説明

車両用表示装置

【課題】車両の走行エネルギーを回生して得た電力を車載バッテリに充電する車両の航続距離を延ばすことができる車両用表示装置の提供。
【解決手段】電動車両10に設けられる表示装置12は、電動車両10の走行エネルギーを回生して得られた電力がバッテリ16に充電される際の所定時間ごとの充電量を定期的に取得する。表示装置12は、充電量が取得されると、充電量を加算し累積充電量を算出する。さらに表示装置12は、充電量を取得するたびに表示器24にそれを表示させるとともに、算出した累積充電量を表示器24に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関し、特に、車両の走行エネルギーを回生して得た電力を車載バッテリに充電する機能を有する車両の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行エネルギーを回生して得た電力を車載バッテリに充電する技術が知られている。この技術によれば、回生して得た電力を車両走行に利用したり、車載電気機器駆動に利用することができる。その結果、車載バッテリ残量の低下を遅らせることができ、車両の航続距離を延ばすことができる。ここで、こういった車両において特許文献1には、回生して得た電力を車載バッテリに充電する際の充電量を表示する車両用表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−35049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車両用表示装置は、車載バッテリへの電力の充電量を表示するだけであり、ユーザ(運転者)に対してその充電量を高めようとする動機付けを十分に与えるものではない。よって、ユーザは、この表示装置の表示を視認することによって、必ずしも充電量をより高めるための運転パターンを実行しようとはしないおそれがある。その結果、車載バッテリの残量の低下が早まり、十分な航続距離の延長も望むことができなくなる。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の走行エネルギーを回生して得た電力を車載バッテリに充電する車両の航続距離を延ばすことができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車両の走行エネルギーを回生して得られた電力が車載バッテリに充電される際の所定時間ごとの充電量を定期的に取得する充電量取得手段と、
充電量取得手段が充電量を取得するごとに、当該充電量を加算して、累積充電量を算出する累積充電量算出手段と、
充電量取得手段が取得した充電量及び累積充電量算出手段が算出した累積充電量を表示する表示手段と、
充電量算出手段により充電量が取得されるたびに、取得した充電量を表示手段に表示させるとともに、累積充電量算出手段により算出された累積充電量を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、表示制御手段は、充電量取得手段が定期的に取得した充電量を表示手段に表示させるので、表示手段には、時々刻々と変化する充電量が表示されることとなる。このため、この表示を視認したユーザ(運転者)は、車載バッテリへの電力の充電量の時間的な変化を把握できる。さらに、この発明は、充電量取得手段が取得した充電量を加算して、累積充電量を算出する累積充電量算出手段を備えている。加えて、この発明は、表示制御手段は、この累積充電量算出手段によって算出された累積充電量を表示手段に表示させている。このため、ユーザは、時々刻々と変化する充電量だけでなく、運転中の累積充電量を把握することができる。特に、この累積充電量を視認することにより、ユーザは、当該累積充電量をさらに増大させたいという欲求に駆られ、当該累積充電量をさらに増大させるような運転パターンを実行しようとする。これにより、車載バッテリへの電力の充電の機会が多くなり、車載バッテリの残量低下が抑制され、車両の航続距離が延びる。
【0008】
請求項2の発明は、車載バッテリから電力が放電される際の所定時間ごとの放電量を定期的に取得する放電量取得手段を備え、
累積充電量算出手段は、放電量取得手段が放電量を取得すると、取得した放電量分の値を、算出された累積充電量から減算し、それを累積充電量とすることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、累積充電量算出手段は、充電量の累積だけでなく、車載バッテリから電力が放電される際には、その放電量分の値を、算出された累積充電量から減算し、表示制御手段は、それを累積充電量として、表示手段に表示する。これによれば、ユーザが車載バッテリから電力を放電するような運転パターンを実行すると、表示手段に表示される累積充電量が目減りしてしまう。このような表示を視認したユーザは、目減りした累積充電量を増大させようと、より一層、当該累積充電量を増大させるような運転パターンの実行しようとする。これにより、車載バッテリへの電力の充電の機会が多くなり、車載バッテリの残量低下が抑制され、車両の航続距離が延びる。
