説明

車両用表示装置

【課題】車外の運転者の死角に存在する注意対象物を、処理負荷やコストができるだけ少ない形で、その存在位置や危険度を、よりすばやく、より直感的に察知させることができる車両用表示装置を提供することにある。
【解決手段】道路上の停止位置201を特定し、車両100がその停止位置201に到達したときに、その停止位置201において移動体500を検出する。そして、当該到達時において、その停止位置201の手前で撮影した撮影画像501を表示装置13に表示するとともに、その撮影画像501上の該移動体500の存在位置に注意喚起用画像5を重畳表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車外前方領域を撮影して表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前方をカメラで撮影し、その撮影画像を所定の表示部に表示することにより運転を支援する技術はすでに開発されている。その撮影画像の表示部としては、例えば車両のナビ画面などを利用することができる(特許文献1)。こうした運転支援技術においては、単純に車両前方の映像を表示するだけではなく、その映像の中で運転者がすばやく、移動体等の注意対象を察知できるようにすることが重要である。特に、車両の運転者の死角に存在する注意対象については、よりすばやく、より直感的に察知できることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−165087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の場合、注意対象となる移動体の検出は可能であっても、移動体までの距離や位置を高精度に検出することが難しく、検出された移動体の危険度を運転者に直感的に認識させることは困難であった。
【0005】
また、車両前方の映像を用いる場合、その映像の中で、車両前方左右の死角領域の移動体の存在を知らせることは可能ではあるが、存在だけではなく、その存在位置や危険度などまで知らせることは難しい。一般に、車両前方を表示する目的で映し出される車両前方映像の撮影範囲には、車両前方左右に存在する運転者の死角領域全てが含まれているわけではないから、その映像内において、死角領域に存在する移動体をその存在位置に表示させるという方法は有効な方法とは言えない。
【0006】
本発明の課題は、車外の運転者の死角に存在する注意対象物を、処理負荷やコストができるだけ少ない形で、その存在位置や危険度を、よりすばやく、より直感的に察知させることが可能な車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用表示装置は、
車両の予め定められた車外前方領域を撮影する撮影手段と、その撮影画像を運転者に視認可能な形で表示する表示手段と、を備える車両用表示装置であって、
車両の進行方向の道路上において予め定められた停止位置を特定する停止位置特定手段と、
特定された停止位置への車両の到達を特定する停止位置到達特定手段と、
特定された停止位置よりも車両の進行方向手前側となる予め定められた停止手前位置を特定する停止手前位置特定手段と、
撮影手段を、少なくとも車両が停止手前位置に達した時に撮影を実行しているように制御する撮影制御手段と、
車両の車外前方の左右それぞれに存在する運転者の死角領域において移動体を検出する移動体検出手段と、
停止位置到達特定手段により停止位置への車両の到達が特定されたときに移動体検出手段により移動体が検出された場合に、表示手段において、当該到達の直前に通過した停止手前位置にて撮影手段により撮影された撮影画像を表示させる一方で、当該撮影画像上において、検出された当該移動体の存在位置を特定し、特定された存在位置に予め定められた注意喚起用画像を重ね表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、道路上の交差点や停止線といった所定の停止位置(例えば停止線や交差点の手前位置)に車両が到達した時に、その停止位置に到達する直前に撮影された車両前方画像が表示される。車両が停止位置に到達する直前に撮影された車両前方画像とは、その後到達する予定の停止位置付近を引きで撮影した画像、即ちその停止位置を遠目から撮影した画像であり、これにはその停止位置の周辺が広く映し出されているため、停止位置周辺の状況を直感的に把握しやすい。その上で、車両がその停止位置に到達すると、注意喚起対象である移動体の検出が開始され、移動体が検出された際には、その停止位置の到達直前に撮影された撮影画像が表示されるとともに、その撮影画像上における移動体が存在する位置に、注意喚起用の画像が重ね表示される。このため、停止位置に到達した車両において、その重ね表示がなされた画像から、注意すべき移動体の存在位置を運転者が把握しやすい。なお、本発明における重ね表示(重畳表示)とは、実際に重ねた表示でなくとも、2つの画像が表示されて重なって見える形の表示であればよい。
【0009】
また、停止位置は、道路上の停止線(一時停止線)や一時停止の看板等の標識、さらには交差点(例えば停止線の無い交差点)等の手前となる、車両の所定の一時停止位置のことである。
【0010】
また、本発明の表示手段において、停止位置特定手段により特定された停止位置における車両の停止を特定する停止特定手段を備え、表示制御手段は、停止特定手段により停止位置での車両の停止が特定されたときに移動体検出手段により移動体が検出された場合に、表示手段において、当該停止の直前に通過した停止手前位置にて撮影手段により撮影された撮影画像を表示させる一方で、当該撮影画像上において、検出された当該移動体の存在位置を特定し、特定された存在位置に予め定められた注意喚起用画像を重ね表示させるものとすることができる。上記構成によれば、停止位置到達特定手段により道路上の交差点や停止線といった所定の停止位置への車両の到達が特定され、さらにそこでの車両の停止が特定された時に、移動体の存在及びその存在位置を検出するから、高精度での移動体検出が可能となる。
【0011】
本発明における撮影手段は、車外前方領域の動画映像を撮影するものであり、表示制御手段は、撮影手段により撮影された動画映像から、特定された停止手前位置に到達した時点の映像を静止画像としてキャプチャーするものであり、停止位置での車両の停止が特定された場合に、当該静止画像を表示手段において表示させるものとすることができる。この構成によれば、動画映像のキャプチャーにより表示用の静止画像を容易に取得することができる。
