説明

車両用融雪装置

【課題】払拭領域の外に排除されて残ってしまった雪を全て溶かすものに比べヒーター容量(ワット)が小さく、残ってしまった雪を全て溶かすものに比べ雪を短時間で取り除く車両用融雪装置を提供する。
【解決手段】車両用融雪装置11はワイパー(ワイパーブレード)37で形成される払拭領域43より外方に配置されているとともに、ワイパー37を設けたウインドウガラス15に取付けられている融雪部材14を備える。融雪部材14は、ワイパー37で外方に集められ残った雪S1を複数に分割することで、崩す第1分割融雪部54、第2分割融雪部56を備えている。第1分割融雪部54、第2分割融雪部56は、略三角形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドウガラスに設けられた車両用融雪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用融雪装置は、寒冷地など雪の多い地域の雪対策として、車両のフロントウインドウに設けられている。雪がフロントウインドウガラスに積もったときにワイパーによって払拭すると、払拭領域の外に払拭された雪が山のように残ることがあり、この残った雪を溶かす熱線装置を着脱自在に設けたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−62476号公報(第3頁、図1)
【0003】
しかし、特許文献1の自動車のフロントガラスの融雪装置では、払拭領域の外に残って溜まった雪を溶かして流すには、熱線装置のヒーター容量(ワット)を大きくする必要があるという問題がある。
また、ヒーター容量(ワット)が小さいと、払拭領域の外に残って溜まった雪を溶かして流すのに時間がかかるという問題がある。
熱線装置が大型になると、視野を狭めるなど視界に悪影響を及ぼすという問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、払拭領域の外に排除されて残ってしまった雪を全て溶かすものに比べヒーター容量(ワット)が小さく、残ってしまった雪を全て溶かすものに比べ雪を短時間で取り除く車両用融雪装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、ワイパーで形成される払拭領域より外方に配置されているとともに、ワイパーを設けたウインドウガラスに取付けられている融雪部材を備えた車両用融雪装置であって、融雪部材は、ワイパーで外方に集められた雪を複数に分割することで、崩す分割融雪部を備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、分割融雪部は、所定の間隔で複数設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、分割融雪部は、ワイパーの上反転位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、分割融雪部は、略三角形状に形成され、三角形状の三つの頂点のうち、一つの頂点がウインドウガラスを支持しているフロントピラーへ向けて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、車両用融雪装置の融雪部材は、ワイパーで外方に集められた雪を複数に分割することで、崩す分割融雪部を備えているので、払拭領域の外に排除されて残ってしまった雪を全て溶かすものに比べヒーター容量(ワット)を小さくすることができるという利点がある。
【0010】
また、ワイパーで外方に集められた雪を複数に分割することで、崩す分割融雪部を備えているので、残ってしまった雪を全て溶かすものに比べ雪を短時間で取り除くことができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、分割融雪部は、所定の間隔で複数設けられているので、所定の間隔でより小さく分割され、残ってしまった雪を全て溶かすものに比べ雪をより短時間で取り除くことができるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明では、分割融雪部は、ワイパーの上反転位置に設けられているので、上反転位置より外方に集められ残った雪のうち、上反転位置に一致する雪を積極的に溶かすことになり、結果的にウインドウガラスの中央側の雪を溶かして分割することができ、分割した雪を中央側へ向けて崩すことができる。従って、残ってしまった雪を全て溶かすものに比べ雪をより短時間で取り除くことができるという利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明では、分割融雪部は、略三角形状に形成され、三角形状の三つの頂点のうち、一つの頂点がウインドウガラスを支持しているフロントピラーへ向けて配置されているので、ワイパーで外方に集められた雪は、V字形の切り込みのように溶けて無くなり、分割された雪はフロントピラー近傍、言い換えるとV字形の底を支点に、ウインドウガラスの中央下方へ向かって滑って回動することで、集められた雪は崩れる。従って、残ってしまった雪を全て溶かすものに比べ雪をより短時間で取り除くことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の車両用融雪装置を車室から見た斜視図であり、(b)は(a)のb部詳細図である。
【0015】
