説明

車両計量装置

【課題】 被計量物としてのトラックの重心高さを含む重心情報を正確に求める。
【解決手段】 本発明に係るトラックスケールの計量部30は、概略矩形平板の計量台32と、この計量台32を水平に支持する4つのロードセル34,34,…と、当該計量台32の上面に設けられた傾斜ブロック36,36,…と、を備えている。トラックは、計量台32の上面に直接載置されることによって、水平載置状態とされ、傾斜ブロック36,36,…上に載置されることによって、傾斜載置状態とされる。それぞれの状態にあるときの各ロードセル34,34,…による荷重検出値に基づいて、トラックの総重量値と、重心の位置と、当該重心の高さと、が求められる。なお、水平載置状態および傾斜載置状態のいずれにおいても、計量台32および各ロードセル34,34,…の姿勢は不変である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両計量装置に関し、特に、車両の重心の高さを含む重心情報を求める機能を備えた、車両計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両計量装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、一端が軸支された傾動台と、この傾動台の他端を上下動可能に支持する上下動機構と、当該傾動台上に間隔をおいて配設された少なくとも2つの荷重計と、各荷重計により支持された被測定物用載荷盤と、この載荷盤の傾動台上面に沿った動きのみを規制する規制手段と、が具備されている。この構成において、まず、傾動台が水平状態とされ、このときに各荷重計から得られる荷重検出値に基づいて、被測定物としての車両の重量と、当該車両の左右方向における重心位置と、が求められる。続いて、傾動台が傾斜状態とされ、このときの各荷重計による荷重検出値と、先に求められた車両の重量および重心位置と、に基づいて、当該車両の重心の高さが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−9606号公報(第2頁,第4図および第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来技術では、傾動台が水平状態にあるときには、載荷盤もまた水平状態にあり、各荷重計は当該載荷盤を介して垂直方向のみの荷重を受ける。ところが、傾動台が傾斜状態にあるときには、載荷盤もまた傾斜状態にあり、さらには各荷重計自体も傾斜する。このため、各荷重計に対して載荷盤の傾斜方向に沿う力(特許文献1の第4図におけるW)が加わる。つまり、傾動台が水平状態にあるときと傾斜状態にあるときとで、各荷重計による荷重検出条件が異なる。しかも、載荷盤の傾斜方向に沿って各荷重計に加わる力は、当該各荷重計に対して曲げモーメントとして作用する。これにより、各荷重計に曲げ歪が発生し、当該各荷重計による荷重検出値に誤差が生じる。その一方で、載荷盤が水平状態にあるときには、この曲げモーメント(曲げ歪)に起因する誤差は生じない。このように、従来技術では、傾動台が水平状態にあるときと傾斜状態にあるときとで、各荷重計に対して曲げモーメントが作用するか否かを含め、当該各荷重計による荷重検出条件が異なるため、車両の重心の高さを正確に求めることができない、という問題がある。
【0005】
なお、特許文献1の第3図には、別の構成が開示されており、具体的には、被測定物が載置される載荷盤と、この載荷盤の一端を支持する荷重計と、この荷重計を水平方向に移動可能とする可動支持脚と、雄ねじを介して載荷盤の他端を支持する別の荷重計と、当該雄ねじを上下動させる駆動装置と、を具備する構成が開示されている。この構成によれば、載荷盤が水平状態にあるときと傾斜状態にあるときとで、各荷重計自体の姿勢は不変である。しかし、同特許文献1にも開示されているように、各荷重計の相対位置が変わるので(第2頁右側欄第20行〜第3頁左側欄第6頁参照)、やはり当該各荷重計による荷重検出条件が異なる。また、載荷盤が傾斜状態にあるときには、この載荷盤を支持する各荷重計に対して、当該載荷盤の傾斜方向に沿う荷重分力が曲げモーメントとして作用する。特に、雄ねじを介して載荷盤を支持する側(第3図における右側)の荷重計に対しては、当該雄ねじによる載荷盤の上昇(傾斜)度合に従って、より大きな曲げモーメントが作用する。さらに、載荷盤と各荷重計とが枢支という言わば半固定的な構造で接合されているので、載荷盤が撓むと、その影響が各荷重計に直接及ぶ。つまり、載荷盤の撓み(動き)が各荷重計によって拘束されるため、各荷重計に対して垂直方向以外の力が加わり、この結果、当該各荷重計による荷重検出値に誤差が生じる。このように、特許文献1の第3図に開示された構成においても、載荷盤が水平状態にあるときと傾斜状態にあるときとで、各荷重計による荷重検出条件が異なり、その上、載荷盤の撓みの影響が各荷重計に直接及ぶため、車両の重心の高さを含む重心情報を正確に求めることができない。
【0006】
そこで、本発明は、車両の重心の高さを含む重心情報を従来よりも正確に求めることができる車両計量装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の車両計量装置は、上部に被計量物としての車両が載置される計量台を、具備する。そして、この計量台の下部に可動的に接触した状態で当該計量台を支持すると共に、当該計量台を介して印加される荷重を検出する複数の荷重検出手段をも、具備する。さらに、計量台の上部に設けられ、車両の左右方向において当該車両が水平方向に対して第1角度を成した姿勢で載置される第1載置状態と、第1角度とは異なる第2角度を成した姿勢で車両が載置される第2載置状態と、を選択的に形成する載置状態形成手段を、具備する。加えて、車両が第1載置状態にあるときに各荷重検出手段から得られる第1荷重検出値と、当該車両が第2載置状態にあるときに各荷重検出手段から得られる第2荷重検出値と、に基づいて、車両の重心の高さを含む重心情報を求める重心情報演算手段を、具備する。
【0008】
このように構成された本発明によれば、計量台の上部に載置状態形成手段が設けられており、この載置状態形成手段によって、当該計量台上に、車両がその左右方向において水平方向に対して第1角度を成した姿勢で載置される第1載置状態と、当該車両がその左右方向において水平方向に対して第1角度とは異なる第2角度を成した姿勢で載置される第2載置状態と、が選択的に形成される。このとき、第1載置状態および第2載置状態のいずれにおいても、計量台は、常に一定の姿勢を保つ。そして、計量台を支持する各荷重検出手段もまた、常に一定の姿勢を保つ。つまり、各荷重検出手段による荷重検出条件が、常に不変である。さらに、各荷重検出手段は、計量台の下部に可動的に接触した状態、要するに単に接触した状態、にある。従って、車両の荷重を受けて計量台が撓んだとしても、この計量台の撓み(動き)が各荷重検出手段によって拘束されることはなく、ゆえに、当該計量台の撓みが各荷重検出手段に直接及ぶことはない。
【0009】
なお、第1角度および第2角度の一方は、略零であり、当該第1角度および第2角度の他方は、鋭角であってもよい。例えば、第1角度が略零である場合には、第1載置状態として、車両が水平な姿勢で載置される言わば水平載置状態が、形成される。そして、第2角度が鋭角となるので、第2載置状態として、車両がその左右方向において水平方向に対して当該鋭角な第2角度で傾斜した姿勢で載置される言わば傾斜載置状態が、形成される。第1角度が鋭角であり、第2角度が略零である場合は、これと逆になる。
【0010】
また、それぞれの荷重検出手段は、計量台の下部に接触すると共に当該計量台を介して荷重の印加を受ける荷重受け部と、荷重検出手段自体を支持する基部に接触すると共に当該基部からの荷重の反力を受ける反力受け部と、を有するものであってもよい。この場合、計量台の下部のうち、少なくとも荷重受け部との接触部分は、水平な平面形状を成すのが、望ましい。基部についても、同様に、当該基部のうち、少なくとも反力受け部との接触部分は、水平な平面形状を成すのが、望ましい。この構成によれば、それぞれの荷重検出手段の荷重受け部に対して、計量台を介して、常に垂直な方向の荷重のみが印加され、垂直方向以外の力が加わることはない。そして、それぞれの荷重検出手段の反力受け部に対しても、基部から、常に垂直な方向の反力のみが印加され、垂直方向以外の力が加わることはない。従って、例えば、それぞれの荷重検出手段が、概略柱状の起歪体を有するロードセルであり、当該起歪体の一端(上方端)が荷重受け部として計量台の下部に接触され、他端(下方端)が反力受け部として基部に接触された状態で、設置される場合には、この起歪体を含む荷重検出手段に曲げモーメントが作用することはない。
【0011】
また、計量台の上部は、車両の左右方向において水平方向に対して上述の第1角度を成す一平面に位置する第1平面部分を有するものであってもよく、例えば水平な概略平面であってもよい。この場合、載置状態形成手段は、当該計量台の上部に、車両の左右方向において水平方向に対して第2角度を成す第2平面、例えば傾斜面、を形成する第2平面形成台を含むものとする。そして、車両が計量台の第1平面部分に載置されることによって、言い換えれば第2平面形成台に非載置とされることによって、第1載置状態が形成され、車両が第2平面形成台に載置されることによって、第2載置状態が形成されてもよい。
【0012】
