説明

車載システム、車載装置及びそのコマンドの実行制御方法

【課題】乗車者による操作コマンドを適正に実行することを課題とする。
【解決手段】車載システム1において、携帯端末30は、乗車者からDA10のタッチパネル12を介して受け付けた操作データが意味するコマンドを解釈し、該解釈したコマンドが禁止コマンドであるか否か、すなわち自装置での実行が禁止されているコマンドであるか否かを判定し、禁止コマンドではない場合には、携帯端末30に当該コマンドを実行させる一方で、禁止コマンドである場合には、DA10に当該コマンドを実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末と車載装置を含んで構成される車載システム、車載装置及びそのコマンドの実行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車には、画像または音声によって経路誘導を行うナビゲーション機能、ラジオ受信機能やオーディオ機能などを有する車載装置が広く搭載されている。
【0003】
かかる車載装置は、車両内において多種多様な機能を提供することができる反面、その機能を実現する高い性能が求められるので、イニシャルコストが高くなりがちであり、コスト低減のニーズが高まっている。
【0004】
このことから、最近では、携帯電話やPHSなどの携帯端末と車両に搭載される車載装置とを連携させた車載システムが考案されつつある。
【0005】
この車載システムは、第3世代携帯電話などに代表される携帯端末にプリインストールされているナビゲーション機能、オーディオ機能や動画再生機能などの各種機能を流用して車載装置のスピーカやディスプレイから音声出力または表示出力させるものである。
【0006】
つまり、かかる車載システムにおいては、車載装置を音声及び画像の出力に特化することで、ハード構成及びソフト構成の両面において車載装置の構成を簡素化し、廉価な価格で製品提供することができるようにしている。
【0007】
例えば、特許文献1には、携帯端末と車載装置を相互に通信可能に構成し、携帯端末の画面に表示されている表示データを車載装置に供給し、この表示データを車載装置の画面に表示させる情報表示システムが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−244343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の従来技術(特許文献1)には、以下のように、乗車者による操作コマンドを適正に実行することができないという問題点があった。
【0010】
例えば、上記の情報表示システムでは、乗車者から受け付けたコマンドに対応する機能が車載装置と携帯端末の両方に併存する場合に、乗車者が意図する装置を対象にコマンドが実行されるとは限らず、乗車者が意図した通りにコマンドが実行されないという問題がある。
【0011】
これを具体的に説明すると、車載装置が表示可能かつ入力可能な表示入力部(タッチパネル)をユーザインタフェースとして有する場合、このタッチパネルに表示される画面は、携帯端末のアプリケーション(以下、「アプリ」という)等により規定・作成された画面であり、車載装置側では乗車者の操作が意味するコマンドを解釈できない。このため、車載装置は、タッチパネル上で受け付けた操作データを携帯端末に転送し、一方、携帯端末では、車載装置から供給された操作データからコマンドを解釈して実行する。
【0012】
それゆえに、乗車者が車載装置を対象にコマンドを実行させるつもりで操作を行ったとしても、実際には、携帯端末にコマンドが実行されることになるので、乗車者の意図通りに操作コマンドを実行することができない。
【0013】
また、上記の情報表示システムは、携帯端末の画面に表示される表示データを車載装置で表示させるものであるが、このように携帯端末の表示データを車載装置に画一的に表示させたのでは、乗車者の個人情報までもが他の乗車者の目前にさらされることとなり、その結果、乗車者が望まない操作コマンドが実行されてしまうという問題もある。
【0014】
すなわち、携帯端末には、アドレス帳、発着信履歴やメール及びその履歴などの個人のプライバシーに関する情報が登録されているが、車両に同乗する乗車者は閲覧操作を行えば誰でも見ることができてしまう。
【0015】
特に、運転者が所有する携帯端末の表示データが車載装置に表示されている場合には、運転者は運転以外の操作を行うことができないため、同乗者が個人情報を閲覧しようと操作を行ってもその操作を取り消したり、或いは中止したりする操作を運転者が行うことはできない。
【0016】
そこで、本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、乗車者による操作コマンドを適正に実行することができる車載システム、車載装置及びそのコマンドの実行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車載システムは、携帯端末と車載装置を含んで構成される車載システムであって、前記携帯端末または前記車載装置は、前記携帯端末または前記車載装置に対して行われた操作に対応するコマンドを取得する取得手段と、前記取得手段によって取得されたコマンドの実行を許可するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記携帯端末または前記車載装置のうち少なくともいずれか1つに前記コマンドを実行させるか、またはいずれにも実行させないかを制御する実行制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、携帯端末または車載装置に対して行われた操作に対応するコマンドを取得し、取得したコマンドの実行を許可するか否かを判定し、判定結果に基づいて、携帯端末または車載装置のうち少なくともいずれか1つにコマンドを実行させるか、またはいずれにも実行させないかを制御するように携帯端末または車載装置を構成したので、乗車者による操作コマンドを適正に実行することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車載システム、車載装置及びそのコマンドの実行制御方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、車両に搭載される車載装置に本発明を適用する場合について説明することとする。
【実施例1】
【0020】
まず、本実施例に係る車載システムの概要を説明する。この車載システムは、車両に搭載されるシステムの中でも、携帯端末と車両に搭載される車載装置を無線通信により接続し、とりわけ携帯端末が有する各種アプリの機能を流用して車載装置のスピーカやディスプレイから音声出力または表示出力させ、もって車両に搭載される車載装置から音声及び画像を出力すること、すなわち携帯端末と車載装置を連携されることに特化させたものである。
