説明

車載ジャッキの格納構造

【課題】ジャッキを車両に格納した状態であっても所定の有効な機能を発揮可能な車載ジャッキの格納構造を提供する。
【解決手段】補強部材であるタワーバー15とダッシュパネル13との対向する一対の面の間に上記ジャッキJを配置し、そのジャッキJを伸展し当該ジャッキJの伸縮方向両端部をそれぞれ上記対向する面に当接させてジャッキを固定し車体に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載ジャッキの格納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載ジャッキの格納構造は、例えば特許文献1に記載されるような構造となっている。
すなわち、トランクルーム内などの車体パネルに対してジャッキ格納用の凹部を設け、その凹部内に、縮めた状態のジャッキを収容し、取り外し可能なジャッキブラケットで当該凹部にジャッキを保持させる。
【特許文献1】特開2000−43756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記車載ジャッキは、車両走行中には使用されないので、走行中にあっては車両の重量を増加するだけの役割しかない。
本発明は、このような点に着目してなされたもので、ジャッキを車両に格納した状態であっても所定の有効な機能を発揮可能な車載ジャッキの格納構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、車体の剛性に寄与するとともに車体を構成する部材における所定間隔を開けて対向する一対の面の間にジャッキを配置し、そのジャッキを伸縮して当該ジャッキの伸縮方向両端部をそれぞれ上記対向する面に当接させてジャッキを固定して格納することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の格納構造によれば、車体の剛性に寄与する車体構成部のうち対向する車体構成部材間がジャッキによって連結されることで、当該ジャッキが補強材としての役割を持つ結果、車体の剛性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態のジャッキを説明する。
本ジャッキJは、公知の機構であるパンタグラフ式の車載ジャッキであって、図1に示すように、台座1から左右に延びる一対の下側リンク2と、その各下側リンク2の先端部に下端部を連結し上端部を共に支持部4に連結する一対の上側リンク3と、ジャッキJの伸縮方向と直交する方向に配置され回転に伴い左右のリンク連結部8,9間の距離を変更してジャッキJを伸縮させるねじ棒5とを備える。
【0007】
上記ねじ棒5の一端部にはトルク入力部6が設けられ、ジャッキアップ時には、そのトルク入力部6をジャッキハンドル7で回転することによって当該ねじ棒5が回転する。なお、ジャッキJが伸展するにつれて、左右のリンク連結部8,9間が接近して、ねじ棒5の先端部が一方のリンク連結部9から伸展に応じた分だけ突出する。
図2に本実施形態のジャッキハンドル7を示す。本ジャッキハンドル7は、トルク入力部6に開口した丸穴6aに挿入されるフック部7aを備える。ジャッキハンドル7の他端部7bは、平板形状になって、ホイールキャップ等を取り外す際などに使用される。
【0008】
そして、本実施形態では、上記トルク入力部6に対し丸穴6aとは別にジャッキハンドル7の他端部を挿入可能な矩形の穴6bが開口している。また、トルク入力部6に近い側の上側リンク3には、図3に示すように、上記ジャッキハンドル7を当該上側リンク3に沿った状態で着脱可能に取り付けるためのハンドル用ブラケット10(嵌め込み部)が設けられている。そのハンドル用ブラケット10は、弾性を持った一対の爪部10aを備え、ジャッキハンドル7の軸部を上側から押し込むことで当該一対の爪部10aによってジャッキハンドル7の軸部が把持される。
【0009】
また、トルク入力部6とは反対側に位置するリンク連結部9には、上下方向に回動可能な廻り止めブラケット11を備える。廻り止めブラケット11は、図4に示すように、断面コ字形状となっていて、リンク連結部9の左右にそれぞれ連結して上下に回動する左右の足部11bと、その左右の足部11b間を連結し、上記ねじ棒5の先端面と対向可能なロック部本体11aとを備える。廻り止めブラケット11は、ロック機構を構成する。
【0010】
上記ロック機構は、廻り止めブラケット11を倒してロック部本体11aをねじ棒5の先端面と対向する位置に設定することで、当該ロック部本体11aによってねじ棒5のリンク連結部9からの突出量が規制される結果、ジャッキJの最大伸展量が規制される。この廻り止めブラケット11で規制したときの最大伸展量が、後述の対向する車体構成部材間に突っ張った状態とするのに適した値となるように、当該廻り止めブラケット11による規制量を設定する。突っ張った状態とするのに適した値とは、ジャッキJを訂正なテンションで突っ張った状態として、ジャッキJの伸展によってジャッキJが当接する面に過大な力(許容以上の塑性変形が残る程の大きな力)にならない値を指す。
ロック機構は上記構成に限定されない。例えば、上側リンクと下側リンクとを一時的に連結するワイヤやチェーンなどによってジャッキの最大伸展量を制限しても良い。
【0011】
次に、ジャッキJの搭載を説明する。
本実施形態では、図5に示すように、フロントエンジンルーム12内にジャッキJを格納する場合を例示する。
