車両用電池容器
【課題】軽量、靱性、強度を具えた車両用電池容器を提供する。
【解決手段】車両用電池容器は、合成樹脂材を用いて成形する。車両用電池容器の周囲の壁体を、外壁と内壁からなる二重壁構造とする。更に外壁と内壁を、それぞれ異なる性質を有する樹脂から成形する。
【解決手段】車両用電池容器は、合成樹脂材を用いて成形する。車両用電池容器の周囲の壁体を、外壁と内壁からなる二重壁構造とする。更に外壁と内壁を、それぞれ異なる性質を有する樹脂から成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載させる駆動用蓄電池を内部に収納し、車体外方に取り付ける車両用電池容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、内燃機関に電動機を組み合わせた、いわゆるハイブリッド車などは、駆動用蓄電池を搭載し、走行用の動力等に駆動用蓄電池に蓄えた電力を用いている。一方駆動用蓄電池は、セルと呼ばれる単電池を複数重ね合せて構成されており、全体では相当な重量になることがある。また駆動用蓄電池を車体の外方に取り付けた場合には、走行中に石が当たったり、あるいは事故時に過大な力が加えられることが考えられる。
【0003】
そのため、所定の強度を備えた電池容器内に駆動用蓄電池を収納し、電池容器を介して車両に搭載させることが考えられている。トラックなどの貨物用車両では、車体中央に前後方向に延びるメインフレームが設けてあり、かかる車両のハイブリッド車では、メインフレームの側方に、駆動用蓄電池を収納した電池容器を取り付けることが行なわれている。
【0004】
一方近年特に車両は、軽量化が求められている。例えば、電池容器を一般的な金属材料で製造すると、車両重量が著しく増加する。そこで、電池容器を合成樹脂材で形成することが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−186390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら電池容器を車両に搭載して用いる場合には、電池容器には剛性とともに容易に破断せず、周壁部分に孔などが形成されない靭性も必要とされる。高い剛性を有する合成樹脂材としては、繊維強化系プラスチックが知られているが、靱性において、繊維強化系プラスチックは十分とは言えなかった。
【0007】
また駆動用蓄電池は、精密な制御が行なわれており、充放電等による電流・電圧変動により電磁波を発生させることがある。電池容器には、人体や周辺機器類に電磁波による影響が及ばないように、収納した駆動用蓄電池から発せられる電磁波を遮断する機能が求められている。
【0008】
電池容器を金属製とすれば、金属が電磁波を反射するため電磁波による問題は生じない。ところが、合成樹脂材では通常電磁波を遮断できず、電池容器を合成樹脂材で形成すると、駆動用蓄電池から発せられる電磁波が電池容器を通過し、周囲に放出されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、軽量化が図れ、十分な剛性と靭性を備え、しかも電磁波の外部への放出を生じさせない車両用電池容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため車両用電池容器を次のように構成した。
車両用電池容器は、容器本体と、容器本体に取り付けられる蓋体から構成する。容器本体は、所定量の駆動用蓄電池を収納する容量を有した、上面が開放された容器体である。蓋体は、容器本体の上面開口に合わせて形成してあり、容器本体の開口部に組み付けると容器本体の内部を密閉させる。
【0011】
容器本体と蓋体はともに、外壁と内壁からなる二重壁構造で形成されている。外壁と内壁は、適度な距離を保ち、ほぼ平行に形成されている。また外壁と内壁は、それぞれ異なる性質を有する部材から形成されている。
【0012】
例えば外壁は、高密度ポリエチレンなど、靱性を具えた合成樹脂材から形成し、内壁は、電磁波の通過を遮断させる電磁波遮断性樹脂材から形成する。電磁波遮断性樹脂材は、例えば合成樹脂材の内部に繊維状の金属片や炭素材などを混入させて導電性を付与した合成樹脂材である。尚、外壁と内壁の樹脂材を内外逆に用いてもよい。
【0013】
容器本体や蓋体は、外壁と内壁を組み合わせた後、それらの端縁どうしを溶着などにより接合して形成する。外壁や内壁は、真空成形方法を用いた樹脂成形法などにより成形する。
【0014】
また、外壁と内壁の少なくとも一方を高密度ポリエチレン樹脂を用いて形成し、組み合わせた外壁と内壁の間に電磁波遮断性部材を設け、外壁と内壁の端縁どうしを接合して形成してもよい。電磁波遮断性部材は、金属薄膜、導電性塗料など、電磁波を反射あるいは吸収などして、遮断させる部材であればよい。
【発明の効果】
【0015】
車両用電池容器は、外壁と内壁からなる二重壁構造であるため、外壁や内壁単独の板厚に比較して、高い剛性と強度を具えている。したがって、所定の重量を有する駆動用蓄電池を確実に保持できる。また車両用電池容器の外面に締結バンドなどを回し、車両のシャーシフレーム等に確実に取り付けることができる。
【0016】
外壁と内壁を異なる性質を有する樹脂としたので、少なくとも2種類の所望の性質を付与できる。外壁と内壁の少なくとも一方を、例えば高密度ポリエチレンなどの靭性を備えた樹脂材から形成すれば、万一事故などが発生して外部から衝撃を受けた場合でも、車両用電池容器の外周部材に破断や開口などを発生させることがない。そのため、駆動用蓄電池の導電部が車両用電池容器の外部から接触可能な状態となったり、あるいは駆動用蓄電池が車両用電池容器の外に露出されてしまうことなどを確実に防止できる。
【0017】
車両用電池容器は合成樹脂製であるので、軽量化でき、車両の燃費や走行性能を向上できる。電磁波が駆動用蓄電池から発せられても、外壁と内壁のいずれか一方が電磁波遮断性樹脂材で形成されていたり、外壁と内壁の間に電磁波遮断性部材が介在されるので、電磁波を遮断し、車両用電池容器外に電磁波が放出されない。真空成形法により成形できるので、正確な形状の車両用電池容器を、容易に、かつ安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる車両用電池容器の一実施形態の一部を示す断面図である。
