説明

車両

【課題】モータルーム内でのレイアウト性を維持した上で、電力供給線とモータやパワーコントロールユニット等の周辺部材との接触を抑制し、電力供給線を保護できる車両を提供する。
【解決手段】電力供給線25は、ハウジング21のうち左右方向に沿う一端側に接続されたモータ側接続部26と、PCU12のうち左右方向に沿う他端側に接続されたPCU側接続部33と、を備え、モータ側接続部26とPCU側接続部33との間に延在する中間部34と、を備え、中間部34は、モータ側ブラケット71によりハウジング21に固定されたモータ側固定部76を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車等において、車体前部に配置されたモータルーム内には、防振部材によって車体に弾性支持されたモータと、モータの上方においてフレーム部材を介して車体に支持され、モータの駆動を制御するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)と、が収納されている。PCUとモータとは、可撓性を有する電力供給線により接続されており、この電力供給線を介してPCUからモータに電力が供給されるようになっている。
【0003】
ところで、電気自動車の走行時等において振動が発生した場合、PCUにはフレーム部材を介して振動が伝達される一方、モータには防振部材を介して振動が伝達されることになる。そのため、PCUとモータとでは振動の位相が異なる。この場合、PCUとモータとが電力供給線を介して相対的に変位するため、PCU及びモータと電力供給線とのそれぞれの接続部に応力が集中して、各接続部が損傷する虞がある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1では、モータとインバータとの間の空間において、インバータのうち車幅方向一端側のインバータ接続部と、モータのうち車幅方向他端側のモータ接続部と、の間で電力供給線を撓ませる等して架け渡す構成が記載されている。
この構成によれば、電力供給線の揺動代を確保できるため、モータとPCUとが相対的に変位した際に、この変位に追従して電力供給線が変形(揺動)することで、PCUとモータとの相対的な変位を吸収できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−20628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、モータとPCUとが相対的に大きく変位した場合等、この変位に追従して電力供給線が揺動する際に、電力供給線がモータやPCU等の周辺部材に接触して、損傷する虞がある。
一方で、モータとPCUとの間の空間を大きくするほど、電力供給線とモータやPCUとの接触を抑制できるが、モータルーム内のレイアウト上、上述した空間の確保には限界がある。
【0007】
そこで、本発明は、モータルーム内でのレイアウト性を維持した上で、電力供給線とモータやパワーコントロールユニット等の周辺部材との接触を抑制し、電力供給線を保護できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、電動機(例えば、実施形態におけるモータユニット11)を収納するハウジング(例えば、実施形態におけるハウジング21)と、前記ハウジングに対して所定の空間を隔てて配設され、電力源からの電力を所望の電力に変換して前記電動機に供給することで、前記電動機を駆動制御するパワーコントロールユニット(例えば、実施形態におけるPCU12)と、前記電動機と前記パワーコントロールユニットとを接続する電力供給線(例えば、実施形態における電力供給線25)と、を備えた車両(例えば、実施形態における電気自動車1)であって、前記電力供給線は、前記ハウジングのうち電動機軸方向に沿う一端側に接続された電動機側接続部(例えば、実施形態におけるモータ側接続部26)と、前記パワーコントロールユニットのうち前記電動機軸方向に沿う他端側に接続されたパワーコントロールユニット側接続部(例えば、実施形態におけるPCU側接続部33)と、を備え、前記電動機側接続部と前記パワーコントロールユニット側接続部との間に延在する中間部(例えば、実施形態における中間部34)と、を備え、前記中間部は、第1固定部材(例えば、実施形態におけるモータ側ブラケット71)により前記ハウジングに固定された電動機側固定部(例えば、実施形態におけるモータ側固定部76)を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明では、前記ハウジングのうち、前記パワーコントロールユニットと対向する対向面には、前記パワーコントロールユニット側に向けて突出する凸部(例えば、実施形態における凸部30)が形成され、前記第1固定部材は、前記凸部に固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明では、前記中間部は、前記電動機側固定部に隣接する位置において前記ハウジング側に湾曲した湾曲部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載した発明では、前記中間部は、第2固定部材(例えば、実施形態におけるPCU側ブラケット61)により前記パワーコントロールユニットに固定されたパワーコントロールユニット側固定部(例えば、実施形態におけるPCU側固定部66)を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載した発明によれば、ハウジングのうち電動機軸方向に沿う一端側に接続された電動機側接続部と、パワーコントロールユニットのうち電動機軸方向に沿う他端側に接続されたパワーコントロールユニット側接続部と、の間を中間部により架け渡すことにより、パワーコントロールユニットと電動機とが相対的に変位した場合に、この変位に追従して中間部が変形(揺動)することになる。
これにより、パワーコントロールユニットと電動機との相対的な変位を吸収して、両者の各接続部に発生する応力を抑制できる。その結果、各電力供給線の損傷を抑えることができる。
特に、本発明の構成によれば、中間部の電動機側固定部を第1固定部材に固定することで、中間部のうち電動機側固定部とパワーコントロールユニット側接続部との間の部分のみが、パワーコントロールユニット及び電動機との相対的な変位に追従して揺動することになる。すなわち、中間部の揺動範囲を規制するこができるため、走行用モータとパワーコントロールユニットとの間の空間を最小限に抑えてレイアウト性を維持した上で、電力供給線のパワーコントロールユニットやハウジングへの接触を抑制できる。これにより、特に電動機側接続部の損傷を抑制できる。
この場合、中間部のうち電動機側固定部と電動機側接続部との間の部分は、電動機の振動と同位相で揺動することになるので、電動機との相対的な変位を規制できる。そのため、電動機とパワーコントロールユニットとの相対的な変位に起因する電動機側接続部での応力集中を抑制して、電動機側接続部の損傷を確実に抑制できる。
【0013】
請求項2に記載した発明によれば、第1固定部材を、ハウジングの凸部に固定することで、ハウジングとパワーコントロールユニットとの間の空間が最も狭い部分での中間部の揺動を規制できる。これにより、中間部がパワーコントロールユニットやハウジングに接触するのを確実に抑制できる。
【0014】
請求項3に記載した発明によれば、電力供給線を引き回す際に電力供給線の曲げ半径を確保でき、電力供給線の曲げに必要な力が小さくてすむ。したがって、製造時の組み付けが容易になる。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、中間部のうちパワーコントロールユニット側固定部とパワーコントロールユニット側接続部との間の部分は、パワーコントロールユニットの振動と同位相で揺動することになるので、パワーコントロールユニットとの相対的な変位を規制できる。そのため、電動機とパワーコントロールユニットとの相対的な変位に起因するパワーコントロールユニット側接続部での応力を抑制して、パワーコントロールユニット側接続部の損傷を確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における電気自動車の前部を側方から見た概略構成図である。
【図2】モータルームの内部を示す電気自動車の斜視図である。
【図3】図2のC1矢視図である。
【図4】図3のC2矢視図である。
【図5】図2のC3矢視図である。
【図6】図3に相当する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態における電気自動車の前部を側方から見た概略構成図であり、図2はモータルームの内部を示す電気自動車の斜視図である。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、以下で用いる図面では、車両前方を矢印FR、車両上方を矢印UP、車両右方を矢印RH、車両左方を矢印LHで示している。
図1,2に示すように、本実施形態の電気自動車(車両)1において、車体2の前部にはモータルーム3が画成されている。そして、モータルーム3内の下部には、駆動源としてのモータユニット(電動機)11が、モータルーム3内の上部にはPCU12がそれぞれ配設されている。
【0018】