【0021】
なお、本実施例で言う車載装置は、より厳密に言えば、Display付き車載用無線通信装置(Display Audio:DA)であり、それ以前の車載装置と区別する観点から以下では「DA」と呼称することとし、特に区別する必要がない場合には単に「車載装置」と呼称することとする。
【0022】
図1は、実施例1に係る車載システムの概要を説明するための概念図である。同図に示すように、この車載システム1は、車両に搭載されるDisplay付き車載用無線通信装置(Display Audio:DA)10と、車両の乗車者が保有する携帯端末30とを含んで構成される。
【0023】
この車載システム1では、携帯端末30に搭載される各種アプリの出力をDA10側で呼び出すために、DA10及び携帯端末30の両者を連携させる連携用アプリが携帯端末30にインストールされている。この連携用アプリによって、車載システム1においては、DA10のタッチパネルをあたかも携帯端末30の画面であるかのように機能させることができる。
【0024】
このため、車両の乗車者からの各種指示入力については、DA10のタッチパネルを介して受け付けるが、タッチパネルに表示される画面が携帯端末30で規定・作成される構成上、DA10側では操作内容からコマンドを解釈できないので、上述したように、タッチパネルで受け付けた操作データはDA10または携帯端末30のいずれに対する操作コマンドであっても携帯端末30に転送される。
【0025】
ここで、本実施例では、乗車者からタッチパネルを介して受け付けた操作コマンドがDA10及び携帯端末30の両者の間で併存する場合に、乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させる仕組みにその特徴がある。
【0026】
すなわち、本実施例に係る携帯端末30では、乗車者から受け付けた操作コマンドが自装置での実行が禁止される禁止コマンドであるか否かを判定し、禁止コマンドではない場合には携帯端末30に当該コマンドを実行させる一方で、禁止コマンドである場合にはDA10に当該コマンドを実行させることとした。
【0027】
これを具体的に説明すると、DA10は、車載システム1に対する操作をタッチパネル上で受け付けると(1)、タッチパネルで受け付けた操作内容(例えば、押下操作された画面の座標位置)を含む操作データを携帯端末30に転送する(2)。
【0028】
一方、携帯端末30では、DA10から受け付けた操作データが意味するコマンドを解釈し(3)、該解釈したコマンドが禁止コマンドであるか否か、すなわち自装置での実行が禁止されているコマンドであるか否かを判定し(4)、その判定結果をDA10に通知する(5)。
【0029】
このとき、携帯端末30は、操作データから解釈したコマンドが自装置での禁止コマンドに該当しない場合には、DA10でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知する(5)とともに当該コマンドに対応する処理を実行し(6)−1、当該コマンドが禁止コマンドに該当する場合には、DA10でのコマンドの実行を許可する旨の判定結果を通知し(5)、当該コマンドに対応する処理をDA10に実行させる(6)−2。
【0030】
このように、本実施例では、携帯端末30で実行が許可されるものはDA10での実行が禁止されているものと見做し、コマンドに対応する処理を択一的に実行させることで、判定の入力となるコマンドと突合する比較対象を禁止コマンドに絞り込むとともに、車載システム1を構成する各装置をコマンドの実行主体とした時のコマンドの実行可否を判定することを不要化し、ひいては乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させることとした。
【0031】
例えば、乗車者が再生中の音楽の音量を上げることを意図してDA10に対して音量を上げる操作をタッチパネルに行った場合には、携帯端末30に「音量調節」のコマンドを禁止コマンドとしてあらかじめ認識させておけば、携帯端末30でのコマンドの実行は許可されないと判定され、DA10側で音量を上げるコマンドが実行される結果、乗車者の意図に反して携帯端末30の音量を上げる音量調節がなされてしまうことを防止できる。
【0032】
したがって、本実施例では、乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させ、もって乗車者による操作コマンドを適正に実行することが可能になる。
【0033】
続いて、本実施例に係る車載システム1を構成する各装置の構成について説明する。なお、以下では、DA10の構成を説明してから携帯端末30の構成を説明することとする。
【0034】
図2は、実施例1に係る車載システムを構成する各装置の構成を示す機能ブロック図である。なお、実際のDA10では、図示した機能部以外の機能部(例えば、マイク等の音声入力手段や音声認識部など)を有するが、図2では、実施例1に係るDA10の特徴を説明するために必要な構成要素のみを抜粋している。
【0035】
同図に示すように、DA10は、ハードスイッチ群11と、タッチパネル12と、スピーカ13と、通信処理部14と、記憶部15と、制御部16とを有する。
【0036】
ハードスイッチ群11は、DA10の外面に設けられた各種メカスイッチである。例えば、押下式、スライド式やダイヤル式などの機械的なスイッチがこれにあたる。
【0037】
タッチパネル12は、液晶パネルやディスプレイなどの表示デバイス上で操作入力を受け付けることができる表示可能かつ入力可能なデバイスである。例えば、DA10独自の画面の他、携帯端末30の各種アプリによって生成される表示データ(例えば、ナビ画像や動画など)を画面表示したり、また、画面上に表示されたボタンアイコンなどの描画パーツの押下操作を検出したりする。
【0038】
このようにしてタッチパネル12上で受け付ける操作の中には、上述のように、音質の調節、画面の濃淡や輝度の調節に係る操作などDA10および携帯端末30の両方に共通するコマンドの操作も含まれる。
【0039】
スピーカ13は、制御部16から出力される音声信号を音声出力するオーディオデバイスである。なお、スピーカ13は、車両につき1つ設けてもよいし、或いは複数設けるようにしてもかまわない。
【0040】
通信処理部14は、他の装置との間で無線通信を行う処理部である。例えば、好適な一例としては微弱電波を通じてデータ授受を行うBluetooth(ブルートゥース)等が挙げられるが、赤外線や超音波などの他の媒体を介して通信を行ってもよいし、また、特定の装置と有線接続してデータ授受を行うようにしてもかまわない。
