説明

車両走行状態表示装置

【課題】現実の車両を運転していた時の過去の運転状況を、後で画面表示によって再現可能にすると共にユーザに理解しやすく表示する。
【解決手段】車両から出力される車両情報と車両の位置情報と時刻情報とを互いに関連付けた時系列状態データとして順次に記録するデータ記録部と、前記車両の状態を表す計器に関する情報を表示する計器表示領域110と、前記車両の走行経路に関するマップ情報を表示する地図表示領域120とを有する画像表示部と、再生モードにおいて記録されたデータを読み込み、このデータの内容に従って各表示領域に該当するグラフィック画像をそれぞれ描画すると共に、計器表示領域110および地図表示領域120の一方の表示内容の変化に連動して他方の表示内容を自動的に更新する再生表示制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態を表す情報を所定の表示画面上にグラフィック表示する車両走行状態表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータースポーツ愛好家は他人のレースを観戦するだけでなく、予め用意されたサーキット場や、オフロードコースや、ラリーコースなどに自分の車両を持ち込んでスポーツ走行や競技を楽しんだり、運転技術の訓練を行うことがある。
【0003】
このようなモータースポーツ愛好家は、自分で自動車を運転してスポーツ走行を行った後で、例えば客観的に自分あるいは他人の運転状態を評価するために、走行中に実際にはどのような運転を行っていたのかを確認したいと考える場合が多い。しかし、このような機能を提供可能な専用の装置は存在しない。
【0004】
例えば、業務用車両に搭載されるデジタルタコグラフを利用すれば、車両を運転している間の車速やエンジン回転数などの車両状態の変化を表す時系列データを自動的に記録することができる。従って、デジタルタコグラフを利用できる場合には、運転中に記録された時系列データの内容を分析すれば、走行中にどのような運転を行っていたのかを確認することが可能である。但し、その場合であっても、単に車速やエンジン回転数などの車両状態の変化の様子を数値の時系列変化として読み取れるだけなので、例えばサーキット場内の周回コース上の各箇所で適切な運転を行っていたのかどうかを確認するような作業は容易ではない。
【0005】
本発明と関連のある従来技術として、例えば特許文献1および特許文献2に開示された技術が知られている。
特許文献1は、航空機のコックピット用フラットパネルディスプレイに関するものである。また、同一のディスプレイの画面上に、地図を表示する領域と各種メータを表示する領域とを有しており、この表示により地図の情報と各種メータの情報とを同時に確認できる。
【0006】
特許文献2は、レーシングゲーム装置に関するものである。また、ゲーム中に走行する仮想の車両の窓から見える道路等の前方の風景と、スピードメータの状態とを同一の画面内に同時に表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3732409号公報
【特許文献2】特開平10−328409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は実際に航空機を操縦する際に、現在の航空機の状況と地図をリアルタイムで確認するために利用できる。しかし、過去の状況を表示によって再現するような機能は備えていない。また、地図と各種メータの表示は互いに独立している。
【0009】
また、特許文献2はゲームを行うユーザの入力操作(架空の運転操作)と予め用意された固定データ(道路の情報や車両の情報)に従って架空の車両の運転状況をリアルタイムで再現するような表示を行うことができる。しかし、過去の運転状況を表示によって再現するような動作は想定していない。また、画面に表示される前方の風景と、スピードメータの状態とは独立している。
【0010】
いずれにしても、現実の車両を運転していた過去の状況を、後で画面表示によって再現するような従来技術は存在しない。特に、例えばサーキット場内の周回コースを車両でスポーツ走行したような場合には、コース内の重要な箇所(例えば急なコーナーやクランクなど)で適切な運転を行っていたのかどうかを容易に確認できることが望まれる。しかし、特許文献1および特許文献2のように単に地図と計器とを同時に表示するだけではそのような確認は困難である。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、現実の車両を運転していた時の過去の運転状況を、後で画面表示によって再現可能にすると共にユーザに理解しやすく表示することが可能な車両走行状態表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両走行状態表示装置は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 車両の走行状態を表す情報を所定の表示画面上にグラフィック表示する車両走行状態表示装置であって、
