説明

車体へのフードの位置決め方法

【課題】外観部品であるフードが、外観性に影響が出ないように位置決めされる位置決め方法を提供することを課題とする。
【解決手段】車体13側の第1左前点31と第1右前点32の中点42を算出し、また、第1左後点33と第1右後点34の中点43を算出し、車体中心線44を定める。フード12側の第2左前点36と第2右前点37の中点45を算出し、また、第2左後点38と第2右後点39の中点46を算出し、フード中心線47を定める。次に、車体中心線44にフード中心線47が合致するように、フード12を矢印のように移動する。
【効果】中心線同士を合わせるため、フードが車体に対してオフセットして位置決めされる心配はない。結果、外観部品であるフードが、外観性に影響が出ないように位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に対してフードの位置を決めるフードの位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に、車幅方向に延びる部材を取付けるに当たって、予めCCDカメラで位置決めすることが行われている(例えば、特許文献1(図10)参照。)。
【0003】
特許文献1の段落番号[0024]第7行以降には、図10(イ)を参照しながら次の説明が記載されている。
車体(1)(括弧を付した符号は、特許文献に記載されている符号を示す。以下同様)へ車幅方向に延びる部材としてのダッシュボードパネル(7)を、取付ける手順が示されている。すなわち、車体(1)側に設けられている位置決め用基準ピン(P)と、ダッシュボードパネル(7)側に設けられている基準孔(Q)とを合わせる時に、その位置合わせ部をCCDカメラ(17’a)により撮像して行う。
【0004】
位置決め用基準ピン(P)は、車体(1)の右縁(左右は運転席を基準に定める。)に設けられている。このように、車体の左右一方の縁に基準が設けられ、この基準から車幅方向へ部材を延ばすことが、従来から広く行われている。
車幅方向に延びる部材が、フードである例を、次図で説明する。
【0005】
図10は従来のフードの位置決め方法を説明する図であり、車体101の前部右部に、位置決め基準点102が設けられている。この位置決め基準点102を基準にして、フード103を位置決めする。
【0006】
ところで、車体101及びフード103は、プレス工程や溶接工程を経て製造させるために、出来上がり寸法は、正規の寸法(図面寸法など)より大きく又は小さくなる。
結果、車体中心線104とフード中心線105との間に、δのオフセット量が発生する。このオフセット量δが大きくなるほど、フード103が偏って位置決めされたことになり、外観性に影響が出る。
【0007】
外観部品であるフードは、外観性に影響が出ないように位置決めされることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−43767公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、外観部品であるフードが、外観性に影響が出ないように位置決めされる位置決め方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車体にヒンジを介してフードを取付けるに際し、車体に対してフードの位置を決めるフードの位置決め方法であって、
前記車体に設けてある複数の基準点を計測し、この計測情報から車幅方向の車体中心線を定めるステップと、
このステップに並行して、前記フードに設けてある複数の基準点を計測し、この計測情報から車幅方向のフード中心線を定めるステップと、
前記車体中心線に前記フード中心線を合致させるようにして、車体にフードを臨ませるステップと、からなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、車体に設けてある複数の基準点は、車幅方向及び車長方向に離して設けた第1左前点、第1右前点、第1左後点及び第1右後点からなり、前記車体中心線を定めるステップでは、第1左前点と第1右前点との第1前側中点及び第1左後点と第1右後点との第1後側中点を通る線を前記車体中心線と定め、
前記フードに設けてある複数の基準点は、車幅方向及び車長方向に離して設けた第2左前点、第2右前点、第2左後点及び第2右後点からなり、前記フード中心線を定めるステップでは、第2左前点と第2右前点との第2前側中点及び第2左後点と第2右後点との第2後側中点を通る線を前記フード中心線と定めることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、車体中心線に前記フード中心線を合致させた状態を維持しながら、前記フードの前端と前記車体との間の距離を計測するステップと、この距離が所定値になるように、前記フードを前記車体中心線に沿って移動させるステップと、を加えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、距離を計測するステップは、前記車体に設けてある基準点を利用して実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、現実の車体から求めた車体中心線に、現実のフードから求めたフード中心線を合わせる。車体の出来上がり寸法及びフードの出来上がり寸法に関係なく中心線同士を合わせるため、フードが車体に対してオフセットして位置決めされる心配はない。結果、外観部品であるフードが、外観性に影響が出ないように位置決めされる。
【0015】
請求項2に係る発明では、車体中心線は、第1左前点と第1右前点との第1前側中点及び第1左後点と第1右後点との第1後側中点を通る線で定められる。
