説明

車止め用ブロックおよび車止め

【課題】駐車場などの路面に設置される車止め用ブロックであって、把握しやすく持ち運びやすい車止め用ブロックを提供する。
【解決手段】路面99に設置されるコンクリート製のブロック本体10を有する車止め用ブロック1であって、ブロック本体10は、左右両端面16aおよび16bに、頂面13を貫き、頂面13から底面12に向けて延びる水平方向101の断面形状が半円形の縦溝20であって、下端20bが底面12に達している縦溝20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の車止め用ブロックおよび車止めに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送および保管が容易で、さらに、ブロック設置面に簡単かつ強固に固着することができる車止めブロックの取付方法を提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、まず、ブロックの底面にコンクリート用接着剤を塗布し、所定の設置路面上に置き、次いで、封止キャップで封止したインサート内に適量のアンカーボルト用接着剤を予め投入貯留し、次いで、アンカーボルトを打ち込むことで、アンカーボルト挿通孔の下端を開封すると共に、ブロックの設置路面にアンカーボルト係止孔を穿孔し、アンカーボルトの先端側には膨出部が形成されているので、穿孔されたアンカーボルト係止孔とアンカーボルトとの間には円筒状の間隙が生じ、この間隙内にインサート内に貯留されたアンカーボルト用接着剤が流入(流下)することで、アンカーボルトは設置路面内に確実に固着されることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、長期にわたって美麗な外観を保つパーキングブロックを提供することが記載されている。そのため、特許文献2には、施釉セメントよりなる外面体と、コンクリート又はモルタルよりなる本体とで構成され、外面体は略L字形の板状であり、外面側が施釉され、外面体は、セメント、骨材及び必要に応じ粘土、ガラス質成分、あるいは繊維状物質を原料とし、水で混練して成形し、養生し、次いで施釉した後焼成することにより製造され、外面体をパーキングブロックの成形用の型にセットし、コンクリート又はモルタルを充填し、硬化後に脱型し、必要に応じさらに養生することによりパーキングブロックが製造されることが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献2には、パーキングブロックの両側端面には凹所よりなる手掛け部が設けられていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291503号公報(要約)
【特許文献2】特開2005−36489号公報(要約、段落番号0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
駐車場などの路面に設置される車止め用ブロックであって、把握しやすく持ち運びやすい車止め用ブロックが要望されている。従来の車止め用ブロックでは、特許文献2のように、両側端面に凹所の手掛け部が設けられており、凹所は、把握して持ち運べるように上面と非貫通の状態で両側端面のほぼ中央に設けられていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の1つは、路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する車止め用ブロックであって、ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝を有し、溝の下端は、上面よりも底面の側に配置されている車止め用ブロックである。
【0008】
この車止め用ブロックにおいては、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝の下端が上面よりも底面の側に配置されているので、溝に沿って人差し指、中指、薬指および小指の4つ(4本)の指を一列に配置しやすい。このため、4つの指同士が重なったりすることなく、4つの指のそれぞれを溝に沿ってバランスよく配置しやすい。したがって、特定の指に力が偏ることなく、4つの指のそれぞれに均等に力が伝達されやすい手指のフォームにより溝を掴むことができるので、把握が容易で持ち運びも容易な車止め用ブロックを提供できる。さらに、溝に沿って手指をバランスよく配置できるので、底面に接着剤を塗布して路面に設置する際に、接着面となる底面に手指を触れることなく把握および設置を行いやすい。また、トラックの荷台などに底面を底にして載置された車止め用ブロックを積み下ろす際にも、上面から底面に向けて延びる溝を掴むことにより、車止め用ブロックを持ち上げることなく、横方向に引きずるようにして積み下ろしを行いやすい。
