説明

車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置

【課題】スピーカ2の断線および/または短絡を検出する。
【解決手段】車両の運行通知音発生装置1は、スピーカ2を備える。運行音信号は、電力増幅回路6で増幅され、カップリングコンデンサ5を通ってスピーカ2に供給される。スピーカ2のボイスコイルは、スピーカ2の端子に表れる電圧Vpの位相を遅らせる。スピーカ2が正常であるとき、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相に対して遅れている。スピーカ2が断線すると、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相と同じとなる。断線判定部542は、電圧Vpの位相と、電圧Vsの位相との位相差に基づいて、スピーカ2の断線を判定する。制御装置7は、警報装置11を作動させる。短絡判定部543は、運行音のための信号が供給されているときに、電圧Vpの変化量が閾値を下回ると、スピーカ2の短絡を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ回路の断線などの異常を検出するための異常検出装置に関し、車両が電動機による運行状態にあることを音によって通知する運行通知音発生装置に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発音体の断線を検知するために、発音体に接続された駆動回路に、発音体の電磁コイルに流れる電流と電圧とを測定するエラー判定回路を設置する構成を開示している。
【0003】
特許文献2は、スピーカ回路とインピーダンスが等価の等価回路を設け、スピーカ回路と等価回路とのインピーダンスを比較することで断線を検出するスピーカの断線検出装置を開示している。
【0004】
特許文献3は、スピーカ回路のインピーダンスを測定することにより、スピーカ回路の断線、短絡を検出するスピーカラインの検査装置を開示している。
【0005】
特許文献4は、圧電型発音体の断線の有無を検知するときにだけ、断線検出用の電圧を供給する回路を発音体に接続するスイッチを備える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−23761号公報
【特許文献2】特開2003−274491号公報
【特許文献3】特開2007−37024号公報
【特許文献4】特開2011−70561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されているエラー判定回路は、電流及び電圧を測定するための変流器と変圧器を、発音体と接続される配線上に設置する必要がある。このため、部品点数の増加、価格の上昇といった問題点があった。また、小型化が困難であった。
【0008】
特許文献2で提案されている断線検出装置は、等価回路およびスイッチ回路を設ける必要がある。このため、部品点数の増加、価格の上昇といった問題点があった。また、小型化が困難であった。さらに、通常の作動中に断線などの異常を検出することができないという問題点があった。
【0009】
特許文献3で提案されている検査装置では、スピーカラインの電流を検出するための検出回路が必要であった。このため、部品点数の増加、価格の上昇といった問題点があった。また、小型化が困難であった。また、この検査装置は、非可聴周波数の交流信号を音声信号に混合している。このため、交流信号源が必要であった。さらに、音声信号と検査信号とを混合した混合信号を電力増幅する必要があった。
【0010】
特許文献4で提案されている警報器は、断線有無を検出するときだけ、断線検出用の電圧が供給されるから、通常の作動中に断線などの異常を検出することができないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない部品点数で、発音動作と並行して異常を検出することができる車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、車両が運行状態にあることを音によって通知する運行通知音発生装置に用いて好適な車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0014】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載されたスピーカ(2)と、スピーカから発生させる音の音信号を発生する発生部(15、815)と、音信号を増幅する電力増幅回路(6)と、電力増幅回路の出力をスピーカに供給するカップリングコンデンサ(5)と、スピーカの端子に表れる電圧を直接的に、または間接的に検出する検出回路(513、713)と、音信号と検出回路により検出された電圧(Vin)との位相差に基づいて、スピーカの断線を判定する判定部(514、614、714)とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、スピーカの断線に起因する電圧位相の変化に基づいて、スピーカの断線が判定される。スピーカが断線すると、スピーカのインダクタンスが変化する。このため、スピーカの端子に表れる電圧の位相は、スピーカが正常であるときと、スピーカが断線したときとで変化する。判定部は、このような位相の変化を、音信号の位相と、スピーカ2の端子電圧の位相との位相差によって検出する。この構成によると、スピーカ2の端子電圧を検出する簡単な構成でスピーカ2の断線を判定することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、判定部(514、614、714)は、位相差が所定の関係になると、スピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、音信号の位相と、検出された電圧の位相とが所定の関係になると、スピーカの断線が判定される。
【0017】
請求項3に記載の発明は、判定部は、所定の関係が、所定期間を上回って継続すると、スピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、一時的に所定の関係が成立しただけでは、スピーカの断線は判定されない。このため、誤判定を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、判定部(514、614、714)は、音信号の位相に対する、検出回路により検出された電圧(Vin)の位相の遅れ量が所定の閾値(Vth1、Vth3、Tth1)を下回ると、スピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、音信号の位相に対する、検出された電圧の位相の遅れ量が所定の閾値を下回ると、スピーカの断線が判定される。
【0019】
請求項5に記載の発明は、判定部(514、614、714)は、音信号の位相に対する、検出回路により検出された電圧(Vin)の位相の遅れ量が所定の閾値(Vth2、Vth4、Tth2)を上回ると、スピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、音信号の位相に対する、検出された電圧の位相の遅れ量が所定の閾値を上回ると、スピーカの断線が判定される。