【0012】
本発明における表示手段は、運転者の正面側に表示面を有する車室内の表示手段とすることができる。車両前方の画像を表示するものであるため、その表示面が運転者の前方、特に運転者の正面に位置している方が、その画像が車両前方を表示していることを直感的に把握しやすい。
【0013】
例えば本発明の表示手段は、その表示面を、運転者の正面に位置する車両用メーター表示装置の表示面の内側に設けられた表示装置や、車室内に配置された表示装置の表示面から出射された光を、車両のウインドシールド面に反射させ、その反射像を運転者の正面にて視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置等とすることができる。
【0014】
本発明における停止位置特定手段は、停止位置として道路上に描画された停止線を検出する停止線検出手段とすることができる。この構成によれば、例えばレーザーレーダを用いた周知の白線検出技術により、道路上の停止線(白線)を正確に把握することができるから、車両に前方から停止線が到来するとその都度確実に、その停止線を特定できる。本発明の撮影手段による撮影画像から停止線(白線)を検出する構成とすることもできる。
【0015】
本発明における停止位置特定手段は、車両の進行方向の道路上にて交差点を特定するとともに、特定された交差点の手前位置を停止位置として特定する手段とすることができる。この構成によれば、ナビゲーション装置などに予め登録・記憶されている道路上の各種の交差点情報を利用し、車両に前方から交差点が到来するとその都度、確実に、その交差点を特定できる。
【0016】
本発明における停止手前位置特定手段は、車両の停止位置までの距離が予め定められた基準停止前距離となった場合を、停止手前位置として特定するように構成できる。本発明において表示手段に表示される撮影画像は、停止位置周辺を引きで撮影した画像、即ち、停止位置を遠目から撮影した画像であるから、距離に基づいて撮影画像がチョイスされることで、停止位置周辺が確実に映し出される画像を取得・表示することが可能となる。
【0017】
本発明における停止手前位置特定手段は、車両の車速と、車両の停止位置までの距離とに基づいて推定される、車両が停止位置に到達する到達予想時間が予め定められた基準停止前時間となった場合を、停止手前位置として特定してもよい。
【0018】
本発明においては、移動体と車両との距離を特定する距離特定手段を備えて構成することができ、表示制御手段は、特定された移動体と車両との距離に応じて、注意喚起用画像の表示状態を変化させるものとすることができる。この構成によれば、車外に存在する移動体への注意レベルを、車両と移動体との距離によって特定することができる。つまり、移動体が車両に近いほどがその移動体の注意レベルが高いとし、その注意レベルに応じた表示を行うことができる。これにより、運転者は、移動体の注意レベルをよりすばやく察知することができる。また、例えばその注意レベルが高いほど、注意喚起用の表示を強調して行うようにすることで、より注意レベルが高い移動体ほど運転者が察知しやすくなる。
【0019】
本発明における表示制御手段は、特定された移動体と車両との距離に応じて、注意喚起用画像の表示色を変化させるとすることができる。例えば、注意喚起用の表示を、特定された移動体と車両との距離が予め定められた基準距離よりも近い場合を赤色、該基準距離よりも近くない場合を黄色にて行うようにしてもよい。また、本発明の表示制御手段は、注意喚起用の表示を、特定された移動体と車両との距離が予め定められた基準距離よりも近い場合を常時表示、該基準距離よりも近くない場合を点滅表示にて行わせてもよいし、これら表示状態を組み合わせて行ってもよい。このような表示状態の違いによって、移動体と車両との距離、即ち移動体に対する注意レベルの高低を、より直感的に把握することが可能となる。
【0020】
本発明における移動体検出手段は、予め定められた検出波を送出し、その反射波の受信に基づいて移動体を検出するものとすることができ、距離特定手段は、その検出波の送信から反射波の受信までの時間に基づいて、移動体との距離を算出するものとできる。この構成によれば、上記検出波を利用する形で、移動体の検出と、車両−移動体間距離の算出との双方が可能となるため、効率的で低コストな構成となる。
【0021】
また、本発明における移動体検出手段はレーザーレーダとすることができる。カメラによる撮影画像を解析して距離を検出する、ミリ波を用いて距離を検出するといった様々な距離検出方法が存在するが、レーザーレーダが採用されることで、これらよりも正確な距離検出が可能となる。
【0022】
また、本発明の表示制御手段にて行われる移動体の存在の特定も、レーザーレーダの検出結果に基づいて行うことが可能である。指向性の高いレーザー光(レーザー波)を、検出エリア内を端から端まで走査する形でしたり、検出エリア内において複数方向に同時に照射することにより、その検出結果から、移動体を検出するだけでなく、検出した移動体の位置も特定することができる。このレーザーレーダは、上記移動体検出手段のレーザーレーダとしても兼用することができるから、全体の構成を簡略化することができる。
【0023】
本発明においては、移動体の種別を判別する移動体判別手段を備えて構成できる。この場合、本発明の表示制御手段は、判別された移動体の種別に応じて、注意喚起用の表示の表示状態が異なるようにすることができる。この構成によれば、どのような種別の移動体が死角に存在しているかを把握できるから、その移動体に対する注意レベルを直感的に把握することができる。
【0024】
また、この場合、本発明の表示制御手段は、注意喚起用の表示として、判別された移動体の種別を視認可能(識別可能)な予め定められた移動体種別視認画像(移動体種別識別画像)を表示させるよう構成できる。これにより、注意喚起用の表示として表示される図形画像の形状から、移動体の種別を直感的に把握することができる。
【0025】
また、本発明の表示制御手段は、上記移動体種別視認画像を点滅表示させるように構成できる。これにより、移動体種別視認画像が強調的に表示されるから、移動体の認識をよりすばやく行うことができる。
【0026】