【図2】同車両用電池容器の一部を示す断面図である。
【図3】車両用電池容器の成形方法を示す分解図である。
【図4】他の例の車両用電池容器の一部を示す断面図である。
【図5】車両用電池容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】同車両用電池容器を車両に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】車両のフレーム構造を示す平面図である。
【図8】車両を示す斜視図である。
【図9】電池容器の真空成形法を示す概略構成図である。
【図10】電池容器の真空成形法を示す概略構成図である。
【図11】電池容器の真空成形法を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる、車両用電池容器の一実施形態について説明する。
【0020】
図8に、車両100を示す。車両100は、本発明にかかる車両用電池容器(以下、「電池容器」とする。)10を側方に搭載した、貨物用のハイブリッド車両である。車両100は、前方にキャビン102を備え、後方に荷箱104を備え、キャビン102の下部に前輪12a、荷箱104の下部に後輪12bを有している。車両100には、メインフレーム106が車両前後を貫いて設けられており、電池容器10はメインフレーム106の側方に取り付けられている。
【0021】
図7に、車両100を上方から見たときの概略構成を示す。車両100の幅方向の中央に、メインフレーム106が前後方向に設けられている。メインフレーム106は、断面コの字状のフレーム部材107を、左右1対平行に配して構成されている。メインフレーム106には、前方からエンジン14、クラッチ機構16、電動機20、変速機18が取り付けられている。更にメインフレーム106には、電池容器10とパワーコントロールユニット26が側方に取り付けられている。
【0022】
エンジン14は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン14の出力軸は、クラッチ機構16に接続している。クラッチ機構16は、エンジン14と電動機20との間に設けられ、エンジン14からの回転出力を断続させる。変速機18は、内部に変速機構を備え、出力軸(図示せず。)がプロペラシャフト30、差動装置31を介して後輪12bに接続している。
【0023】
電動機20は、パワーコントロールユニット26を介して、電池容器10内に収納されている駆動用蓄電池36(図5参照。)に接続している。パワーコントロールユニット26は、制御装置(図示せず。)からの指示に従い、電動機20に電力を供給する。電動機20は、エンジン14とは個別に作動し、変速機18に駆動力を付与する。また電動機20は、制動時に後輪12bから受ける駆動力で発電を行なう。電動機20が発電した電力は、駆動用蓄電池36に蓄えられる。
【0024】
このように車両100は、内燃機関であるエンジン14からの動力と電動機20からの動力との異なる動力を個別に、あるいは同時に利用して走行可能な、いわゆるハイブリッド車である。尚、エンジン14は、ガソリンエンジン等その他の内燃機関のエンジン、あるいは内燃機関でなく、他の動力源であってもよい。また本発明にかかる車両は、電力のみを駆動源にして走行する電気自動車であってもよい。
【0025】
更に電動機20は、設置する位置を特に問わない。例えば、エンジン14とクラッチ機構16との間に電動機20を設けても良い。更に電動機20を前輪12aに連結させ、前輪12aを電動機20により駆動可能としてもよい。
【0026】
電池容器10は、図5に示すように容器本体32と蓋体34から構成され、内部に駆動用蓄電池36および冷却機構38が収納されている。
【0027】
駆動用蓄電池36は、一単位となる電池セルを複数重ね合せて、所定の電圧となるよう形成された高出力電池である。冷却機構38は、駆動用蓄電池36の上部に設けられ、ブロア40と、温度計測器(図示せず。)と、各種ダクト類42などからなり、温度計測器での計測結果に基づき、電池容器10に形成された流入口(図示せず。)から導入した外気を内部に通し、排気口(図示せず。)から排出して、駆動用蓄電池36を所定の温度に保持する。
【0028】
次に、電池容器10の構造について具体的に説明する。
【0029】
電池容器10は、図6にも示すように概ね直方体の形状をなし、全体が合成樹脂材から形成されている。容器本体32は、底板50と底板50の周囲に立ち上げられた壁板52とから構成されている。底板50は、概ね長方形で、底板50の周囲の各端縁に壁板52がほぼ垂直に立ち上げられ、側壁を形成している。底板50と壁板52は、容器本体32の周囲の壁体を形成する。
【0030】
容器本体32の正面(車両100においては左側面)の壁板52の右方には、点検、修理用の開口部58が形成されている。開口部58には取付蓋66が取り付けてあり、開口部58は通常取付蓋66により閉じられている。また、内部温度調整用の流入口と排気口(いずれも図示せず。)が、底板50や壁板52に形成してある。
【0031】
図1に、壁板52の上部端縁の断面を示す。壁板52は、図1に示すように外壁54と内壁56とからなる二重壁構造で形成されている。外壁54は、容器本体32の外方に位置し、内壁56は内方に位置している。また図に示すように壁板52は、上端の外周部分において、外壁54と内壁56の端部が溶着されている。外壁54と内壁56の端部が溶着されて形成された接合部55は、容器本体32の上縁外周全体に連続して設けられている。
【0032】
外壁54と内壁56は、図1に示すように所定の間隙を有し、ほぼ平行に設けられている。尚、外壁54と内壁56は、常に一定の間隙でなく、容器本体32の位置に応じてその間隔を適宜変更してもよい。またかかる外壁54と内壁56は、底板50においても壁板52から連続して、同様に形成されている。
【0033】
外壁54は、高密度ポリエチレンなどの、強度とともに靱性を有する合成樹脂材から形成されている。内壁56は、導電性樹脂材から形成されている。内壁56を形成する導電性樹脂材は、例えば合成樹脂材に、繊維状金属や炭素粒子、炭素繊維等を混在させて形成する。内壁56は、電池容器10に駆動用蓄電池36を収納した際、駆動用蓄電池36が発生する電磁波を反射、あるいは吸収し、電池容器10の外に電磁波を放出させることのない性能を具えている。また内壁56と外壁54は、互いに良好な溶着性を有する樹脂材で形成されている。
【0034】
壁板52は、外壁54と内壁56と一体で所定の強度等、すなわち容器本体32、ひいては電池容器10を構成するに十分な剛性と強度、及び靱性を備えるように、それぞれの材質、厚み、形状等を選択して形成されている。
【0035】
蓋体34は、容器本体32の上面形状に適合させて形成してあり、容器本体32の上部開放部分に取り付けると、容器本体32の内部を密閉させる。蓋体34は、容器本体32と同様、外壁54と内壁56からなる二重壁構造である。
【0036】
蓋体34の外壁54と内壁56の構成は、容器本体32の構成と同様であり、これにより蓋体34は、所定の強度と剛性、及び靱性を具え、かつ、電磁波を遮断する電磁波遮断性を具えている。蓋体34の外壁54と内壁56は、蓋体34の周囲の壁体を形成する。尚蓋体34は、容器本体32と別体としても、ヒンジ等で容器本体32に開閉自在に取り付けてもよい。
【0037】
更に、容器本体32に蓋体34を組み付けた際に両者が接する部分では、導電性樹脂材にて形成された内壁56同士が直接接触して導電状態となり、電磁波を蓋体34と容器本体32の組み付け部分から電池容器10の外に放出させることを防ぐ。
【0038】
図6に、電池容器10を車両100に取り付けた状態を示す。
電池容器10は、図6に示すように、メインフレーム106の左側のフレーム部材107に取り付けられている。フレーム部材107には、L字状のステー74が取り付けてある。ステー74の下部の張出部分には、棚板76が取り付けてあり、棚板76上に電池容器10が載置されている。ステー74の前端には、ベルト78の一端が固定してある。ベルト78は、例えば金属製ベルトであり、電池容器10の前面と上面に沿って回され、他端がメインフレーム106に設けられた取付具80に着脱可能に取り付けられている。
【0039】
次に、電池容器10の製造方法について図を用いて説明する。
【0040】
容器本体32は、図3に示すように外方部材46と内方部材48から形成されている。外方部材46は、容器本体32の外方に位置し、外壁54を形成する。内方部材48は、容器本体32の内方に位置し、内壁56を形成する。
【0041】
まず、外方部材46の成形に関して説明する。図9に、成形装置110を示す。成形装置110は、ヒータ112と、枠体114と、金型116と、空気ポンプ118と、駆動機構(図示せず。)などから構成された真空成形装置である。
【0042】
枠体114には、シート材60が固定してある。シート材60は、外壁54を形成する合成樹脂部材、例えば高密度ポリエチレン樹脂から形成されている。枠体114は、シート材60の周囲を固定し、シート材60を、ヒータ112の近傍に配置し所定温度に加熱する。シート材60が所定温度に加熱されたら、空気ポンプ118を作動させ、金型116の通気孔120から空気をシート材60に向けて噴き出させ、シート材60を上方に延伸させる。
【0043】
図10に示すように、空気の噴出によりシート材60が延伸し、所定の形状に湾曲されたら、通気孔120からの空気の噴出を停止させ、駆動機構により枠体114を下降させる。
【0044】
図11に示すように枠体114を金型116の下部まで下降させ、シート材60を金型116の表面に押し付ける。また空気ポンプ118を吸引側に作動させ、通気孔120を介してシート材60を金型116の表面に密着させる。シート材60が金型116に沿った所定の形状に成形されたら、シート材60を冷却し、固化させる。シート材60が固化したら、金型116から取り外す。シート材60の外周を切断して成形し、外方部材46を形成する。
【0045】
同様にして、内方部材48を成形する。内方部材48は、シート材60を導電性樹脂材から形成し、かかるシート材60を成形装置110で、上述した外方部材46と同様の真空成形方法により成形する。尚、内方部材48を成形する場合は、内方部材48を成形する専用の金型を用いる。
【0046】
外方部材46と内方部材48がそれぞれ成形されたら、図3に示すように内方部材48を外方部材46の内側に組み入れる。外方部材46と内方部材48は、互いの間隔が所定の距離を持つように配置される。互いの間隔を保つため、スペーサなどを両者の間に配置してもよい。そして、図2に示すように外方部材46と内方部材48のそれぞれ上部端縁53を上下方向から互いに溶着し、両者を一体に接合する。
【0047】
蓋体34も、容器本体32と同様、成形装置110を用いた真空成形方法により外方部材46と内方部材48の2つの部材を形成し、それらを組み合わせた後、端縁外周を溶着し、一体に接合させる。蓋体34は、容器本体32と同様所定の強度と剛性、及び靱性を具え、容器本体32に組み付けると、電池容器10に所定の強度、剛性等をもたらす。また、容器本体32と蓋体34の外壁54の一部を切除するなどして容器本体32に蓋体34を組み付けたとき容器本体32と蓋体34の内壁56どうしが直接接触するように形成する。
【0048】
このように電池容器10を成形したことにより、電池容器10の周囲の壁体が二重壁構造となり、十分な剛性を有するとともに、外壁54を形成する高密度ポリエチレンにより、十分な靭性がもたらされ、車両100が衝突したり、飛び石などにより電池容器10が衝撃を受けても、壁板52に亀裂が生じたり、開口部が形成されたりすることがない。そのため、駆動用蓄電池36の導電部分などが電池容器10の外から接触可能となったり、駆動用蓄電池36が電池容器10から外部に露出されたりすることがない。
【0049】
更に内壁56を導電性樹脂材から成形し、駆動用蓄電池36から発生した電磁波が内壁56により反射もしくは吸収される。したがって、電池容器10から電磁波が遮断され、外部に放出されることがなく、電池容器10の近傍において、人や周辺機器類に電磁波による影響を与えることがない。
