説明

車両監視システム

【課題】低確信度の画像を収集分類することによりサンプル画像を効率的に収集して識別器の再学習を速やかに行う。
【解決手段】ナンバープレートを読み取った画像から文字画像を切り出して文字を識別する文字識別器を備え、文字識別の結果の確信度および前記切り出した文字画像を出力する複数の車番認識装置と、低確信度の文字画像を、複数グループに分類して収集してデータベースに格納する確信度判定部、および前記表示器に表示された文字画像を正しい認識結果にしたがって再分類し、前記文字画像と前記正しい認識結果の情報との紐付け情報を入力できる入力手段を備えた識別器パラメータ学習管理部を具備したセンタ装置を備え、前記再分類された文字画像および該画像と紐付けされた文字画像の認識結果の情報を教師データとして文字識別器を再学習させて文字識別器の識別パラメータを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字識別器を備えた車両監視システムに係り、特にナンバープレートの情報(車番)を読み取る文字識別器の学習機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路上を走行する車両のナンバープレートの文字情報を読み取る文字識別器を備えた車両監視システムが提案されている。例えば、特許文献1には、1文字毎に文字を識別用のニューラルネットワークに画像データを与え、ニューラルネットワークにより前記画像データに含まれる文字を認識する識別装置が示されている。
【0003】
また、識別部により文字を識別して得られたナンバープレート情報は、該情報を広域ネットワークを介して収集するセンタ装置と組み合わせることにより、事前に登録したナンバープレートを装着した車の通過を監視する車両監視システムを構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−251016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、いわゆる「ご当地ナンバー」の制度が採用されるようになり、新規の陸運支局コード(「富士山」ナンバー等)が次々に発行されるようになった。
【0006】
このため、ナンバープレートの文字を識別する識別器は、新たな「ご当地ナンバー」が発行される毎に、新たな文字への対応が必要となる。
【0007】
新規の陸運支局コードは発行時に文字フォントが決定されるため、事前に一般的な文字フォントで文字識別器を学習させておいても、実際に発行された陸運支局コードの文字フォントとは細部が一致せず、十分な認識精度が得られないことがある。
【0008】
このため、新規の陸運支局コードのナンバープレートが発行されると、発行されてから、画像サンプルを取得し文字識別器の再学習を行う等の対策を行うことが必要となる。また、旧様式プレートの陸運支局コード(「品」ナンバー等)については、その存在自体が希少であるため、文字識別器の学習に必要なサンプル画像の入手自体が困難である。このため、高精度の読み取りを行うことが難しく、例えば読み取り非対応としなければならないことがある。
【0009】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、サンプル画像を効率的に収集して再学習を速やかに行うことのできる文字識別器を備えた車両監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0011】
ナンバープレートを読み取った画像から文字画像を切り出して文字を識別する文字識別器を備え、文字識別の結果の確信度および前記切り出した文字画像を出力する複数の車番認識装置と、前記確信度が所定の閾値以下の低確信度の文字画像を、類似画像分類アルゴリズムにしたがって複数グループに分類して低確信度文字画像として収集してデータベースに格納する確信度判定部、並びに前記データベースの内容をグループ毎に表示する表示器、および前記表示器に表示された文字画像を正しい認識結果にしたがって再分類し、前記文字画像と前記正しい認識結果の情報との紐付け情報を入力できる入力手段を備えた識別器パラメータ学習管理部を具備したセンタ装置を備え、識別器パラメータ学習管理部は、前記収集され再分類された低確信度の文字画像および該画像と紐付けされた低確信度の文字画像の認識結果の情報を教師データとして文字識別器を再学習させて文字識別器の識別パラメータを更新する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上の構成を備えるため、サンプル画像を効率的に収集して識別器の再学習を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態にかかる車両監視システムを説明する図である。
【図2】文字識別器の詳細を説明する図である。
【図3】低確信度の文字画像をデータベースに登録する手順を説明する図である。
【図4】切り出した低確信度の文字画像の分類例を示す図である。
【図5】登録対象グループを識別器学習文字画像データベースに登録する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる車両監視システムを説明する図である。