所定の記録モードにおいて、前記車両から出力される少なくとも1つの車両情報と、前記車両の位置情報と、時刻情報とを互いに関連付けた時系列状態データとして順次に記録するデータ記録部と、
前記車両の状態を表す計器に関する情報を表示する第1の表示領域と、前記車両の走行経路に関するマップ情報を表示する第2の表示領域とを有する画像表示部と、
所定の再生モードにおいて、過去に記録された前記時系列状態データを読み込み、読み込んだ前記前記時系列状態データの内容に従って、前記第1の表示領域および第2の表示領域に該当するグラフィック画像をそれぞれ描画すると共に、前記第1の表示領域および第2の表示領域の一方の表示内容の変化に連動して他方の表示内容を自動的に更新する再生表示制御部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車両走行状態表示装置であって、
前記再生表示制御部は、前記時系列状態データの中の現在の再生位置における前記車両の走行位置に対応する車両マークを前記第2の表示領域に前記マップ情報と重ねて表示し、現在の再生位置における前記車両のエンジン回転数および車速の少なくとも一方を表す走行状態情報を前記第1の表示領域に計器として表示すること。
(3) 上記(2)に記載の車両走行状態表示装置であって、
前記再生表示制御部は、前記時系列状態データの中から、前記車両のエンジン回転数および車速の少なくとも一方の時系列変化のピーク状態を表す1つ以上のピーク情報を抽出するピーク情報抽出部を有し、前記ピーク情報が得られた時の車両走行位置のマークを前記マップ情報と重ねて表示し、前記時系列状態データの中の現在の再生位置における前記車両の走行位置に応じて自動的に選択されたピーク情報、もしくは手動で選択されたピーク情報の内容に応じて前記第1の表示領域に表示する計器の表示内容を更新すること。
(4) 上記(3)に記載の車両走行状態表示装置であって、
前記再生表示制御部は、複数の中から選択された特定のピーク情報に割り当てた番号の情報を前記第1の表示領域の計器および前記第2の表示領域の前記マップ情報の中に表示すること。
【0013】
上記(1)の構成の車両走行状態表示装置によれば、再生モードにおいて前記第1の表示領域の表示と第2の表示領域の表示とが連動するように制御されるので、前記時系列状態データ中の再生位置における車両の走行位置と車両の状態(エンジン回転数や車速など)とが互いに関連付けられた状態で表示される。従って、例えばコース内の各位置でどのような運転を行っていたのかを、ユーザは表示内容から容易に認識できる。
上記(2)の構成の車両走行状態表示装置によれば、データ中の現在の再生位置における車両の走行位置を、ユーザは表示される前記マップ情報の内容と車両マークとの位置関係により把握できる。また、現在の再生位置における車両のエンジン回転数又は車速を、前記第1の表示領域の計器の表示により把握できる。
上記(3)の構成の車両走行状態表示装置によれば、車両の運転状態を把握する上で重要な箇所の情報をユーザは簡単に参照できる。すなわち、エンジン回転数や車速の時系列変化に関するピーク状態の走行位置やピーク値を簡単に表示できるので、再生により順次に表示される内容をユーザが最初から最後まで監視し続けなくても、運転の状況を容易に把握できる。
上記(4)の構成の車両走行状態表示装置によれば、複数の走行位置でそれぞれピーク情報が抽出された場合であっても、現在選択され表示されている特定のピーク情報に対応する車両の走行位置をユーザは容易に把握できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両走行状態表示装置によれば、現実の車両を運転している時の運転状況を表すデータを自動的に記録し、このデータを後で再生することにより、画面表示によって運転の状況を再現できる。しかも、第1の表示領域の表示と第2の表示領域の表示とが連動して変化するので、データ中の再生位置における車両の走行位置と車両の状態との関連をユーザが容易に把握可能になる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の車両走行状態表示装置の2種類の動作モードにおける画面表示の具体例を示す正面図である。
【図2】実施形態の車両走行状態表示装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の車両走行状態表示装置のデータ記録モードの動作を示すフローチャートである。
