車体構造材用成形品
【課題】成形前後の線長差に起因した応力の発生による不要な変形が生じないか、又は、このような不要な変形が少ない車体構造材用成形品を得る。
【解決手段】頭壁部12から続く第1縦壁部22には、曲げ部34、36が形成され、頭壁部12から続く第2縦壁部26には、曲げ部44、46が形成されている。第1縦壁部22側で成形の前後で生じる線長差は、曲げ部34、36の突出寸法の総和で相殺(吸収)され、第2縦壁部26側で成形の前後で生じる線長差は、曲げ部44、46の突出寸法の総和で相殺(吸収)される。これにより、第1縦壁部22の側での引っ張り応力の発生と第2縦壁部26の側での圧縮応力の発生を防止又は抑制できる。
【解決手段】頭壁部12から続く第1縦壁部22には、曲げ部34、36が形成され、頭壁部12から続く第2縦壁部26には、曲げ部44、46が形成されている。第1縦壁部22側で成形の前後で生じる線長差は、曲げ部34、36の突出寸法の総和で相殺(吸収)され、第2縦壁部26側で成形の前後で生じる線長差は、曲げ部44、46の突出寸法の総和で相殺(吸収)される。これにより、第1縦壁部22の側での引っ張り応力の発生と第2縦壁部26の側での圧縮応力の発生を防止又は抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を構成する車体構造材用成形品に係り、特に、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い所謂高張力鋼板や、このような高張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い所謂超高張力鋼板により成形された車体構造材用成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
車体のルーフサイドに沿って設けられたルーフサイドレールアウタリインフォース、センターピラーに沿って設けられたセンターピラーアッパリインフォースやセンターピラーロアリインフォース等の車体構造材は、車幅方向一方の側へ向けて開口した断面ハット形状に形成されたものが用いられることがある。さらに、このような構成の車体構造材は、平板状の鋼板を絞り成形(プレス成形)することで形成されている(その一例としては、下記特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2006−281312の公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、このような車体構造材には、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い所謂「高張力鋼板」が適用されるようになっており、更には、このような高張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い所謂「超高張力鋼板」の適用も考えられている。
【0004】
一方で、上記のルーフサイドは、車両の前後方向中間部よりも前方側が下方へ向けて湾曲する形状が多い。このような形状に沿うように断面ハット形状のルーフサイドレールアウタリインフォースを形成した場合、頭壁部(上記特許文献1で言うところのハット頭部)の幅方向一方の側に曲率の中心が位置するように全体的に湾曲した形状となる。
【0005】
平板状の鋼板を絞り成形(プレス成形)によってこのような形状に成形すると、頭壁部の幅方向端部から連続して形成された縦壁部には成形の前後で頭壁部の長手方向に沿った線長差が生じる。このような線長差に起因して、頭壁部の幅方向一方の側(湾曲の曲率中心の側)では縦壁部において頭壁の長手方向に沿った引っ張り応力が生じ、これとは反対に、頭壁部の幅方向他方の側(湾曲の曲率中心とは反対側)では縦壁部において頭壁の長手方向に沿った圧縮応力が生じる。このような応力が縦壁部に生じることで、頭壁部の長手方向を軸方向とする軸周りに縦壁部が傾くような「ひねり」が成形後に生じる。
【0006】
このような「ひねり」の発生は、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い高張力鋼板を用いることで顕著に生じ、高張力鋼板よりも引っ張り強度が高い超高張力鋼板を用いると更に顕著になって、所望の形状を得ることが難しい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、成形前後の線長差に起因した応力の発生による不要な変形が生じないか、又は、このような不要な変形が少ない車体構造材用成形品を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、幅方向両端部のうち少なくとも何れか一方の端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の第1壁部と、前記第1壁部の前記幅方向両端部のうち、少なくとも何れかの一方で且つ前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった側の端部から前記第1壁部の厚さ方向一方側へ向けて延び、しかも、前記第1壁部の前記幅方向端部に倣って曲がるように成形された第2壁部と、前記第2壁部の前記第1壁部とは反対側の端部から前記第1壁部の幅方向外方側へ向けて延びるように形成された板状の第3壁部と、前記第2壁部の一部を前記第2壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2壁部に形成された線長差吸収部と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、板状の第1壁部の幅方向両端部のうち少なくとも一方の側の端部から第1壁部の厚さ方向一方の側へ延びるように第2壁部が形成され、更に、この第2壁部の第1壁部とは反対側の端部からは、第1壁部の幅方向外方側(更に詳細に言えば、第2壁部が形成された側の第1壁部の幅方向端部よりも第1壁部の幅方向外方)へ延びるように第3壁部が形成される。
【0010】
さらに、第2壁部が連続する第1壁部の幅方方向端部は、第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がっており、第2壁部はこの第1壁部の幅方向端部に倣うように曲がっている。
【0011】
ここで、本発明に係る車体構造材用成形品では第2壁部に線長差吸収部が形成される。この線長差吸収部は、第2壁部の一部を第2壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで形成される。このような線長吸収部が第2壁部に形成されることで、第1壁部、第2壁部、及び第3壁部の成形の前後、すなわち、本車体構造材用成形品の成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部に生じる線長差が線長差吸収部で吸収される。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又は効果的に抑制される。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、請求項1に記載の本発明において、前記第1壁部の幅方向両端から前記第1壁部の厚さ方向一方の側へそれぞれが延びるように形成されると共に、前記第1壁部とは反対側の端部から、前記第1壁部の幅方向外方側へ延びるようにフランジ部が形成された縦壁部を備え、前記一対の縦壁部の少なくとも何れか一方を前記第2壁部とし、前記第2壁部とされた前記縦壁部から延出された前記フランジ部を前記第3壁部とした、ことを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向両端からは第1壁部の厚さ方向一方の側へ向けて縦壁部がそれぞれ延出され、更に、これらの縦壁部の第1壁部とは反対側の端部から、1壁部の幅方向外方へ向けてフランジ部が延出される。すなわち、本発明に係る車体構造材用成形品は、第1縦壁部の幅方向に沿って切った全体的な断面形状が所謂ハット形状に形成される。
【0014】
さらに、本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向端部(すなわち、少なくとも幅方向の何れか一方の側の端部)が幅方向一方の側を曲率の中心として曲がっている。したがって、この曲がった方の端部に対応した縦壁は、第2壁部とされて第1壁部の幅方向端部に倣うように曲がり、この第2壁部とされた縦壁部に形成されたフランジ部が第3壁部とされる。
【0015】
すなわち、本発明に係る車体構造材用成形品は、断面ハット形状で、しかも、両縦壁部の少なくとも一方が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった形状に成形される。しかしながら、本発明に係る車体構造材用成形品は第2壁部とされた縦壁部には、線長差吸収部が形成される。このため、断面ハット形状で且つ両縦壁部の少なくとも一方が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった形状に成形されても、成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部とされた縦壁部に生じる線長差が線長差吸収部で吸収され、れる。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又は効果的に抑制される。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記第1壁部の幅方向一方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第3壁部側よりも前記第1壁部側で大きく設定した、ことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向一方の側の端部が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、この第1壁部の幅方向一方の側の端部から延びるように形成された第2壁部が、第1壁部の幅方向一方の側の端部に倣うように曲がっている。
【0018】
ここで、このように曲がった本車体構造材用成形品では、第2壁部に線長吸収部が形成されるが、第2壁部の厚さ方向に沿った線長差吸収部の変形量が第2壁部の第3壁部側よりも第1壁部側で大きくなる。このため、成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部に生じる線長差が線長差吸収部で効果的に吸収される。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又はより効果的に抑制される。
【0019】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記第1壁部の幅方向他方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第1壁部側よりも前記第3壁部側で大きく設定した、ことを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向他方の側の端部(すなわち、第1壁部の幅方向両端部のうち曲率の中心とは反対側の端部)が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、この第1壁部の幅方向他方の側の端部から延びるように形成された第2壁部が、第1壁部の幅方向他方の側の端部に倣うように曲がっている。
【0021】
