説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置において、冷房時に、車室内の温度低下を阻害するおそれをなくし、暖房時では、車室内の温度を速やかに上昇させるとともにエンジン出力を向上させることにある。
【解決手段】エンジンルーム(2)内には、走行風がクーラユニット(11)を介して車室内へと導かれるクーラユニット側冷房用吸気通路(16)と、走行風がヒータコア(12)を介して車室内へと導かれるヒータコア側暖房用吸気通路(18)とを設けている。このヒータコア側暖房用吸気通路(18)内のうち、ヒータコア(12)よりも上流側に位置する領域に放熱器(8)を配置するとともに、ヒータコア(12)よりも下流側に位置する領域には走行風を車室内へと吸引するブロアファン(19)を配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に係り、特に車室内への送風を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置においては、一般的に、外気である空気をフロントウィンド周辺から取り入れているが、この取り入れた空気を直接ヒータコアで暖めて暖房用空気として送るため、外気温度が低い場合等では送風温度が高くなりやすいものである。
【0003】
例えば、図2に示すように、車両101の空調装置(A/C)102としては、エンジンルーム103内に、エンジン104と、このエンジン104ヘ連絡するエンジン側吸気通路105でコンプレッサ106と放熱器107とを配置するとともに、冷暖房装置108を配置している。この冷暖房装置108は、エバポレータ109を内蔵したクーラユニット110と、エンジン104内の冷却水を熱源として走行風を加熱して車室内へ排出するヒータコア111とから構成され、走行風がヒータコア111とクーラユニット110ヘと導かれる一通路の吸気通路112に配置されている。冷暖房装置108の下流側の吸気通路112には、ブロアファン113を配置している。エンジン104とヒータコア111との間には、エンジン104の冷却水を流通させるように、冷却水供給通路114と冷却水戻し通路115とを配置している。
冷暖房装置108の上流端には、ダンパ機構116のモードダンパ117を配置している。このモードダンパ117は、暖房時に、走行風がクーラユニット110に導かれないように切替動作(回動)され(図2の実線で示す)、冷房時には、暖房時の回動方向に対して反対方向に回動させて、ヒータコア111に走行風を通過させないように切替動作(回動)される(図2の破線で示す)。
【0004】
また、図3に示すように、車両201の空調装置(A/C)202としては、エンジンルーム203内に、エンジン204と、このエンジン204ヘ連絡するエンジン側吸気通路205でコンプレッサ206と放熱器207とを配置するとともに、冷暖房装置208を配置している。この冷暖房装置208は、エバポレータ209を内蔵したクーラユニット210と、エンジン204内の冷却水を熱源として走行風を加熱して車室内へ排出するヒータコア211とから構成され、走行風がヒータコア211とクーラユニット210ヘと導かれる一通路の吸気通路212に配置されている。冷暖房装置208の下流側の吸気通路212には、ブロアファン213を配置している。エンジン204とヒータコア211との間には、エンジン204の冷却水を流通させるように、冷却水供給通路214と冷却水戻し通路215とを配置している。
冷暖房装置208の下流端には、ダンパ機構216の3つのモードダンパ217・217・217を配置している。この3つのモードダンパ217・217・217は、暖房時に、クーラユニット210を通過した走行風が車室外へ排出されるように切替動作(回動)され(図3の実線で示す)、冷房時には、ヒータコア211を通過した走行風を車室外又はエンジンルーム内へと排出するように切替動作(回動)される(図3の破線で示す)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230594号公報
【0006】