【0010】
請求項3の発明では、累積充電量算出手段は、算出した累積充電量が0以下となる場合、放電量取得手段が放電量を取得しても、取得した放電量分の値の減算を禁止することを特徴としている。
【0011】
車両の走行エネルギーを回生して得られる電力は、走行に費やす電力よりも少ないため、車両の運転時間又は走行距離が長くなるほど、放電量の累積値は充電量の累積値よりも大きくなる。よって、累積充電量算出手段が、放電量取得手段が取得した放電量分の値を累積充電量から減算するような構成を採用すると、必ず累積充電量の結果は負の値となる。さらに、この負の値はさらに増えるため、累積充電量が正の値となっている時間は限られる。その結果、この累積充電量を増大させるような運転パターンの実行の動機付けを与え難くなる。
【0012】
この発明によれば、累積充電量が減算された結果、0以下となると、累積充電量算出手段は、放電量取得手段が放電量を取得しても、取得した放電量分の値の減算を禁止する。これによれば、車載バッテリへ電力の充電が行われると、直ぐに累積充電量は正の値となるため、累積充電量の表示機会が増加する。その結果、ユーザに対して累積充電量を増大させるような運転パターンの実行の動機付けを与えやすくなる。
【0013】
請求項4の発明では、表示制御手段は、累積充電量算出手段により算出した累積充電量が、0より大きい値の場合、その累積充電量を表示手段に表示させ、0以下の値の場合、累積充電量の表示手段への表示を禁止することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、表示手段には、累積充電量が0より大きい場合にのみ表示手段に表示されることとなる。つまり、放電量の累積が充電量の累積以上であると、累積充電量の表示が行われなくなる。このような累積充電量の表示を行うことによれば、放電量の累積が充電量の累積以上であることをユーザに対して確実に伝えることができ、累積充電量を増大させるような運転パターンの実行を促すことができる。これにより、車載バッテリへの電力の充電の機会が多くなり、車載バッテリの残量低下が抑制され、車両の航続距離が延びる。
【0015】
請求項5の発明では、表示手段は、累積充電量算出手段が算出した累積充電量をアナログ表示することを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、表示手段は累積充電量をアナログ表示するので、ユーザは、当該累積充電量を数値で表示するものに比べ、当該累積充電量の増減状態を直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態による表示装置を含む電動車両の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態による表示装置の表示器の表示例を示すものであり、(a)は、充電量を表示する表示例を示す図であり、(b)は、放電量を表示する表示例を示す図であり、(c)は、累積充電量の値が負となったときの放電量を表示する表示例を示す図である。
【図3】第1実施形態による表示装置の表示器への充放電量の表示処理を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態による表示装置の表示器への充放電量の表示処理の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の好ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態による表示装置12を含む電動車両10の構成を示すブロック図である。
【0019】
電動車両10は、図示しない車軸を回転させることにより、電動車両10を走行させる機能と、電動車両10の走行エネルギーを回生して電力に変換する機能とを有するモータジェネレータ14を備える。モータジェネレータ14は、モータジェネレータ14に接続されるバッテリ16からの電力により駆動されるようになっている。また、モータジェネレータ14により生成された電力は、バッテリ16に充電されるようになっている。なお、バッテリ16は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の複数の電池を直並列に接続した組電池である。
【0020】
バッテリ16に接続されたコントローラ20は、演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)20a、処理プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)20b、及び一時的に処理データを記憶するRAM(Random Access Memory)20cを含んで構成されるマイクロコンピュータと、各種信号の入出力インターフェイスとを備える。特に、コントローラ20のRAM20cは、1走行期間内で検出されたバッテリ16への電力の充電量及びバッテリ16から放電される電力の放電量より求められた累積充電量を記憶する。この累積充電量については後ほど詳細に説明する。また、本実施形態では、1走行期間を、ユーザが電動車両10を走行させるために後述するメインスイッチ26をON位置としたときから、メインスイッチ26をOFF位置にしたときまでの期間とする。