ここで、第1平面部分と第2平面形成台とは、車両の進退方向(前後方向)に沿って並んで存在するのが、望ましい。この構成によれば、車両が進退方向に移動することで、第1載置状態と第2載置状態とが選択的に形成される。
【0013】
さらに、第2平面形成台は、計量台の上部に対して、特に任意の位置に、着脱自在であるのが、望ましい。この構成によれば、計量対象となる車両の車輪の位置や数に合わせて、当該第2平面形成台の位置や数が変更されることで、様々な車両に柔軟に対応することが可能となる。
【0014】
これとは別に、載置状態形成手段は、車両が載置される載置体と、この載置体の左右方向における水平方向に対する角度を変化させることによって第1載置状態と第2載置状態とを選択的に形成する角度変化手段と、を含むものであってもよい。ここで言う載置体は、例えば比較的に剛性の高い概略平板状の部材によって構成される。そして、角度変化手段は、モータやシリンダ等の所定の駆動手段を用いて、載置体の角度を変化させるものとしてもよい。
【0015】
さらに、本発明では、車両の重心情報を出力する情報出力手段が、備えられてもよい。ここで、情報出力手段は、当該重心情報を視覚的な態様で出力してもよく、例えばディスプレイに表示し、或いはプリントアウトしてもよい。また、音声等の聴覚的な態様で当該重心情報を出力してもよい。
【0016】
加えて、本発明では、車両の重心情報に基づいて当該車両が転倒する危険性を評価する危険性評価手段が、備えられてもよい。即ち、車両の重心が中心から大きく偏っているほど、或いは高いほど、当該車両は不安定となり、転倒し易くなる。このような車両の転倒の危険性を事前に評価するべく、危険性評価手段が、備えられてもよい。
【0017】
例えば、危険性評価手段は、道路の傾斜による車両の転倒の危険性を評価してもよい。具体的には、道路の傾斜が最大でどれくらいまで許容されるのかや、この言わば最大許容傾斜角が所定の基準条件を満足するか否か等を、評価してもよい。
【0018】
また、危険性評価手段は、車両のカーブ走行時における当該車両の転倒の危険性を評価してもよい。詳しくは、或るカーブの曲率に対して車両の走行速度が最高でどれくらいまで許容されるのかや、この言わば最高許容速度が所定の基準条件を満足するか否か等を、評価してもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明によれば、第1載置状態および第2載置状態のいずれにおいても、各荷重検出手段による荷重検出条件が不変である。また、各荷重検出手段は、計量台に対して可動的に接触しているので、たとえ計量台が撓んだとしても、その影響が各荷重検出手段に直接及ぶことはない。従って、常に正確な荷重検出値が得られ、ひいては車両の重心の高さを含む重心情報を従来よりも正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るトラックスケールの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図3】同実施形態における傾斜ブロックの特に固定構造を説明するための図解図である。
【図4】同計量部の特に計量台を上方から見た別の図解図である。
【図5】同計量台にトラックが水平に載置された状態を示す図解図である。
【図6】同トラックが傾斜載置状態にあるときの図解図である。
【図7】図6の要部を模擬的に示す図解図である。
【図8】同実施形態におけるトラックの転倒の危険性に関する評価要領を説明するための図解図である。
【図9】図8とは異なる評価要領を説明するための図解図である。
【図10】同実施形態におけるCPUの動作を示すフローチャートである。
【図11】図10に続くフローチャートである。
【図12】同実施形態の一応用例を示す図解図である。
【図13】同実施形態における計量部の別の例を示す図解図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係るトラックスケールの計量部の構成を示す図解図である。
【図15】同計量部を構成する計量台にトラックが水平に載置された状態を示す図解図である。
【図16】同トラックが傾斜載置状態にあるときの図解図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係るトラックスケールの計量部の構成を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態について、トラックスケールを例に挙げて説明する。
【0022】
図1に示すように、この第1実施形態に係るトラックスケール10は、例えば地面に設置される計量部30と、この計量部30を視認できる室内に設置されるデータプロセッサ50と、を備えている。このうち、計量部30は、被計量物としてのトラック100が載置される計量台32と、この計量台32を支持する互いに同一規格の複数の荷重検出手段、例えば4つのデジタル式ロードセル34,34,…と、を備えている。また、計量台32の上面には、後述する傾斜面Bを形成する傾斜ブロック36が設けられており、この傾斜ブロック36は、左側ブロック38と右側ブロック40との組合せから成る。さらに、当該傾斜ブロック36は、トラック100の車軸数と同数、ここでは3組、設けられている。
【0023】
具体的には、計量台32は、図2に示すような矩形平板であり、厳密には剛性の向上を図るためのリブ等の補強部材を備えた概略矩形の金属製平板である。そして、この計量台32の下方の4隅に、各ロードセル34,34,…が配置されており、当該計量台32は、その上面および下面が水平を成すように、これら各ロードセル34,34,…によって支持されている。なお、トラック100は、例えば図2(a)および(b)において、右側から計量台32に乗り入れられ、左側に進むことで当該計量台32から降りるものとする。つまり、図2(a)および(b)におけるの左右方向が、トラック100の進退方向(前後方向)であるとする。
【0024】
それぞれのロードセル34は、特に図2(b)に示すように、概略円柱状の起歪体42と、この起歪体42の周囲に貼り付けられた歪み検出手段としての図示しない歪みゲージと、を備えている。そして、ロードセル34は、起歪体42が直立姿勢となるように、計量台32の下面と、図示しない地面上に敷設された水平な基部(基礎面)200と、の間に設置されている。つまり、起歪体42の上方端44は、計量台32からの荷重を受ける荷重受け部を成し、当該起歪体42の下方端46は、基部200からの荷重の反力を受ける反力受け部を成す。さらに、荷重受け部としての起歪体42の上方端44は、上方に向かって突出した概略球状(ドーム状)に形成されており、計量台32の下面(厳密には当該下面に設けられた図示しない荷重受け金具の水平平面状の荷重受け面)に対して単に接触した状態で、言わば可動的に、接合されている。従って、後述するように、計量台32がトラック100の載荷によって撓んだとしても、この計量台32の撓みが各ロードセル34,34,…によって拘束されることはなく、ゆえに、当該計量台32の撓みの影響が各ロードセル34,34,…に直接及ぶことはない。一方、反力受け部としての起歪体42の下方端46もまた、同様に、下方に向かって突出した概略球状に形成されており、基部(厳密には当該基部に設けられた図示しない反力受け金具の水平平面状の反力受け面)200に対して可動的に接合されている。
【0025】
なお、各ロードセル34,34,…には、“LC1”,“LC2”,“LC3”および“LC4”という個別の識別符号が付されている。詳しくは、図2(a)において、左下隅に配置されたロードセル34に“LC1”という識別符号が付されており、右下隅に配置されたロードセル34に“LC2”という識別符号が付されている。そして、右上隅に配置されたロードセル34に“LC3”という識別符号が付されており、左上隅に配置されたロードセル34に“LC4”という識別符号が付されている。これ以降、各ロードセル34,34,…については、当該“LC1”,“LC2”,“LC3”および“LC4”という識別符号を用いて表現することがある。
【0026】
加えて、計量台30の上面に、上述の如く3組の傾斜ブロック36,36,…が設けられており、それぞれの傾斜ブロック36は、左側ブロック38と右側ブロック40から成る。各傾斜ブロック36,36,…は、トラック100の進退方向に沿って間隔を置いて設けられており、かつ、それぞれの左側ブロック38は、計量台30を後方(図2(a)および(b)の右側)から見たときに左側に配置され、それぞれの右側ブロック40は、当該計量台30を後方から見たときに右側に配置されている。そして、トラック100の進退方向における各傾斜ブロック36,36,…間の距離(中心間距離)L1およびL2は、当該トラック100の車軸間の距離LaおよびLbと等価(L1=LaおよびL2=Lb)とされている。併せて、それぞれの左側ブロック38と右側ブロック40との中心間距離L3は、トラック100の左右のタイヤ(車輪)110および120間距離(中心間距離)Ldと等価(L3=Ld)とされている。つまり、各左側ブロック38,38,…は、特に図2(b)に2点鎖線の円130,130,…で示すように、トラック100の各左側タイヤ110,110,…を載置させるためのものであり、このとき、当該トラック100の各右側タイヤ120,120,…は、各右側ブロック40,40,…に載置される。このため、それぞれの左側ブロック38は、概略四角錐台状とされており、その上面寸法L4×L5は、トラック100のタイヤ110(または120)の接地寸法よりも十分に大きめとされている。それぞれの右側ブロック40の上面寸法L6×L7もまた、トラック100のタイヤ120(または110)の接地寸法よりも十分に大きめとされている。このような左右のブロック38および40から成る傾斜ブロック36についても、高い剛性を持つことが必要とされ、例えばステンレス等の金属製とされる。なお、それぞれのタイヤ110および120がいわゆるダブルタイヤである場合には、当該ダブルタイヤの中心位置がそれぞれのタイヤ110および120の中心位置とされる。