【0009】
溝の下端は、底面に達していることが望ましい。溝が上面から底面に貫通しているので、いっそう掴みやすく、溝の長さよりも大きな吊り治具であっても溝を掴むことができる。
【0010】
上面は、タイヤと接するように底面に対して傾斜した斜面と、底面に対してほぼ平行な頂面とを含み、溝は、底面と頂面とを貫通していることが望ましい。溝は、ブロック本体の前側面よりも後側面の側に配置されていることが望ましい。ブロック本体の主たる断面は、底辺寸法に対する高さ寸法の比が1より小さいことが望ましい。溝は、水平方向の断面形状が半円形または凸多角形を半分にした形状であることが望ましい。
【0011】
本発明の異なる態様の1つは、路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する車止め用ブロックを用いて車止めを施工する方法である。ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝を含み、溝の下端は、上面よりも底面の側に配置されており、当該方法は、底面に接着剤を塗布することと、溝とブロック本体の前側面または後側面とを掴んで位置合わせすることと、ブロック本体を路面の所定の位置に設置することとを有する。溝の下端は、底面に達していることが望ましい。
【0012】
さらに、溝に沿ってアンカーピンを路面に打ち込むことを含むことが望ましい。さらに、溝にモルタルを充填することを含むことが望ましい。さらに、複数の車止め用ブロック同士を一列に隣接するように並べて複数の車止め用ブロック同士の間に溝が合わさった開口を形成することを含むことが望ましい。さらに、開口に流動性のシール材を注入することを含むことが望ましい。シール材を注入することは、モルタルを注入することを含むことが望ましい。
【0013】
本発明のさらに異なる態様の1つは、路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する車止め用ブロックを用いて施工した車止めである。ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に達する溝であって、当該溝に沿ってアンカーピンが路面に打ち込まれた状態でモルタルにより充填された溝を含む。
【0014】
本発明のさらに異なる態様の1つは、路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する複数の車止め用ブロックを用いて施工した車止めである。ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝を含み、溝の下端は、上面よりも底面の側に配置されており、一列に隣接するように並べられた複数の車止め用ブロック同士の間に溝が合わさることにより形成された上面から路面に向けて延びる穴を含む。
【0015】
この車止めにおいては、穴にスノーポールなどの視線誘導施設(標)を挿入することにより、穴を、車のドライバーや積雪時における除雪作業の際などに車止めの位置や存在を示す目印を差し込むスペースとして用いることができる。溝の下端は、底面に達しており、穴は、上面から路面に達していることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車止め用ブロックの概要を示す斜視図。
【図2】車止め用ブロックを右方向から見た右側面図。
【図3】車止め用ブロックを把握した様子を示す図。
【図4】車止め用ブロックを底面の側から見た斜視図。
【図5】車止め用ブロックを各方向から見た図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は斜面を斜面に対して垂直方向から見た図、(e)はe−e断面図、(f)はf−f断面図。
【図6】車止め用ブロックの底面に接着剤を塗布する様子を示す斜視図。
【図7】車止め用ブロックを位置合わせする様子を示す斜視図。
【図8】車止め用ブロック同士を繋ぎ合わせた様子を示す斜視図。
【図9】モルタルを注入する様子を示す右側面図。
【図10】モルタルを充填した様子を示す斜視図。
【図11】モルタルを充填した様子を示す右側面図。
【図12】複数の車止め用ブロックを用いて施工される車止めの一例を示す斜視図。
【図13】異なる車止め用ブロックの概要を示す図であり、(a)は車止め用ブロックを位置合わせする様子を示す斜視図、(b)は車止め用ブロック同士を繋ぎ合わせた様子を示す斜視図。
【図14】さらに異なる車止め用ブロックの概要を示す斜視図。