【0050】
更に、電池容器10を合成樹脂材により成形したことにより、電池容器10の重量増加を抑制でき、車両100の走行性能や燃費などの悪化を防止できる。電池容器10は、剛性や強度と靭性とを適度に備えているので、車両100のメインフレーム106に、ベルト78による締結で確実に固定させることができる。
【0051】
電池容器10の他の例を図4に示す。これは、外方部材46と内方部材56をともに同一の合成樹脂材、例えば高密度ポリエチレンで成形し、外方部材46と内方部材48の間に中間部材62を設けて構成した。外方部材46と内方部材48は、両者を接合した状態で、電池容器10として所定の剛性、強度が得られるようにそれぞれの厚み等が選択されている。
【0052】
中間部材62は、アルミニウム製で、外方部材46と内方部材48の間隙に適合させて形成してある。中間部材62は、外方部材46と内方部材48の間隙全体を囲うように設けられる。蓋体34においても同様に形成し、外側部材46と内側部材48の間に、中間部材62を、外方部材46と内方部材48の間隙全体を囲うように設ける。
【0053】
このように電池容器10を形成しても、所定の剛性と靱性が外方部材46と内方部材48により得られ、更に、中間部材62により電磁波を反射させ、内部の駆動用蓄電池36から発せられる電磁波を電池容器10で遮断できる。尚、この場合、容器本体32の中間部材62と蓋体34の中間部材62を電気的に導通させることが、電磁波の漏洩を防止する点から望ましい。
【0054】
更に他の例として、外方部材46と内方部材48の少なくとも一方を、二層構造で成形する。例えば、所定の強度と靱性を有する合成樹脂材と電磁波遮断性樹脂部材の二層のシート材60を形成し、かかるシート材60を用いて容器本体32の外方部材46あるいは内方部材48、また蓋体34の外方部材46あるいは内方部材48を形成する。そして外方部材46と内方部材48の他方を同一、あるいは他の所定の樹脂材で成形する。成形した外方部材46と内方部材48とを、上述したように接合させる。
【0055】
このようにして電池容器10を形成すれば、所定の剛性と靱性とを備え、かつ中間部材62を用いることなく、電磁波遮断性を電池容器10にもたらすことができる。
【0056】
更に、中間部材62を板材等から形成し、中間部材62によっても電池容器10に所定の強度、あるいは靱性をもたらすように構成する。すると、外方部材46と内方部材48を形成する樹脂部材の板厚等を低減させることができる。また、中間部材62が塑性変形することを利用し、靱性がもたらされる。
【0057】
尚、中間部材62は、アルミニウムでなく他の素材から形成してもよく、また中間部材62は、板状でなく、薄紙状その他であってもよい。また外方部材46もしくは内方部材48と中間部材62とは、直接接触したり、互いに接着された状態であってもよい。あるいは、互いに離れた状態で設けられていてもよい。更に、外方部材46と内方部材48のいずれか一方と中間部材62とを接着等させてもよい。
【0058】
また外方部材46の材質は、高密度ポリエチレン樹脂に限定する必要はなく、本発明に要求される要件を満たす性質を有すれば、他の材料であってもよい。また内方部材48を、導電性樹脂から形成したが、それに限らず、電磁波を遮断する塗料を表面に塗布することが可能な性質を有する合成樹脂部材で成形してもよい。この場合、内方部材48に電磁波遮断性塗料を塗布して、電池容器10に電磁波遮断性を付与する。また外方部材46と内方部材48等を真空成形方法で成形したが、本発明は、それに限るものではなく、射出成形などを用いて外方部材46等を成形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、駆動用蓄電池を搭載した、電気車両やハイブリッド車両等に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用電池容器 14…エンジン 20…電動機 32…容器本体 34…蓋体 36…駆動用蓄電池 46…外方部材 48…内方部材 50…底板 52…壁板 54…外壁 55…接合部 56…内壁 60…シート材 62…中間部材 100…車両 106…メインフレーム 110…成形装置 112…ヒータ 114…枠体 116…金型 118…空気ポンプ 120…通気孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載させる駆動用蓄電池を内部に収納し、車体外方に取り付ける車両用電池容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、内燃機関に電動機を組み合わせた、いわゆるハイブリッド車などは、駆動用蓄電池を搭載し、走行用の動力等に駆動用蓄電池に蓄えた電力を用いている。一方駆動用蓄電池は、セルと呼ばれる単電池を複数重ね合せて構成されており、全体では相当な重量になることがある。また駆動用蓄電池を車体の外方に取り付けた場合には、走行中に石が当たったり、あるいは事故時に過大な力が加えられることが考えられる。
【0003】
そのため、所定の強度を備えた電池容器内に駆動用蓄電池を収納し、電池容器を介して車両に搭載させることが考えられている。トラックなどの貨物用車両では、車体中央に前後方向に延びるメインフレームが設けてあり、かかる車両のハイブリッド車では、メインフレームの側方に、駆動用蓄電池を収納した電池容器を取り付けることが行なわれている。
【0004】
一方近年特に車両は、軽量化が求められている。例えば、電池容器を一般的な金属材料で製造すると、車両重量が著しく増加する。そこで、電池容器を合成樹脂材で形成することが考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−186390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら電池容器を車両に搭載して用いる場合には、電池容器には剛性とともに容易に破断せず、周壁部分に孔などが形成されない靭性も必要とされる。高い剛性を有する合成樹脂材としては、繊維強化系プラスチックが知られているが、靱性において、繊維強化系プラスチックは十分とは言えなかった。