図5に示すように、ダッシュパネル13の前側で、左右のストラットを連結するタワーバー14が、車幅方向に延在して車体を補剛している。
そして、車体前後方向で対向しているタワーバー14とダッシュパネル13との対向する面のうち、車幅方向中央部位置をそれぞれジャッキ取付け面15としている。
【0012】
そして、ジャッキJを、伸縮方向を車体前後方向に向けて上記一対のジャッキ取付け面15間に配置し、伸縮方向端部である台座1及び支持部4をそれぞれダッシュパネル13及びタワーバー14に当接するまで、ジャッキJのねじ棒5を回転してジャッキJを伸展させて、当該ジャッキJをタワーバー14とダッシュパネル13との間に固定して格納する。
このようにタワーバー14とダッシュパネル13間に突っ張った状態でジャッキJが固定されることで、補強部材であるタワーバー14が左右両端部と中央部の3点で支持された状態となり、剛性が向上する。
【0013】
ここで、単に、タワーバー14とダッシュパネル13と間に突っ張った状態でジャッキJを固定しただけでは、車両走行中の振動等によってジャッキJが外れるおそれがある。
これに鑑み、本実施形態では、一対のジャッキ取付け面15に対し、図6に示すように、それぞれ台座1及び支持部4の少なくとも一部を収容可能な収容ブラケット16を設けた。収容ブラケット16は収容部を構成する。
上記各収容ブラケット16は、ジャッキ取付け面15同士の他方の対向面が開口した箱形をしていて、底板部16aが、左右の壁面部16bよりも対向するジャッキ取付け面15側に突出している。
【0014】
上記収容ブラケット16を備え、各収容ブラケット16内に台座1及び支持部4を挿入するようにジャッキJを伸展して搭載することで、車両走行中の振動等によってジャッキJが外れるおそれが防止される。
また、ジャッキJを水平状態にして伸展させる必要があるが、本実施形態では、底板部16aが左右の壁面部16bよりも突出していることから、突出部分にジャッキJの台座1及び支持部4を支持させた状態として片手で操作するなど、ジャッキJの伸展操作が容易となる。底板部16aが突出していないと、別途ジャッキJを支持しながら伸展操作をする必要がある。
【0015】
ここで、収容ブラケット16の深さは、車体振動の揺れによって台座1及び支持部4が当該収容ブラケット16から外れないだけの深さに設定すれば良い。すなわち、ジャッキ格納位置での車体振動を許容可能な深さとすればよい。
また、上記説明では、収容部として、車体構成部材から突出した状態となる収容ブラケット16を例示しているが、これに限定しない。例えば、上記台座1及び支持部4を嵌め込み可能な凹部を設けて収容部としても良い。
【0016】
なお、上記収容ブラケット16は、箱形であって、上板部16cを備えるが、上記上板部16cが無くても構わない。この場合には、底板部16aを壁面部16bよりも張り出させる必要は無いが、振動によって外れないように壁面部16bの高さを高くする必要がある。
また、本実施形態では、ジャッキJを伸展して格納する際に、図4のように、予め上記廻り止めブラケット11を倒してジャッキJの最大伸展量を規制しておくことで、ねじ棒5の先端部が廻り止めブラケット11に当接するまで回転させるだけで、格納時における適切なジャッキJの伸展量とすることができる。
【0017】
また、ジャッキ格納のために伸展させる際に、トルク入力部6を回転させてネジを回転させる必要があるが、トルク入力部6を直接手で回したり、通常のジャッキアップのようにトルク入力部6の丸穴6aにジャッキハンドル7を連結して回すのは、場所が狭いため面倒である。これに対し、本実施形態では、矩形の穴16bに対しジャッキハンドル7の他端部(平板状の部分)を差し込んで、レバーのように回転させるので、狭い場所であっても、小さな力でねじ棒5を回し易く、つまりジャッキJを伸展させ易くなっている。
【0018】
さらに、ジャッキJを伸展して格納した後に、ジャッキハンドル7のフック部7aをトルク入力部6の丸穴6aに引っ掛けた状態で当該ジャッキハンドル7の軸部をハンドル用ブラケット10に取り付ける。これによって、ジャッキハンドル7をジャッキJと一緒に収容できるばかりか、ジャッキハンドル7によってトルク入力部6の回転が防止されて、走行中の振動によって、ねじ棒5が回転してジャッキJの伸展が緩むことを防止できる。
【0019】
また、上記説明では、ジャッキJを水平配置で格納する例を説明したが、格納位置によっては、垂直配置で格納するようにしても良い。例えば、図7に示すように、リヤラゲッジルーム内を左右に延びるタワーバー14と床パネルとの間をジャッキ格納位置として、ジャッキJの伸縮方向を上下に向けて、当該ジャッキJをタワーパネルと床パネル20との間に配置し伸展して格納する。この場合には、ジャッキJの落下ということは無いので、タワーバー14の下面(ジャッキ取付け面15)だけに上記収容ブラケットを設け、床パネル20側には台座1を嵌め込む小さな凹部を形成しておけばよい。
【0020】
また、上記実施形態では、左右に延びて車体を補強する補強部材と車体パネルとの間にジャッキJを格納する場合を例示したが、これに限定されない。車体構成部材であって、ジャッキJが伸展可能なだけの距離を開けて対向する対向面であって、伸展させたジャッキJによって補強される位置であれば、上記位置に限定されない。
