説明

車両用貯水型汚物タンクの水封装置

【課題】車両用貯水型汚物タンクの水封装置に水を使用することにより、補水や凍結防止等の装置が必要であった。
【解決手段】気体で満たされた中空な箱体10と、箱体10へ汚物タンク2より汚物タンク2内の気体とオーバーフロー排出水を流入可能な流入管11と、箱体10から汚物タンク2よりタンク内の気体とオーバーフロー排出水を流出可能な流出管12とを有し、流入管11の下流端11aを箱体10内へ位置させるとともに、流入管11の下流端開口部11aには開口部を開閉可能な蓋体13を設ける。汚物タンク2外部の圧力が高い状態では、その圧力により蓋体13が流入管11の下流端開口部11aを密閉するとともに、汚物タンク2内部の圧力が高い状態では、その圧力により蓋体13が流入管11の下流端開口部11aを開放する車両用貯水型汚物タンクの水封装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚物処理装置、詳細には、電車、バス、特に新幹線車両や長距離用の電車、列車に設置され、便所等の汚水を洗浄処理する車両用汚物処理装置の貯水型汚物タンクに付設し、タンクへの外圧の流入を防止する水封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線車両、長距離用電車、列車、またバスに設置される便所、手洗い装置の汚水は、給水タンクから給水管を通り送水された洗浄水とともに、汚水管を経由して、車内あるいは、床下に取り付いている汚物タンクに貯留される。
【0003】
洗浄水で洗浄する汚物処理システムの汚物タンクにおいては、排気用の配管を通じて汚物タンク外から、汚物タンク内へ高速走行時に生じる外部からの圧力が流入しないように防止する装置を設ける必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示すように従来技術の汚物タンクの水封装置では、汚物タンク100にU字管の原理を用いた水封装置が知られており、汚物タンク100にU字管を逆に立てて設け、その逆U字管101と連結するU字管102を連結して、U字管102の下部分に常に水103を貯めておいて外部の圧力が直接汚物タンク100内へ入らないようにしていた。
【0005】
しかし、汚物タンク100へ便器からの汚物流入時、あるいは車両の動揺等により、汚物タンク100内の圧力が上昇したときは、逆U字管101を通って、貯まっている水103とともに汚物タンク100外へ排出される。同様に汚物タンク6が満水になった非常時にも汚水は、逆U字管101を通って、貯まっている水103とともに汚物タンク100外へ排出される。そのため、U字管102に貯まっている水103も一緒に押出されてしまい、その都度U字管102に水を補給する必要があった。
【0006】
また、車体外部(汚物タンク100の外)の圧力が、車内(汚物タンク100内)の圧力より上昇した場合は、U字管102の管内に貯まっている水103によって外部の圧力は遮断されており汚物タンク100内に流入することはない。
【0007】
上述のように従来の清水式汚物処理装置の汚物タンク100のU字管102には、失われる水を補給するため車内の手洗い装置104に連通する構造を有しており、車内の手洗い装置104と汚物タンク100及びU字管102、逆U字管101が連通管105によって連通していた。そのため、汚物タンク100の臭気が、この連通管105から手洗い装置104を通じて車内に逆流する不具合があった。
【0008】
また、新幹線車両等の高速で走行する車両においては、汚物タンク100は、タンク外から受ける圧力が大きくなり、立設される逆U字管101の寸法を大きくとる必要があった。例えば300Km/hにおける耐圧性能を保持するためには、逆U字管101の高さを1000mm以上にする必要があった。
【0009】
そして速度が向上するにつれて、耐圧値が高くなり、逆U字管101、U字管102からなる水封装置は、逆U字管101の高さを高くして大型化せざるを得ず、床下のスペースには配置出来ない場合が生じてきた。
【0010】
更に、U字管101の下部の保水量が少ない場合などは、U字管101の管内を密閉できず汚物タンクと車外が連通してしまい車外の圧力が汚物タンク内へ流入するという不具合が生じることがあった。
【0011】
更に又水封装置には、常に水が溜まっているため、寒冷地においてはその水の凍結防止のため、ヒーター等の凍結対策を行なう必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、車両用貯水型汚物タンクの水封装置であり、
気体で満たされた中空な箱体と、箱体へ汚物タンクより汚物タンク内の気体とオーバーフロー排出水を流入可能な流入管と、箱体から汚物タンクよりタンク内の気体とオーバーフロー排出水を流出可能な流出管とを有し、
流入管の下流端を箱体内へ位置させるとともに、流入管の下流端開口部には開口部を開閉可能な蓋体を設け、
汚物タンク外部の圧力が高い状態では、その圧力により蓋体が流入管の下流端開口部を密閉し、汚物タンク内部へ汚物タンク外部の空気を流入させず、
汚物タンク内部の圧力が高い状態では、その圧力により蓋体が流入管の下流端開口部を開放し、汚物タンク外部へタンク内の気体とオーバーフロー排出水を流出可能であることを特徴とする車両用貯水型汚物タンクの水封装置を提案する。
【0013】
また、開閉可能な蓋体が、気密性を有する弾性体を付した板状体と、板状体を流入管の下流端の開口部にヒンジによって開閉可能に設けられた0012欄に記載の車両用貯水型汚物タンクの水封装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、従来の水によって外圧を封じた車両用貯水型汚物タンクの水封装置と相違して、外部圧力の流入防止のために水を使わないため水を常に補う必要がなく、補水のための給水管等の設置の必要がなくなった。