【0007】
また駆動用蓄電池は、精密な制御が行なわれており、充放電等による電流・電圧変動により電磁波を発生させることがある。電池容器には、人体や周辺機器類に電磁波による影響が及ばないように、収納した駆動用蓄電池から発せられる電磁波を遮断する機能が求められている。
【0008】
電池容器を金属製とすれば、金属が電磁波を反射するため電磁波による問題は生じない。ところが、合成樹脂材では通常電磁波を遮断できず、電池容器を合成樹脂材で形成すると、駆動用蓄電池から発せられる電磁波が電池容器を通過し、周囲に放出されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、軽量化が図れ、十分な剛性と靭性を備え、しかも電磁波の外部への放出を生じさせない車両用電池容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため車両用電池容器を次のように構成した。
車両用電池容器は、容器本体と、容器本体に取り付けられる蓋体から構成する。容器本体は、所定量の駆動用蓄電池を収納する容量を有した、上面が開放された容器体である。蓋体は、容器本体の上面開口に合わせて形成してあり、容器本体の開口部に組み付けると容器本体の内部を密閉させる。
【0011】
容器本体と蓋体はともに、外壁と内壁からなる二重壁構造で形成されている。外壁と内壁は、適度な距離を保ち、ほぼ平行に形成されている。また外壁と内壁は、それぞれ異なる性質を有する部材から形成されている。
【0012】
例えば外壁は、高密度ポリエチレンなど、靱性を具えた合成樹脂材から形成し、内壁は、電磁波の通過を遮断させる電磁波遮断性樹脂材から形成する。電磁波遮断性樹脂材は、例えば合成樹脂材の内部に繊維状の金属片や炭素材などを混入させて導電性を付与した合成樹脂材である。尚、外壁と内壁の樹脂材を内外逆に用いてもよい。
【0013】
容器本体や蓋体は、外壁と内壁を組み合わせた後、それらの端縁どうしを溶着などにより接合して形成する。外壁や内壁は、真空成形方法を用いた樹脂成形法などにより成形する。
【0014】
また、外壁と内壁の少なくとも一方を高密度ポリエチレン樹脂を用いて形成し、組み合わせた外壁と内壁の間に電磁波遮断性部材を設け、外壁と内壁の端縁どうしを接合して形成してもよい。電磁波遮断性部材は、金属薄膜、導電性塗料など、電磁波を反射あるいは吸収などして、遮断させる部材であればよい。
【発明の効果】
【0015】
車両用電池容器は、外壁と内壁からなる二重壁構造であるため、外壁や内壁単独の板厚に比較して、高い剛性と強度を具えている。したがって、所定の重量を有する駆動用蓄電池を確実に保持できる。また車両用電池容器の外面に締結バンドなどを回し、車両のシャーシフレーム等に確実に取り付けることができる。
【0016】
外壁と内壁を異なる性質を有する樹脂としたので、少なくとも2種類の所望の性質を付与できる。外壁と内壁の少なくとも一方を、例えば高密度ポリエチレンなどの靭性を備えた樹脂材から形成すれば、万一事故などが発生して外部から衝撃を受けた場合でも、車両用電池容器の外周部材に破断や開口などを発生させることがない。そのため、駆動用蓄電池の導電部が車両用電池容器の外部から接触可能な状態となったり、あるいは駆動用蓄電池が車両用電池容器の外に露出されてしまうことなどを確実に防止できる。
【0017】
車両用電池容器は合成樹脂製であるので、軽量化でき、車両の燃費や走行性能を向上できる。電磁波が駆動用蓄電池から発せられても、外壁と内壁のいずれか一方が電磁波遮断性樹脂材で形成されていたり、外壁と内壁の間に電磁波遮断性部材が介在されるので、電磁波を遮断し、車両用電池容器外に電磁波が放出されない。真空成形法により成形できるので、正確な形状の車両用電池容器を、容易に、かつ安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる車両用電池容器の一実施形態の一部を示す断面図である。
【図2】同車両用電池容器の一部を示す断面図である。
【図3】車両用電池容器の成形方法を示す分解図である。
【図4】他の例の車両用電池容器の一部を示す断面図である。
【図5】車両用電池容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】同車両用電池容器を車両に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図7】車両のフレーム構造を示す平面図である。
【図8】車両を示す斜視図である。
【図9】電池容器の真空成形法を示す概略構成図である。
【図10】電池容器の真空成形法を示す概略構成図である。
【図11】電池容器の真空成形法を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる、車両用電池容器の一実施形態について説明する。
【0020】
図8に、車両100を示す。車両100は、本発明にかかる車両用電池容器(以下、「電池容器」とする。)10を側方に搭載した、貨物用のハイブリッド車両である。車両100は、前方にキャビン102を備え、後方に荷箱104を備え、キャビン102の下部に前輪12a、荷箱104の下部に後輪12bを有している。車両100には、メインフレーム106が車両前後を貫いて設けられており、電池容器10はメインフレーム106の側方に取り付けられている。
【0021】
図7に、車両100を上方から見たときの概略構成を示す。車両100の幅方向の中央に、メインフレーム106が前後方向に設けられている。メインフレーム106は、断面コの字状のフレーム部材107を、左右1対平行に配して構成されている。メインフレーム106には、前方からエンジン14、クラッチ機構16、電動機20、変速機18が取り付けられている。更にメインフレーム106には、電池容器10とパワーコントロールユニット26が側方に取り付けられている。
【0022】