【0020】
請求項6に記載の発明は、判定部(514)は、音信号が所定の位相(T1)にあるときの検出回路により検出された電圧(Vin)の値(V1)と、検出回路により検出された電圧(Vin)が所定の位相(T2)にあるときの検出回路により検出された電圧(Vin)の値(V1)とによって示される位相差に基づいてスピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、検出電圧が所定の位相であるときの検出電圧値と、音信号が所定の位相であるときの検出電圧値とによって位相差が示される。
【0021】
請求項7に記載の発明は、判定部(614)は、音信号が所定の位相(Tsm)にあるときの検出回路により検出された電圧(Vin)の値(Vsm)によって示される位相差に基づいてスピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、音信号が所定の位相であるときの検出電圧値とによって位相差が示される。
【0022】
請求項8に記載の発明は、判定部(714)は、音信号が所定の値(Vts)に到達した時刻(T1)と、検出回路により検出された電圧(Vin)が所定の値(Vtp)に到達した時刻(T2)とによって示される位相差に基づいてスピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、音信号が所定の値に到達した時刻と、検出電圧が所定の値に到達した時刻とによって位相差が示される。
【0023】
請求項9に記載の発明は、判定部(514、614、714)は、音量(Env(Vs))が所定の閾値(Vloud)を上回るときに、スピーカの断線を判定することを特徴とする。この構成によると、スピーカからの音量が所定の閾値を上回るときに、すなわちスピーカに十分に大きい交流電力が供給されるときに、スピーカの断線が判定される。
【0024】
請求項10に記載の発明は、発生部(15)は、車両の運行を知らせるための運行通知音のための音信号を発生することを特徴とする。この構成によると、車両の運行を車内および/または車外の人々に知らせるための運行通知音がスピーカから発生する。判定部は、運行通知音のための音信号によって、スピーカの断線を判定することができる。
【0025】

請求項11に記載の発明は、発生部(15)は、運行通知音を発生させないときに、人が聴き取ることが困難な非可聴音のための音信号を発生することを特徴とする。この構成によると、運行通知音を発生させないときに、非可聴音のための音信号がスピーカに供給される。判定部は、非可聴音のための音信号によって、スピーカの断線を判定することができる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、判定部(514、614、714)は、検出回路により検出された電圧(Vin)の変化量(Vflc)が所定の閾値(FLth)を下回るとスピーカの短絡を判定することを特徴とする。この構成によると、検出回路によって検出された電圧に基づいて、スピーカの内部での短絡、およびスピーカの端子の接地を含むスピーカ回路の短絡を判定することができる。
【0027】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図2Aは、電圧Vsの一例を示し、図2Bは、電圧Vpの一例を示し、図2Cは、電圧Vinの一例を示す。
【図3】第1実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図3Aは、電圧Vsの一例を示し、図3Bは、電圧Vpの一例を示し、図3Cは、電圧Vinの一例を示す。
【図4】第1実施形態の断線判定処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の短絡判定処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明を適用した第1実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図7Aは、運行通知音が発生するときの電圧Vsの一例を示し、図7Bは、運行通知音が発生するときの電圧Vpの一例を示し、図7Cは、運行通知音が発生するときの電圧Vinの一例を示す。
【図8】第2実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図8Aは、電圧Vsの一例を示し、図8Bは、電圧Vpの一例を示し、図8Cは、電圧Vinの一例を示す。
【図9】第2実施形態の断線判定処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明を適用した第3実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図11】第3実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図11Aは、電圧Vsの一例を示し、図11Bは、電圧Vpの一例を示し、図11Cは、第1ポートの入力信号の一例を示し、図11Dは、第2ポートの入力信号の一例を示す。
【図12】第3実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図12Aは、電圧Vsの一例を示し、図12Bは、電圧Vpの一例を示し、図12Cは、第1ポートの入力信号の一例を示し、図12Dは、第2ポートの入力信号の一例を示す。
【図13】第3実施形態の断線判定処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明を適用した第4実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図15】第4実施形態の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る異常検出装置500を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。車両用の運行通知音発生装置1(以下、発生装置1という)は、車両の走行を車内および車外の人々に通知するための運行通知音を発生する。また、発生装置1は、車両が走行可能な状態におかれるときにも、運行通知音を発生してもよい。例えば、発生装置1は、車両が、走行していないが、信号などで一時停車しているときにも、運行通知音を発生してもよい。この明細書において、運行の語は、車両が走行状態にあることを意味する場合と、車両が走行状態にあること、および車両が走行可能な状態にあることの両方を意味する場合とがある。運行通知音は、歩行者に対して車両の接近を知らせる目的で使用される場合には、車両接近音、接近通報音、あるいは接近警告音とも呼ばれることがある。運行通知音は、従来のホーンなどとは異なり、車両が所定の低速走行をしている間中、継続的に出力される。
【0031】