【0015】
そのため、U字管への水の給水のため車体内へ連通する給水管を通じて汚物タンクの臭気が車内へ流入することがなくなった。
【0016】
また、新幹線等の高速電車のように高速のため汚物タンク外の圧力が高圧となるような場合であっても高さの高い逆U字管、U字管を付設する必要がなく、高速化においても、非常に省スペース化が出来る効果がある。
【0017】
更に、この発明は水封装置に水を使わないため、寒冷地等における水の凍結凍結防止機能を有する装置を付設する必要がなくなる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施形態について、車両用貯水型汚物タンクの関連装置の説明図である図1、図1の水封装置の拡大説明図である図2に基づいて説明する。
【0019】
汚物タンク2は、この実施形態では新幹線等の車両1の床下に設置され、逆U字管からなる流入管10を介して水封装置1を外に付設している。汚物タンク2は、車両内に設置される場合もあり、この発明の水封装置1は、汚物タンク2が車内設置の場合も適用される。
【0020】
汚物タンク2には、車体3内に設置された排水設備である大便器4及び小便器5からは大便汚水管6及び小便汚水管7を通じて連通している。排水設備としては、大便器4及び小便器5以外の他の実施形態では、手洗装置、オストメイト装置などがある。大便器4及び小便器5は、水揚装置8から給水管9を通って給水洗浄される。
【0021】
水封装置1は、気体で満たされた中空な箱体10と、箱体10へ汚物タンク2より汚物タンク2内の気体とオーバーフロー排出水を流入可能な流入管11と、箱体10から汚物タンク2より汚物タンク2内の気体とオーバーフロー排出水を流出可能な流出管12とを有するとともに、流入管11の下流端開口部11aを箱体10内へ位置させるとともに、流入管11の下流端開口部11aには開閉可能な蓋体13を設けている。流入管11の下流端開口部11aの開口面の角度は、垂直より斜め上方を向いた角度で開口している。
【0022】
開閉可能な蓋体13は、気密性を有するゴム等の弾性体13aと、弾性体13aを付した板状体(フラッパー)13bと、板状体13bを流入管11の下流端の開口部11aに開閉自在に設けるヒンジ13cとからなる。蓋体13は、流入管11の下流端開口部11aの開口面が垂直より斜め上方を向いた角度で開口しており、ヒンジ13cは開口部11aの上側に取付けられている。
【0023】
箱体10は、底面を漏斗状、角錐状にして最下部に開口部を設け流出管12を接続している。
【0024】
次に、この発明の実施形態の車両用貯水型汚物タンクの水封装置の作用について説明する。
【0025】
新幹線などが高速走行でトンネル内に入ったときのような汚物タンク2の外部の圧力が、汚物タンク2の内部圧力より高い状態になると、水封装置1は、流出管12等から箱体10内に圧力が高まり、その圧力により蓋体13が流入管11の下流端開口部11aを押圧することによって密閉する。したがって汚物タンク2の外部の圧力が、汚物タンク2の内部圧力より高い状態になった場合でも、汚物タンク2の内部圧力が上がることはない。
【0026】
また、逆に、大便器4や小便器5から汚物タンク2への汚物流入時、あるいは車両3の動揺等により汚物タンク2の内部圧力が上昇したときは、その圧力によって汚水や臭気体がオーバーフローして流入管11を通り、流入管11の下端開口部11aをその高まった内部圧力で蓋体13を開放して、箱体10内へ自動流入する。このとき蓋体13は、オーバーフロー汚水や臭気体などによって押上げられ、ヒンジ13cを回動中心に回動させる。オーバーフローの終了後は蓋体13は、自重によって流入管11の下端開口部11aを閉鎖する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、電車、列車、バス、特に新幹線車両や長距離用の電車、列車に設置され利用される可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実態形態を示す車両用貯水型汚物タンクの関連装置の説明図
【図2】図1の水封装置の拡大説明図
【図3】従来技術の車両用貯水型汚物タンクの水封装置の説明図
【符号の説明】
【0029】
1 水封装置
10 箱体
11 流入管
11 流入管の下流側開口部
12 流出管
13 蓋体
13a 弾性体
13b 板状体
13c ヒンジ
2 汚物タンク
3 車体
4 大便器
5 小便器
6 大便器汚水管
7 小便器汚水管
8 水揚装置
9 給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用貯水型汚物タンクの水封装置であり、
気体で満たされた中空な箱体と、箱体へ汚物タンクより汚物タンク内の気体とオーバーフロー排出水を流入可能な流入管と、箱体から汚物タンクよりタンク内の気体とオーバーフロー排出水を流出可能な流出管とを有し、
流入管の下流端を箱体内へ位置させるとともに、流入管の下流端開口部には開口部を開閉可能な蓋体を設け、
汚物タンク外部の圧力が高い状態では、その圧力により蓋体が流入管の下流端開口部を密閉し、汚物タンク内部へ汚物タンク外部の空気を流入させず、
汚物タンク内部の圧力が高い状態では、その圧力により蓋体が流入管の下流端開口部を開放し、汚物タンク外部へタンク内の気体とオーバーフロー排出水を流出可能であることを特徴とする車両用貯水型汚物タンクの水封装置。
【請求項2】
開閉可能な蓋体が、気密性を有する弾性体を付した板状体と、板状体を流入管の下流端の開口部にヒンジによって開閉可能に設けられた請求項1に記載の車両用貯水型汚物タンクの水封装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate