説明

車両運搬車

【課題】作業時における周囲への環境負荷の低減と省エネルギー化とを確実に実現ならしめる車両運搬車を提供する。
【解決手段】車体に搭載されたエンジンEと、エンジンEの出力によって電力を発生させるオルタネータ20と、オルタネータ20によって発生した電力を蓄えるメインバッテリ21およびサブバッテリ23と、サブバッテリ23に蓄えられた電力量を検出する電力検出手段と、を備える。コントローラCは、メインバッテリ21に蓄えられた電力によって走行系統の装置を制御するとともに、電力検出手段によって所定量以上の電力量が検出された場合にはサブバッテリ23に蓄えられた電力によって作業系統の装置を制御し、電力検出手段によって所定量未満の電力量が検出された場合にはメインバッテリ21に蓄えられた電力によって作業系統の装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を積載可能な荷台が車体に移動可能に設けられた車両運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1または2に示すように、車両を積載可能な荷台がアクチュエータの作動によって移動する車両運搬車が知られている。こうした車両運搬車においては、油圧ポンプなどの作業系統の装置がPTOによってエンジンに接続されており、エンジンの出力によって作業が行われることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3134673号
【特許文献2】特開2010−58776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両運搬車においては、エンジンを駆動した状態で作業が行われるため、作業中の騒音や排気ガスなど周囲への環境負荷が問題となっている。また、作業中にはエンジンがアイドリング状態となっているが、作業系統の装置を作動するのに必要となる出力は、アイドリング状態のエンジン出力よりも小さいため過剰出力となっており、その結果、必要以上に燃料が消費されるという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に示される車両運搬車においては、エンジンの駆動によって作業系統の装置を作動するのみならず、バッテリに蓄えられた電力によっても作業系統の装置を作動することができるようになっている。
しかしながら、短時間の作業時などには、バッテリに蓄えられた電力ではなくエンジンの駆動によって作業が行われているという実態があり、その結果、上記の問題が解消されないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、作業時における周囲への環境負荷の低減と省エネルギー化とを確実に実現ならしめる車両運搬車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、荷台がスライド自在に積載される車体に走行系統の装置と作業系統の装置が設けられ、前記作業系統の装置には、前記荷台をスライドさせる作業アクチュエータが少なくとも含まれる車両運搬車において、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンの出力によって電力を発生させる発電手段と、前記発電手段によって発生した電力を蓄える車両用バッテリおよび作業用バッテリと、前記作業用バッテリに蓄えられた電力量を検出する作業用バッテリ電力検出手段と、前記車両用バッテリに蓄えられた電力によって走行系統の装置を制御するとともに、前記作業用バッテリ電力検出手段によって所定量以上の電力量が検出された場合には作業用バッテリに蓄えられた電力によって作業系統の装置を制御し、前記作業用バッテリ電力検出手段によって所定量未満の電力量が検出された場合には車両用バッテリに蓄えられた電力によって作業系統の装置を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段が、前記作業用バッテリから前記車両用バッテリに電力供給源を切り換えるのと同時にエンジンを始動することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記車両用バッテリに蓄えられた電力量を検出する車両用バッテリ電力検出手段を備え、前記制御手段は、前記作業用バッテリから車両用バッテリに切り換えた後、車両用バッテリ電力検出手段によって所定量未満の電力量が検出されたときにエンジンを始動することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記荷台をスライドさせる作業アクチュエータとして設けられた伸縮シリンダと、前記伸縮シリンダと前記荷台とを連結するとともに、前記伸縮シリンダの伸縮を倍速して前記荷台をスライドさせる倍速機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通常、作業系統の装置が作業用バッテリに蓄えられた電力によって作動するので、作業用バッテリに必要な電力が蓄えられている限り、作業中にエンジンを駆動する必要性が一切なくなる。その結果、不必要にエンジンを駆動したまま作業が行われなくなり、作業中の周囲への環境負荷の低減と省エネルギー化とを実現することができる。
しかも、作業開始時や作業中に作業用バッテリの電力残量が少なくなった場合には、車両用バッテリに切り換えられるので、作業用バッテリが電力不足を生じたとしても、エンジンを始動することなく作業を開始または再開することができる。
【0010】
特に請求項2に記載の発明によれば、車両用バッテリに切り換えられるのと同時にエンジンが始動するので、作業によって車両用バッテリがバッテリ切れを生じることがなく、走行不能になるおそれがない。
特に請求項3に記載の発明によれば、車両バッテリの残量が少なくなったところでエンジンが始動するので、エンジンが不要に駆動する機会を一層低減することができる。
特に請求項4に記載の発明によれば、電動モータや電動アクチュエータなど出力の小さい装置を用いた場合でも、作業速度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の車両運搬車を示す図であり、(a)は左側方から見た図、(b)は上方から見た図、(c)は後方から見た図である。
【図2】荷台の支持構造を示す分解斜視図である。
【図3】荷台の格納状態を示す図である。
【図4】荷台の移動過程を示す図である。
【図5】荷台の最大張り出し状態を示す図である。
【図6】作業系統の構成を示す図である。
【図7】第1の操作信号が入力したときの制御を示すフローチャートである。
【図8】第2の操作信号が入力したときの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図8を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は車両運搬車を左側方から見た側面図、図1(b)は車両運搬車を上方から見た俯瞰図、図1(c)は車両運搬車を後方から見た図である。
図1に示すように、本実施形態の車両運搬車Aは、車体1に前輪2および後輪3が支持されており、車両の前方側には運転席を有するキャビン4が設けられている。このキャビン4の車両後方側では、車両の前後方向に延設する左右一対の傾斜フレーム5,5が車体1に支持されており、この傾斜フレーム5,5に対して荷台6がスライド自在に懸架されている。荷台6のスライド構造について図2を用いて説明する。
【0013】
すなわち、車体1には車両の前後方向に延設される一対のサブフレーム7,7が一体的に固定されている。これら一対のサブフレーム7,7の車両後端部には、荷台6の底面に固定される一対の荷台フレーム6a,6aの荷重を受ける受けローラ8,8がそれぞれ設けられている。これら受けローラ8,8には、傾斜フレーム5,5が枢支ピンを介して回動自在に枢支されており、これによって傾斜フレーム5,5が受けローラ8,8を支点として傾倒することとなる。
【0014】
そして、一対の傾斜フレーム5,5は、車両前方側において連結ブラケット9によって連結されており、この連結ブラケット9に、伸縮シリンダ10のロッド10aが固定されている。この伸縮シリンダ10のシリンダチューブ10bには、長手方向両端部にガイドローラ11がそれぞれ設けられており、このガイドローラ11が、傾斜フレーム5,5の対向面に設けられたガイドレール5a,5aに沿って転動するようになっている。したがって、伸縮シリンダ10は、ガイドレール5a,5aにガイドされながら傾斜フレーム5,5に沿って伸縮することとなる。
【0015】
また、シリンダチューブ10bには、ガイドレール5a,5a上を転動する上方ローラ12a,12aと、この上方ローラ12a,12aの下方に設けられた下方ローラ12b,12bと、を有する傾斜移動体12が設けられている。この傾斜移動体12の下方ローラ12b,12bは、一対のサブフレーム7,7の対向面に設けられた傾斜ガイドレール7a,7a上を転動する。傾斜ガイドレール7a,7aは、車両の前方側から後方側に向かって上方に傾斜した後に、サブフレーム7,7と平行になるように形成されている。したがって、伸縮シリンダ10が伸縮すると、傾斜移動体12が移動する過程において、傾斜フレーム5,5が傾斜移動体12によって上方に押し上げられるようにして傾斜することとなる。