【0041】
記憶部15は、制御部16による各種処理に必要なデータおよびプログラムを記憶する不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、たとえばボリュームの調節、低音及び高音の増幅率の調節やイコライザの調節などの音質に関する設定、画面の濃淡や輝度などの画面に関する設定などの各種設定を管理する各種設定テーブル15aを併せて記憶する。
【0042】
制御部16は、DA10を全体制御する制御部であり、対携帯端末連携部17を有する。実際には、かかる機能部に対応するプログラムを図示しないROMや不揮発性メモリに記憶しておき、これらのプログラムをCPUにロードして実行し、対携帯端末連携部17に対応するプロセスを実行させることになる。
【0043】
対携帯端末連携部17は、携帯端末30と連携して各種の処理を行う機能部である。具体的には、携帯端末30の各種アプリ34によって生成された表示データや音声データをタッチパネル12またはスピーカ13に出力させるDA10としての基本機能を有するほか、タッチパネル12上で受け付けた操作内容を含む操作データ(例えば、押下操作された画面の座標位置)を携帯端末30に転送したり、さらには、携帯端末30から通知されるコマンド実行可否の判定結果に応答してコマンドに対応する処理を実行したりというように、操作コマンド受付時には本実施例に特有の処理を行う。
【0044】
例えば、音質や画面を調整する操作を受け付けた場合には、その操作データを携帯端末30に転送し、その応答として、携帯端末30からコマンドの実行を許可する旨の通知を受け付けた場合に、記憶部15に記憶される各種設定テーブル15a内のうち、実行コマンドに該当する項目の設定を乗車者から新たに受け付けた音質や画面の設定に更新する。なお、携帯端末30からコマンドの実行を不許可とする旨の通知を受け付けた場合には、DA10側でコマンドは実行されない。
【0045】
次に、本実施例に係る携帯端末の構成について説明する。図2に示すように、この携帯端末30は、通信処理部31と、記憶部32と、制御部33とを有する。
【0046】
なお、実際の携帯端末30では、図示した機能部以外の機能部(例えば、操作部、表示部、スピーカ、マイク等の音声入力手段や音声認識部など)を有するが、図2では、実施例1に係る携帯端末30の特徴を説明するために必要な構成要素のみを抜粋している。
【0047】
通信処理部31は、他の装置との間で無線通信を行う処理部である。なお、実際には、中継装置として介在するキャリアの基地局との間で電波により通信を行う通信部と、他の携帯端末30やDA10との間で微弱電波により直接通信を行う近距離通信部とが区別して設けられ、DA10とは近距離通信部を介してデータ授受が行われる。
【0048】
記憶部32は、制御部33による各種処理に必要なデータおよびプログラムを記憶する不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、たとえば禁止コマンドリスト32aと、音質や画面に関する設定などの各種設定を管理する各種設定テーブル32bとを併せて記憶する。
【0049】
禁止コマンドリスト32aは、禁止コマンドを表すリストであり、例えば、図3に示すように、携帯端末30で実行を禁止するコマンドが列挙されたものが記憶部32内に保持される。
【0050】
ここで、かかる禁止コマンドリスト32aに登録される禁止コマンドの一例としては、音質や画面の調節に係る操作などのように、DA10および携帯端末30の両方に共存するコマンドであり、かつ降車後に携帯端末30を単独で使用する際に違和感を持つ設定変更を行うコマンドを基準に登録しておくのが好ましい。
【0051】
すなわち、携帯端末30は、乗車中にはDA10と連携して機能する一方で乗車時以外には単独で機能するという異なる環境に置かれることになる。このため、乗車中にDA10の音声出力または表示を自分の嗜好に合わせるべく、携帯端末30側の音質や画面に関する設定を変更してしまうと、降車後に携帯端末30を単独で使用する際に所有者がその設定の変化にとまどうおそれが多分にある。したがって、このような不具合を未然に防ぐためには、禁止コマンドとして上記のようなコマンドを予めリストに保持しておく必要がある。
【0052】
なお、この禁止コマンドリスト32aは、車載装置または車両のメーカやキャリアのサーバ装置からダウンロードするようにしてもよいし、DA10との通信確立時にDA10から取得するようにしてもよいし、また、携帯端末30の製造時に予め記憶させておいてもよい。また、禁止コマンドリスト32aへの追加または削除についても任意に行うことができる。
【0053】
制御部33は、携帯端末30を全体制御する制御部であり、各種アプリ34と、対DA連携部35とを有する。実際には、かかる機能部に対応するプログラムを図示しないROMや不揮発性メモリに記憶しておき、これらのプログラムをCPUにロードして実行し、各種アプリ34及び対DA連携部35に対応するプロセスを実行させることになる。
【0054】
各種アプリ34は、ナビソフト、メールソフト、チューナーソフトやメディアプレーヤーなどの各種アプリケーションである。具体的には、DA10とのコネクションが確立して連携中である場合には、後述する対DA連携部35の要請に応答して記憶部32からロードされて起動し、DA10のタッチパネルを介して受け付けたコマンドに対応する処理を行う。
【0055】
対DA連携部35は、携帯端末30と連携して各種の処理を行う機能部である。具体的には、DA10から受け取った操作データからコマンドを解釈したり、記憶部32から各種アプリ34をロードして起動したりなどのDA10との連携に関する基本機能を有するとともに、その他、本実施例の固有の機能として、実行可否判定部35aと、実行制御部35bとをさらに内在する。
【0056】
実行可否判定部35aは、対DA連携部35によって解釈されたコマンドの実行を許可するか否かを判定する処理部である。具体的には、乗車者からDA10のタッチパネル12を介して受け付けたコマンドが記憶部32に記憶された禁止コマンドリスト32aに登録されているか否かを判定する。
【0057】
実行制御部35bは、実行可否判定部35aの判定結果に基づいて、DA10または携帯端末30のうちいずれにコマンドを実行させるのかを制御する処理部である。具体的には、当該コマンドが禁止コマンドに該当しない場合には、DA10でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を応答するとともに当該コマンドに対応する処理を実行し、一方、当該コマンドが禁止コマンドに該当する場合には、DA10でのコマンドの実行を許可する旨の判定結果を応答し、当該コマンドに対応する処理をDA10に実行させる。
【0058】