【図4】図2の車両走行状態表示装置のデータ再生モードの動作を示すフローチャートである。
【図5】図2の車両走行状態表示装置のピーク表示モードの動作を示すフローチャートである。
【図6】図5に示した処理の中で実行されるピーク表示処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】表示画面の一部分を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両走行状態表示装置に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
本実施形態の車両走行状態表示装置10のハードウェア構成例が図2に示されている。また、この車両走行状態表示装置10の2種類の動作モードにおける画面表示の具体例が図1に示されている。
【0019】
この車両走行状態表示装置10は、車載器として自動車等の車両に搭載した状態で、走行中の車両の状態を表す時系列データを自動的に記録し保存することができる。また、過去の車両の走行時に記録されたデータを読み込んで、記録時の走行状態を再生するように画面に表示することができる。なお、車両走行状態表示装置10を車両から取り外した状態においても、過去に記録されたデータを読み込んで再生することが可能である。
【0020】
この車両走行状態表示装置10は、図1に示す表示画面100Aや表示画面100Bを表示することができる。表示画面100Aは通常のデータ再生モードで表示される画面であり、表示画面100Bはピーク表示再生モードで表示される画面である。
【0021】
図1に示すように、表示画面100A、100Bの中には、計器表示領域110、地図表示領域120、操作部表示領域130、車両状態データ表示領域140が含まれている。これらの各表示領域の内容は、ピットマップデータ等を用いたグラフィック画像として表示される。
【0022】
後述するように、記録されたデータを再生する際に、計器表示領域110の表示内容と地図表示領域120の表示内容とは互いに連動する。すなわち、計器表示領域110および地図表示領域120の一方の表示内容が更新されると、それに連動するように他方の表示内容も同時に更新される。
【0023】
計器表示領域110は、現在のデータ再生位置における車両の状態を表す計器の状態を表示するために用いている。図1の例では、計器表示領域110に表示する計器としてエンジンの回転数(rpm)を表示するタコメータを想定しているが、車両の走行速度を表すスピードメータなど他の計器を表示しても良い。
【0024】
地図表示領域120は、再生すべき車両の走行範囲に対応する地図等の情報を表示するために用いている。図1に示す例では、特定のサーキット場における周回コース内を車両が走行した場合を想定しているので、地図画像121の中には車両が走行する周回コース121aの全体の平面形状が現れている。勿論、サーキット場以外に、オフロードコースや、ラリー用のコースや、一般の道路などを表示することも想定できる。また、周回コース121a上に、データ再生位置における車両の走行位置を表す車両マーク122が地図に重ねて表示されている。
【0025】
操作部表示領域130は、この画面上に重なっているタッチパネルを操作するための各種ボタンの情報を表示するために利用している。図1に示す例では、操作部表示領域130に5個の操作ボタン131〜135が表示されている。
【0026】
操作ボタン131は、記録されたデータの通常再生を開始するための操作に利用される。操作ボタン132は、停止や一時停止などの操作のために利用される。操作ボタン133は、記録されたデータを再生する際の再生位置の巻き戻しの操作のために利用される。
【0027】
操作ボタン134は、ピーク表示再生モードを指定する操作のために利用される。操作ボタン135は、データの記録を開始する操作や、記録されたデータの読み込みを開始する操作のために利用される。データの記録を開始すると操作ボタン135の箇所に「RECORD ON」と表示され、データの記録が終了すると操作ボタン135の箇所に「RECORD」と表示される。
【0028】
車両状態データ表示領域140は、記録されたデータを再生する際に、現在の再生位置における車両の状態を表す詳細な情報を数値で表示するために利用される。図1に示す例では、エンジン回転数を表す「REV 4520rpm」と、変速機のシフト位置を表す「SHIFT 4」と、車速を表す「SPEED 165km/h」と、冷却水温を表す「TEMP 70℃」と、ラップを表す「LAP 3」と、タイムを表す「TIME 3'15"」とが表示されている。