【0016】
また、一対の傾斜フレーム5,5には、それぞれ車両の幅方向外方にガイドレール5b,5bが設けられている。このガイドレール5b,5bは、倍速移動体13を傾斜フレーム5,5に沿って移動させるものである。
倍速移動体13は、ガイドレール5b,5b上を転動するローラを備えた一対のフレーム13a,13aと、これら両フレーム13a,13aを連結する連結フレーム13bと、を備えており、伸縮シリンダ10の伸縮量の2倍だけ傾斜フレーム5,5に沿って移動するようになっている。
【0017】
具体的には、連結フレーム13bには、一対の第1チェン14,14の一端が固定されており、第1チェン14,14の他端が傾斜フレーム5,5に固定されている。このとき、伸縮シリンダ10の伸長方向先端に位置するガイドローラ11には滑車15が設けられており、この滑車15を巻き回すようにして第1チェン14,14が取り付けられている。また、伸縮シリンダ10の収縮方向先端に位置するガイドローラ11にも滑車15が設けられている。そして、この滑車15には第2チェン16,16が巻き回されており、この第2チェン16,16の一端が連結フレーム13bに固定され、他端が傾斜フレーム5,5に固定されている。したがって、伸縮シリンダ10が伸縮すると、その伸縮量の2倍量だけ倍速移動体13が移動することとなる。
そして、この倍速移動体13は、枢支ピンを介して荷台フレーム6の先端に回動自在に連結されており、荷台6が図3〜図5に示すように、傾斜しながら車両の後方に移動することとなる。上記の構成からなる倍速移動体13、第1チェン14,14および第2チェン16,16によって本発明の倍速機構が構成されている。
【0018】
なお、図1(b)に示すように、荷台6の前端近傍には、自走不能となった車両を荷台6に積載したり、あるいは荷台6から積み下ろししたりするためのウインチ装置17が架装されている。
また、図1(a)および図1(c)に示すように、荷台6の後端には、車両を自走によって積載または積み下ろしする際に、路面と荷台6との段差を解消する道板18が設けられている。この道板18は、通常、図示のように荷台6に対して略90度屈曲した格納状態に維持されているが、車両を積載したり積み下ろししたりする際には、先端が路面に接触する張り出し状態へと動作するようになっている。
【0019】
次に、図6を用いて、車両運搬車Aの作業系統の構成について説明する。
車体1には、車両運搬車Aが走行するための駆動源であるエンジンEが設けられている。このエンジンEの出力軸には、本発明の発電手段となるオルタネータ20が接続されており、オルタネータ20によって発電された電力がメインバッテリ21(本発明の車両用バッテリ)に蓄えられるようになっている。このメインバッテリ21には、サブバッテリチャージャー22を介してサブバッテリ23(本発明の作業用バッテリ)が接続されており、オルタネータ20からメインバッテリ21に電力供給が行われる際の余剰電流が、サブバッテリ23に蓄えられるようにしている。つまり、オルタネータ20によって発電された電力は、メインバッテリ21に優先的に蓄えられることとなる。
【0020】
このメインバッテリ21に蓄えられた電力は基本的に走行系統の装置に供給され、サブバッテリ23に蓄えられた電力は電動モータMや作業灯19など作業系統の装置に供給される。ただし、作業系統の装置には、メインバッテリ21に蓄えられた電力をも供給可能となっている。このように、メインバッテリ21とサブバッテリ23とのいずれを作業系統の装置への電力供給源とするかは、切り換えリレー24によって切り換えられることとなる。
【0021】
そして、上記した電動モータMや作業灯19などの作業系統の装置、エンジンEおよび切り換えリレー24を制御するのが、本発明の制御手段を構成するコントローラCである。このコントローラCは、リモートコントローラRとの間で無線通信によって操作信号の送受信が可能となっており、リモートコントローラRから入力した操作信号に応じて、作業系統の装置を制御したり、あるいはエンジンEの駆動を制御したりすることとなる。なお、コントローラCは、作業系統の装置を制御する専用の装置であってもよいし、例えばECU(エレクトリック・コントロール・ユニット)によってコントローラCを構成し、走行系統の装置と作業系統の装置とを1つのコントローラCが制御するようにしても構わない。
【0022】
このコントローラCによって駆動を制御される電動モータMには、油圧ポンプPが直結しており、電動モータMが駆動すると、油圧ポンプPからメイン通路30に作動油が吐出される。メイン通路30には、上記した伸縮シリンダ10への作動油の給排を制御するコントロールバルブCVa、道板用シリンダ32への作動油の給排を制御するコントロールバルブCVb、およびウインチ用モータ33への作動油の給排を制御するコントロールバルブCVcが接続されている。伸縮シリンダ10は、上記したとおり荷台6を移動させるアクチュエータであり、道板用シリンダ32は、上記した道板18を格納状態または張り出し状態に作動するアクチュエータであり、ウインチ用モータ33は、ウインチ装置17のウインチドラムを回動するアクチュエータである。各コントロールバルブCVa〜CVcが中立位置にある場合には、油圧ポンプPから吐出された作動油がタンクTに還流される。一方、いずれかのコントロールバルブCVa〜CVcを中立位置から切り換えると、所望のアクチュエータに作動油が供給されて各アクチュエータが作動することとなる。
【0023】
上記各コントロールバルブCVa〜CVcには、それぞれ電磁ソレノイド35a〜35cが設けられており、上記したコントローラCが各電磁ソレノイド35a〜35cを通電することによって切り換え制御がなされることとなる。ただし、上記各コントロールバルブCVa〜CVcには、それぞれ操作レバー34a〜34cが直結しており、操作レバー34a〜34cを操作することによっても、各コントロールバルブCVa〜CVcが切り換え可能となっている。
【0024】
なお、図中符号40は、メインバッテリ21に蓄えられた電力量を検出するメインバッテリ残量検出センサ(本発明の車両用バッテリ電力検出手段)であり、図中符号41は、サブバッテリ23に蓄えられた電力量を検出するサブバッテリ残量検出センサ(本発明の作業用バッテリ電力検出手段)である。
また、図中符号42は、作業系統の装置の状態や姿勢を検出する状態検出センサである。この状態検出センサ42は、作業系統の装置の状態や姿勢を直接的に検出するものであってもよいし、各アクチュエータ10,32,33の状態を検出することで、作業系統の装置の状態や姿勢を間接的に検出するものであってもよい。
【0025】
次に、図7および図8を用いて、コントロールバルブCVa〜CVcのいずれかを切り換えるときのコントローラCの制御について説明する。これら図7および図8に示す各処理は、リモートコントローラRからコントロールバルブCVa〜CVcを切り換える操作信号が入力した場合に開始される。
なお、図7は、リモートコントローラRの所定のボタンを操作している間に限って、荷台6を移動させる場合の処理(第1の操作が行われた場合の処理)の一例を示している。一方、図8は、リモートコントローラRの所定のボタンを1回操作すると、荷台6を自動的に格納状態または張り出し状態まで移動させる場合の処理(第2の操作が行われた場合の処理)の一例を示している。
【0026】
まず、図7を用いて、第1の操作が行われた場合の処理について説明する。
【0027】
(ステップS1)
リモートコントローラRから第1の操作信号が入力すると、コントローラCは、まず、サブバッテリ残量検出センサ41によって検出されるサブバッテリ23の残量を確認する。
【0028】
(ステップS2)
次に、コントローラCは、サブバッテリ23の残量が予め設定された所定量よりも少ないかを判断する。その結果、サブバッテリ23の残量が所定量よりも少ないと判断した場合にはステップS3に処理を移し、サブバッテリ23の残量が所定量以上であると判断した場合にはステップS12に処理を移す。
なお、ここでいう所定量とは、例えば、電動モータMを所定時間駆動するのに必要な電力量であり、電動モータMを駆動することは可能であるが、しばらくすると電動モータMを駆動することができなくなる程度のものとする。
ただし、バッテリ残量=0(電動モータMを駆動することができない残量)を所定量として設定しておき、サブバッテリ23がバッテリ切れを生じているか否かを判断するようにしても構わない。このように、サブバッテリ23がバッテリ切れを生じているか否かは、コントローラCが、操作信号の入力と作業系統の装置の状態変化とを判断することによっても実現可能である。つまり、操作信号が入力しているにも関わらず、作業系統の装置の状態が変化しない場合に、バッテリ切れを生じていると判断すればよい。