【0027】
さらに、それぞれの傾斜ブロック36は、特に図2(c)に示すように、トラック100の左右方向において、厳密には当該左右方向に沿う鉛直面上において、計量台32の上面に対して例えば左側(反時計回り方向)にθという所定の角度を成す傾斜面Bを形成する。このため、後述するように、トラック100が傾斜ブロック36,36,…に載置されているとき、詳しくは各左側タイヤ110,110,…が各左側ブロック38,38,…に載置されると共に、各右側タイヤ120,120,…が各右側ブロック40,40,…に載置されているときには、当該トラック100は、水平方向に対して左側にθという角度だけ傾斜した姿勢になる。言わば、トラック100の傾斜載置状態が形成される。そして、トラック100が傾斜ブロック36,36,…に載置されていないとき、詳しくは全てのタイヤ110,110,…および120,120,…が計量台32の水平な上面に直接載置されているときには、トラック100の水平載置状態が形成される。
【0028】
なお、ここで言う傾斜角θは、水平方向に対して左側に成すのではなく、右側(時計回り方向)に成す角度であってもよい。また、この傾斜角θは、後述する重心Gの高さHが高精度に求められるようにする(厳密には、水平載置状態時の各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4による荷重検出値W11,W12,W21およびW22と、傾斜載置状態時の当該各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4による荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’と、の差(変化量)が、これらに含まれるノイズ成分に比べて十分に大きくなるようにする)上で、可能な限り大きい方が望ましいが、大きすぎると、トラック100が転倒する恐れがある。従って、当該傾斜角θは、トラック100が転倒しない範囲内で可能な限り大きいのが望ましく、例えばθ=10°前後が適当である。また、それぞれの傾斜ブロック36は、計量台32上の任意の位置に着脱可能とされており、言い換えれば、当該傾斜ブロック36の位置や個数は、任意に変更可能とされている。これは、車軸数や車軸間距離の異なる様々なトラック100に柔軟に対応できるようにするためである。このような傾斜ブロック36は、適当な固定手段、例えば図示しないボルト、によって、計量台32上に固定される。具体的には、左側ブロック38に関しては、その平面図である図3(a)に示すように、当該左側ブロック38へのトラック100(左側タイヤ110)の乗降の妨げにならない位置、例えばその左右の両端縁部分に、縦断面形状が概略凹状の窪み部38aおよび38aが形成されており、それぞれの窪み部38aに、ボルト挿通用の複数、例えば2つの、貫通孔38bおよび38bが設けられている。これと同様に、右側ブロック40についても、その平面図である図3(b)に示すように、当該右側ブロック40の左右の両端縁部分に、窪み部40aおよび40aが形成されており、それぞれの窪み部40aに、ボルト挿通用の2つの貫通孔40bおよび40bが設けられている。そして、計量台32上には、これらの貫通孔38b,38b,…および40b,40b,…に対応する複数の図示しないネジ孔が穿設されており、適宜のネジ孔に対して左側ブロック38および右側ブロック70のそれぞれが当該ボルトで固定されることによって、当該左側ブロック38および右側ブロック70それぞれの位置や個数が任意に(互いに揃えられた状態で)決定される。
【0029】
加えて、計量台32の上面には、図4に示すように、当該計量台32へのトラック100の乗り入れを案内するべく、塗料やシール等の適当な目印材料または計量台32の上面自体の機械加工によって、適宜のマーク、例えば2本の直線状ライン140および150、が付されている。この直線状ライン140および150は、計量台32の中心線CLを挟んで互いに対称的に、かつ、トラック100の進退方向に沿って延伸するように、付されている。また、各ライン140および150の中心間距離L3’は、トラック100の左右各タイヤ110および120の中心間距離Ldと等価(L3’=Ld)であり、言い換えれば左右各ブロック38および40の中心間距離L3と等価(L3’=L3’)である。従って、この直線状ライン140および150を目安として、つまりそれぞれの直線状ライン140および150の中心を左右それぞれのタイヤ110および120が辿るようにして、トラック100が乗り入れられることで、当該トラック100は、その左右方向(図4の上下方向)において、計量台32の中央に位置するようになる。
【0030】
その上で、さらに詳しく言うと、トラック100の第2軸目のタイヤ110および120が計量台32の最も乗り入れ口側(図4において最も右側)にある傾斜ブロック36を乗り越えたところで当該トラック100が停止されることによって、上述の水平載置状態が形成される。そして、この水平載置状態からトラック100が少し前に移動して、全てのタイヤ110,110,…および120,120,…が各傾斜ブロック36,36,…(左右各ブロック38,38,…および40,40,…)上に乗り上がったところで当該トラック100が停止されることによって、傾斜載置状態が形成される。
【0031】
図1に戻って、計量台32にトラック100が載置されると、厳密には水平載置状態とされると、当該トラック100の重量Wtに応じた荷重が各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4に分散して印加される。すると、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4は、それぞれに印加された荷重の大きさを表すデジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22を出力する。そして、これらのデジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22は、データプロセッサ50に入力される。なお、各デジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22には、計量台32や傾斜ブロック36,36,…等の荷重のように最初から各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4に印加されている荷重成分、いわゆる初期荷重成分、が含まれているが、ここでは、便宜上、当該初期荷重成分については抜きにして説明する。
【0032】
データプロセッサ50は、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4からのデジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22の入力を受け付ける入出力インタフェース(I/O)回路52を備えている。そして、この入出力インタフェース回路52に入力されたデジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22は、さらにCPU(Central
Processing Unit)54に入力される。CPU54は、入出力インタフェース回路52経由で入力されたデジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22に基づいて、トラック100の総重量値Wtを算出する。なお、このトラック100の総重量値Wtの算出に当たっては、本来ならばゼロ調整およびスパン調整が必要とされるが、ここでは、便宜上、これらについても抜きにして説明する。つまり、ここで言うデジタル荷重検出信号W11,W12,W21およびW22は、それぞれのロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4によるトラック100の荷重検出値そのものを表しており、そうすると、当該トラック100の総重量値Wtは、次の式1によって表される。
【0033】
《式1》
Wt=W11+W12+W21+W22
【0034】
さらに、計量台32の左側に位置する2つのロードセルLC1およびLC2による合計荷重検出値をW1(=W11+W12)とし、当該計量台32の右側に位置する2つのロードセルLC3およびLC4による合計荷重検出値をW2(=W21+W22)とすると、上述の式1は、次の式2のように表される。
【0035】
《式2》
Wt=W1+W2
where W1=W11+W12,W2=W21+W22
【0036】