同様に、フード中心線は、第2左前点と第2右前点との第2前側中点及び第2左後点と第2右後点との第2後側中点を通る線で定められる。
極めて簡単な演算で車体中心線及びフード中心線が定まるため、演算部に複雑な演算を行わせる必要が無く、演算部の小型化及び低コスト化が容易に達成できる。
【0016】
請求項3に係る発明では、車体長手方向における、車体に対するフードの位置を決めるため、フードの外観性を更に高めることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、距離を計測するステップは、車体に設けてある基準点を利用する。車体に設けてある基準点は車体中心線を定めるステップで計測済みである。すなわち、距離を計測するステップでの計測箇所が少なくなるため、距離を計測するステップの処理が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明方法を実施することができるフード位置決め・取付け装置の斜視図である。
【図2】物品検出センサの斜視図である。
【図3】図2の作用説明図である。
【図4】車体前部の平面図である。
【図5】フードの底面図である。
【図6】車体中心線及びフード中心線の決定方法を説明する図である。
【図7】フードの前端と車体との距離を計測するステップを説明する図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】ナットランナの作用を説明する図である。
【図10】従来のフードの位置決め方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、フード位置決め・取付け装置10は、車両製造ライン11に沿って配置され、フード12を吸着保持して車体13の所定位置へ運搬するフード運搬ロボット14と、車両製造ライン11の左側(左右は運転席を基準とする。)に配置され、物品検出センサ15及びナットランナ16を備えている左の物品検出・締付けロボット17と、車両製造ライン11の右側に配置され、物品検出センサ15及びナットランナ16を備えている右の物品検出・締付けロボット18と、これらのロボット14、17、18を制御するロボット制御部19とからなる。
【0021】
フード運搬ロボット14は、ロボットアーム21に、例えばH型のフレーム22を介して複数(この例では4個)の吸着パッド23を備えており、これらの吸着パッド23で吸着したフード12を、三次元的に移動する役割を果たす。
【0022】
左右の物品検出・締付けロボット17、18は、図2に示すように、ロボットアーム25にナットランナ16、及び投光部26からレーザ光27を発射し、反射光を受光部28で受けて、物の形状や物までの距離などを検出する物品検出センサ15を備えている。
【0023】
物品検出センサ15の作用を、図3に基づいて説明する。
図3(a)に示すように、穴29をスキャンして、x軸方向の穴径Dxを検出し、y軸方向の穴径Dyを検出する。Dxの中点を通る線とDyの中点を通る線との交点が、穴29の中心位置となる。この中心位置は座標で表される。
【0024】
なお、中心位置の座標は、次に述べる方法でも検出可能である。
1.穴29と同形の穴が設けられているマスタ(例えばテンプレート)を、準備する。
2.マスタの穴の形と、穴の中心を覚えさせる。
3.マスタの穴に類似した形、すなわち穴29を検出し、この穴29にマスタの穴を重ね、マスタの穴の中心を仮の中心とする。
4.この仮の中心から放射線を延ばし、この放射線が穴29の縁に交わった点を計測する。放射線の数を増やし、複数の点を計測し、これらの点を結んで円を描き、描いた円の中心を、中心位置とする。これで、中心位置の座標が検出される。
【0025】
また、図3(b)に示すように、車体13にフード12が載っている形態で、矢印(2)のようにレーザ光27を走査させると、読み取った距離情報から段部、すなわちフード12の先端位置を求めることができる。
【0026】
なお、フード12の先端位置は次に述べる方法でも求めることができる。
投光部26でフード12に投光し、投光した箇所をカメラ(図2、符号28)でスキャンする。光によって色が変わっている箇所、又は色が途切れている箇所がフード12の先端位置であると認識させる。
【0027】
次に、車体に設けられている基準点とフードに設けられている基準点について説明する。
図4に示されるように、エンジンルームを囲う車体13には、車幅方向及び車長方向に離して設けた第1左前点31、第1右前点32、第1左後点33及び第1右後点34からなる4個の基準点が設けられている。
【0028】
また、図5に示されるように、フード12の裏面には、車幅方向及び車長方向に離して設けた第2左前点36(裏面であるため左右が逆になる。)、第2右前点37、第2左後点38及び第2右後点39からなる4個の基準点が設けられていると共に、左右後端にヒンジ41、41が取付けられている。
【0029】
以上に述べたフード位置決め・取付け装置の作用を次に説明する。
先ず、図6において、車体13側の第1左前点31、第1右前点32、第1左後点33及び第1右後点34の中心点を、物品検出センサ(図2、符号15)で検出する。これらの検出情報を得て、ロボット制御部(図1、符号19)は、第1左前点31と第1右前点32の中点(第1前側中点42)を算出し、また、第1左後点33と第1右後点34の中点(第1後側中点43)を算出する。次に、中点42と中点43とを通る車体中心線44を定める。以上の演算は単純計算に基づくため、処理は極めて容易である。
【0030】