【0029】
また、ピーク表示再生モードにおいては、図1の表示画面100Bのように、地図画像121上にピーク情報表示部151が重ねて表示され、計器表示領域110にはピーク情報表示部152および153が表示される。
【0030】
車両走行状態表示装置10におけるピーク情報は、エンジン回転数等の計測された車両情報の数値の時系列変化におけるピークを表すものである。例えば、ある走行区間内におけるエンジン回転数の最大値がピークとして検出される。
【0031】
表示画面100Bにおける地図表示領域120の詳細が図7に示されている。図7の例では、周回コース上の6カ所のそれぞれの位置でピークが検出された場合を想定している。また、6カ所のそれぞれの位置について、ピークが検出された走行位置にマーク151aが周回コース上に重ねて表示され、その近傍に検出されたピーク情報に割り当てられたピーク番号151bが表示されている。
【0032】
図1に示す表示画面100Bにおいては、複数の中で現在選択されている1つのピーク情報の番号が計器表示領域110内のピーク情報表示部152に表示されている。また、選択されたピーク情報の数値をタコメータ画像111の目盛り111b上で指示する副指針がピーク情報表示部153として表示されている。
【0033】
図2に示すように、読み出し専用メモリ(EEPROM)11、外部メモリ12、操作部13、GPS受信機14、インタフェース15、インタフェース16、CPU電源部17、マイクロコンピュータ(CPU)20、グラフィックコントローラ21、フレームメモリ22、Xドライバ23、Yドライバ24、LCD電源部25、および液晶表示器(TFT−LCD)26を備えている。
【0034】
マイクロコンピュータ20は、予め用意されたプログラムを実行し、車両走行状態表示装置10の機能を実現するために必要な様々な処理を行う。例えば、図3、図4、図5、図6に示す処理をマイクロコンピュータ20が行う。
【0035】
読み出し専用メモリ11は、マイクロコンピュータ20が実行するプログラムの内容や予め用意された固定データなどを保持している。例えば地図表示領域120に表示する地図のデータも読み出し専用メモリ11上に保持しても良い。
【0036】
外部メモリ12としては、例えばメモリカードのようにデータの書き込みおよび読み出しが自在な不揮発性メモリや、読み出し専用メモリを接続することが想定される。不揮発性メモリは、記録するデータを書き込んで保存したり、保存されているデータを読み出して再生するために利用できる。読み出し専用メモリは、地図などの固定データを外部から取得するために利用できる。
【0037】
操作部13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための様々なスイッチを備えている。また、図1に示した表示画面の例では、この画面に重ねて配置されたタッチパネルが操作部13に含まれている場合を想定している。
【0038】
GPS受信機14は、車両の現在位置を測定するために利用される。すなわち、GPS受信機14が複数のGPS(Global Positioning System)衛星からそれぞれ受信した電波の到達時間に基づいて、このGPS受信機14を搭載した車両の自車位置を計算により求めることができる。
【0039】
インタフェース15は、マイクロコンピュータ20と車両側の各種制御装置(ECU)との間で通信を行うために利用される。具体的には、車速、エンジン回転数、変速機のシフト位置、冷却水温等の現在の様々な車両状態を表すデータが、ほぼリアルタイムのデータとして車両側からマイクロコンピュータ20に入力される。
【0040】
インタフェース16は、車両側のイグニッションスイッチの状態を表す信号(IGN+)をマイクロコンピュータ20に入力する。
【0041】
CPU電源部17は、車両側のプラス側電源ライン(+B)から供給される直流電力を入力してマイクロコンピュータ20の動作に必要な直流電圧(Vcc)を生成する。また、必要に応じてリセット信号を生成したり、マイクロコンピュータ20から出力されるスリープ信号に従って電力供給を抑制するための動作も行う。
【0042】
液晶表示器26は、液晶デバイスにより構成された多数の微小表示セルをX方向およびY方向に並べて配置されたカラーの二次元表示画面を有している。多数の微小表示セルの表示状態をセル毎に個別に制御することにより、二次元表示画面上に図形、文字、画像等の所望の情報をグラフィック表示することができる。
【0043】
液晶表示器26の表示画面のY方向の走査位置は、Yドライバ24の出力により順次に切り替わる。Yドライバ24は、グラフィックコントローラ21から出力される垂直同期信号に同期して、Y方向の走査位置を順次に切り替える。