なお、図2に示すように、モータルーム3の下部には、車体2の左右両側において前後方向に沿って延在する一対のサイドフレーム13と、サイドフレーム13の前端部同士を接合するフロントフレーム14と、が設けられている。また、図1に示すように、モータルーム3の後部には、図示しない車室内とモータルーム3内とを前後方向で区画するダッシュボード15が設けられている。このダッシュボード15は、PCU12の後方において上下方向に沿って延在するダッシュボードロア16と、ダッシュボードロア16の上端部から前方に向かって連設されたダッシュボードアッパ17と、を備えている。
【0019】
図3は図2のC1矢視図であり、図4は図3のC2矢視図である。
図3,4に示すように、モータユニット11は、図示しないモータ及びトランスミッションと、これらモータ及びトランスミッションを一体に収納するハウジング21と、を備えている。
ハウジング21は、円筒状に形成され、モータの回転軸を左右方向(電動機軸方向)に向けた状態で、図示しない防振部材を介して車体2に弾性支持されている。具体的に、本実施形態のハウジング21は、左右方向に沿う一端側(右側)においてモータが収納されたモータハウジング22と、他端側(左側)においてトランスミッションが収納されたミッションハウジング23と、を有している。
【0020】
モータハウジング22の右側端部には、上方に向けて膨出するモータ側端子ボックス24が形成されている。なお、モータ側端子ボックス24の内部には、モータにおける各相(U相、V相、W相)のコイルの端部が引き込まれている。これらコイルは、モータ側端子ボックス24内に配設された図示しない複数のバスバーの一端側にそれぞれ各相ごとにそれぞれ電気的に接続されている。
また、モータ側端子ボックス24のうち、左側に位置する面には、後述する各電力供給線25のモータ側接続部(電動機側接続部)26をモータ側端子ボックス24内に案内するための図示しない複数のモータ側案内部が前後方向に並んで形成されている。これらモータ側案内部は、モータ側端子ボックス24の内外を連通させる孔であり、左斜め上方に向けて開口している。
【0021】
モータハウジング22の左側は、中間部分に比べて大径に形成され、その左側端縁、すなわちミッションハウジング23との合わせ面には、ハウジング21の径方向外側に向けて張り出すフランジ部27が形成されている。
【0022】
一方、ミッションハウジング23は、モータハウジング22よりも大径に形成されている。そして、ミッションハウジング23の右側端縁、すなわちモータハウジング22との合わせ面には、ハウジング21の径方向外側に向けて張り出すフランジ部28が形成されている。そして、各ハウジング22,23のフランジ部27,28同士は、図示しないシール部材を間に挟んで左右方向に突き合わされ、複数のボルト29によってハウジング21の周方向に間隔をあけて締結されている。その結果、モータハウジング22とミッションハウジング23との連結部分(左右方向に沿うフランジ部27,28の周辺部分)では、モータハウジング22の中間部分に比べて径方向外側に向けて膨出する凸部30が形成されている。
【0023】
図2,3に示すように、PCU12は、左右方向を長手方向とした直方体形状に形成され、後述するユニット支持フレーム41を介してサイドフレーム13に支持されるとともに、モータユニット11の上方に所定の空間S(図3参照)を隔てて配設されている。PCU12には、例えば車室内の下方に配設された高電圧バッテリ(不図示)が電源ケーブル(不図示)を介して電気的に接続されており、高電圧バッテリから供給される直流電力を三相(U相、V相、W相)の交流電力に変換している。また、PCU12は、電力供給線25を介してモータユニット11に各相ごとに電気的に接続されており、PCU12で変換した三相の交流電力をモータユニット11に供給することでモータユニット11を駆動制御している。
【0024】
図5は図2のC3矢視図である。
図2,3,5に示すように、PCU12には、上述した電力供給線25をPCU12に接続するためのPCU側端子ボックス31が形成されている。このPCU側端子ボックス31は、PCU12の上部において、左右方向に沿う左側に位置する端面12a(以下、左側端面12aという)から左右方向の外側(左側)に向けて突出している。PCU側端子ボックス31には、電力供給線25を各相ごとにPCU12内に案内するための複数のPCU側案内部32が前後方向に並んで形成されている。これらPCU側案内部32は、PCU12の内外を連通させる孔であり、下方に向けて開口した状態で上下方向に沿って延在している。
【0025】
