90の駆動を通じてブロアファン40の回転速度を変化させることで、空調用空気の風量を調整する。
【0021】
また、空調ダクト10において、ブロアファン40の下流には、通過する空気を冷却、除湿するエバポレータ51が設けられている。このエバポレータ51には、冷媒配管を介してコンプレッサ52、コンデンサ53、及び膨張弁54が環状に連結されており、これらの要素によって冷却器50が構成されている。なお、冷却器50を構成する各要素51〜54はそれぞれ周知の構成をなしており、その機能も周知であることから、ここでの詳細な説明を割愛する。このうち、コンプレッサ52には、電磁クラッチ52aを介して車載エンジン55が駆動連結されている。すなわち、コンプレッサ52は、電磁クラッチ52aへの通電により車載エンジン55に接続されると、車載エンジン55の動力が伝達されて作動する。一方、コンプレッサ52は、電磁クラッチ52aへの通電が遮断されると、車載エンジン55との接続が解除されて停止する。
【0022】
一方、空調ダクト10において、エバポレータ51の下流には、通過する空気を加熱するヒータ60が設けられている。このヒータ60は、車載エンジン55から適宜の配管を介して供給されるエンジン冷却水の熱により加熱されるものである。またこのヒータ60の上流側には、エアミックスダンパ用モータ91によって駆動されるエアミックスダンパ21が設けられており、ヒータ60を通過する空調用空気の流量がこのダンパ21の開閉状態に応じて変化する。そしてこの空調装置では、ヒータ60を通過する空調用空気の風量をエアミックスダンパ21によって変化させることで、空調用空気の温度を調整する。
【0023】
また一方、空調ダクト10において、ヒータ60の下流には、以下の(a1)〜(a3)に示す吹き出し口がそれぞれ設けられている。
(a1)車両のフロントガラスの内面部分に向けて空調用空気を吹き出すためのデフロスタ吹き出し口12。
【0024】
(a2)車両の運転者及び助手席の搭乗者の足元部分に向けて空調用空気を吹き出すためのフット吹き出し口13。
(a3)車両の運転者及び助手席の搭乗者の頭部や胸部に向けて空調用空気を吹き出すためのフェイス吹き出し口14。
【0025】
また、これらの吹き出し口12〜14には、吹き出し口切り替えダンパ用モータ92によって駆動されるデフダンパ22、フットダンパ23、及びフェイスダンパ24がそれぞれ設けられている。そしてこの空調装置では、これらのダンパ22〜24によって各吹き出し口12〜14を選択的に開閉させることで、空調用空気の吹き出し口を切り替える。
【0026】
一方、図2に示すように、車両のセンターコンソールには、当該空調装置を操作するためのコントロールパネル70が設けられている。このコントロールパネル70は、空調用空気の風量を設定するための風量調整用スイッチ71、空調用空気の温度を設定するための温度調整用スイッチ72、空調用空気の吹き出し口を切り替えるための吹き出し口切り替えスイッチ73、及び上記冷却器50の作動/停止を切り替えるためのエアコンスイッチ74から構成されている。そして、これら各スイッチ71〜74の出力信号は電子制御装置80に取り込まれている。この電子制御装置80は、演算処理装置(CPU)、プログラムメモリ(ROM)やデータメモリ(RAM)などを有するマイクロコンピュータを備えて当該空調装置の駆動を統括制御する部分である。すなわち、電子制御装置80は、上記各スイッチ71〜74の出力に基づいて以下の(b1)〜(b4)に示す制御を実行する。
【0027】
(b1)風量調整用スイッチ71の出力に基づいて上記ブロアモータ90の駆動を制御する。これにより空調用空気の風量が調整される。
(b2)温度調整用スイッチ72の出力に基づいて上記エアミックスダンパ用モータ91の駆動を制御する。これにより空調用空気の温度が調整される。
【0028】
(b3)吹き出し口切り替えスイッチ73の出力に基づいて上記吹き出し口切り替えダンパ用モータ92の駆動を制御する。これにより空調用空気の吹き出し口が切り替えられる。
【0029】
(b4)エアコンスイッチ74の出力に基づいて同スイッチ74のオン/オフ操作を検出するとともに、同スイッチ74がオン操作された旨を検出したとき、上記電磁クラッチ52aへの通電を行う。これによりコンプレッサ52が駆動する。またこのとき、エアコンスイッチ74に設けられたインジケータ75を点灯させる。一方、エアコンスイッチ74がオフ操作された旨を検出したとき、上記電磁クラッチ52aへの通電を遮断する。これにより、コンプレッサ52の駆動が停止する。またこのとき、インジケータ75を消灯させる。
【0030】
次に、図3を参照して、吹き出し口切り替えスイッチ73の構造について詳述する。