発生装置1は、電動車両、または低騒音車両に搭載されることがある。電動車両には、走行用の動力源として電動機のみを搭載した電気自動車と、走行用の動力源として内燃機関と電動機とを搭載したハイブリッド車両とが含まれる。ハイブリッド車両においては、発生装置1は、車両が電動機のみによって走行するときにだけ、運行通知音を発生するように構成することができる。
【0032】
発生装置1は、車両に搭載されたスピーカ(SP)2を含むスピーカ回路を備える。スピーカ2は、ボイスコイルを備えるダイナミックスピーカである。よって、スピーカ2は、誘導性の装置である。スピーカ2の負極端子は、接地されている。スピーカ2の正極端子には、運行通知音のための交流電力が印加される。発生装置1は、電源(BAT)3を備える。電源3は、車両に搭載されたバッテリである。電源3は、発生装置1の電源として機能する。
【0033】
発生装置1は、カップリングコンデンサ5と、電力増幅回路(AMP)6とを備える。電力増幅回路6は、運行通知音のための音信号を増幅する。カップリングコンデンサ5は、電力増幅回路6の出力のうち、運行通知音のための交流成分を通過させ、スピーカ2に供給する。
【0034】
発生装置1は、制御装置(COM)7を備える。制御装置7は、電子制御装置である。制御装置7は、運行通知音のための音信号を発生する。また、制御装置7は、運行通知音の発生と停止とを切換える。音信号は、電力増幅回路6に供給される。制御装置7は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置7によって実行されることによって、制御装置7をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置7を機能させる。制御装置7が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0035】
発生装置1は、車両のブレーキ装置の操作を検出するブレーキセンサ(BRK)8を備える。ブレーキセンサ8の信号は、制御装置7に入力される。発生装置1は、車両の走行速度を検出する車速センサ(VM)9を備える。車速センサ9の信号は、制御装置7に入力される。制御装置7は、車速センサ9から入力される車速信号に基づいて、車両が所定の速度領域で走行しているときに運行通知音を発生する。例えば、制御装置7は、車両が所定の低速領域で走行しているときに運行通知音を発生する。制御装置7は、車両の走行速度が、0km/hから20km/hの間の領域にあるときに、音信号を発生する。発生装置1は、音信号の発生を許可、または禁止する選択装置(ON/OFF)10を備える。選択装置10の信号は、制御装置7に入力される。選択装置10は、例えば、車両の運転者によって操作されるスイッチ、または車両に搭載された他の電子制御装置である。例えば、選択装置10は、車両が駐車されているときに音信号の発生を禁止し、車両が運行状態にあるときに音信号の発生を許可する。また、車両の運転者が運行通知音を止めたいときに、運転者は選択装置10を操作することにより、音信号の発生を禁止することができる。
【0036】
発生装置1は、スピーカ回路の異常が検出されたときに起動される対策装置としての警報装置(WRN)11を備える。警報装置11は、スピーカ2の異常を、視覚的、または聴覚的に車両の利用者に知らせる。警報装置11は、警報ランプ、または警報ブザーによって提供することができる。また、警報装置11は、車両に搭載されたディスプレイに警報表示を表示する表示装置によっても提供することができる。
【0037】
制御装置7は、音信号を発生する発生部(SDG)15を備える。発生部15は、車両の走行速度に応じて、音信号を合成し、出力する。発生部15は、制御装置7の内部または外部に設けられたメモリに保存されたデータに基づいて、音信号を合成し、出力する。発生部15により発生された音信号は、電力増幅回路6に供給される。制御装置7は、発生部15を制御する制御部(CNT)16を備える。制御部16は、ブレーキセンサ8、車速センサ9、および選択装置10からの信号に基づいて、発生部15を制御する。制御部16は、発生部15を制御する制御手段を提供する。制御部16は、運行発生音の発生と停止とを切換える。
【0038】
発生装置1は、スピーカ2を含むスピーカ回路の異常を検出する異常検出装置500を備える。異常検出装置500は、スピーカ2の断線および/または短絡を検出する。ここで、スピーカ2の断線には、スピーカ2の内部における回路の断線と、スピーカ2へ通電するための回路の断線とが少なくとも含まれる。よって、異常検出装置500は、スピーカ2を含むスピーカ回路の断線を検出しているともいえる。また、スピーカ2の短絡には、スピーカ2の内部おける短絡と、スピーカ2の端子の接地、およびスピーカ2へ通電するための回路の接地が少なくとも含まれる。よって、異常検出装置500は、スピーカ2を含むスピーカ回路の短絡を検出しているともいえる。発生装置1は、スピーカ2に並列接続されたフィルタ回路を構成する抵抗器518とコンデンサ519とを備える。抵抗器518とコンデンサ519とは直列接続されている。スピーカ2を含むスピーカ回路には、スピーカ2のボイスコイルに代表されるインダクタンス素子と、コンデンサ519のようなキャパシタンス素子とが含まれている。
発生装置1は、スピーカ2に印加される電圧信号を検出するための検出回路513を備える。検出回路513は、スピーカ2の端子に表れる電圧を直接的に、または間接的に検出する。この実施形態では、検出回路513は、抵抗器518、コンデンサ519、およびスピーカ2を含むスピーカ回路の電圧Vpを検出する。
【0039】
検出回路513は、電圧Vpを、制御装置7に入力可能な電圧に変換する変換回路でもある。検出回路513は、交流信号から、制御装置7を保護する保護回路でもある。検出回路513は、出力部分に電圧Vinを出力する。電圧Vinは、制御装置7に入力される。電圧Vinは、電圧Vpに対応する。電圧Vpおよび電圧Vinは、スピーカ2の断線および/または短絡を判定するために計測される電圧である。
【0040】
検出回路513は、アノードが接地され、カソードが出力部分に接続されたダイオード31を備える。ダイオード31は、出力部分と接地電位との間に逆方向に配置されている。ダイオード31は、負電圧をカットするための保護ダイオードである。音信号が供給されるとき、電圧Vpは、負方向へも変化する。ダイオード31は、負電圧を除去することによって、負電圧が制御装置7に入力されることを阻止し、制御装置7のポートを保護する。
【0041】
検出回路513は、アノードが出力部分に接続され、カソードが電源Vcに接続されたダイオード32を備える。ダイオード32は、電源Vcと出力部分との間に逆方向に配置されている。電源Vcは、電子回路のために安定化された電源である。電源Vcとダイオード32は、計測される電圧を、電源Vcの電圧に制限するプルアップ回路を構成する。これにより、電圧Vpが電源Vcを上回る電圧であっても、計測される電圧Vinが電子回路のための電源Vcに制限される。この結果、計測される電圧Vinは、制御装置7に入力可能な電圧に調整される。
【0042】
検出回路513は、電流制限用の抵抗器533を備える。抵抗器533は、カップリングコンデンサ5とスピーカ2との間と、ダイオード31とダイオード32との間との間に接続されている。直列接続されたダイオード31、32、および抵抗器533は、電圧Vinを制限する保護回路を構成する。
【0043】
さらに、検出回路513は、高周波成分を阻止し、低周波成分を通過させるローパスフィルタを含むフィルタ回路(FLT)34を備える。フィルタ回路34は、コンデンサ35を備えることができる。検出回路513が出力する電圧Vinは、制御装置7に入力される。
【0044】
制御装置7は、判定部514を提供する。制御装置7は、検出回路513により検出された電圧Vinを入力するポートを備える。このポートは、AD変換ポートである。制御装置7は、電圧Vinをデジタル情報に変換するAD変換器(A/D)41を備える。この実施形態では、主として制御装置7が提供する演算処理、すなわちソフトウェアによって、判定部514が提供されている。判定部514は、検出回路513により検出された電圧Vinと、音信号との位相差に基づいて、スピーカ2の断線を判定する。
【0045】
制御装置7は、スピーカ2の断線を判定する断線判定手段としての断線判定部(OCD)542を備える。断線判定部542は、AD変換器41の出力が示す電圧Vinの位相と、発生部15の出力によって示される音信号の電圧Vsの位相とを比較することにより断線を判定する。電圧Vpの位相は、主にスピーカ2のボイスコイルに起因するインダクタンスに依存する。スピーカ2が断線、または短絡すると、スピーカ2のインダクタンスが変化する。このため、信号の位相が変化する。例えば、スピーカ2が正常である場合、電圧Vpの位相は、音信号に対応する電圧Vsより遅れた位相となる。一方、スピーカ2が断線、または短絡すると、インダクタンスが減少するか、または失われるから、電圧Vpの位相の遅れ量は減少する。例えば、スピーカ2が断線すると、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相とほぼ同じとなる。
【0046】
断線判定部542は、電圧Vinの位相、すなわち電圧Vpの位相と、電圧Vsの位相とが、所定の関係になると、スピーカ2の断線を判定する。具体的には、断線判定部542は、電圧Vsの位相と、電圧Vpの位相との位相差が所定の閾値範囲Pth外になると、スピーカ2の断線を判定する。閾値範囲Pthは、スピーカ2の誘導成分がほぼ完全に失われたことを判定できるように設定されている。断線判定部542は、断線を判定すると、警報装置11を作動させるための信号を出力する。この信号に応答して、警報装置11は、断線を示す警報を発生する。
【0047】
制御装置7は、スピーカ2の短絡を判定する短絡判定手段としての短絡判定部(SCD)543を備える。短絡判定部543は、AD変換器41の出力が示す電圧Vin、すなわち電圧Vpの変化量Vflcと、所定の閾値変化量FLthとを比較することにより、スピーカ2の短絡を判定する。閾値変化量FLthは、スピーカ2の短絡を判定するために設定された閾値である。閾値変化量FLthは、電圧Vpがほとんど変化しないことを判定できるように設定されている。短絡判定部543は、所定期間Tprdにおける電圧Vpの変化量Vflcが閾値変化量FLthより小さくなると、短絡を判定する。短絡判定部543は、短絡を判定すると、警報装置11を作動させるための信号を出力する。この信号に応答して、警報装置11は、短絡を示す警報を発生する。
【0048】
図2は、第1実施形態の正常時における各部の波形を示す波形図である。図3は、第1実施形態の断線時における各部の波形を示す波形図である。これらの波形図はオシロスコープによる観測波形を示している。なお、図中の波形図は、説明のために簡単化されている。図2A、図3Aは、運行通知音が発生するときの電圧Vsの一例を示す。発生部15が作動しているとき、すなわちON状態であるとき、電圧Vsには、運行通知音のための交流信号が表れる。電圧Vsの包絡線電圧Env(Vs)は、運行通知音の音量を示している。図中には、スピーカ2が正常である正常期間T−NORにおける波形と、スピーカ2が断線した断線期間T−OPNにおける波形とが図示されている。電圧Vsの極大値Vs(peak)は、時刻T1に表れる。
【0049】
図2B、図3Bは、運行通知音が発生するときの電圧Vpの一例を示す。電圧Vpの位相は、カップリングコンデンサの容量成分と駆動する周波数に加えてスピーカ2を含む配線及び回路の誘導成分、抵抗成分、容量成分に依存して変化する。例えば発生装置1が使用するカップリングコンデンサ220μF、駆動周波数200Hz程度、スピーカのインダクタンス350μH、インピーダンス8Ωの条件において正常期間T−NORにおいては、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相よりに遅れている。この遅れ量は、使用するカップリングコンデンサの容量成分と、スピーカ2を駆動する周波数に加えて、スピーカ2を含む配線及び回路の誘導成分、抵抗成分、容量成分に起因する。発生装置1は、ほぼ同じ運行通知音を継続的に発生するから、ほぼ一定と呼びうる周波数帯の信号によってスピーカ2を駆動する。断線期間T−OPNにおいては、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相とほぼ同じとなる。電圧Vpの極大値Vp(peak)は、時刻T2に表れる。
【0050】
図2C、図3Cは、運行通知音が発生するときの電圧Vinの一例を示す。発生部15が作動しているとき、電圧Vinには、ダイオード31によって半波整流された電圧波形が表れる。ここで、電圧Vfは、ダイオード31の順方向電圧降下である。時刻T1における電圧Vinの値は、V1である。時刻T2における電圧Vinの値は、V2である。
【0051】
正常期間T−NORにおいては、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相より遅れているから、V2>V1である。しかも、正常期間T−NORにおいては、V2−V1は、所定の閾値範囲内の値をとる。例えば、正常期間T−NORにおいては、V2−V1は、下限閾値電圧Vth1から上限閾値電圧Vth2の範囲内の値をとる。断線期間T−OPNにおいては、電圧Vpの位相は、電圧Vsの位相とほぼ同じか、やや遅れているから、V1≒V2である。このため、断線期間T−OPNにおいては、V2−V1は、上記閾値範囲外の値をとる。例えば、断線期間T−OPNにおいては、V2−V1は、下限閾値電圧Vth1を下回る値をとる。また、V2−V1が上限閾値電圧Vth2を上回る値をとる場合にも、スピーカ2に何らかの異常があるものと推測される。このように、閾値範囲を画定する下限閾値電圧Vth1は、電圧Vpと電圧Vsとの間の位相差が、所定の閾値範囲Pthを下回るか否かの判定を提供する。また、上限閾値電圧Vth2は、電圧Vpと電圧Vsとの間の位相差が、異常に大きくなっているか否かの判定を提供する。
【0052】
図4は、第1実施形態の断線判定処理560を示すフローチャートである。断線判定処置560によって断線判定部542が提供されている。ステップ566では、発生部15から運行通知音のための信号が出力されていることを確認する。すなわち、スピーカ2に音源の信号、すなわち交流電力が供給されていることを確認する。
【0053】
ステップ567では、音源の信号である電圧Vsが所定の音量を上回るか否かを判定する。電圧Vsは、制御装置7内において、発生部15から断線判定部542へ供給される。ここでは、電圧Vsの包絡線レベルEnv(Vs)が、所定の閾値Vloudを上回るか否かを判定する。包絡線レベルEnv(Vs)が閾値Vloudを上回らない場合、ステップ567を繰り返す。包絡線レベルEnv(Vs)が閾値Vloudを上回ると、ステップ568へ進む。ステップ567は、音量Env(Vs)が閾値Vloudを上回るときに、スピーカの断線判定を許容する音量判定手段を提供する。これにより位相差を確実に検出することができる。
【0054】
ステップ568では、予め決められた第1の計測時刻T1が到来したか否かを判定する。ここでは、第1の計測時刻T1は、電圧Vsが極大値Vs(peak)になった時刻である。電圧Vsが極大値Vs(peak)になると、すなわち第1の計測時刻T1が到来すると、ステップ569へ進む。ステップ569では、第1の計測時刻T1における電圧Vin(T1)を、電圧値V1として記録する。ステップ568において、電圧Vinが極大値Vin(peak)ではない場合、ステップ570に進む。ステップ570では、予め決められた第2の計測時刻T2が到来したか否かを判定する。ここでは、第2の計測時刻T2は、電圧Vinが極大値Vin(peak)になった時刻である。電圧Vinが極大値Vin(peak)ではない場合、ステップ568へ戻る。電圧Vinが極大値Vin(peak)になると、すなわち第2の計測時刻T2が到来すると、ステップ571へ進む。ステップ571では、第2の計測時刻T2における電圧Vin(T2)を、電圧値V2として記録する。ステップ568からステップ571の処理は、電圧Vsと電圧Vpとの位相差を評価するためのサンプル値V1、V2を収集する手段を提供する。
【0055】
ステップ569とステップ571との両方が実行されると、位相差を評価するための電圧値V1と電圧値V2とが揃う。ステップ572では、電圧値V1と電圧値V2との差V2−V1が、閾値範囲内にあるか否かを判定する。ステップ572では、差V2−V1が下限閾値電圧Vth1を上回り、かつ、差V2−V1が上限閾値電圧Vth2を下回るか否かを判定する。差V2−V1が閾値範囲内にある場合、ステップ567に戻る。差V2−V1が閾値範囲外である場合、すなわちスピーカ2の断線が判定されると、ステップ573へ進む。例えば、差V2−V1が下限閾値電圧Vth1を下回る場合、ステップ573へ進む。また、差V2−V1が上限閾値電圧Vth2を上回る場合、ステップ573へ進む。ステップ572は、電圧Vsと電圧Vpとの位相差がスピーカ2の断線を示すか否かを判定する断線判定手段を提供する。
【0056】
ステップ573では、カウンタ値NCに1を加える。カウンタ値NCは、ステップ572によってスピーカ2の断線が連続して判定された回数を示す。ステップ574では、カウンタ値NCが所定の閾値回数Nthを上回るか否かを判定する。カウンタ値NCが閾値回数Nthを上回っていない場合、ステップ567へ戻る。カウンタ値NCが閾値回数Nthを上回ると、ステップ165へ進む。ステップ573とステップ574は、差V2−V1が閾値範囲外である状態が所定期間継続しているか否かを判定する手段を提供する。この手段は、一時的な断線判定を却下して、後続の断線処理の安定化を図る。
【0057】
この結果、判定部514は、音源の信号の電圧Vsと、検出回路513により検出された電圧Vpとの位相を比較し、それらが所定の位相関係となるとき、スピーカ2の断線を判定する。さらに、判定部514は、所定の位相関係が、所定期間を上回って継続すると、スピーカ2の断線を判定する。
【0058】
ステップ165では、スピーカ2の断線判定に応答して、断線に対策するための断線処理が実行される。ここでは、スピーカ2の断線を、車両の利用者に通知する警告処理が実行される。具体的には、警報装置11を作動させる処理が実行される。これに代えて、または追加的に、発生部15を停止させる保護処理が実行されてもよい。
【0059】
断線判定処理560によると、判定部514は、音信号が所定の位相T1にあるときの検出回路513により検出された電圧Vinの値V1と、検出回路513により検出された電圧Vinが所定の位相T2にあるときの検出回路513により検出された電圧Vinの値V1とによって示される位相差に基づいてスピーカ2の断線を判定する。
【0060】
図5は、第1実施形態の短絡判定処理580を示すフローチャートである。短絡判定処置580によって短絡判定部543が提供されている。スピーカ2が正常であるときに、音信号の電圧Vsが供給されると、電圧Vinは、電圧Vsの変化に応じて変動する。一方、音信号である電圧Vsが供給されるときに、スピーカ2のボイスコイルなどに短絡が生じると、電圧Vinは、ほぼ0(ゼロ)Vに低下し、ほとんど変動しない。この実施形態では、電圧Vinの変化量Vflcに基づいてスピーカ2の短絡を判定する。
【0061】
ステップ587では、発生部15から音信号が出力されていることを確認する。すなわち、スピーカ2に音源の信号、すなわち交流電力が供給されていることを確認する。
【0062】
ステップ588では、電圧Vinをサンプリングする。具体的には、電圧Vinを、サンプル電圧V(n)として記録する。ステップ589では、サンプリング期間Tsmpが所定の閾値期間Tprdを上回ったか否かを判定する。サンプリング期間Tsmpが所定の閾値期間Tprdを上回っていない場合、ステップ588へ戻る。この結果、ステップ588は、閾値期間Tprdにわたって繰り返して実行される。サンプリング期間Tsmpが所定の閾値期間Tprdを上回ると、ステップ590へ進む。ステップ590では、閾値期間Tprdの間にサンプリングされた複数の電圧V(n)に基づいて、変化量Vflcを算出する。ステップ588からステップ590の処理によって、電圧Vinの変化量Vflcを算出する手段が提供される。
【0063】
ステップ591では、変化量Vflcが、所定の閾値変化量FLthを上回るか否かを判定する。変化量Vflcが、所定の閾値変化量FLthを上回らない場合、スピーカ2は正常であると判定できる。この場合、ステップ588へ戻る。変化量Vflcが、所定の閾値変化量FLthを上回ると、ステップ592へ進む。ステップ592では、Vflc<FLthの状態が所定期間継続しているか否かを判定する。ステップ592では、Vflc<FLthの状態の継続時間Tcontが、所定の閾値時間Tthを上回るか否かを判定する。ステップ592は、一時的な短絡判定を却下して、後続の短絡処理の安定化を図る。継続時間Tcontが閾値時間Tthを上回らない場合、ステップ588に戻る。継続時間Tcontが閾値時間Tthを上回ると、ステップ186に進む。
【0064】
この結果、判定部514は、検出回路513により検出された電圧Vinの変化量Vflcと閾値変化量FLthとを比較し、変化量Vflcが閾値変化量FLthに対して所定の関係になると、スピーカ2の短絡を判定する。具体的には、変化量Vflcが閾値変化量FLthを下回るとスピーカの短絡を判定する。さらに、判定部514は、所定の関係Vflc<FLthが、所定の期間である閾値時間Tthを上回って継続すると、スピーカ2の短絡を判定する。