エンジン14は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン14の出力軸は、クラッチ機構16に接続している。クラッチ機構16は、エンジン14と電動機20との間に設けられ、エンジン14からの回転出力を断続させる。変速機18は、内部に変速機構を備え、出力軸(図示せず。)がプロペラシャフト30、差動装置31を介して後輪12bに接続している。
【0023】
電動機20は、パワーコントロールユニット26を介して、電池容器10内に収納されている駆動用蓄電池36(図5参照。)に接続している。パワーコントロールユニット26は、制御装置(図示せず。)からの指示に従い、電動機20に電力を供給する。電動機20は、エンジン14とは個別に作動し、変速機18に駆動力を付与する。また電動機20は、制動時に後輪12bから受ける駆動力で発電を行なう。電動機20が発電した電力は、駆動用蓄電池36に蓄えられる。
【0024】
このように車両100は、内燃機関であるエンジン14からの動力と電動機20からの動力との異なる動力を個別に、あるいは同時に利用して走行可能な、いわゆるハイブリッド車である。尚、エンジン14は、ガソリンエンジン等その他の内燃機関のエンジン、あるいは内燃機関でなく、他の動力源であってもよい。また本発明にかかる車両は、電力のみを駆動源にして走行する電気自動車であってもよい。
【0025】
更に電動機20は、設置する位置を特に問わない。例えば、エンジン14とクラッチ機構16との間に電動機20を設けても良い。更に電動機20を前輪12aに連結させ、前輪12aを電動機20により駆動可能としてもよい。
【0026】
電池容器10は、図5に示すように容器本体32と蓋体34から構成され、内部に駆動用蓄電池36および冷却機構38が収納されている。
【0027】
駆動用蓄電池36は、一単位となる電池セルを複数重ね合せて、所定の電圧となるよう形成された高出力電池である。冷却機構38は、駆動用蓄電池36の上部に設けられ、ブロア40と、温度計測器(図示せず。)と、各種ダクト類42などからなり、温度計測器での計測結果に基づき、電池容器10に形成された流入口(図示せず。)から導入した外気を内部に通し、排気口(図示せず。)から排出して、駆動用蓄電池36を所定の温度に保持する。
【0028】
次に、電池容器10の構造について具体的に説明する。
【0029】
電池容器10は、図6にも示すように概ね直方体の形状をなし、全体が合成樹脂材から形成されている。容器本体32は、底板50と底板50の周囲に立ち上げられた壁板52とから構成されている。底板50は、概ね長方形で、底板50の周囲の各端縁に壁板52がほぼ垂直に立ち上げられ、側壁を形成している。底板50と壁板52は、容器本体32の周囲の壁体を形成する。
【0030】
容器本体32の正面(車両100においては左側面)の壁板52の右方には、点検、修理用の開口部58が形成されている。開口部58には取付蓋66が取り付けてあり、開口部58は通常取付蓋66により閉じられている。また、内部温度調整用の流入口と排気口(いずれも図示せず。)が、底板50や壁板52に形成してある。
【0031】
図1に、壁板52の上部端縁の断面を示す。壁板52は、図1に示すように外壁54と内壁56とからなる二重壁構造で形成されている。外壁54は、容器本体32の外方に位置し、内壁56は内方に位置している。また図に示すように壁板52は、上端の外周部分において、外壁54と内壁56の端部が溶着されている。外壁54と内壁56の端部が溶着されて形成された接合部55は、容器本体32の上縁外周全体に連続して設けられている。
【0032】
外壁54と内壁56は、図1に示すように所定の間隙を有し、ほぼ平行に設けられている。尚、外壁54と内壁56は、常に一定の間隙でなく、容器本体32の位置に応じてその間隔を適宜変更してもよい。またかかる外壁54と内壁56は、底板50においても壁板52から連続して、同様に形成されている。
【0033】
外壁54は、高密度ポリエチレンなどの、強度とともに靱性を有する合成樹脂材から形成されている。内壁56は、導電性樹脂材から形成されている。内壁56を形成する導電性樹脂材は、例えば合成樹脂材に、繊維状金属や炭素粒子、炭素繊維等を混在させて形成する。内壁56は、電池容器10に駆動用蓄電池36を収納した際、駆動用蓄電池36が発生する電磁波を反射、あるいは吸収し、電池容器10の外に電磁波を放出させることのない性能を具えている。また内壁56と外壁54は、互いに良好な溶着性を有する樹脂材で形成されている。
【0034】
壁板52は、外壁54と内壁56と一体で所定の強度等、すなわち容器本体32、ひいては電池容器10を構成するに十分な剛性と強度、及び靱性を備えるように、それぞれの材質、厚み、形状等を選択して形成されている。
【0035】
蓋体34は、容器本体32の上面形状に適合させて形成してあり、容器本体32の上部開放部分に取り付けると、容器本体32の内部を密閉させる。蓋体34は、容器本体32と同様、外壁54と内壁56からなる二重壁構造である。
【0036】
蓋体34の外壁54と内壁56の構成は、容器本体32の構成と同様であり、これにより蓋体34は、所定の強度と剛性、及び靱性を具え、かつ、電磁波を遮断する電磁波遮断性を具えている。蓋体34の外壁54と内壁56は、蓋体34の周囲の壁体を形成する。尚蓋体34は、容器本体32と別体としても、ヒンジ等で容器本体32に開閉自在に取り付けてもよい。
【0037】
更に、容器本体32に蓋体34を組み付けた際に両者が接する部分では、導電性樹脂材にて形成された内壁56同士が直接接触して導電状態となり、電磁波を蓋体34と容器本体32の組み付け部分から電池容器10の外に放出させることを防ぐ。
【0038】
図6に、電池容器10を車両100に取り付けた状態を示す。
電池容器10は、図6に示すように、メインフレーム106の左側のフレーム部材107に取り付けられている。フレーム部材107には、L字状のステー74が取り付けてある。ステー74の下部の張出部分には、棚板76が取り付けてあり、棚板76上に電池容器10が載置されている。ステー74の前端には、ベルト78の一端が固定してある。ベルト78は、例えば金属製ベルトであり、電池容器10の前面と上面に沿って回され、他端がメインフレーム106に設けられた取付具80に着脱可能に取り付けられている。
