説明

車両運搬車

【課題】荷台に搭載した車両の他に他の車両をも運搬し得る車両運搬車を提供する。
【解決手段】荷台4と道板5を有し、道板5が荷台4に対して起立した起立位置と先端部が道路に接した傾倒位置とに回動される車両運搬車1であって、走行時に車両運搬車1の後方にて車両11を吊上げて牽引する吊上げ牽引装置7を有する。吊上げ牽引装置7は、アーム7aと係止体7bとワイヤー7cとウィンチ7eを有する。アーム7aが荷台4に対して傾倒し、かつ道板5が傾倒位置に位置することで荷台4に車両10が積み降ろしされ、道板5が起立位置に位置し、かつアーム7aが位置決め機構7dによって荷台4に対して所定の角度で位置決めされ、係止体7bに車両11を係止してワイヤー7cをウィンチ7eによって巻き揚げることで車両11を吊上げる構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台に車両を搭載して運搬する車両運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を搭載する荷台と、その荷台の後端部に回動可能に連結される道板を有している車両運搬車が知られている(特許文献1〜4参照)。道板は、荷台に対して起立した起立位置と先端部が道路に接した傾倒位置とに回動され、傾倒位置において車両が荷台に積み降ろしされ得る。しかし荷台に搭載した車両に加えて他の車両をも運搬したい場合がある。とりわけ荷台を一段のみしか有していない車両運搬車においては、荷台に搭載できる車両の台数が少なく、その必要性が高くなる(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2000−264120号公報
【特許文献2】特開2002−225615号公報
【特許文献3】特開2002−87142号公報
【特許文献4】特開2003−80996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、荷台に搭載した車両の他に他の車両をも運搬し得る車両運搬車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える車両運搬車であることを特徴とする。すなわち請求項1に記載の発明の車両運搬車は、走行時に車両運搬車の後方にて他の車両を吊上げて牽引する吊上げ牽引装置を有している。吊上げ牽引装置は、荷台の後端部に傾動可能に設けられるアームと、そのアームに一端部が連結されかつ他端側に他の車両が係止される係止体と、その係止体に連結されかつアームの先端部に掛けられ荷台側に延出するワイヤーと、そのワイヤーを荷台側に巻き揚げるウィンチとを有している。そしてアームが荷台に対して傾倒し、かつ道板が傾倒位置に位置することで荷台に車両が積み降ろしされ、道板が起立位置に位置し、かつアームが位置決め機構によって荷台に対して所定の角度で位置決めされ、係止体に他の車両を係止してワイヤーをウィンチによって巻き揚げることで他の車両を吊上げる構成になっている。
【0005】
したがって車両運搬車は、吊上げ牽引装置によって、荷台に搭載した車両の他、他の車両をも運搬できる。また吊上げ牽引装置は、道板によって車両を荷台に積み下ろしする際に傾倒されることで邪魔にならない位置に移動する。そして吊上げ牽引装置は、アームを所定の角度で位置決めした状態でワイヤーをウィンチによって巻き揚げることで係止体によって他の車両を吊上げることができる。
【0006】
請求項2に記載の発明によると、係止体は、アームに一端部が連結されるロッドと、ロッドの他端部と連結される横部材とを有している。ワイヤーは、横部材の左右両側に設けられた各掛け部に通される二本の分岐ワイヤー部と、各分岐ワイヤー部の先端に設けられるフックを有し、フックと横部材が車両に係止される。したがって吊上げ牽引装置は、少なくとも車両を三点で係止した状態で吊上げる。そのため安定良く車両を吊上げることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明によると、ワイヤーが係止体から取外されて、荷台に積まれる予定の車両に係止され、ワイヤーをウィンチで巻き揚げることで車両を荷台に牽引して積むことができる構成になっている。したがってワイヤーとウィンチは、車両運搬車の後方にて車両を吊上げる際にも利用され、かつ荷台に車両を積む際にも利用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態を図1〜7にしたがって説明する。車両運搬車(キャリアカー)1は、図1,2に示すように車体枠3と、車体枠3の前側上部に取付けられるキャビン2と、車体枠3の後側上部に移動不能に取付けられる荷台(デッキ)3を有している。そして荷台4の後部には、道板(ゲート)5と吊上げ牽引装置7が設けられている。