本発明においては、停止位置到達特定手段により停止位置に車両が到達したときに撮影手段により撮影された撮影画像を、注意喚起用画像を重畳させる表示用画像として取得する表示用画像取得手段と、移動体検出手段により検出された移動体の存在位置を、特定された当該表示用画像上において特定する移動体位置特定手段と、を備え、表示制御手段は、表示手段において、表示用画像特定手段により特定された表示用画像を表示させるとともに、当該表示用画像上の、移動体位置特定手段により特定された存在位置に、注意喚起用画像を表示させるよう構成できる。
【0027】
本発明における表示制御手段は、移動体検出手段により移動体が非検出とされた場合に、撮影画像及び注意喚起用画像の表示を禁止するように構成できる。この構成によれば、注意対象となる移動体が存在していない時に、無駄な表示処理を省略することで、処理負担を軽減できる。さらに、表示用画像特定手段は、移動体検出手段により移動体が非検出とされた場合、表示用画像の特定を禁止するようにしてもよい。この構成によれば、表示用画像の無意味な特定(キャプチャー)処理を省略することができ、処理負担を軽減できる。
【0028】
本発明においては、車両の車速を検出する車速検出手段を備えて構成することができ、この場合、表示制御手段は、特定された停止手前位置にて、検出された車速が予め定められた基準速度を下回った場合に、表示手段において表示用画像を表示させるように構成できる。本発明は、車両停止時において、運転者に注意対象となる移動体を直感的にかつ素早く認識させるものであるから、上記構成のように、走行時の無駄な表示処理を省略することで、処理負担を軽減できる。さらに、表示用画像特定手段は、特定された停止手前位置にて、検出された車速が予め定められた基準速度を下回った場合に、表示用画像を特定するようにしてもよい。この構成によれば、走行中においては、表示用画像の準備処理が省略されるから、処理負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態である車両用表示装置の構成を簡略的に示すブロック図。
【図2】HUD表示装置にて移動体注意喚起表示を行う実施形態の車室内内観図。
【図3】図2の表示装置の構成を簡略的に説明するための車室内模式図。
【図4】移動体注意喚起表示を実行するメイン処理の流れを示すフローチャート。
【図5】移動体注意喚起表示処理の流れを示すフローチャート。
【図6】図1の車両用表示装置のカメラによる停止手前位置での撮影を説明するための模式図。
【図7】図5の状態で撮影された画像の一例。
【図8】図1の車両用表示装置の移動体検出部による移動体検出を説明するための模式図。
【図9】図1の車両用表示装置の移動体検出部の構造を簡略的に示した模式図。
【図10】図9の移動体検出部による移動体の存在位置の特定方法を説明する図。
【図11】図9の移動体検出部による移動体種別の特定方法を説明する図。
【図12】図7の撮影画像上に注意喚起用画像を重畳表示した第一の表示例。
【図13】図7の撮影画像上に注意喚起用画像を重畳表示した第二の表示例。
【図14】図5の移動体注意喚起表示処理の第一の変形例を示すフローチャート。
【図15】図5の移動体注意喚起表示処理の第二の変形例を示すフローチャート。
【図16】図4のメイン処理の変形例を示すフローチャート。
【図17】図16において実施される移動体注意喚起表示処理を示すフローチャート。
【図18】メーター表示装置にて移動体注意喚起表示を行う実施形態の車室内内観図。
【図19】図18の表示装置の構成を簡略的に説明するための車室内模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の車両用表示装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態である車両用表示装置1の構成を簡略的に示すブロック図である。図1の実施形態における車両用表示装置1は、車両(ここでは自動車)100の予め定められた車外前方領域110を撮影するカメラ(撮影手段)11と、その撮影画像を運転者3Dに視認可能な形で表示する表示装置(表示手段)13と、車両100の車外前方の左右それぞれに存在する運転者3Dの死角領域において移動体500を検出する移動体検出部(移動体検出手段)12と、車両100の進行方向の道路上において予め定められた停止位置を検出するための停止位置検出部14と、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置17と、それらが接続される制御部(撮影制御手段及び表示制御手段)10と、を備えて構成される。
【0032】
なお、本実施形態における停止位置は、道路上に存在する停止位置情報に基づいて定められる所定位置であり、ここでは道路上に描画された停止線(白線)の位置を基準として、車両前端がその停止線に近接しつつもその停止線を越えないような、停止線の手前の位置である。
【0033】
表示装置13は、運転者3Dにより視認可能に配置されるものであり、ここでは運転者3Dの正面側にて表示がなされる表示装置13である。本実施形態の表示装置13は、図2及び図3に示すように、液晶表示装置等の表示面から出射された光を、車両100のウインドシールド(フロントガラス)面に反射させ、その反射像を運転者3Dの正面にて視認させる車両用ヘッドアップディスプレイ装置13Hであり、本体部である液晶表示装置が、ウインドシールド4WSの下側から車両100の内側へ延出するインストルメントパネル4IPの内部に配設されており、表示画像を映し出した液晶ディスプレイに対し光源であるバックライトから光が照射されると、液晶ディスプレイを透過した光がウインドシールド4WSに入射し、運転席4Dに着座した運転者3Dの目に向けて反射され、これにより表示画像が虚像13Vとして運転者3Dに捕らえられる。
【0034】
なお、表示装置13は、図18及び図19に示すように、車速やエンジン回転数の表示部となるメーター表示面13Nが運転者3Dの正面に位置するとともに、そのメーター表示面13N内に別途表示面13Lが設けられた車両用メーター表示装置13Mとすることもできる。
【0035】
カメラ11は、車外前方領域110の動画映像を撮影するものである。制御部(撮影制御手段)10により、少なくとも車両100が後述する停止手前位置に達した時に撮影を実行しているように制御される。本実施形態においては、図6に示すように、車両100の車外前方の固定領域110が撮影範囲となるように固定設置されており、車両100のイグニッションスイッチ(IGスイッチ)16がONに操作されるに伴い動画撮影を開始し、OFFに操作されるに伴い動画撮影を終了する。撮影された動画は、記憶装置17に設けられた所定記憶領域(車両前方映像記憶部)に記憶・蓄積され、一定期間の間、記憶保持される。なお、本実施形態のカメラ11は、図6に示すように、車両左右方向における運転者3Dの位置と同じ位置に固定設置され、運転者3Dの正面が撮影されるように配置されている。