【0021】
コントローラ20は、電動車両10を走行させる際、インターフェイスを介して入力される各種情報に基づき、図示しないインバータを制御して、モータジェネレータ14の回転速度とトルクを制御する。さらに、コントローラ20は、表示駆動回路22を制御して、後述する表示器24の表示画面を制御する。
【0022】
コントローラ20には、表示駆動回路22、メインスイッチ26、操作部28、バッテリ16の充放電量などを検出するバッテリセンサ18などが接続されている。バッテリセンサ18は、電圧センサ及び電流センサにより検出された電圧値及び電流値を用いて、バッテリ16の所定時間ごとの充電量及び放電量、つまり単位時間当たりの充電量及び放電量を定期的に検出し、当該充電量及び当該放電量を検出するたびにコントローラ20に出力する。単位時間当たりの充電量及び放電量は、コントローラ20に入出力インターフェイスを介して入力され、コントローラ20は、当該充電量及び当該放電量を取得する。以下、単位時間当たりの充電量及び放電量のそれぞれを単に充電量及び放電量という。
【0023】
ここで、コントローラ20のRAM20cが記憶する累積充電量について説明する。累積充電量は、電動車両10のメインスイッチ26がON位置となってからのバッテリ16の電力の収支に相当する量である。コントローラ20は、充電量を取得すると充電量分の値を加算し、放電量を取得すると放電量分の値を減算することにより、累積充電量を算出する。即ち、この累積充電量が正の値となっている場合、バッテリ16への電力の充電が放電よりも勝っており、バッテリ16の残量の低下が抑制される状態を示す。反対に、累積充電量が負の値となっている場合、バッテリ16からの電力の放電が充電よりも勝っており、バッテリ16の残量の低下する状態を示す。メインスイッチ26がOFF位置となると、RAM20cに記憶されている累積充電量は消去される。この場合、1走行期間の開始直後、即ちメインスイッチ26がON位置となった直後、RAM20cには、累積充電量が記憶されていないので、最初に取得した充電量又は放電量が累積充電量となる。その後、充電量が取得されれば、累積充電量に取得された充電量分の値が加算され、放電量が取得されれば、累積充電量に取得された放電量分の値が減算されることとなる。
【0024】
メインスイッチ26は、ON位置に操作されると閉路する。また、その後、メインスイッチ26がOFF位置に操作されると開路し、電動車両10が停止する。操作部28は、例えばリセットスイッチ等で構成され、ユーザのリセットスイッチの操作内容に応じた信号をコントローラ20に出力する。例えば、操作部28のリセットスイッチのON操作により、1走行期間中であっても、RAM20cに記憶される累積充電量がリセットされる。つまり、このリセットスイッチの操作によれば、RAM20cに記憶される累積充電量を記憶する期間を自由に設定することができる。表示駆動回路22は、コントローラ20からの表示指令にしたがって、バッテリセンサ18から定期的に入力されるバッテリ16に対する充放電量を表示器24に表示させるとともに、RAM20cに記憶されている累積充電量を表示器24に表示させる。
【0025】
表示器24は、例えば車室内のインストルメントパネルに配置されるコンビネーションメータ内に設置される液晶ディスプレイである。この液晶ディスプレイは、図2に示すように充電量又は放電量、及び累積充電量をバーグラフによって表示するものであり、一列に並んだ複数のセグメント電極を有する。表示駆動回路22からの表示指令にしたがって、セグメント電極が駆動されることにより、表示器24に、時々刻々と変化する充電量又は放電量、及び累積充電量が表示される。
【0026】
図2に表示器24の充放電量及び累積充電量の表示例を示す。図2(a)は、バッテリ16に電力が充電されている状態を示し、図2(b)は、バッテリ16から電力が放電されている状態を示し、図2(c)は、累積充電量の値が負の値となっており、かつバッテリ16から電力が放電されている状態を示している。
【0027】
図2(a)に示すように、充電量は、表示器24の画面中央のセグメントを基準とし、その基準のセグメントから左側に表示される。充電量が大きいほど、駆動するセグメントの数が多くなり、グラフの長さが長くなるようになっている。一方、図2(b)に示すように、放電量は、表示器24の画面中央のセグメントを基準とし、その基準のセグメントから右側に表示される。放電量が大きいほど、駆動するセグメントの数が多くなり、グラフの長さが長くなるようになっている。
【0028】