例えば、DA10から受け付けた操作データを解釈したコマンドが音質や画面に関する調整コマンドであり、かつそのコマンドが禁止コマンドに該当しない場合には、記憶部32に記憶される各種設定テーブル32b内のうち、実行コマンドに該当する項目の設定を乗車者から新たに受け付けた音質や画面の設定に更新する。なお、当該コマンドが禁止コマンドに該当する場合には、携帯端末30側でコマンドは実行されない。
【0059】
次に、本実施例に係るコマンド実行制御処理の流れについて説明する。なお、このコマンド実行制御処理は、携帯端末30がDA10との通信圏内に所在し、かつDA10と携帯端末30の間でコネクションが確立されている場合に実行される処理である。
【0060】
図4は、実施例1に係るコマンド実行制御処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、携帯端末30では、操作データの受信待機状態にあり、DA10から操作データを受け付けると(ステップS401肯定)、対DA連携部35は、タッチパネル上で押下操作されたアイコンなどの座標位置などの操作データから乗車者の操作に対応するコマンドを解釈する(ステップS402)。
【0061】
ここで、実行可否判定部35aは、このようにして解釈したコマンドが記憶部32に記憶された禁止コマンドリスト32aに登録されているか否かを判定する(ステップS403)。
【0062】
このとき、実行可否判定部35aによって当該コマンドが禁止コマンドに該当しないと判定された場合(ステップS403肯定)には、実行制御部35bは、DA10でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を応答するとともに当該コマンドに対応する処理を実行し(ステップS404及びステップS405)、処理を終了する。
【0063】
一方、実行可否判定部35aによって当該コマンドが禁止コマンドに該当すると判定された場合(ステップS403否定)には、実行制御部35bは、DA10でのコマンドの実行を許可する旨の判定結果とともに解釈済みのコマンドをDA10に応答し、当該コマンドに対応する処理をDA10に実行させてから(ステップS406)、処理を終了する。
【0064】
上述してきたように、本実施例によれば、DA10のタッチパネル12に対して行われた操作に対応するコマンドを取得し、取得したコマンドが携帯端末30を対象にした禁止条件に該当するか否かによってコマンドの実行可否を判定し、コマンドの実行を許可すると判定した場合には、自装置にコマンドを実行させ、コマンドの実行を許可しないと判定した場合には、携帯端末30にコマンドを実行させるように携帯端末30を構成することとした。
【0065】
このため、判定の入力となるコマンドと突合する比較対象を禁止コマンドに絞り込むとともに、車載システム1を構成する各装置をコマンドの実行主体とした時のコマンドの実行可否を判定することを不要化し、さらには、乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させることができる。
【0066】
したがって、本実施例では、コマンドの実行可否を判定するための構成を簡易にしつつ、乗車者による操作コマンドを適正に実行することが可能になる。
【0067】
さらに、本実施例では、車載装置であるDA10のタッチパネルに携帯端末30の表示データを表示させるとともに当該タッチパネルを介して操作コマンドを受け付けるので、携帯端末30の画面に比べてサイズが大きいタッチパネルの画面上で操作を受け付けることができ、操作性が向上する結果、車両のような移動体で操作を受け付ける場合であっても操作を簡便かつ安全に行うことが可能になる。
【0068】
なお、本実施例では、乗車者から操作を受け付けたコマンドが携帯端末30の禁止コマンドに該当しない場合には携帯端末30にコマンドを実行させ、携帯端末30の禁止コマンドに該当する場合にはDA10にコマンドを実行させることとしたが、他装置であるDA10の禁止コマンドに該当しない場合にはDA10にコマンドを実行させ、DA10の禁止コマンドに該当する場合には携帯端末30にコマンドを実行させるように携帯端末30を構成しても同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0069】
さて、上記の実施例1では、携帯端末30にコマンドの実行可否判定ならびに実行制御を行わせることとしたが、必ずしも携帯端末30を動作主体とする必要はなく、他の装置を動作主体とすることもできる。そこで、実施例2では、DA50にコマンドの実行可否判定ならびに実行制御を行わせる場合について説明する。
【0070】
図5は、実施例2に係る車載システムの概要を説明するための概念図である。同図に示すように、この車載システム3においても、図1に示した実施例1に係る車載システム1と同様に、DA50のタッチパネル上で操作を受け付け(1)、このタッチパネルで受け付けた操作内容(例えば、押下操作された画面の座標位置)を含む操作データを携帯端末70に転送し(2)、DA50から受け付けた操作データが意味するコマンドを携帯端末70に解釈させる(3)処理までは共通する。
【0071】
その一方で、本実施例に係る車載システム3では、携帯端末70で解釈したコマンドを再度DA50に転送させ(4)、DA50にコマンドの実行可否判定を行わせる(5)点、さらに、かかる判定の仕組みについても新たな仕組みが追加されている点が実施例1の車載システム1と異なる。
【0072】
すなわち、DA50では、実施例1と同様、携帯端末70から取得したコマンドが自装置での実行が禁止されているコマンドであるか否かを判定することに加え、さらに、当該コマンドが他装置である携帯端末70での実行が禁止されているコマンドであるか否かを判定する。
【0073】
このように、自装置の禁止コマンドに加えて他装置の禁止コマンドに該当するか否かを判定することとしたのは、コマンド全体から見れば、DA50及び携帯端末70の両者に併存するコマンドだけが存在するわけではなく、乗車者から受け付けたコマンドが必ずしも排他的に実行すればよい性質のものばかりとは限らないからである。
【0074】
すなわち、DA50及び携帯端末70の両者に併存しないコマンド、たとえば携帯端末70が有する固有のコマンドについては、携帯端末70側で実行させるべく、DA50には禁止コマンドと定められるので、DA50の禁止コマンドは携帯端末70で無条件に実行されることとなる。
【0075】
しかしながら、DA50の禁止コマンドを携帯端末70に実行させることとしたのでは、アドレス帳、発着信履歴やメール及びその履歴などの乗車者個人のプライバシーに関する情報までも無条件に閲覧させることになる結果、運転中に他の操作を行いようがない運転者にとっては酷な事態に陥ることになる。