【図15】さらに異なる車止め用ブロックの概要を示す右側面図。
【図16】車止め用ブロックを用いて車止めを施工(製造)する方法を示す図であり、(a)は縦溝に沿ってアンカーピンを打ち込む様子を示す斜視図、(b)は縦溝にモルタルを充填した様子を示す斜視図。
【図17】本発明に係る車止め用ブロックを右方向から見た右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明に係る車止め用ブロックを示している。図1では、駐車場の路面(舗装面)99に設置された状態の車止め用ブロック1を示している。
【0018】
車止め用ブロック(パーキングブロック)1は、長手方向110の断面が片台形に近いコンクリート製のブロック本体10と、ブロック本体10のタイヤと接する斜面11の凹部33に取り付けられた反射板50とを有する。車止め用ブロック1は、墨出しなどにより路面99に引かれた位置決め用の基準線99aに沿って設置されている。
【0019】
ブロック本体10は、全体が片台形柱状であり、路面99に接するように水平方向101に延びた長方形状の平坦な底面12と、上面19と、底面12の前端(前辺)12cから垂直方向102に起立して上面19に繋がる長方形状の前面14と、底面12の後端(後辺)12dからほぼ垂直方向102に起立して上面19に繋がる長方形状の背面15と、底面12の左右両端(左右両辺)12aおよび12bから垂直方向102に起立した片台形状の一組の側面(端面)16(16a、16b)とを含む。上面19は、タイヤと接するように底面12に対して傾斜した長方形状の斜面11と、底面12に対して平行な長方形状の頂面13とを含む。
【0020】
さらに、ブロック本体10は、頂面13および斜面11に形成された複数の凸状のノンスリップ(滑り止め)模様31と、路面99にアンカーピン(不図示)を打ち込むために頂面13および底面12を貫通したアンカーホール32と、斜面11よりも若干窪んだ反射板50を取り付けるための凹部33とを備えている。
【0021】
ブロック本体10は、左右両端面16aおよび16bに、頂面13を貫き、頂面13から底面12に向けて延びる溝(貫通溝、縦スリット、縦溝)20であって、下端20bが底面12に達している縦溝20を含む。縦溝20は、それぞれの側面16aおよび16bを底面12に対して垂直方向102に貫通するように凹状に形成されている。縦溝20は、水平方向101の断面形状が半円形であり、底面12の左右両端12aおよび12bと、頂面13の左右両端13aおよび13bの中央とを貫通している。すなわち、側面16aおよび16bは、底面12から頂面13に達する縦溝20により垂直方向102に刳り貫かれている。
【0022】
図2に、車止め用ブロック1を右方向から見た右側面図により示している。なお、この車止め用ブロック1を左方向から見た左側面図は図2と対称に表れる。
【0023】
この車止め用ブロック1においては、縦溝20が前面(前側面)14よりも背面(後側面)15の側に配置されており、頂面13の右端13bの中央から底面12を貫通するように延びているので、縦溝20が斜面11および背面15に干渉することがなく、斜面11や背面15の破損を抑制しやすい。さらに、縦溝20が頂面13から底面12に向かって垂直方向102に延びているので、ゴミや埃などが溜まりにくく、縦溝20の目詰まりも抑制できる。また、縦溝20は、頂面13の近傍で水平方向101の半円形断面が上端20aに向けて半漏斗状(半円錐状)に広がった半漏斗部20cを含む。
【0024】
図3に、車止め用ブロック1を把握した様子を示している。従来の車止め用ブロックにおいては、上面および/または底面を貫くことなく、左右両端面に凹状(長方形状)に設けられた水平方向に長い手掛け部を把握することにより持ち運びを行っていたため、手指を配置しづらく、また、手指を一列にバランスよく配置することも困難であった。さらに、手指で掴みやすくするために、左右両端面に占める手掛け部の面積を大きくすると、手掛け部と、上面、底面、斜面および背面などとの距離が近くなり過ぎて、亀裂や破損などが発生するおそれがあった。たとえば、従来の車止め用ブロックにおいては、車の車高を考慮して路面からの高さが11cm以下に設定されていることが多く、手掛け部を正方形状に近付けると、手掛け部と上面とが薄くなりやすく、車のタイヤから伝達される外力により破損しやすかった。
【0025】
