説明

車両用表示装置

【課題】表示手段の正常な動作を確保しつつ、消費する電力を低減できる車両用表示装置の提供。
【解決手段】情報を画像により表示する液晶表示部40等の表示手段は、供給される電力の遮断に先立ってOFFシーケンスの実施を要する。故に、イグニッションスイッチ11がオフ状態にされた旨の情報等の停止要求を車両から取得することにより、MPU20は、OFFシーケンスの開始を要求する開始要求を液晶表示部40に出力する。そしてMPU20は、開始要求に基づくOFFシーケンスが終了したか否かを判定し、この終了判定に基づいて、液晶表示部40に供給される電力を遮断する。この液晶表示部40への電力供給の遮断が、MPU20の休眠モードへの移行に先立って行われることにより、液晶表示部40ひいては車両用表示装置100によって消費される電力が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、当該車両の情報を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示の車両用計器のように、通常の作動モードと当該作動モードよりも消費電力の少ない休眠モードとが予め設定された駆動制御手段を備える構成が知られている。特許文献1の車両用計器では、車両のイグニッションスイッチがONからOFFへと切り替えられること等により、当該計器は、作動の停止を要求する信号を受け取る。これにより、車両用計器の駆動制御手段は、作動モードから休眠モードへと移行する。
【0003】
特許文献1の車両用計器では、駆動制御手段は、作動モードにて、表示用の指針を回動内機によって回動させることにより、車両の情報を表示させる。この車両用計器は、駆動制御手段による回動内機への電力の供給を遮断させる通電監視手段を、さらに備えている。通電監視手段は、駆動制御手段が休眠モードに移行する前の作動モードであっても、車両のイグニッションスイッチがONからOFFへと切り替えられることにより、回動内機へ供給される電力を遮断させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4244722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、近年では、特許文献1に開示のような回動内機による情報の指針表示と共に、画像によって情報を表示する表示手段が、車両用表示装置において広く用いられてきている。このような表示手段によって消費される電力は、回動内機によって消費される電力よりも多い傾向にある。故に、車両用表示装置にて消費される電力の低減を目的として、特許文献1の車両用計器のような作動モードにおける電力供給の遮断を、表示手段についても実施したいという要望が、強まっている。
【0006】
しかし、情報を画像により表示する表示手段は、供給される電力の遮断に先立って、電源遮断処理の実施を要する。故に、このような電源遮断処理が終了しないままに電力の供給を遮断されてしまうと、表示手段は、電力供給の再開の際に、車両の情報の画像による表示を正常に開始できなくなるおそれがある。故に、表示手段を備える構成では、特許文献1の車両用計器のような電力供給の遮断を実施することは、困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、表示手段の正常な動作を確保しつつ、消費する電力を低減できる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載されて、車両の情報を表示する車両用表示装置であって、情報を画像により表示し、供給される電力の遮断に先立って電源遮断処理の実施を要する表示手段と、表示手段を制御可能な通常動作モード及び通常動作モードよりも消費電力の少ない低電力動作モードが予め設定され、車両用表示装置の停止を要求する停止要求を車両から取得することにより、通常動作モードから低電力動作モードに移行する制御手段と、を備え、制御手段は、停止要求を取得することにより、電源遮断処理の開始を要求する開始要求を表示手段に出力する遮断処理要求部と、表示手段にて実施された開始要求に基づく電源遮断処理が終了したか否かを判定する終了判定部と、終了判定部によって電源遮断処理が終了したと判定されたことに基づいて、低電力動作モードへの移行に先立ち、表示手段に供給される電力を遮断する電源遮断部と、を有することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、制御手段は、通常作動モードでの作動時において車両用表示装置の停止を要求する停止要求を車両から取得することにより、遮断処理要求部によって電源遮断処理の開始要求を表示手段に出力する。遮断処理要求部からの開始要求に基づいて、表示手段は、電力供給の遮断に先立つ電源遮断処理を実施する。表示手段にて実施される電源遮断処理が終了すると、制御手段は、電源遮断処理が終了したか否かを判定する終了判定部によって、当該処理が終了したと判定する。そして、制御手段は、表示手段を制御可能な通常動作モードから消費電力の少ない低電力動作モードへの移行に先立ち、電源遮断部によって表示手段に供給される電力を遮断する。
【0010】
以上の構成では、表示手段を制御する制御手段が低電力動作モードに移行する前に表示手段への電力の供給を遮断するので、表示手段において消費される電力、ひいては車両用表示装置において消費される電力が、低減され得る。さらに、電力が遮断されるよりも前に、表示手段は、電源遮断処理を終了し得る。故に、電力の供給が再び開始された際に、表示手段は、車両の情報の画像による表示を、確実に開始し得る。したがって、車両用表示装置は、表示手段の正常な動作を確保しつつ、消費する電力を低減できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、表示手段は、遮断処理要求部からの開始要求に基づく電源遮断処理を終了した後、この電源遮断処理を終了した旨の終了情報を終了判定部に出力し、終了判定部は、表示手段から終了情報を取得したことに基づいて、電源遮断処理が終了したと判定することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、電源遮断処理を終了した旨の終了情報を取得したことに基づいて、終了判定部は、当該処理の終了判定をする。故に、終了判定部による終了判定の正確性が高く維持され得る。以上により、制御手段の電源遮断部によって電力が遮断されるよりも前に、表示手段は、電源遮断処理を確実に終了し得る。これにより、電力の供給が再び開始される際には、表示手段は、画像の表示をさらに確実に開始できる。したがって、消費電力を低減しつつ、表示手段を正常に動作させる確実性を向上させた車両用表示装置が、実現される。
【0013】