ここで、上述した各電力供給線25は、可撓性を有するケーブルであって、PCU12に接続されるPCU側接続部(パワーコントロールユニット側接続部)33と、モータユニット11に接続される上述したモータ側接続部26と、PCU12及びモータユニット11から露出して各接続部33,26間に架け渡された中間部34と、を備えている。
【0026】
PCU側接続部33は、上述した各PCU側案内部23の下端開口部からコネクタ20を介して装着され、PCU側端子ボックス31内に案内されている。そして、PCU側接続部33の先端部は、PCU側端子ボックス31内において図示しない複数のバスバーに各相ごとに接続され、これらバスバーを介してPCU12内に収納された各種電気デバイスに接続されている。
【0027】
一方、図3,4に示すように、各モータ側接続部26は、上述した各モータ側案内部内に右側から左側に向けてコネクタ35を介して装着され、モータ側端子ボックス24内に案内されている。そして、各モータ側接続部26の先端部は、モータ側端子ボックス24内において上述したバスバーの他端側に各相ごとに電気的に接続されている。
【0028】
図3〜5に示すように、各中間部34は、PCU側接続部33とモータ側接続部26との間でそれぞれ平行に配索されている。具体的に、各中間部34は、PCU12の左側端面12aに沿って下方に向けて配索された縦配索部34aと、縦配索部34aの下端部から連設され、PCU12の下面とモータユニット11の上面(PCU12との対向面)との間の上述した空間S内を右側に向けて配索された横配索部34bと、で構成されている。なお、中間部34の構成については、後に詳述する。
【0029】
図2,3,5に示すように、このように構成されたPCU12は、モータルーム3内において、ユニット支持フレーム41に支持されている。このユニット支持フレーム41は、パイプ状の部材であり、PCU12の全周を取り囲むように配設されている。具体的に、ユニット支持フレーム41は、PCU12に対して右側に配設された右サイド支持フレーム42と、左側に配設された左サイド支持フレーム43と、各サイド支持フレーム42,43の前端部同士を接合するフロント支持フレーム44と、各サイド支持フレーム42,43の後端部同士を接合するリア支持フレーム45と、を有している。
【0030】
まず、フロント支持フレーム44は、PCU12の前方において、PCU12の下部を左右方向に沿って延在しているとともに、その延在方向に沿う両端部が後方に向けて屈曲されている。フロント支持フレーム44には、左右方向に沿う複数箇所において、PCU12の前面が締結されている。
【0031】
リア支持フレーム45は、PCU12の後方において、PCU12の上部を左右方向に沿って延在しているとともに、その延在方向に沿う両端部が下方に向けて屈曲されている。リア支持フレーム45には、左右方向に沿う複数箇所において、上述したダッシュボード15が締結されている。また、リア支持フレーム45の延在方向に沿う両端部のうち、下端部はPCU12に対して左右方向の外側に向けてそれぞれ屈曲された脚部40(図2参照)を構成している。そして、これら脚部40は、対応するサイドフレーム13の後側に締結されている。
【0032】
右サイド支持フレーム42は、PCU12の右側を前後方向に沿って延在している。右サイド支持フレーム42には、前後方向に沿う複数箇所において、PCU12のうち左右方向の他方側に位置する端面12b(以下、右側端面12bという)が締結されている。また、右サイド支持フレーム42のうち、前端部はフロント支持フレーム44の右端部に接合される一方、後端部はリア支持フレーム45の右端部に接合されている。
【0033】
右サイド支持フレーム42とフロント支持フレーム44との接合部分からは、下方に向けて脚部46が延在している。脚部46は上端部から上端部に向かうに従い漸次PCU12に対して外側(右側)に向けて延在している。そして、脚部46の下端部は、上述したサイドフレーム13のうち、右側のサイドフレーム13の前側に締結されている。
【0034】
左サイド支持フレーム43は、PCU12の左側において、PCU12に対して上述した電力供給線25(PCU側接続部33及び縦配索部34a)よりも外側をPCU12の左側端面12aに沿って延在している。具体的に、左サイド支持フレーム43は、前後方向に沿って延在する前後フレーム47と、前後フレーム47の前端部から下方に向けて連設された上下フレーム48と、を備えている。
【0035】
前後フレーム47は、左右方向においてPCU12の左側端面12aの上部と対向する位置で前後方向に沿って延在している。前後フレーム47には、上述したPCU側端子ボックス31の上端部から左側に向けて突出した取付片49が支持されており、この取付片49を介してPCU12が前後フレーム47に締結されている。なお、図示の例において、取付片49は、PCU側端子ボックス31における前後方向に沿って2箇所形成されている。