【0036】
移動体検出部12(12R,12L)は、各々の検出エリアが運転者3Dの死角領域を含むように車両100に対し設けられる。本実施形態においては、運転者3Dよりも前側に位置する前側死角領域120において存在する移動体(ここでは歩行者、二輪車、自動車等)500を検出できるよう、カメラ11の撮影範囲の左右両側に位置する、車外左右のそれぞれの前側死角領域120R,120Lを検出エリアに含む形で、移動体検出部12R,12Lがそれぞれ設けられている。なお、ここでの前側死角領域120R,120Lは、車両前端部の左右端位置を中心に、車両左右方向に延びるラインから車両前方側に20度をなす角度範囲とされている。また、ここでの移動体検出部12(12R,12L)の車外左右のそれぞれの検出範囲は、カメラ11の撮影範囲110の左右両端側が含まれる形で設けられている。
【0037】
なお、本実施形態の移動体検出部12(12R,12L)は、図9に示すように、予め定められた検出波を送出し、その反射波の受信の有無に基づいて移動体500を検出するものである。また、検出波を送出してからその反射波を受信するまでの時間に基づいて、移動体500までの距離を算出することも可能である。
【0038】
また、本実施形態の移動体検出部12(12R,12L)は、図10に示すように、送出する検出波を、検出エリア内を端から端(検出範囲の車両前方側端位置から後方側端位置)まで走査するように検出部12を回転駆動部(モータ)12Mによって回転駆動させつつ送出を繰り返すことにより、それらの反射波の受信結果から、移動体500の有無及びその距離だけでなく、検出した移動体500の位置も特定することができる。
【0039】
さらに、本実施形態の移動体検出部12(12R,12L)は、図11に示すように、反射波の受信結果から、移動体500の種別を特定することもできる。即ち、移動体検出部12は、図9に示すように、検出波の反射波を受信する受信面12Aを、予め複数の受信セル12aを敷き詰める形で構成して、各々の受信セル12aにおいて受信した反射波の各波形情報を制御部10に送信し、制御部10において、各々の受信セルにおける反射波の受信強度(受信波の振幅)を特定する。これにより、制御部10は、検出波が送信された後、図11の右側に示すように、各受信セル12aにおける反射波の受信強度の分布を得ることができる。図11の場合、縦横に配列された各マスが受信面12Aに敷き詰められる各受信セル12aに対応しており、マス内のドットの密度が高いほど、対応する受信セル12aにおける反射波の受信強度が高いことを示している。移動体500に反射した反射波は、その移動体500の形状に応じて反射方向が変わるため、各受信セル12aにおける反射波の受信強度の分布は、図11に示すように、移動体500の種別に応じた特有の分布パターンを有したものとなる。そのため、制御部10又は記憶装置17に、移動体500の各種種別に対応する反射波の受信強度の分布パターンをモデル情報として予め記憶しておき、検出波を送信した後に反射波を受信するに伴い、制御部10は、各受信セル12aにおける反射波の受信強度の分布を特定するとともに、その受信強度の分布が予め定められた基準レベル以上で一致する分布パターンを、上記モデル情報を参照する形で特定して、基準レベル以上で一致する分布パターンが特定された場合には、検出された移動体500を、その分布パターンに対応する種別の移動体500であると特定する。
【0040】
なお、ここでの移動体検出部12(12R,12L)は、特定の移動体500を検出できるものであればよく、検出波としてミリ波やレーダー波を用いるものでもよいが、ここでは検出波として指向性の高いレーザー光を出力しその反射光を受光するレーザーレーダ12R,12Lであり、車両前端のバンパー部の左右にそれぞれ設けられている。
【0041】
停止位置検出部14は、車両100の進行方向の道路上において予め定められた停止位置を特定するためのものであり、本実施形態においては車両100の前方(進行方向)にレーザー光(レーザー波)を送出するレーザーレーダが用いられている。制御部10は、周知の白線検出技術を用いることにより、レーザーレーダの検出結果(反射波の受信結果)から道路上に描画された白線領域を特定することができ、その検出結果から、停止基準位置である停止線201を特定し、その停止線201に車両前端が近接する位置を車両100の停止位置として特定する(停止位置特定手段)。なお、車両前方を撮影するカメラ(撮影装置)の撮影画像に対するパターンマッチングにより停止線201を検出する構成でもよい。この場合のカメラは、上述のカメラ11としてもよい。
【0042】
制御部10は、周知のCPU,ROM,RAM等を備える通常のコンピュータとして構成される制御手段であり、上述の他にも、車両100の速度(車速)を検出する車速センサ(車速検出手段)15と、イグニッションスイッチ16と接続する形で構成されるとともに、車載LAN3を介してナビゲーション装置2と接続されている。
【0043】
ナビゲーション装置2は、位置検出器21、表示装置(液晶ディスプレイ等)22、音声出力部(音声合成回路及びスピーカ)23、操作入力部(メカニカルスイッチ、タッチスイッチ、リモコン、音声入力部等)24、及び記憶装置(ハードディスクドライブ等)25が,制御部20と接続する形で構成される。
【0044】
位置検出器1は、車両100の現在位置を特定する現在位置特定手段であり、周知の地磁気センサ,車両100の回転角速度を検出するジャイロスコープ,車両100の走行距離を検出する距離センサ,及び衛星からの電波に基づいて車両100の位置を検出するGPS受信機等を有した周知のものである。
【0045】
制御部20は、周知のCPU,ROM,RAMを備えて構成される通常のコンピュータで有り、そのCPUは、記憶装置25に記憶されたナビプログラムおよびデータに基づく制御を行うことで、例えば目的地までの経路案内を、表示装置22内での表示や音声出力部23からの音声出力によって行うことができる。
【0046】
