説明

車両退出阻止装置

【課題】装置の動作状態を装置側で把握可能とすると共に装置のコストダウンを可能とする。
【解決手段】駐車車両を鎖錠する鎖錠部と、該鎖錠部を起立した鎖錠位置と倒伏した解錠位置とに選択的に回動駆動する駆動部とを備え、車両が進入すると前記鎖錠部を前記解錠位置から前記鎖錠位置へ駆動して駐車車両の退出を阻止する構成の車両退出阻止装置において、前記駆動部を収納する収納ボックス11内に配置され、少なくとも前記駆動部の動作状態を表示する発光部13と、前記収納ボックス11に形成された開口部17に設けられて光を透過する窓部材14と、前記発光部13から放射される光を前記窓部材14まで導く導光部材15と、を備え、前記発光部13の表示状態を前記窓部材14を介して前記収納ボックス11外部から視認可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が進入すると鎖錠部を解錠位置から鎖錠位置へ駆動して駐車車両の退出を阻止する車両退出阻止装置に関し、特に、装置の動作状態を把握可能とすると共に装置のコストダウンを可能とした車両退出阻止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駐車場には、複数に区分けされた各駐車スペースに、起立して車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能にする解錠位置をとる鎖錠部を車両検知センサーの検知信号の発生により上記鎖錠位置に駆動制御し、精算終了信号の発生により上記解錠位置に駆動制御するように構成した車両退出阻止装置を備えたものがある。この場合、各車両退出阻止装置のメンテナンスを行なうときに、装置の状態表示を行なう表示部が各車両退出阻止装置の近くに設けられていれば、メンテナンス作業が容易になる。そこで、鎖錠部の制御位置に応じて退車の禁止又は許可の表示や、装置の異常を表示する表示部を備えた支柱を各駐車スペースに設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、車両退出阻止装置の駆動部を収納した収納ボックスに鎖錠部の起立及び倒伏状態を示すLED警告装置及びそのLEDランプを備えたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3432760号公報
【特許文献2】特開2001−148097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の車両退出阻止装置において、上記特許文献1に記載されたものは、表示部を備えた支柱が別途必要であり、装置のコストが高くなるおそれがあった。
【0005】
また、上記特許文献2に記載の車両退出阻止装置は、装置自体に表示部が設けられているものの、LED警告装置及びそのLEDランプからなる表示ユニットは、駆動部を駆動制御するコントロールユニットとは別に設けられたものであるため、基板の数が増えると共に各基板間を配線する必要があり、組み立て作業が煩雑となって装置のコストが高くなっていた。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に着目してなされたもので、装置の動作状態を装置側で把握可能とすると共に装置のコストダウンを可能とした車両退出阻止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、請求項1の発明は、駐車車両を鎖錠する鎖錠部と、該鎖錠部を起立した鎖錠位置と倒伏した解錠位置とに選択的に回動駆動する駆動部とを備え、車両が進入すると前記鎖錠部を前記解錠位置から前記鎖錠位置へ駆動して駐車車両の退出を阻止する構成の車両退出阻止装置であって、前記駆動部を収納する収納ボックス内に配置され、少なくとも前記駆動部の動作状態を表示する発光部と、前記収納ボックスに形成された開口部に設けられて光を透過する窓部材と、前記発光部から放射される光を前記窓部材まで導く導光部材と、を備え、前記発光部の表示状態を前記窓部材を介して前記収納ボックス外部から視認可能とした。
【0008】
このような構成により、駆動部を収納した収納ボックス内に配置された発光部で少なくとも駐車車両を鎖錠する鎖錠部を起立した鎖錠位置と倒伏した解錠位置とに選択的に回動駆動する駆動部の動作状態を表示し、導光部材で上記発光部から放射される光を収納ボックスに設けられた窓部材まで導き、窓部材で光を透過して発光部の表示状態を上記収納ボックス外部から視認可能とする。
【0009】
本発明の車両退出阻止装置は、具体的には請求項2のように、前記発光部は、前記駆動部を駆動制御する制御回路基板上に設けるとよい。この場合、請求項3のように、前記窓部材と前記導光部材とを一体的に形成してもよい。また、前記発光部は、請求項4のように、メンテナンス用の表示を行なうものであるとよい。