前後フレーム47の後端部は、上述したリア支持フレーム45の左端部のうち、上下方向に沿う中間部に接合されている。一方、前後フレーム47の前端部は、前後方向において、PCU12の前面よりも後方であって、PCU側端子ボックス31よりも前方に位置している。すなわち、前後フレーム47の前端部は、前後方向において、各PCU側接続部33のうち、前側のPCU側接続部33よりも前方に位置している。
【0036】
上下フレーム48は、前後フレーム47の前端部から下方に向けて屈曲形成されてなり、その上下方向の中間部分にフロント支持フレーム44の左端部が接合されている。また、上下フレーム48の下端部は、PCU12に対して左右方向の外側(左側)に向けてそれぞれ屈曲された脚部50を構成している。そして、脚部50は、サイドフレーム13のうち、左側のサイドフレーム13の前側に締結されている。
【0037】
したがって、左サイド支持フレーム43は、左右方向から見てPCU12の左側端面12aと重なる位置に配設されている。さらに、左右方向において、左サイド支持フレーム43とPCU12の左側端面12aとの間には、上述した各電力供給線25(PCU側接続部33及び縦配索部34a)が配設されている。具体的に、左サイド支持フレーム43のうち、前後フレーム47は、PCU12における左側端面12aの上部で、左右方向から見てPCU側接続部33と重なる位置に配設され、上下フレーム48は左右方向から見てPCU12における左側端面12aの前部と重なる位置に配設されている。
【0038】
ここで、上述した各電力供給線25の中間部34のうち、縦配索部34aは、PCU側端子ボックス31から下方に向けて引き出された後、その下端部がPCU12の下方に引き回されている。また、縦配索部34aは、その上下方向の中間部分が左サイド支持フレーム43に配設されたPCU側ブラケット(第2固定部材)61に保持されている。
【0039】
図5に示すように、PCU側ブラケット61は、各縦配索部34aを保持するブラケット本体62と、ブラケット本体62と前後フレーム47との間を架け渡す第1ステー63と、ブラケット本体62と上下フレーム48との間を架け渡す第2ステー64と、で構成されている。
【0040】
ブラケット本体62は、前後フレーム47の下方、かつ上下フレーム48の後方に位置する部分において、PCU12に対して縦配索部34aよりも外側を縦配索部34aの配列方向、すなわち前後方向に沿って延在する板状に形成されている。
第1ステー63は、ブラケット本体62のうち前後方向に沿う中間部分から上方に向けて延在しており、その上端部が前後フレーム47の前後方向に沿う中間部分に締結されている。
また、第2ステー64は、ブラケット本体62のうち前端部から下方に屈曲した後、前方に向けて延在しており、その前端部が上下フレーム48の上下方向に沿う中間部分に締結されている。
【0041】
上述したブラケット本体62の前後方向において、各縦配索部34aに対応する位置には、各縦配索部34aを個別に保持する複数のクリップ65(図3参照)が取り付けられている。各クリップ65は、PCU12に対して内側に向けた状態でブラケット本体62に取り付けられ、各縦配索部34aをそれぞれ各別に径方向の両側から挟持している。これにより、各電力供給線25の縦配索部34aがブラケット本体62にまとめて保持される。
そして、各縦配索部34aのうち、クリップ65に固定された部分は、ユニット支持フレーム41及びPCU側ブラケット61を介してPCU12に固定されたPCU側固定部(パワーコントロールユニット側固定部)66を構成している。
【0042】
一方、図3,4に示すように、各電力供給線25の中間部34のうち、横配索部34bは、縦配索部34aの下端部と上述したモータ側接続部26との間を、PCU12の下面及びモータユニット11(ハウジング21)の上面に対して離間した状態で襷状に架け渡している。
また、横配索部34bは、その左右方向の中間部分が上述したハウジング21に配設されたモータ側ブラケット(第1固定部材)71に保持されている。
【0043】
モータ側ブラケット71は、各横配索部34bを保持するブラケット本体72と、ブラケット本体72とハウジング21とを連結するステー73と、で構成されている。
ブラケット本体72は、ハウジング21と各横配索部34bとの間において、横配索部34bの配列方向、すなわち前後方向に沿って延在する板状に形成されている。また、ブラケット本体72は、右側から左側に向かうに従い漸次下方に傾斜した状態で配設されている。