ここで、このように曲がった本車体構造材用成形品では、第2壁部に線長吸収部が形成されるが、第2壁部の厚さ方向に沿った線長差吸収部の変形量が第2壁部の第1壁部側よりも第3壁部側で大きくなる。このため、成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部に生じる線長差が線長差吸収部で効果的に吸収される。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又はより効果的に抑制される。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、幅方向端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の頭壁部と、前記頭壁部の幅方向一方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向一方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第1縦壁部と、前記第1縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第1フランジ部と、前記頭壁部の幅方向他方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向他方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第2縦壁部と、前記第2縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第2フランジ部と、前記第1縦壁部の一部を前記第1縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第1縦壁部に形成されると共に、変形量が前記第1フランジ部側よりも前記頭壁部側で大きくなる第1線長差吸収部と、前記第2縦壁部の一部を前記第2縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2縦壁部に形成されると共に、変形量が前記頭壁部側よりも前記第2フランジ部側で大きくなる第2線長差吸収部と、を備えている。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、板状の頭壁部の幅方向一方の側の端部からは頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて第1縦壁部が延びるように形成され、頭壁部の幅方向他方の側の端部からは頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて第2縦壁部が延びるように形成される。さらに、第1縦壁部の頭壁部とは反対側の端部からは頭壁部の幅方向外方側へ向けて第1フランジ部が延びるように形成され、第2縦壁部の頭壁部とは反対側の端部からは頭壁部の幅方向外方側へ向けて第2フランジ部が延びるように形成される。すなわち、本発明に係る車体構造材用成形品は、頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて開口した断面ハット形状に成形される。このような断面ハット形状の車体構造材用成形品は、第1縦壁部、第1フランジ部、及び、第2縦壁部、第2フランジ部の何れか一方の側だけが形成されている構造に比べて剛性が高い。
【0024】
ところで、本発明に係る車体構造材用成形品では、第1縦壁部が形成された側の頭壁部の幅方向端部は、頭壁部の幅方向一方の側(すなわち、第1縦壁部が形成された方の側)を曲率中心として湾曲しており、しかも、第1縦壁部は、この頭壁部の幅方向一方の側の端部に沿って頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲している。
【0025】
ここで、第1縦壁部には第1縦壁部の一部を第1縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで第1線長差吸収部が形成される。しかも、この第1線長差吸収部は、第1フランジ部の側に比べて頭壁部の側で変形量が大きい。このため、頭壁部の幅方向一方の側の端部に形成されて、しかも、頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲した第1縦壁部において、本車体構造材用成形品の成形の前後で生じる線長差が第1線長差吸収部で効果的に吸収される。
【0026】
一方、第2縦壁部が形成された側の頭壁部の幅方向端部もまた、頭壁部の幅方向一方の側(すなわち、第1縦壁部が形成された方の側)を曲率中心として湾曲しており、しかも、第2縦壁部は、この頭壁部の幅方向他方の側の端部に沿って頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲している。
【0027】
ここで、第2縦壁部には第2縦壁部の一部を第2縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで第2線長差吸収部が形成される。しかも、この第2線長差吸収部は、頭壁部の側に比べて第2フランジ部の側で変形量が大きい。このため、頭壁部の幅方向他方の側の端部に形成されて、しかも、頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲した第2縦壁部において、本車体構造材用成形品の成形の前後で生じる線長差が第2線長差吸収部で効果的に吸収される
このように、本発明に係る車体構造材用成形品では、第1縦壁部及び第2縦壁部の双方の側において成形の前後で線長差が生じないか、このような線長差を極めて効果的に抑制でき、このような線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形を防止又は極めて効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、線長差吸収部で成形前後に生じる線長差が吸収されるため、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が生じないか、又は、このような変形を効果的に小さくできる。
【0029】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、断面ハット形状で、しかも、第1壁部の幅方向に沿った少なくとも一方の側の縦壁部が第1壁部の幅方向の一方の側を曲率の中心とするように曲がった形状に成形されるが線長差吸収部で成形前後に生じる線長差が吸収されるため、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が生じないか、又は、このような不要な変形を効果的に小さくできる。
【0030】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、第1壁部の幅方向両端部のうち曲率中心側に位置する端部に沿った第2壁部において成形前後で生じる線長さを線長差吸収部で効果的に吸収でき、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形をなくすことができ、又は、このような不要な変形をより効果的に小さくできる。
【0031】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、第1壁部の幅方向両端部のうち曲率中心とは反対側に位置する端部に沿った第2壁部において成形前後で生じる線長さを線長差吸収部で効果的に吸収でき、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形をなくすことができ、又は、このような不要な変形をより効果的に小さくできる。
【0032】
請求項5に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、断面ハット形状で、しかも、頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として第1縦壁部や第2縦壁部が湾曲した形状に成形されるにも関わらず、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が生じないか、又は、このような変形を効果的に小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
<本実施の形態の構成>
(ルーフサイドレールアウタリインフォース10の基本構成)
図2には本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品としてのルーフサイドレールアウタリインフォース10の構成が斜視図によって示されている。また、図3及び図4の各々にはルーフサイドレールアウタリインフォース10の要部の構成が概略的な斜視図によって示されている。実際のルーフサイドレールアウタリインフォース10は図2に示されるような形状であるが、本実施の形態の要点を理解しやすくするために、図3及び図4を主に用いて説明する。
【0034】
これらの図に示されるように、ルーフサイドレールアウタリインフォース10は第1壁部としての頭壁部12を備えている。頭壁部12は、長手方向が概ね略車両前後方向に沿い、厚さ方向が略車両左右方向(略車幅方向)に沿った板状に形成されている。また、頭壁部12は車両のルーフサイドの形状に倣ってその幅方向一方の側である略車両下方側を曲率の中心として全体的に湾曲した形状となっている。
【0035】
図2に示されるように、頭壁部12の長手方向両端部のうち、略車両前方側に位置する側の端部からは連続して傾斜部14が形成されている。傾斜部14は頭壁部12の側に対して頭壁部12とは反対側が略車幅方向外方側に位置するように傾いていると共に、頭壁部12の側よりも頭壁部12とは反対側が漸次拡幅されている。傾斜部14の頭壁部12とは反対側の端部からは連続して固定部16が形成されている。この固定部16はフロントピラーの上端やその近傍の車体の骨格部材や補強部材等に固定される。
【0036】
これに対し、頭壁部12の長手方向両端部のうち、略車両後方側に位置する側の端部からは連続して傾斜部18が形成されている。傾斜部18は頭壁部12の側に対して頭壁部12とは反対側が略車幅方向外方側に位置するように傾いていると共に、頭壁部12の側よりも頭壁部12とは反対側が漸次拡幅されている。傾斜部18の頭壁部12とは反対側の端部からは連続して固定部20が形成されている。この固定部20はセンターピラーの上端やその近傍の車体の骨格部材や補強部材等に固定される。
【0037】
一方、図2及び図3に示されるように、頭壁部12の幅方向一方の側の端部(すなわち、略車両下方側の頭壁部12の幅方向端部で、頭壁部12の幅方向両端部のうち上記の曲率の中心側の端部)からは連続して第2壁部又は縦壁部としての第1縦壁部22が形成されている。第1縦壁部22は長手方向が頭壁部12の幅方向一方の側の端部に沿い、幅方向が略車幅方向外方側(更に言えば、略車幅方向外方に対して略車両下方へ傾斜した向き)に沿った板状に形成されている。この第1縦壁部22の幅方向に沿った頭壁部12とは反対側の端部からは第3壁部又はフランジ部としての第1フランジ部24が連続して形成されている。第1フランジ部24は厚さ方向が概ね頭壁部12の厚さ方向に沿った板状に形成されており、第1縦壁部22の幅方向端部から頭壁部12の幅方向外方へ向けて延出されている。
【0038】
これに対し、図2及び図4に示されるように、頭壁部12の幅方向他方の側の端部(すなわち、略車両上方側の頭壁部12の幅方向端部で、頭壁部12の幅方向両端部のうち上記の曲率の中心とは反対側の端部)からは連続して第2壁部又は縦壁部としての第2縦壁部26が形成されている。第2縦壁部26は長手方向が頭壁部12の幅方向他方の側の端部に沿い、幅方向が略車幅方向外方側(更に言えば、略車幅方向外方に対して略車両上方へ傾斜した向き)に沿った板状に形成されている。この第2縦壁部26の幅方向に沿った頭壁部12とは反対側の端部からは第3壁部又はフランジ部としての第2フランジ部28が連続して形成されている。第2フランジ部28は厚さ方向が概ね頭壁部12の厚さ方向に沿った板状に形成されており、第2縦壁部26の幅方向端部から頭壁部12の幅方向外方へ向けて延出されている。
【0039】
以上のような構成であるため、図5、図6に示されるように、ルーフサイドレールアウタリインフォース10は頭壁部12の長手方向に対して直交する向きに切った断面形状が略ハット形状とされており、基本的には、鋼板、又は、一般的な鋼板よりも引っ張り強度が高い高抗張力鋼板、或いは、このような高抗張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い超高抗張力鋼板から成る平板を、絞り成形(プレス成形)することにより形成されている。
【0040】
(第1縦壁部22、第2縦壁部26の詳細)
次に、第1縦壁部22及び第2縦壁部26に関して更に詳細に説明する。図1、更に詳細には図3に示されるように、第1縦壁部22は縦壁本体32を備えている。第1縦壁部22の長手方向に沿った一方の側の縦壁本体32の端部には線長差吸収部又は第1線長差吸収部としての曲げ部34が形成されている。曲げ部34は縦壁本体32の端部から頭壁部12の幅方向外方側へ向けて屈曲されることで形成されている。曲げ部34と縦壁本体32との境界である折れ線部は直線状とされている。しかも、曲げ部34と縦壁本体32との間の折れ線部は第1縦壁部22の幅方向に対して第1縦壁部22の長手方向に傾斜しており、この折れ線部の第1フランジ部24側の端部は頭壁部12側の端部よりも第1縦壁部22の長手方向一端側に位置している。
【0041】
このため、第1縦壁部22の長手方向に対して第1縦壁部22の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部34の外面が向いている。さらに、曲げ部34は頭壁部12の側の端部で最も頭壁部12の幅方向外方側へ突出しており、第1フランジ部24の側へ向けて縦壁本体32からの突出寸法が短くなる。特に、本実施の形態では、曲げ部34の第1フランジ部24側の端部は縦壁本体32から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部34の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部34の形状)は、第1フランジ部24の側が頂部となる三角形状となっている。
【0042】
一方、第1縦壁部22の長手方向に沿った他方の側の縦壁本体32の端部には線長差吸収部又は第1線長差吸収部としての曲げ部36が形成されている。曲げ部34と同様に曲げ部36は縦壁本体32の端部から頭壁部12の幅方向外方側へ向けて屈曲されることで形成されている。また、曲げ部34における折れ線部と同様に曲げ部36と縦壁本体32との境界である折れ線部は直線状で、しかも、第1縦壁部22の幅方向に対して第1縦壁部22の長手方向に傾斜している。