請求項3に記載の発明では、終了判定部は、遮断処理要求部が開始要求を表示手段に出力した後、予め設定された処理時間が経過したことに基づいて、電源遮断処理が終了したと判定することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、電源遮断処理の開始要求を遮断処理要求部が表示手段に出力した後、予め設定された処理時間が経過したことに基づいて、終了判定部は、当該処理の終了判定をする。故に、この処理時間を適切に設定することによれば、表示手段への電力供給は、制御手段の低電力動作モードへの移行よりも前に、確実に遮断され得る。以上により、表示手段において消費される電力、ひいては車両用表示装置において消費される電力は、さらに確実に低減可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、制御手段は、車両に搭載される車載装置から取得する信号に基づいて、表示の継続を要求する表示要求の有無を判定する要求判定部、をさらに有し、遮断処理要求部は、停止要求を取得した後、要求判定部によって表示要求が無くなったと判定されたことに基づいて、開始要求を表示手段に出力することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、車載装置から取得する信号に基づいて表示要求が無くなったと要求判定部により判定されたことに基づいて、遮断処理要求部は、開始要求を表示手段に出力する。故に、遮断処理要求部が停止要求を取得した後も、表示の継続を要求する表示要求が有ると制御装置の要求判定部によって判定されているうちは、表示手段における電源遮断処理は、開始され得ない。以上のより、車両から停止要求を取得してから表示要求が無くなるまでの間において、車両用表示装置は、表示手段によって情報を画像により表示することができる。故に、表示手段の正常な動作の確保と消費電力の低減とを図りつつ、さらにユーザビリティに優れた車両用表示装置が、実現可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、表示手段は、画像を表示画面に表示する表示器、及び表示器によって表示される画像を描画する描画部、を有し、表示器及び描画部は、供給される電力の遮断に先立つ電源遮断処理の実施を個々に要し、遮断処理要求部は、表示器及び描画部に開始要求を個別に出力し、終了判定部は、開始要求に基づく電源遮断処理が終了したか否かを、表示器及び描画部の個々について判定し、電源遮断部は、表示器及び描画部のそれぞれにおいて電源遮断処理が終了したと終了判定部により判定されたことに基づいて、低電力動作モードへの移行に先立ち、これら表示器及び描画部に供給される電力を遮断することを特徴とする。
【0018】
この発明のように、表示手段は、画像を表示画面に表示する表示器及び画像を描画する描画部のように、複数の構成を有し得る。これらの構成が電源遮断処理の実施を個々に要する場合には、制御手段の遮断処理要求部は、電源遮断処理の開始要求を表示手段の各構成に個別に出力する。以上により、表示器及び描画部は、開始要求に基づいて、それぞれ電源遮断処理を開始する。そして、開始要求に基づく電源遮断処理が表示器及び描画部のそれぞれにおいて終了すると、制御手段の終了判定部は、電源遮断処理が終了したと個々について判定する。そして、制御手段の電源遮断部は、低電力動作モードへの移行に先立ち、表示器及び描画部に供給される電力を遮断する。
【0019】
このように、電源遮断処理の実施を個々に要する複数の構成を表示手段が有している形態では、制御手段は、各構成における電源遮断処理の終了判定に基づいて電力の供給を遮断する。以上により、電力の供給が再び開始された際に、表示手段の表示器及び描画部は、それぞれの作動を確実に開始し得る。したがって、車両用表示装置は、消費する電力を低減しつつ、複数の構成を有する表示手段の正常な動作を確保できる。
【0020】
さらに、請求項6に記載の発明では、表示手段は、画像を表示画面に表示する表示器、及び表示器によって表示される画像を描画する描画部、を有し、表示器及び描画部は、供給される電力の遮断に先立つ電源遮断処理の実施を個々に要し、遮断処理要求部は、表示器及び描画部に開始要求を個別に出力し、終了判定部は、開始要求に基づく電源遮断処理が終了したか否かを、表示器及び描画部の個々について判定し、電源遮断部は、低電力動作モードへの移行に先立ち、表示器及び描画部のうち電源遮断処理が終了したと終了判定部により判定されたものから順次、供給される電力を遮断することを特徴とする。
【0021】
この発明のように、電源遮断処理の実施を個々に要する複数の構成を表示手段が有している形態では、制御手段の電源遮断部は、表示器及び描画部のうち電源遮断処理が終了したと終了判定部により判定されたものから順次、供給される電力を遮断してもよい。以上により、表示器及び描画部のうち電源遮断処理を早く終了可能な一方は、他方における電源遮断処理の終了を待つことなく、電力の供給を遮断される。故に、表示手段、ひいては車両用表示装置において消費される電力が、いっそう低減可能となる。以上により、車両用表示装置は、複数の構成を有する表示手段の正常な動作を確保しつつ、さらに消費電力を低減できる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、制御手段は、停止要求を車両から取得した後、予め規定された表示終了条件が成立したことに基づいて、通常動作モードから低電力動作モードに移行することを特徴とする。
【0023】
この発明のように、車両用表示装置によっては、予め規定された表示終了条件が成立しないと、停止要求を車両から取得していても通常動作モードから低電力動作モードに移行できないように、制御手段は、設定され得る。このような形態では、表示終了条件の成立まで制御手段は低電力消費モードに移行できないので、車両用表示装置によって消費される電力が増大し易くなる。
【0024】
しかし、上述したように、制御手段は、表示手段における電源遮断処理の終了を判定して、低電力動作モードへの移行する前であっても、当該表示手段に供給される電力を遮断できる。このように、表示手段の正常な動作を確保しつつ消費電力を低減する効果は、制御手段の低電力消費モードへの移行につき消費電力の増大し易い形態の車両用表示装置に特に有効なのである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態のMPUによって実施される休眠モード移行処理が示されるフローチャートである。
【図3】本発明の第一実施形態による車両用表示装置の作動を説明するためのタイミングチャートであって、(a)はバッテリ電源ラインのオン及びオフの状態を示し、(b)は制御用電源部から供給される電力のオン及びオフの状態を示し、(c)はイグニッション電源ライン14のオン及びオフの状態を示し、(d)はMPUによって判定される表示要求の有無を示し、(e)はMPUの作動モードを示し、(f)は表示用電源部から供給される電力のオン及びオフの状態を示し、(g)は表示器の作動のオン及びオフの状態を示し、(h)はGDCの作動のオン及びオフの状態を示し、(i)はメモリの作動のオン及びオフの状態を示す。
【図4】本発明の第二実施形態による車両用表示装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】本発明の第二実施形態のMPUによって実施される休眠モード移行処理が示されるフローチャートである。