【0010】
そして、請求項5の構成においては、車両検知センサーの出力に基づいて車両の有無を判定するセンサー制御回路と、該センサー制御回路からの車両有り判定信号に基づく前記鎖錠部の起立指令、及び料金精算処理装置からの精算完了信号に基づく前記鎖錠部の倒伏指令を出力する鎖錠部制御回路と、該鎖錠部制御回路からの各指令により前記駆動部を制御する駆動部制御回路とを同一の制御回路基板上に形成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両退出阻止装置によれば、駆動部を収納した収納ボックス内に少なくとも駆動部の動作状態を表示する発光部を配置したことにより、車両退出阻止装置側で装置の動作状態を把握することができる。従って、発光部の表示と装置の少なくとも駆動部の実際の動作とを確認しながらメンテナンス情報を取得することができ、車両退出阻止装置に異常が発生したときの対応が容易に且つ迅速にできる。同時に、表示部を備えた支柱を車両退出阻止装置とは別に設ける必要が無くなり、装置のコストダウンが可能となる。また、発光部から放射される光を導光部材で収納ボックスに設けた窓部材まで導いて収納ボックス外部から発光部の表示状態を視認可能としたことにより、発光部の取り付け位置の制約が減り、例えば駆動部を駆動制御する制御回路基板上に発光部を設けることができる。
【0012】
また、駆動部を駆動制御する制御回路基板上に発光部を設ければ、配線作業が不要となり装置の組み立てコストを削減することができる。
【0013】
さらに、窓部材と導光部材とを一体的に形成すれば、装置のコストをより一層削減することができる。
【0014】
さらにまた、発光部にメンテナンス用の所定の発光を行なわせれば、メンテナンス情報の取得が容易になり、メンテナンス作業を迅速に行なうことができる。
【0015】
そして、センサー制御回路と、鎖錠部制御回路と、駆動部制御回路とを制御回路基板上に一体的に形成すれば、基板の枚数が減り且つ配線が不要となり、装置のコストを一層削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明に係る車両退出阻止装置の実施形態の平面図を示す。
図1において、本実施形態の車両退出阻止装置は、駐車スペース1へ進入した駐車車両の前後タイヤ間に鎖錠部を起立させて駐車車両の不正退出を阻止するものであり、車両検知センサー2と、鎖錠部3と、駆動部4と、表示部5とを備えて構成する。
【0017】
上記車両検知センサー2は、駐車スペース1へ進入した駐車車両を検知するものであり、駐車スペース1の中央部側に配設され、図1に矢印で示す駐車車両の進入方向に平行に送信コイル6と受信コイル7とを配置して構成している。そして、上記送信コイル6と受信コイル7との間に常時電磁界を発生させ、駐車車両の金属ボディが接近することによって発生する受信コイル7のインピーダンス変化を検知して駐車スペース1へ駐車車両が進入したことを検知できるようになっている。なお、上記車両検知センサー2は、樹脂製カバー又は一部を非金属で構成した金属製カバーで覆われている。
【0018】
上記車両検知センサー2の側方には、図1に矢印で示す駐車車両の進入方向に略直交して鎖錠部3が設けられている。この鎖錠部3は、駐車スペース1へ進入した駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の不正退出を阻止するものであり、図示省略の軸受部に回動可能に支持された回動軸8と、略凸状に折曲して両端部を上記回動軸8に溶接一体化して枠状とした一本の長い中空部材9と、回動軸8及び中空部材9に囲まれた空間部を覆って設けた板部材10とを備えて構成している。
【0019】
上記駐車スペース1の外側には、上記鎖錠部3を挟んで上記車両検知センサー2と対向して駆動部4が設けられている。この駆動部4は、鎖錠部3の回動軸8を回動駆動し、鎖錠部3が起立した鎖錠状態及び倒伏した解錠状態を選択可能にするものであり、図示省略の例えばモータと該モータの動力を回動軸8に伝達する図示省略の伝達手段とを備えて構成し、収納ボックス11の内部に配設されている。なお、収納ボックス11は、上部が開口したボックス本体12Aとその開口部を覆ったカバー12Bとで構成され防水構造となっている。
【0020】
上記収納ボックス11には、表示部5が設けられている。この表示部5は、上記車両検知センサー2、鎖錠部3、及び駆動部4等を含む装置の各構成要素の動作状態並びに例えば駐車場の入口等に設置されて駐車料金の精算処理を行なう図示省略の料金精算処理装置との通信状態を表示するものであり、図2に示すように、発光部としての発光素子13と、窓部材14と、導光部材15とを備えて構成する。