【0043】
しかしながら、曲げ部34における折れ線部とは異なり曲げ部36と縦壁本体32との境界である折れ線部は第1フランジ部24側の端部が頭壁部12側の端部よりも第1縦壁部22の長手方向他端側に位置している。このため、第1縦壁部22の長手方向に対して第1縦壁部22の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部36の外面が向いている。さらに、曲げ部34と同様に曲げ部36は頭壁部12の側の端部で最も頭壁部12の幅方向外方側へ突出しており、第1フランジ部24の側へ向けて縦壁本体32からの突出寸法が短くなる。
【0044】
特に、本実施の形態では、曲げ部36の第1フランジ部24側の端部は縦壁本体32から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部36の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部36の形状)は、第1フランジ部24の側が頂部となる三角形状となっており、特に、本実施の形態では、正面視での曲げ部36の形状は正面視での曲げ部34の形状と略同じになるように縦壁本体32からの曲げ部36の突出寸法等が設定されている。
【0045】
曲げ部34の縦壁本体32とは反対側の端部と曲げ部36の縦壁本体32とは反対側の端部との間は段差部38とされており、曲げ部34及び曲げ部36の各々の縦壁本体32とは反対側の端部は段差部38で繋がっている。ここで、図7には、図5の一点鎖線の円Aにおける第1縦壁部22と頭壁部12との境界部分の拡大端面図が示されている。この図に示されるように、縦壁本体32からの曲げ部34の最大突出寸法L1は、縦壁本体32の厚さ寸法D1よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L1が厚さ寸法D1の半分以下とされている。このため、曲げ部34が形成された部分での第1縦壁部22の厚さ寸法D2は、縦壁本体32や段差部38の部分における第1縦壁部22の厚さ寸法D1の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D2が厚さ寸法D1の1.5倍以下とされている。
【0046】
また、縦壁本体32からの曲げ部36の最大突出寸法L2は、縦壁本体32の厚さ寸法D1よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L2が厚さ寸法D1の半分以下とされている。このため、曲げ部36が形成された部分での第1縦壁部22の厚さ寸法D3は、縦壁本体32や段差部38の部分における第1縦壁部22の厚さ寸法D1の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D3が厚さ寸法D1の1.5倍以下とされている。このため、第1縦壁部22の厚さ方向に沿って、頭壁部12の幅方向内側を向く曲げ部34、36の面(図7における曲げ部34、36の左側の面)は、頭壁部12の幅方向外側を向く縦壁本体32の面(図7における縦壁本体32の右側の面)よりも頭壁部12の幅方向内方側に位置している。これにより、縦壁本体32の厚さ方向中心線C1と段差部38の厚さ方向中心線C2との間で第1縦壁部22の長手方向に沿って第1縦壁部22が途切れることなく連続する。
【0047】
さらに、本実施の形態は、上記のように、平板を絞り成形(プレス成形)することでルーフサイドレールアウタリインフォース10を形成するが、第1縦壁部22に曲げ部34、36及び段差部38を形成しない構成を平板から絞り成形(プレス成形)した際に成形の前後で第1縦壁部22の頭壁部12との境界部分で線長差Sが生じる。ここで、本実施の形態では、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部34の数N1、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部36の数N2、縦壁本体32からの曲げ部34の突出寸法L1、縦壁本体32からの曲げ部36の突出寸法L2、そして、上記の線長差Sの関係は、次の式(1)となるように設定される。
【0048】
S=(N1・L1)+(N2・L2)・・・(1)
特に、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部34の数N1と曲げ部36の数N2とが等しく、しかも、縦壁本体32からの曲げ部34の突出寸法L1と縦壁本体32からの曲げ部36の突出寸法L2とが等しいのであれば、上記の式(1)は以下の式(2)のような関係になる。
【0049】
S=N・L・・・(2)
但し、N=N1+N2で、しかも、L=L1=L2
さらに、図1及び図3に示されるように、第1縦壁部22に上記の曲げ部34、36及び段差部38を形成することで頭壁部12の第1縦壁部22の側の端部には突出部40が形成されている。突出部40は、突出部40が形成されていない部位における頭壁部12の第1縦壁部22側の端部よりも更に頭壁部12の幅方向外方へ突出しており、頭壁部12に突出部40が形成されていることで第1縦壁部22の曲げ部34、36及び段差部38が頭壁部12に直接繋がっている。
【0050】
一方、図1、更に詳細には図4に示されるように、第2縦壁部26は縦壁本体42を備えている。第2縦壁部26の長手方向に沿った一方の側の縦壁本体42の端部には線長差吸収部又は第2線長差吸収部としての曲げ部44が形成されている。曲げ部44は縦壁本体42の端部から頭壁部12の幅方向内方側へ向けて屈曲されることで形成されている。曲げ部44と縦壁本体42との境界である折れ線部は直線状とされている。しかも、曲げ部44と縦壁本体42との間の折れ線部は第2縦壁部26の幅方向に対して第2縦壁部26の長手方向に傾斜しており、この折れ線部の第2フランジ部28側の端部は頭壁部12側の端部よりも第2縦壁部26の長手方向一端側に位置している。
【0051】
このため、第2縦壁部26の長手方向に対して第2縦壁部26の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部44の外面が向いている。さらに、曲げ部44は第2フランジ部28の側の端部で最も頭壁部12の幅方向内方側へ突出しており、頭壁部12の側へ向けて縦壁本体42からの突出寸法が短くなる。特に、本実施の形態では、曲げ部44の頭壁部12側の端部は縦壁本体42から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部44の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部44の形状)は、頭壁部12の側が頂部となる三角形状となっている。
【0052】
一方、第2縦壁部26の長手方向に沿った他方の側の縦壁本体42の端部には線長差吸収部又は第2線長差吸収部としての曲げ部46が形成されている。曲げ部44と同様に曲げ部46は縦壁本体42の端部から頭壁部12の幅方向内方側へ向けて屈曲されることで形成されている。また、曲げ部44における折れ線部と同様に曲げ部46と縦壁本体42との境界である折れ線部は直線状で、しかも、第2縦壁部26の幅方向に対して第2縦壁部26の長手方向に傾斜している。しかしながら、曲げ部44における折れ線部とは異なり曲げ部46と縦壁本体42との境界である折れ線部は第2フランジ部28側の端部が頭壁部12側の端部よりも第2縦壁部26の長手方向他端側に位置している。
【0053】
このため、第2縦壁部26の長手方向に対して第2縦壁部26の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部46の外面が向いている。さらに、曲げ部44と同様に曲げ部46は第2フランジ部28の側の端部で最も頭壁部12の幅方向外方側へ突出しており、第2フランジ部28の側へ向けて縦壁本体42からの突出寸法が短くなる。特に、本実施の形態では、曲げ部46の第2フランジ部28側の端部は縦壁本体42から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部46の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部46の形状)は、第2フランジ部28の側が頂部となる三角形状となっており、特に、本実施の形態では、正面視での曲げ部46の形状は正面視での曲げ部44の形状と略同じになるように縦壁本体42からの曲げ部46の突出寸法等が設定されている。
【0054】
さらに、図1に示されるように、頭壁部12の幅方向に沿って曲げ部44と曲げ部34とが対応し、曲げ部46と曲げ部36とが対応するように形成され、このため、曲げ部44の第2フランジ部28側の端部は頭壁部12の長手方向に沿って曲げ部34の頭壁部12側の端部と曲げ部36の頭壁部12側の端部との間に位置し、曲げ部46の第2フランジ部28側の端部は頭壁部12の長手方向に沿って曲げ部34の頭壁部12側の端部と曲げ部36の頭壁部12側の端部との間に位置する。
【0055】
なお、補足すると、本実施の形態では、上記のように頭壁部12の幅方向に沿って曲げ部44と曲げ部34とが対応し、曲げ部46と曲げ部36とが対応するように形成され、曲げ部34、36、44、46が形成されているが、必ずしも、頭壁部12の幅方向に沿って曲げ部44と曲げ部34とが対応し、曲げ部46と曲げ部36とが対応しなくてもよい。但し、このような対応がとれていなくても、曲げ部44、46の各々の第2フランジ部28側の端部が曲げ部34の頭壁部12側の端部と曲げ部36の頭壁部12側の端部との間に位置するように曲げ部34、36、44、46の形成位置を設定することが好ましい。
【0056】
また、図1及び図4に示されるように、曲げ部44の縦壁本体42とは反対側の端部と曲げ部46の縦壁本体42とは反対側の端部との間は段差部48とされており、曲げ部44及び曲げ部46の各々の縦壁本体42とは反対側の端部は段差部48で繋がっている。ここで、図8には、図6の一点鎖線の円Bにおける第2縦壁部26と頭壁部12との境界部分の拡大端面図が示されている。この図に示されるように、縦壁本体42からの曲げ部44の最大突出寸法L3は、縦壁本体42の厚さ寸法D4よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L3が厚さ寸法D4の半分以下とされている。このため、曲げ部44が形成された部分での第2縦壁部26の厚さ寸法D5は、縦壁本体42や段差部48の部分における第2縦壁部26の厚さ寸法D4の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D5が厚さ寸法D4の1.5倍以下とされている。
【0057】
また、縦壁本体42からの曲げ部46の最大突出寸法L4は、縦壁本体42の厚さ寸法D4よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L4が厚さ寸法D4の半分以下とされている。このため、曲げ部46が形成された部分での第2縦壁部26の厚さ寸法D6は、縦壁本体42や段差部48の部分における第2縦壁部26の厚さ寸法D4の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D6が厚さ寸法D4の1.5倍以下とされている。このため、第2縦壁部26の厚さ方向に沿って、頭壁部12の幅方向内側を向く曲げ部44、46の面(図8における曲げ部44、36の左側の面)は、頭壁部12の幅方向外側を向く縦壁本体42の面(図8における縦壁本体42の右側の面)よりも頭壁部12の幅方向内方側に位置している。これにより、縦壁本体42の厚さ方向中心線C3と段差部48の厚さ方向中心線C4との間で第2縦壁部26の長手方向に沿って第2縦壁部26が途切れることなく連続する。
【0058】
さらに、本実施の形態は、上記のように、平板を絞り成形(プレス成形)することでルーフサイドレールアウタリインフォース10を形成するが、第2縦壁部26に曲げ部44、46及び段差部48を形成しない構成を平板から絞り成形(プレス成形)した際に成形の前後で第2縦壁部26の頭壁部12との境界部分で線長差Sが生じる。ここで、本実施の形態では、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部44の数N3、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部46の数N4、縦壁本体42からの曲げ部44の突出寸法L3、縦壁本体42からの曲げ部46の突出寸法L4、そして、上記の線長差Sの関係は、次の式(3)となるように設定される。
【0059】
S=(N3・L3)+(N4・L4)・・・(3)
特に、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部44の数N3と曲げ部46の数N4とが等しく、しかも、縦壁本体42からの曲げ部44の突出寸法L3と縦壁本体42からの曲げ部46の突出寸法L4とが等しいのであれば、上記の式(3)は以下の式(4)のような関係になる。
【0060】
S=N・L・・・(4)