図3に示すように、この吹き出し口切り替えスイッチ73には、円環状に形成されて図中の矢印a1,a2で示す方向に回動するノブ76が設けられている。なお本実施形態では、このノブ76が操作部となる。このノブ76には、マーク76aが印字されており、このマーク76aがノブ76の操作位置を示すものとなっている。また、ノブ76の内側の領域には、空調用空気の吹き出し口を模式的に示すマークM1〜M5を有する操作位置表示部材77と、上記エアコンスイッチ74とがノブ76の内径に隣接するかたちでそれぞれ配設されている。そして、図中に実線及び破線で示すように、マークM1〜M5に対応して、ノブ76の操作位置P1〜P5が以下の(c1)〜(c5)に示すように設定されている。
【0031】
(c1)マーク76aがマークM1に対向するフェイスポジションP1。この位置にノブ76が操作された場合には、上記フェイスダンパ24が開状態となって且つ、デフダンパ22及びフットダンパ23が閉状態となって、フェイス吹き出し口14からのみ空調用空気が送出される。
【0032】
(c2)マーク76aがマークM2に対向するフェイス・フットポジションP2。この位置にノブ76が操作された場合には、上記フットダンパ23及びフェイスダンパ24が開状態となって且つ、デフダンパ22が閉状態となって、フット吹き出し口13及びフェイス吹き出し口14から空調用空気がそれぞれ送出される。
【0033】
(c3)マーク76aがマークM3に対向するフットポジションP3。この位置にノブ76が操作された場合には、フットダンパ23のみが開状態となって且つ、デフダンパ22及びフェイスダンパ24が閉状態となって、フット吹き出し口13からのみ空調用空気が送出される。
【0034】
(c4)マーク76aがマークM4に対向するフット・デフポジションP4。この位置にノブ76が操作された場合には、デフダンパ22及びフットダンパ23が開状態となって且つ、フェイスダンパ24が閉状態となって、デフロスタ吹き出し口12及びフット吹き出し口13から空調用空気がそれぞれ送出される。
【0035】
(c5)マーク76aがマークM5に対向するデフポジションP5。この位置にノブ76が操作された場合には、デフダンパ22のみが開状態となって且つ、フットダンパ23及びフェイスダンパ24が閉状態となって、デフロスタ吹き出し口12からのみ空調用空気が送出される。
【0036】
そして、本実施形態では、前述のように、ノブ76の内部の領域にエアコンスイッチ74が配設されているため、ユーザはノブ76を操作しながらエアコンスイッチ74を操作することができる。したがって、ユーザは吹き出し口の変更に併せて冷却器50を作動させることができるため、操作性が向上するようになる。
【0037】
一方、エアコンスイッチ74は、ユーザによってプッシュ操作される都度、オン状態/オフ状態が切り替わるスイッチである。このエアコンスイッチ74には、上記インジケータ75が設けられるとともに、上記マークM1に隣接するかたちでマークM6が、また、マークM5に隣接するかたちでマークM7がそれぞれ印字されている。そして、図中に破線で示すように、これらのマークM6,M7に対応するかたちでノブ76の操作位置P6,P7がそれぞれ設けられている。具体的には、マーク76aがマークM6に対向するフェイス外ポジションP6と、マーク76aがマークM7に対向するデフ外ポジションP7とが設けられている。すなわち、本実施形態では、これらマークM6,M7がノブ76の操作位置を示す表示部となっている。なお、ノブ76は、フェイスポジションP1に位置している状態で矢印a1で示す方向に外力が印加されると、フェイス外ポジションP6まで回動するが、同外力が除かれた場合にはフェイスポジションP1まで自動復帰する。さらに、ノブ76は、デフポジションP5に位置している状態から矢印a2で示す方向に外力が印加されると、デフ外ポジションP7まで回動するが、同外力が除かれた場合にはデフポジションP5まで自動復帰する。すなわち、ノブ76は、フェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作されたときにモーメンタリ動作を行う。
【0038】
次に、図4を参照して、この吹き出し口切り替えスイッチ73からなる操作系の電気的な構成について説明する。
図4に示すように、吹き出し口切り替えスイッチ73は、いわゆるロータリスイッチからなるものであって、グランド電位におかれるとともにノブ76の動きに連動して回動する可動接点Cmと、7つの固定接点C1〜C7とを有している。このうち、可動接点Cmは、上記ノブ76が各操作位置P1〜P7に操作されたとき、図中の軸線m1〜m7の位置に回動する。すなわち、吹き出し口切り替えスイッチ73では、上記ノブ76が各操作位置P1〜P7に操作されたときに可動接点Cmが固定接点C1〜C7にそれぞれ接続される。
【0039】