【0076】
このことから、車載システム3では、DA50における禁止コマンドに該当するからといって直ちに携帯端末70にコマンドを実行させるのではなく、そのコマンドが携帯端末70に許可されることによってその所有者である乗車者がプライバシーを侵害されたり、ネットワークコンテンツの利用に際して著しく高い料金を課せられたりなどの不利益行為に関するコマンドを携帯端末70における禁止コマンドとして設定しておくことで、乗車者が望まない操作コマンドについては実行させないこととした。
【0077】
かかる仕組みの判定を行うことにより、DA50では、DA50でのコマンドの実行を許可するという判定結果、携帯端末70でのコマンドの実行を許可するという判定結果、DA50及び携帯端末70の両者ともにコマンドの実行を許可しないという判定結果、そして、これら両者ともにコマンドの実行を許可するという4パターンの判定結果が得られる。
【0078】
このとき、DA50は、自装置でのコマンドの実行を許可すると判定した場合には、携帯端末70でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知する(6)とともに当該コマンドに対応する処理を実行し(7)−1、また、携帯端末70でのコマンドの実行を許可すると判定した場合には、携帯端末70でのコマンドの実行を許可する旨の判定結果を通知し(6)、当該コマンドに対応する処理を携帯端末70に実行させる(7)−2。
【0079】
また、DA50は、DA50及び携帯端末70の両者ともにコマンドの実行を許可すると判定した場合に、携帯端末70でのコマンドの実行を許可する旨の判定結果を通知し(6)、当該コマンドに対応する処理を自装置で実行する(7)−1とともに当該コマンドに対応する処理を携帯端末70にも実行させる(7)−2。
【0080】
一方、DA50は、DA50及び携帯端末70の両者ともにコマンドの実行を許可しないと判定した場合には、携帯端末70でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知し(6)、いずれの装置においてもコマンドを実行させない。
【0081】
このように、本実施例では、乗車者から操作を受け付けたコマンドの性質を問わず、コマンドを適材適所で実行させる一方で乗車者に不利益が生じるおそれのあるコマンドの実行を禁止することができ、乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させるとともに乗車者が望まない操作コマンドが実行されることを防止できる結果、乗車者による操作コマンドをより適正に実行することが可能になる。
【0082】
次に、本実施例に係る車載システム3を構成する各装置の構成について説明する。なお、以下では、上記の実施例1に係る車載システム1と対比しながら説明を進めることとし、同様の機能を発揮するものについては実施例1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図6は、実施例2に係る車載システムを構成する各装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、携帯端末70は、図2に示した携帯端末30と比較して、記憶部71に禁止コマンドリスト32aを不要とする点、並びに、制御部72が有する対DA連携部73に実行可否判定部35aと実行制御部35bとを不要とする点が相違する。
【0084】
一方、DA50は、図2に示したDA10と比較して、記憶部51に禁止コマンドリスト51aを新たに有する点、並びに、コマンド取得部54aと、実行可否判定部54bと、実行制御部54cとを制御部53の対携帯端末連携部54に内在する点が相違する。
【0085】
禁止コマンドリスト51aは、禁止コマンドを表すリストであり、具体的には、DA50での実行を禁止する禁止コマンドごとに、当該禁止コマンドが携帯端末70で実行されるにあたってプライベートなコマンドに該当するか否かを表すプライベートフラグを対応付けて記憶している。
【0086】
例えば、図7に示す例で言えば、コマンドα、コマンドβ、コマンドδについては、プライベートフラグがオフ状態であるので、DA50での実行は禁止されるが携帯端末70での実行は許可される。一方、コマンドγについては、プライベートフラグがオン状態であるので、DA50及び携帯端末70の両方でコマンドγの実行が禁止される。なお、ここでは、プライベートな事項に関するコマンドを携帯端末70での禁止条件として設定することとしたが、乗車者の不利益行為全般について同様のフラグを設けることもできるし、不利益行為フラグとして総括するフラグを設けるようにしてもかまわない。
【0087】
コマンド取得部54aは、乗車者から受け付けた操作に対応するコマンドを取得する処理部である。具体的には、タッチパネル12上で受け付けた操作内容を含む操作データ(例えば、押下操作された画面の座標位置)を携帯端末70に転送し、携帯端末70にコマンドを解釈させて応答させることによってコマンドを取得する。
【0088】
実行可否判定部54bは、コマンド取得部54aによって取得されたコマンドの実行を許可するか否かを判定する処理部である。具体的には、コマンド取得部54aによって取得されたコマンドが記憶部51に記憶された禁止コマンドリスト51aの禁止コマンドに該当するか否かを判定し、禁止コマンドに該当する場合には、該禁止コマンドのプライベートフラグがオフ状態であるか否かをさらに判定する。
【0089】
実行制御部54cは、実行可否判定部54bの判定結果に基づいて、DA50または携帯端末70のうち少なくともいずれか1つにコマンドを実行させるか、或いは実行させないかを制御する処理部である。
【0090】
例えば、実行可否判定部54bによって禁止コマンドに該当しないと判定された場合には、携帯端末70でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知するとともに当該コマンドに対応する処理を実行する。
【0091】
また、実行可否判定部54bによって禁止コマンドに該当し、かつ該禁止コマンドのプライベートフラグがオフ状態であると判定された場合には、携帯端末70でのコマンドの実行を許可する旨の判定結果を通知し、当該コマンドに対応する処理を携帯端末70に実行させる。
【0092】
一方、実行可否判定部54bによって禁止コマンドに該当し、かつ該禁止コマンドのプライベートフラグがオン状態であると判定された場合には、携帯端末70でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知し、いずれの装置においてもコマンドを実行させない。
【0093】