【0044】
Xドライバ23は、グラフィックコントローラ21から出力される水平同期信号に同期して液晶表示器26の表示画面のX方向の走査位置を順次に切り替える。また、Xドライバ23はグラフィックコントローラ21から出力されるRGB各色の画像データを走査位置の表示セルに与えて画面中の表示内容を制御する。
【0045】
グラフィックコントローラ21は、マイクロコンピュータ20から入力される様々な命令に従って、様々なグラフィック要素を液晶表示器26の画面上に表示する。実際には、画素毎の表示内容を保持するフレームメモリ22に対して、グラフィックコントローラ21が表示データを書き込みグラフィックの描画を行う。また、液晶表示器26の画面を二次元走査するための垂直同期信号及び水平同期信号を生成し、これらの同期信号に同期したタイミングでフレームメモリ22上の該当するアドレスに格納されている表示データを液晶表示器26に与える。
【0046】
LCD電源部25は、車両側のプラス側電源ライン(+B)から供給される直流電力を入力して、液晶表示器26の表示に必要とされる所定の直流電力を生成する。
【0047】
次に、車両走行状態表示装置10の具体的な動作について説明する。
図2の車両走行状態表示装置10のデータ記録モードの動作(データ記録部の動作)が図3に示されている。すなわち、ユーザが車両走行状態表示装置10を搭載した車両を実際に運転してスポーツ走行等を行う時に、データ記録モードが選択されると、車両走行状態表示装置10のマイクロコンピュータ20が図3の処理を実行する。
【0048】
ステップS21では、マイクロコンピュータ20が操作部13の状態を監視して、ユーザから記録動作の開始を指示された状態か否かを識別する。例えば、図1に示す操作ボタン135をユーザが操作すると、記録動作の開始が指示され、マイクロコンピュータ20の処理は次のステップS22に進む。
【0049】
ステップS22では、GPS受信機14から出力される車両の現在位置(緯度/経度)を表すデータをマイクロコンピュータ20が取り込み、これを記録対象のデータとして利用する。
【0050】
ステップS23では、最新の車両の状態を表すデータ、すなわち車速、エンジン回転数、変速機のシフト位置、冷却水温等をマイクロコンピュータ20がインタフェース15を介して車両側から入力し、これらを記録対象のデータとして利用する。
【0051】
ステップS24では、マイクロコンピュータ20がそれ自身で管理している現在時刻の情報を取得し、この現在時刻と、ステップS22で取得したGPSデータ(位置情報)と、ステップS23で取得した車両の状態を表すデータとをまとめて1組のデータとして結合する。
【0052】
ステップS25では、ステップS24で結合した1組のデータをマイクロコンピュータ20が所定の記録媒体上に記録する。例えば、外部メモリ12として接続された不揮発性メモリ上に書き込む。
【0053】
ユーザからの所定の入力操作等によって記録動作が解除されるまでの間は、上記ステップS21〜S25の処理が繰り返される。従って、ステップS25で書き込まれる運転状況の記録データ51として、時間の経過に伴って順次に生成されるデータが時系列データとして記録される。
【0054】
図2の車両走行状態表示装置10のデータ再生モードの動作(再生表示制御部の動作)が図4に示されている。すなわち、図3に示したデータ記録モードによって実際に車両を運転している時の運転状態を表す時系列データを記録した後で、このデータを必要な時に読み込んで再生するために図4のデータ再生モードを実行する。ユーザが所定の入力操作を行ってデータ再生モードの開始を指示すると、マイクロコンピュータ20が図4に示す処理を実行する。
【0055】
ステップS31では、ユーザの所定の入力操作によって、所定の「記録読み出し指定」状態になっているか否かをマイクロコンピュータ20が識別し、指定されている時には次のステップS32に進む。
【0056】
ステップS32では、予め用意されている車両の走行範囲を含む地図のデータをマイクロコンピュータ20が読み込む。この地図データは、地図上の位置毎に緯度/経度等の座標が特定できる情報であり、例えば車両が実際に走行したサーキット場の周回コース上の各位置を表すデータを含むものである。
【0057】
ステップS33では、図3の処理によって記録された運転状況の記録データ51の内容をマイクロコンピュータ20が所定の記録媒体、例えば外部メモリ12から読み込む。
【0058】
ステップS34では、再生開始状態か否かをマイクロコンピュータ20が識別する。例えば図1に示す操作ボタン131がユーザによって押下されたことを検出すると、再生開始状態に切り替わり、次のステップS35に進む。
【0059】