【0009】
道板5は、図3,4に示すように荷台4の後端部に回動可能に取付けられる左右一対の板部5aと、これら一対の板部5aを連結する連結部5bを有している。そして道板5は、荷台4に対して起立した起立位置と、道板5の先端部が地面12に接した傾倒位置との間で回動し、傾倒位置になることで車両10が荷台4に対して積み降ろしされ得る。
【0010】
図3に示すように荷台4は、二段曲げ構造であって、地面12と略平行な第一面部4aと、第一面部4aから後側下方に斜めに延出する第二面部4bと、第二面部4bからさらに後側下方に斜めに延出する第三面部4cを有している。そして第三面部4cは、傾倒位置の道板5とほぼ平行になる傾斜角度に設定されている。したがって車両10を荷台4に積み降ろしする際において車両10の底面が荷台4に擦り難い構成になっている。
【0011】
荷台4の後左右両側部には、図2,4に示すように荷台4と道板5を連結する連結機構6と、道板5を荷台4に対して回動させる油圧シリンダ8が設けられている。連結機構6は、第一リンク6aと第二リンク6bを有している。第一リンク6aは、基端部6a1が荷台4に回動可能に連結され、先端部6a2が第二リンク6bと連結されている。道板5を起立位置にした際に、先端部6a2は、基端部6a1よりも前側に位置し、第一リンク6aは、荷台4の第三面部4cと略平行になる。一方、道板5を傾倒位置にした際には、先端部6a2が基端部6a1よりも後側に位置する。
【0012】
第二リンク6bは、図2,3に示すように一端部が第一リンク6aの先端部6a2に回動可能に連結され、他端部が道板5の張出部5cに回動可能に連結される。第二リンク6bと第一リンク6aの間の角度は、道板5を起立位置にした際に鋭角、例えば30°〜60°になる。そして道板5を傾倒位置にした際には、鈍角、例えば110°〜170°になる。
【0013】
第一リンク6aと荷台4の間には、図2,4に示すように第一リンク6aを荷台4に対して解除可能にロックするロック機構6cが設けられている。ロック機構6cは、挟み部6c1とピン6c2を有している。挟み部6c1は、荷台4側に設けられており、第一リンク6aが荷台4に対して略平行になった際に第一リンク6aが挿入される。ピン6c2は、第一リンク6aが挟み部6c1に挿入された状態で挿通されて第一リンク6aを荷台4に対してロックする。
【0014】
油圧シリンダ8は、図2,3に示すように荷台4の後端部に一端部が回動可能に連結され、他端部が道板5の張出部5cに回動可能に連結される。油圧シリンダ8に油圧を供給するための油圧装置が荷台4の下側に設けられ、油圧装置を操作するための操作スイッチ9が車体枠3の側部に設けられている。したがって操作スイッチ9の操作に連動して油圧シリンダ8が伸縮し、これによって道板5が荷台4に対して回動する。
【0015】
吊上げ牽引装置7は、図1,2に示すように車両運搬車1の後方にて車両11を吊上げて牽引する装置であって、アーム7aと係止体7bとワイヤー7cを有している。アーム7aは、荷台4の後端部中央から後方に突出する取付部3aに一端部7a1が傾動可能に取付けられる。取付部3aとアーム7aの間には、アーム7aを図2に示す斜め後方の角度において位置決めする位置決め機構7dが設けられている。位置決め機構7dは、アーム7aと取付部3aを貫通してアーム7aを取付部3aに保持するピンを有している。
【0016】
係止体7bは、図2に示すようにT字状であってロッド7b1と横部材7b2を有している。ロッド7b1の一端部は、連結部7b3によってアーム7aの基端部寄りとフリー傾動可能に連結される。ロッド7b1の他端部は、横部材7b2の中心部とユニバーサルジョイント7b4によって回動可能に連結される。横部材7b2の中央には、図5に示すようにワイヤー7cの先端に装着されたフック7c1が脱着可能に取付けられる取付部7b5が形成されている。
【0017】
ワイヤー7cは、図2,4に示すように係止体7bと荷台4に設けられたウィンチ7eとの間に張設される。ワイヤー7cは、取付部7b5からフック7c1が取外されて、そのフック7c1に開閉リング7c2を介して二本の付属の分岐ワイヤー部7c3が連結される。分岐ワイヤー部7c3は、係止体7bの横部材7b2の左右両側に形成された掛け部7b6に通され、その先端部に装着されたフック7c4が車両11の底面に引っ掛けられる。ワイヤー7cは、係止体7bから延出して、アーム7aの先端部に設けられた滑車7a2と、アーム7aの基端部に設けられた滑車7a3に掛けられる。そして荷台4の前部に向けて延出し、荷台4の前端部中央に設けられた滑車7fに掛けられて折り返す。そして荷台4に設けられたウィンチ7eに他端部が連結される。