同様にして、おもて面(外面)をロボットアーム21で吊った状態のフード12の下に物品検出センサ(図2、符号15)を入れて、第2左前点36、第2右前点37、第2左後点38及び第2右後点39の中心点を検出する。これらの検出情報を得て、ロボット制御部(図1、符号19)は、第2左前点36と第2右前点37の中点(第2前側中点45)を算出し、また、第2左後点38と第2右後点39の中点(第2後側中点46)を算出する。次に、中点45と中点46とを通るフード中心線47を定める。以上の演算は単純計算に基づくため、処理は極めて容易である。
【0031】
次に、車体中心線44にフード中心線47が合致するように、フード12を矢印のように移動する。中心線44、47が重なったら、以降は、フード12を車幅方向へは移動させない。
【0032】
続いて、図7に示すように、矢印(4)に従ってレーザ光を照射して、フード12の先端位置を求める(この動作は次図で補足する)。同様に、矢印(5)に従ってレーザ光を照射して、フード12の先端位置を求める。なお、レーザ光は、車体13側の第1左前点31又は第1右前点32を通るようにしてもよいし、他の箇所を通るようにしてもよい。
【0033】
図7の8−8線断面図である図8に示すように、フード12の先端と車体13側の第1左前点31との距離Lを演算する。そして距離Lが所定値になるようにロボットによりフード12を車長方向へ移動させる。これで、フード12は車幅方向及び車長方向に正確に位置決めされたことになる。
【0034】
なお、距離Lの演算に車体13側の第1左前点31を利用すれば、距離を計測するステップでの計測箇所が少なくなるため、距離を計測するステップの処理が軽減できる。しかし、第1左前点31以外の箇所を距離演算のために設定することは差し支えない。
【0035】
次に、図9に示すように、ナットランナ16でヒンジ41を車体13へボルト止めする。ただし、ボルト止めは次の手順で実施する。
便宜上、後方のボルトを第1ボルト48、前方のボルトを第2ボルト49と呼ぶ。
先ず、第1ボルト48をナットランナ16で仮締めする。次に、第2ボルト49をナットランナ16で本締めする。続いて、第1ボルト48をナットランナ16で本締めする。
【0036】
ナットランナのトルク設定の切換えが難しいなどの理由から、一般には第1ボルト本締め→第2ボルト本締めの手順がなされる。しかし、いきなり第1ボルトを本締めしてしまうと、せっかく位置出しをしたものがずれてしまうので、本発明では仮締めを行うようにした。
【0037】
なお、図5において、フード12に中央基準点50を設けることができる。この場合は、中央基準点50と、第2左後点38と第2右後点39の中点とを通る線を、フード中心線と定めることができる。すなわち、4個の基準点を3個に変更することができる。基準点の数が少ないほど検出時間を短縮することができる。すなわち、基準点は、3個以上であればよく、4個に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、車体にフードを位置決め・取付ける作業に好適である。
【符号の説明】
【0039】
10…フード位置決め・取付け装置、12…フード、13…車体、14…フード運搬ロボット、15…物品検出センサ、16…ナットランナ、17、18…物品検出・締付けロボット、19…ロボット制御部、31〜34、50…車体側に設けた基準点、36〜39…フードに設けた基準点、41…ヒンジ、42、43、45、46…中点、44…車体中心線、47…フード中心線、L…距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にヒンジを介してフードを取付けるに際し、車体に対してフードの位置を決めるフードの位置決め方法であって、
前記車体に設けてある複数の基準点を計測し、この計測情報から車幅方向の車体中心線を定めるステップと、
このステップに並行して、前記フードに設けてある複数の基準点を計測し、この計測情報から車幅方向のフード中心線を定めるステップと、
前記車体中心線に前記フード中心線を合致させるようにして、車体にフードを臨ませるステップと、からなることを特徴とする車体へのフードの位置決め方法。
【請求項2】
前記車体に設けてある複数の基準点は、車幅方向及び車長方向に離して設けた第1左前点、第1右前点、第1左後点及び第1右後点からなり、前記車体中心線を定めるステップでは、第1左前点と第1右前点との第1前側中点及び第1左後点と第1右後点との第1後側中点を通る線を前記車体中心線と定め、
前記フードに設けてある複数の基準点は、車幅方向及び車長方向に離して設けた第2左前点、第2右前点、第2左後点及び第2右後点からなり、前記フード中心線を定めるステップでは、第2左前点と第2右前点との第2前側中点及び第2左後点と第2右後点との第2後側中点を通る線を前記フード中心線と定めることを特徴とする請求項1記載の車体へのフードの位置決め方法。
【請求項3】
前記車体中心線に前記フード中心線を合致させた状態を維持しながら、前記フードの前端と前記車体との間の距離を計測するステップと、この距離が所定値になるように、前記フードを前記車体中心線に沿って移動させるステップと、を加えることを特徴とする請求項1記載の車体へのフードの位置決め方法。
【請求項4】
前記距離を計測するステップは、前記車体に設けてある基準点を利用して実施することを特徴とする請求項3記載の車体へのフードの位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−264909(P2010−264909A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118681(P2009−118681)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】