ステップS35では、ステップS32で読み込んだ地図データを利用して記録時に走行した周回コース等の情報を含む地図の画像を液晶表示器26の画面に表示できるように、フレームメモリ22上に描画する。また、時系列データであるステップS33で読み込んだ運転状況の記録データ51をデータ中の時刻の順番に再生する。すなわち、一定時間を経過する毎に、再生するデータの位置(時刻)を順番に先に進め、該当する位置のデータの内容に従って、車両の走行位置、エンジン回転数、車速、変速機のシフト位置などを表す表示情報を、フレームメモリ22上の計器表示領域110、地図表示領域120、車両状態データ表示領域140に対応する位置に描画する。また、所定時間が経過して再生位置が先に進むと、新たな再生位置の情報に従ってフレームメモリ22の内容を自動的に更新する。
【0060】
画面の計器表示領域110の内容を描画する際には、現在の再生位置のデータ中のエンジン回転数(あるいは車速)に対応する目盛り111b上の位置を指針111aの先端が指し示すような向き及び位置に指針111aのパターンを描画する。景気全体の形状や目盛り111bの表示については、予め定めた固定データの画像を描画すればよい。
【0061】
また、画面の地図表示領域120に車両マーク122を描画する際には、描画した地図上の各位置の座標(緯度/経度)と、現在の再生位置のデータ中車両位置(GPSデータ:緯度/経度)とが整合するような位置に車両マーク122を描画する。
【0062】
従って、データ再生モードにおいては、所定時間が経過して再生位置が変化する毎に、過去の車両の走行状態を再現するように、車両マーク122が表示される位置は地図の周回コース121aに沿って移動する。また、計器表示領域110の表示内容は、再生位置のエンジン回転数(あるいは車速)を再現するように変化する。
【0063】
いずれにしても、再生するデータ中の車両位置(GPSデータ)と車両状態を表す情報(エンジン回転数、車速など)とが時刻によって関連付けられているので、計器表示領域110の表示内容と地図表示領域120の表示内容とが互いに連動する。つまり、再生位置が変化して計器表示領域110および地図表示領域120の一方の表示内容が変化すると、他方の表示内容も自動的に更新される。従って、画面上に再現される表示内容を見るユーザは、走行中の各時点における周回コース上の車両位置とエンジン回転数等の車両の状態を同時に把握することができる。
【0064】
ステップS36では、ステップS35で更新されたフレームメモリ22の内容を、グラフィックコントローラ21が画面走査のタイミングに同期して液晶表示器26の画面上に順次に出力する。これにより、図1に示す表示画面100Aのような内容が表示され、データ中の再生位置が進むにつれて画面中の表示内容も自動的に更新される。
【0065】
図2の車両走行状態表示装置10のピーク表示モードの動作の概要が図5に示されている。また、図5に示した処理の中で実行されるピーク表示処理の内容が図6に示されている。ユーザが所定の入力操作を行ってピーク表示再生モードの開始を指示すると、マイクロコンピュータ20が図5に示す処理を実行する。
【0066】
図5のステップS41では、「ピーク表示再生」状態か否かをマイクロコンピュータ20が識別する。例えば、図1に示す操作ボタン134をユーザが押下したことを検出すると、これが解除されるまで「ピーク表示再生」状態になり、次のステップS42に進む。
【0067】
ステップS42では、ピーク表示再生モードで画面に表示すべき情報を、マイクロコンピュータ20又はグラフィックコントローラ21がフレームメモリ22上に描画する。ピーク表示再生モードで表示する情報については、前述のステップS35で描画する情報と同様の情報に加え、以下に説明するピーク情報がある。このピーク情報を表示するための処理が図6の内容である。
【0068】
ステップS43では、ステップS42で更新されたフレームメモリ22の内容を、グラフィックコントローラ21が画面走査のタイミングに同期して液晶表示器26の画面上に順次に出力する。これにより、図1に示す表示画面100Bのような内容が表示され、データ中の再生位置が進むにつれて画面中の表示内容も自動的に更新される。
【0069】
図6のステップS11では、マイクロコンピュータ20が再生対象の運転状況の記録データ51を時系列順に参照して、変化のピーク位置を検出する。例えば、一定区間のデータにおいて、エンジン回転数の時系列変化が、・・・、5200、5400、5600、5700、5800、5700、5500、5100、・・・のようになっていた場合には、変化のピークである5800のデータ位置を検出する。また、データの一定区間毎にそれぞれピークを検出する場合には、複数のピーク位置をそれぞれ検出する。