【図6】本発明の第二実施形態による車両用表示装置の作動を説明するためのタイミングチャートであって、(a)はバッテリ電源ラインのオン及びオフの状態を示し、(b)は制御用電源部から供給される電力のオン及びオフの状態を示し、(c)はイグニッション電源ライン14のオン及びオフの状態を示し、(d)はMPUによって判定される表示要求の有無を示し、(e)はMPUの作動モードを示し、(f)〜(h)は各電源スイッチのオン及びオフの状態を示し、(i)は表示器の作動のオン及びオフの状態を示し、(j)はGDCの作動のオン及びオフの状態を示し、(k)はメモリの作動のオン及びオフの状態を示す。
【図7】本発明の第三実施形態による車両用表示装置の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】本発明の第三実施形態による車両用表示装置の特徴部分を詳しく説明するための図である。
【図9】本発明の第三実施形態のMPUによって実施される休眠モード移行処理が示されるフローチャートである。
【図10】本発明の第三実施形態による車両用表示装置の作動を説明するためのタイミングチャートであって、(a)はバッテリ電源ラインのオン及びオフの状態を示し、(b)は制御用電源部から供給される電力のオン及びオフの状態を示し、(c)はイグニッション電源ライン14のオン及びオフの状態を示し、(d)はMPUによって判定される表示要求の有無を示し、(e)はMPUの作動モードを示し、(f)は表示用電源部から供給される電力のオン及びオフの状態を示し、(g)は表示器の作動のオン及びオフの状態を示し、(h)はGDC用電源回路から供給される電力のオン及びオフの状態を示し、(i)はGDCの作動のオン及びオフの状態を示し、(j)メモリの作動のオン及びオフの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0027】
(第一実施形態)
図1には、本発明の第一実施形態による車両用表示装置100の電気的な構成が示されている。車両用表示装置100は、車両に搭載されて、当該車両の情報を表示する。以下、図1に基づいて、車両用表示装置100の構成について説明する。
【0028】
車両用表示装置100は、表示用電源部13、制御用電源部15、マイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit;MPU)20、液晶表示部40、指針計器部50、及び複数のインジケータ53を備えている。また車両用表示装置100は、車載されているバッテリ10、車載制御装置91、及び車載スイッチ93等に接続されている。
【0029】
表示用電源部13は、バッテリ電源ライン12を通じてバッテリ10と接続されている。表示用電源部13は、バッテリ10から供給される電力の電圧を約3ボルト(V)に変圧するDC−DCコンバータである。表示用電源部13によって約3Vに変圧された電力は、表示用電源ライン60を通じて、液晶表示部40の各構成に供給される。表示用電源部13による液晶表示部40への電力の供給は、MPU20によって制御される。
【0030】
制御用電源部15は、イグニッション電源ライン14を通じてバッテリ10と接続されている。イグニッション電源ライン14には、車両の運転者の操作によって、オン及びオフの切り替えられるイグニッションスイッチ11が設けられている。制御用電源部15は、バッテリ10から供給される電力の電圧を約5Vに変圧するDC−DCコンバータである。制御用電源部15によって約5Vに変圧された電力は、MPU20に供給される。
【0031】
MPU20は、各種の演算処理を行うプロセッサ、当該演算処理に用いられるプログラム等が格納されたフラッシュメモリ、演算の作業領域として機能するRAMを有している。加えて、MPU20は、通信インターフェース21、スイッチインターフェース23、及びイグニッション電源監視インターフェース27を有している。
【0032】
通信インターフェース21は、車載用のLocal Area Network(車内LAN)90に出力された信号に基づいて、情報を取得するインターフェースである。車内LAN90には、車両に搭載される複数の車載制御装置91が接続されている。車載制御装置91には、例えばエンジンコントロールコンピュータ(図1にはECU1と記載)、スキッドコントロールコンピュータ(図1にはECU2と記載)、ボデーコンピュータ(図1にはECU3と記載)が含まれる。この通信インターフェース21を通じて車載制御装置91から取得する信号に基づいて、MPU20は、液晶表示部40に表示させる画像を制御する。
【0033】
スイッチインターフェース23は、複数の車載スイッチ93の開閉状態を検知するためのインターフェースである。スイッチインターフェース23は、車両に搭載される複数の車載スイッチ93がそれぞれ接続されている複数のスイッチ入力部24を有している。スイッチ入力部24に接続される車載スイッチ93には、例えばドアの開閉を検知するドアスイッチ等が含まれる。このスイッチインターフェース23を通じて車載スイッチ93から取得する信号、例えばドアが開状態にある旨の信号等に基づいて、MPU20は、液晶表示部40に表示させる画像を制御する。
【0034】
イグニッション電源監視インターフェース27は、イグニッションスイッチ11と制御用電源部15との間においてイグニッション電源ライン14と接続されている。イグニッション電源監視インターフェース27は、接続されたイグニッション電源ライン14の電圧を監視することにより、イグニッションスイッチ11のオン及びオフの状態を検知する。
【0035】
MPU20には、消費電力の異なる複数の作動モードが予め設定されている。複数の作動モードのうちの一つは、液晶表示部40及び指針計器部50等を制御可能な通常動作モードである。複数の作動モードのうちの他の一つは、主にRAMの記憶内容の保持及び各インターフェース21,23,27を通じた情報の取得等が可能な通常動作モードよりも消費電力が少ない低電力動作モードである。尚、以下の説明において、通常動作モードを起動モードといい、低電力動作モードを休眠モードという。
【0036】
MPU20は、イグニッションスイッチ11がオン状態からオフ状態に切り替えられた旨の情報を、イグニッション電源監視インターフェース27を通じて取得することにより、起動モードから休眠モードに移行する。このように、MPU20は、イグニッションスイッチ11のオフ状態への切り替え情報を、車両用表示装置100の作動の停止を要求する停止要求として取得する。加えてMPU20は、イグニッションスイッチ11がオフ状態に切り替えられた後、さらに予め規定された表示終了条件が成立したことに基づいて、起動モードから休眠モードに移行する。この表示終了条件には、イグニッションスイッチ11がオフ状態に切り替えられてから所定の時間が経過したこと、車両のドアが開状態から閉状態にされた旨の信号をスイッチインターフェース23から取得したこと、及び通信インターフェース21を通じた車載制御装置91との通信が終了したこと、車両の燃料残量の算出が終了したこと等が含まれる。
【0037】