【0021】
上記発光素子13は、収納ボックス11内に配置されている。この発光素子13は、メンテナンス用として装置の動作状態を例えば発光又は消灯若しくは所定のモードで点滅して表示するものであり、図2に示すように、ボックス12Aの内側面に略平行に立設されて上記駆動部4を駆動制御する制御回路基板16の上端部に設けられた例えばLEDである。
【0022】
なお、この制御回路基板16は、車両検知センサー2の出力に基づいて車両の有無を判定するセンサー制御回路と、該センサー制御回路からの車両有り判定出力に基づく鎖錠部3の起立指令、及び料金精算処理装置からの精算完了信号に基づく鎖錠部3の倒伏指令を出力する鎖錠部制御回路と、該鎖錠部制御回路からの各指令により駆動部4を制御する駆動部制御回路とを同一基板上に形成したものである。このように、各構成要素の制御機能を統合して一枚の基板で構成したので、基板の数を削減することができ、且つ配線数を減らすことができて組み立て作業性が増し、装置のコストを削減することが可能となる。
【0023】
上記収納ボックス11のカバー12Bの上面に形成された開口部17内には、図2に示すように、窓部材14が設けられている。この窓部材14は、光を透過するものであり、例えば透明な樹脂で所定の形状に形成されている。
【0024】
上記発光素子13と窓部材14との間には、導光部材15が設けられている。この導光部材15は、発光素子13から放射される光を上記窓部材14まで導くものであり、図2に示すように、例えば略L字状に折れ曲がった透明な部材で窓部材14と一体形成され、その端面から入射した光が窓部材14側に反射するように折り曲げ部15aの角部を面取りしている。そして、上記端面を発光素子13に対向させて配置されている。
【0025】
なお、図2において、符号18はモータに連結した軸であり、符号19a,19bはモータに連結した軸18の回転方向及び回転位置を検知するデュアル光センサーであり、符号20はデュアル光センサー19a,19bの発光素子と受光素子との対向部を動く舌片20aを形成して上記モータに連結した軸18に固定されたセンサー板であり、符号21はモータに連結した軸18を回動可能に支持する軸受部である。
【0026】
次に、本発明の車両退出阻止装置の動作を説明する。
車両検知センサー2が送信コイル6と受信コイル7との間に電磁界を発生させている場合に、車両が駐車スペース1内に進入してその金属ボディが上記車両検知センサー2に接近すると、車両検知センサー2の受信コイル7のインピーダンスが低下する。それを制御回路基板16のセンサー制御回路において検知し、駐車スペース1に車両が進入したと判断して車両有り判定信号をセンサー制御回路から鎖錠部制御回路に送る。
【0027】
鎖錠部制御回路においては、上記車両有り判定信号を入力すると鎖錠部3の起立指令を生成して駆動制御回路に送る。駆動制御回路においては、上記起立指令に基づいて駆動部4を駆動して駐車車両の前後タイヤ間に鎖錠部3を鎖錠位置まで起立させ、駐車車両を鎖錠する。
【0028】
一方、図示省略の料金精算処理装置から鎖錠部制御回路に駐車料金の精算完了信号を入力すると、鎖錠部制御回路は鎖錠部3の倒伏指令を生成して駆動制御回路に送る。駆動制御回路においては、上記倒伏指令に基づいて駆動部4を上述とは反対方向に駆動して鎖錠部3を解錠位置まで倒伏させ、駐車車両を解錠する。
【0029】
さらに、本発明においては、収納ボックス11内に備えた発光素子13が車両検知センサー2、鎖錠部3、及び駆動部4等の装置の各構成要素の動作状況に応じて、発光又は消灯若しくは所定のモードで点滅して発光する。そして、発光素子13から放射した光は、導光部材15の中を反射して窓部材14まで導かれ、該窓部材14から収納ボックス11の外部に射出する。
【0030】
これにより、窓部材14を介して外部から視認される発光素子13の表示状態から収納ボックス11のカバー12Bを外すことなく装置の各構成要素の動作状態及び料金精算処理装置との通信状態を把握することができ、例えば装置の異常個所を容易に発見することができ、メンテナンス作業を迅速に行なうことができる。
【0031】
また、本発明においては、発光素子13は、制御回路基板16上に設けられているので、収納ボックス11のカバー12Bを外しても発光素子13の発光状態を直接見て、装置のメンテナンス情報を取得することが可能となる。従って、収納ボックス11内に配設された駆動部4や制御回路基板16上の各制御回路の点検が容易になる。また、発光素子13と制御回路基板16とを接続する配線が不要となり、装置の組立作業が容易になる。
【0032】