この車止め用ブロック1においては、縦溝20が頂面13から底面12に向かってストレートに延びているので、背面(後側面)15または斜面(前側面)11に親指91を添えた状態で、縦溝20に沿って人差し指92、中指93、薬指94および小指95を一列に配置できる。このため、4つの指92〜95同士が重なったりすることなく、4つの指92〜95のそれぞれを縦溝20に沿ってバランスよく配置できる。したがって、特定の指に力が偏ることなく、4つの指92〜95のそれぞれに均等に力が伝達されやすい手指のフォームにより縦溝20を掴むことができるので、把握しやすく持ち運びやすい車止め用ブロック1を提供できる。さらに、縦溝20は、半円形の断面形状を備えているため、4つの指92〜95をフィットさせやすくグリップもしやすい。
【0026】
さらに、この車止め用ブロック1においては、縦溝20が底面12から頂面13に貫通しており、縦溝20の上端20aおよび下端20bが開いているので、吊り治具を用いる場合であっても寸法を合わせることなく縦溝20を掴むことができ、汎用性が高い。また、ブロック本体10は、全体が片台形柱状であるため、縦溝20が底面12に対して平行に延びていると、縦溝20の把握時に回転モーメントが発生しやすく、持ち運びの際に不安定となりやすい。この車止め用ブロック1においては、縦溝20が底面12に対して直角の垂直方向102に延びているので、このブロック本体10を90度回転させて縦溝20を掴むことにより、ブロック本体10に回転モーメントが発生することを抑制でき、安定的に持ち運びを行うことができる。
【0027】
さらに、トラックの荷台などに底面12を底にして載置された車止め用ブロック1を積み下ろす際にも、縦溝20が底面12に対して垂直方向102に延びているので、背面15または斜面11に親指91を添えた状態で、4つの指92〜95のそれぞれでこの縦溝20を掴むことにより、車止め用ブロック1を持ち上げることなく、水平方向101に引きずるようにして積み下ろしを行いやすい。
【0028】
図4に、車止め用ブロック1を底面12の側から見た斜視図により示している。図4では、路面99に設置または仮置きされる状態の車止め用ブロック1を示している。
【0029】
この車止め用ブロック1においては、斜面11または前面14に親指91を添えた状態で、縦溝20に沿って人差し指92、中指93、薬指94および小指95をバランスよく一列に配置できる。このため、底面12に親指91を添えることなく、車止め用ブロック1を確実に把握することができる。したがって、底面12に接着剤60を塗布しても、接着面となる底面12に触れることなく把握、運搬および設置が可能な車止め用ブロック1を提供できる。
【0030】
さらに、縦溝20と、斜面11または前面(前側面)14とを掴むことにより車止め用ブロック1を把握できるので、底面12の後端(後辺)12dを基準線99aに沿って、底面12を路面99に付けることなく仮置きしやすい。このため、仮置きされた車止め用ブロック1の底面12に接着剤を塗布しやすく、路面99に底面12を付けて仮置きされた車止め用ブロックを半回転(180度回転)させて起こし、底面12に接着剤60を塗布する作業を省略できる。したがって、この車止め用ブロック1においては、縦溝20が底面12に対して垂直方向102に延びているので、路面99に底面12を付けて仮置きする必要がなく、施工効率を向上させやすい。
【0031】
さらに、縦溝20と、斜面11または前面(前側面)14とを掴むことにより車止め用ブロック1を把握できるので、底面12の後端(後辺)12dを基準線99aに沿って、接着剤60を塗布した底面12を路面99に付けることなく仮置きしやすい。このため、位置決めされた底面12の後端12dを中心に90度回転させることにより簡単に車止め用ブロック1を設置できる。また、底面12に触れることなく車止め用ブロック1を把握できるので、車止め用ブロック1を路面99に設置する際に手指を挟むおそれもない。なお、車止め用ブロック1を路面99に設置後、ブロック本体10のアンカーホール32にアンカーピン(不図示)を打ち込んで固定させてもよい。
【0032】
図5に、車止め用ブロック1を各方向から見た図により示しており、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は斜面11を斜面11に対して垂直方向から見た図、(e)はe−e断面図、(f)はf−f断面図である。
【0033】
車止め用ブロック1のサイズの一例は、長手方向110の寸法(幅)が60cm、底面12の短手方向120の寸法(奥行)が19cm、底面12に対して垂直方向102の寸法(高さ)が10cmであり、縦溝20は、直径が3cm、高さが10cmである。図5(e)および(f)に示すように、ブロック本体10の主たる断面は、底辺寸法d(19cm)よりも高さ寸法h(10cm)が小さい、垂直方向102に拉げた低重心の片台形状である。
【0034】