但し、N=N3+N4で、しかも、L=L3=L4
さらに、図1及び図4に示されるように、第2縦壁部26に上記の曲げ部44、46及び段差部48を形成することで第2フランジ部28の第2縦壁部26の側の端部には突出部50が形成されている。突出部50は、突出部50が形成されていない部位における第2フランジ部28の第2縦壁部26側の端部よりも更に頭壁部12の幅方向内方へ突出しており、第2フランジ部28に突出部50が形成されていることで第2縦壁部26の曲げ部44、46及び段差部48が第2フランジ部28に直接繋がっている。
【0061】
<本実施の形態の作用、効果>
以上の構成のルーフサイドレールアウタリインフォース10は、上記のように平板を絞り成形(プレス成形)することで形成される。一般的にこのようなプレス成形は2段階に分けられ、1度目のプレスで平板を断面ハット形状に成形し、更に、2度目のプレスで高い寸法精度でルーフサイドレールアウタリインフォース10が成形される。ここで、ルーフサイドレールアウタリインフォース10を成形する際には、1度目のプレスで曲げ部34、36、44、46、及び段差部38、48が形成される。
【0062】
ところで、例えば、曲げ部34、36、44、46、及び段差部38、48を有しない断面ハット形状の成形品、すなわち、第1縦壁部22が縦壁本体32のみで構成され、第2縦壁部26が縦壁本体42のみで構成された成形品で、しかも、ルーフサイドレールアウタリインフォース10と同様に、頭壁部(本ルーフサイドレールアウタリインフォース10を構成する頭壁部12に相当する部位)の幅方向一方の側を曲率の中心として湾曲した成形品は、成形の前後で頭壁部の長手方向に沿った線長差が生じ、この線長差に起因して、頭壁部の幅方向一方の側(曲率の中心側)では頭壁部の長手方向に沿った引っ張り応力が発生し、頭壁部の幅方向他方の側(曲率の中心とは反対側)では頭壁部の長手方向に沿った圧縮応力が発生する。
【0063】
ここで、本実施の形態に係るルーフサイドレールアウタリインフォース10では、第1縦壁部22に曲げ部34、36が形成される。このため、頭壁部12の幅方向に沿った第1縦壁部22の側での線長差、すなわち、成形前後の線長の過不足が縦壁本体32からの各曲げ部34、36の突出寸法の総和で相殺される。これにより、上記の線長差に起因した第1縦壁部22の側での引っ張り応力の発生が防止又は効果的に抑制される。また、第2縦壁部26に曲げ部44、46が形成されることで、頭壁部12の幅方向第2縦壁部26の側での線長差、すなわち、成形前後の線長の過不足が縦壁本体42からの各曲げ部44、46の突出寸法の総和で相殺われる。これにより、上記の線長差に起因した第2縦壁部26の側での引っ張り応力の発生が防止又は効果的に抑制される。
【0064】
以上のように、第1縦壁部22の側での引っ張り応力、第2縦壁部26の側での圧縮応力の発生が防止又は効果的に抑制されることで、このような引っ張り応力及び圧縮応力に起因した頭壁部12の長手方向を軸方向とするルーフサイドレールアウタリインフォース10全体の「ひねり」等の不要な変形の発生を防止又は極めて効果的に抑制できる。
【0065】
また、上記のような線長差の大きさは予め把握できるものの、これまでは、ひねり等の不要な変形が解消されるまで、幾度となくプレス金型の設計変更を行なわなければならなかった。これに対し、本実施の形態では、縦壁本体32からの曲げ部34、36の最大突出寸法と曲げ部34、36及び段差部38の組数、縦壁本体42からの曲げ部44、46の最大突出寸法と曲げ部44、46及び段差部48の組数とで、どの程度の大きさの線長差を相殺(吸収)できるか極めて容易に把握できるので、プレス金型の設計変更の回数を大幅に低減でき、開発コストの大幅な軽減、ひいては、製品コストの大幅な軽減に大きく寄与する。
【0066】
さらに、本実施の形態では、曲げ部34、36及び段差部38や曲げ部44、46及び段差部48を形成することで、頭壁部12の幅方向に沿った段差が第1縦壁部22や第2縦壁部26に生ずるが、上記のように、縦壁本体32の厚さ方向中心線C1と段差部38の厚さ方向中心線C2との間で第1縦壁部22の長手方向に沿って第1縦壁部22が途切れることなく連続し、縦壁本体42の厚さ方向中心線C3と段差部48の厚さ方向中心線C4との間で第2縦壁部26の長手方向に沿って第2縦壁部26が途切れることなく連続する。
【0067】
このため、曲げ部34、36及び段差部38や曲げ部44、46及び段差部48を形成しても、ルーフサイドレールアウタリインフォース10の長手方向に沿ったルーフサイドレールアウタリインフォース10の機械的強度や剛性を確保でき、また、略車両前方側及び後方側の何れか一方の側からルーフサイドレールアウタリインフォース10に入力された荷重を、略車両前方側及び後方側の何れか他方の側におけるルーフサイドレールアウタリインフォース10の端部まで伝えることができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、曲げ部34、36は第1縦壁部22の幅方向に対して第1縦壁部22の長手方向に傾き、また、曲げ部44、46は第2縦壁部26の幅方向に対して第2縦壁部26の長手方向に傾いた構成であった。しかしながら、例えば、図9及び図10に示されるように、曲げ部34、36が第1縦壁部22の幅方向に沿い、曲げ部44、46が第2縦壁部26の幅方向に沿うような構成としてもよい。このような構成とした場合にも、曲げ部44、46の各々が曲げ部34と曲げ部36との間に位置するように曲げ部34、36、44、46の形成位置を設定することが好ましい。
【0069】
さらに、本実施の形態では、縦壁本体32、曲げ部34、段差部38、曲げ部36により第1縦壁部22を構成し、縦壁本体42、曲げ部44、段差部48、曲げ部46により第2縦壁部26を構成したが、第1縦壁部22は縦壁本体32及び段差部38の少なくとも何れか一方を備えていなくてもよく、また、第2縦壁部26は縦壁本体42及び段差部48の少なくとも何れか一方を備えていなくてもよい。その一例を図11及び図12に示す。
【0070】
これらの図に示される構成は、第1縦壁部22の頭壁部12の側の端部を波状とし、第2縦壁部26の第2フランジ部28の側の端部を波状としている。この結果、第1縦壁部22は曲げ部34と曲げ部36とで構成され、第2縦壁部26は曲げ部44と曲げ部46とで構成されている。このような構成では、縦壁本体32、42や段差部38、48を有する構成に比べて曲げ部34、36の組数及び曲げ部44、46の組数を多く設定できる。このため、頭壁部12の幅方向に沿った曲げ部34、36、44、46の突出寸法を比較的小さくしても、大きな線長差を相殺(吸収)できる。
【0071】
また、本実施の形態は、ルーフサイドレールアウタリインフォース10に本発明を適用した構成であったが、ルーフサイドレールアウタリインフォース10以外の車体の骨格部材や補強部材等の他の車体構造材(車体構造材用成形品)に本発明を適用してもよい。
【0072】
さらに、本実施の形態は、ルーフサイドレールアウタリインフォース10の断面形状が略ハット形状であったが、本発明を適用できる断面形状が厳格なハット形状に限定されるものではない。すなわち、基本的には、上記のような成形前後で線長差が生じるような形状であれば、本発明を適用することで線長差を相殺(吸収)でき、上述した本実施の形態の効果や線長差を相殺(吸収)できることに伴う様々な効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、ルーフサイドレールアウタリインフォース10を構成する材質に関して特に限定されておらず、上記のように、鋼板、又は、一般的な鋼板よりも引っ張り強度が高い高抗張力鋼板、或いは、このような高抗張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い超高抗張力鋼板から成る平板をルーフサイドレールアウタリインフォース10の材料とした。但し、本実施の形態特有の構成、ひいては、本発明特有の構成は、材料の引っ張り強度が高い材質ほど高い効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の要部の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の要部を湾曲の曲率中心の側から見た概略な斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の要部を湾曲の曲率中心とは反対側から見た概略な斜視図である。
【図5】図1の5−5線に沿って切った断面図である。
【図6】図1の6−6線に沿って切った断面図である。
【図7】図5の一点鎖線の円Aの部分を7−7線に沿って切った概略的な拡大端面図である。
【図8】図6の一点鎖線の円Bの部分を8−8線に沿って切った概略的な拡大端面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の変形例を示す図3に対応した斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の変形例を示す図4に対応した斜視図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の別の変形例を示す図3に対応した斜視図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の別の変形例を示す図4に対応した斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
10 ルーフサイドレールアウタリインフォース(車体構造材用成形品)
12 頭壁部(第1壁部)
22 第1縦壁部(第2壁部、縦壁部)
24 第1フランジ部(第3壁部、フランジ部)
26 第2縦壁部(第2壁部、縦壁部)
28 第2フランジ部(第3壁部、フランジ部)
34 曲げ部(線長差吸収部、第1線長差吸収部)
36 曲げ部(線長差吸収部、第1線長差吸収部)
44 曲げ部(線長差吸収部、第2線長差吸収部)
46 曲げ部(線長差吸収部、第2線長差吸収部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を構成する車体構造材用成形品に係り、特に、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い所謂高張力鋼板や、このような高張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い所謂超高張力鋼板により成形された車体構造材用成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
車体のルーフサイドに沿って設けられたルーフサイドレールアウタリインフォース、センターピラーに沿って設けられたセンターピラーアッパリインフォースやセンターピラーロアリインフォース等の車体構造材は、車幅方向一方の側へ向けて開口した断面ハット形状に形成されたものが用いられることがある。さらに、このような構成の車体構造材は、平板状の鋼板を絞り成形(プレス成形)することで形成されている(その一例としては、下記特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2006−281312の公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、このような車体構造材には、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い所謂「高張力鋼板」が適用されるようになっており、更には、このような高張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い所謂「超高張力鋼板」の適用も考えられている。
【0004】
一方で、上記のルーフサイドは、車両の前後方向中間部よりも前方側が下方へ向けて湾曲する形状が多い。このような形状に沿うように断面ハット形状のルーフサイドレールアウタリインフォースを形成した場合、頭壁部(上記特許文献1で言うところのハット頭部)の幅方向一方の側に曲率の中心が位置するように全体的に湾曲した形状となる。
【0005】
平板状の鋼板を絞り成形(プレス成形)によってこのような形状に成形すると、頭壁部の幅方向端部から連続して形成された縦壁部には成形の前後で頭壁部の長手方向に沿った線長差が生じる。このような線長差に起因して、頭壁部の幅方向一方の側(湾曲の曲率中心の側)では縦壁部において頭壁の長手方向に沿った引っ張り応力が生じ、これとは反対に、頭壁部の幅方向他方の側(湾曲の曲率中心とは反対側)では縦壁部において頭壁の長手方向に沿った圧縮応力が生じる。このような応力が縦壁部に生じることで、頭壁部の長手方向を軸方向とする軸周りに縦壁部が傾くような「ひねり」が成形後に生じる。
【0006】