ここで、図6に示したDA50では、実施例1と同様に、DA50及び携帯端末70の両者に共通するコマンドが併存する場合には、降車後に携帯端末70を単独で使用する際に所有者がその設定の変化にとまどってしまうことに重点を置いて当該コマンドを排他的に実行することとし、実行可否判定部54bによってDA50の禁止コマンドに該当しないと判定された場合には、携帯端末70の禁止コマンドに該当するか否かはあえて判定しないことによりDA50及び携帯端末70の両方でコマンドを並列的に実行するパターンを除き、DA50単独でコマンドを実行させることとする。なお、DA50及び携帯端末70の両方でコマンドを実行させる実行制御についてはその説明を後段に譲ることとする。
【0094】
次に、本実施例に係るコマンド実行制御処理の流れについて説明する。なお、このコマンド実行制御処理は、DA50が携帯端末70との通信圏内に所在し、かつDA50と携帯端末70の間でコネクションが確立されている場合に実行される処理である。
【0095】
図8は、実施例2に係るコマンド実行制御処理の手順を示すフローチャートである。同図に示すように、DA50では、乗車者からの操作待機状態にあり、タッチパネル12上で操作を受け付けると(ステップS801肯定)、コマンド取得部54aは、タッチパネル上で押下操作されたアイコンなどの座標位置などの操作データを携帯端末70に転送し(ステップS802)、携帯端末70からの応答によってコマンドを取得する(ステップS803)。
【0096】
ここで、実行可否判定部54bは、コマンド取得部54aによって取得されたコマンドが記憶部51に記憶された禁止コマンドリスト51aの禁止コマンドに該当するか否かを判定する(ステップS804)。
【0097】
このとき、実行可否判定部54bによって禁止コマンドに該当しないと判定された場合(ステップS804否定)には、実行制御部54cは、携帯端末70でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知し(ステップS805)、当該コマンドに対応する処理を実行し(ステップS806)、処理を終了する。
【0098】
一方、禁止コマンドに該当する場合(ステップS804肯定)には、実行可否判定部54bは、禁止コマンドのプライベートフラグがオフ状態であるか否かをさらに判定する(ステップS807)。
【0099】
そして、実行可否判定部54bによって禁止コマンドのプライベートフラグがオフ状態であると判定された場合(ステップS807肯定)には、実行制御部54cは、携帯端末70での実行を許可すると判定したコマンドを携帯端末70に転送し(ステップS808)、当該コマンドに対応する処理を携帯端末70に実行させ、処理を終了する。
【0100】
また、実行可否判定部54bによって禁止コマンドのプライベートフラグがオン状態であると判定された場合(ステップS807否定)には、実行制御部54cは、携帯端末70でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知し(ステップS809)、いずれの装置においてもコマンドを実行させずに処理を終了する。
【0101】
上述してきたように、本実施例では、DA50に対して行われた操作に対応するコマンドを取得し、取得したコマンドがDA50を対象にした禁止コマンドに該当するか否か、並びに、他装置である携帯端末70を対象にした禁止コマンドに該当するか否かによってコマンドの実行可否を判定し、DA50でのコマンドの実行を許可すると判定した場合には、自装置にコマンドを実行させ、他装置である携帯端末70でのコマンドの実行を許可すると判定した場合には、携帯端末70にコマンドを実行させ、DA50及び携帯端末70の両方でのコマンドの実行を許可しないと判定した場合には、いずれの装置においてもコマンドの実行を禁止するようにDA50を構成することとした。
【0102】
このため、乗車者から受け付けたコマンドに対応する機能がDA50及び携帯端末70の両方に併存する場合に、乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させることにとどまらず、携帯端末70の所有者である乗車者がプライバシーを侵害されたり、ネットワークコンテンツの利用に際して著しく高い料金を課せられたりなどの不利益行為に関するコマンドが実行させることも防止することができる。
【0103】
したがって、本実施例では、乗車者が望まない操作コマンドが実行される事態を併せて防止することもできる結果、乗車者による操作コマンドをより適正に実行することが可能になる。
【0104】
なお、上記の実施例1及び2では、禁止コマンドリストを用いてコマンドの実行可否を行うこととしたが、許可コマンドをリスト化した許可コマンドリストを用いてコマンドの実行可否を行う場合にも本発明を同様に適用することができる。
【0105】
また、上記の実施例1及び2では、DAと携帯端末の間でコマンドのコードが共通である場合を想定した実施例を説明したが、これら両者のコード体系が異なる場合には、DAと携帯端末の間で各々のコマンドの対応関係を規定したコード対応テーブルをDAまたは携帯端末のいずれかに持たせることによって本発明を同様に適用することができる。
【0106】
また、上記の実施例1及び2では、1つの禁止コマンドリスト32aまたは51aを用いてコマンドの実行可否を判定することとしたが、複数の禁止コマンドリストを保持しておき、判定に使用するリストを適宜変更するようにしてもかまわない。
【0107】
例えば、自車両が停車中であるか、或いは走行中であるかによって異なる禁止コマンドリストをDAまたは携帯端末の記憶部に登録しておき、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit:エレクトロニック・コントロール・ユニット)から速度情報を取得し、車両が停車中である場合には、たとえばプライベート情報の閲覧コマンド全般が許可された禁止コマンドリストをコマンド実行可否判定に使用させ、一方、車両が走行中である場合には、たとえばプライベート情報の閲覧コマンド全般を禁止した禁止コマンドリストをコマンド実行可否判定に使用させる。
【0108】
これによって、運転者がDAを操作可能な状態ではプライベート情報の閲覧を許容する一方で運転者がDAを操作不能な状態ではプライベート情報の閲覧を禁止するという柔軟な制御が可能となる。
【0109】
なお、ここでは、車両が停車中であるか或いは走行中であるかによって2つの禁止コマンドリストを使い分ける例を説明したが、リストの数は任意の数でよく、さらには、乗車者の人数ごと、乗車者が在席する座席位置ごと、車両が位置する場所ごと、或いは時間帯ごとなどのようにリストを設けることができる。
【0110】