また、図2(a)において、充電量表示の左端からさらに左側に離れて表示されているセグメント、及び図2(b)において、画面中央の基準セグメントより左側(充電量表示領域)に表示されているセグメントは累積充電量を示している。この累積充電量は、上述したように、取得される充電量及び放電量に応じて、充電表示領域内を移動する。この実施形態において累積充電量は、充電表示領域内のみの表示となる。累積充電量の算出の結果が負の値となる場合は、図2(c)に示すように、表示器24の画面上に累積充電量は表示されないようになっている。
【0029】
次に、コントローラ20が表示器24に充電量又は放電量、及び累積充電量を表示させる際の表示制御フローについて、図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
この表示制御フローは、メインスイッチ26がON位置となるか、操作部28のリセットスイッチがONされることにより実行される。この表示制御フローは、メインスイッチ26がOFF位置となるまで繰り返し実行される。
【0031】
また、この表示制御フローは、大きく分けて四つの部分からなる。第1の部分は、バッテリセンサ18からの検出結果を取得し、その取得した結果が充電量であるのか放電量であるのかを判定する部分(ステップS10,S20)、第2の部分は、充電量及び累積充電量の表示を制御する部分(ステップS30〜S80)、第3の部分は、放電量及び累積充電量の表示を制御する部分(ステップS90〜S150)、第4の部分は、1走行期間が終了したか否かを判定する部分(ステップS160,S170)である。この表示制御フローは、第1の部分で取得したものが充電量であれば、第2の部分を実行し、放電量であれば第3の部分を実行する。第2又は第3の部分が終了したら、第4の部分を実行する。第4の部分で1走行期間が終了していればこの制御フローを終了し、1走行期間中であれば再び第1の部分を実行する。
【0032】
以下、それぞれの部分について説明する。ステップS10では、バッテリセンサ18からの検出結果を取得する。そして、ステップS20では、取得した検出結果が充電量であるか、放電量であるかを判定する。ステップS20の判定処理において、取得したものが充電量であると判定されると、ステップS30に進む。一方、ステップS20の判定処理において、取得したものが放電量であると判定されると、ステップS90に進む。
【0033】
ステップS30では、今回取得した充電量の大きさに応じた数のセグメント電極を駆動するための表示指令信号を表示駆動回路22に出力し、今回取得した充電量を表示器24に表示させる。これにより、表示器24には、図2(a)に示すように、今回取得した充電量に応じたバーグラフが表示される。
【0034】
続くステップS40では、コントローラ20のRAM20cに累積充電量が記憶されているか否かを判定する。ステップS40の判定処理において、RAM20cに累積充電量が記憶されていないと判定されると、ステップS50に進み、RAM20cに累積充電量が記憶されていると判定されると、ステップS70に進む。
【0035】
ステップS50では、今回取得した充電量の値を累積充電量としてRAM20cに記憶する。続くステップS60では、RAM20cに記憶されている累積充電量を表示器24に表示させる。この場合、今回取得した充電量が累積充電量と同じ値となっているため、表示器24の表示は、図2(a)において、充電領域に表示されているバーグラフのみの表示となる。即ち、図2(a)において、バーグラフの左側に表示されているセグメントの表示がない状態となる。
【0036】
ステップS60が実行された後、ステップS160に進み、メインスイッチ26がOFF位置となっているか否かを判定する。ステップS160において、メインスイッチ26がOFF位置となっていなければ、ステップS10に戻り、メインスイッチ26がOFF位置となっていれば、ステップS170に進み、コントローラ20のRAM20cに記憶されている累積充電量を消去して、この表示制御フローを終了する。
【0037】
ステップS40の判定処理で肯定判定となり、その後実行されるステップS70では、取得した充電量をRAM20cに記憶されている累積充電量に加算して、その結果をRAM20cに記憶する。続くステップS80では、RAM20cに記憶されている累積充電量を表示器24に表示させる。この場合、累積充電量は、現在表示されている充電量よりも大きな値となっているため、図2(a)に示すように、現在の充電量によるバーグラフの左端から左側に間隔を開けて位置に累積充電量が表示されることとなる。
【0038】
ステップS80が実行された後、ステップS160に進み、メインスイッチ26がOFF位置となっているか否かを判定する。ステップS160において、メインスイッチ26がOFF位置となっていなければ、ステップS10に戻り、メインスイッチ26がOFF位置となっていれば、ステップS170に進み、コントローラ20のRAM20cに記憶されている累積充電量を消去して、この表示制御フローを終了する。
【0039】