このような「ひねり」の発生は、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い高張力鋼板を用いることで顕著に生じ、高張力鋼板よりも引っ張り強度が高い超高張力鋼板を用いると更に顕著になって、所望の形状を得ることが難しい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、成形前後の線長差に起因した応力の発生による不要な変形が生じないか、又は、このような不要な変形が少ない車体構造材用成形品を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、幅方向両端部のうち少なくとも何れか一方の端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の第1壁部と、前記第1壁部の前記幅方向両端部のうち、少なくとも何れかの一方で且つ前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった側の端部から前記第1壁部の厚さ方向一方側へ向けて延び、しかも、前記第1壁部の前記幅方向端部に倣って曲がるように成形された第2壁部と、前記第2壁部の前記第1壁部とは反対側の端部から前記第1壁部の幅方向外方側へ向けて延びるように形成された板状の第3壁部と、前記第2壁部の一部を前記第2壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2壁部に形成された線長差吸収部と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、板状の第1壁部の幅方向両端部のうち少なくとも一方の側の端部から第1壁部の厚さ方向一方の側へ延びるように第2壁部が形成され、更に、この第2壁部の第1壁部とは反対側の端部からは、第1壁部の幅方向外方側(更に詳細に言えば、第2壁部が形成された側の第1壁部の幅方向端部よりも第1壁部の幅方向外方)へ延びるように第3壁部が形成される。
【0010】
さらに、第2壁部が連続する第1壁部の幅方方向端部は、第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がっており、第2壁部はこの第1壁部の幅方向端部に倣うように曲がっている。
【0011】
ここで、本発明に係る車体構造材用成形品では第2壁部に線長差吸収部が形成される。この線長差吸収部は、第2壁部の一部を第2壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで形成される。このような線長吸収部が第2壁部に形成されることで、第1壁部、第2壁部、及び第3壁部の成形の前後、すなわち、本車体構造材用成形品の成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部に生じる線長差が線長差吸収部で吸収される。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又は効果的に抑制される。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、請求項1に記載の本発明において、前記第1壁部の幅方向両端から前記第1壁部の厚さ方向一方の側へそれぞれが延びるように形成されると共に、前記第1壁部とは反対側の端部から、前記第1壁部の幅方向外方側へ延びるようにフランジ部が形成された縦壁部を備え、前記一対の縦壁部の少なくとも何れか一方を前記第2壁部とし、前記第2壁部とされた前記縦壁部から延出された前記フランジ部を前記第3壁部とした、ことを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向両端からは第1壁部の厚さ方向一方の側へ向けて縦壁部がそれぞれ延出され、更に、これらの縦壁部の第1壁部とは反対側の端部から、1壁部の幅方向外方へ向けてフランジ部が延出される。すなわち、本発明に係る車体構造材用成形品は、第1縦壁部の幅方向に沿って切った全体的な断面形状が所謂ハット形状に形成される。
【0014】
さらに、本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向端部(すなわち、少なくとも幅方向の何れか一方の側の端部)が幅方向一方の側を曲率の中心として曲がっている。したがって、この曲がった方の端部に対応した縦壁は、第2壁部とされて第1壁部の幅方向端部に倣うように曲がり、この第2壁部とされた縦壁部に形成されたフランジ部が第3壁部とされる。
【0015】
すなわち、本発明に係る車体構造材用成形品は、断面ハット形状で、しかも、両縦壁部の少なくとも一方が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった形状に成形される。しかしながら、本発明に係る車体構造材用成形品は第2壁部とされた縦壁部には、線長差吸収部が形成される。このため、断面ハット形状で且つ両縦壁部の少なくとも一方が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった形状に成形されても、成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部とされた縦壁部に生じる線長差が線長差吸収部で吸収され、れる。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又は効果的に抑制される。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記第1壁部の幅方向一方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第3壁部側よりも前記第1壁部側で大きく設定した、ことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向一方の側の端部が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、この第1壁部の幅方向一方の側の端部から延びるように形成された第2壁部が、第1壁部の幅方向一方の側の端部に倣うように曲がっている。
【0018】
ここで、このように曲がった本車体構造材用成形品では、第2壁部に線長吸収部が形成されるが、第2壁部の厚さ方向に沿った線長差吸収部の変形量が第2壁部の第3壁部側よりも第1壁部側で大きくなる。このため、成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部に生じる線長差が線長差吸収部で効果的に吸収される。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又はより効果的に抑制される。
【0019】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記第1壁部の幅方向他方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第1壁部側よりも前記第3壁部側で大きく設定した、ことを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、第1壁部の幅方向他方の側の端部(すなわち、第1壁部の幅方向両端部のうち曲率の中心とは反対側の端部)が第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、この第1壁部の幅方向他方の側の端部から延びるように形成された第2壁部が、第1壁部の幅方向他方の側の端部に倣うように曲がっている。
【0021】
ここで、このように曲がった本車体構造材用成形品では、第2壁部に線長吸収部が形成されるが、第2壁部の厚さ方向に沿った線長差吸収部の変形量が第2壁部の第1壁部側よりも第3壁部側で大きくなる。このため、成形の前後で第1壁部の長手方向に沿って第2壁部に生じる線長差が線長差吸収部で効果的に吸収される。これにより、上記の線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が防止又はより効果的に抑制される。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、幅方向端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の頭壁部と、前記頭壁部の幅方向一方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向一方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第1縦壁部と、前記第1縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第1フランジ部と、前記頭壁部の幅方向他方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向他方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第2縦壁部と、前記第2縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第2フランジ部と、前記第1縦壁部の一部を前記第1縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第1縦壁部に形成されると共に、変形量が前記第1フランジ部側よりも前記頭壁部側で大きくなる第1線長差吸収部と、前記第2縦壁部の一部を前記第2縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2縦壁部に形成されると共に、変形量が前記頭壁部側よりも前記第2フランジ部側で大きくなる第2線長差吸収部と、を備えている。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係る車体構造材用成形品では、板状の頭壁部の幅方向一方の側の端部からは頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて第1縦壁部が延びるように形成され、頭壁部の幅方向他方の側の端部からは頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて第2縦壁部が延びるように形成される。さらに、第1縦壁部の頭壁部とは反対側の端部からは頭壁部の幅方向外方側へ向けて第1フランジ部が延びるように形成され、第2縦壁部の頭壁部とは反対側の端部からは頭壁部の幅方向外方側へ向けて第2フランジ部が延びるように形成される。すなわち、本発明に係る車体構造材用成形品は、頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて開口した断面ハット形状に成形される。このような断面ハット形状の車体構造材用成形品は、第1縦壁部、第1フランジ部、及び、第2縦壁部、第2フランジ部の何れか一方の側だけが形成されている構造に比べて剛性が高い。
【0024】
ところで、本発明に係る車体構造材用成形品では、第1縦壁部が形成された側の頭壁部の幅方向端部は、頭壁部の幅方向一方の側(すなわち、第1縦壁部が形成された方の側)を曲率中心として湾曲しており、しかも、第1縦壁部は、この頭壁部の幅方向一方の側の端部に沿って頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲している。
【0025】
ここで、第1縦壁部には第1縦壁部の一部を第1縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで第1線長差吸収部が形成される。しかも、この第1線長差吸収部は、第1フランジ部の側に比べて頭壁部の側で変形量が大きい。このため、頭壁部の幅方向一方の側の端部に形成されて、しかも、頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲した第1縦壁部において、本車体構造材用成形品の成形の前後で生じる線長差が第1線長差吸収部で効果的に吸収される。
【0026】
一方、第2縦壁部が形成された側の頭壁部の幅方向端部もまた、頭壁部の幅方向一方の側(すなわち、第1縦壁部が形成された方の側)を曲率中心として湾曲しており、しかも、第2縦壁部は、この頭壁部の幅方向他方の側の端部に沿って頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲している。
【0027】
ここで、第2縦壁部には第2縦壁部の一部を第2縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで第2線長差吸収部が形成される。しかも、この第2線長差吸収部は、頭壁部の側に比べて第2フランジ部の側で変形量が大きい。このため、頭壁部の幅方向他方の側の端部に形成されて、しかも、頭壁部の幅方向一方の側を曲率中心として湾曲した第2縦壁部において、本車体構造材用成形品の成形の前後で生じる線長差が第2線長差吸収部で効果的に吸収される
このように、本発明に係る車体構造材用成形品では、第1縦壁部及び第2縦壁部の双方の側において成形の前後で線長差が生じないか、このような線長差を極めて効果的に抑制でき、このような線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形を防止又は極めて効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、線長差吸収部で成形前後に生じる線長差が吸収されるため、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が生じないか、又は、このような変形を効果的に小さくできる。