また、上記の実施例1及び2では、DAまたは携帯端末のいずれか一方にコマンドを実行させるか、或いはこれら両方にコマンドを実行させない場合のコマンド実行制御を説明したが、前述したように、DAの禁止コマンド並びに携帯端末の禁止コマンドの両方に該当しない場合には、これら両方の装置でコマンドを実行させるようにしてもかまわない。
【0111】
例えば、DAがMdBの音量を増幅する性能を有し、また、携帯端末がNdBの音量を増幅する性能を有しているとした時、乗車者がNdBまたはMdBを超える音量を望む場合には、片方だけの音量調整では乗車者が希望する音量でラジオや楽曲等の音声データを出力することはできないが、両方の装置で音量増幅を行えば乗車者の望み通りに音声データを出力することができる。
【0112】
さらに、このような場合には、コマンドが音声もしくは表示に関してのボリュームまたは期間を設定するコマンドであるならば、当該ボリュームまたは当該期間が所定の閾値に設定されるまで携帯端末またはDAのいずれか一方の装置に当該コマンドを実行させ、当該ボリュームまたは当該期間が閾値以上に設定された場合に、携帯端末およびDAの両方に当該コマンドを実行させるような段階的な実行制御を実現することもできる。
【0113】
すなわち、上記の実施例1及び2でも述べたように、乗車時以外にも使用される携帯端末の各種設定を変更したくないというニーズも存在するので、乗車者による設定音量(すなわちボリューム)に足る音量がDAだけの音量増幅で実現可能な場合には、DAに音量を上げるコマンドを実行させ、DAの音量増幅だけでは実現不能な設定音量である場合には、DA及び携帯端末の両方に音量を上げるコマンドを実行させることで、携帯端末の各種設定を変更したくないというニーズを可及的に優先しながらも、一方の装置だけでは実現できない量的制限を超えた機能を実現することが可能になる。また、音声のみならず、表示画面の明るさなど表示に関しても同様である。
【0114】
なお、上記の実施例1及び2では、コマンドの実行可否を判定した後にコマンドの実行制御を行うこととしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえばコマンドとそれを実行する装置とが予め定められた実行主体管理テーブル90(図9参照)をDAもしくは携帯端末に保持しておき、乗車者から操作を受け付けたコマンドに該当する実行主体の装置にコマンドを実行させるようにしてもよい。
【0115】
例えば、図9に示す例では、操作コマンドとしてコマンドaを受け付けた場合には、携帯端末にてコマンドaが実行され、コマンドbまたはコマンドcを受け付けた場合には、DA及び携帯端末の両方でコマンドbまたはコマンドcが実行され、コマンドcまたはコマンドdを受け付けた場合には、DAにてコマンド実行され、また、コマンドeを受け付けた場合には、DA及び携帯端末のいずれでもコマンドeは実行されない。
【0116】
図10は、本発明の変形例に係るコマンド実行制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、コマンドを実行させる装置をDAまたは携帯端末のいずれかとする場合を説明することとするが、図9に示すように、コマンドに対応付ける実行主体を「両方」または「なし」と設定することにより、両方の装置でコマンドを実行させたり、いずれの装置にもコマンドを実行させないように構成することもできる。
【0117】
図10に示すように、DAでは、乗車者からの操作待機状態にあり、タッチパネル12上で操作を受け付けると(ステップS1001肯定)、タッチパネル上で押下操作されたアイコンなどの座標位置などの操作データを携帯端末に転送し、携帯端末からの応答によってコマンドを取得する(ステップS1002)。
【0118】
ここで、DAは、上述の実行主体管理テーブル90に記憶された実行主体の設定のうち、乗車者から操作を受け付けたコマンドに対応する実行主体を参照し(ステップS1003)、当該コマンドをDAまたは携帯端末のいずれかに実行させるかを判定する(ステップS1004)。
【0119】
このとき、当該コマンドを携帯端末に実行させると判定した場合には、DAは、携帯端末70での実行を許可すると判定したコマンドを携帯端末に転送し(ステップS1005)、当該コマンドに対応する処理を携帯端末に実行させ、処理を終了する。
【0120】
一方、当該コマンドをDAに実行させると判定した場合には、DAは、携帯端末でのコマンドの実行を許可しない旨の判定結果を通知し、当該コマンドに対応する処理を実行し(ステップS1006)、処理を終了する。
【0121】
このような処理を実行すれば、上記の実施例1及び2と同様に、乗車者が意図する装置を対象にコマンドを実行させるとともに、乗車者が望まない操作コマンドが実行される事態を防止することができ、乗車者による操作コマンドを適正に実行することが可能になる。加えて、実行主体管理テーブル90をDAまたは携帯端末のいずれに保持させる場合でもテーブル構成を変える必要がない。なお、ここでは、テーブルを用いた実行制御をDAが行う例を説明したが、携帯端末が行うようにしてもかまわない。
【0122】
なお、上記の実施例1及び2では、DAを簡素に構成する観点から音声及び画像の出力部以外に過度な性能を持たせないことを前提として説明してきたが、必ずしもDAの性能を制限する必要はない。例えば、携帯端末と同等の機能を有するカートリッジをDAに着脱可能に構成し、当該カードリッジをDAにオプションとして装着させることで、多機能な車載装置としてDAを提供することも可能になる。
【0123】
また、上記の実施例1及び2では、タッチパネルを介して操作を受け付けることとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、コマンドを認識可能な入力がDAまたは携帯端末になされればよく、たとえばハードスイッチの他、音声認識エンジンをDAまたは携帯端末に音声認識エンジンをインストールしておき、タッチパネルの押下操作に代えて乗車者による発話をDAまたは携帯端末が有するマイク等の音声入力手段に対する入力としてもかまわない。
【0124】
なお、上記の実施例1及び2では、DAと携帯電話が1対1であるケースについて説明したが、必ずしも両者が1対1である必要はなく、DAと携帯電話が1対Nである場合にも本発明を同様に適用することができる。
【0125】
また、上記の実施例1及び2では、本発明を車載システムに適用する場合を説明したが、本発明はこれに適用範囲が限定されるものではなく、音声出力部または表示出力部を有する装置と携帯端末とを含んで構成されるシステムにも本発明を同様に適用することがきる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
以上のように、本発明に係る車載システム、車載装置及びそのコマンドの実行制御方法は、乗車者による操作コマンドを適正に実行する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】実施例1に係る車載システムの概要を説明するための概念図である。