【0015】
図1において、車両監視システムを構成する車番認識装置101は、ナンバープレートから文字部分を切り出した画像から陸運支局コード等の文字を識別するニューラルネットワーク等に代表される文字識別器1011を備える。文字識別器1011は、読み取ったナンバープレート情報、読み取った際に得られる認識結果の確信度および前記文字切り出し画像を出力する機能を備える。
【0016】
また、車両監視システムを構成するセンタ装置102は、ISDN等の広域ネットワーク103を介して複数の車番認識装置101と通信接続する。確信度判定部1021は、受信した前記認識結果の確信度を所定値と比較判定し、低確信度である場合には、受信した文字切り出し画像を、低確信度文字画像をグループ化した画像グループのうちの前記文字切り出し画像が類似する画像グループに登録する。1022は低確信度文字画像データベースであり、前記低確信度文字画像を、例えば類似画像分類アルゴリズムにしたがってグループ化して登録してある。
【0017】
1023は識別器パラメータ学習管理部であり、管理者は、文字切り出し画像を、前記低確信度文字画像データベース1022に登録された画像グループ毎に、表示装置に画面表示して、表示された文字切り出し画像を、その「読み」(正解値)にしたがって再分類する。また、このとき前記文字切り出し画像を前記「読み」と紐付けし、その結果を、識別器学習文字画像データベース1024登録する。
【0018】
識別器パラメータ学習管理部1023は、さらに前記正解値を教師データとして、文字識別器を再学習させて、文字識別器パラメータデータベース1025に格納された文字識別器パラメータを更新する。なお、更新された文字識別器パラメータは広域ネットワーク103を介して各車番認識装置の文字識別器に送信される。なお、広域ネットワーク103の回線容量が小さい場合は、確信度判定部1021を車番認識装置101側に備えることで、通信量を低減することができる。
【0019】
図2は、文字識別器1011の詳細を説明する図である。202はニューラルネットワークであり、入力層2021、中間層2022、および出力層2023を備える。
【0020】
陸運支局コードを1文字単位に認識する場合は、文字切り出し画像201を構成する濃淡データを入力層2021に入力すると、中間層2022を経由して出力層2023に出力が現れる。この出力層2023からは、識別結果および識別結果の確信度(0〜1の範囲)が出力される。図2の例では、識別結果が「品」のニューロンが最大の出力である「0.9」を出力しているので、識別結果は「品」であり、識別の確信度は「0.9」である。
【0021】
文字識別器1011の学習には、前記識別器学習文字画像データベース1024に格納されたデータを教師データとして用い、入力層と中間層の結合荷重を変化させるバックプロパゲーション法等を用いることができる。これにより識別文字の確信度を高くすることができる。このように、ニューラルネットワークとして階層型ネットワークを用い、出力してほしい出力値(教師データ)を与えて階層間での信号の伝播処理を繰り返し行うことにより、与えられた問題に対する望ましい入出力パターンを得ることができる。
【0022】
図3は、低確信度の文字画像を低確信度文字画像データベースに登録する手順を説明する図である。例えば、前記閾値を0.5(0.1〜0.9の間で変更可能)と設定した場合を例に説明する。
【0023】
まず、出力層2023から出力された識別の結果、該結果の確信度および前記切り出した文字画像をそれぞれ取得し、確信度が前記閾値以下であるか否かを判定する(ステップS301,302)。確信度が閾値以下である場合には、前記切り出した文字画像(低確信度の文字画像)を予め定めた複数の類似グループに分類する。なお、前記切り出した文字画像を類似グループに分類するには、公知の類似画像分類アルゴリズムを利用することができる(ステップS303)。同時に前記文字切り出し画像を低確信度文字画像データベース1022に登録する(ステップS304,305)。
【0024】
図4は、切り出した低確信度の文字画像の分類例を示す図である。低確信度の文字画像データベース1022内に形成した画像グループ401,402,403には、それぞれ類似する画像が登録されている。しかし、ナンバープレートの撮影条件あるいは類似画像分類アルゴリズムの特性のバラツキ等のため、切り出し画像を正確に識別して同一文字を表す切り出し画像のみをグループ化するとは限らない。例えば、「品」と識別できる切り出し画像が大半を占める画像グループ401にこれとは異なる「柏」と識別できる切り出し画像が混入することがある。
【0025】
図5は、低確信度文字画像の中の新たに高確信度で識別させたい文字画像のグループ(登録対象グループ)を識別器学習文字画像データベースに登録する手順を説明する図である。
【0026】
まず、システムの管理者は低確信度文字画像データベースの内容を図示しない表示器に表示して、低確信度文字画像の中に新たに高確信度で識別させたい画像グループ(登録対象グループ)があるか否かを判断し、登録対象グループがある場合には、該グループ内の画像を整理する。整理に際しては、例えば画像グループ内の不要な画像(例えば前記図4に示す「柏」)を削除する(ステップS501,502)。