【0029】
請求項2に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、断面ハット形状で、しかも、第1壁部の幅方向に沿った少なくとも一方の側の縦壁部が第1壁部の幅方向の一方の側を曲率の中心とするように曲がった形状に成形されるが線長差吸収部で成形前後に生じる線長差が吸収されるため、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が生じないか、又は、このような不要な変形を効果的に小さくできる。
【0030】
請求項3に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、第1壁部の幅方向両端部のうち曲率中心側に位置する端部に沿った第2壁部において成形前後で生じる線長さを線長差吸収部で効果的に吸収でき、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形をなくすことができ、又は、このような不要な変形をより効果的に小さくできる。
【0031】
請求項4に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、第1壁部の幅方向両端部のうち曲率中心とは反対側に位置する端部に沿った第2壁部において成形前後で生じる線長さを線長差吸収部で効果的に吸収でき、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形をなくすことができ、又は、このような不要な変形をより効果的に小さくできる。
【0032】
請求項5に記載の本発明に係る車体構造材用成形品は、断面ハット形状で、しかも、頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として第1縦壁部や第2縦壁部が湾曲した形状に成形されるにも関わらず、線長差に起因した応力差の発生等による不要な変形が生じないか、又は、このような変形を効果的に小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
<本実施の形態の構成>
(ルーフサイドレールアウタリインフォース10の基本構成)
図2には本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品としてのルーフサイドレールアウタリインフォース10の構成が斜視図によって示されている。また、図3及び図4の各々にはルーフサイドレールアウタリインフォース10の要部の構成が概略的な斜視図によって示されている。実際のルーフサイドレールアウタリインフォース10は図2に示されるような形状であるが、本実施の形態の要点を理解しやすくするために、図3及び図4を主に用いて説明する。
【0034】
これらの図に示されるように、ルーフサイドレールアウタリインフォース10は第1壁部としての頭壁部12を備えている。頭壁部12は、長手方向が概ね略車両前後方向に沿い、厚さ方向が略車両左右方向(略車幅方向)に沿った板状に形成されている。また、頭壁部12は車両のルーフサイドの形状に倣ってその幅方向一方の側である略車両下方側を曲率の中心として全体的に湾曲した形状となっている。
【0035】
図2に示されるように、頭壁部12の長手方向両端部のうち、略車両前方側に位置する側の端部からは連続して傾斜部14が形成されている。傾斜部14は頭壁部12の側に対して頭壁部12とは反対側が略車幅方向外方側に位置するように傾いていると共に、頭壁部12の側よりも頭壁部12とは反対側が漸次拡幅されている。傾斜部14の頭壁部12とは反対側の端部からは連続して固定部16が形成されている。この固定部16はフロントピラーの上端やその近傍の車体の骨格部材や補強部材等に固定される。
【0036】
これに対し、頭壁部12の長手方向両端部のうち、略車両後方側に位置する側の端部からは連続して傾斜部18が形成されている。傾斜部18は頭壁部12の側に対して頭壁部12とは反対側が略車幅方向外方側に位置するように傾いていると共に、頭壁部12の側よりも頭壁部12とは反対側が漸次拡幅されている。傾斜部18の頭壁部12とは反対側の端部からは連続して固定部20が形成されている。この固定部20はセンターピラーの上端やその近傍の車体の骨格部材や補強部材等に固定される。
【0037】
一方、図2及び図3に示されるように、頭壁部12の幅方向一方の側の端部(すなわち、略車両下方側の頭壁部12の幅方向端部で、頭壁部12の幅方向両端部のうち上記の曲率の中心側の端部)からは連続して第2壁部又は縦壁部としての第1縦壁部22が形成されている。第1縦壁部22は長手方向が頭壁部12の幅方向一方の側の端部に沿い、幅方向が略車幅方向外方側(更に言えば、略車幅方向外方に対して略車両下方へ傾斜した向き)に沿った板状に形成されている。この第1縦壁部22の幅方向に沿った頭壁部12とは反対側の端部からは第3壁部又はフランジ部としての第1フランジ部24が連続して形成されている。第1フランジ部24は厚さ方向が概ね頭壁部12の厚さ方向に沿った板状に形成されており、第1縦壁部22の幅方向端部から頭壁部12の幅方向外方へ向けて延出されている。
【0038】
これに対し、図2及び図4に示されるように、頭壁部12の幅方向他方の側の端部(すなわち、略車両上方側の頭壁部12の幅方向端部で、頭壁部12の幅方向両端部のうち上記の曲率の中心とは反対側の端部)からは連続して第2壁部又は縦壁部としての第2縦壁部26が形成されている。第2縦壁部26は長手方向が頭壁部12の幅方向他方の側の端部に沿い、幅方向が略車幅方向外方側(更に言えば、略車幅方向外方に対して略車両上方へ傾斜した向き)に沿った板状に形成されている。この第2縦壁部26の幅方向に沿った頭壁部12とは反対側の端部からは第3壁部又はフランジ部としての第2フランジ部28が連続して形成されている。第2フランジ部28は厚さ方向が概ね頭壁部12の厚さ方向に沿った板状に形成されており、第2縦壁部26の幅方向端部から頭壁部12の幅方向外方へ向けて延出されている。
【0039】
以上のような構成であるため、図5、図6に示されるように、ルーフサイドレールアウタリインフォース10は頭壁部12の長手方向に対して直交する向きに切った断面形状が略ハット形状とされており、基本的には、鋼板、又は、一般的な鋼板よりも引っ張り強度が高い高抗張力鋼板、或いは、このような高抗張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い超高抗張力鋼板から成る平板を、絞り成形(プレス成形)することにより形成されている。
【0040】
(第1縦壁部22、第2縦壁部26の詳細)
次に、第1縦壁部22及び第2縦壁部26に関して更に詳細に説明する。図1、更に詳細には図3に示されるように、第1縦壁部22は縦壁本体32を備えている。第1縦壁部22の長手方向に沿った一方の側の縦壁本体32の端部には線長差吸収部又は第1線長差吸収部としての曲げ部34が形成されている。曲げ部34は縦壁本体32の端部から頭壁部12の幅方向外方側へ向けて屈曲されることで形成されている。曲げ部34と縦壁本体32との境界である折れ線部は直線状とされている。しかも、曲げ部34と縦壁本体32との間の折れ線部は第1縦壁部22の幅方向に対して第1縦壁部22の長手方向に傾斜しており、この折れ線部の第1フランジ部24側の端部は頭壁部12側の端部よりも第1縦壁部22の長手方向一端側に位置している。
【0041】
このため、第1縦壁部22の長手方向に対して第1縦壁部22の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部34の外面が向いている。さらに、曲げ部34は頭壁部12の側の端部で最も頭壁部12の幅方向外方側へ突出しており、第1フランジ部24の側へ向けて縦壁本体32からの突出寸法が短くなる。特に、本実施の形態では、曲げ部34の第1フランジ部24側の端部は縦壁本体32から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部34の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部34の形状)は、第1フランジ部24の側が頂部となる三角形状となっている。
【0042】
一方、第1縦壁部22の長手方向に沿った他方の側の縦壁本体32の端部には線長差吸収部又は第1線長差吸収部としての曲げ部36が形成されている。曲げ部34と同様に曲げ部36は縦壁本体32の端部から頭壁部12の幅方向外方側へ向けて屈曲されることで形成されている。また、曲げ部34における折れ線部と同様に曲げ部36と縦壁本体32との境界である折れ線部は直線状で、しかも、第1縦壁部22の幅方向に対して第1縦壁部22の長手方向に傾斜している。
【0043】
しかしながら、曲げ部34における折れ線部とは異なり曲げ部36と縦壁本体32との境界である折れ線部は第1フランジ部24側の端部が頭壁部12側の端部よりも第1縦壁部22の長手方向他端側に位置している。このため、第1縦壁部22の長手方向に対して第1縦壁部22の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部36の外面が向いている。さらに、曲げ部34と同様に曲げ部36は頭壁部12の側の端部で最も頭壁部12の幅方向外方側へ突出しており、第1フランジ部24の側へ向けて縦壁本体32からの突出寸法が短くなる。
【0044】
特に、本実施の形態では、曲げ部36の第1フランジ部24側の端部は縦壁本体32から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部36の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部36の形状)は、第1フランジ部24の側が頂部となる三角形状となっており、特に、本実施の形態では、正面視での曲げ部36の形状は正面視での曲げ部34の形状と略同じになるように縦壁本体32からの曲げ部36の突出寸法等が設定されている。
【0045】
曲げ部34の縦壁本体32とは反対側の端部と曲げ部36の縦壁本体32とは反対側の端部との間は段差部38とされており、曲げ部34及び曲げ部36の各々の縦壁本体32とは反対側の端部は段差部38で繋がっている。ここで、図7には、図5の一点鎖線の円Aにおける第1縦壁部22と頭壁部12との境界部分の拡大端面図が示されている。この図に示されるように、縦壁本体32からの曲げ部34の最大突出寸法L1は、縦壁本体32の厚さ寸法D1よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L1が厚さ寸法D1の半分以下とされている。このため、曲げ部34が形成された部分での第1縦壁部22の厚さ寸法D2は、縦壁本体32や段差部38の部分における第1縦壁部22の厚さ寸法D1の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D2が厚さ寸法D1の1.5倍以下とされている。
【0046】
また、縦壁本体32からの曲げ部36の最大突出寸法L2は、縦壁本体32の厚さ寸法D1よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L2が厚さ寸法D1の半分以下とされている。このため、曲げ部36が形成された部分での第1縦壁部22の厚さ寸法D3は、縦壁本体32や段差部38の部分における第1縦壁部22の厚さ寸法D1の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D3が厚さ寸法D1の1.5倍以下とされている。このため、第1縦壁部22の厚さ方向に沿って、頭壁部12の幅方向内側を向く曲げ部34、36の面(図7における曲げ部34、36の左側の面)は、頭壁部12の幅方向外側を向く縦壁本体32の面(図7における縦壁本体32の右側の面)よりも頭壁部12の幅方向内方側に位置している。これにより、縦壁本体32の厚さ方向中心線C1と段差部38の厚さ方向中心線C2との間で第1縦壁部22の長手方向に沿って第1縦壁部22が途切れることなく連続する。
【0047】
さらに、本実施の形態は、上記のように、平板を絞り成形(プレス成形)することでルーフサイドレールアウタリインフォース10を形成するが、第1縦壁部22に曲げ部34、36及び段差部38を形成しない構成を平板から絞り成形(プレス成形)した際に成形の前後で第1縦壁部22の頭壁部12との境界部分で線長差Sが生じる。ここで、本実施の形態では、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部34の数N1、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部36の数N2、縦壁本体32からの曲げ部34の突出寸法L1、縦壁本体32からの曲げ部36の突出寸法L2、そして、上記の線長差Sの関係は、次の式(1)となるように設定される。
【0048】
S=(N1・L1)+(N2・L2)・・・(1)
特に、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部34の数N1と曲げ部36の数N2とが等しく、しかも、縦壁本体32からの曲げ部34の突出寸法L1と縦壁本体32からの曲げ部36の突出寸法L2とが等しいのであれば、上記の式(1)は以下の式(2)のような関係になる。