液晶表示部40は、情報を画像により表示する表示手段である。液晶表示部40は、画像を表示画面46に表示する表示器45、表示器45によって表示される画像を描画するGraphic Display Computer(GDC)41、グラフィック用のメモリ47、及び表示器45の表示画面46を照明するバックライト49等によって構成されている。表示器45、GDC41、及びメモリ47には、表示用電源ライン60を通じて電力が供給される。液晶表示部40は、供給される電力の遮断に先立って電源遮断処理(以下、「OFFシーケンス」という)の実施を要する。具体的には、表示器45、GDC41、及びメモリ47は、供給される電力の遮断に先立つOFFシーケンスの実施を、個々に要する。表示器45、GDC41、及びメモリ47は、それぞれ表示制御ライン34,31,35によってMPU20と接続されており、当該MPU20からの制御信号によって作動を制御される。例えば表示器45、GDC41、及びメモリ47は、OFFシーケンスの開始を要求する開始要求をMPU20から取得することにより、OFFシーケンスを開始する。さらに、GDC41は、表示制御ライン32,33によって表示器45及びメモリ47と接続されており、これら表示器45及びメモリ47を制御する。バックライト49は、イグニッション電源ライン14と接続されており、当該イグニッション電源ライン14を通じて照明のための電力の供給を受ける。バックライト49は、表示制御ライン36によってMPU20と接続されており、当該MPU20によって点灯を制御される。
【0038】
指針計器部50は、ムーブメントによって指針を回転させることにより、車両の情報を表示する表示手段である。指針計器部50には、例えばスピードメータ及びタコメータ等が含まれる。指針計器部50は、MPU20と接続されており、当該MPU20によってムーブメントの回転を制御される。
【0039】
インジケータ53は、予め規定された形状のアイコンを点灯させることにより、車両に係わる注意及び警告を運転者に通知する表示手段である。インジケータ53は、イグニッション電源ライン14と接続されており、当該イグニッション電源ライン14を通じて照明のための電力の供給を受ける。加えてインジケータ53は、MPU20と接続されており、当該MPU20によって点灯を制御される。
【0040】
以上の構成による車両用表示装置100において、MPU20が液晶表示部40に供給される電力を遮断した後、休眠モードに移行する処理を、図1〜図3に基づいて詳細に説明する。図2のフローチャートに示される休眠モード移行処理は、イグニッションスイッチ11がオン状態からオフ状態に切り替えられた旨の情報を停止要求としての取得することにより、MPU20によって開始される。
【0041】
S101では、イグニッションスイッチ11がオフ状態であるか否かを判定する。S101にて、イグニッションスイッチ11がオン状態に切り替えられた旨の情報を検知していた場合、オフ状態に再び切り替えられるまでS101の判定を繰り返す。一方、S101にて、イグニッションスイッチ11がオフ状態のままであると判定すると、S102に進む。
【0042】
S102では、車載制御装置91及び車載スイッチ93から取得する信号に基づいて、表示の継続を要求する表示要求の有無を判定する。具体的には、運転者に警告を要する情報を示す信号を車載制御装置91から通信インターフェース21を通じて取得している場合、及びドアが開状態にある旨の信号を車載スイッチ93からスイッチインターフェース23を通じて取得している場合等に、表示要求が有ると判定する。S102にて、表示要求の有る状態が継続していると判定した場合、表示要求が無くなるまでS102の判定を繰り返す。一方、S102にて、表示要求が無くなったと判定すると、S103に進む。
【0043】
S103では、S102にて表示要求が無くなったと判定したことに基づいて、OFFシーケンスの開始要求を液晶表示部40に出力する。具体的には、液晶表示部40のGDC41、表示器45、及びメモリ47に開始要求を個別に出力し、S104に進む。このS103にて出力される開始要求に基づいて、GDC41、表示器45、及びメモリ47は、OFFシーケンスを開始する。これらGDC41、表示器45、及びメモリ47は、開始要求に基づくOFFシーケンスを終了した後、このOFFシーケンスを終了した旨の終了情報を、MPU20に出力する。
【0044】
S104では、GDC41、表示器45、及びメモリ47のそれぞれから出力された終了情報に基づいて、OFFシーケンスが終了したか否かを各構成41,45,47の個々について判定する。S104にて、液晶表示部40の各構成41,45,47からの終了情報のうちで取得できていないものがある場合、OFFシーケンスを終了していない構成があると判定する。この場合、未取得の終了情報が取得されるまで、S104の判定を繰り返す。一方で、S104にて、全ての構成から終了情報を取得した場合、これらの終了情報を取得したことに基づいて、各構成におけるOFFシーケンスが終了したと判定し、S105に進む。
【0045】
S105では、S104にて各構成41,45,47のそれぞれにおいてOFFシーケンスが終了したと判定したことに基づいて、休眠モードへの移行に先立ち、表示用電源部13に液晶表示部40への電力供給を遮断する旨の遮断要求を出力し、S106に進む。これにより表示用電源部13は、GDC41、表示器45、及びメモリ47に表示用電源ライン60を通じて供給される電力を遮断する。
【0046】
S106では、上述したMPU20の表示終了条件が成立しているか否かを判定する。S106にて、例えばドアが開状態のままであったり車載制御装置91との通信を継続していたり等、表示終了条件が成立していないと判定した場合、表示終了条件の終了までS106の判定を繰り返す。一方で、S106にて、表示終了条件が成立したと判定した場合、S107に進む。そして、S107では、S106にて予め規定された表示終了条件が成立したことに基づいて、起動モードから休眠モードに移行し、休眠モード移行処理を終了する。
【0047】
以上の休眠モード移行処理によって車両用表示装置100における消費電力の低減が可能であることを、図3に示されるタイミングチャートに基づいて、詳しく説明する。
【0048】
時刻t1において、イグニッションスイッチ11がオン状態からオフ状態に切り替えられることにより(図3(c)参照)、MPU20は、車両用表示装置の停止を要求する停止要求を車両から取得する。すると、時刻t2にて、車載制御装置91及び車載スイッチ93から取得する信号に基づく表示要求が無くなる(図3(d)参照、図2 S102に相当)。これによりMPU20は、OFFシーケンスの開始要求を液晶表示部40の各構成41,45,47に個別に出力する(図2 S103に相当)。
【0049】
時刻t2にてMPU20から出力される開始要求に基づいて、GDC41、表示器45、及びメモリ47は、OFFシーケンスを実施する(図3(g)〜(i)参照)。時刻t3にて、各構成41,45,47におけるOFFシーケンスが終了すると、これら各構成41,45,47は、MPU20に終了情報を出力する。
【0050】
MPU20は、時刻t3にて各構成41,45,47のそれぞれから出力された終了情報を取得することにより、OFFシーケンスが終了したと判定して(図2 S104に相当)、表示用電源部13に遮断要求を出力する(図2 S105に相当)。これにより表示用電源部13は、時刻t4にて液晶表示部40の各構成41,45,47に供給される電力を遮断する(図3(f)参照)。この時刻t4の後、表示終了条件が成立したと判定される時刻t5にて(図2 S106に相当)、MPU20は、起動モードから休眠モードに移行する(図3(e)参照、図2 S107に相当)。