【0065】
ステップ186では、スピーカ2の短絡判定に応答して、短絡に対策するための短絡処理が実行される。ここでは、スピーカ2の短絡を、車両の利用者に通知する警告処理が実行される。具体的には、警報装置11を作動させる処理が実行される。これに代えて、または追加的に、発生部15を停止させる保護処理が実行されてもよい。
【0066】
この実施形態によると、スピーカ2の端子電圧に基づいて、スピーカ2の断線を検出することができる。しかも、検出される電圧の位相の変化に基づいてスピーカ2の断線を検出することができる。特に、発生装置1は、予め定められた運行通知音を出力するから、位相の変化を安定的に検出することができる。さらに、この実施形態では、スピーカ2の端子電圧に基づいて、スピーカ2の断線を検出することができる。
【0067】
(第2実施形態)
図6は、本発明を適用した第2実施形態に係る異常検出装置600を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。上記実施形態では、所定の2つの時刻T1、T2における電圧Vinを観測することにより、電圧Vsと電圧Vpとの位相差がスピーカ2の断線を示す所定の関係にあることを判定した。これに代えて、この実施形態では、所定の時刻Tsmにおける電圧レベルVsmに基づいて、電圧Vsと電圧Vpとの位相差がスピーカ2の断線を示す所定の関係にあることを判定する。断線判定部642は、電圧Vsと電圧Vpとのいずれか一方が所定の電圧レベルにあるときの、他方の電圧レベルに基づいて電圧Vsと電圧Vpとの位相差がスピーカ2の断線を示す所定位相にあることを判定する。具体的には、断線判定部642は、電圧Vsが所定の+5Vにあるときの、電圧Vp、すなわち電圧Vinの電圧レベルを用いる。
【0068】
図7は、第2実施形態の正常時における各部の波形を示す波形図である。図8は、第2実施形態の断線時における各部の波形を示す波形図である。図7A、図8Aは、運行通知音が発生するときの電圧Vsの一例を示す。図中には、電圧Vsが閾値電圧である+5Vになるサンプリングのための時刻Tsmが図示されている。図7B、図8Bは、運行通知音が発生するときの電圧Vpの一例を示す。図7C、図8Cは、運行通知音が発生するときの電圧Vinの一例を示す。図中には、サンプリングのための時刻Tsmにおける電圧Vinの値Vsmが図示されている。正常期間T−NORにおいては、電圧Vinの値Vsmは、最大値に近い値である。一方、断線期間T−OPNにおいては、電圧Vinの値Vsmは、最小値に近い値である。
【0069】
図9は、第2実施形態の断線判定処理660を示すフローチャートである。断線判定処置660によって断線判定部642が提供されている。ステップ566、567は、上記実施形態と同じである。ステップ675では、予め決められた計測時刻Tsmが到来したか否かを判定する。ここでは、計測時刻Tsmは、電圧Vsが、所定の電圧値に上昇、または下降した時刻である。具体的には、この実施形態では、電圧Vsが+5Vに上昇すると、計測時刻Tsmの到来が判定される。計測時刻Tsmが到来すると、ステップ676へ進む。ステップ676では、計測時刻Tsmにおける電圧Vin(Tsm)を、電圧Vsmとして記録する。ステップ675において、電圧Vsが+5Vではない場合、ステップ675を繰り返す。ステップ675とステップ676の処理は、電圧Vsと電圧Vpとの位相差を評価するためのサンプル値Vsmを検出する手段が提供される。
【0070】
ステップ677では、電圧Vsmが、閾値範囲内にあるか否かを判定する。ステップ677では、電圧Vsmが下限閾値電圧Vth3を上回り、かつ、電圧Vsmが上限閾値電圧Vth4を下回るか否かを判定する。電圧Vsmが閾値範囲内にある場合、ステップ567に戻る。電圧Vsmが閾値範囲外である場合、すなわちスピーカ2の断線が判定されると、ステップ573へ進む。例えば、電圧Vsmが下限閾値電圧Vth3を下回る場合、ステップ573へ進む。また、電圧Vsmが上限閾値電圧Vth2を上回る場合、ステップ573へ進む。ステップ677は、電圧Vsmがスピーカ2の断線を示すか否かを判定する断線判定手段を提供する。ステップ573、574、165は、上記実施形態と同じである。
【0071】
この実施形態によると、判定部614は、音信号が所定の位相Tsmにあるときの検出回路513により検出された電圧Vinの値Vsmによって示される位相差に基づいてスピーカ2の断線を判定する。
【0072】
(第3実施形態)
図10は、本発明を適用した第3実施形態に係る異常検出装置700を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。上記実施形態では、制御装置7が提供する演算処理によって電圧Vsまたは電圧Vpが所定の電圧レベルにあることを判定した。これに代えて、この実施形態では、電圧Vsが所定の電圧レベルに到達したことをハードウェアによって検出する。さらに、この実施形態では、電圧Vpが所定の電圧レベルに到達したことをハードウェアによって検出する。制御装置7は、それらの検出時刻の差、すなわち位相差に基づいて断線を判定する演算処理を提供する。
【0073】
異常判定装置700は、電圧Vsと所定の閾値電圧Vtsとを比較する比較回路を構成するオペアンプ751を備える。オペアンプ751の反転入力には電圧Vsが入力されている。オペアンプ751の非反転入力には閾値電圧Vtsが入力されている。オペアンプ751は、電圧Vsと閾値電圧Vtsとの比較結果に応じて、ハイレベルまたはローレベルの信号を出力する。オペアンプ751の出力は、制御装置7に入力される。
【0074】
異常判定装置700は、検出回路713を備える。検出回路713は、抵抗器533と、ダイオード31とを備える。ダイオード31は、電圧Vpを半波整流することによって、電圧Vpの負電圧成分を除去する。検出回路713は、電圧Vinを出力する。
【0075】
異常判定装置700は、電圧Vin、すなわち電圧Vpと所定の閾値電圧Vtpとを比較する比較回路を構成するオペアンプ752を備える。オペアンプ752の反転入力には電圧Vinが入力されている。オペアンプ752の非反転入力には閾値電圧Vtpが入力されている。オペアンプ752は、電圧Vpと閾値電圧Vtpとの比較結果に応じて、ハイレベルまたはローレベルの信号を出力する。オペアンプ752の出力は、制御装置7に入力される。
【0076】
異常判定装置700は、判定部714を備える。判定部714は、入力ポート744と、断線判定部742とを備える。入力ポート744は、制御装置7のインプットキャプチャポート(CAI/O)によって提供される。第1ポートCA1には、オペアンプ751の出力が入力される。第1ポートCA1は、オペアンプ751の出力が反転する時刻、すなわち電圧Vsが閾値電圧Vtsに到達した時刻T1を記録する。具体的には、オペアンプ751の出力が立ち下がる時刻、すなわち電圧Vsが閾値電圧Vtsに上昇した時刻T1を記録する。第2ポートCA2には、オペアンプ752の出力が入力される。第2ポートCA2は、オペアンプ752の出力が反転する時刻、すなわち電圧Vpが閾値電圧Vtpに到達した時刻T2を記録する。具体的には、オペアンプ752の出力が立ち下がる時刻、すなわち電圧Vpが閾値電圧Vtpに上昇した時刻T2を記録する。入力ポート744は、時刻T1、および時刻T2を、断線判定部742に出力する。