一方、ステップS20の判定処理で取得したものが放電量であると判定され、その後実行されるステップS90では、今回取得した放電量の大きさに応じた数のセグメント電極を駆動するための表示指令信号を表示駆動回路22に出力し、今回取得した放電量を表示器24に表示させる。これにより、表示器24には、図2(b)に示すように、今回取得した放電量に応じたバーグラフが表示される。
【0040】
続くステップS100では、コントローラ20のRAM20cに累積充電量が記憶されているか否かを判定する。ステップS100の判定処理において、RAM20cに累積充電量が記憶されていると判定されると、ステップS110に進み、RAM20cに累積充電量が記憶されていないと判定されると、ステップS150に進む。
【0041】
ステップS110では、取得した放電量をRAM20cに記憶されている累積充電量から減算して、その結果をRAM20cに記憶する。続くステップS120では、RAM20cに記憶されている累積充電量が0より大きいか否かを判定する。ステップS120の判定処理において、累積充電量が0より大きいと判定されると、ステップS130に進む。ステップS130では、RAM20cに記憶されている累積充電量を表示器24に表示させる。この場合、表示器24の画面は図2(b)に示すように、基準となるセグメントから右側に現在の放電量が表示されるとともに、充電量領域に累積充電量が表示されることとなる。
【0042】
ステップS120の判定処理において、累積充電量が0以下となっていると判定されると、ステップS140に進む。ステップS140では、表示器24への累積充電量の表示を禁止すべく、累積充電量の表示を消去し、ステップS160に進む。ステップS140が実行されると、図2(c)に示すように、表示器24には、現在の放電量が表示されるが、累積充電量の表示の無い状態となる。
【0043】
ステップS100の判定処理で累積充電量がRAM20cに記憶されていないと判定され、その後実行されるステップS150では、今回取得した放電量を累積充電量として記憶し、ステップS160に進む。このステップS150が実行されると、図2(c)に示すように、表示器24には、現在の放電量のみが表示されることとなる。
【0044】
ステップS130、S140又はS150が実行された後、ステップS160に進み、メインスイッチ26がOFF位置となっているか否かを判定する。ステップS160において、メインスイッチ26がOFF位置となっていなければ、ステップS10に戻り、メインスイッチ26がOFF位置となっていれば、ステップS170に進み、コントローラ20のRAM20cに記憶されている累積充電量を消去して、この表示制御フローを終了する。
【0045】
上述した表示制御フローを実行することにより、表示器24には、メインスイッチ26がON位置となってから、ステップS30又はステップS90が実行されることにより、定期的に取得され時々刻々と変化する充電量又は放電量が表示される。これにより、ユーザは、充電量及び放電量の時間的な変化を把握できる。さらに、表示器24には、取得した充電量及び放電量に応じて、累積充電量が算出され、その結果が表示される。累積充電量は、値が正の値である間は、表示器24の充電量領域に表示される。これによれば、ユーザは、充電量及び放電量の時々刻々と変化する値だけでなく、運転中の累積充電量を把握することができる。特に、この累積充電量を視認することにより、ユーザは、当該累積充電量をさらに増大させたいという欲求に駆られ、当該累積充電量をさらに増大させるような運転パターン、つまり充電量を高める運転パターンを実行しようとする。これにより、バッテリ16への電力の充電の機会が多くなり、バッテリ16の残量低下が抑制され、電動車両10の航続距離が延びる。
【0046】
また、本実施形態では、特に、コントローラ20が放電量を取得すると、その放電量分の値を、累積充電量から減算し、その結果を表示器24に表示させるようにしている。これによると、ユーザがバッテリ16から電力を放電するような運転パターンを実行すると、累積充電量が目減りすることとなる。このような表示を視認したユーザは、目減りした累積充電量を増大させようと、より一層、当該累積充電量を増大させるような運転パターンを実行しようとする。これにより、バッテリ16への電力の充電の機会が多くなり、バッテリ16の残量低下が抑制され、電動車両10の航続距離が延びる。
【0047】
さらに、本実施形態では、累積充電量の算出結果が、0よりも大きい値の場合、その累積充電量を表示器24に表示させるが(ステップS130)、0以下の値の場合では、累積充電量の表示を行わないようにしている(ステップS140)。このような累積充電量の表示によれば、放電量の累積が充電量の累積以上であることをユーザに対して確実に伝えることができ、累積充電量を増大させるような運転パターンの実行を促すことができる。これにより、バッテリ16への電力の充電の機会が多くなり、バッテリ16の残量低下が抑制され、電動車両10の航続距離が延びる。
【0048】
加えて、本実施形態では、累積充電量をアナログ表示する、例えば目盛に対して、累積充電量に対応する位置を指し示すセグメントを表示するので、ユーザは、当該累積充電量を数値で表示するものに比べ、当該累積充電量の増減状態を直感的に把握することができる。