記憶装置25には、上記経路案内などを実行する周知のナビプログラムの他に、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データベースである地図データが記憶される。地図データは、表示用に所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。また、記憶装置25には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザーが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータとして記憶される。また、ナビゲーション装置2の動作に必要なデータや各種情報はデータベースとしても記憶される。
【0047】
ところで、本実施形態の制御部10は、ROMや外部の記憶装置17等に記憶されたプログラムおよびデータに基づいて各種の制御を行うものであり、ここでは、図5に示すような、移動体500に対する注意喚起用の表示処理を実行する。
【0048】
図4は、制御部10が実行する図5の移動体注意喚起表示処理を実行するためのメイン処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まずS1001にて、制御部10が、イグニッションスイッチ16がONとなったか否かを判定する。ONとなっていなければ本処理は終了となり、図5の注意喚起表示処理は実行されない。ONとなったならばS1002に進む。
【0050】
S1002では、制御部10が、カメラ11に動画撮影の開始を指示し(撮影制御手段)、カメラ11による動画撮影が開始される。続くS1003では、制御部10が、移動体注意喚起表示処理を開始する。
【0051】
S1004では、制御部10が、イグニッションスイッチ16がOFFとなったか否かを判定する。OFFとなっていなければS1003に戻り、図5の注意喚起表示処理が継続して実行される。OFFとなったならばS1005に進み、カメラ11による動画映像を終了するとともに(撮影制御手段)、S1006にてその動画映像を記憶装置17に記憶し(撮影映像記憶手段)、本処理は終了となる。なお、この処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0052】
本処理によれば、S1003の注意喚起表示処理は、イグニッションスイッチ16のONに伴い実行され、そのOFFにより強制的に終了となる。同様に、S1002で実行される動画撮影も、イグニッションスイッチ16のONに伴い実行され、そのOFFにより強制的に終了となる。即ち、この動画撮影は、車両100の走行中は常に実施され、走行中の車両100の前方映像が記録されることになる。
【0053】
次に、図5の注意喚起表示処理を説明する。
【0054】
まずS1にて、制御部10は、車両100の進行方向の道路上における予め定められた停止位置(ここでは道路上に描画された停止線201)の特定を開始する(停止位置特定手段)。本実施形態の停止位置検出部14はレーザーレーダであり、S1にて制御部10はその停止位置検出部14に対し、検出波であるレーザー光を照射させる指令信号を出力するとともに、その反射波(反射光)を受信する。そして、制御部10は、その受信結果を取得し、それに基づいて、車両前方の道路上において車両の停止位置を示す停止位置情報(ここでは道路上に描画された停止線201)の検出を実行し、検出された場合にはその停止線201を基準として停止位置を特定する。停止位置が特定されなければ(S2:No)、S15に進んで本処理は終了となるが、停止位置が特定された場合には(S2:Yes)、S3に進む。
【0055】
S3では、制御部10が、特定された停止位置よりも車両100の進行方向手前側に停止手前位置を特定する(停止手前位置特定手段)。本実施形態の停止手前位置は、車両100の停止位置201までの距離が予め定められた基準停止前距離となる位置202として定められているため、その位置を停止手前位置として特定する。
【0056】
ここでの基準停止前距離は、カメラ11の撮影範囲に、停止線の先に存在する予め定められた停止理由領域(交差点)が広く映し出される距離であって、ここでは特に、停止位置を定める道路上の停止位置情報(停止線)が映し出される距離として定められている。具体的に言えば、本実施形態の基準停止前距離は10mとして記憶装置17に予め記憶されており、停止位置から10m手前の位置が停止手前位置である。
【0057】
S4では、制御部10が、S3で特定された停止手前位置に車両100が到達したか否かを判定する(停止手前位置到達特定手段)。本実施形態においては、ナビゲーション装置2の位置検出器21が車両100の現在位置を特定しているので、ナビゲーション装置2の制御部20から取得する情報に基づいて、停止手前位置202(図6参照)を特定した時の現在位置から基準停止前距離D(ここでは10m)だけ車両100が進行したか否かを制御部10が判定する。この判定処理は、特定された停止手前位置に車両100が到達したと判定されるまで繰り返され、到達したと判定(特定)された場合にはS5に進む。なお、S4において、所定時間経過しても到達したと判定されない場合、本処理は強制的に終了となる。
【0058】
S5では、制御部10が、S3で特定された停止手前位置に車両100が到達したときにカメラ(撮影手段)11により撮影された撮影画像501を、後述する注意喚起用画像5を重畳して表示させる表示用画像501として取得する(表示用画像取得手段)。本実施形態においては、制御部10が、S3で特定された停止手前位置に到達したと判定されるに伴い、制御部10が、カメラ(撮影手段)11により撮影している動画映像から、その時点における映像(動画フレーム)を静止画像としてキャプチャーし、これを上記表示用画像501とする。図6は、車両100が停止手前位置に到達した時の図であり、図7は、そのときキャプチャーされた静止画像501である。
【0059】
S6では、制御部10が、S2で特定された停止位置への車両100の到達を特定する(停止位置到達特定手段)。本実施形態においては、車両100の現在位置をリアルタイムで特定しているナビゲーション装置2の制御部20から現在位置情報を取得したり、停止手前位置からの進行距離を算出して、それらに基づいて、現時点における車両100の現在位置がS2で特定された停止位置に到達したか否かを制御部10が判定する。この判定処理は、特定された停止位置に車両100が到達したと判定されるまで繰り返され、到達したと判定された場合にはS7に進む。なお、S6において、所定時間経過しても到達したと判定されない場合に本処理は強制的に終了となる。