図6〜図11に、車止め用ブロック1を用いて車止め2を施工(製造)する方法について示しており、図6は底面12に接着剤60を塗布する様子を示す斜視図、図7は車止め用ブロック1を位置合わせする様子を示す斜視図、図8は車止め用ブロック1同士を繋ぎ合わせた様子を示す斜視図、図9はモルタルを注入する様子を示す右側面図、図10はモルタルを充填した様子を示す斜視図、図11はモルタルを充填した様子を示す右側面図である。
【0035】
まず、図6に示すように、ブロック本体10の底面12に接着剤60を塗布する。次に、図7に示すように、縦溝20と、ブロック本体10の斜面11または背面15とを掴んで位置合わせする。縦溝20が底面12から頂面13に貫通しているので、接着面(底面)12に触れることなく車止め用ブロック1を把握および運搬でき、底面12の後端12dを基準線99aに沿って仮置きしやすい。さらに、接着面12に対して垂直方向102に延びた縦溝20を掴むことにより、接着面12を路面99に付けることなく簡単に位置合わせを行うことができる。
【0036】
次に、図8に示すように、すでに路面99の上に設置された他の車止め用ブロック1と隣接するように位置決めされた車止め用ブロック1を、後端12dを中心に90度回転させることにより路面99の所定の位置に設置する。これにより、複数の車止め用ブロック1同士の間に縦溝20が合わさった円形の開口40aを形成するとともに、縦溝20同士が直に合わさることにより頂面13から路面99に達する穴(縦穴)40を形成する。
【0037】
次に、図9に示すように、縦穴40の開口40aにモルタル(シール材)70を注入する。縦穴40は、水平方向101の断面形状が半円形の縦溝20同士を直に合わせた円形の断面形状を備えているため、摩擦抵抗を低下させてモルタル70をスムーズに流しやすくできる。路面99に到達したモルタル70が縦穴40を下方から上方に向かって上昇しながら頂面13の開口40aに到達することにより、縦穴40にモルタル70を充填させることができる。これにより、図10に示すように、縦穴40にモルタル70が充填された車止め2を施工できる。
【0038】
すなわち、車止め2は、コンクリート製のブロック本体10を有する複数の車止め用ブロック1を接続して施工した車止めであって、一列に隣接するように並べられた複数の車止め用ブロック1同士の間に縦溝20が合わさることにより頂面13から路面99に達するように形成された縦穴40であって、モルタル70が充填された貫通孔(縦穴)40を含む。
【0039】
したがって、この車止め2においては、モルタル70が充填された縦穴40が路面99に対して垂直方向102に延びているので、タイヤと接する斜面11を介して伝達される外力に伴う車止め用ブロック1同士の位置ずれを抑制しやすい。さらに、縦穴40に鉄筋などを挿入した状態でモルタル70を充填することも可能で、車止め用ブロック1同士をいっそう強固に連結させた車止め2を施工できる。なお、縦穴40を充填するシール材はモルタル70に限定されず、たとえば、樹脂モルタル、樹脂硬化剤などであってもよく、十分な流動性があり、その後、硬化するような素材であればよい。
【0040】
さらに、この車止め2においては、縦穴40を形成する縦溝20の半漏斗部20c同士を直に合わせた漏斗部40cを含む。漏斗部40cは、縦穴40の水平方向101の円形断面が頂面13の近傍で開口40aに向けて漏斗状(円錐状)に広がることにより形成されている。このため、図11に示すように、縦穴40に充填されたモルタル70が収縮して沈下した場合であって、頂面13とモルタル70の上面70aとの間に段差が発生することを防止できる。したがって、車止め用ブロック1同士がほぼフラットに連なり、一体感のあるデザインの車止め2を提供できる。
【0041】
図12に、車止め用ブロック1を用いて施工される車止めの一例を示している。この車止め3においては、縦穴40の開口40aにモルタルを注入せずに、スノーポール(デリネーター)80を挿入している。このように、縦穴40は、路面99に対して垂直方向102に延びているので、スノーポール80を含む棒状の様々な視線誘導施設(標)を差し込むことができる。したがって、この車止め3においては、縦穴40を、車のドライバーや積雪時における除雪作業の際などに車止め3の位置や存在を示す目印(標識)を差し込むスペースとして用いることもできる。さらに、縦穴40の全体を充填させることなく一部にのみモルタル70を注入し、硬化したモルタル70の上面70aの上にスノーポール80を挿入して用いることも可能で、位置ずれの抑制と位置表示(案内)とを兼ね備えた車止め3を提供できる。
【0042】
図13に、異なる車止め用ブロック1aの概要を示しており、(a)は車止め用ブロック1aを位置合わせする様子を示す斜視図、(b)は車止め用ブロック1a同士を繋ぎ合わせた様子を示す斜視図である。
【0043】