また、上記実施形態では、パンタグラフ式の車載ジャッキJを例示したが、油圧式その他の機構のジャッキであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る車載ジャッキを示す図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係るジャッキハンドルを示す図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る嵌め込み部を説明する図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る廻り止めブラケットを説明する図である。
【図5】本発明に基づく実施形態に係るジャッキの格納を説明する平面図である。
【図6】本発明に基づく実施形態に係る収容ブラケットを説明する図である。
【図7】本発明に基づく実施形態に係るジャッキの格納の別の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
J ジャッキ
1 台座(ジャッキ伸縮方向端部)
2 下側リンク
3 上側リンク
4 支持部(ジャッキ伸縮方向端部)
5 ねじ棒
6 トルク入力部
6a 丸穴
6b 矩形の穴
7 ジャッキハンドル
7a フック部
8,9 リンク連結部
10 嵌め込み部
11 廻り止めブラケット(嵌め込み部)
11a ロック部本体
13 ダッシュパネル
14 タワーバー(補強部材)
16 収容ブラケット
16a 底板部
16b 壁面部
16c 上板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の剛性に寄与するとともに車体を構成する部材における所定間隔を開けて対向する一対の面の間にジャッキを配置し、そのジャッキを伸展して当該ジャッキの伸縮方向両端部をそれぞれ上記対向する面に当接させてジャッキを固定することを特徴とする車載ジャッキの格納構造。
【請求項2】
上記車体を構成する部材の少なくとも一方は、補強部材であることを特徴とする請求項1に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項3】
上記対向する一対の面を構成する部材は、車体幅方向に延在して左右が車体に固定されるクロス部材と、そのクロス部材と対向する車体パネルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項4】
上記ジャッキの伸縮方向両端部の少なくとも一方の端部と対向する上記面には、当該ジャッキの伸縮方向端部を収容するための収容部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項5】
上記格納状態でのジャッキの伸縮方向が横方向を向くように配置され、
上記収容部は、ジャッキの上記端部を載置可能な底面部と、当該端部と横方向で対向する壁面部とを少なくとも備えることを特徴とする請求項4に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項6】
上記収納部は、ジャッキの上記端部と上側から対向する上板部を備え、上記底板部は、上記上板部及び壁面部よりも、上記対向する面の他方の面側に向けて張り出していることを特徴とする請求項5に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項7】
上記ジャッキの最大伸長量を制限するためのロック機構を備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項8】
上記ジャッキは、パンタグラフ型のリンク構造からなり、ねじ棒を回転することで、伸縮方向と直交する一対のリンク連結部が接近し、ジャッキの伸長に応じて一方の連結部からのねじ棒の突出量が多くなるジャッキであって、
上記ロック機構は、ジャッキのリンク部若しくは上記リンク連接部に回動可能に設けられた廻り止めブラケットからなり、回動させることで、上記ねじ棒先端部と対向する当接面を備えることを特徴とする請求項7に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項9】
上記ジャッキは、パンタグラフ型のリンク構造からなり、トルク入力部を操作してねじ棒を回転することでジャッキの伸長量を変更可能なジャッキであって、
ジャッキのパンタグラフを構成するリンク部に対し、トルク入力部に開口した穴にジャッキハンドルのフック部を引っ掛けた状態の当該ジャッキハンドルの軸部を着脱可能に固定するための嵌め込み部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載した車載ジャッキの格納構造。
【請求項10】
上記ジャッキは、パンタグラフ型のリンク構造からなり、トルク入力部を操作してねじ棒を回転することでジャッキの伸長量を変更可能なジャッキであって、
トルク入力部に、ジャッキハンドルの後部を挿入可能な矩形の穴を設けたことを特徴する請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載した車載ジャッキの格納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−160083(P2006−160083A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354429(P2004−354429)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】