【0049】
S=N・L・・・(2)
但し、N=N1+N2で、しかも、L=L1=L2
さらに、図1及び図3に示されるように、第1縦壁部22に上記の曲げ部34、36及び段差部38を形成することで頭壁部12の第1縦壁部22の側の端部には突出部40が形成されている。突出部40は、突出部40が形成されていない部位における頭壁部12の第1縦壁部22側の端部よりも更に頭壁部12の幅方向外方へ突出しており、頭壁部12に突出部40が形成されていることで第1縦壁部22の曲げ部34、36及び段差部38が頭壁部12に直接繋がっている。
【0050】
一方、図1、更に詳細には図4に示されるように、第2縦壁部26は縦壁本体42を備えている。第2縦壁部26の長手方向に沿った一方の側の縦壁本体42の端部には線長差吸収部又は第2線長差吸収部としての曲げ部44が形成されている。曲げ部44は縦壁本体42の端部から頭壁部12の幅方向内方側へ向けて屈曲されることで形成されている。曲げ部44と縦壁本体42との境界である折れ線部は直線状とされている。しかも、曲げ部44と縦壁本体42との間の折れ線部は第2縦壁部26の幅方向に対して第2縦壁部26の長手方向に傾斜しており、この折れ線部の第2フランジ部28側の端部は頭壁部12側の端部よりも第2縦壁部26の長手方向一端側に位置している。
【0051】
このため、第2縦壁部26の長手方向に対して第2縦壁部26の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部44の外面が向いている。さらに、曲げ部44は第2フランジ部28の側の端部で最も頭壁部12の幅方向内方側へ突出しており、頭壁部12の側へ向けて縦壁本体42からの突出寸法が短くなる。特に、本実施の形態では、曲げ部44の頭壁部12側の端部は縦壁本体42から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部44の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部44の形状)は、頭壁部12の側が頂部となる三角形状となっている。
【0052】
一方、第2縦壁部26の長手方向に沿った他方の側の縦壁本体42の端部には線長差吸収部又は第2線長差吸収部としての曲げ部46が形成されている。曲げ部44と同様に曲げ部46は縦壁本体42の端部から頭壁部12の幅方向内方側へ向けて屈曲されることで形成されている。また、曲げ部44における折れ線部と同様に曲げ部46と縦壁本体42との境界である折れ線部は直線状で、しかも、第2縦壁部26の幅方向に対して第2縦壁部26の長手方向に傾斜している。しかしながら、曲げ部44における折れ線部とは異なり曲げ部46と縦壁本体42との境界である折れ線部は第2フランジ部28側の端部が頭壁部12側の端部よりも第2縦壁部26の長手方向他端側に位置している。
【0053】
このため、第2縦壁部26の長手方向に対して第2縦壁部26の幅方向に沿った頭壁部12の側へ傾斜した向きに曲げ部46の外面が向いている。さらに、曲げ部44と同様に曲げ部46は第2フランジ部28の側の端部で最も頭壁部12の幅方向外方側へ突出しており、第2フランジ部28の側へ向けて縦壁本体42からの突出寸法が短くなる。特に、本実施の形態では、曲げ部46の第2フランジ部28側の端部は縦壁本体42から突出しておらず、このため、正面視での曲げ部46の形状(すなわち、頭壁部12の長手方向に沿ってみた場合の曲げ部46の形状)は、第2フランジ部28の側が頂部となる三角形状となっており、特に、本実施の形態では、正面視での曲げ部46の形状は正面視での曲げ部44の形状と略同じになるように縦壁本体42からの曲げ部46の突出寸法等が設定されている。
【0054】
さらに、図1に示されるように、頭壁部12の幅方向に沿って曲げ部44と曲げ部34とが対応し、曲げ部46と曲げ部36とが対応するように形成され、このため、曲げ部44の第2フランジ部28側の端部は頭壁部12の長手方向に沿って曲げ部34の頭壁部12側の端部と曲げ部36の頭壁部12側の端部との間に位置し、曲げ部46の第2フランジ部28側の端部は頭壁部12の長手方向に沿って曲げ部34の頭壁部12側の端部と曲げ部36の頭壁部12側の端部との間に位置する。
【0055】
なお、補足すると、本実施の形態では、上記のように頭壁部12の幅方向に沿って曲げ部44と曲げ部34とが対応し、曲げ部46と曲げ部36とが対応するように形成され、曲げ部34、36、44、46が形成されているが、必ずしも、頭壁部12の幅方向に沿って曲げ部44と曲げ部34とが対応し、曲げ部46と曲げ部36とが対応しなくてもよい。但し、このような対応がとれていなくても、曲げ部44、46の各々の第2フランジ部28側の端部が曲げ部34の頭壁部12側の端部と曲げ部36の頭壁部12側の端部との間に位置するように曲げ部34、36、44、46の形成位置を設定することが好ましい。
【0056】
また、図1及び図4に示されるように、曲げ部44の縦壁本体42とは反対側の端部と曲げ部46の縦壁本体42とは反対側の端部との間は段差部48とされており、曲げ部44及び曲げ部46の各々の縦壁本体42とは反対側の端部は段差部48で繋がっている。ここで、図8には、図6の一点鎖線の円Bにおける第2縦壁部26と頭壁部12との境界部分の拡大端面図が示されている。この図に示されるように、縦壁本体42からの曲げ部44の最大突出寸法L3は、縦壁本体42の厚さ寸法D4よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L3が厚さ寸法D4の半分以下とされている。このため、曲げ部44が形成された部分での第2縦壁部26の厚さ寸法D5は、縦壁本体42や段差部48の部分における第2縦壁部26の厚さ寸法D4の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D5が厚さ寸法D4の1.5倍以下とされている。
【0057】
また、縦壁本体42からの曲げ部46の最大突出寸法L4は、縦壁本体42の厚さ寸法D4よりも短く、好ましくは、最大突出寸法L4が厚さ寸法D4の半分以下とされている。このため、曲げ部46が形成された部分での第2縦壁部26の厚さ寸法D6は、縦壁本体42や段差部48の部分における第2縦壁部26の厚さ寸法D4の2倍よりも短く、好ましくは、厚さ寸法D6が厚さ寸法D4の1.5倍以下とされている。このため、第2縦壁部26の厚さ方向に沿って、頭壁部12の幅方向内側を向く曲げ部44、46の面(図8における曲げ部44、36の左側の面)は、頭壁部12の幅方向外側を向く縦壁本体42の面(図8における縦壁本体42の右側の面)よりも頭壁部12の幅方向内方側に位置している。これにより、縦壁本体42の厚さ方向中心線C3と段差部48の厚さ方向中心線C4との間で第2縦壁部26の長手方向に沿って第2縦壁部26が途切れることなく連続する。
【0058】
さらに、本実施の形態は、上記のように、平板を絞り成形(プレス成形)することでルーフサイドレールアウタリインフォース10を形成するが、第2縦壁部26に曲げ部44、46及び段差部48を形成しない構成を平板から絞り成形(プレス成形)した際に成形の前後で第2縦壁部26の頭壁部12との境界部分で線長差Sが生じる。ここで、本実施の形態では、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部44の数N3、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部46の数N4、縦壁本体42からの曲げ部44の突出寸法L3、縦壁本体42からの曲げ部46の突出寸法L4、そして、上記の線長差Sの関係は、次の式(3)となるように設定される。
【0059】
S=(N3・L3)+(N4・L4)・・・(3)
特に、ルーフサイドレールアウタリインフォース10における曲げ部44の数N3と曲げ部46の数N4とが等しく、しかも、縦壁本体42からの曲げ部44の突出寸法L3と縦壁本体42からの曲げ部46の突出寸法L4とが等しいのであれば、上記の式(3)は以下の式(4)のような関係になる。
【0060】
S=N・L・・・(4)
但し、N=N3+N4で、しかも、L=L3=L4
さらに、図1及び図4に示されるように、第2縦壁部26に上記の曲げ部44、46及び段差部48を形成することで第2フランジ部28の第2縦壁部26の側の端部には突出部50が形成されている。突出部50は、突出部50が形成されていない部位における第2フランジ部28の第2縦壁部26側の端部よりも更に頭壁部12の幅方向内方へ突出しており、第2フランジ部28に突出部50が形成されていることで第2縦壁部26の曲げ部44、46及び段差部48が第2フランジ部28に直接繋がっている。
【0061】
<本実施の形態の作用、効果>
以上の構成のルーフサイドレールアウタリインフォース10は、上記のように平板を絞り成形(プレス成形)することで形成される。一般的にこのようなプレス成形は2段階に分けられ、1度目のプレスで平板を断面ハット形状に成形し、更に、2度目のプレスで高い寸法精度でルーフサイドレールアウタリインフォース10が成形される。ここで、ルーフサイドレールアウタリインフォース10を成形する際には、1度目のプレスで曲げ部34、36、44、46、及び段差部38、48が形成される。
【0062】
ところで、例えば、曲げ部34、36、44、46、及び段差部38、48を有しない断面ハット形状の成形品、すなわち、第1縦壁部22が縦壁本体32のみで構成され、第2縦壁部26が縦壁本体42のみで構成された成形品で、しかも、ルーフサイドレールアウタリインフォース10と同様に、頭壁部(本ルーフサイドレールアウタリインフォース10を構成する頭壁部12に相当する部位)の幅方向一方の側を曲率の中心として湾曲した成形品は、成形の前後で頭壁部の長手方向に沿った線長差が生じ、この線長差に起因して、頭壁部の幅方向一方の側(曲率の中心側)では頭壁部の長手方向に沿った引っ張り応力が発生し、頭壁部の幅方向他方の側(曲率の中心とは反対側)では頭壁部の長手方向に沿った圧縮応力が発生する。
【0063】
ここで、本実施の形態に係るルーフサイドレールアウタリインフォース10では、第1縦壁部22に曲げ部34、36が形成される。このため、頭壁部12の幅方向に沿った第1縦壁部22の側での線長差、すなわち、成形前後の線長の過不足が縦壁本体32からの各曲げ部34、36の突出寸法の総和で相殺される。これにより、上記の線長差に起因した第1縦壁部22の側での引っ張り応力の発生が防止又は効果的に抑制される。また、第2縦壁部26に曲げ部44、46が形成されることで、頭壁部12の幅方向第2縦壁部26の側での線長差、すなわち、成形前後の線長の過不足が縦壁本体42からの各曲げ部44、46の突出寸法の総和で相殺われる。これにより、上記の線長差に起因した第2縦壁部26の側での引っ張り応力の発生が防止又は効果的に抑制される。
【0064】
以上のように、第1縦壁部22の側での引っ張り応力、第2縦壁部26の側での圧縮応力の発生が防止又は効果的に抑制されることで、このような引っ張り応力及び圧縮応力に起因した頭壁部12の長手方向を軸方向とするルーフサイドレールアウタリインフォース10全体の「ひねり」等の不要な変形の発生を防止又は極めて効果的に抑制できる。
【0065】
また、上記のような線長差の大きさは予め把握できるものの、これまでは、ひねり等の不要な変形が解消されるまで、幾度となくプレス金型の設計変更を行なわなければならなかった。これに対し、本実施の形態では、縦壁本体32からの曲げ部34、36の最大突出寸法と曲げ部34、36及び段差部38の組数、縦壁本体42からの曲げ部44、46の最大突出寸法と曲げ部44、46及び段差部48の組数とで、どの程度の大きさの線長差を相殺(吸収)できるか極めて容易に把握できるので、プレス金型の設計変更の回数を大幅に低減でき、開発コストの大幅な軽減、ひいては、製品コストの大幅な軽減に大きく寄与する。
【0066】
さらに、本実施の形態では、曲げ部34、36及び段差部38や曲げ部44、46及び段差部48を形成することで、頭壁部12の幅方向に沿った段差が第1縦壁部22や第2縦壁部26に生ずるが、上記のように、縦壁本体32の厚さ方向中心線C1と段差部38の厚さ方向中心線C2との間で第1縦壁部22の長手方向に沿って第1縦壁部22が途切れることなく連続し、縦壁本体42の厚さ方向中心線C3と段差部48の厚さ方向中心線C4との間で第2縦壁部26の長手方向に沿って第2縦壁部26が途切れることなく連続する。
【0067】
このため、曲げ部34、36及び段差部38や曲げ部44、46及び段差部48を形成しても、ルーフサイドレールアウタリインフォース10の長手方向に沿ったルーフサイドレールアウタリインフォース10の機械的強度や剛性を確保でき、また、略車両前方側及び後方側の何れか一方の側からルーフサイドレールアウタリインフォース10に入力された荷重を、略車両前方側及び後方側の何れか他方の側におけるルーフサイドレールアウタリインフォース10の端部まで伝えることができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、曲げ部34、36は第1縦壁部22の幅方向に対して第1縦壁部22の長手方向に傾き、また、曲げ部44、46は第2縦壁部26の幅方向に対して第2縦壁部26の長手方向に傾いた構成であった。しかしながら、例えば、図9及び図10に示されるように、曲げ部34、36が第1縦壁部22の幅方向に沿い、曲げ部44、46が第2縦壁部26の幅方向に沿うような構成としてもよい。このような構成とした場合にも、曲げ部44、46の各々が曲げ部34と曲げ部36との間に位置するように曲げ部34、36、44、46の形成位置を設定することが好ましい。
