説明

車両用補強バーの締結構造

【課題】取付けた一端及び他端の荷重の伝達効率がよく、一端及び他端の断面の縦横を自由に変えることができる車両用補強バーの締結構造を提供する。
【解決手段】車両用補強バー11の締結構造12は、一方の車体骨格フレーム(左のリヤサイドフレーム16)に一端21を締結し、他方の車体骨格フレーム(右のリヤサイドフレーム16)に他端22を締結し、補強バー11は、閉断面を一端21から他端22まで同一形状で形成し、一端21内に締結力を伝えるカラーを嵌め、他端22内に締結力を伝えるカラーを嵌めている。一端21及び他端22を車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)とで挟んで締結しているフック取付けブラケット25が閉断面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部の左右間に設けた車両用補強バーの締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用補強バーの締結構造には、後輪の近傍に車両前後方向へ延びるリヤサイドフレームが左右に配置され、これらのリヤサイドフレームに補強バー(クロスビーム)の端をそれぞれ締結することで、車両後部の強度を高めているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)では、補強バー(クロスビーム)は、具体的には、パイプ状部材からなるとともに、その一端、他端を平坦に押しつぶした取付部が形成されて、リヤサイドフレームに取付けられているが、取付部の荷重伝達効率をさらに高める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3670233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、取付けた一端及び他端の荷重の伝達効率がよく、一端及び他端の断面の縦横を自由に変えることができる車両用補強バーの締結構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、一方の車体骨格フレームに一端を締結し、他方の車体骨格フレームに他端を締結している車両用補強バーの締結構造において、補強バーは、閉断面を一端から他端まで同一形状で形成し、一端内に締結力を伝えるカラーを嵌め、他端内に締結力を伝えるカラーを嵌めていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、閉断面の形状を、四角形に形成していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、一端及び他端を車体骨格フレームとで挟んで締結しているフック取付けブラケットが閉断面に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、補強バーは、閉断面を一端から他端まで同一形状で形成し、一端内に締結力を伝えるカラーを嵌め、他端内に締結力を伝えるカラーを嵌めているので、一端(締結部)及び他端(締結部)を閉断面の形状を保持した状態で締結することができ、一端(締結部)の荷重の伝達効率、他端(締結部)の荷重の伝達効率がよいという利点がある。
【0010】
請求項2に係る発明では、閉断面の形状を、四角形に形成しているので、目標の性能に応じて一端及び他端の断面の縦横(縦横比)を自由に変えることができるという利点がある。
【0011】
請求項3に係る発明では、一端及び他端を車体骨格フレームとで挟んで締結しているフック取付けブラケットが閉断面に形成されているので、一端及び他端の締結強度がより向上し、荷重の伝達効率がより向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用補強バーの締結構造の斜視図である。
【図2】図1の2部詳細図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】実施例1に係る車両用補強バーの締結構造に載るリヤフロアリッド及びフックを示す斜視図である。
【図6】実施例1に係る車両用補強バーの締結構造の荷重を伝達する機構を説明する図である。
【図7】本発明の実施例2を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1、実施例2で詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る車両用補強バー11の締結構造12は、図1に示すように、車両13の後部14に採用され、リヤサイドフレーム16に補強バー11を取付けることで、後部14の強度を高めている。以降で具体的に説明していく。
【0015】
車両13は、車体17を有し、車体17は、左のリヤサイドフレーム16と、右のリヤサイドフレーム16と、リヤフロアパネル18と、を備え、車両用補強バー11の締結構造12を含む。
【0016】
次に、車両用補強バー11の締結構造12を主体に図1〜図4で説明する。
車両用補強バー11の締結構造12は、一方の車体骨格フレーム(左のリヤサイドフレーム16)に一端21を締結し、他方の車体骨格フレーム(右のリヤサイドフレーム16)に他端22を締結し、補強バー11は、閉断面を一端21から他端22まで同一形状で形成し、一端21内に締結力を伝えるカラー24を嵌め、他端22内に締結力を伝えるカラー24を嵌めている。
【0017】
閉断面の形状を、四角形に形成していることを特徴とする。
補強バー11の締結構造12では、一端21及び他端22を車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)とで挟んで締結しているフック取付けブラケット25が閉断面に形成されている。
【0018】
車体骨格フレームは、左右のリヤサイドフレーム16である。
補強バー11は、詳しくは、車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)に接触して重なっている第1辺部31と、第1辺部31に対向している第2辺部32と、第1辺部31に直交して連なり第2辺部32まで延びた第3辺部33と、第3辺部33に対向している第4辺部34と、を備え、一端21が第1締結部であり、フック取付けブラケット25に溶接ビード部36で結合し、他端22が第2締結部であり、フック取付けブラケット25に溶接ビード部37(溶接ビード部36と同様)で結合している。
【0019】
補強バー11の縦横比は、1以下であり、例えば0.5である。縦横比は、ここでは、車両13の側面視(図3の視点)で、辺の高さH/辺の幅Wとした。