特許文献1に係る車両用空調システムは、暖房運転時に、第2の冷媒を放熱器バイパス流路へ流してヒータコアで加熱された空気を空調風とする、一方、冷房運転時には、第2の冷媒を放熱器へと流してエバポレータで冷却された空気を空調風とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の車両用空調装置においては、外気温度が低い環境下では、温度が低い状態で走行風がヒータコアヘと流れるため、ヒータコアで車室内へと導入される走行風の温度を速やかに上昇させ難い問題があった。
また、車両の走行によって放熱器へと走行風を流していたため、車両の停止時や低速走行状態では、放熱器へと走行風が流れ難くなり、放熱器が過熱されて、放熱器でエンジンルーム内が加熱されてしまい、このため、エンジンルーム内に滞留した熱によってエンジン内へ空気を導入するエンジン側吸気通路が加熱されてエンジン出力が低下するおそれがあった。
【0008】
そこで、この発明は、冷房時に、車室内の温度低下を阻害するおそれをなくし、暖房時では、車室内の温度を速やかに上昇させるとともにエンジン出力を向上させることできる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車両のエンジンルーム内にエンジンとこのエンジンヘ連絡する放熱器とを配置するとともに冷暖房装置を配置し、この冷暖房装置はエバポレータを内蔵したクーラユニットと前記エンジン内の冷却水を熱源として走行風を加熱して車室内へ排出するヒータコアとから構成され、暖房時に走行風が前記クーラユニットに導かれないようにしたり又は前記クーラユニットを通過した走行風が車室外へ排出されるように切替動作されるダンパ機構を設けた車両用空調装置おいて、前記エンジンルーム内には、走行風が前記クーラユニットを介して車室内へと導かれるクーラユニット側冷房用吸気通路と、走行風が前記ヒータコアを介して車室内へと導かれるヒータコア側暖房用吸気通路とを設け、このヒータコア側暖房用吸気通路内のうち前記ヒータコアよりも上流側に位置する領域に前記放熱器を配置するとともに前記ヒータコアよりも下流側に位置する領域には走行風を車室内へと吸引するブロアファンを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の車両用空調制御装置は、冷房時に、車室内の温度低下を阻害するおそれをなくし、暖房時では、車室内の温度を速やかに上昇させるとともにエンジン出力を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は車両用空調装置のシステム構成図である。(実施例)
【図2】図2は従来における車両用空調装置のシステム構成図である。(従来例1)
【図3】図3は従来における車両用空調装置のシステム構成図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明は、冷房時に、車室内の温度低下を阻害するおそれをなくし、暖房時では、車室内の温度を速やかに上昇させるとともにエンジン出力を向上させる目的を、走行風がクーラユニットを介して車室内へと導かれるクーラユニット側冷房用吸気通路と走行風がヒータコアを介して車室内へと導かれるヒータコア側暖房用吸気通路とを設け、このヒータコア側暖房用吸気通路内のうちヒータコアよりも上流側に位置する領域に放熱器を配置するとともにヒータコアよりも下流側に位置する領域には走行風を車室内へと吸引するブロアファンを配置して実現するものである。
【実施例】
【0013】
図1は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両、2はエンジンルーム、3はこのエンジンルーム2内に配置されたエンジン、4は空調装置(A/C)である。
エンジン3には、このエンジン3へ吸入する空気を導くエンジン側吸気通路5が接続している。このエンジン側吸気通路5は、吸気マニホルド等で形成され、上流端で空気を取り入れる空気取入口6を備えて、下流端がエンジン3に接続している。エンジン側吸気通路5の途中には、吸入する空気を加圧してエンジン3に送るコンプレッサ7が配置されている。
また、エンジンルーム2内には、エンジン3ヘ連絡する放熱器8が配置されるとともに、冷暖房装置9が配置される。
この冷暖房装置9は、エバポレータ10を内蔵したクーラユニット11と、エンジン3内の冷却水を熱源として走行風を加熱して車室内へ排出するヒータコア12とから構成される。
エンジン3とヒータコア12との間には、エンジン3の冷却水を流通させるように、冷却水供給通路13と冷却水戻し通路14とが配置されている。