【0051】
ここまで説明した第一実施形態では、MPU20は、起動モードから休眠モードに移行する時刻t5よりも前の時刻t4にて、液晶表示部40への電力の供給を遮断するように表示用電源部13を制御する。故に、液晶表示部40の各構成41,45,47において時刻t4及びから時刻t5の間に消費される電力が、低減され得る。
【0052】
さらに、表示用電源部13によって電力の供給が遮断される時刻t4よりも前の時刻t3にて、液晶表示部40の各構成41,45,47は、OFFシーケンスを終了している。故に、表示用電源部13からの電力の供給が再び開始された際に、液晶表示部40の各構成41,45,47は、画像による表示を確実に開始し得る。
【0053】
したがって、車両用表示装置100は、液晶表示部40の正常な動作を確保しつつ、消費する電力を低減できる。
【0054】
加えて第一実施形態によれば、終了情報を取得したことに基づいてMPU20がOFFシーケンスの終了判定をするので、MPU20による終了判定の正確性は、高く維持され得る。以上により、表示用電源部13によって電力が遮断されるよりも前に、液晶表示部40の各構成41,45,47は、OFFシーケンスを確実に終了できる。これにより、電力の供給が再び開始される際には、液晶表示部40は、画像の表示をさらに確実に開始できる。したがって、消費電力を低減しつつ、液晶表示部40を正常に動作させる確実性を向上させた車両用表示装置100が、実現される。
【0055】
また第一実施形態によれば、停止要求を取得した後も、表示要求が有ると判定されているうちは、液晶表示部40の各構成41,45,47におけるOFFシーケンスは、開始され得ない。以上のより、イグニッションスイッチ11がオフ状態に切り替えられてから表示要求が無くなるまでの間において、車両用表示装置100は、液晶表示部40によって情報を画像により表示することができる。故に、液晶表示部40の正常な動作の確保と消費電力の低減とを図りつつ、さらにユーザビリティに優れた車両用表示装置100が、実現可能となる。
【0056】
さらに第一実施形態のように、OFFシーケンスの実施を個々に要する複数の構成41,45,47を液晶表示部40が有している形態では、MPU20は、各構成41,45,47におけるOFFシーケンスの終了判定に基づいて、電力の供給を遮断させる。以上により、電力の供給が再び開始された際に、各構成41,45,47は、それぞれの作動を確実に開始し得る。したがって、複数の構成41,45,47を有する液晶表示部40を備えていても、車両用表示装置100は、消費電力を低減しつつ、この液晶表示部40正常な動作を確保できる。
【0057】
また加えて第一実施形態では、予め規定された表示終了条件が成立しないと、停止要求を取得していても起動モードから休眠モードに移行できないように、MPU20は、設定されている。このような形態では、表示終了条件の成立までMPU20は休眠モードに移行できないので、車両用表示装置100によって消費される電力が増大し易くなる。
【0058】
しかし、上述したように、MPU20は、液晶表示部40におけるOFFシーケンスの終了を判定して、休眠モードへの移行する前であっても、当該液晶表示部40に供給される電力を遮断させることができる。このように、液晶表示部40の正常な動作を確保しつつ消費電力を低減する効果は、MPU20の休眠モードへの移行につき消費電力の増大し易い形態の車両用表示装置100において、特に有効なのである。
【0059】
尚、第一実施形態において、MPU20及び表示用電源部13が協働で特許請求の範囲に記載の「電源遮断部」に相当し、MPU20が特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「遮断処理要求部」、「終了判定部」、及び「要求判定部」に相当し、液晶表示部40が特許請求の範囲に記載の「表示手段」に相当し、GDC41が特許請求の範囲に記載の「描画部」に相当し、車載制御装置91及び車載スイッチ93が特許請求の判定に記載の「車載装置」に相当し、OFFシーケンスが特許請求の範囲に記載の「電源遮断処理」に相当し、起動モードが特許請求の範囲に記載の「通常動作モード」に相当し、休眠モードが特許請求の範囲に記載の「低電力動作モード」に相当する。
【0060】
(第二実施形態)
図4〜図6に示される本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態の車両用表示装置100において、MPU20は、開始要求に基づくOFFシーケンスが終了したか否かを、液晶表示部40の各構成41,45,47の個々について判定する。そしてMPU20は、液晶表示部40の各構成41,45,47のうちでOFFシーケンスが終了したと判定したものから順次、電力供給を遮断させる。以下、このような第二実施形態の車両用表示装置100の構成を、図4に基づいて詳細に説明する。
【0061】
第二実施形態における表示用電源ライン60には、電源スイッチ261〜263が設けられている。これら電源スイッチ261〜263は、例えばバイポーラトランジスタ及び電界効果トランジスタ等のスイッチング素子であって、ベース又はゲートに入力される制御信号に基づいて導通のオン及びオフの状態を切り替えることができる。
【0062】
電源スイッチ261(図4にはSW1と記載)は、表示用電源部13からGDC41に電力を供給する表示用電源ライン60aに設けられている。電源スイッチ261は、電源制御ライン237を通じてMPU20から入力される制御信号により、GDC41への電力供給のオン及びオフを切り替える。電源スイッチ262(図4にはSW2と記載)は、表示用電源部13から表示器45に電力を供給する表示用電源ライン60bに設けられている。電源スイッチ262は、電源制御ライン238を通じてMPU20から入力される制御信号により、表示器45への電力供給のオン及びオフを切り替える。電源スイッチ263(図4にはSW3と記載)は、表示用電源部13からメモリ47に電力を供給する表示用電源ライン60cに設けられている。電源スイッチ263は、電源制御ライン239を通じてMPU20から入力される制御信号により、メモリ47への電力供給のオン及びオフを切り替える。
【0063】
以上の構成において、MPU20が休眠モードに移行する処理を詳細に説明する。図5のフローチャートに示される休眠モード移行処理は、イグニッションスイッチ11がオン状態からオフ状態に切り替えられた旨の情報を停止要求としての取得することにより、MPU20によって開始される。
【0064】
S201〜S203では、第一実施形態のS101〜S103(図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。第二実施形態でも、S203の処理により出力された開始要求に基づき、GDC41、表示器45、及びメモリ47は、OFFシーケンスを終了させる。そして各構成41,45,47は、OFFシーケンスを終了したものから順次、表示制御ライン31,34,35を通じて終了情報をMPU20に出力する。