図13(a)に示すように、車止め用ブロック1aは、縦溝20の水平方向101の断面形状が六角形を半分にした形状である。このように、縦溝20の断面形状は半円形に限定されず、凸多角形を半分にした形状であってもよい。凸多角形である六角形を半分にした断面形状を備えた縦溝20は、掴んだ手指が滑りにくくグリップしやすい。なお、その他の構成については上記実施形態と共通であるため、共通の符号を付して説明を省略する。以降においても同様である。
【0044】
図13(b)に示すように、複数の車止め用ブロック1aを接続して施工した車止め2aは、水平方向101の断面形状が六角形を半分にした形状の縦溝20同士を直に合わせた水平方向101の断面形状が六角形の縦穴40を含む。凸多角形である六角形の断面形状を備えた縦穴40は、鋭角がなく、6つの鈍角により構成されているため、断面積に対して周長を短くしやすく、摩擦抵抗を低下させてモルタル70をスムーズに流しやすくできる。
【0045】
図14に、さらに異なる車止め用ブロック1bの概要を斜視図により示している。車止め用ブロック1bは、縦溝20が底面12の左右両端12aおよび12bと、斜面11の左右両端11aおよび11bのほぼ中央とを貫通している。すなわち、側面16aおよび16bは、底面12から斜面11に達する縦溝20により垂直方向102に刳り貫かれている。このように、縦溝20は、底面12から斜面11および頂面13を含む上面19に貫通するように(抜けるように)形成されていてもよく、複数設けられていてもよい。
【0046】
図15に、さらに異なる車止め用ブロック1cの概要を右側面図により示している。車止め用ブロック1cのブロック本体10は、左右両端面16aおよび16bに、頂面13を貫き、頂面13から底面12に向けて延びる縦溝20であって、下端20bが頂面13よりも底面12の側に配置されている縦溝20を含む。すなわち、縦溝20の下端20bは、底面12を貫通せずに、頂面13よりも底面12の側に近接して配置されている。したがって、この車止め用ブロック1cにおいても、縦溝20が頂面13から底面12の近傍までストレートに延びているので、縦溝20に沿って手指をバランスよく配置でき、把握しやすく持ち運びやすい車止め用ブロック1cを提供できる。
【0047】
図16に、車止め用ブロック1を用いて車止め4を施工(製造)する方法について示しており、(a)は縦溝20に沿ってアンカーピン90を打ち込む様子を示す斜視図、(b)は縦溝20にモルタル70を充填した様子を示す斜視図である。
【0048】
まず、縦溝20と、ブロック本体10の斜面11または背面15とを掴んだ状態で、接着面(底面)12に触れることなく、底面12の後端12dが基準線99aに沿うように位置合わせを行う。次に、図16(a)に示すように、路面99に対して垂直方向102に延びて底面12から頂面13に貫通する縦溝20に沿って、アンカーピン90を路面99に打ち込む。さらに、縦溝20にアンカーピン90が打ち込まれた状態で、縦溝20にモルタル70を充填する。これにより、図16(b)に示すように、縦溝20にモルタル70が充填された車止め4を施工できる。
【0049】
すなわち、車止め4は、コンクリート製のブロック本体10を有する車止め用ブロック1を接続して施工した車止めであって、アンカーピン90が路面99に打ち込まれた状態でモルタル70により充填された縦溝20を含む。
【0050】
したがって、この車止め4においては、路面99に対して垂直方向102に延びる縦溝20にアンカーピン90を打ち込んだ状態でモルタル70が充填されており、車止め用ブロック1と路面99とをいっそう強固に固定しやすい。さらに、アンカーピン90は縦溝20に沿って配置された状態でモルタル70により固定されているので、車のタイヤから強い衝撃が加わっても、アンカーピン90が抜けたり曲がったりすることを抑制できる。
【0051】
図17に、本発明に係る新規なデザインの車止め用ブロックを右方向から見た右側面図により示しており、(a)は車止め用ブロック1の新規なデザイン部分である縦溝20を実線で、その他の部分を破線で表した図、(b)は車止め用ブロック1aの新規なデザイン部分である縦溝20を実線で、その他の部分を破線で表した図、(c)は車止め用ブロック1cの新規なデザイン部分である縦溝20を実線で、その他の部分を破線で表した図である。なお、これらの車止め用ブロック1、1aおよび1cを左方向から見た左側面図は各々の右側面図と対称に表れる。
【符号の説明】
【0052】
1、1a、1b、1c 車止め用ブロック(パーキングブロック)
10 ブロック本体
20 溝(貫通溝、縦スリット、縦溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する車止め用ブロックであって、