【図2】実施例1に係る車載システムを構成する各装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】禁止コマンドリストの一例を示す図である。
【図4】実施例1に係るコマンド実行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】実施例2に係る車載システムの概要を説明するための概念図である。
【図6】実施例2に係る車載システムを構成する各装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】禁止コマンドリストの一例を示す図である。
【図8】実施例2に係るコマンド実行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の変形例を説明するための説明図である。
【図10】本発明の変形例に係るコマンド実行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0128】
1 車載システム
10 DA
11 ハードスイッチ群
12 タッチパネル
13 スピーカ
14 通信処理部
15 記憶部
15a 各種設定テーブル
16 制御部
17 対携帯端末連携部
30 携帯端末
31 通信処理部
32 記憶部
32a 禁止コマンドリスト
32b 各種設定テーブル
33 制御部
34 各種アプリ
35 対DA連携部
35a 実行可否判定部
35b 実行制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末と車載装置を含んで構成される車載システムであって、
前記携帯端末または前記車載装置は、
前記携帯端末または前記車載装置に対して行われた操作に対応するコマンドを取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得されたコマンドの実行を許可するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記携帯端末または前記車載装置のうち少なくともいずれか1つに前記コマンドを実行させるか、またはいずれにも実行させないかを制御する実行制御手段と
を備えたことを特徴とする車載システム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記取得手段によって取得されたコマンドが、前記判定手段が備えられた自装置を対象にしたコマンド実行の許可条件または禁止条件に該当するか否か、及び、前記自装置とは別の他装置を対象にしたコマンド実行の許可条件または禁止条件に該当するか否かによってコマンドの実行可否を判定し、
前記実行制御手段は、
前記判定手段によって前記自装置でのコマンドの実行を許可すると判定された場合には、前記自装置に前記コマンドを実行させ、前記他装置でのコマンドの実行を許可すると判定された場合には、前記他装置に前記コマンドを実行させ、前記自装置及び前記他装置の両方でのコマンドの実行を許可しないと判定された場合には、いずれの装置においてもコマンドの実行を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記取得手段によって取得されたコマンドが、前記判定手段が備えられた自装置を対象にしたコマンド実行の許可条件または禁止条件に該当するか否かによってコマンドの実行可否を判定し、
前記実行制御手段は、
前記判定手段によって前記コマンドの実行を許可すると判定された場合には、前記自装置に前記コマンドを実行させ、前記コマンドの実行を許可しないと判定された場合には、前記自装置とは別の他装置に前記コマンドを実行させることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記取得手段によって取得されたコマンドが、前記判定手段が備えられた自装置とは別の他装置を対象にしたコマンド実行の許可条件または禁止条件に該当するか否かによってコマンドの実行可否を判定し、
前記実行制御手段は、
前記判定手段によって前記コマンドの実行を許可すると判定された場合には、前記他装置に前記コマンドを実行させ、前記コマンドの実行を許可しないと判定された場合には、前記自装置に前記コマンドを実行させることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項5】
前記実行制御手段は、
前記判定手段によって前記携帯端末および前記車載装置の両方でのコマンドの実行を許可すると判定された場合であり、かつ当該コマンドが音声もしくは表示に関してのボリュームまたは期間を設定するコマンドである場合に、当該ボリュームまたは当該期間が所定の閾値に設定されるまで前記携帯端末または前記車載装置のいずれか一方の装置に当該コマンドを実行させ、当該ボリュームまたは当該期間が前記閾値以上に設定された場合に、前記携帯端末および前記車載装置の両方に当該コマンドを実行させることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項6】
携帯端末と車載装置を含んで構成される車載システムに適用されるコマンドの実行制御方法であって、
前記携帯端末または前記車載装置に対して行われた操作に対応するコマンドを取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得されたコマンドの実行を許可する否かを判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に基づいて、前記携帯端末または前記車載装置のうち少なくともいずれか1つに前記コマンドを実行させるか、またはいずれにも実行させないかを制御する実行制御工程と
を含んだことを特徴とするコマンドの実行制御方法。
【請求項7】
携帯端末と無線接続された車載装置であって、
前記車載装置に対して行われた操作に対応するコマンドを取得する取得手段と、
前記コマンドを前記携帯端末または前記車載装置のいずれかに実行させるかを予め定めたテーブルと、
前記取得したコマンドを前記テーブルに基づき前記携帯端末または前記車載装置に実行させる実行制御手段と
を備えた車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−130551(P2010−130551A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305255(P2008−305255)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】