そして、上記電子制御装置80には、適宜の配線を介して固定接点C1〜C7に接続される端子T1〜T7がそれぞれ設けられている。この電子制御装置80は、端子T1〜T7の電位を監視しつつ、それらのうちのいずれの電位が論理ロウレベルに対応する電位(グランド電位)であるか否かを検出することで、ノブ76の操作位置を判断する。具体的には、例えば端子T6の電位が論理ロウレベルである旨を検出した場合には、ノブ76の操作位置はフェイス外ポジションP6であると判断する。そして、電子制御装置80は、ノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作された旨を検出したとき、上記電磁クラッチ52aの通電を行ってコンプレッサ52を作動させるとともに、上記インジケータ75を点灯させてコンプレッサ52が作動した旨をユーザに報知する。
【0040】
なお、本実施形態にかかる空調装置では、ユーザがノブ76をフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作して冷却器50を作動させた場合、ユーザは、エアコンスイッチ74をプッシュ操作すれば、冷却器50を停止させることができる。
【0041】
車両用空調装置としてのこうした構成によれば、ユーザは、ノブ76をフェイスポジションP1に操作したとき、ノブ76を更にフェイス外ポジションP6まで操作すれば、空調用空気の吹き出し口をフェイス吹き出し口14に切り替えることができるとともに、冷却器50を作動させることができる。また、ノブ76をデフポジションP5まで操作したとき、同ノブ76を更にデフ外ポジションP7まで操作すれば、空調用空気の吹き出し口をデフロスタ吹き出し口12に切り替えることができるとともに、冷却器50を作動させることができる。したがって、ユーザはノブ76を操作するだけで吹き出し口の切り替えに併せて冷却器50を作動させることができるため、操作性が向上するようになる。
【0042】
ところで、こうした車両用空調装置にあっては、車室内を短時間で冷却する場合、冷却器50によって冷却された空調用空気をフェイス吹き出し口14から送出することが有効である。この点、本実施形態にかかる車両用空調装置によれば、ユーザは空調用空気の吹き出し口をフェイス吹き出し口14に切り替える操作に併せて冷却器50を作動させることができるため、特にユーザが車室内を短時間で冷却しようとするときに操作性が向上するようになる。
【0043】
また、こうした車両用空調装置にあっては、車両のフロントガラスに発生した曇りを除去する場合、冷却器50によって除湿された空調用空気をデフロスタ吹き出し口12から送出することが有効である。この点、本実施形態にかかる車両用空調装置によれば、ユーザは空調用空気の吹き出し口をデフロスタ吹き出し口12に切り替える操作に併せて冷却器50を作動させることができるため、特にユーザが車両のフロントガラスに発生した曇りを除去しようとするときに操作性が向上するようになる。
【0044】
一方、ユーザの中には、フロントデフの機能である曇り取りを行う際に冷却器50を作動させることが有効であることを知らない者もいる。これは、車両のエアコン機能やその操作が家庭用のエアコン装置などと違った機能、操作であるため、ユーザの操作知識が乏しいことに起因している。
【0045】
この点、本実施形態にかかる車両用空調装置によれば、冷却器50を作動させることのできる操作位置がデフポジションP5に隣接するかたちで設けられているため、ノブ76の操作を通じて、フロントガラスの曇り取りに対して冷却器50による除湿が有効であることをユーザに学習してもらえるようになる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用空調装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ノブ76を円環状に形成した上で、同ノブ76の内側の領域にエアコンスイッチ74を配設することとした。これにより、ユーザは吹き出し口の変更に併せて冷却器50を作動させることができるため、操作性が向上するようになる。
【0047】
(2)ノブ76の操作位置として、フェイスポジションP1に隣接するかたちでフェイス外ポジションP6を設けることとした。そして、ノブ76がフェイス外ポジションP6に操作されたとき、冷却器50を作動させることとした。これにより、ユーザは、ノブ76を操作するだけで、空調用空気の吹き出し口をフェイス吹き出し口14に切り替える操作に併せて冷却器50を作動させることができるため、特にユーザが車室内を短時間で冷却しようとするときに操作性が向上するようになる。
【0048】
(3)ノブ76の操作位置として、デフポジションP5に隣接するかたちでデフ外ポジションP7を設けることとした。そして、ノブ76がデフ外ポジションP7に操作されたとき、冷却器50を作動させることとした。これにより、ユーザは、ノブ76を操作するだけで、空調用空気の吹き出し口をデフロスタ吹き出し口12に切り替える操作に併せて冷却器50を作動させることができるため、特にユーザが車両のフロントガラスに発生した曇りを除去しようとするときに操作性が向上するようになる。また、フロントガラスの曇り取りに冷却器50による除湿が有効であることをユーザに学習してもらえるようにもなる。
【0049】