図3は、表示部5の変形例を示す断面図である。同図に示すように、収納ボックス11のカバー12Bの上面に凹部が形成され、その斜面部に窓部材14が設けられている場合には、発光素子13から放射した光が導光部材15内を反射して窓部材14まで導かれるように導光部材15を適当に折り曲げて(同図においては、1回緩やかに折り曲げて)形成するとよい。
【0033】
図4は、表示部5の他の変形例を示す断面図である。同図に示すように、一つの発光素子13による装置の状態表示を複数箇所で表示させる場合には、窓部材14を複数(同図においては、二つ)設け、導光部材15を窓部材14の数に応じて分岐し、該導光部材15の共通路15bの端部を発光素子13に対面させ、分岐路15c,15dの端部を各窓部材14の裏面に接合するとよい。
【0034】
図5は、表示部5のさらに他の変形例を示す断面図である。同図に示すように、一つの発光素子13による装置の状態表示を拡大して表示する場合には、導光部材15をその光射出側端面15eを光入射側端面15fよりも広げて形成するとよい。
【0035】
なお、上記実施形態においては、発光素子13が一つ設けられた場合について説明したが、これに限られず、発光素子13は複数あってもよい。この場合、各発光素子13に対応してそれぞれ窓部材14及び導光部材15を設けてもよい。また、複数の発光素子13の発光色をそれぞれ異ならせて装置の各構成要素の動作状態を色分けして表示してもよい。さらに、発光素子13を例えば○,×等の所定の図形を描くように多数並べて配置して発光部を構成し、その図形を窓部材14に表示させて駐車車両の退出許可・不許可の警告をするようにしてもよい。
【0036】
なお、上記実施形態においては、駐車車両の前後タイヤ間に鎖錠部3を起立させる車両退出阻止装置について説明したが、駐車スペース1の進入口側に鎖錠部3を起立させる例えば特許文献1の図13に示された車両退出阻止装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による車両退出阻止装置の実施の形態を示す平面図である。
【図2】上記車両退出阻止装置の表示部を説明する断面図である。
【図3】上記表示部の変形例を示す断面図である。
【図4】上記表示部の他の変形例を示す断面図である。
【図5】上記表示部のさらに他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…駐車スペース
2…車両検知センサー
3…鎖錠部
4…駆動部
11…収納ボックス
12A…ボックス本体
12B…カバー
13…発光素子(発光部)
14…窓部材
15…導光部材
16…制御回路基板
17…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車車両を鎖錠する鎖錠部と、該鎖錠部を起立した鎖錠位置と倒伏した解錠位置とに選択的に回動駆動する駆動部とを備え、車両が進入すると前記鎖錠部を前記解錠位置から前記鎖錠位置へ駆動して駐車車両の退出を阻止する構成の車両退出阻止装置において、
前記駆動部を収納する収納ボックス内に配置され、少なくとも前記駆動部の動作状態を表示する発光部と、
前記収納ボックスに形成された開口部に設けられて光を透過する窓部材と、
前記発光部から放射される光を前記窓部材まで導く導光部材と、
を備え、前記発光部の表示状態を前記窓部材を介して前記収納ボックス外部から視認可能としたことを特徴とする車両退出阻止装置。
【請求項2】
前記発光部は、前記駆動部を駆動制御する制御回路基板上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両退出阻止装置。
【請求項3】
前記窓部材と前記導光部材とを一体的に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両退出阻止装置。
【請求項4】
前記発光部は、メンテナンス用の表示を行なうものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両退出阻止装置。
【請求項5】
前記制御回路基板は、車両検知センサーの出力に基づいて車両の有無を判定するセンサー制御回路と、該センサー制御回路からの車両有り判定信号に基づく前記鎖錠部の起立指令、及び料金精算処理装置からの精算完了信号に基づく前記鎖錠部の倒伏指令を出力する鎖錠部制御回路と、該鎖錠部制御回路からの各指令により前記駆動部を制御する駆動部制御回路とを同一基板上に形成したものであることを特徴とする請求項2に記載の車両退出阻止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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