【0077】
断線判定部742は、電圧Vsの位相と電圧Vpの位相とを比較することにより断線を判定する。具体的には、断線判定部742は、時刻T1と時刻T2との時間差、すなわち位相差が、所定の閾値範囲外になると、スピーカ2の断線を判定する。断線判定部742は、断線を判定すると、警報装置11を作動させるための信号を出力する。この信号に応答して、警報装置11は、断線を示す警報を発生する。
【0078】
図11は、第3実施形態の各部の波形を示す波形図である。図12は、第3実施形態の断線時における各部の波形を示す波形図である。図11A、図12Aは、運行通知音が発生するときの電圧Vsの一例を示す。図11B、図12Bは、運行通知音が発生するときの電圧Vpの一例を示す。図11C、図12Cは、第1ポートCA1の入力信号の一例を示す。図11D、図12Dは、第2ポートCA2の入力信号の一例を示す。正常期間T−NORにおいては、時刻T2と時刻T1との間には、十分に長い時間差が観測される。しかも、正常期間T−NORにおいては、時刻T1は、時刻T2の前に検出される。一方、断線期間T−OPNにおいては、時刻T2と時刻T1との間には、時間差がないか、またはほんの僅かな時間差が観測されるだけである。しかも、断線期間T−OPNにおいては、多くの場合、時刻T1は、時刻T2の後に、または時刻T2とほぼ同時に検出される。
【0079】
図13は、第3実施形態の断線判定処理760を示すフローチャートである。断線判定処置760によって断線判定部742が提供されている。ステップ566、567は、上記実施形態と同じである。ステップ778では、インプットキャプチャポート744への信号入力時刻が記録される。ここでは、第1ポートCA1への入力信号が、ハイレベルHからローレベルLへ下がった時刻が、時刻T1として記録される。また、第2ポートCA2への入力信号が、ハイレベルHからローレベルLへ下がった時刻が、時刻T2として記録される。ステップ778の処理は、電圧Vsと電圧Vpとの位相差を評価するための時刻T1、T2を検出する手段を提供する。
【0080】
ステップ779では、時刻T1と時刻T2との差T2−T1が、閾値範囲内にあるか否かを判定する。ステップ779では、差T2−T1が下限閾値時間Tth1を上回り、かつ、差T2−T1が上限閾値時間Tth2を下回るか否かを判定する。差T2−T1が閾値範囲内にある場合、ステップ567に戻る。差T2−T1が閾値範囲外である場合、すなわちスピーカ2の断線が判定されると、ステップ573へ進む。例えば、差V1−V2が下限閾値電圧Vth1を下回る場合、ステップ573へ進む。また、差V1−V2が上限閾値電圧Vth2を上回る場合、ステップ573へ進む。ステップ779は、電圧Vsと電圧Vpとの位相差がスピーカ2の断線を示すか否かを判定する断線判定手段を提供する。ステップ573、574、165は、上記実施形態と同じである。
【0081】
この実施形態によると、判定部714は、音信号が所定の値Vtsに到達した時刻T1と、検出回路713により検出された電圧Vinが所定の値Vtpに到達した時刻T2とによって示される位相差に基づいてスピーカ2の断線を判定する。
【0082】
(第4実施形態)
図14は、本発明を適用した第4実施形態に係る異常検出装置800を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。上記実施形態では、発生部15から出力される音信号を利用して、スピーカ2を含む回路に表れる電気信号の位相の変化を検出し、この位相に基づいてスピーカ2の断線を判定した。また、上記実施形態では、発生部15から出力される音信号を利用して、スピーカ2の短絡を判定した。これに代えて、この実施形態では、人が聴き取ることが困難な非可聴音の信号を発生部15から発生させる。これにより、運行通知音が不要なときにも、スピーカ2の断線および/または短絡を検出する。この実施形態では、制御装置7は、発生部815を備える。発生部815は、運行通知音のための可聴音信号、または非可聴音のための非可聴音信号を出力することができる。制御部816は、運行通知音が必要なときには、発生部815から可聴音信号を発生させる。制御部816は、運行通知音が不要であって、かつスピーカ2の断線および/または短絡の検査が必要なときには、発生部815から非可聴音信号を発生させる。
【0083】
図15は、第4実施形態の制御処理895を示すフローチャートである。制御処理895は、制御部816によって実行される。制御部816は、制御処理895によって、発生部815、断線判定部542、および短絡判定部543を制御する。ステップ896では、運行通知音が必要か否かを判定する。ここでは、例えば、車両の走行速度VMが所定の低速領域にある場合、運行通知音が必要であると判定される。車両の走行速度VMが所定の低速領域にない場合、運行通知音は不要であると判定される。運行通知音が必要である場合、ステップ897へ進む。
【0084】
ステップ897では、発生部815から運行通知音のための可聴音信号を発生させる。これにより、スピーカ2へは、運行通知音のための交流電力が供給される。このとき、スピーカ2の電圧Vpの位相は、スピーカ2の断線の有無に応じて変化する。続くステップにおいては、断線判定処理560および/または短絡判定処理580が実行される。この結果、可聴音信号に基づいて、スピーカ2の断線および/または短絡が判定される。
【0085】
一方、ステップ896において運行通知音が不要である場合、ステップ898へ進む。ステップ898では、スピーカ2の検査が必要であるか否かを判定する。ここでは、予め定められた検査時期であるか否かを判定する。例えば、車両の累積的な運行時間が所定時間に到達すると、検査時期の到来が判定される。また、運行通知音を発生させる前に、先行して検査時期の到来が判定されてもよい。検査時期が到来していない場合、ステップ896へ戻る。検査時期が到来すると、ステップ899へ進む。ステップ899では、発生部815から、非可聴音信号を発生させる。これにより、スピーカ2には、非可聴音のための交流電力が供給される。このとき、スピーカ2から可聴音は出力されない。しかし、スピーカ2の電圧Vpの位相は、スピーカ2の断線の有無に応じて変化する。続くステップにおいては、断線判定処理560および/または短絡判定処理580が実行される。この結果、非可聴音信号に基づいて、スピーカ2の断線および/または短絡が判定される。
【0086】
この実施形態によると、運行通知音を発生させないときに、人が聴き取ることが困難な非可聴音のための音信号を発生させ、断線および/または短絡が判定される。このため、運行通知音が発生されない場合であっても、スピーカ2の断線および/または短絡を判定することができる。