【0018】
ウィンチ7eは、図1,2に示すように荷台4の中央の床下に設けられており、ワイヤー7cを巻き揚げたり繰り出したりする。荷台4には、荷台4がワイヤー7cによって傷付くことを防止するために複数の回転体4dが回転可能に取付けられている。回転体4dは、ウィンチ7eから荷台4の上面にワイヤー7cが繰り出された位置と、第一面部4aと第二面部4bの間と、第二面部と第三面部4cの間に設けられている。これによって荷台4がワイヤー7cによって傷付くことを確実に防止でき、かつワイヤー7cが荷台4に対して移動容易になる。
【0019】
車両運搬車1を図5の状態にする場合は、ワイヤー7cのフック7c1を取付部7b5に取付け、ワイヤー7cをウィンチ7eによって巻き揚げて係止体7bをアーム7a側に引き寄せつつアーム7aを起立させる。この状態によって車両運搬車1は、車両前後長さが最短になる。車両運搬車1を図5の状態から図7の状態に変える場合は、ウィンチ7eによってワイヤー7cを繰り出してアーム7aを下方位置へ傾動させる。
【0020】
車両運搬車1を図7の状態から図4の状態に変える場合は、道板5を油圧シリンダ8によって傾倒位置に傾動させる。この状態にすることで荷台4に車両10を積み降ろしすることができる。なお吊上げ牽引装置7のアーム7aは、道板5と同等の高さもしくは道板5よりも下側に位置する。そのため吊上げ牽引装置7は、車両10の積み降ろしの際に邪魔にならない。車両10が自走できない等の場合には、ワイヤー7cの先端部7c1を吊上げ牽引装置7から取外し、先端部7c1を車両10に係止させる。そしてワイヤー7cをウィンチ7eによって巻き揚げて車両10を荷台4に牽引させる。
【0021】
図1に示すように吊上げ牽引装置7によって車両11を吊上げて牽引する場合は、図4の状態において道板5を油圧シリンダ8によって起立位置へ回動させる。次に、図6に示すようにワイヤー7cをウィンチ7eによって巻き揚げ、アーム7aを上方に傾動させる。そして位置決め機構7dによってアーム7aを所定の角度(使用位置)にて位置決めする。そしてウィンチ7eによってワイヤー7cを繰り出して係止体7bを図2に示すように下方に傾ける。
【0022】
次に、ワイヤー7cのフック7c1を取付部7b5から取外し、フック7c1に分岐ワイヤー部7c3を連結させる。そして分岐ワイヤー部7c3を掛け部7b6に通し、フック7c4を車両11の底部に引っ掛け、横部材7b2を車両11のバンパーの下側に掛ける。その状態でウィンチ7eによってワイヤー7cを巻き揚げる。これにより吊上げ牽引装置7は、車両11を三点で保持しつつ吊上げる。続いて、アーム7aの先端に取付けられたチェーン7dとフック7c1とに跨って開閉リング7c2を掛ける。その結果、ウィンチ7eの巻上げ力を解除しても車両11を吊り下げた状態を維持することができる。かくして吊上げ牽引装置7は、走行時に車両運搬車1の後方にて車両11を吊上げて牽引することができる。
【0023】
以上のようにして実施の形態が形成されている。すなわち車両運搬車1は、図1に示すように吊上げ牽引装置7を有している。吊上げ牽引装置7は、アーム7aと係止体7bとワイヤー7cとウィンチ7eを有している。そしてアーム7aが荷台4に対して傾倒し、かつ道板5が傾倒位置に位置することで荷台4に車両10が積み降ろしされ、道板5が起立位置に位置し、かつアーム7aが位置決め機構7dによって荷台4に対して所定の角度において位置決めされ、係止体7bに他の車両11を係止してワイヤー7cをウィンチ7eによって巻き揚げることで他の車両11を吊上げる構成になっている。
【0024】
したがって車両運搬車1は、吊上げ牽引装置7によって、荷台4に搭載した車両10の他に他の車両11をも運搬できる。また吊上げ牽引装置7は、道板5によって車両10を荷台4に積み下ろしする際に傾倒されることで邪魔にならない位置に移動する。そして吊上げ牽引装置7は、アーム7aを所定の角度で位置決めした状態でワイヤー7cをウィンチ7eによって巻き揚げることで係止体7bによって他の車両11を吊上げることができる。
【0025】