(4)ノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作されたときにインジケータ75を点灯させることとした。これにより、ユーザは、インジケータ75の点灯を通じて冷却器50が作動したか否かを確認することができるため、利便性が向上するようになる。
【0050】
(5)エアコンスイッチ74にはノブ76の操作位置を示すマークM6,M7を設けることとした。これにより、ユーザはノブ76のマークM6,M7への操作により冷却器50が作動することを容易に認知することができるため、操作性が向上するようになる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、ノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作されてコンプレッサ52を作動させたとき、エアコンスイッチ74が操作されることを条件にコンプレッサ52を停止させることとした。これに代えて、例えばノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作される都度、コンプレッサ52の作動/停止を切り替えてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、ノブ76が、フェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作された際にモーメンタリ動作するものであったが、これに代えて、フェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作された際にステーショナリ動作(オルタネイト動作)するものであってもよい。すなわち、先の図3に示されるように、ノブ76は、フェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作された際にその位置が保持される。また、ノブ76は、フェイス外ポジションP6に位置している状態で矢印a2で示す方向に外力が印加された場合にはフェイスポジションP1に復帰するとともに、デフ外ポジションP7に位置している状態で矢印a1で示す方向に外力が印加された場合にはデフポジションP5に復帰する。一方、先の図4に示されるように、電子制御装置80は、吹き出し口切り替えスイッチ73の出力に基づいてノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作された旨を検出したとき、上記電磁クラッチ52aへの通電を行ってコンプレッサ52を作動させる。そして、ノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作されている旨が検出されている期間、コンプレッサ52を作動させた状態を維持する。その後、吹き出し口切り替えスイッチ73の出力に基づいてノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7以外の操作位置P1〜P5に操作された旨を検出したとき、上記電磁クラッチ52aへの通電を遮断してコンプレッサ52を停止させる。このような構成によれば、ノブ76をフェイス外ポジションP6からフェイスポジションP1に戻す操作に併せて、あるいはノブ76をデフ外ポジションP7からデフポジションP5に戻す操作に併せてコンプレッサ52が停止する。したがって、ユーザはエアコンスイッチ74を操作することなくコンプレッサ52を停止させることができるため、操作性が向上するようになる。また、上記実施形態の効果に準じた効果も得られるようになる。
【0053】
・ノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作されて冷却器50を作動させたとき、その時点から所定時間が経過することを条件に冷却器50を停止させてもよい。具体的にはまず、電子制御装置80にタイマを設ける。そして、電子制御装置80は、ノブ76がフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作された旨を検知してコンプレッサ52を作動させたとき、その時点からの経過時間をタイマを通じて計測する。そして、計測される経過時間が所定時間に達したとき、コンプレッサ52を停止させればよい。このような構成によれば、ユーザがノブ76をフェイス外ポジションP6あるいはデフ外ポジションP7に操作して冷却器を作動させたときに、その状態が継続することがないため、車室内が冷えすぎるような状況を回避することができる。このため、利便性が向上するようになる。
【0054】
・上記実施形態では、冷却器50を作動させるための操作位置を、フェイスポジションP1及びデフポジションP5に隣接するかたちでそれぞれ設けることとしたが、これに代えて、例えばフェイスポジションP1及びデフポジションP5のいずれか一方の近傍にのみ設けてもよい。また、ノブ76の操作範囲の両端に、例えばフェイス・フットポジションP2やフット・デフポジションP4が配置されている場合には、それらに隣接するかたちで冷却器50を作動させるための操作位置を設けてもよい。