【0065】
S204では、各構成41,45,47のそれぞれから出力された終了情報に基づいて、各構成41,45,47の個々についてOFFシーケンスが終了したか否かを判定する。S204にて、各構成41,45,47のうちのいずれかから終了情報を取得すると、この終了情報の出力元の構成においてOFFシーケンスが終了したと判定し、S205に進む。S205では、S204にて取得した終了情報の出力元の構成につき、当該構成への電力供給のオン及びオフを切り替える電源スイッチに、電力供給を遮断する旨の制御信号を出力し、S206に進む。これにより、終了情報を出力した構成は、電力供給を遮断される。
【0066】
S206では、液晶表示部40の全ての構成41,45,47においてOFFシーケンスが終了したか否かを判定する。S206にて、全ての構成41,45,47におけるOFFシーケンスが終了したと判定した場合、S207に進む。一方で、S206にて、OFFシーケンスが終了していないと判定した場合、再びS204に戻る。以上のS204〜S206の処理が繰り返されることにより、OFFシーケンスを終了させた構成から順次、電力の供給が遮断される。
【0067】
S206にて、全ての構成におけるOFFシーケンスが終了したと判定された後のS207及びS208のでは、第一実施形態におけるS106及びS107(図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。具体的には、S207にて表示終了条件が成立したと判定することにより、S208にて、起動モードから休眠モードに移行し、休眠モード移行処理を終了する。
【0068】
以上の休眠モード移行処理によって車両用表示装置100における消費電力の低減が可能であることを、図6に示されるタイミングチャートに基づいて、詳しく説明する。尚、時刻t1及び時刻t2における車両用表示装置100の作動は、第一実施形態の時刻t1及び時刻t2の作動と実質的に同一であるため、説明を省略する。
【0069】
時刻t2にてMPU20から出力される開始要求に基づいて、GDC41、表示器45、及びメモリ47は、それぞれOFFシーケンスを実施する(図6(i)〜(k)参照)。時刻t3にて、OFFシーケンスを終了させた表示器45は、MPU20に終了情報を出力する。MPU20は、時刻t3にて表示器45から出力された終了情報を取得したことに基づいて、当該表示器45におけるOFFシーケンスが終了したと判定して(図5 S204に相当)、電源スイッチ262に制御信号を出力する(図5 S205に相当)。これにより電源スイッチ262は、時刻t4にて表示器45への電力の供給を遮断する(図6(f)参照)。
【0070】
次に、時刻t5にて、OFFシーケンスを終了させたGDC41は、MPU20に終了情報を出力する。MPU20は、時刻t5にてGDC41から出力された終了情報を取得したことに基づいて、当該GDC41におけるOFFシーケンスが終了したと判定して(図5 S204に相当)、電源スイッチ261に制御信号を出力する(図5 S205に相当)。これにより電源スイッチ261は、時刻t6にてGDC41への電力の供給を遮断する(図6(g)参照)。
【0071】
さらに、時刻t7にて、OFFシーケンスを終了させたメモリ47は、MPU20に終了情報を出力する。MPU20は、時刻t7にてメモリ47から出力された終了情報を取得したことに基づいて、当該メモリ47におけるOFFシーケンスが終了したと判定して(図5 S204に相当)、電源スイッチ263に制御信号を出力する(図5 S205に相当)。これにより電源スイッチ263は、時刻t8にてメモリ47への電力の供給を遮断する(図6(h)参照)。この時刻t8の後、表示終了条件が成立したと判定される時刻t9にて(図5 S207に相当)、MPU20は、起動モードから休眠モードに移行する(図6(e)参照、図5 S208に相当)。
【0072】
ここまで説明した第二実施形態では、MPU20は、起動モードから休眠モードに移行する時刻t9よりも前の各時刻t4,t6,t8にて、液晶表示部40の各構成41,45,47への電力の供給を遮断するように各電源スイッチ261〜263を順次制御する。故に、各構成41,45,47のうちOFFシーケンスを早く終了可能なものは、他の構成におけるOFFシーケンスの終了を待つことなく、電力の供給を遮断される。以上により、液晶表示部40の各構成41,45,47において、時刻t9までの間に消費される電力が、いっそう低減可能となる。
【0073】
さらに、液晶表示部40の各構成41,45,47は、各電源スイッチ261〜263によって電力供給が遮断される前の時刻にて、OFFシーケンスを終了している。故に、表示用電源部13からの電力の供給が再び開始された際に、液晶表示部40の各構成41,45,47は、画像による表示を確実に開始し得る。
【0074】
したがって、車両用表示装置100は、液晶表示部40の正常な動作を確保しつつ、消費する電力をさらに低減できる。
【0075】
(第三実施形態)
図7〜図10に示される本発明の第三実施形態は、第一実施形態の別の変形例である。第三実施形態の車両用表示装置100は、GDC41の機能及びMPU20の機能を一体的に備える制御部320aを備えている。以下、第三実施形態による車両用表示装置100の構成を図7及び図8に基づいて詳細に説明する。
【0076】
制御部320aは、通信インターフェース21及びスイッチインターフェース23等と接続されるMPU20と、表示器45及びメモリ47と接続されるGDC41とに加えて、MPU用電源回路315及びGDC用電源回路313をさらに有している。MPU20及びGDC41は、表示制御バス331によって互いに接続されており、相互に信号をやり取りすることができる。MPU20から出力される開始要求は、表示制御バス331を通じてGDC41に取得され、さらにGDC41から表示制御ライン34,35を通じて表示器45及びメモリ47に出力される。
【0077】
MPU用電源回路315は、制御用電源部15を通じて供給される約5Vの電力をMPU20に供給する。GDC用電源回路313は、表示用電源部13を通じて供給される約3Vの電力をGDC41に供給する。GDC用電源回路313は、電源制御ライン337によってMPU20と接続されている。GDC用電源回路313は、電源制御ライン337を通じてMPU20から入力される制御信号に基づいて、GDC41への電力供給のオン及びオフを切り替える。
【0078】
以上の構成において、MPU20が休眠モードに移行する処理を詳細に説明する。図9のフローチャートに示される休眠モード移行処理は、イグニッションスイッチ11がオン状態からオフ状態に切り替えられた旨の情報を停止要求としての取得することにより、MPU20によって開始される。
【0079】
S301〜S303では、第一実施形態のS101〜S103(図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。第三実施形態でも、S303の処理により出力されたOFFシーケンスの開始要求に基づき、GDC41、表示器45、及びメモリ47は、OFFシーケンスを実施する。