【0049】
この実施形態では、累積充電量をRAM20cに記憶させる期間を1走行期間として説明したが、この期間は適宜変更が可能である。例えば、操作部28のリセットスイッチがONされてから、メインスイッチ26がOFF位置となるまでの期間であってもよい。この場合、リセットスイッチがONされると、コントローラ20は、今までRAM20cに記憶されていた累積充電量を消去する。また、上記期間をバッテリ16への外部からの電力の充電が行われ満充電となってから、次回の充電が開始されるまでの期間としてもよい。この場合、電動車両10を停止してメインスイッチ26がOFF位置となっても、コントローラ20は、RAM20cに記憶されている累積充電量を消去しない。また、上記期間を電動車両10が出荷されてから始まる期間としてもよい。この場合も、メインスイッチ26がOFF位置となっても、コントローラ20は、RAM20cに記憶されている累積充電量を消去しない。さらに、上記期間を距離で定めたものとしてもよいし、時間で定めたものとしてもよい。
【0050】
なお、以上において、ステップS10を実行するコントローラ20が特許請求の範囲に記載の「充電量取得手段」及び「放電量取得手段」に相当し、ステップS50,S70,S110,S150を実行するコントローラ20が特許請求の範囲に記載の「累積充電量算出手段」に相当し、ステップS30,S60,S80,S130,S140が特許請求の範囲に記載の「表示制御手段」に相当し、表示器24が特許請求の範囲に記載の「表示手段」に相当する。
【0051】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態による表示制御フローの一部を示している。本実施形態では、表示制御フローのうち、第3の部分の制御フローが先の実施形態と異なる。ここでは、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0052】
ステップS190は、ステップS20の判定処理で取得したものが放電量であると判定された後に実行される。ステップS190では、今回取得した放電量の大きさに応じた数のセグメント電極を駆動するための表示指令信号を表示駆動回路22に出力し、今回取得した放電量を表示器24に表示させる(図2(b)参照)。
【0053】
続くステップS200では、コントローラ20のRAM20cに累積充電量が記憶されているか否かを判定する。ステップS200の判定処理において、RAM20cに累積充電量が記憶されていると判定されると、ステップS210に進み、RAM20cに累積充電量が記憶されていないと判定されると、ステップS250に進む。
【0054】
ステップS210では、取得した放電量をRAM20cに記憶されている累積充電量から減算して、その結果をRAM20cに記憶する。続くステップS220では、RAM20cに記憶されている累積充電量が0より大きいか否かを判定する。ステップS220の判定処理において、累積充電量が0より大きいと判定されると、ステップS230に進む。ステップS230では、RAM20cに記憶されている累積充電量を表示器24に表示させる。この場合、表示器24の画面は図2(b)に示すように、基準となるセグメントから右側に現在の放電量が表示されるとともに、充電量領域に累積充電量が表示されることとなる。
【0055】
ステップS220の判定処理において、累積充電量が0以下となっていると判定されると、ステップS240に進む。ステップS240では、累積充電量を0として記憶するとともに、累積充電量の表示を消去し、ステップS160に進む。このように累積充電量を0として記憶することにより、結果的に累積充電量の減算が禁止されることとなる。ステップS240が実行されると、図2(c)に示すように、表示器24には、現在の放電量が表示されるが、累積充電量の表示の無い状態となる。
【0056】
ステップS200の判定処理で累積充電量がRAM20cに記憶されていないと判定され、その後実行されるステップS250では、今回取得した放電量を累積充電量として記憶し、ステップS160に進む。このステップS250が実行されると、図2(c)に示すように、表示器24には、現在の放電量のみが表示されることとなる。
【0057】
ステップS230、S240又はS250が実行された後、ステップS160に進み、メインスイッチ26がOFF位置となっているか否かを判定する。ステップS160において、メインスイッチ26がOFF位置となっていなければ、ステップS10に戻り、メインスイッチ26がOFF位置となっていれば、ステップS170に進み、コントローラ20のRAM20cに記憶されている累積充電量を消去して、この表示制御フローを終了する。
【0058】
ここで、電動車両10のバッテリ16のエネルギーの収支について説明する。電動車両10の走行エネルギーを回生して得られる電力は、走行に費やす電力よりも少ないため、電動車両10の運転時間又は走行距離が長くなるほど、放電量の累積値は充電量の累積値よりも大きくなる。よって、先の実施形態のように累積充電量が0以下となっても、放電量分の値を累積充電量から減算するような構成を採用すると、必ず累積充電量の結果は負の値となる。さらに、この負の値はさらに増えるため、累積充電量が正の値となっている時間が限られる。その結果、この累積充電量を増大させるような運転パターンの実行の動機付けを与え難くなる。
【0059】
この点、本実施形態の表示制御フローによれば、累積充電量の最低値は0を下回ることが無くなる。このため、バッテリ16へ電力の充電が行われると、直ぐに累積充電量は正の値となるため、累積充電量の表示機会が増加することとなる。その結果、ユーザに対して累積充電量を増大させるような運転パターンの実行の動機付けを与えやすくなる。
【0060】
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0061】
先の実施形態において表示器24は、アナログ的な表示形態としてバーグラフによって充電量又は放電量、及び累積充電量を表示するが、他のアナログ的な表示形態を採用してもよい。例えば、文字盤上を回転する指針によって充電量又は放電量、及び累積充電量を指し示すようなものである。この場合、累積充電量を表示するには、充電量及び放電量を指し示す指針とは別の指針によって示すような構造を採用すればよい。充電量又は放電量、及び累積充電量を表示する形態は、バーグラフ及び指針によるものの他に種々のものが考えられる。例えば、充電量又は放電量、及び累積充電量をそれぞれ数値によって表示するようにしてもよい。また、上述した表示形態を組み合わせて表示するようにしてもよい。
【0062】
また、先の実施形態では、セグメント電極を一列に配列させた液晶ディスプレイを表示器24として採用していたが、表示器24の形態は、これに限らない。例えば、ドットマトリクス式の液晶ディスプレイであってもよい。
【0063】
また、先の実施形態では、表示装置12を搭載する車両を電動車両10として説明したが、車両の走行エネルギーを回生して得た電力をバッテリ16に充電させるものであれば、車両の種類は問わない。例えば、燃料を燃焼させて動力を発生させる内燃機関と、走行用のモータジェネレータとを搭載するような、所謂ハイブリッド車両であってもよい。また、燃料電池によって発生した電力を走行のためのエネルギーとして利用する燃料電池車両であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 電動車両、12 表示装置、14 モータジェネレータ、16 バッテリ、18 バッテリセンサ、20 コントローラ、20a CPU、20b ROM、20c RAM、22 表示駆動回路、24 表示器、26 メインスイッチ、28 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行エネルギーを回生して得られた電力が車載バッテリに充電される際の所定時間ごとの充電量を定期的に取得する充電量取得手段と、
前記充電量取得手段が充電量を取得するごとに、当該充電量を加算して、累積充電量を算出する累積充電量算出手段と、
前記充電量取得手段が取得した充電量及び前記累積充電量算出手段が算出した累積充電量を表示する表示手段と、
前記充電量算出手段により充電量が取得されるたびに、取得した充電量を前記表示手段に表示させるとともに、前記累積充電量算出手段により算出された累積充電量を前記表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記車載バッテリから電力が放電される際の所定時間ごとの放電量を定期的に取得する放電量取得手段を備え、
前記累積充電量算出手段は、前記放電量取得手段が放電量を取得すると、取得した放電量分の値を、算出された累積充電量から減算し、それを累積充電量とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記累積充電量算出手段は、算出した累積充電量が0以下となる場合、前記放電量取得手段が放電量を取得しても、取得した放電量分の値の減算を禁止することを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記累積充電量算出手段により算出した累積充電量が、0より大きい値の場合、その累積充電量を前記表示手段に表示させ、0以下の値の場合、累積充電量の前記表示手段への表示を禁止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記累積充電量算出手段が算出した累積充電量をアナログ表示することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−5600(P2013−5600A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134483(P2011−134483)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】