また係止体7bは、図2に示すようにロッド7b1と横部材7b2を有している。ワイヤー7cは、横部材7b2の左右両側に設けられた各掛け部7b6に通される二本の分岐ワイヤー部7c3と、分岐ワイヤー部7c3の先端に設けられるフック7c4を有し、フック7c4と横部材7b2が車両11に係止される。したがって吊上げ牽引装置7は、少なくとも車両11を三点で係止した状態で吊上げる。そのため安定良く車両11を吊上げることができる。
【0026】
また車両運搬車1は、ワイヤー7cが係止体7bから取外されて、荷台4に積まれる予定の車両10に係止され、ワイヤー7cをウィンチ7eで巻き揚げることで車両10を荷台4に牽引して積むことができる構成になっている。したがってワイヤー7cとウィンチ7eは、車両運搬車1の後方にて車両11を吊上げる際にも利用され、かつ荷台4に車両11を積む際にも利用され得る。
【0027】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)上記実施の形態は、車両を搭載する荷台4を一段のみ有している形態であった。しかし車両を搭載する荷台を複数段有している形態であっても良い。
(2)上記実施の形態の係止体7bは、T字状であった。しかしI字状であっても良い。
(3)上記実施の形態の車両11は、自動車であった。しかしボートなど荷物を運搬する架台と、その架台に設けられた車輪とを備える車両であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】車両運搬車と車両運搬車に搭載および牽引される車両の側面図である。
【図2】車両運搬車の斜視図である。
【図3】車両運搬車の後部側面拡大図である。
【図4】道板を傾倒位置にした際の車両運搬車の斜視図である。
【図5】最短長さにおける車両運搬車の斜視図である。
【図6】アームを使用位置に位置決めした際の車両運搬車の斜視図である。
【図7】アームを下方位置にした際の車両運搬車の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1…車両運搬車
2…キャビン
3…車体枠
4…荷台
5…道板
6…連結機構
6a…第一リンク
6b…第二リンク
6c…ロック機構
7e…ウィンチ
7a…アーム
7c…ワイヤー
7b…係止体
7d…位置決め機構
7…吊上げ牽引装置
8…油圧シリンダ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が搭載される荷台と、その荷台の後端部に回動可能に連結される道板を有し、前記道板が前記荷台に対して起立した起立位置と先端部が道路に接した傾倒位置とに回動され、前記傾倒位置において前記車両が前記荷台に積み降ろしされ得る車両運搬車であって、
走行時に車両運搬車の後方にて他の車両を吊上げて牽引する吊上げ牽引装置を有し、
前記吊上げ牽引装置は、前記荷台の後端部に傾動可能に設けられるアームと、そのアームに一端部が連結されかつ他端側に前記他の車両が係止される係止体と、その係止体に連結されかつ前記アームの先端部に掛けられ前記荷台側に延出するワイヤーと、そのワイヤーを前記荷台側に巻き揚げるウィンチとを有し、
前記アームが前記荷台に対して傾倒し、かつ前記道板が前記傾倒位置に位置することで前記荷台に前記車両が積み降ろしされ、前記道板が前記起立位置に位置し、かつ前記アームが位置決め機構によって前記荷台に対して所定の角度で位置決めされ、前記係止体に前記他の車両を係止して前記ワイヤーを前記ウィンチによって巻き揚げることで前記他の車両を吊上げる構成になっていることを特徴とする車両運搬車。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運搬車であって、
係止体は、アームに一端部が連結されるロッドと、前記ロッドの他端部と連結される横部材とを有し、
ワイヤーは、前記横部材の左右両側に設けられた各掛け部に通される二本の分岐ワイヤー部と、前記各分岐ワイヤー部の先端に設けられるフックを有し、前記フックと前記横部材が車両に係止されることを特徴とする車両運搬車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両運搬車であって、
ワイヤーが係止体から取外されて、荷台に積まれる予定の車両に係止され、前記ワイヤーをウィンチで巻き揚げることで前記車両を前記荷台に牽引して積むことができる構成になっていることを特徴とする車両運搬車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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