【0060】
S7では、制御部10が、S6で到達したと判定された停止位置での車両100の停止を特定する(停止特定手段)。本実施形態においては、制御部10が、車速センサ15の検出結果を取得し、車速ゼロとなったか否かに基づいて車両100の停止を判定する。この判定処理は、特定された停止位置にて車両100が停止したと判定されるまで繰り返され、停止したと判定された場合にはS8に進む。なお、S7において、所定時間経過しても停止したと判定されない場合に本処理は強制的に終了となる。
【0061】
S8では、制御部10が、移動体検出部12R,12Lに対し、車両100の車外前方の左右それぞれに存在する運転者3Dの死角領域における移動体500の検出処理を開始させる指令信号を出力するとともに、制御部10は、その検出結果を取得する(移動体検出手段)。図8は、停止位置での移動体検出の様子を模式的に示すものであり、ここでは符号120R,120Lが移動体検出部12R,12Lのそれぞれの検出領域である。
【0062】
なお、S8の処理は、移動する物体500を検出する処理である。ここでは、時間的に異なるタイミングで複数回(例えば2回)の移動体検出処理を行い、それらの検出の中で移動体に位置変化が生じている場合に、その物体を移動体と判定する。既に述べたように、移動体の位置は、移動体検出部12R,12Lの検出結果から特定できる。
【0063】
続くS9にて、制御部10は、移動体検出部12R,12Lから取得する検出結果に基づいて、運転者3Dの死角領域120R,120Lにおける移動体500の有無を判定する。移動体500が検出された場合にはS10に進み、検出されなければS14に進む。
【0064】
S10では、制御部10が、移動体検出部12により検出された移動体500の存在位置を、S5で取得(キャプチャー)された表示用画像501上において特定する(移動体位置特定手段)。本実施形態においては、既に述べたように(図9及び図10参照)、移動体検出部12の検出結果に基づいて、上記停止位置に位置する車両100に対する移動体500の存在位置(存在方向と距離)を特定することができる一方で、上記停止手前位置に位置する車両100のカメラ11が撮影する撮影画像(表示用画像)501内において、上記停止位置に位置する車両100の移動体検出部12の検出範囲も特定することができるから、これらに基づいて、表示用画像501上における移動体500の存在位置を特定する。つまり、カメラ11の撮影範囲も移動体検出部12の検出範囲も車両100に対し固定的に定められているから、停止手前位置で撮影された画像上の所定領域に、現在の停止位置における移動体検出部12の検出範囲を固定的に定めることができ、その検出範囲内における移動体500の検出位置も、上記画像上の所定領域内において特定することができる。
【0065】
S11では、制御部10が、移動体検出部12により検出された移動体500の種別を判別する(移動体判別手段)。本実施形態においては、既に述べたように(図11参照)、移動体検出部12の検出結果に基づいて、検出された移動体500の種別を判別することができる。判別が完了すると、S12にて、判別された移動体500の種別に対応する注意喚起用画像5を特定する。本実施形態における記憶装置17には、予め定められた移動体500の各種種別に対し、注意喚起用画像5がそれぞれ対応付けて記憶されているため、ここではその対応関係に従い注意喚起用画像5が特定される。
【0066】
S13では、制御部10が、表示装置13において、S5で取得(キャプチャー)された表示用画像501を表示させ、なおかつその表示用画像上の、S10にて特定された位置に、S12にて特定された注意喚起用画像5を重ね表示させる指令信号を、表示装置13に出力する(表示制御手段)。図11及び図12は、表示用画像501上に注意喚起用画像5が重ね表示された画像502の一例であり、図12では、移動体500の種別が歩行者であり、歩行者を示す注意喚起用画像5A(5)が重ね表示されており、図13では、移動体500の種別が二輪車であり、二輪車を示す注意喚起用画像5B(5)が重ね表示されている。これらの注意喚起用画像5は記憶装置17に予め記憶されており、重ね表示の際に読み出されて表示に供される。
【0067】
なお、ここでの重ね表示(重畳表示)は、表示領域内に2つの画像が表示されているような、重なって見える形の表示であればよく、実際に重ねた形で表示されている必要はない。
【0068】
S14では、制御部10が、車両100が停止位置を通過し、その停止位置から所定距離以上離間した位置に達したか否かを判定する。つまり、車両100が停止位置を通り過ぎたか否かを判定し(通貨判定手段)、通り過ぎた場合にはS15に進み、通り過ぎていなければ再びS8に戻って再度移動体検出を行い、移動体が検出された場合には、改めてS9〜S13を実行する。これにより、移動体500に位置変化があった場合には、背景画像(表示用画像)501には変化はないが、注意喚起用画像5の位置がその位置変化に対応して変化する。
【0069】
S15では、制御部10が、S15で行った重ね表示(重畳表示)に係る表示の終了処理を行う。具体的には、制御部10が、表示装置13の表示を終了するとともに、キャプチャーした画像の消去等が行われる。この処理の終了後、本処理は終了となる。
【0070】
この処理によれば、停止位置の手前にある停止手前位置202で撮影された画像に、その停止位置に到達してから検出した移動体500を表示することで、運転者3Dに対し移動体500の存在や、その存在位置及び危険度を、必要となるタイミングで正確に知らせることができる。
【0071】
また、停止手前位置202で撮影された画像は、車両100の進行方向の道路上に描画された停止線201が映し出されるよう、その停止線201よりも手前の位置で撮影された撮影画像501(図7参照)である。そして、これを背景に、車両100がその停止線に到達した時に検出された移動体500の存在を注意喚起する画像5が重畳される(図12及び図13参照:画像502)。また、重畳される画像5は、背景となる撮影画像501(図7参照)上での移動体500の検出位置(存在位置:図6参照)に表示される。このため、画像5の表示位置からその存在位を把握することができる。さらに、背景となる撮影画像501が交差点を引きで見たような、交差点周辺を広く確認することができる画像であるから、交差点における移動体500の存在位置を素早く認識することができる。
【0072】