このようにしてトラック100の総重量値Wtが求められると、CPU54は、これを情報出力手段としての表示器、例えば液晶型のディスプレイ56、に表示する。また、CPU54は、左右の合計荷重検出値をW1およびW2についても、表示器56に表示する。このため、表示器56は、入出力インタフェース回路52を介して、CPU54に接続されている。このCPU54の動作は、記憶手段としてのメモリ回路58に記憶されている制御プログラムに従う。また、CPU54には、これに各種命令を入力するための命令入力手段としての例えば操作キー60も接続されている。なお、表示器56と操作キー60とは、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。
【0037】
併せて、CPU54は、トラック100の重心Gの位置、厳密には左右方向における当該トラック100の中心P0から重心Gまでの距離、言わば偏心量Lz、を求める。
【0038】
具体的には、図5に示すように、計量台32の上面における左側のタイヤ110、110,…列の中心位置、言わば水平時左側接地位置、をP1とし、当該計量台32の上面における右側のタイヤ120,120,…列の中心位置、言わば水平時右側接地位置、をP2とすると、これら左右の水平時接地位置P1およびP2間の距離Ldは、既知である。そして、左側のロードセル34および34(LC1およびLC2)列の荷重受け点をPfとし、右側のロードセル34および34(LC3およびLC4)列の荷重受け点をPrとすると、これら左右の荷重受け点PfおよびPr間の距離L8もまた、既知である。従って、水平時左側接地位置P1から左側荷重受け点Pfまでの距離Leは、Le=(1/2)・(L8−Ld)となる。水平時右側接地位置P2から右側荷重受け点Prまでの距離Leもまた、同じである。
【0039】
ここで、左側のタイヤ110、110,…列に印加される水平時荷重合計値をWaとし、右側のタイヤ120,120,…列に印加される水平時荷重合計値をWbとすると、次の式3が成立する。
【0040】
《式3》
Wa+Wb=W1+W2
【0041】
そして、左右の水平時接地位置P1およびP2のうちの一方、例えば左側接地位置P1と、左右方向における重心Gの位置、厳密には当該重心Gを通る鉛直線と計量台32の上面との交点P3と、の相互間距離をLxとすると、次の式4および式5が成立する。
【0042】
《式4》
Wa・Lx=Wb・(Ld−Lx)
【0043】
《式5》
(Le+Lx)・W1=(Ld−Lx+Le)・W2
【0044】
さらに、式5から、距離Lxは、次の式6のように表される。
【0045】
《式6》
Lx={(W2−W1)・Le+Ld・W2}/(W1+W2)
【0046】
従って、偏心量Lzは、次の式7によって求められる。
【0047】
《式7》
Lz=Lx−(Ld/2)
【0048】
つまり、CPU54は、この式7に基づいて、偏心量Lzを求める。そして、この偏心量Lzについても、表示器56に表示する。なお、この式7からも分かるように、偏心量Lzがゼロ(Lz=0)であるときは、重心Gは、トラック100の中心P0に位置し、言わば無偏心状態にある。そして、偏心量Lzが負数(Lz<0)であるときは、重心Gは、トラッ100の中心P0よりも左側に位置し、言わば左側偏心(偏荷重)状態にある。これとは反対に、偏心量Lzが正数(Lz>0)であるときは、重心Gは、トラック100の中心P0よりも右側に位置し、言わば右側偏心状態にある。
【0049】
続いて、トラック100が傾斜載置状態とされる。このときに各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4から得られる荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’は、水平載置状態時に得られる荷重検出値W11,W12,W21およびW22とは異なる。CPU54は、この傾斜載置状態時に得られる左側のロードセルLC1およびLC2による合計荷重検出値W1’(=W11’+W12’)と、右側のロードセルLC3およびLC4による合計荷重検出値W2’(=W21’+W22’)と、水平載置状態時の左右の合計荷重検出値W1およびW2と、当該水平載置状態時に求められた重心Gの位置P3を表す距離Lxと、に基づいて、当該重心Gの高さHを求める。
【0050】
具体的には、図6に示すように、傾斜ブロック36(左側ブロック38)上における左側タイヤ110、110,…列の中心位置、言わば傾斜時左側接地位置、をP1’とし、当該傾斜ブロック36(右側ブロック40)上における右側タイヤ120,120,…列の中心位置、言わば傾斜時右側設接地置、をP2’とすると、これら左右の傾斜時接地位置P1’およびP2’間の距離Ldは、既知である。そして、傾斜時左側接地位置P1’に印加される左側タイヤ110,110,…列経由の合計荷重Wa’は、計量台32の上面においては、当該傾斜時左側接地位置P1’を通る鉛直線との交点P1”に作用する。これと同様に、傾斜時右側接地位置P2’に印加される右側タイヤ120,120,…列経由の合計荷重Wb’は、計量台32の上面においては、当該傾斜時右側接地位置P2’を通る鉛直線との交点P2”に作用する。さらに、傾斜ブロック36によって形成される傾斜面Bに沿って傾斜時左側接地位置P1’から中心P0側に向かって距離Lxを隔てた位置をP3’とし、この位置P3’から傾斜面Bに対する垂線に沿って上方に向かってHという距離を隔てた位置に、重心Gが存在することになる。そして、この重心Gは、傾斜面Bにおいては、当該重心Gを通る鉛直線との交点P4’に位置することになり、計量台32の上面においては、当該重心Gを通る鉛直線との交点P4に位置することになる。
【0051】
ここで、図6の要部を模擬的に示した図7を参照して、さらに詳しく説明すると、水平時左側接地位置P1を通る鉛直線と傾斜面Bとの交点をP10とし、水平時右側接地位置P2を通る鉛直線と当該傾斜面Bとの交点をP20とする。すると、これらの交点P10およびP20間の距離P10P20は、P10P20=Ld/cosθとなる。
【0052】
そして、各交点P10およびP20間の中央にトラック100が乗り込む、と仮定すると、例えば左側の交点P10と傾斜時左側接地位置P1’との相互間距離Liは、Li={(Ld/cosθ)−Ld}/2となる。右側の交点P20と傾斜時右側接地位置P2’との相互間距離Liもまた、同じである。なお、この相互間距離Liは、左右で異なってもよく、極端には、一方がゼロで、他方が2・Liであってもよい。いずれにしても、この相互間距離Li(最大で2/Li)は、上述したLe,LdおよびHという各距離に比べて十分に小さい。
【0053】
また、傾斜面Bにおける点P3’と点P4’とに注目すると、これらの相互間距離P3’P4’は、P3’P4’=H・tanθとなる。従って、傾斜時左側接地位置P1’と当該点P4’との相互間距離をLyとすると、この距離Lyは、Ly=Lx+H・tanθとなる。さらに、当該点P4’と傾斜時右側接地位置P2’との相互間距離P2’P4’は、P2’P4’=Ld−Lyとなる。
【0054】
このような幾何学的条件の下では、次の式8〜式10が成立する。
【0055】
《式8》
Wa’+Wb’=W1’+W2’
【0056】
《式9》
Wa’・Ly・cosθ=Wb’・(Ld−Ly)・cosθ
【0057】
《式10》
{Le+(Li+Ly)・cosθ}W1’
={Le+(Li+Ld−Ly)・cosθ}・W2’
【0058】
そして、式10における距離Lyに、上述のLy=Lx+H・tanθという関係が代入されることで、重心Gの高さHは、次の式11のように表される。
【0059】
《式11》
H=(1/tanθ)・{(Q/cosθ)−(Li−Lx)}
where Q={(W2’−W1’)・(Le+Li・cosθ)+Ld・cosθ・W2’}/(W1’+W2’)
【0060】
つまり、CPU54は、この式11に基づいて、重心Gの高さHを求める。そして、この高さHについても、表示器56に表示する。
【0061】
ところで、重心Gの偏心量Lzと高さHとは、トラック100の転倒の危険性(言い換えれば安全性)に大きく影響する。例えば、重心Gの偏心量Lzが大きいほど、トラック100は転倒し易くなる。また、重心Gの高さHが高い場合も、トラック100は転倒し易くなる。そこで、本第1実施形態では、上述の如く重心Gの偏心量Lzと高さHとが求められた後、これらに基づいて、トラック100の転倒の危険性がさらに評価される。
【0062】
まず、重心Gの変位量Lzそのものの大きさに基づいて、転倒の危険性が評価される。即ち、次の式12に基づいて、変位量Lzの最大許容値Lzmaxが設定される。なお、この式12におけるβは、操作キー60の操作によって任意に設定されるゼロ以上かつ1未満(0≦β<1)の設定係数である。この設定係数βの値としては、β=0.2〜0.3程度が適用であり、ここでは、例えばβ=0.25とされる。
【0063】
《式12》
Lzmax=β・Ld
【0064】
つまり、この式12によれば、設定係数βがβ=0.25である場合には、トラック100の左右のタイヤ110および120間距離Ldの1/4の値が、最大許容値Lzmax(=Ld/4)として設定される。
【0065】
このようにして最大許容値Lzmaxが設定された上で、CPU54は、偏心量Lzの絶対値|Lz|と当該最大許容値Lzmaxとを比較する。要するに、次の式13が満足されるか否かを判定する。
【0066】
《式13》
|Lz|≦Lzmax
【0067】