車両用融雪装置11は、車両12のフロントウインドウ13に設けた融雪部材14を有している。フロントウインドウ13のウインドウガラス(フロントウインドウガラス)15に熱線16を貼り付け、運転席21に配置したスイッチ22を操作することで通電すると、融雪部材14が発熱して雪を溶かすものである。
【0016】
車両12は、車室25、車室25に設け運転席21を含む前席26と、フロントボデー27、サイドボデー28、ルーフ31、これらに嵌めたフロントウインドウガラス15と、フロントウインドウガラス15の下方に設けたフロントガラス払拭装置33を備える。
【0017】
図2は、本発明の車両用融雪装置を車外から見た斜視図、兼車両用融雪装置の払拭された雪に対応する機構を説明する図である。図1を併用して説明する。
フロントガラス払拭装置33は、運転席21側に配置した運転席払拭装置35と、助手席側に配置した助手席払拭装置36と、これらの運転席払拭装置35と助手席払拭装置36を制御する制御部(図に示していない)と、を備える。そして、運転席払拭装置35のワイパーであるところのワイパーブレード37が待機位置(下反転位置)41と上反転位置42との間を移動することで、払拭領域43(上反転位置42に一致する払拭領域43を含む)内の雨水や雪を払拭する。
【0018】
融雪部材14は、具体的には、払拭領域43より外方(ドア44側、矢印a1の方向)に配置され、運転席21のフロントウインドウガラス15の内面46に第1抵抗導線51がサイドボデー28の右のフロントピラー52近傍に且つ平行に敷設され、第1抵抗導線51に連ねて第2抵抗導線53がルーフ31近傍から下方に敷設され、第2抵抗導線53に連ねて第1分割融雪部54が敷設され、第1分割融雪部54に連ねて第3抵抗導線55が敷設され、第3抵抗導線55に連ねて第2分割融雪部56が敷設され、第2分割融雪部56に連ねて第4抵抗導線57が敷設されている。
【0019】
第4抵抗導線57と第1抵抗導線51は、図に示していない制御部に接続され、スイッチ22の通電開始情報に基づいて、制御部から通電される。なお、制御部は既存の構成である。
【0020】
第1分割融雪部54及び第2分割融雪部56はともに、ワイパー(ワイパーブレード)37の上反転位置42に設けられている。具体的には、図2に示した残った雪S1の幅Wsとほぼ同じ長さ(60%〜80%)で、上反転位置42からフロントピラー52近傍までの間に取付けられている。
【0021】
第1分割融雪部54(図1(b)参照)は、略三角形状に一筆書き(導線を切らない)のように敷設されたもので、三角形状の第1頂点61、第2頂点62、第3頂点63のうち、第1頂点61がウインドウガラス(フロントウインドウガラス)15を支持しているフロントピラー52へ向けて(矢印a2の方向)配置されている。
【0022】
なお、第1頂点61、第2頂点62、第3頂点63のうち、第1頂点61がフロントピラー52に最も近く配置されている。
「略三角形状」とは、ウインドウガラス(フロントウインドウガラス)15上(内面46)に二次元に形成した形状であり、また、車室25から前方を見たときの視点である図1の視点で、略三角形状に見える形状である。
【0023】
また、第1分割融雪部54は、第2抵抗導線53の端を第1頂点61とし、第1頂点61を通って第2抵抗導線53に略直交する第1導線部65が敷設され、第1導線部65の端を第2頂点62とし、第2頂点62を通って第2導線部66が第1抵抗導線51に略平行に敷設され、第2導線部66の端を第3頂点63とし、第3頂点63を通って第3導線部67が第1頂点61へ向けて敷設されて第1頂点61近傍で第3導線部67の端が第3抵抗導線55に連なっている。
【0024】
第3導線部67は、波状に敷設したもので、詳しくは、三角形状の範囲内に所定のピッチPでS字状に設けられている。
第2分割融雪部56は、第1分割融雪部54と同様であり、第1分割融雪部54から距離Eだけ離して設けられている。
【0025】
次に、本発明の車両用融雪装置の作用を説明する。
図2に示す車両12では、雪Sが積もったときには、乗車前に、少なくとも視野を妨げない程度まで雪がブラシで落とされる。そして(詳しい手順は省略する)、フロントガラス払拭装置33を作動させると、フロントウインドウガラス15上の雪Sが払拭され、払拭された雪S1は次第に上反転位置42に重なり始めて残る。特に、降雪量の多いときに、フロントガラス払拭装置33を作動させると、上反転位置42とフロントピラー52との間に山のように雪が集められて残るため、視野の妨げとなるが、このように払拭の上反転位置42に雪が残るときに、融雪部材14を通電させると、上反転位置42に残った雪S1は第1分割融雪部54、第2分割融雪部56のところが溶け始める。
【0026】
図3は、図2の続きを説明する図である。
第1分割融雪部54、第2分割融雪部56が発熱すると、雪S1は第1分割融雪部54、第2分割融雪部56のところが積極的に溶けて流れて、V字形状に無くなるので、3分割される。また、第1抵抗導線51などの抵抗導線の発熱も加わると、フロントウインドウガラス15に接触している残りの雪S1の面も溶け、且つ、フロントピラー52に接触している部位S2も溶けるので、上段の雪St及中段の雪Smは下方へ滑り始める。
【0027】