第1辺部31は、車両13の下方へ向け配置され、長さ(幅)をW1(W1=W)に設定している。
第3辺部33は、車両13前後方向(X軸方向)へ向け配置され、長さ(高さ)をH1(H1=H)に設定し、長さ(高さ)H1は、第1辺部31の長さ(幅)W1より小さい。
【0020】
カラー24は、図3のように、円筒形で、補強バー11の上方へ向けた第2辺部32の穴32aに差し込まれ、第1辺部31に開けたボルト挿入孔31aの近傍に、下端面24aに設けた突起(溶接部24b)を溶接(プロジェクション溶接)によって接合している。
【0021】
フック取付けブラケット25は、補強バー11に嵌る嵌合溝部41が形成され、嵌合溝部41の一側に連ねて車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)の長手方向に延ばして車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)に先端部43を締結した張り出し補強部44が形成され、張り出し補強部44とは反対方向へ嵌合溝部41の他側に連ねて延ばしたフック取付け部45が形成されている。
【0022】
嵌合溝部41は、詳しくは、第2辺部32に当接する押圧部47が閉断面に形成され、押圧部47に連ねて第3辺部33及び第4辺部34に重なる側部48がそれぞれ形成され、押圧部47に連ねてL字形の嵌合溝膨出部51が形成されている。
押圧部47は、閉断面を図1〜図3の上部47a、下部47b、内側部47c、外側部47dで四角形に形成している。
張り出し補強部44は閉断面であり、閉断面は押圧部47の上部47a、下部47b、内側部47c、外側部47dを連続して延ばすことで四角形に形成されている。
【0023】
フック取付け部45は、押圧部47の閉断面に連続して閉断面(上辺部61、下辺部62、内辺部63、外辺部64からなる。)に形成されているとともに、閉断面が嵌合溝部41の側部48まで延びて、図5のフック54をリヤフロアリッド55から出した状態で取付けるためのボルト56を通している。
【0024】
リヤフロアリッド55は、リヤフロアパネル18のリヤフロアセンタ部57を閉じる樹脂製の薄板で、フック54を通すために開けた開口部71と、ボルト72の頭部を通すために開けた開口部73と、を備える。
【0025】
次に、本発明の実施例1に係る車両用補強バー11の締結構造12の作用を図6で説明する。
実施例1の補強バー11の締結構造12は、例えば、走行中に後輪から車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)に荷重が入力されると、車体骨格フレーム(リヤサイドフレーム16)からカラー24に荷重が矢印a1のように伝わるので、第1締結部(一端21)、第2締結部(他端22)の第3辺部33及び第4辺部34とともに荷重を伝えることができ、伝達効率はよくなる。
【0026】
実施例1の補強バー11の締結構造12は、一端21、他端22を閉断面に保つので、一端21、他端22の断面の縦横(縦横比)を自由に変えることができる。
「断面の縦横を変える」とは、縦横比を変えることである。
【0027】
補強バー11の締結構造12は、一端21、他端22をフック取付けブラケット25の一側に設けた張り出し補強部44によって結合しているので、他側にも張り出し補強部44と同様の部位を設けた場合に比べ、組み付け(締結)作業が容易であり、且つ、軽量化を図ることができる。
【0028】
カラー24は、図3のように、補強バー11の第2辺部32に開けた穴32aに差し込まれ、第1辺部31に開けたボルト挿入孔31aの近傍に、下端面24aに設けた突起(溶接部24b)を溶接(プロジェクション溶接)によって接合しているので、生産性を向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
次に、実施例2に係る車両用補強バー11Bの締結構造12Bを図7で説明する。図7は図3に対応する図である。上記図1〜6に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0030】
実施例2に係る車両用補強バー11Bの締結構造12Bは、補強バー11Bと、カラー24Bと、フック取付けブラケット25Bと、を備えていることを特徴とする。
補強バー11Bは、縦横比(Hb/Wb)を1越(例えば、1.2)に設定したものである。
フック取付けブラケット25Bは、補強バー11Bの縦横比に対応した張り出し補強部44Bを有する。
【0031】
実施例2に係る車両用補強バー11Bの締結構造12Bは、実施例1に係る車両用補強バー11の締結構造12と同様の作用・効果を発揮する。
加えて、車両用補強バー11Bの締結構造12Bは、車両13上下方向(Z軸方向)の荷重に対し、伝達効率はより良くなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の車両用補強バー11の締結構造12は、車両13のリヤサイドフレーム16に好適である。
【符号の説明】
【0033】
11…車両用補強バー、12…車両用補強バーの締結構造、13…車両、16…一方、他方の車体骨格フレーム(左右のリヤサイドフレーム)、21…一端、22…他端、24…カラー、25…フック取付けブラケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の車体骨格フレームに一端を締結し、他方の車体骨格フレームに他端を締結している車両用補強バーの締結構造において、
前記補強バーは、閉断面を前記一端から前記他端まで同一形状で形成し、前記一端内に締結力を伝えるカラーを嵌め、前記他端内に締結力を伝えるカラーを嵌めていることを特徴とする車両用補強バーの締結構造。
【請求項2】
前記閉断面の形状を、四角形に形成していることを特徴とする請求項1記載の車両用補強バーの締結構造。
【請求項3】
前記一端及び前記他端を前記車体骨格フレームとで挟んで締結しているフック取付けブラケットが閉断面に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用補強バーの締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247665(P2010−247665A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99192(P2009−99192)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】