ここで、例えば、式13が満足される場合、CPU54は、偏心量Lzそのものについては安全条件をクリアしているものと判定し、次に説明する道路300の傾斜による転倒の危険性の評価に進む。一方、式13が満足されない場合には、CPU54は、偏心量Lzそのものが過大であり、トラック100が転倒する危険性がある、と判定する。そして、その旨の警告メッセージを表示器56に表示する。この警告メッセージの表示を受けて、運転手等の作業者は、トラック100の荷物を点検し、適宜に積み直す。
【0068】
道路300の傾斜による転倒の危険性の評価においては、当該道路300の傾斜が最大でどれくらいまで許容されるのかが求められる。例えば、図8に示すように、道路300が左側に傾斜している、と仮定する。この場合、重心Gを通る鉛直線(図8における2点鎖線)が左側タイヤ100の接地位置P1を通る状態にあるときの当該道路300の傾斜角が、左側に対する最大許容傾斜角αmaxfとなる。道路300の傾斜角度がこの最大許容傾斜角αmaxfを超えると、重心Gが左側接地位置P1よりも外方に位置することになり、トラック100が転倒する。この左側の最大許容傾斜角αmaxfは、次の式14によって表される。また、右側の最大許容傾斜角αmaxrは、式15によって表される。
【0069】
《式14》
αmaxf=tan−1(Lx/H)
【0070】
《式15》
αmaxr=tan−1{(Ld−Lx)/H}
【0071】
つまり、CPU54は、これらの式14および式15に基づいて、左右それぞれの最大許容傾斜角αmaxfおよびαmaxrを求める。そして、これらのうちの小さい方を、総合的な最大許容傾斜角αmaxとする。さらに、CPU54は、この最大許容傾斜角αmaxに或る余裕度εを加味した値ε・αmaxと、所定の安全限界傾斜角αsと、を比較する。要するに、次の式16が満足されるか否かを判定する。
【0072】
《式16》
ε・αmax≧αs
【0073】
なお、この式16における余裕度εは、トラック100の運用者(運送業者)によって任意に定められるゼロ以上かつ1未満(0≦ε<1)の値であり、例えばε=0.9程度の値が設定される。安全限界傾斜角αsもまた、当該運用者によって規定され、例えば予想される道路300の最大傾斜角の値が設定される。これら余裕度εおよび安全限界傾斜角αsの設定は、操作キー60の操作によって成される。
【0074】
ここで、例えば、式16が満足される場合、CPU54は、道路300の傾斜に対する安全条件がクリアされている、と判定し、次に説明するカーブ(曲路)走行時における転倒の危険性の評価に進む。一方、式16が満足されない場合には、CPU54は、最大許容傾斜角αmaxが過小であり、トラック100が転倒する危険性がある、と判定する。そして、その旨の警告メッセージを表示器56に表示する。この警告メッセージの表示を受けたときも、作業者は、トラック100の荷物を適宜に積み直す。
【0075】
カーブ走行時における転倒の危険性の評価においては、これから走行が予定されている道路310の左カーブおよび右カーブそれぞれの最小曲率半径Rが設定される。この設定もまた、操作キー60の操作によって成され、とりわけカーナビゲーション等の地図情報を参考にして成される。そして、例えば左カーブに関しては、図9(a)に示すように、重心Gに対して右側(外方)に向かう遠心力Fが作用するので、右側接地位置P2を中心とする回転モーメントNに注目して、トラック100の転倒の危険性が評価される。具体的には、遠心力Fを含む次の式17が成立すると、トラック100(車体)が浮き上がり、転倒する。
【0076】
《式17》
H・F>Wt・{(Ld/2)−Lz}
where F=m・(V/R),Wt=m・g
【0077】
この式17において、mは、トラック100の質量であり、Vは、当該トラック100の走行速度である。そして、gは、重力加速度である。また、上述したように、偏心量Lzは、左側偏心状態にあるときには負数(Lz<0)となり、右側偏心状態にあるときには正数(Lz>0)となる。
【0078】
さらに、この式17をトラック100の走行速度Vについての不等式に変形すると、次の式18のようになる。
【0079】
《式18》
V>[g・R・{(Ld/2)−Lz}/H]1/2
【0080】
従って、この式18の不等式を等式に変形した次の式19によって、左カーブにおける最高許容速度Vmaxが求められる。
【0081】
《式19》
Vmax=[g・R・{(Ld/2)−Lz}/H]1/2
【0082】
一方、右カーブに関しては、図9(b)に示すように、重心Gに対して左側(外方)に向かう遠心力Fが作用するので、左側接地位置P1を中心とする回転モーメントNに注目して、トラック100の転倒の危険性が評価される。具体的には、遠心力Fを含む次の式20が成立すると、トラック100が浮き上がり、転倒する。
【0083】
《式20》
H・F>Wt・{(Ld/2)+Lz}
【0084】
そして、この式20をトラック100の走行速度Vについての不等式に変形すると、次の式21のようになる。
【0085】
《式21》
V>[g・R・{(Ld/2)+Lz}/H]1/2
【0086】
従って、この式21の不等式を等式に変形した次の式22によって、右カーブにおける最高許容速度Vmaxが求められる。
【0087】
《式22》
Vmax=[g・R・{(Ld/2)+Lz}/H]1/2
【0088】
つまり、CPU54は、上述の式19に基づいて、左カーブにおける最高許容速度Vmaxを求めると共に、式22に基づいて、右カーブにおける最高許容速度Vmaxを求める。そして、これら左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxに或る余裕度ρを加味した値ρ・Vmaxと、所定の安全限界速度Vsと、を比較する。要するに、次の式23が満足されるか否かを判定する。
【0089】
《式23》
ρ・Vmax≧Vs
【0090】
なお、この式23における余裕度ρは、上述の式16における余裕度εと同様、トラック100の運用者によって任意に定められるゼロ以上かつ1未満(0≦ε<1)の値であり、例えばρ=0.9程度の値が設定される。そして、安全限界速度Vsもまた、当該運用者によって任意に規定され、例えば法定速度の値が設定される。これら余裕度ρおよび安全限界速度Vsの設定は、操作キー60の操作によって成される。
【0091】
ここで、例えば、左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxについて、いずれも式23が満足される場合、CPU54は、当該カーブを含む道路310の走行時に安全限界速度Vs以下の走行速度V(≦Vs)が順守されればトラック100が転倒する恐れはない、と判定する。要するに、カーブ走行時の安全条件がクリアされている、と判定する。そして、このカーブ走行時の危険性の評価を含む一連の評価を終了する。一方、左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxの少なくともいずれかが式23を満足しない場合、CPU54は、当該最高許容速度Vmaxが低すぎるため、トラック100が転倒する危険性がある、と判定する。そして、その旨の警告メッセージを表示器56に表示する。この警告メッセージの表示を受けて、作業者は、トラック100の荷物を適宜に積み直す。
【0092】
ここで、図10および図11のフローチャートを参照して、CPU54の動作について、改めて説明する。
【0093】
即ち、操作キー60の操作によって計量開始命令が入力されると、CPU54は、図10のステップS1に進み、これから水平載置状態での計量を開始する旨の案内メッセージを表示器56に表示する。運転手は、この案内メッセージの表示を受けて、トラック100を計量台32上に乗り入れ、当該トラック100が水平姿勢となる水平載置状態を形成する。
【0094】
その一方で、CPU54は、ステップS3に進み、水平載置状態での計量を開始する旨の命令が操作キー60から入力されるのを待つ。そして、ステップS5において、当該水平計量開始命令が入力されたことを確認すると、CPU54は、ステップS7に進み、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4から荷重検出値W11,W12,W21およびW22を取得する。
【0095】
このようにして水平時荷重検出値W11,W12,W21およびW22を取得した後、CPU54は、ステップS9に進み、上述の式2に基づいて、水平時左側合計荷重値W1と水平時右側合計荷重値W2とトラック100の総重量値Wtとを算出する。併せて、式6および式7に基づいて、重心Gの偏心量Lzを算出する。そして、ステップS11に進み、当該算出結果W1,W2,WtおよびLzを表示器56に表示する。
【0096】
さらに、CPU54は、ステップS13に進み、偏心量Lzそのものの大きさを評価する。つまり、上述した式13が満足されるか否かを判定する。そして、ステップS15において、例えば当該式13が満足されたことを確認すると、要するに偏心量Lzについて安全条件がクリアされていることを確認すると、CPU54は、図11のステップS17に進む。一方、当該式13が満足されない場合には、ステップS15からステップS19に進む。そして、このステップS19において、偏心量Lzが過大である旨の警告メッセージを表示器60に表示して、一旦、このフローチャートで示される処理を終了する。なお、このステップS19における警告メッセージの表示を受けて、作業者は、計量台32上からトラック100を降ろし、荷物を適宜に積み直す。
【0097】