【0069】
さらに、本実施の形態では、縦壁本体32、曲げ部34、段差部38、曲げ部36により第1縦壁部22を構成し、縦壁本体42、曲げ部44、段差部48、曲げ部46により第2縦壁部26を構成したが、第1縦壁部22は縦壁本体32及び段差部38の少なくとも何れか一方を備えていなくてもよく、また、第2縦壁部26は縦壁本体42及び段差部48の少なくとも何れか一方を備えていなくてもよい。その一例を図11及び図12に示す。
【0070】
これらの図に示される構成は、第1縦壁部22の頭壁部12の側の端部を波状とし、第2縦壁部26の第2フランジ部28の側の端部を波状としている。この結果、第1縦壁部22は曲げ部34と曲げ部36とで構成され、第2縦壁部26は曲げ部44と曲げ部46とで構成されている。このような構成では、縦壁本体32、42や段差部38、48を有する構成に比べて曲げ部34、36の組数及び曲げ部44、46の組数を多く設定できる。このため、頭壁部12の幅方向に沿った曲げ部34、36、44、46の突出寸法を比較的小さくしても、大きな線長差を相殺(吸収)できる。
【0071】
また、本実施の形態は、ルーフサイドレールアウタリインフォース10に本発明を適用した構成であったが、ルーフサイドレールアウタリインフォース10以外の車体の骨格部材や補強部材等の他の車体構造材(車体構造材用成形品)に本発明を適用してもよい。
【0072】
さらに、本実施の形態は、ルーフサイドレールアウタリインフォース10の断面形状が略ハット形状であったが、本発明を適用できる断面形状が厳格なハット形状に限定されるものではない。すなわち、基本的には、上記のような成形前後で線長差が生じるような形状であれば、本発明を適用することで線長差を相殺(吸収)でき、上述した本実施の形態の効果や線長差を相殺(吸収)できることに伴う様々な効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、ルーフサイドレールアウタリインフォース10を構成する材質に関して特に限定されておらず、上記のように、鋼板、又は、一般的な鋼板よりも引っ張り強度が高い高抗張力鋼板、或いは、このような高抗張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い超高抗張力鋼板から成る平板をルーフサイドレールアウタリインフォース10の材料とした。但し、本実施の形態特有の構成、ひいては、本発明特有の構成は、材料の引っ張り強度が高い材質ほど高い効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の要部の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の要部を湾曲の曲率中心の側から見た概略な斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の要部を湾曲の曲率中心とは反対側から見た概略な斜視図である。
【図5】図1の5−5線に沿って切った断面図である。
【図6】図1の6−6線に沿って切った断面図である。
【図7】図5の一点鎖線の円Aの部分を7−7線に沿って切った概略的な拡大端面図である。
【図8】図6の一点鎖線の円Bの部分を8−8線に沿って切った概略的な拡大端面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の変形例を示す図3に対応した斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の変形例を示す図4に対応した斜視図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の別の変形例を示す図3に対応した斜視図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る車体構造材用成形品の別の変形例を示す図4に対応した斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
10 ルーフサイドレールアウタリインフォース(車体構造材用成形品)
12 頭壁部(第1壁部)
22 第1縦壁部(第2壁部、縦壁部)
24 第1フランジ部(第3壁部、フランジ部)
26 第2縦壁部(第2壁部、縦壁部)
28 第2フランジ部(第3壁部、フランジ部)
34 曲げ部(線長差吸収部、第1線長差吸収部)
36 曲げ部(線長差吸収部、第1線長差吸収部)
44 曲げ部(線長差吸収部、第2線長差吸収部)
46 曲げ部(線長差吸収部、第2線長差吸収部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向両端部のうち少なくとも何れか一方の端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の第1壁部と、
前記第1壁部の前記幅方向両端部のうち、少なくとも何れかの一方で且つ前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった側の端部から前記第1壁部の厚さ方向一方側へ向けて延び、しかも、前記第1壁部の前記幅方向端部に倣って曲がるように成形された第2壁部と、
前記第2壁部の前記第1壁部とは反対側の端部から前記第1壁部の幅方向外方側へ向けて延びるように形成された板状の第3壁部と、
前記第2壁部の一部を前記第2壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2壁部に形成された線長差吸収部と、
を備える車体構造材用成形品。
【請求項2】
前記第1壁部の幅方向両端から前記第1壁部の厚さ方向一方の側へそれぞれが延びるように形成されると共に、前記第1壁部とは反対側の端部から、前記第1壁部の幅方向外方側へ延びるようにフランジ部が形成された縦壁部を備え、前記一対の縦壁部の少なくとも何れか一方を前記第2壁部とし、前記第2壁部とされた前記縦壁部から延出された前記フランジ部を前記第3壁部とした、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造材用成形品。
【請求項3】
前記第1壁部の幅方向一方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第3壁部側よりも前記第1壁部側で大きく設定した、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体構造材用成形品。
【請求項4】
前記第1壁部の幅方向他方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第1壁部側よりも前記第3壁部側で大きく設定した、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車体構造材用成形品。
【請求項5】
幅方向端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の頭壁部と、
前記頭壁部の幅方向一方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向一方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第1縦壁部と、
前記第1縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第1フランジ部と、
前記頭壁部の幅方向他方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向他方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第2縦壁部と、
前記第2縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第2フランジ部と、
前記第1縦壁部の一部を前記第1縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第1縦壁部に形成されると共に、変形量が前記第1フランジ部側よりも前記頭壁部側で大きくなる第1線長差吸収部と、
前記第2縦壁部の一部を前記第2縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2縦壁部に形成されると共に、変形量が前記頭壁部側よりも前記第2フランジ部側で大きくなる第2線長差吸収部と、
を備える車体構造材用成形品。
【請求項1】
幅方向両端部のうち少なくとも何れか一方の端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の第1壁部と、
前記第1壁部の前記幅方向両端部のうち、少なくとも何れかの一方で且つ前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった側の端部から前記第1壁部の厚さ方向一方側へ向けて延び、しかも、前記第1壁部の前記幅方向端部に倣って曲がるように成形された第2壁部と、
前記第2壁部の前記第1壁部とは反対側の端部から前記第1壁部の幅方向外方側へ向けて延びるように形成された板状の第3壁部と、
前記第2壁部の一部を前記第2壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2壁部に形成された線長差吸収部と、
を備える車体構造材用成形品。
【請求項2】
前記第1壁部の幅方向両端から前記第1壁部の厚さ方向一方の側へそれぞれが延びるように形成されると共に、前記第1壁部とは反対側の端部から、前記第1壁部の幅方向外方側へ延びるようにフランジ部が形成された縦壁部を備え、前記一対の縦壁部の少なくとも何れか一方を前記第2壁部とし、前記第2壁部とされた前記縦壁部から延出された前記フランジ部を前記第3壁部とした、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造材用成形品。
【請求項3】
前記第1壁部の幅方向一方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第3壁部側よりも前記第1壁部側で大きく設定した、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体構造材用成形品。
【請求項4】
前記第1壁部の幅方向他方の側の端部が前記第1壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように設定され、更に、第2壁部の厚さ方向に沿った前記線長差吸収部の変形量を、前記第2壁部の前記第1壁部側よりも前記第3壁部側で大きく設定した、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車体構造材用成形品。
【請求項5】
幅方向端部が、前記幅方向一方の側を曲率の中心として曲がった板状の頭壁部と、
前記頭壁部の幅方向一方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向一方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第1縦壁部と、
前記第1縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第1フランジ部と、
前記頭壁部の幅方向他方の側の端部から前記頭壁部の厚さ方向一方の側へ向けて延び、しかも、前記頭壁部の幅方向他方の側の端部に沿って前記頭壁部の幅方向一方の側を曲率の中心として曲がるように成形された第2縦壁部と、
前記第2縦壁部の前記頭壁部とは反対側の端部から前記頭壁部の幅方向外方側へ向けて延出された第2フランジ部と、
前記第1縦壁部の一部を前記第1縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第1縦壁部に形成されると共に、変形量が前記第1フランジ部側よりも前記頭壁部側で大きくなる第1線長差吸収部と、
前記第2縦壁部の一部を前記第2縦壁部の厚さ方向に屈曲又は湾曲することで前記第2縦壁部に形成されると共に、変形量が前記頭壁部側よりも前記第2フランジ部側で大きくなる第2線長差吸収部と、
を備える車体構造材用成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−73420(P2009−73420A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246155(P2007−246155)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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