【0029】
(ステップS3)
上記ステップS2において、サブバッテリ23の残量が所定量よりも少ないと判断した場合には、コントローラCは、切り換えリレー24を切り換え制御して、メインバッテリ21を作業系統の装置への電力供給源に切り換える。
【0030】
(ステップS4)
次に、コントローラCは、メインバッテリ残量検出センサ40によって検出されるメインバッテリ21の残量を確認する。
【0031】
(ステップS5)
次に、コントローラCは、メインバッテリ21の残量が予め設定された所定量よりも少ないかを判断する。その結果、メインバッテリ21の残量が所定量よりも少ないと判断した場合にはステップS6に処理を移し、メインバッテリ21の残量が所定量以上であると判断した場合にはステップS7に処理を移す。
【0032】
(ステップS6)
上記ステップS5において、メインバッテリ21の残量が所定量よりも少ないと判断した場合には、コントローラCはエンジンEを駆動する。なお、既にエンジンEが駆動中である場合には、このステップS6の処理を行うことなくステップS7に処理が移される。
【0033】
(ステップS7)
次に、コントローラCは、電動モータMを駆動するように制御する。
【0034】
(ステップS8)
次に、コントローラCは、入力した操作信号に基づいて電磁ソレノイド35aを通電してコントロールバルブCVaを切り換える。
【0035】
(ステップS9)
次に、コントローラCは、操作信号の入力が停止したかを判断するとともに、操作信号の入力が継続している場合には再び上記ステップS1以降の処理を繰り返し行い、操作信号の入力が停止した場合にはステップS10に処理を移す。
【0036】
(ステップS10)
上記ステップS9において、操作信号の入力が停止したと判断した場合には、コントローラCは、切り換え中のコントロールバルブCVaを中立位置に復帰させる。
【0037】
(ステップS11)
次に、コントローラCは、電動モータMの駆動を停止して当該処理を終了する。
【0038】
(ステップS12)
一方、上記ステップS2において、サブバッテリ23に蓄えられた電力量が所定量以上であると判断した場合には、コントローラCは、エンジンEが駆動中であるかを判断する。その結果、エンジンEが駆動中であると判断した場合にはステップS13に処理を移し、エンジンEは駆動中ではないと判断した場合には上記ステップS7に処理を移す。
【0039】
(ステップS13)
上記ステップS12において、エンジンEが駆動中であると判断した場合には、コントローラCはエンジンEの駆動を停止する。これにより、サブバッテリ23に所定量以上の電力が蓄えられている場合には、必ずエンジンEが停止した状態で作業系統の装置が作動することとなる。
【0040】
(ステップS14)
次に、コントローラCは、メインバッテリ21を電力供給源とするように切り換えリレー24が切り換えられているか、すなわち、作業系統の装置に対してメインバッテリ21から電力が供給されているかを判断する。その結果、メインバッテリ21から電力が供給されていると判断した場合にはステップS15に処理を移し、メインバッテリ21からは電力が供給されていないと判断した場合には上記ステップS7に処理を移す。
【0041】
(ステップS15)
上記ステップS14において、メインバッテリ21から電力が供給されていると判断した場合には、コントローラCは、切り換えリレー24を切り換え制御して、作業系統の装置への電力供給源をサブバッテリ23に切り換える。このように、サブバッテリ23に所定量以上の電力が蓄えられている場合には、必ずサブバッテリ23から作業系統の装置に電力が供給されることとなる。
【0042】
上記の処理によれば、例えば、作業中にサブバッテリ23がバッテリ切れを生じそうになった場合には、メインバッテリ21から作業系統の装置に電力が供給されるため、中断することなく作業を継続することができる。
また、電力供給源がメインバッテリ21に切り換えられた後、バッテリ残量に応じてエンジンEが駆動するため、メインバッテリ21がバッテリ切れを生じて走行不能となることもない。そして、エンジンEを駆動した結果、サブバッテリ23に所定量以上の電力が蓄えられた場合には、電力供給源が再びサブバッテリ23に切り換えられ、しかもエンジンEの駆動が停止するため、不必要にエンジンEが駆動したままになってしまうこともない。