図11のステップS17において、CPU54は、これから傾斜載置状態での計量を開始する旨の案内メッセージを表示器56に表示する。運転手は、この案内メッセージの表示を受けて、トラック100を各傾斜ブロック36,36,…上に移動させて、当該トラック100が傾斜姿勢となる傾斜載置状態を形成する。
【0098】
その一方で、CPU54は、ステップS21に進み、傾斜載置状態での計量を開始する旨の命令が操作キー60から入力されるのを待つ。そして、ステップS23において、当該傾斜計量開始命令が入力されたことを確認すると、CPU54は、ステップS25に進み、各ロードセルLC1,LC2,LC3およびLC4から荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’を取得する。
【0099】
このようにして傾斜時荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’を取得した後、CPU54は、ステップS27に進み、傾斜時左側合計荷重値W1’(=W11’+W12’)と傾斜時右側合計荷重値W2’(=W21’+W22’)とを算出する。併せて、式11に基づいて、重心Gの高さHを算出する。そして、ステップS29に進み、このうちの重心Gの高さHを表示器56に表示する。
【0100】
さらに、CPU54は、ステップS31に進み、上述の式14および式15に基づいて、最大許容傾斜角αmaxを算出する。具体的には、式14に基づいて、左側の最大許容傾斜角αmaxfを求め、式15に基づいて、右側の最大許容傾斜角αmaxrを求める。そして、このうちの小さい方を、総合的な最大許容傾斜角αmaxとする。そして、CPU54は、ステップS33に進み、上述した式16に基づいて、当該最大許容傾斜角αmaxを評価する。つまり、式16が満足されるか否かを判定する。
【0101】
続くステップS35において、例えば式16が満足されたことを確認すると、要するに最大許容傾斜角αmaxについて安全条件がクリアされていることを確認すると、CPU54は、ステップS37に進む。一方、当該式16が満足されない場合には、ステップS35からステップS39に進む。そして、このステップS39において、最大許容傾斜角αmaxが過小である旨の警告メッセージを表示器60に表示して、一旦、このフローチャートで示される処理を終了する。なお、このステップS39における警告メッセージを受けたときも、作業者は、計量台32上からトラック100を降ろし、荷物を積み直す。
【0102】
ステップS37において、CPU54は、上述の式19および式22に基づいて、最高許容速度Vmaxを算出する。具体的には、予め設定された左カーブの最小曲率半径Rを含む式19に基づいて、当該左カーブにおける最高許容速度Vmaxを求めると共に、予め設定された右カーブの最小曲率半径Rを含む式22に基づいて、当該右カーブにおける最高許容速度Vmaxを求める。そして、CPU54は、ステップS41に進み、上述した式23に基づいて、これら左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxを評価する。つまり、当該左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxのいずれについても式23が満足されるか否かを判定する。
【0103】
そして、次のステップS43において、例えば左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxのいずれについても式23が満足されることを確認すると、要するに最高許容速度Vmaxに関して安全条件がクリアされていることを確認すると、CPU54は、ステップS45に進む。そして、このステップS45において、一連の計量作業が終了したことを表す終了メッセージを表示器60に表示して、このフローチャートで示される処理を終了する。
【0104】
一方、ステップS43において、左右それぞれのカーブにおける最高許容速度Vmaxの少なくともいずれかについて式23が満足されない場合には、CPU54は、当該ステップS43からステップS47に進む。そして、このステップS47において、最高許容速度Vmaxが低すぎる旨の警告メッセージを表示器60に表示して、このフローチャートで示される処理を終了する。なお、このステップS47における警告メッセージを受けたときも、作業者は、計量台32上からトラック100を降ろし、荷物を積み直す。
【0105】
以上のように、本第1実施形態によれば、トラック100が水平載置状態にあるときの荷重検出値W11,W12,W21およびW22に基づいて、当該トラック100の総重量値Wtと重心Gの偏心量Lzとが求められる。そして、トラック100が傾斜載置状態にあるときの荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’を得ることで、当該トラック100の重心Gの高さHが求められる。ここで、水平載置状態および傾斜載置状態のいずれにおいても、計量台32は、一定の姿勢を保ち、常に水平状態にある。そして、各ロードセル34,34,…もまた、一定の姿勢を保ち、特に傾斜することはなく、常に直立姿勢にある。さらに、各ロードセル34,34,…は、計量台32に対して、可動的に接合されているので、たとえ当該計量台32に撓みが生じたとしても、この計量台32の撓みが各ロードセル34,34,…によって拘束されることはなく、ゆえに、当該計量台32の撓みの影響が各ロードセル34,34,…に直接及ぶことはない。従って、常に正確な荷重検出値W11,W12,W21およびW22ならびにW11’,W12’,W21’およびW22’が得られ、ひいてはトラック100の重心Gの高さHを含む重心情報を正確に求めることができる。
【0106】
また、求められた重心Gの偏心量Lzと高さHとに基づいて、トラック100の転倒の危険性が評価されるので、当該転倒の防止に極めて有益である。特に、偏心量Lzそのものによる危険性と、道路300の傾斜による危険性と、カーブ走行時の危険性と、に細分化された上で、それぞれの評価が成されるので、より確実な転倒防止が実現される。
【0107】
なお、道路300の傾斜による危険性については、とりわけトラック100にその左右方向における水平方向に対する傾き角αxを検出するための傾き角検出手段(傾斜計)が備えられている場合には、次のような対策が講ぜられてもよい。即ち、当該傾き角検出手段によって傾き角αxが逐次検出されると共に、この検出された傾き角αxが上述の式16に準拠する次の式24を満足するときに、例えばその都度、転倒の危険性があることを運転手に伝えるための警告(アラーム)が発せられるようにしてもよい。
【0108】
《式24》
αx>ε・αmax
【0109】
さらに、カーブ走行時の危険性について、次のような対策が講ぜられてもよい。即ち、カーナビゲーション等の地図情報を参考にして、図9に示した実際の道路310の走行時に、全ての、または、曲率半径Rが一定以下である等の特定の条件を満足する一部の、カーブに差し掛かるごとに、その手前の適当なタイミングで、上述した左カーブ用の式19または右カーブ用の式22に基づいて、当該カーブについての最高許容速度Vmaxが求められ、運転手に呈示されるようにしてもよい。加えて、この最高許容速度Vmaxと、今現在の走行速度Vxと、が比較され、例えば上述の式23に準拠する次の式25が満足されるときに、転倒の危険性があることを運転手に伝えるための警告が発せられるようにしてもよい。
【0110】
《式25》
Vx>ρ・Vmax
【0111】
そして、本第1実施形態においては、計量台32の4隅に1つずつ、合計4つ、のロードセル32,32,…が設けられる場合を例示したが、これに限らない。つまり、各ロードセル32,32,…の位置や数は、ここで説明した内容に限らない。
【0112】
また、車両100の総重量値Wtや重心Gの偏心量Lz,或いは当該重心Gの高さH等の各種情報を、表示器56に表示することとしたが、これに限らない。この表示器56に代えて、または当該表示器56に加えて、例えばスピーカを設け、このスピーカから音声という聴覚的な態様で当該各種情報を出力してもよい。加えて、プリンタ等の別の情報出力手段を設け、このプリンタによって所定用紙に当該各種情報を印刷するようにしてもよい。
【0113】
さらに、重心Gの位置P3を表すのに、計量台32の中心を基準とする偏心量Lzを用いたが、これに限らない。例えば、左側接地位置P1を基準とする上述した距離Lxや、右側接地位置P2を基準とする距離によって、当該重心Gの位置P3を表してもよい。
【0114】
加えて、それぞれの傾斜ブロック36は、左側ブロック38と右側ブロック40との組合せから成るものとしたが、例えば、当該左側ブロック38と右側ブロック40とを含め、一体に形成されたものであってもよい。つまり、左側ブロック38と右側ブロック40とが繋がった構造のものでもよい。また、傾斜ブロック36としては、左タイヤ110側を上げる構成としたが、これとは逆に、右タイヤ120側を上げる構成としてもよい。併せて、傾斜ブロック36を計量台32上に着脱可能とするための固定手段として、ボルトを採用したが、これ以外の固定手段や、或いは嵌合構造を採用してもよい。
【0115】
そして、被計量物として3軸のトラック100を例に挙げたが、これに限らない。例えば、2軸のトラックや4軸のトラックであってもよい。勿論、乗用車やバス等の当該トラック以外の車両を被計量物とする用途にも、本発明を適用することができる。
【0116】