【0039】
次に、電池容器10の製造方法について図を用いて説明する。
【0040】
容器本体32は、図3に示すように外方部材46と内方部材48から形成されている。外方部材46は、容器本体32の外方に位置し、外壁54を形成する。内方部材48は、容器本体32の内方に位置し、内壁56を形成する。
【0041】
まず、外方部材46の成形に関して説明する。図9に、成形装置110を示す。成形装置110は、ヒータ112と、枠体114と、金型116と、空気ポンプ118と、駆動機構(図示せず。)などから構成された真空成形装置である。
【0042】
枠体114には、シート材60が固定してある。シート材60は、外壁54を形成する合成樹脂部材、例えば高密度ポリエチレン樹脂から形成されている。枠体114は、シート材60の周囲を固定し、シート材60を、ヒータ112の近傍に配置し所定温度に加熱する。シート材60が所定温度に加熱されたら、空気ポンプ118を作動させ、金型116の通気孔120から空気をシート材60に向けて噴き出させ、シート材60を上方に延伸させる。
【0043】
図10に示すように、空気の噴出によりシート材60が延伸し、所定の形状に湾曲されたら、通気孔120からの空気の噴出を停止させ、駆動機構により枠体114を下降させる。
【0044】
図11に示すように枠体114を金型116の下部まで下降させ、シート材60を金型116の表面に押し付ける。また空気ポンプ118を吸引側に作動させ、通気孔120を介してシート材60を金型116の表面に密着させる。シート材60が金型116に沿った所定の形状に成形されたら、シート材60を冷却し、固化させる。シート材60が固化したら、金型116から取り外す。シート材60の外周を切断して成形し、外方部材46を形成する。
【0045】
同様にして、内方部材48を成形する。内方部材48は、シート材60を導電性樹脂材から形成し、かかるシート材60を成形装置110で、上述した外方部材46と同様の真空成形方法により成形する。尚、内方部材48を成形する場合は、内方部材48を成形する専用の金型を用いる。
【0046】
外方部材46と内方部材48がそれぞれ成形されたら、図3に示すように内方部材48を外方部材46の内側に組み入れる。外方部材46と内方部材48は、互いの間隔が所定の距離を持つように配置される。互いの間隔を保つため、スペーサなどを両者の間に配置してもよい。そして、図2に示すように外方部材46と内方部材48のそれぞれ上部端縁53を上下方向から互いに溶着し、両者を一体に接合する。
【0047】
蓋体34も、容器本体32と同様、成形装置110を用いた真空成形方法により外方部材46と内方部材48の2つの部材を形成し、それらを組み合わせた後、端縁外周を溶着し、一体に接合させる。蓋体34は、容器本体32と同様所定の強度と剛性、及び靱性を具え、容器本体32に組み付けると、電池容器10に所定の強度、剛性等をもたらす。また、容器本体32と蓋体34の外壁54の一部を切除するなどして容器本体32に蓋体34を組み付けたとき容器本体32と蓋体34の内壁56どうしが直接接触するように形成する。
【0048】
このように電池容器10を成形したことにより、電池容器10の周囲の壁体が二重壁構造となり、十分な剛性を有するとともに、外壁54を形成する高密度ポリエチレンにより、十分な靭性がもたらされ、車両100が衝突したり、飛び石などにより電池容器10が衝撃を受けても、壁板52に亀裂が生じたり、開口部が形成されたりすることがない。そのため、駆動用蓄電池36の導電部分などが電池容器10の外から接触可能となったり、駆動用蓄電池36が電池容器10から外部に露出されたりすることがない。
【0049】
更に内壁56を導電性樹脂材から成形し、駆動用蓄電池36から発生した電磁波が内壁56により反射もしくは吸収される。したがって、電池容器10から電磁波が遮断され、外部に放出されることがなく、電池容器10の近傍において、人や周辺機器類に電磁波による影響を与えることがない。
【0050】
更に、電池容器10を合成樹脂材により成形したことにより、電池容器10の重量増加を抑制でき、車両100の走行性能や燃費などの悪化を防止できる。電池容器10は、剛性や強度と靭性とを適度に備えているので、車両100のメインフレーム106に、ベルト78による締結で確実に固定させることができる。
【0051】
電池容器10の他の例を図4に示す。これは、外方部材46と内方部材56をともに同一の合成樹脂材、例えば高密度ポリエチレンで成形し、外方部材46と内方部材48の間に中間部材62を設けて構成した。外方部材46と内方部材48は、両者を接合した状態で、電池容器10として所定の剛性、強度が得られるようにそれぞれの厚み等が選択されている。
【0052】
中間部材62は、アルミニウム製で、外方部材46と内方部材48の間隙に適合させて形成してある。中間部材62は、外方部材46と内方部材48の間隙全体を囲うように設けられる。蓋体34においても同様に形成し、外側部材46と内側部材48の間に、中間部材62を、外方部材46と内方部材48の間隙全体を囲うように設ける。
【0053】
このように電池容器10を形成しても、所定の剛性と靱性が外方部材46と内方部材48により得られ、更に、中間部材62により電磁波を反射させ、内部の駆動用蓄電池36から発せられる電磁波を電池容器10で遮断できる。尚、この場合、容器本体32の中間部材62と蓋体34の中間部材62を電気的に導通させることが、電磁波の漏洩を防止する点から望ましい。
【0054】
更に他の例として、外方部材46と内方部材48の少なくとも一方を、二層構造で成形する。例えば、所定の強度と靱性を有する合成樹脂材と電磁波遮断性樹脂部材の二層のシート材60を形成し、かかるシート材60を用いて容器本体32の外方部材46あるいは内方部材48、また蓋体34の外方部材46あるいは内方部材48を形成する。そして外方部材46と内方部材48の他方を同一、あるいは他の所定の樹脂材で成形する。成形した外方部材46と内方部材48とを、上述したように接合させる。
【0055】