【0070】
ステップS12では、ステップS11で検出したピーク位置毎に番号を割り当て、この番号と、ピーク値(例えば上記の5800rpm)および車両位置(例えば緯度/経度)の情報をピーク情報として所定のピーク情報テーブル52に保存する。
【0071】
再生対象の運転状況の記録データ51の全体についてステップS11、S12の処理を繰り返し、これが完了すると次のステップS13に進む。従って、例えば図1に示す表示画面100B中の周回コース121aを車両が一周走行する間に記録されたデータを再生しようとする場合に、コース上の複数の箇所でそれぞれピーク位置を検出し、これらに対応するピーク情報をピーク情報テーブル52に登録することができる。
【0072】
ステップS13では、上記の処理によってピーク情報テーブル52に登録された各々のピーク情報について、走行コース上の該当位置にピークの印と番号を表示する。例えば、図7に示すような周回コース121aを車両が一周走行する間に記録されたデータの中から6カ所のピーク位置が検出された場合に、これらの位置に対応する6組のピーク情報について、該当する箇所の車両位置をコース上のマーク151aとして表示し、その近傍に該当するピーク情報に割り当てられたピーク番号(1〜6のいずれか)151bを表示するように、フレームメモリ22にデータを書き込む。
【0073】
ステップS14では、表示対象のピーク情報の選択モードの自動/手動の区別をマイクロコンピュータ20が識別する。本実施形態においては、自動選択と手動選択が可能になっており、ユーザの入力操作によりピーク情報の選択モードを切り替えることができる。自動の場合はステップS15に進み、手動の場合はステップS16に進む。
【0074】
ステップS15では、ピーク情報テーブル52に登録されている複数のピーク情報の中から、現在のデータ再生位置の車両走行位置に近い1つのピーク情報を自動的に選択する。例えば、図7に示す表示画面100Bのような再生位置においては、この時の車両走行位置を表す車両マーク122の位置に近い4番のピーク情報151xを自動選択する。
【0075】
ステップS16では、ユーザのボタン操作入力に従って1つのピーク情報を選択する。例えば、6個のピーク情報が存在する場合に、図1に示す操作ボタン131の押下を検出する毎に選択するピーク情報の番号を1−2−3−4−5−6−1−2と順番に切り替え、操作ボタン133の押下を検出する毎に選択するピーク情報の番号を6−5−4−3−2−1−6−5と順番に切り替える。
【0076】
ステップS17では、ステップS15又はS16で選択された特定のピーク情報に割り当てられた番号を、図1に示す表示画面100B中のピーク情報表示部152(3番のピーク情報を選択している場合)のように、計器であるタコメータ画像111の近傍に表示する。
【0077】
ステップS18では、図1に示す表示画面100B中のピーク情報表示部153のように、目盛り111bの該当する位置、例えばエンジン回転数のピーク値を指し示す位置に、副指針であるピーク情報表示部153を表示する。
【0078】
従って、表示対象のピーク情報の選択モードが自動選択の場合には、時間の経過に伴ってデータ再生位置が変化すると、地図表示領域120に表示される車両マーク122の位置が変化し、この変化に連動するように、該当するピーク情報が自動的に選択され、このピーク情報の番号(3)が計器表示領域110のピーク情報表示部152に表示され、このピーク情報のピーク値を指し示す位置に副指針であるピーク情報表示部153が表示される。
【0079】
また、表示対象のピーク情報の選択モードが手動選択の場合には、ユーザが操作ボタン131又は133を操作すると、この操作に従って1つのピーク情報が選択され、このピーク情報が計器表示領域110および地図表示領域120に表示される。つまり、ピーク情報の番号と該当する車両の走行位置が地図表示領域120に表示され、ピーク情報の番号がピーク情報表示部152に表示され、ピーク値を指し示す位置に副指針であるピーク情報表示部153が表示される。
【0080】
なお、ピーク情報テーブル52に複数のピーク情報が登録されている場合には、地図表示領域120の複数箇所に表示するピーク情報表示部151の表示内容を、選択中の番号とそれ以外の番号とを区別できるように表示色の違い等で区別して表示しても良い。
【0081】
いずれにしても、上述の車両走行状態表示装置10を利用することにより、これを搭載した車両が実際に走行する時の走行状態を表すデータを自動的に記録することができ、走行が終了した後で、記録されたデータを読み込んで再生し、過去の運転の状況を画面上に表示することができる。しかも、データを再生する時には、単純な数値の時系列変化ではなく、走行時のコース上の車両位置と、エンジン回転数等の車両状態とを対応付けて表示するので、この表示内容からユーザは実際の運転状況を容易に把握できる。