【0055】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項2〜4のいずれか一項に記載の車両用空調装置において、前記冷却器の作動に伴って点灯するインジケータと、前記操作部が前記第2の操作位置に操作されたとき、前記インジケータを点灯させる制御手段とを更に備えることを特徴とする車両用空調装置。同構成によれば、ユーザによって操作部が第2の操作位置に操作された際にインジケータが点灯するため、ユーザはインジケータの点灯を通じて冷却器が作動したか否かを確認することができる。このため、利便性が向上するようになる。
【0056】
(ロ)請求項1〜4、及び付記イのいずれか一項に記載の車両用空調装置において、前記操作部が前記第2の操作位置に操作されたとき、その時点から所定時間が経過することを条件に前記冷却器を自動的に停止させる自動停止手段を更に備えることを特徴とする車両用空調装置。同構成によれば、ユーザが操作部を第2の操作位置に操作して冷却器を作動させたとき、その時点から所定時間が経過した時点で冷却器が停止するため、車室内が冷えすぎるような状況を未然に回避することができる。このため、利便性が向上するようになる。
【符号の説明】
【0057】
M1〜M7…マーク、P1…フェイスポジション、P2…フェイス・フットポジション、P3…フットポジション、P4…フット・デフポジション、P5…デフポジション、P6…フェイス外ポジション、P7…デフ外ポジション、Cm…可動接点、C1〜C7…固定接点、10…空調ダクト、11…吸入口、12…デフロスタ吹き出し口、13…フット吹き出し口、14…フェイス吹き出し口、21…エアミックスダンパ、22…デフダンパ、23…フットダンパ、24…フェイスダンパ、40…ブロアファン、50…冷却器、51…エバポレータ、52…コンプレッサ、52a…電磁クラッチ、53…コンデンサ、54…膨張弁、55…車載エンジン、60…ヒータ、70…コントロールパネル、71…風量調整用スイッチ、72…温度調整用スイッチ、73…吹き出し口切り替えスイッチ、74…エアコンスイッチ、75…インジケータ、76…ノブ、76a…マーク、77…操作位置表示部材、80…電子制御装置、90…ブロアモータ、91…エアミックスダンパ用モータ、92…吹き出し口切り替えダンパ用モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ダクト内に配設される冷却器及びヒータを通じて温調される空調用空気をそれらの下流に設けられる複数の吹き出し口から送出して車室内の空調を行うにあたり、前記複数の吹き出し口をそれぞれ開閉させる複数のダンパを備え、車両に設けられる操作部の操作に基づいて前記複数のダンパの開閉状態を選択的に切り替えるとともに、同じく車両に設けられるエアコンスイッチの操作に基づいて前記冷却器を作動/停止させる車両用空調装置において、
前記操作部が、円環状に形成されるとともに、前記エアコンスイッチが、前記操作部の内側の領域に配設されている
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記複数のダンパの開閉状態を指定する第1の操作位置とは別の第2の操作位置に操作可能に設けられ、同操作部が前記第2の操作位置に操作されたとき、前記冷却器を作動させる
請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記吹き出し口として、車両のフロントガラスの内面に向けて前記空調用空気を吹き出すためのデフロスタ吹き出し口が含まれるとともに、前記ダンパとして、前記デフロスタ吹き出し口を開閉させるデフダンパが含まれて且つ、前記第1の操作位置として、前記デフダンパのみを開状態とするデフポジションが含まれ、前記第2の操作位置が、前記デフポジションに隣接するかたちで設けられている
請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記吹き出し口として、車両の搭乗者の頭部に向けて前記空調用空気を吹き出すためのフェイス吹き出し口が含まれるとともに、前記ダンパとして、前記フェイス吹き出し口を開閉させるフェイスダンパが含まれて且つ、前記第1の操作位置として、前記フェイスダンパのみを開状態とするフェイスポジションが含まれ、前記第2の操作位置が、前記フェイスポジションに隣接するかたちで設けられている
請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記エアコンスイッチには、前記第2の操作位置を示す表示部が設けられている
請求項2〜4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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