このようにして電池容器10を形成すれば、所定の剛性と靱性とを備え、かつ中間部材62を用いることなく、電磁波遮断性を電池容器10にもたらすことができる。
【0056】
更に、中間部材62を板材等から形成し、中間部材62によっても電池容器10に所定の強度、あるいは靱性をもたらすように構成する。すると、外方部材46と内方部材48を形成する樹脂部材の板厚等を低減させることができる。また、中間部材62が塑性変形することを利用し、靱性がもたらされる。
【0057】
尚、中間部材62は、アルミニウムでなく他の素材から形成してもよく、また中間部材62は、板状でなく、薄紙状その他であってもよい。また外方部材46もしくは内方部材48と中間部材62とは、直接接触したり、互いに接着された状態であってもよい。あるいは、互いに離れた状態で設けられていてもよい。更に、外方部材46と内方部材48のいずれか一方と中間部材62とを接着等させてもよい。
【0058】
また外方部材46の材質は、高密度ポリエチレン樹脂に限定する必要はなく、本発明に要求される要件を満たす性質を有すれば、他の材料であってもよい。また内方部材48を、導電性樹脂から形成したが、それに限らず、電磁波を遮断する塗料を表面に塗布することが可能な性質を有する合成樹脂部材で成形してもよい。この場合、内方部材48に電磁波遮断性塗料を塗布して、電池容器10に電磁波遮断性を付与する。また外方部材46と内方部材48等を真空成形方法で成形したが、本発明は、それに限るものではなく、射出成形などを用いて外方部材46等を成形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、駆動用蓄電池を搭載した、電気車両やハイブリッド車両等に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用電池容器 14…エンジン 20…電動機 32…容器本体 34…蓋体 36…駆動用蓄電池 46…外方部材 48…内方部材 50…底板 52…壁板 54…外壁 55…接合部 56…内壁 60…シート材 62…中間部材 100…車両 106…メインフレーム 110…成形装置 112…ヒータ 114…枠体 116…金型 118…空気ポンプ 120…通気孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載させる駆動用蓄電池を内部に収納し、車体外方に取り付けられる車両用電池容器において、
前記車両用電池容器は、周囲の壁体を、外壁と該外壁から所定距離離れて設けられた内壁とからなる二重壁構造とし、
更に前記外壁と前記内壁を、異なる性質を有する樹脂から成形したことを特徴とする車両用電池容器。
【請求項2】
前記外壁と前記内壁の少なくとも一方は、前記車両用電池容器に所定の強度及び靱性をもたらす合成樹脂材から形成し、他方は、電磁波を通過させることのない電磁波遮断性部材から形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用電池容器。
【請求項3】
前記外壁と前記内壁の一方を形成する部材を、高密度ポリエチレンとしたことを特徴とする請求項2に記載の車両用電池容器。
【請求項4】
前記外壁と前記内壁の他方を形成する部材を、合成樹脂材に導電性部材を混入させた導電性樹脂材としたことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用電池容器。
【請求項5】
前記車両用電池容器は、前記外壁を形成する外方部材の内側に、前記内壁を形成する内方部材を所定の間隔をもって組み入れ、前記外方部材と前記内方部材の端縁を溶着して成形したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用電池容器。
【請求項6】
前記外方部材と前記内方部材の間に、中間部材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の車両用電池容器。
【請求項1】
車両に搭載させる駆動用蓄電池を内部に収納し、車体外方に取り付けられる車両用電池容器において、
前記車両用電池容器は、周囲の壁体を、外壁と該外壁から所定距離離れて設けられた内壁とからなる二重壁構造とし、
更に前記外壁と前記内壁を、異なる性質を有する樹脂から成形したことを特徴とする車両用電池容器。
【請求項2】
前記外壁と前記内壁の少なくとも一方は、前記車両用電池容器に所定の強度及び靱性をもたらす合成樹脂材から形成し、他方は、電磁波を通過させることのない電磁波遮断性部材から形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用電池容器。
【請求項3】
前記外壁と前記内壁の一方を形成する部材を、高密度ポリエチレンとしたことを特徴とする請求項2に記載の車両用電池容器。
【請求項4】
前記外壁と前記内壁の他方を形成する部材を、合成樹脂材に導電性部材を混入させた導電性樹脂材としたことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用電池容器。
【請求項5】
前記車両用電池容器は、前記外壁を形成する外方部材の内側に、前記内壁を形成する内方部材を所定の間隔をもって組み入れ、前記外方部材と前記内方部材の端縁を溶着して成形したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用電池容器。
【請求項6】
前記外方部材と前記内方部材の間に、中間部材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の車両用電池容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−84448(P2012−84448A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230936(P2010−230936)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】
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