その際、上段の雪Stは、第1重心Gtがフロントピラー52近傍から距離E1だけフロントウインドウガラス15の中央71側に位置しているので、フロントピラー52近傍、言い換えるとV字形状の底72を支点に中央71側へ向け倒れるように滑る。中段の雪Smも同様に、第2重心Gmによって、フロントピラー52近傍、言い換えるとV字形状の底72を支点に中央71側へ向け倒れるように滑る。
【0028】
図4(a)、(b)は、図3の続きを説明する図であり、(a)は図3の続き、(b)は(a)の続きを説明する図である。
(a)に示すように、上段の雪Stは、中央71側へ向け倒れるように滑り続け、中段の雪Smも同様に、中央71側へ向け倒れるように滑り続ける。
【0029】
(b)に示すように、上段の雪Stは、フロントウインドウガラス15上を下方へ向かって滑り落ちるので、視野を確保することができる。
中段の雪Smも同様に、フロントウインドウガラス15上を下方へ向かって滑り落ちるので、視野を確保することができる。
なお、それぞれの滑り落ちるタイミングは条件によって異なる。
【0030】
このように、車両用融雪装置11では、上反転位置42に残った雪S1を2箇所だけ溶かすことで、残った雪S1を3分割するので、全て溶かす場合に比べ、ヒーター容量を小さくすることができるとともに、融雪装置11(融雪部材14)の小型化を図ることができる。
また、全て溶かす場合に比べ、残った雪S1を短時間で取り除くことができる。
【0031】
さらに、融雪部材14では、ヒーター容量を小さくすることで、融雪装置11(融雪部材14)の生産コストを削減することがでる。
【0032】
次に、別の実施の形態を説明する。
図5は、別の実施の形態を説明する図であり、上記図1〜図4に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0033】
別の実施の形態の車両用融雪装置11Bは、融雪部材14Bを備えていることを特徴とする。
融雪部材14Bは、第1分割融雪部54Bと、第1分割融雪部54Bから距離Eだけ離して敷設している第2分割融雪部56と、を備えている。
第1分割融雪部54Bは、略長方形形状に敷設されたもので、フロントウインドウガラス15の中央71の下方へ(矢印b1の方向)向かって傾斜して延びている。
具体的には、第2抵抗導線53に略直交する第1導線部65Bが敷設され、第1導線部65Bに連ねて第3導線部67Bが敷設されて、第3抵抗導線55に連なっている。
【0034】
第3導線部67Bは、波状に敷設したもので、詳しくは、長方形の範囲内に所定のピッチPでS字状に設けられている。
第2分割融雪部56Bは、第1分割融雪部54Bと同様である。
【0035】
別の実施の形態の車両用融雪装置11Bは、車両用融雪装置11と同様の効果を発揮する。
融雪部材14Bでは、第1分割融雪部54Bによって上段の雪Stbの下部及び中段の雪Smbの下部はともに、傾斜した形状に溶かされるので、上段の雪Stbが下方へ矢印b2のように滑り落ち、同様に、中段の雪Smbも矢印b3のように滑り落ちる。
【0036】
尚、本発明の車両用融雪装置は、実施の形態ではフロントウインドウガラスに採用したが、フロントウインドウガラス以外のウインドウガラスにも採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の車両用融雪装置は、フロントウインドウガラスに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の車両用融雪装置を車室から見た斜視図である。
【図2】本発明の車両用融雪装置を車外から見た斜視図、兼車両用融雪装置の払拭された雪に対応する機構を説明する図である。
【図3】図2の続きを説明する図である。
【図4】図3の続きを説明する図である。
【図5】別の実施の形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
11…車両用融雪装置、14…融雪部材、15…ウインドウガラス(フロントウインドウガラス)、37…ワイパー(ワイパーブレード)、43…払拭領域、54…第1分割融雪部、56…第2分割融雪部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーで形成される払拭領域より外方に配置されているとともに、前記ワイパーを設けたウインドウガラスに取付けられている融雪部材を備えた車両用融雪装置であって、
前記融雪部材は、前記ワイパーで前記外方に集められた雪を複数に分割することで、崩す分割融雪部を備えていることを特徴とする車両用融雪装置。
【請求項2】
前記分割融雪部は、所定の間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用融雪装置。
【請求項3】
前記分割融雪部は、前記ワイパーの上反転位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用融雪装置。
【請求項4】
前記分割融雪部は、略三角形状に形成され、該三角形状の三つの頂点のうち、一つの頂点が前記ウインドウガラスを支持しているフロントピラーへ向けて配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−196458(P2009−196458A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38824(P2008−38824)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】