また、例えば図12に示すように、トラック100の後方に被けん引車としての荷台400が連結されたいわゆるフルトレーラをも被計量物とすることができる。この場合、まず、図12(a)に示すように、けん引車としてのトラック100のみが、計量台32上に載置され、詳しくは水平載置状態とされる。そして、このトラック100が水平載置状態にあるときの荷重検出値W11,W12,W21およびW22に基づいて、当該トラック100の総重量値Wtと重心Gの偏心量Lzとが上述した要領で求められる。さらに、図12(b)に示すように、トラック100が傾斜ブロック36,36,…上に載置され、つまり傾斜載置状態とされる。そして、このトラック100が傾斜載置状態にあるときの荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’を得ることで、当該トラック100の重心Gの高さHが求められる。なお、この図12(b)の状態においては、トラック100が傾斜ブロック36,36,…上に載置されているため、その分、当該トラック100と荷台400との相互の高さにずれが生じるが、これら両者100および400を連結する連結装置500は柔軟性を持つ構造であるので、特段な不都合はない。
【0117】
続いて、図12(c)に示すように、荷台400のみが、計量台32上に載置され、詳しくは水平載置状態とされる。なお、ここで言う荷台400は、例えば2軸のものであり、この2軸間の距離Lb’は、トラック100の第2軸および第3軸間の距離Lbと概ね等価である(Lb’≒Lb)、とする。そして、この荷台400が水平載置状態にあるときの荷重検出値W11,W12,W21およびW22に基づいて、当該荷台400の総重量値Wtと重心Gの偏心量Lzとが求められる。さらに、図12(d)に示すように、荷台400が傾斜載置状態とされ、詳しくは当該荷台400の第1軸のタイヤ410および420が中央(第2軸用)の傾斜ブロック36上に載置され、荷台400の第2軸のタイヤ410および420が最も乗り入れ側(第3軸用)の傾斜ブロック36上に載置される。そして、この荷台400が傾斜載置状態にあるときの荷重検出値W11’,W12’,W21’およびW22’を得ることで、当該荷台400の重心Gの高さHが求められる。なお、この図11(d)の状態においても、トラック100と荷台400との相互の高さにずれが生じるが、このずれは、連結装置500によって吸収される。
【0118】
このようにフルトレーラについても対応可能とすることで、特に荷台400の転倒事故を抑制するのに効果的である。勿論、セミトレーラやポールトレーラ等の他のトレーラにも対応可能とすることができ、例えばセミトレーラの荷台のみの重心情報を求めることもできる。
【0119】
さらに、本第1実施形態においては、計量台32の左右方向における中心にトラック100が乗り入れられることを前提としたが、これを理想的に実現するのは難しく、多少の誤差が生じる。そこで、光センサや超音波センサ等の適宜の位置センサを採用し、この位置センサによって、それぞれのタイヤ110および120(または410および420)の位置を検出するようにしてもよい。この場合、それぞれのタイヤ110および120の幅寸法Dを考慮して、当該タイヤ110および120の中心位置が求められる。また、位置センサに代えて、カメラを用いてそれぞれのタイヤ110および120を含むトラック100を撮影し、このカメラによる撮影画像に適宜の画像処理を施すことによって、当該タイヤ110および120の位置を検出してもよい。
【0120】
加えて、基部200は、水平ではなく、極端には、図13に示すように、傾斜した状態にあってもよい。即ち、基部200が、水平方向に対して或る角度φだけ傾斜した状態にあると、計量台32もまた、水平方向に対して同じ角度φだけ傾斜した状態になる。各ロードセル34,34,…については、上述の如くそれぞれの起歪体42の上下両端が概略球状に突出したいわゆるダブルコンベックス型であるので、当該傾斜角度φが比較的に小さければ、略垂直姿勢を維持する。この場合、各ロードセル34,34,…に対して曲げモーメントが作用するが、この曲げモーメントの大きさは、例えば上述した従来技術(第4図および第5図)の如く当該各ロードセル34,34,…に対応する荷重計が傾斜している場合に比べて小さい。その上、各ロードセル34,34,…の姿勢は常に不変であり、また、計量台32の姿勢も不変である。つまり、曲げモーメントの影響を含め、各ロードセル34,34,…による荷重検出条件は、常に不変(一定)である。従って、この図13に示す構成によれば、当該曲げモーメントの影響を受けつつも、(その影響をも含めてゼロ調整およびスパン調整等の更正が適切に成されることで)トラック100の総重量値Wtを正確に求めることができ、併せて、重心Gの偏心量Lzおよび高さHを含む重心情報をも正確に求めることができる。なお、特に重心Gの高さHの算出に当たっては、上述した算出要領に傾斜角度φを加味すればよいので、その算出要領についての詳しい説明は省略する。
【0121】
また、図13に示した構成を含め、各ロードセル34,34,…として、上述のダブルコンベックス型のものに代えて、それぞれの起歪体の一方端のみが概略球状に突出したシングルコンベックス型のものが、採用されてもよい。この場合、起歪体の概略球状に突出した一方端が、上方端として計量台32の下面に接触され、当該起歪体の下方端は、基部200に固定されるのが、望ましい。ただし、この構成では、特に図13に示した構成では、曲げモーメントの影響を大きく受ける。その一方で、上述したように、当該曲げモーメントの影響を受けつつも、トラック100の総重量値Wtを正確に求めることができ、併せて、重心情報をも正確に求めることができる。つまり、本発明による効果を享受することができる。
【0122】
そしてさらに、詳しい図示は省略するが、水平方向に対して左側にθ’という角度だけ傾斜した左側傾斜状態と、右側にθ”という角度だけ傾斜した右側傾斜状態と、がそれぞれ形成され、それぞれの状態にあるときの各ロードセル34,34,…による荷重検出値に基づいて、トラック100の総重量値Wtと、重心Gの偏心量Lzおよび高さHを含む重心情報と、が求められてもよい。この場合、左側傾斜角θ’と右側傾斜角θ”とは、互いに等価(θ’=θ”)であってもよいし、不等価(θ’≠θ”)であってもよい。つまり、いずれの状態にあっても、計量台32の姿勢が不変であると共に、各ロードセル34,34,…の姿勢もまた不変であることが、肝要である。
【0123】
次に、本発明の第2実施形態について、説明する。
【0124】
この第2実施形態では、計量部30として、図2に示したものに代えて、図14に示すものが採用される。この図14に示す計量部30は、計量台32が、左右2枚構成とされると共に、この左右2枚の計量台32aおよび32bそれぞれを4つのロードセル34,34,…によって支持するべく合計8つのロードセル34,34,…が設けられたものである。これ以外の構成は、第1実施形態と同様であるので、同等部分には、同一符号を付して、それぞれの詳細な説明を省略する。
【0125】
左右の各計量台32aおよび32bは、計量台32全体の中心線CLを挟んで互いに対称である。そして、左側の計量台32aは、その下方の4隅に設けられた4つのロードセル34,34,…によって支持されている。これと同様に、右側の計量台32bもまた、その下方の4隅に設けられた4つのロードセル34,34,…によって支持されている。なお、左側計量台32aを支持する4つのロードセル34,34,…には、それぞれ“LC11”,“LC12”,“LC13”および“LC14”という個別の識別符号が付されている。そして、右側計量台32bを支持する4つのロードセル34,34,…にも、それぞれ“LC21”,“LC22”,“LC23”および“LC24”という個別の識別符号が付されている。
【0126】
このように構成された計量部30を有する本第2実施形態においても、第1実施形態と同様の要領で、トラック100の総重量値Wtと、当該トラック100の重心Gの偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、が求められる。
【0127】
即ち、まず、図15(a)に示すように、水平載置状態が形成される。このとき、左側計量台32aを支持する各ロードセルLC11,LC12,LC13およびLC14から得られる荷重検出値W11,W12,W13およびW14を合計することで、つまり次の式26によって、左側合計荷重検出値W1が求められる。なお、この左側合計荷重検出値W1は、計量台32(左側計量台32a)の上面における左側タイヤ110の接地位置P1に作用するものと考えることができる。
【0128】
《式26》
W1=W11+W12+W13+W14
【0129】
これと同様に、右側計量台32bを支持する各ロードセルLC21,LC22,LC23およびLC24から得られる荷重検出値W21,W22,W23およびW24を合計することで、つまり次の式27によって、右側合計荷重検出値W2が求められる。なお、この右側合計荷重検出値W2は、計量台32(右側計量台32b)の上面における右側タイヤ120の接地位置P2に作用するものと考えることができる。
【0130】
《式27》
W2=W21+W22+W23+W24
【0131】
そして、これら左右の各合計荷重検出値W1およびW2を合計することで、つまり上述の式2に準拠する次の式28によって、トラック100の総重量値Wtが求められる。なお、この総重量Wtは、計量台32上における重心Gの位置P3に作用するものと考えることができる。
【0132】
《式28》