仮に、背景となる撮影画像501が、車両100が停止線201で止まっている状態でカメラ11により撮影される画像であった場合、カメラ11が交差点に近づきすぎており、交差点の先の領域を主として写した画像が撮影されるため、交差点周辺が映し出されず、交差点周辺の状況を把握しにくい画像となる。また、この場合、運転者3Dの左右前方に位置する死角領域が、画像の両端にしか映し出されないし、さらに一部は映し出されない可能性もあるから、その画像上で交差点周辺の移動体500を注意喚起することは難しい。
【0073】
一方で、停止手前位置202で撮影した時に、移動体検出も同時に行って、この段階から注意喚起用画像5の表示を行うようにしてもよいが、図6に示すように、交差点などで注意喚起の対象となる移動体500は、塀や電柱などに固定構造物302(図6及び図8参照)に隠れていて検出できない可能性もある。本処理のように、移動体の検出を停止位置に到達してからにすることで、塀や電柱などに隠れていた移動体500の存在も確実に検出できるようになり、その結果は、塀や電柱などが映し出された撮影画像501上にける当該移動体の存在位置に注意喚起用画像5を重畳する形で表示される(図12及び図13参照)。つまり、図6のように塀や電柱などの陰に隠れて撮影画像501に映し出されない移動体500であっても、図8のようにして検出されれば、撮影画像501上に定められた所定領域(停止位置における移動体検出部12の検出範囲に対応する領域)上に、映し出されている内容(電柱や塀)に対し、注意喚起用画像5が単純に重畳して表示されるので(図12及び図13参照)、移動体500の存在を運転者3Dに確実に知らせることができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0075】
例えば上記実施形態においては、図5に示す移動体注意喚起表示処理のS8〜S14にて、停止位置から離脱するまで移動体検出と、移動体注意喚起表示とを繰り返し、移動体500の位置変化に対応して表示を変化させているが、処理の簡略化のため、図14に示すように、移動体検出と、移動体注意喚起表示を繰り返さないようにしてもよい。図14の場合、S13での表示は、その後車両100が停止位置から離脱するまで、注意喚起用画像5は位置変更なく継続的に表示される。
【0076】
また、上記実施形態においては、図5に示す移動体注意喚起表示処理のS8にて、車両の停止を判定しているが、停止ではなく、停止に代わって、予め定められた低速度(停止を含む:例えば5km/h以下)を下回るか否かを判定するようにしてもよい。これにより、停止に相当するような低速度走行時においても、図12及び図13のような移動体の注意喚起表示を行うことが可能となる。なお、図14のS101〜S115の各処理は、図5のS1〜S15と同様である。
【0077】
また、図5に示す移動体注意喚起表示処理のS8については、図15に示すように、これを省略してもよい。つまり、車両の停止位置での停止ではなく、停止位置への到達に伴い移動体の検出(S207)及び移動体注意喚起表示(S209〜S212)を行うこともできる。なお、図15のS201〜S214の各処理は、図5のS1〜S7及びS9〜S15と同様である。
【0078】
また、上記実施形態においては、図4のメイン処理に示すように、車両100の走行中(イグニッションスイッチのON時)において、カメラ11による動画撮影は常に実施され、ドライブレコーダのごとく走行中の車両100の前方映像が記録されるが、図16及び図17に示すように、動画撮影を行わず、停止手前位置において静止画撮影を行い、これを停止位置にて移動体が検出されたときに表示するようにしてもよい。図16では、図4のS1002,S1005,S1006が省略されており、図17では、図5のS5に相当する処理が静止画撮影となり(S305)、その撮影画像上に注意喚起用画像を重畳表示させる処理が実行される(S310〜S313)。図17の他の処理は、図5と同様である。
【0079】
また、上記実施形態において、停止位置は道路上に白色で描かれた停止線(一時停止線)の手前であるが、停止位置は、停止線に限らず、一時停止の看板(積雪地など)、さらには交差点(例えば停止線の無い交差点)等の手前となる、車両の所定の一時停止位置であればよい。また、上記実施形態においては、停止線をレーザーレーダの検出結果から特定しているが、カメラ(撮影手段)11による撮影画像から停止線(白線)201を検出する構成とすることもできる。また、停止手前位置への到達判定を、停止線(白線)201を検出するレーザーレーダの検出結果から停止線201までの距離を算出することにより特定してもよい。
【0080】
また、注意喚起表示を行う表示装置(表示手段)13は、運転者3Dの正面側に表示面を有する車室内の表示手段であることが望ましく、上記実施形態のHUD表示装置13Hの他にも、図17及び図18に示すように、注意喚起表示がなされる表示面13Lを、運転者3Dの正面に位置するメーター表示面13Nの内側に有するものでもよい。
【0081】
また、上記実施形態において、制御部10により表示制御される注意喚起表示を、車両100と検出された移動体500との距離に応じて、その移動体500に対応する注意喚起用画像5の表示状態を変化させる形で行い、これにより移動体500の危険度を示すようにしてもよい。具体的に言えば、表示色を変化させることができる。例えば、検出された移動体500と車両100との距離が予め定められた基準近接距離よりも近い場合を赤色、該基準距離よりも近くない場合を黄色にて行わせることができる。また、検出された移動体500と車両100との距離が予め定められた基準近接距離よりも近い場合を常時表示、該基準距離よりも近くない場合を点滅表示にて行わせることもできる。
【0082】
また、上記実施形態においては、検出された移動体500の種別に応じて、注意喚起用画像5の表示状態(図12及び図13では形状)を変更させている。具体的にいえば、注意喚起用画像5として、移動体500の種別を視認可能・識別可能となる予め定められた移動体種別視認画像5(5A,5B等)を表示させているが、この注意喚起用画像5を点滅表示させてもよい。これにより、背景となる画像において、注意喚起用画像5が重なっている部分の様子も把握可能となる。
【0083】