【0014】
クーラユニット11は、上流端にクーラユニット側走行風取入口15を備えたクーラユニット側冷房用吸気通路16に配置されている。このクーラユニット側冷房用吸気通路16は、走行風を、クーラユニット11を介して車室内へと導くものである。
ヒータコア12は、上流端にヒータコア側走行風取入口17を備えたヒータコア側暖房用吸気通路18に配置されている。このヒータコア側暖房用吸気通路18は、ヒータコア側走行風取入口17からの走行風を導き、そして、この走行風をヒータコア12で暖めて生成した車室内温風用空気を車室内へと導くものである。
【0015】
ヒータコア側暖房用吸気通路18内のうち、ヒータコア12よりも上流側に位置する領域に、前記放熱器8を配置するとともに、ヒータコア12よりも下流側に位置する領域には、走行風を車室内へと吸引するブロアファン19を配置している。放熱器8は、インタークーラであって、コンプレッサ7よりも下流側のエンジン側吸気通路5とヒータコア12よりも上流側のヒータコア側暖房用吸気通路18との交差部位に配置されている。
クーラユニット側冷房用吸気通路16の下流端は、ヒータコア12とブロアファン19間のヒータコア側暖房用吸気通路18に形成されたクーラユニット側開口部20に接続している。
また、ヒータコア側暖房用吸気通路18には、ヒータコア12とブロアファン19間で、第1車外側開口部21が形成されているとともに、この第1車外側開口部21で第1車外側吸気通路22が接続されている。
クーラユニット側冷房用吸気通路16には、クーラユニット11の下流側で、第2車外側開口部23が形成されているとともに、この第2車外側開口部23で第2車外側吸気通路24が接続されている。
【0016】
上記の各開口部20、21、23は、ダンパ機構25によって開閉される。
このダンパ機構25は、暖房時に走行風がクーラユニット11に導かれないようにしたり又はクーラユニット11を通過した走行風が車室外へ排出されるように切替動作(回動)されるものであって、クーラユニット側開口部20を開閉するクーラユニット側ダンパ26と、第1車外側開口部21を開閉する第1車外側ダンパ27と、第2車外側開口部23を開閉する第2車外側ダンパ28とを備える。
これらクーラユニット側ダンパ26と第1車外側ダンパ27と第2車外側ダンパ28とは、制御手段(ECU)29により冷暖房状態に応じて駆動制御される。また、この制御手段29は、冷暖房状態に応じてブロアファン19を駆動制御する。
クーラユニット側ダンパ26は、暖房時に、図1の実線で示すように、クーラユニット側開口部20を閉鎖する一方、冷房時には、図1の破線で示すように、クーラユニット側開口部20を開放してヒータコア側暖房用吸気通路18の一側の半分を閉鎖するものである。
第1車外側ダンパ27は、暖房時に、図1の実線で示すように、第1車外側開口部21を閉鎖する一方、冷房時には、図1の破線で示すように、第1車外側開口部21を開放してヒータコア側暖房用吸気通路18の他側の半分を閉鎖するものである。
従って、冷房時には、クーラユニット側ダンパ26と第1車外側ダンパ27とは、共働して、ヒータコア側暖房用吸気通路18を閉鎖する。
第2車外側ダンパ28は、暖房時に、図1の実線で示すように、第2車外側開口部23を開放してクーラユニット側冷房用吸気通路16を閉鎖する一方、冷房時には、図1の破線で示すように、第2車外側開口部23を閉鎖する。
このようなダンパ機構25の動作により、暖房時には、ヒータコア12からの走行風がブロアファン19を介して車室内へ送られるとともに、クーラユニット11からの走行風が第2車外側吸気通路24から車外へ送られる。一方、冷房時には、クーラユニット11からの走行風がブロアファン19を介して車室内へ送られるとともに、ヒータコア12からの走行風が第1車外側吸気通路22から車外へ送られる。
【0017】
このような構造において、エンジンルーム2内にクーラユニット側冷房用吸気通路16とヒータコア側暖房用吸気通路18とを別々に設けたことで、冷房時には、放熱器8を通過しない走行風のみを車室内へと供給できる。このため、冷房時に、ヒータコア12の手前で走行風の過度な温度上昇を抑制でき、車室内の温度低下を阻害するのを防止することができる。