ステー73は、ブラケット本体72のうち前後方向に沿う両端部からそれぞれ下方に向けて延在しており、その下端部がハウジング21の上面において、凸部30に相当する部分に固定されている。
【0044】
ブラケット本体72のうち、前後方向における各横配索部34bに対応する位置には、各横配索部34bを個別に保持する複数のクリップ75が取り付けられている。
各クリップ75は、ブラケット本体72の厚さ方向に向けた状態(上方に向かうに従い漸次左側に傾斜した状態)でブラケット本体72に取り付けられ、各横配索部34bをそれぞれ各別に径方向の両側から挟持している。これにより、各横配索部34bは、ブラケット本体72に倣って、右側から左側に向かうに従い漸次下方に傾斜した状態でまとめて保持される。
そして、各横配索部34bのうち、クリップ75に固定された部分は、モータ側ブラケット71を介してハウジング21に固定されたモータ側固定部(電動機側固定部)76を構成している。
【0045】
したがって、横配索部34bのうち、モータ側接続部26とモータ側固定部76との間の部分(モータ側端子ボックス24とモータ側ブラケット71との間を架け渡された部分)は、右側から左側に向かうに従い漸次上方に向けて傾斜している。この場合、モータ側接続部26とモータ側固定部76との間の部分は、上下方向においてハウジング21とPCU12に対して間隔をあけた状態で配索されている。
また、横配索部34bのうち、モータ側固定部76とPCU側固定部66との間の部分は、右側から左側に向かうに従い下方に向けて湾曲した後、上方に向けて延在している。すなわち、横配索部34bのうち、モータ側固定部76とPCU側固定部66との間の部分は、モータ側固定部76と縦配索部と34aの下端部とを結ぶ仮想線L(図3参照)に対して下方(ハウジング21側)に向けて撓んだ湾曲部39を構成している。この場合、モータ側固定部76とPCU側固定部66との間の部分は、上下方向においてハウジング21とPCU12に対して間隔をあけた状態で配索されている。
【0046】
ところで、上述したように電気自動車1の走行時等において振動が発生した場合、PCU12にはユニット支持フレーム41を介して振動が伝達される一方、モータユニット11には防振部材を介して振動が伝達されることになる。そのため、PCU12とモータユニット11とでは振動の位相が異なり、PCU12とモータユニット11とが電力供給線25を介して相対的に変位する。
【0047】
図6は、図3に相当する概略構成図である。
ここで、図6に示すように、本実施形態では、各電力供給線25の中間部34のうちPCU側固定部66とモータ側固定部76との間の部分を撓ませながら、電動機軸方向の一端側から他端側に向かって配索している。そのため、PCU12とモータユニット11とが相対的に変位した場合に、この変位に追従してPCU側固定部66とモータ側固定部76との間の部分が変形(揺動)することになる(図6中鎖線参照)。これにより、PCU12とモータユニット11との相対的な変位を吸収して、両者の各接続部26,33に発生する応力を抑制できる。その結果、各電力供給線25の損傷を抑えることができる。
【0048】
特に、本実施形態では、横配索部34bのモータ側固定部76をモータ側ブラケット71に固定することで、中間部34のうちモータ側固定部76とPCU側固定部66との間の部分のみが、PCU12及びモータユニット11との相対的な変位に追従して揺動することになる。すなわち、中間部34の揺動範囲を規制するこができるため、空間Sを最小限に抑えてモータルーム3内でのレイアウト性を維持した上で、各電力供給線25のPCU12やハウジング11への接触を抑制できる。これにより、各接続部26,33の損傷を抑制できる。
【0049】
さらにこの場合、中間部34のうちモータ側固定部76とモータ側接続部26との間の部分は、モータユニット11の振動と同位相で揺動することになるので、モータユニット11との相対的な変位を抑制できる。そのため、モータユニット11とPCU12との相対的な変位に起因してモータ側接続部26の電気的接続部分で発生する応力を抑制して、モータ側接続部26における電気的接続部分の損傷を確実に抑制できる。
同様に、PCU側固定部66とPCU側接続部33との間の部分はPCU12の振動と同位相で揺動することになるので、PCU12との相対的な変位を抑制できる。そのため、モータユニット11とPCU12との相対的な変位に起因してPCU側接続部33の電気的接続部分で発生する応力を抑制して、PCU側接続部33における電気的接続部分の損傷を確実に抑制できる。
【0050】
しかも、本実施形態のモータ側ブラケット71を、ハウジング21の凸部30に固定することで、左右方向においてハウジング21とPCU12との間の空間Sが最も狭い部分での中間部34の揺動を規制できる。これにより、中間部34がPCU12やハウジング21に接触するのを確実に抑制できる。