前記ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝を有し、
前記溝の下端は、前記上面よりも前記底面の側に配置されている、車止め用ブロック。
【請求項2】
請求項1において、
前記溝の前記下端は、前記底面に達している、車止め用ブロック。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記上面は、タイヤと接するように前記底面に対して傾斜した斜面と、前記底面に対してほぼ平行な頂面とを含み、
前記溝は、前記底面と前記頂面とを貫通している、車止め用ブロック。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記溝は、前記ブロック本体の前側面よりも後側面の側に配置されている、車止め用ブロック。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記ブロック本体の主たる断面は、底辺寸法に対する高さ寸法の比が1より小さい、車止め用ブロック。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記溝は、水平方向の断面形状が半円形または凸多角形を半分にした形状である、車止め用ブロック。
【請求項7】
路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する車止め用ブロックを用いて車止めを施工する方法であって、
前記ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝を含み、
前記溝の下端は、前記上面よりも前記底面の側に配置されており、
当該方法は、
前記底面に接着剤を塗布することと、
前記溝と前記ブロック本体の前側面または後側面とを掴んで位置合わせすることと、
前記ブロック本体を前記路面の所定の位置に設置することとを有する、方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記溝の前記下端は、前記底面に達している、方法。
【請求項9】
請求項8において、さらに、
前記溝に沿ってアンカーピンを前記路面に打ち込むことを含む、方法。
【請求項10】
請求項9において、さらに、
前記溝にモルタルを充填することを含む、方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれかにおいて、さらに、
複数の前記車止め用ブロック同士を一列に隣接するように並べて前記複数の車止め用ブロック同士の間に前記溝が合わさった開口を形成することを含む、方法。
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれかにおいて、さらに、
前記開口に流動性のシール材を注入することを含む、方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記シール材を注入することは、モルタルを注入することを含む、方法。
【請求項14】
路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する車止め用ブロックを用いて施工した車止めであって、
前記ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に達する溝であって、当該溝に沿ってアンカーピンが前記路面に打ち込まれた状態でモルタルにより充填された溝を含む、車止め。
【請求項15】
路面に設置されるコンクリート製のブロック本体を有する複数の車止め用ブロックを用いて施工した車止めであって、
前記ブロック本体は、両端に、上面を貫き、上面から底面に向けて延びる溝を含み、
前記溝の下端は、前記上面よりも前記底面の側に配置されており、一列に隣接するように並べられた前記複数の車止め用ブロック同士の間に前記溝が合わさることにより形成された前記上面から前記路面に向けて延びる穴を含む、車止め。
【請求項16】
請求項15において、
前記溝の前記下端は、前記底面に達しており、
前記穴は、前記上面から前記路面に達している、車止め。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−100666(P2013−100666A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244417(P2011−244417)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(592136635)株式会社オーイケ (28)
【Fターム(参考)】