また、放熱器8で温度上昇した走行風をヒータコア側暖房用吸気通路18を介して直接ヒータコア12ヘと流すことができる。特に、寒冷時等で、車室内の温度を上昇させたい場合に、走行風が放熱器8に流れ込んだ後、放熱器8を通過して温度が高まった走行風をヒータコア12でさらに高めることができるため、車室内の温度を速やかに上昇させることができる。また、ヒータコア12の下流側にブロアファン19を配置したため、特に、車両1の停止時や低速走行時でも、ブロアファン19の吸引によって放熱器8とヒータコア12とを通過して温度が高まった走行風量を減少させることなく、走行風を車室内へと流し込むことができ、車室内の温度を速やかに上昇できる。
更に、放熱器8で温められた走行風がヒータコア12に流れるため、外気を直接使用する場合に比べて、ヒータコア12内の冷却水温を高めることができ、エンジン3全体の早期暖気効果を得ることができる。
更にまた、車両1の停止時や低速走行状態でも、ブロアファン19によって放熱器8側へと走行風を積極的に引き込むことができるため、放熱器8を通過する走行風量を高めることができ、放熱器8を冷却でき、放熱器8の熱によってエンジンルーム2内が過度に温度上昇するのを防止できる。これにより、エンジンルーム2内に配置される空気をエンジン3内へ送るエンジン側吸気通路5の加熱を防止でき、エンジン出力の低下を防止することができる。
【0018】
また、前記放熱器8は、エンジンルーム2内に配置されるコンプレッサ7によって加圧された空気を冷却してエンジン3へと送るインタークーラである。
このような構造によって、ブロアファン19によって吸引される多量の走行風がインタークーラとしての放熱器8を通過するため、この放熱器8を経由してエンジン3内に導入される空気をさらに冷却できる。これにより、エンジン3が吸入する空気の温度を低下でき、エンジン出力を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明に係る車両用空調装置を、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両や、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 車両
2 エンジンルーム
3 エンジン
4 空調装置
5 エンジン側吸気通路
7 コンプレッサ
8 放熱器(インタクーラ)
9 冷暖房装置
10 エバポレータ
11 クーラユニット
12 ヒータコア
16 クーラユニット側冷房用吸気通路
18 ヒータコア側暖房用吸気通路
19 ブロアファン
22 第1車外側吸気通路
24 第2車外側吸気通路
25 ダンパ機構
26 クーラユニット側ダンパ
27 第1車外側ダンパ
28 第2車外側ダンパ
29 制御手段(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム内にエンジンとこのエンジンヘ連絡する放熱器とを配置するとともに冷暖房装置を配置し、この冷暖房装置はエバポレータを内蔵したクーラユニットと前記エンジン内の冷却水を熱源として走行風を加熱して車室内へ排出するヒータコアとから構成され、暖房時に走行風が前記クーラユニットに導かれないようにしたり又は前記クーラユニットを通過した走行風が車室外へ排出されるように切替動作されるダンパ機構を設けた車両用空調装置おいて、前記エンジンルーム内には、走行風が前記クーラユニットを介して車室内へと導かれるクーラユニット側冷房用吸気通路と、走行風が前記ヒータコアを介して車室内へと導かれるヒータコア側暖房用吸気通路とを設け、このヒータコア側暖房用吸気通路内のうち前記ヒータコアよりも上流側に位置する領域に前記放熱器を配置するとともに前記ヒータコアよりも下流側に位置する領域には走行風を車室内へと吸引するブロアファンを配置したことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記放熱器は、前記エンジンルーム内に配置されるコンプレッサによって加圧された空気を冷却して前記エンジンへ送るインタークーラであることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−91463(P2013−91463A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235788(P2011−235788)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】