【0082】
従って、適切な運転を行っているかどうか、すなわち走行コース上の位置毎に、エンジン回転数や車速が適切であるかどうかをユーザ自身、仲間、指導者等が容易に確認できる。特に、走行中のエンジン回転数や車速がピーク状態になった時のコース上の車両位置とピーク値とを簡単に把握できるので、適切な運転であるか否かの判断が容易であり、ユーザの運転技術の向上、あるいは安全な運転を行うために役立てることができる。
【0083】
以上のように、本発明の車両走行状態表示装置は、実際に走行する車両に搭載して走行状態のデータを記録するために利用すると共に、運転が終了した後で記録されたデータを再生するために利用することができる。この車両走行状態表示装置を利用することにより、ユーザの運転状態が適切であるかどうかを判断したり、ユーザの運転技術の向上、あるいは安全な運転を行うために役立てることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 車両走行状態表示装置
11 読み出し専用メモリ
12 外部メモリ
13 操作部
14 GPS受信機
15,16 インタフェース
17 CPU電源部
20 マイクロコンピュータ
21 グラフィックコントローラ
22 フレームメモリ
23 Xドライバ
24 Yドライバ
25 LCD電源部
26 液晶表示器
51 運転状況の記録データ
52 ピーク情報テーブル
100A,100B 表示画面
110 計器表示領域
111 タコメータ画像
111a 指針
111b 目盛り
120 地図表示領域
121 地図画像
121a 走行コース
122 車両マーク
130 操作部表示領域
131,132,133,134,135 操作ボタン
140 車両状態データ表示領域
151,152,153 ピーク情報表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態を表す情報を所定の表示画面上にグラフィック表示する車両走行状態表示装置であって、
所定の記録モードにおいて、前記車両から出力される少なくとも1つの車両情報と、前記車両の位置情報と、時刻情報とを互いに関連付けた時系列状態データとして順次に記録するデータ記録部と、
前記車両の状態を表す計器に関する情報を表示する第1の表示領域と、前記車両の走行経路に関するマップ情報を表示する第2の表示領域とを有する画像表示部と、
所定の再生モードにおいて、過去に記録された前記時系列状態データを読み込み、読み込んだ前記前記時系列状態データの内容に従って、前記第1の表示領域および第2の表示領域に該当するグラフィック画像をそれぞれ描画すると共に、前記第1の表示領域および第2の表示領域の一方の表示内容の変化に連動して他方の表示内容を自動的に更新する再生表示制御部と
を備えることを特徴とする車両走行状態表示装置。
【請求項2】
前記再生表示制御部は、前記時系列状態データの中の現在の再生位置における前記車両の走行位置に対応する車両マークを前記第2の表示領域に前記マップ情報と重ねて表示し、現在の再生位置における前記車両のエンジン回転数および車速の少なくとも一方を表す走行状態情報を前記第1の表示領域に計器として表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両走行状態表示装置。
【請求項3】
前記再生表示制御部は、前記時系列状態データの中から、前記車両のエンジン回転数および車速の少なくとも一方の時系列変化のピーク状態を表す1つ以上のピーク情報を抽出するピーク情報抽出部を有し、前記ピーク情報が得られた時の車両走行位置のマークを前記マップ情報と重ねて表示し、前記時系列状態データの中の現在の再生位置における前記車両の走行位置に応じて自動的に選択されたピーク情報、もしくは手動で選択されたピーク情報の内容に応じて前記第1の表示領域に表示する計器の表示内容を更新する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両走行状態表示装置。
【請求項4】
前記再生表示制御部は、複数の中から選択された特定のピーク情報に割り当てた番号の情報を前記第1の表示領域の計器および前記第2の表示領域の前記マップ情報の中に表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両走行状態表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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