なお、電力供給源がメインバッテリ21に切り換えられる際に、メインバッテリ21の残量によらず、必ずエンジンEを駆動してもよい。このようにすると、メインバッテリ21の残量による制御を行うことなくメインバッテリ21のバッテリ切れを防止できる。
【0043】
次に、図8を用いて、第2の操作が行われた場合の処理について説明する。
【0044】
(ステップS21)
リモートコントローラRから第2の操作信号が入力すると、コントローラCは、まず、サブバッテリ残量検出センサ41によって検出されるサブバッテリ23の残量を確認する。
【0045】
(ステップS22)
次に、コントローラCは、メインバッテリ残量検出センサ40によって検出されるメインバッテリ21の残量を確認する。
【0046】
(ステップS23)
次に、コントローラCは、状態検出センサ42によって検出される伸縮シリンダ10の状態を確認する。
【0047】
(ステップS24)
次に、コントローラCは、作業灯19が点灯しているか消灯しているかを確認する。
【0048】
(ステップS25)
次に、コントローラCは、伸縮シリンダ10の作動すなわち荷台6の移動が完了するまでに必要となる必要電力量を、入力した操作信号、上記ステップS23で確認した現在の伸縮シリンダ10の状態、および作業灯19の点灯状況に基づいて算出する。
【0049】
(ステップS26)
次に、コントローラCは、上記ステップS21で確認したサブバッテリ23に蓄えられた電力量が、上記ステップS25で確認した必要電力量よりも少ないかを判断する。その結果、「サブバッテリ残量<必要電力量」であると判断した場合にはステップS27に処理を移し、「サブバッテリ残量≧必要電力量」であると判断した場合にはステップS30に処理を移す。
【0050】
(ステップS27)
上記ステップS26において、「サブバッテリ残量<必要電力量」であると判断された場合には、コントローラCは、上記ステップS22で確認したメインバッテリ21に蓄えられた電力量が、上記ステップS25で確認した必要電力量よりも少ないかを判断する。その結果、「メインバッテリ残量<必要電力量」であると判断した場合にはステップS28に処理を移し、「メインバッテリ残量≧必要電力量」であると判断した場合にはステップS29に処理を移す。
【0051】
(ステップS28)
上記ステップS27において、「メインバッテリ残量<必要電力量」であると判断した場合には、コントローラCはエンジンEを始動する。
【0052】
(ステップS29)
次に、コントローラCは、切り換えリレー24を切り換え制御して、作業系統の装置への電力供給源をメインバッテリ21に切り換える。
【0053】
(ステップS30)
次に、コントローラCは電動モータMを駆動する。
【0054】
(ステップS31)
次に、コントローラCは、コントロールバルブCVaを切り換えて当該処理を終了する。これにより、伸縮シリンダ10が伸縮動作して荷台6が移動することとなる。
【0055】
上記の処理によれば、サブバッテリ23に蓄えられた電力によっては要求された動作を完了することができない場合に、電力供給源をメインバッテリ21に切り換えて作業が行われる。このとき、メインバッテリ21のバッテリ残量によって作業を完了することができない場合には、エンジンEを始動したうえで作業が開始されるので、メインバッテリ21がバッテリ切れを生じることなく、要求された作業を完了することが可能となる。
また、メインバッテリ21のバッテリ残量によって作業を完了することができる場合には、エンジンEを始動することなく作業が行われるので、不必要にエンジンEが駆動した状態で作業が行われることがない。
【0056】
なお、上記の処理においては、要求された動作が完了するまでに必要となる電力を、伸縮シリンダ10の状態と入力した操作信号とに基づいて算出することとしたが、単に入力した操作信号に基づいてのみ必要電力を算出することも可能である。ただし、要求された動作が完了するまでの必要電力を、操作信号が入力したときの作業系統の装置の状態に基づいて算出した方が、より正確な必要電力が算出されるため、エンジンEが不必要に駆動するのを防ぐことが可能となる。
また、図7および図8においては、荷台6を移動する場合について説明したが、上記の処理は荷台6に限らず、例えば、ウインチ装置17や道板18を動作させる場合にも適用可能である。