Wt=W1+W2
【0133】
ここで、左側合計荷重検出値W1が作用する左側接地位置P1と、右側合計荷重検出値W2が作用する右側接地位置P2と、トラック100の総重量Wtが作用する重心Gの位置P3とは、図15(b)に示すように、計量台32の上面を仮想した仮想水平線IL上に転移して考えることができる。そして、例えば、左側接地位置P1を中心とする回転モーメントに注目すると、次の式29が成立する。
【0134】
《式29》
Wt・Lx=W2・Ld
【0135】
従って、この式29を変形することで、左側接地位置P1から重心Gの位置P3までの距離Lxは、次の式30によって求められる。
【0136】
《式30》
Lx=(W2/Wt)・Ld
【0137】
そして、この距離Ldが上述の式7に代入されることで、重心Gの変位量Lzが求められる。
【0138】
続いて、図16(a)に示すように、傾斜載置状態が形成される。このとき、左側計量台32aを支持する各ロードセルLC11,LC12,LC13およびLC14から得られる荷重検出値W11’,W12’,W13’およびW14’を合計することで、つまり次の式31によって、傾斜時の左側合計荷重検出値W1’が求められる。なお、この傾斜時左側合計荷重検出値W1’は、傾斜ブロック36によって形成される傾斜面Bにおける左側タイヤ110の接地位置P1’に作用するものと考えることができる。
【0139】
《式31》
W1’=W11’+W12’+W13’+W14’
【0140】
これと同様に、右側計量台32bを支持する各ロードセルLC21,LC22,LC23およびLC24から得られる荷重検出値W21’,W22’,W23’およびW24’を合計することで、つまり次の式32によって、傾斜時の右側合計荷重検出値W2’が求められる。なお、この傾斜時右側合計荷重検出値W2’は、傾斜面Bにおける右側タイヤ120の接地位置P2’に作用するものと考えることができる。
【0141】
《式32》
W2’=W21’+W22’+W23’+W24’
【0142】
そして、これら左右の傾斜時合計荷重検出値W1’およびW2’を合計することで、つまり上述の式2に準拠する次の式33によって、トラック100の総重量値Wtが求められる。なお、この式33によって求められる総重量値Wtは、上述の式26によって求められる総重量値Wtと等価である。また、この総重量Wtは、傾斜面BにおけるP4’に作用するものと考えることができる。
【0143】
《式33》
Wt=W1’+W2’
【0144】
ここで、傾斜時左側合計荷重検出値W1’が作用する左側接地位置P1’と、傾斜時右側合計荷重検出値W2’が作用する右側接地位置P2’と、トラック100の総重量Wtが作用する重心Gの位置P4’とは、図16(b)に示すように、計量台32の上面を仮想した仮想水平線IL上に転移して考えることができる。そして、例えば、右側接地位置P2’を中心とする回転モーメントに注目すると、次の式34が成立する。
【0145】
《式34》
W1’・Ld・cosθ
=Wt・(Ld−Ly)・cosθ
=Wt・(Ld−Lx+H・tanθ)・cosθ
∵Ly=Lx+H・tanθ
【0146】
従って、この式34を変形することで、重心Gの高さHは、次の式35によって求められる。
【0147】
《式35》
H={W1’・Ld−(Ld−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0148】
即ち、この第2実施形態によれば、第1実施形態とは異なり、トラック100の重心Gの高さHを求めるに当たって、左右の各タイヤ110および120の位置を正確に特定する必要がない。従って、第1従来技術よりも正確かつ容易に当該重心Gの高さHを求めることができる。
【0149】
次に、本発明の第3実施形態について、説明する。
【0150】
この第3実施形態では、計量部30として、図17に示すものが採用される。この図17に示す計量部30は、言わば第1実施形態の構成から傾斜ブロック36,36,…を省き、その代わりに、計量台32の上部に位置する概略矩形平板状の載置板600と、この載置板600を支持する可動支持機構610および固定支持機構620と、を備えたものである。可動支持機構610は、載置板600の一方側の縁側、例えば左側側縁、を昇降させるものであり、例えば油圧シリンダによって構成されている。これに対して、固定支持機構620は、載置板600の右側側縁(寄り)を軸支している。つまり、可動支持機構610が駆動されると、載置板600は、固定支持機構620による軸支部分を中心として回転(変位)する。これにより、計量台32上に水平面および傾斜面が選択的に構成される。
【0151】
このように構成された本第3実施形態によれば、例えば図17(a)の水平載置状態から図17(b)の傾斜載置状態に遷移する際に、トラック100を移動させる手間が省ける。また、第1実施形態および第2実施形態では、トラック100の車軸数や車軸間距離が変わると、それに応じて、傾斜ブロック36,36,…の数や位置を変える必要があるが、本第3実施形態よれば、そのような手間も省ける。加えて、傾斜載置状態にあるときの傾斜角θを、任意に設定することもできる。
【0152】
なお、図17の構成は、飽くまでも一例であり、例えば、可動支持機構610として、モータ等の別の駆動手段を採用してもよい。
【符号の説明】
【0153】
10 トラックスケール
30 計量部
32 計量台
34 ロードセル
36 傾斜ブロック
50 データプロセッサ
54 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に被計量物としての車両が載置される計量台と、
上記計量台の下部に可動的に接触した状態で該計量台を支持すると共に該計量台を介して印加される荷重を検出する複数の荷重検出手段と、
上記計量台の上部に設けられ上記車両の左右方向において該車両が水平方向に対して第1角度を成した姿勢で載置される第1載置状態と該第1角度とは異なる第2角度を成した姿勢で載置される第2載置状態とを選択的に形成する載置状態形成手段と、
上記車両が上記第1載置状態にあるときに上記複数の荷重検出手段から得られる第1荷重検出値と該車両が上記第2載置状態にあるときに該複数の荷重検出手段から得られる第2荷重検出値とに基づいて該車両の重心の高さを含む重心情報を求める重心情報演算手段と、
を具備する、車両計量装置。
【請求項2】
上記第1角度および上記第2角度の一方は略零であり、
上記第1角度および上記第2角度の他方は鋭角である、
請求項1に記載の車両計量装置。
【請求項3】
それぞれの上記荷重検出手段は、上記計量台の下部に接触すると共に該計量台を介して上記荷重の印加を受ける荷重受け部と、該荷重検出手段自体を支持する基部に接触すると共に該基部からの該荷重の反力を受ける反力受け部と、を有し、
上記計量台の下部の上記荷重受け部との接触部分は略水平な平面形状を成し、
上記基部の上記反力受け部との接触部分もまた略水平な平面形状を成す、
請求項1または2に記載の車両計量装置。
【請求項4】
上記計量台の上部は上記左右方向において水平方向に対して上記第1角度を成す一平面に位置する第1平面部分を有し、
上記載置状態形成手段は、上記計量台の上部に上記左右方向において水平方向に対して上記第2角度を成す第2平面を形成する第2平面形成台を含み、上記車両が上記第1平面部分に載置されることによって上記第1載置状態を形成し、該車両が該第2平面形成台に載置されることによって上記第2載置状態を形成する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項5】
上記車両の進退方向に沿って上記第1平面部分と上記第2平面形成台とが並んで存在し、
上記車両が上記進退方向に移動することによって上記第1載置状態と上記第2載置状態とが選択的に形成される、
請求項4に記載の車両計量装置。
【請求項6】
上記第2平面形成台は上記計量台の上部に対して着脱自在である、
請求項4または5に記載の車両計量装置。
【請求項7】
上記載置状態形成手段は、上記車両が載置される載置体と、該載置体の上記左右方向における水平方向に対する角度を変化させることによって上記第1載置状態と上記第2載置状態とを選択的に形成する角度変化手段と、を含む、
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項8】
上記重心情報を出力する情報出力手段をさらに備える、
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項9】
上記重心情報に基づいて上記車両が転倒する危険性を評価する危険性評価手段をさらに備える、
請求項1ないし8のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項10】
上記危険性評価手段は道路の傾斜による上記危険性を評価する、
請求項9に記載の車両計量装置。
【請求項11】
上記危険性評価手段は上記車両のカーブ走行時における上記危険性を評価する、
請求項9または10に記載の車両計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−32328(P2012−32328A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173694(P2010−173694)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】