【0080】
S304では、GDC41におけるOFFシーケンスが終了したか否かを判定し、S305に進む。第三実施形態では、開始要求を出力した後、予め設定された処理時間が経過したことに基づいて、GDC41におけるOFFシーケンスが終了したと判定する。この処理時間は、GDC41がOFFシーケンスを処理するために要する時間に基づいて、当該時間よりもわずかに長くなるように、予め設定されている。予め設定された処理時間は、MPU20によって記憶されている。S303では、開始要求を出力すると共に、開始要求を出力してからの経過時間のカウンタによる計測を開始している。S304では、S303にてカウントの開始された時間が、予め記憶している処理時間を経過したことに基づいて、GDC41におけるOFFシーケンスが終了したと判定する。
【0081】
S305では、S304にてGDC41のOFFシーケンスが終了したと判定したことに基づいて、休眠モードへの移行に先立ち、GDC41への電力供給を遮断する旨の制御信号をGDC用電源回路313に出力し、S306に進む。これによりGDC用電源回路313は、GDC41への電力の供給を遮断する。
【0082】
S306及びS307のでは、第一実施形態におけるS106及びS107(図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。具体的には、S306にて表示終了条件が成立したと判定することにより、S307にて、起動モードから休眠モードに移行し、休眠モード移行処理を終了する。
【0083】
以上の休眠モード移行処理によって車両用表示装置100における消費電力の低減が可能であることを、図10に示されるタイミングチャートに基づいて、詳しく説明する。尚、時刻t1における車両用表示装置100の作動は、第一実施形態の時刻t1の作動と実質的に同一であるため、説明を省略する。
【0084】
時刻t2において表示要求が無くなることにより(図10(d)参照、図9 S302に相当)、MPU20は、OFFシーケンスの開始要求をGDC41に出力すると共に、開始要求出力後の経過時間の計測を開始する。MPU20から出力された開始要求に基づいて、GDC41、表示器45、及びメモリ47は、それぞれOFFシーケンスを実施する(図10(g),(i),(j)参照)。GDC41は、時刻t3にて、OFFシーケンスを終了させる。
【0085】
MPU20は、開始要求をGDC41に出力した後、予め設定された処理時間が時刻t4にて経過したことに基づいて、OFFシーケンスが終了したと判定する。これによりMPU20は、GDC用電源回路313に制御信号を出力する(図9 S305に相当)。以上により、GDC用電源回路313は、時刻t4にて表示器45への電力の供給を遮断する(図10(h)参照)。
【0086】
MPU20は、この時刻t4の後、表示終了条件が成立したと判定する時刻t5にて(図9 S306に相当)、起動モードから休眠モードに移行する(図10(e)参照、図9 S307に相当)。これにより、表示用電源部13は、表示用電源ライン60を通じての表示器45及びメモリ47への電力の供給を遮断する(図10(f)参照)。
【0087】
ここまで説明した第三実施形態のように、MPU20及びGDC41が一体的に構成される形態であっても、休眠モードへの移行前にて、GDC用電源回路313からGDC41への電力供給を遮断することにより、GDC41における消費電力は低減可能となる。さらに、表示用電源部13によって電力の供給が遮断される時刻t4よりも前の時刻t3にて、GDC41はOFFシーケンスを終了している。さらに、表示器45及びメモリ47は、表示用電源部13からの電力供給を遮断させる時刻t5よりも前の時刻にて、OFFシーケンスを終了している。故に、表示用電源部13からの電力の供給が再び開始された際に、液晶表示部40の各構成41,45,47は、画像による表示を確実に開始し得る。したがって、車両用表示装置100は、液晶表示部40の正常な動作を確保しつつ、消費する電力を低減できる。
【0088】
加えて第三実施形態では、開始要求を出力した後に処理時間が経過したことに基づいて、MPU20は、OFFシーケンスの終了判定をする。故に、処理時間を適切に設定することによって、GDC41への電力供給の遮断は、OFFシーケンスの終了(時刻t3)から休眠モードへの移行(時刻t5)までの間に、確実に実施され得る。以上により、GDC41を有する液晶表示部40において消費される電力、ひいては車両用表示装置100において消費される電力は、さらに確実に低減可能となる。
【0089】
尚、第三実施形態において、MPU20及びGDC用電源回路313が協働で特許請求の範囲に記載の「電源遮断部」に相当する。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0091】
上記第一,第三実施形態において、各構成41,45,47におけるOFFシーケンスは、同時に終了するように示されていた。しかし、第二実施形態のように、液晶表示部の各構成にてOFFシーケンスの終了する時刻は、互いに異なっていてもよい。加えて、上記第二実施形態では、表示器、GDC、メモリの順にOFFシーケンスは終了していた。しかし、OFFシーケンスを終了する順序は、上記の順でなくてもよい。
【0092】
上記実施形態において、イグニッションスイッチ11がオフ状態にされた後、OFFシーケンスの開始要求を出力するまでの間、MPU20は、画像による表示を停止させる要求を液晶表示部40にするのがよい。これにより、液晶表示部40は、表示を一旦停止しつつ、MPU20に入力される情報に応じて表示を速やかに再開し得る。また、液晶表示部の各構成にてOFFシーケンスを実施途中に表示要求が生じた場合には、MPUは、OFFシーケンスを中断し、ONシーケンスを開始する要求を各構成に出力するのがよい。
【0093】
上記第一,第二実施形態において、MPU20は、液晶表示部40の各構成41,45,47から取得した終了情報に基づいて、各構成におけるOFFシーケンスの終了を判定していた。また、上記第三実施形態において、MPU20は、開始要求の出力後に予め設定された処理時間が経過したことに基づいて、GDC41におけるOFFシーケンスの終了を判定していた。これらのように、OFFシーケンスの終了判定の方法は、適宜変更されてよい。さらに、液晶表示部の各構成から出力される終了情報と、開始要求の出力後の経過時間とが組み合わされて、OFFシーケンスの終了判定に用いられてもよい。具体的には、MPUは、予め設定された処理時間の経過する前に終了情報を取得した場合には、当該終了情報に基づいてOFFシーケンスの終了判定を行う。一方で、予め設定された処理時間が経過した場合には、MPUは、当該処理時間の経過に基づいてOFFシーケンスの終了判定を行う。以上のような判定により、MPUは、液晶表示部の各構成にて消費される電力をさらに確実に低減し得る。
【0094】
上記実施形態において、イグニッションスイッチ11がオン状態からオフ状態に切り替えられた旨の情報が、停止要求として用いられていた。しかし、車両から取得する種々の情報を、停止要求として用いることが可能である。例えば、内燃機関と電動機との混合動力によって走行する所謂ハイブリッド車両、及び電気自動車等においては、車両の電源がオン状態からオフ状態に切り替えられた旨の情報を、停止要求として用いてよい。