さらに、モータ側ブラケット71をハウジング21の凸部30に固定することで、モータ側ブラケット71をハウジング21の平坦部分に固定する場合に比べて、横配索部34bとハウジング21との隙間を確保できる。これにより、中間部34がハウジング21に接触するのを確実に抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、中間部34のうちモータ側固定部76から縦配索部34aの下端部に至る部分が下方に向けて湾曲する湾曲部39を構成しているため、電力供給線25を引き回す際に電力供給線25の曲げ半径を確保でき、電力供給線25の曲げに必要な力が小さくてすむ。したがって、製造時の組み付けが容易になる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、高電圧バッテリを電力源として駆動する電気自動車1に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず電力源を燃料電池とする燃料電池車両にも本発明を適用することが可能である。
また、上述した実施形態では、PCU側ブラケット61とモータ側ブラケット71とにより中間部34を保持する構成について説明したが、少なくともモータ側ブラケット71が配設されていれば構わない。なお、モータ側ブラケット71の配設位置は、適宜設計変更が可能である。
また、上述した実施形態では、モータユニット11の上方にPCU12を配設する構成について説明したが、これらの位置関係は適宜変更可能である。
さらに、上述した実施形態では、モータ側固定部76と縦配索部と34aの下端部との間にハウジング21側に向けて撓んだ湾曲部39を構成したが、モータ側固定部76に隣接していれば、湾曲部39の設定位置は適宜設計変更が可能である。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…電気自動車(車両) 2…車体 11…モータユニット(電動機) 12…PCU(パワーコントロールユニット) 21…ハウジング 25…電力供給線 26…モータ側接続部(電動機側接続部) 33…PCU側接続部(パワーコントロールユニット側接続部) 39…湾曲部 61…PCU側ブラケット(第2固定部材) 66…PCU側固定部(パワーコントロールユニット側固定部) 71…モータ側ブラケット(第1固定部材) 76…モータ側固定部(電動機側固定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を収納するハウジングと、
前記ハウジングに対して所定の空間を隔てて配設され、電力源からの電力を所望の電力に変換して前記電動機に供給することで、前記電動機を駆動制御するパワーコントロールユニットと、
前記電動機と前記パワーコントロールユニットとを接続する電力供給線と、を備えた車両であって、
前記電力供給線は、
前記ハウジングのうち電動機軸方向に沿う一端側に接続された電動機側接続部と、
前記パワーコントロールユニットのうち前記電動機軸方向に沿う他端側に接続されたパワーコントロールユニット側接続部と、を備え、
前記電動機側接続部と前記パワーコントロールユニット側接続部との間に延在する中間部と、を備え、
前記中間部は、第1固定部材により前記ハウジングに固定された電動機側固定部を備えていることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記ハウジングのうち、前記パワーコントロールユニットと対向する対向面には、前記パワーコントロールユニット側に向けて突出する凸部が形成され、
前記第1固定部材は、前記凸部に固定されていることを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記中間部は、前記電動機側固定部に隣接する位置において前記ハウジング側に湾曲した湾曲部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記中間部は、第2固定部材により前記パワーコントロールユニットに固定されたパワーコントロールユニット側固定部を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103583(P2013−103583A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248162(P2011−248162)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】