【0087】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0088】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【0089】
上記実施形態では、音信号の位相に対する、電圧Vinの位相の遅れ量が所定の閾値Vth1、Vth3、Tth1を下回ると、スピーカ2の断線を判定した。さらに、上記実施形態では、音信号の位相に対する、電圧Vinの位相の遅れ量が所定の閾値Vth2、Vth4、Tth2を上回ると、スピーカの断線を判定した。これに代えて、下側閾値Vth1、Vth3、Tth1、および上側閾値Vth2、Vth4、Tth2のいずれか一方だけを用いてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、スピーカ2の断線と短絡との両方を判定した。これに代えて、断線のみ、または短絡のみを判定してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、短絡判定部543は、電圧Vpの変化量が閾値変化量を下回るとスピーカ2の短絡を判定した。これに代えて、電圧Vpが、ほぼ0(ゼロ)Vにあって、かつ安定していることを検出することにより、スピーカ2の短絡を判定してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、制御装置7によって警報装置11を直接的に制御した。これに代えて、制御装置7からは、異常処理のための指令信号を出力するように構成してもよい。かかる構成においては、指令信号を受信した他の制御装置によって断線または短絡に対策するための対策処理が実行される。
【符号の説明】
【0093】
1 運行音発生装置、 500 異常検出装置、 2 スピーカ、 3 電源、 5 カップリングコンデンサ、 6 電力増幅回路、 7 制御装置、 8 ブレーキセンサ、 9 車速センサ、 10 選択装置、 11 警報装置、 513 検出回路、 31 ダイオード、 32 ダイオード、 533 抵抗器、 34 フィルタ、 35 コンデンサ、 514 判定部、 41 AD変換器、 542 断線判定部、 543 短絡判定部、 15 発生部、 16 制御部、 518 抵抗器、 519 コンデンサ、 600 異常検出装置、 614 判定部、 642 断線判定部、 643 短絡判定部、 700 異常検出装置、 713 検出回路、 714 判定部、 751 オペアンプ、 752 オペアンプ、 744 入力ポート、 742 断線判定部、 800 異常検出装置、 815 発生部、 816 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたスピーカ(2)と、
前記スピーカから発生させる音の音信号を発生する発生部(15、815)と、
前記音信号を増幅する電力増幅回路(6)と、
前記電力増幅回路の出力を前記スピーカに供給するカップリングコンデンサ(5)と、
前記スピーカの端子に表れる電圧を直接的に、または間接的に検出する検出回路(513、713)と、
前記音信号と前記検出回路により検出された電圧(Vin)との位相差に基づいて、前記スピーカの断線を判定する判定部(514、614、714)とを備えることを特徴とする車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項2】
前記判定部(514、614、714)は、前記位相差が所定の関係になると、前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記所定の関係が、所定期間を上回って継続すると、前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項2に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項4】
前記判定部(514、614、714)は、前記音信号の位相に対する、前記検出回路により検出された電圧(Vin)の位相の遅れ量が所定の閾値(Vth1、Vth3、Tth1)を下回ると、前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項5】
前記判定部(514、614、714)は、前記音信号の位相に対する、前記検出回路により検出された電圧(Vin)の位相の遅れ量が所定の閾値(Vth2、Vth4、Tth2)を上回ると、前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項6】
前記判定部(514)は、前記音信号が所定の位相(T1)にあるときの前記検出回路により検出された電圧(Vin)の値(V1)と、前記検出回路により検出された電圧(Vin)が所定の位相(T2)にあるときの前記検出回路により検出された電圧(Vin)の値(V1)とによって示される前記位相差に基づいて前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項7】
前記判定部(614)は、前記音信号が所定の位相(Tsm)にあるときの前記検出回路により検出された電圧(Vin)の値(Vsm)によって示される前記位相差に基づいて前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項8】
前記判定部(714)は、前記音信号が所定の値(Vts)に到達した時刻(T1)と、前記検出回路により検出された電圧(Vin)が所定の値(Vtp)に到達した時刻(T2)とによって示される前記位相差に基づいて前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項9】
前記判定部(514、614、714)は、音量(Env(Vs))が所定の閾値(Vloud)を上回るときに、前記スピーカの断線を判定することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項10】
前記発生部(15)は、前記車両の運行を知らせるための運行通知音のための前記音信号を発生することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項11】
前記発生部(15)は、前記運行通知音を発生させないときに、人が聴き取ることが困難な非可聴音のための前記音信号を発生することを特徴とする請求項10に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項12】
前記判定部(514、614、714)は、前記検出回路により検出された電圧(Vin)の変化量(Vflc)が所定の閾値(FLth)を下回ると前記スピーカの短絡を判定することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−64656(P2013−64656A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203888(P2011−203888)
【出願日】平成23年9月17日(2011.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】