【0095】
上記実施形態では、GDC41及び表示器45等を有する液晶表示部40が、特許請求の範囲に記載の「表示手段」として用いられていた。しかし、画像による情報の表示が可能であって、OFFシーケンスの実施を有する種々の表示装置が、「表示手段」として使用可能である。例えば、「表示手段」は、車両のウィンドウシールドに画像を投影する所謂ヘッドアップディスプレイ装置のプロジェクタ等であってもよい。また、「表示手段」は、複数の表示器及び複数のGDCを有していてもよい。
【0096】
上記実施形態では、MPU20は、停止要求を取得し且つ表示要求が無くなった後に、液晶表示部40の各構成41,45,47にOFFシーケンスの開始要求を出力していた。しかし、MPUは、停止要求を取得したことをもって、OFFシーケンスの開始要求を出力するように設定されていてもよい。又は、MPUは、停止要求を取得した後に予め設定された猶予時間が経過したことに基づいて、OFFシーケンスの開始要求を出力するように設定されていてもよい。
【0097】
上記実施形態では、MPU20によって所定のプログラムが実施されることにより、特許請求の範囲に記載の「制御手段」、「遮断処理要求部」、「終了判定部」、「電源遮断部」、及び「要求判定部」といった機能が、果たされていた。しかし、これらの手段に相当する機能は、複数の回路又は装置によって果たされてもよい。加えて、これらの回路又は装置は、上記実施形態のMPU20のようなプログラムの実施によって所定の機能を果たす構成であってもよく、又はプログラムによらないで所定の機能を果たす構成であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 バッテリ、11 イグニッションスイッチ、12 バッテリ電源ライン、13 表示用電源部(電源遮断部)、313 GDC用電源回路(電源遮断部)、14 イグニッション電源ライン、15 制御用電源部、315 MPU用電源回路、320a 制御部、20 MPU(制御手段,電源遮断部,遮断処理要求部,終了判定部,要求判定部)、21 通信インターフェース、23 スイッチインターフェース、24 スイッチ入力部、27 イグニッション電源監視インターフェース、31〜36 表示制御ライン、331 表示制御バス、237〜239,337 電源制御ライン、40 液晶表示部(表示手段)、41 GDC(描画部)、45 表示器、46 表示画面、47 メモリ、49 バックライト、50 指針計器部、53 インジケータ、60,60a,60b,60c 表示用電源ライン、261〜263 電源スイッチ、90 車内LAN、91 車載制御装置、93 車載スイッチ、100 車両用表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、前記車両の情報を表示する車両用表示装置であって、
前記情報を画像により表示し、供給される電力の遮断に先立って電源遮断処理の実施を要する表示手段と、
前記表示手段を制御可能な通常動作モード及び前記通常動作モードよりも消費電力の少ない低電力動作モードが予め設定され、前記車両用表示装置の作動の停止を要求する停止要求を前記車両から取得することにより、前記通常動作モードから前記低電力動作モードに移行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記停止要求を取得することにより、前記電源遮断処理の開始を要求する開始要求を前記表示手段に出力する遮断処理要求部と、
前記表示手段にて実施された前記開始要求に基づく前記電源遮断処理が終了したか否かを判定する終了判定部と、
前記終了判定部によって前記電源遮断処理が終了したと判定されたことに基づいて、前記低電力動作モードへの移行に先立ち、前記表示手段に供給される電力を遮断する電源遮断部と、
を有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記遮断処理要求部からの前記開始要求に基づく前記電源遮断処理を終了した後、この電源遮断処理を終了した旨の終了情報を前記終了判定部に出力し、
前記終了判定部は、前記表示手段から前記終了情報を取得したことに基づいて、前記電源遮断処理が終了したと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記終了判定部は、前記遮断処理要求部が前記開始要求を前記表示手段に出力した後、予め設定された処理時間が経過したことに基づいて、前記電源遮断処理が終了したと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記車両に搭載される車載装置から取得する信号に基づいて、表示の継続を要求する表示要求の有無を判定する要求判定部、をさらに有し、
前記遮断処理要求部は、前記停止要求を取得した後、前記要求判定部によって前記表示要求が無くなったと判定されたことに基づいて、前記開始要求を前記表示手段に出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記画像を表示画面に表示する表示器、及び前記表示器によって表示される前記画像を描画する描画部、を有し、
前記表示器及び前記描画部は、供給される電力の遮断に先立つ前記電源遮断処理の実施を個々に要し、
前記遮断処理要求部は、前記表示器及び前記描画部に前記開始要求を個別に出力し、
前記終了判定部は、前記開始要求に基づく前記電源遮断処理が終了したか否かを、前記表示器及び前記描画部の個々について判定し、
前記電源遮断部は、前記表示器及び前記描画部のそれぞれにおいて前記電源遮断処理が終了したと終了判定部により判定されたことに基づいて、前記低電力動作モードへの移行に先立ち、これら表示器及び描画部に供給される電力を遮断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記画像を表示画面に表示する表示器、及び前記表示器によって表示される前記画像を描画する描画部、を有し、
前記表示器及び前記描画部は、供給される電力の遮断に先立つ前記電源遮断処理の実施を個々に要し、
前記遮断処理要求部は、前記表示器及び前記描画部に前記開始要求を個別に出力し、
前記終了判定部は、前記開始要求に基づく前記電源遮断処理が終了したか否かを、前記表示器及び前記描画部の個々について判定し、
前記電源遮断部は、前記低電力動作モードへの移行に先立ち、前記表示器及び前記描画部のうち前記電源遮断処理が終了したと前記終了判定部により判定されたものから順次、供給される電力を遮断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記停止要求を前記車両から取得した後、予め規定された表示終了条件が成立したことに基づいて、前記通常動作モードから前記低電力動作モードに移行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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