また、上記実施形態において、停止位置の特定は、道路上に存在する停止線201を検出する形でなされていたが、車両の進行方向の道路上にて交差点200をナビゲーション装置20により特定し、特定した交差点200の手前位置を停止位置として特定するようにしてもよい。これにより、停止線が薄くなって見えないような交差点200においても、確実に交差点200を特定して停止位置を認識することができる。なお、交差点200を基準に定められる停止位置は、車両100の前端部がその交差点200に近接しつつも交差点200に進入していない交差点手前位置とすることができる。
【0084】
また、上記実施形態において、移動体検出部12(12R,12L)は、検出波を検出エリア内の複数方向に同時に送出することにより、それらの反射波の受信結果から、移動体500の位置も特定することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 車両用表示装置
3D 運転者
4D 運転席
5 注意喚起用画像
10 制御部(撮影制御手段及び表示制御手段)
11 カメラ
110 撮影範囲
12(12R,12L) 移動体検出部
120R 車両前方右側の死角領域
120L 車両前方左側の死角領域
13 表示装置
14 停止位置検出部
20 車両用ナビゲーション装置
100 車両
500 移動体
501 背景画像(撮影画像)
502 注意喚起表示画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の予め定められた車外前方領域を撮影する撮影手段と、その撮影画像を運転者に視認可能な形で表示する表示手段と、を備える車両用表示装置であって、
前記車両の進行方向の道路上において予め定められた停止位置を特定する停止位置特定手段と、
特定された停止位置への前記車両の到達を特定する停止位置到達特定手段と、
特定された停止位置よりも前記車両の進行方向手前側となる予め定められた停止手前位置を特定する停止手前位置特定手段と、
前記撮影手段を、少なくとも前記車両が前記停止手前位置に達した時に撮影を実行しているように制御する撮影制御手段と、
前記車両の車外前方の左右それぞれに存在する前記運転者の死角領域において移動体を検出する移動体検出手段と、
前記停止位置到達特定手段により前記停止位置への前記車両の到達が特定されたときに前記移動体検出手段により前記移動体が検出された場合に、前記表示手段において、当該到達の直前に通過した前記停止手前位置にて前記撮影手段により撮影された撮影画像を表示させる一方で、当該撮影画像上において、検出された当該移動体の存在位置を特定し、特定された存在位置に予め定められた注意喚起用画像を重ね表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記停止位置特定手段により特定された停止位置における前記車両の停止を特定する停止特定手段を備え、
前記表示制御手段は、前記停止特定手段により前記車両が前記停止位置に到達してその停止が特定されたときに前記移動体検出手段により前記移動体が検出された場合に、前記表示手段において、当該停止の直前に通過した前記停止手前位置にて前記撮影手段により撮影された撮影画像を表示させる一方で、当該撮影画像上において、検出された当該移動体の存在位置を特定し、特定された存在位置に予め定められた注意喚起用画像を重ね表示させるものである請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記撮影手段は、前記車外前方領域の動画映像を撮影するものであり、
前記撮影手段により撮影された動画映像から、特定された前記停止手前位置に到達した時点の映像を静止画像としてキャプチャーする表示用画像取得手段を備え、
前記表示制御手段は、前記停止位置での前記車両の停止が特定された場合に、キャプチャーされた前記静止画像を前記表示手段において表示させるものである請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示手段は、運転者の正面側に表示面を有する車室内の表示手段である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記停止位置特定手段は、前記停止位置として前記道路上に描画された停止線を検出する停止線検出手段である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記停止位置特定手段はレーザーレーダである請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記停止位置特定手段は、前記車両の進行方向の前記道路上にて交差点を特定するとともに、特定された交差点の手前位置を前記停止位置として特定する手段である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記停止手前位置特定手段は、前記車両の前記停止位置までの距離が予め定められた基準停止前距離となった場合を、前記停止手前位置として特定するものである請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記移動体と前記車両との距離を特定する距離特定手段を備え、
前記表示制御手段は、特定された前記移動体と前記車両との距離に応じて、前記注意喚起用画像の表示状態を変化させるものである請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項10】
前記移動体検出手段は、予め定められた検出波を送出し、その反射波の受信に基づいて前記移動体を検出するものであり、
前記距離特定手段は、前記検出波の送信から前記反射波の受信までの時間に基づいて、前記移動体との距離を算出するものである請求項9に記載の車両用表示装置。
【請求項11】
前記移動体検出手段はレーザーレーダである請求項10に記載の車両用表示装置。
【請求項12】
前記移動体の種別を判別する移動体判別手段を備え、
前記表示制御手段は、判別された前記移動体の種別に応じて、前記注意喚起用画像の表示状態が異なるよう重ね表示させるものである請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項13】
前記表示制御手段は、前記注意喚起用画像として、判別された前記移動体の種別を視認可能な予め定められた移動体種別視認画像を表示させるものである請求項12に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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