また、上記実施形態においては、倍速機構によって荷台6が伸縮シリンダ10の伸縮量の2倍スライドすることとしたが、倍速機構は必須の構成ではない。ただし、元来、駆動動力が小さくてよい車両運搬車の荷台の駆動機構として倍速機構を設ければ、出力の小さい電動モータによっても作動速度を十分に確保することが可能である。また、車両の積降作業の後に必ず走行を伴う車両運搬車は、サブバッテリの充放電サイクルが一定しているため、サブバッテリに安定して充電を行うことができ、車両運搬車にサブバッテリを用いたシステムは成立性が高い。したがって、倍速機構を備えた車両運搬車の駆動源として、サブバッテリ駆動の電動モータを用いれば、余剰なエンジン出力によって荷台を移動する従来の車両運搬車に比べて効率のよいシステムを成立させることができる。
【0057】
また、上記実施形態においては、サブバッテリ23の電力によって電動モータMを駆動し、この電動モータMによって油圧ポンプPを駆動して作業系統の装置を作動することとしたが、作業系統の装置を作動する構成はこれに限らない。例えば、荷台6を移動する作業系統のアクチュエータとして電動シリンダを設け、サブバッテリ23の電力によって電動シリンダを直接作動するようにしても構わない。いずれにしても、作業系統の装置には、サブバッテリ23の電力によって作動するものが広く含まれる。
【0058】
また、上記実施形態においては、サブバッテリ23よりもメインバッテリ21に優先的に充電がなされる構成としたが、例えば、両バッテリ21,23に充電を行う装置をそれぞれ設けて、同時並行的に充電が行われるようにすることも可能である。
また、上記実施形態においては、メインバッテリ21に蓄えられた電力が所定量よりも少なくなった場合にエンジンEを始動することとしたが、切り換えリレー24をメインバッテリ21に切り換えた場合に、バッテリ残量とは無関係に必ずエンジンEを始動することとしても構わない。
【符号の説明】
【0059】
1 車体
6 荷台
10 伸縮シリンダ
13 倍速移動体
14 第1チェン
16 第2チェン
17 ウインチ装置
18 道板
19 作業灯
20 オルタネータ
21 メインバッテリ
23 サブバッテリ
32 道板用シリンダ
33 ウインチ用モータ
40 メインバッテリ残量検出センサ
41 サブバッテリ残量検出センサ
A 車両運搬車
C コントローラ
E エンジン
M 電動モータ
P 油圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台がスライド自在に積載される車体に走行系統の装置と作業系統の装置が設けられ、前記作業系統の装置には、前記荷台をスライドさせる作業アクチュエータが少なくとも含まれる車両運搬車において、
前記車体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンの出力によって電力を発生させる発電手段と、
前記発電手段によって発生した電力を蓄える車両用バッテリおよび作業用バッテリと、
前記作業用バッテリに蓄えられた電力量を検出する作業用バッテリ電力検出手段と、
前記車両用バッテリに蓄えられた電力によって走行系統の装置を制御するとともに、前記作業用バッテリ電力検出手段によって所定量以上の電力量が検出された場合には作業用バッテリに蓄えられた電力によって作業系統の装置を制御し、前記作業用バッテリ電力検出手段によって所定量未満の電力量が検出された場合には車両用バッテリに蓄えられた電力によって作業系統の装置を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする車両運搬車。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記作業用バッテリから前記車両用バッテリに電力供給源を切り換えるのと同時にエンジンを始動することを特徴とする請求項1記載の車両運搬車。
【請求項3】
前記車両用バッテリに蓄えられた電力量を検出する車両用バッテリ電力検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記作業用バッテリから車両用バッテリに切り換えた後、車両用バッテリ電力検出手段によって所定量未満の電力量が検出されたときにエンジンを始動することを特徴とする請求項1記載の車両運搬車。
【請求項4】
前記荷台をスライドさせる作業アクチュエータとして設けられた伸縮シリンダと、
前記伸縮シリンダと前記荷台とを連結するとともに、前記伸縮シリンダの伸縮を倍速して前記荷台をスライドさせる倍速機構と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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