【0027】
次に、登録対象グループを読み取り結果の文字(例えば画像グループ402の場合は正解値である「品」)と紐付けして、識別器学習文字画像データベースに登録する(ステップS503,504)。
【0028】
この後、図1に示す識別器パラメータ学習管理部1023は、前記識別器学習文字画像データベースに登録された内容(登録対象グループに含まれる文字画像およびこれに紐付けされた読み取り結果の文字)を教師データとして文字識別器を再学習させ、文字識別器1011の識別パラメータ1025を更新する。更新した識別パラメータは、広域ネットワーク網103を介して各車番認識装置101の文字識別器1011に送信し、文字識別器1011の識別パラメータを前記文字識別器パラメータ1025に更新する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、車番認識装置は、読み取ったナンバープレート情報、読み取った際に得られる文字識別器の確信度および文字切り出し画像を出力する。センタ装置側では、予め指定した閥値以下の確信度の文字切り出し画像を類似グループ毎に分類してデータベースに保存する。一方、管理者は保存した画像の再分類を行い、読み取り結果の文字(正解値)と紐付けてデータベースに登録する。前記正解値を教師データとして、文字識別器を再学習させ更新することで 新たな文字認識に対応することができる。また、確信度の閥値を従来認識していた文字の確信度の平均値とすることで、認識精度が悪化したときに個別に対象となる車番認識装置の文字識別器を再学習させることを可能とすることができる。
【0030】
このように、低確信度の画像を収集分類することで、現在認識対応していない文字、すなわち新たに発行されたご当地ナンバーや希少な旧様式ナンバーのサンプル画像を効率的に収集でき、速やかに認識対応させることができる。
【0031】
さらに、システム運用開始時からのカメラ光学系の経年劣化等による画像変化に対応して、文字識別器を再学習させて認識精度低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0032】
101 車番認識装置
102 センタ装置
103 広域ネットワーク
1011 文字識別器
1021 確信度判定部
1022 低確信度文字画像データベース
1023 識別器パラメータ学習管理部
1024 識別学習文字画像データベース
1025 文字識別器パラメータデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナンバープレートを読み取った画像から文字画像を切り出して文字を識別する文字識別器を備え、文字識別の結果の確信度および前記切り出した文字画像を出力する複数の車番認識装置と、
前記確信度が所定の閾値以下の低確信度の文字画像を、類似画像分類アルゴリズムにしたがって複数グループに分類して低確信度文字画像として収集してデータベースに格納する確信度判定部、並びに前記データベースの内容をグループ毎に表示する表示器、および前記表示器に表示された文字画像を正しい認識結果にしたがって再分類し、前記文字画像と前記正しい認識結果の情報との紐付け情報を入力できる入力手段を備えた識別器パラメータ学習管理部を具備したセンタ装置を備え、
識別器パラメータ学習管理部は、前記収集され再分類された低確信度の文字画像および該画像と紐付けされた低確信度の文字画像の認識結果の情報を教師データとして文字識別器を再学習させて文字識別器の識別パラメータを更新することを特徴とする車両監視システム。
【請求項2】
ナンバープレートを読み取った画像から文字画像を切り出して文字を識別する文字識別器を備え、識別の結果の確信度および前記切り出した文字画像を出力する複数の車番認識装置と、
前記確信度が所定の閾値以下の低確信度の文字画像を、類似画像分類アルゴリズムにしたがって複数グループに分類して低確信度文字画像として収集してデータベースに格納する確信度判定部、並びに前記データベースの内容をグループ毎に表示する表示器、および前記表示器に表示された文字画像を正しい認識結果にしたがって再分類し、前記文字画像と前記正しい認識結果の情報との紐付け情報を入力できる入力手段を備えた識別器パラメータ学習管理部を具備し、前記車番認識装置と通信回線を介して接続するセンタ装置を備え、
識別器パラメータ学習管理部は、前記収集され再分類された低確信度の文字画像および該画像と紐付けされた低確信度の文字画像の認識結果の情報を教師データとして文字識別器を再学習させて文字識別器の識別パラメータを更新し、更新した識別パラメータを前記通信回線を介して各車番認識装置の文字識別器に送信することを特徴とする車両監視システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両監視システムにおいて、
前記確信度の閾値は、過去における認識結果の平均値に設定したことを特徴とする車両監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate