説明

車載用の電子制御ユニット

【課題】CANプロトコルのメッセージに変調信号を重畳して送信できる情報量を増やす。
【解決手段】CAN通信線11を介して他の電子制御ユニットと接続される車載用電子制御ユニット10であって、CAN通信線11にCANメッセージm1を送信するCAN制御部21と、CANメッセージm1のデータフィールド44の送信時にタイミング信号tsを送信するタイミング発生部22とを有するCAN通信部20と、CAN通信線11に送信するデータを記憶した記憶部31と、タイミング発生部22からタイミング信号tsを受信したときに記憶部31からデータを読み出すタイミング制御部32と、該データを変調信号s1に変調する変調部33とを有する変調信号通信部30とを備え、タイミング信号tsをタイミング制御部32が受信した場合に、CANメッセージm1に変調信号s1を重畳する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用の電子制御ユニットに関し、詳しくは、CANメッセージに変調信号を重畳して送信できる情報量を増やすものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるエンジン、トランスミッション、ブレーキ、エアコン、ライトなどの電装機器は電子制御ユニット(ECU)によって制御されており、該ECUは多重通信線を介して他のECUとの間でメッセージを送受信している。
近年、自動車の高機能化および高性能化に伴い、自動車に搭載される電装機器および該電装機器を制御するECUの数が増加し、ECUが多重通信線を介して送受信するメッセージの数も急増している。このため、送信できる情報量を増やすことが望まれている。
これに対して、多重通信線の数を増やすことで送信できる情報量を増やすことが考えられる。しかし、自動車内の配線が複雑化、大規模化するため、配置スペースの問題や車両重量が増加する問題が生じる。
【0003】
そこで、特開2004−336482号公報(特許文献1)では、無変調のデジタル信号であるベースバンド信号をECUが多重通信線に送信する際に、デジタル信号を変調した変調信号をベースバンド信号に重畳して送信する通信システムが提案されている。変調信号はベースバンド信号と周波数帯域が異なるように変調しており、該変調信号を重畳したベースバンド信号を受信したECUは帯域フィルタを用いてベースバンド信号と変調信号を切り分けて、各信号を取り出している。
該システムによれば、同一の多重通信線にベースバンド信号と変調信号の両方を同時に送信するので、新たに多重通信線を設けることなく送信できる情報量を増やすことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−336482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、変調信号を多重通信線に出力するためのいわゆる物理層についてのみ記載が行われているだけであり、例えば変調信号を送信するタイミングの管理やアドレス管理、エラーや再送制御など、いわゆるデータリンク層以上の通信制御の方式については何ら記載されていない。
特に、変調信号の送信タイミングがベースバンド信号の送信タイミングに基づいて設定されていない場合には、ECUがベースバンド信号を多重通信線に送信する際に他のECUが送信したベースバンド信号と衝突(コリジョン)を起こしてECUがベースバンド信号の送信を停止したときであっても、該ECUは変調信号を多重通信線に送信し続けることがある。この場合、該ECUが送信した変調信号は他のECUが送信したベースバンド信号に重畳されるが、他のECUが送信したベースバンド信号に変調信号が既に重畳されていると、2つの変調信号がベースバンド信号に重畳されてしまい、該ベースバンド信号を受信したECUは2つの変調信号の切り分けができなくなる。
【0006】
このため、変調信号を送信するためのデータリンク層以上の通信制御機能を各ECUに設けて、ベースバンド信号の衝突発生時には変調信号の送信を停止する等の通信制御を行う必要がある。
しかし、ECUに変調信号を送信するための通信制御機能を設けるためには新たに処理部や記憶部が必要となる問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、変調信号を送信するための通信制御機能を新たに設けることなく、CANメッセージに変調信号を重畳して送信できる情報量を増やすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、CAN通信線を介して他の電子制御ユニットと接続される車載用の電子制御ユニットであって、
CAN通信部と変調信号通信部を備え、
前記CAN通信部は、前記CAN通信線にCANメッセージを送信するCAN制御部と、
前記CAN制御部と接続され前記CANメッセージのデータフィールドの送信時を検知してタイミング信号を送信するタイミング発生部とを有し、
前記変調信号通信部は、データを記憶した記憶部と、前記記憶部と接続されると共に前記タイミング発生部と接続され前記タイミング発生部からタイミング信号を受信したときに前記記憶部からデータを読み出すタイミング制御部と、前記タイミング制御部と接続され該データを前記CANメッセージに格納されたデータ信号とは周波数及び/または振幅の異なる変調信号に変調する変調部とを有し、
前記CAN通信部が送信するCANメッセージのデータ信号に変調信号通信部が送信する変調信号を重畳して前記CAN通信線に送信することを特徴とする車載用の電子制御ユニットを提供している。
【0009】
本発明の電子制御ユニットは、CAN通信部がCANメッセージのデータフィールドをCAN通信線に送信しているときにタイミング信号を変調信号通信部に送信し、変調信号通信部はタイミング信号を受信すると変調信号をCAN通信線に送信することで、CANメッセージのデータフィールドのデータ信号に変調信号を重畳している。即ち、変調信号通信部はCAN通信部のCANの通信制御機能を利用してCAN通信部からタイミング信号を受信し、該タイミング信号に基づいて変調信号の送信タイミングを判断している。
【0010】
このため、電子制御ユニットはCANメッセージのデータフィールドに格納されたデータに加え、変調信号に含まれるデータを同一のCAN通信線に同時に送信することができ、CANメッセージが送信できる情報量を増やすことができる。
また、変調信号通信部は変調信号の送信タイミングの判断にCANの通信制御機能を利用しているので、変調信号通信部に変調信号の送信タイミングを判断するための通信制御機能を新たに設ける必要がない。
【0011】
変調信号は、CANメッセージのデータ信号とは周波数及び/または振幅の異なる信号であり、デジタル信号である。
【0012】
変調信号の重畳はアービトレーションフィールドでは行わず、データフィールドで行っている。変調信号の重畳をアービトレーションフィールドで行わない理由は以下のとおりである。
電子制御ユニットがCANメッセージをCAN通信線に送信するときに、他のECUのCANメッセージと衝突(コリジョン)を起こした場合、電子制御ユニット及び他のECUの間で各CANメッセージのアービトレーションフィールドのデータ信号を用いて調停が行われる。調停で電子制御ユニットがCANメッセージの送信停止を判断すると、自CANメッセージの送信をアービトレーションフィールドの送信途中で停止することになる。
【0013】
変調信号をアービトレーションフィールドのデータ信号に重畳させて送信した場合は、調停で送信停止を判断すると、CANメッセージと同時に変調信号の送信も停止しなければならない。また衝突が起こった場合は他のECUと自電子制御ユニットが同時にCANメッセージを送信している状態であり、他のECUも変調信号をCANメッセージのアービトレーションフィールドのデータ信号に重畳させている場合には、自電子制御ユニットと他のECUの変調信号が同時に重畳されてしまう。
【0014】
一方、変調信号をデータフィールドで重畳する場合には、他のECUのCANメッセージと衝突が起こっても、アービトレーションフィールドのデータ信号による調停により自電子制御ユニットがCANメッセージの送信を続行すると判断した後に、変調信号通信部にCAN通信部からタイミング信号が送信されるため、調停により変調信号の送信を停止することがなく、また、該変調信号が他のECUの変調信号と同時にCANメッセージのデータ信号に重畳されることがなくなる。さらに、調停はCAN通信部で行うため、変調信号通信部に調停を行うための通信制御機能を設ける必要がない。
なお、変調信号はCANメッセージのDLCフィールド、CRCフィールドで重畳してもよい。
【0015】
前記CAN通信部は、前記他の電子制御ユニットから受信した前記CANメッセージに前記変調信号が重畳された重畳メッセージからCANメッセージを取り出すフィルタを備えると共に、
前記変調信号通信部は、前記受信した重畳メッセージから変調信号を取り出すフィルタと、該フィルタで取り出した変調信号を復調する復調部を備えたことが好ましい。
【0016】
本発明のECUが他のECUから送信された重畳メッセージを受信した場合には、CAN通信部のフィルタ及び変調信号通信部のフィルタにより重畳メッセージをCANメッセージと変調信号に分離することができる。また、変調信号は復調部により、データに復調することができる。
【発明の効果】
【0017】
前述したように、本発明の車載用の電子制御ユニットによれば、CAN通信部がCANメッセージのデータフィールドをCAN通信線に送信しているときにタイミング信号を変調信号通信部に送信し、変調信号通信部はタイミング信号を受信すると変調信号をCAN通信線に送信することで、CANメッセージのデータフィールドのデータ信号に変調信号を重畳しているので、電子制御ユニットはCANメッセージのデータフィールドに格納されたデータに加え、変調信号に含まれるデータを同時に送信することができ、CANメッセージが送信できる情報量を増やすことができる。
また、変調信号通信部は、CAN通信部のCANメッセージの通信制御機能を利用しているため、変調信号の送信タイミングを制御するための通信制御機能を変調信号通信部に新たに設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5は本発明の第1実施形態を示す。
本発明の電子制御ユニット(ECU)10は、CAN通信線11を介して他のECU10B、10Cと接続され、他のECU10とCANメッセージm1の送受信を行っている。
本発明のECU10は、変調データd1を変調した変調信号s1をCANメッセージm1に重畳したメッセージ(以下重畳メッセージm2と称す)をCAN通信線11に送信するものである。
【0019】
ECU10は、CANメッセージm1の送受信を行うCAN通信部20と、変調信号s1の送受信を行う変調信号通信部30と、処理部40と、加算部41を備えている。
処理部40はCAN通信部20及び変調信号通信部30と接続しており、CAN通信部20にCANメッセージm1のID(識別子)及びデータを送信すると共に、変調信号通信部30に変調データd1を送信している。また、CAN通信部20及び変調信号通信部30を介して他のECU10が送信したCANメッセージm1及び変調データd1を受信し、自ECU10に接続されたセンサ(図示せず)等の制御のための所定の処理を行っている。
【0020】
CAN通信部20は加算部41と接続しており、CANメッセージm1を加算部41に送信している。また、CANメッセージm1のデータフィールド44のデータ信号の送信時にタイミング信号tsを変調信号通信部30に送信している。さらに、CAN通信線11から受信した重畳メッセージm2からCANメッセージm1を取り出して処理部40に送信している。
【0021】
変調信号通信部30も加算部41と接続しており、CAN通信部20から該タイミング信号tsを受信している間は変調信号s1を加算部41に送信している。また、変調信号s1が重畳された重畳メッセージm2から変調信号s1を取り出して変調データd1に変調し、処理部40に送信している。
加算部41はCAN通信線11と接続しており、CAN通信部20から受信したCANメッセージm1のデータ信号に変調信号通信部30から受信した変調信号s1を重畳し、重畳メッセージm2をCAN通信線11に送信している。
【0022】
詳細には、CAN通信部20はCAN制御部21と、タイミング発生部22と、CAN送信部23と、ローパスフィルタ部24と、CAN受信部25を備えている。
CAN制御部21は処理部40と接続しており、処理部40からの指令を受けてCAN送信部23及びCAN送信部23がCANメッセージm1を送受信している。
図5(A)はCAN通信部20が送受信するCANメッセージm1のフォーマットを示す。上位ビットより、メッセージフレームの開始を示す1ビットのSOF41と、メッセージ識別子(ID)を備えたアービトレーションフィールド42とを備えている。また、メッセージ長等の制御に関する情報を示すコントロールフィールド(DLCフィールド43)と、送受信されるメッセージ内容を示すデータフィールド44と、エラーチェックのためのCRCフィールド45を備えている。
【0023】
タイミング発生部22はCAN制御部21と接続しており、CAN制御部21からCANメッセージm1を受信しCAN送信部23に送信している。このとき、タイミング発生部22がCANメッセージm1のデータフィールド44のデータ信号を受信したときに、タイミング信号tsを変調信号通信部30のタイミング制御部32に送信している。また、データフィールド44のデータ信号の受信が終了した時にタイミング制御部32へのタイミング信号tsの送信を停止している。
CAN送信部23はCANメッセージm1を加算部41に送信している。
【0024】
ローパスフィルタ部24はCAN通信線11と接続しており、該変調信号s1が重畳された重畳メッセージm2をCAN通信線11から受信した場合に、重畳メッセージm2から変調信号s1を除いてCANメッセージm1を取り出している。
CAN受信部25はローパスフィルタ部24からCANメッセージm1を受信し、CAN制御部21に送信している。
【0025】
変調信号通信部30は、記憶部31と、タイミング制御部32と、変調部33と、変調信号送信部34と、ハイパスフィルタ部35(HPF)と、変調信号受信部36と、復調部37を備えている。
記憶部31はCAN通信線11を介して他のECU10に送信する変調データd1を記憶しており、処理部40と接続している。変調データd1は、処理部40からCAN制御部21へCANメッセージm1が渡されると同時に、処理部40から記憶部31へ書き込まれる。
【0026】
タイミング制御部32は記憶部31と接続しており、CAN通信部20のタイミング発生部22からタイミング信号tsを受信した場合に、変調データd1を記憶部31から読み出して変調部33に送信する。
【0027】
変調部33はタイミング制御部32と接続しており、タイミング制御部32から受信した変調データd1を変調して変調信号s1としている。本実施形態では変調データd1に周波数変調を行っており、変調信号s1をCANメッセージm1の送信周波数よりも十分に大きい周波数となるように変調している。
変調信号送信部34は変調部33と接続しており、変調部33から変調信号s1を受信して加算部41に出力している。
【0028】
ハイパスフィルタ部35はCAN通信線11と接続しており、該変調信号s1が重畳された重畳メッセージm2をCAN通信線11から受信した場合に、重畳メッセージm2から変調信号s1を分離して取り出している。
変調信号受信部36はハイパスフィルタ部35と接続しており、ハイパスフィルタ部35から受信した変調信号s1を復調部37に送信している。
復調部37は記憶部31と接続しており、変調信号s1を復調して変調データd1に戻し、記憶部31に記憶させている。
【0029】
本発明のECU10が、CANメッセージm1に変調信号s1を重畳して重畳メッセージm2とする場合の動作について図2乃至図4を用いて説明する。
まず、処理部40の動作を図2のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1では、ECU10の処理部40はCANメッセージm1の送信の指令をCAN通信部20に出している。処理部40は、CAN通信部20のCAN制御部21にCANメッセージm1のIDと送信するデータを送信する。
ステップS2では、処理部40は変調データd1を変調信号通信部30の記憶部31へ送信する。
【0030】
次に、CAN通信部20の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
ステップS11では、CAN制御部21は処理部40からCANメッセージm1のIDとデータを受信している。
ステップS12では、CAN制御部21は受信したIDとデータからCANメッセージm1を作成する。
ステップS13では、CAN制御部21はタイミング発生部22にCANメッセージm1を送信している。
【0031】
ステップS14では、タイミング発生部22がCAN制御部21からCANメッセージm1を受信し、CANメッセージm1のうち、データフィールド44を受信したか否かを判断している。データフィールド44を受信している場合にはステップS15に進む。受信していない場合はステップS14を繰り返す。
図5(A)はCAN制御部21が送信するCANメッセージm1のフォーマットを示しており、CAN制御部21はCANメッセージm1を上位ビットから順次送信し、タイミング発生部22はデータフィールド44のデータ信号の受信を判断している。
【0032】
ステップS15では、タイミング発生部22はタイミング信号tsをタイミング制御部32に送信している。図5(B)はタイミング発生部22が送信するタイミング信号tsを示す。タイミング発生部22はデータフィールド44を受信しているときに、タイミング信号tsを送信している。
ステップS16はタイミング発生部22がデータフィールド44の受信が終了したか否かを判断している。データフィールド44の受信が終了した場合にはステップS17に進む。終了していない場合はステップS5に戻る。
【0033】
ステップS17では、タイミング信号tsの送信を停止している。
ステップS18では、CANメッセージm1をCAN送信部23を介して加算部41に送信している。なお、ステップS18はステップS14〜S17の動作と並行に行っており、タイミング発生部22はCANメッセージm1を受信すると加算部41に送信している。図5(C)は加算部41に送信されるCANメッセージm1のデータフィールド44部分を示している。タイミング発生部22はCAN制御部21からCANメッセージm1を受信して、CAN送信部23に送信している。
【0034】
次に、変調信号送信部34の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップS21では、タイミング制御部32は、CAN通信部20のタイミング発生部22からタイミング信号tsを受信したか否かを判断している。受信した場合はステップS22に進む。受信していない場合はステップS21を繰り返す。
ステップS22では、タイミング制御部32は変調データd1を記憶部31から読み出し、変調部33に送信する。
ステップS23では、変調部33はタイミング制御部32から受信した変調データd1を周波数変調して変調信号s1とする。図5(D)は変調信号通信部30の変調部33の出力である変調信号s1を示している。
ステップS24では、変調信号s1を変調信号送信部34を介して加算部41に送信している。
【0035】
次に加算器41の動作について説明する。
加算部41はCAN通信部20からCANメッセージm1を受信すると共に、変調信号通信部30から変調信号s1を受信する。
加算部41はCANメッセージm1に変調信号s1を加算して重畳メッセージm2としている。図5(E)は加算部41の出力であり、図5(C)のCANメッセージm1に図5(D)の変調信号s1を重畳した重畳メッセージm2である。加算部41は該重畳メッセージm2をCAN通信線11に送信している。
【0036】
次に、本発明のECU10がCAN通信線11を介して他のECU10からCANメッセージm1に変調信号s1を重畳した重畳メッセージm2を受信する場合の動作について説明する。
まず、CAN通信部20の動作について説明する。
ローパスフィルタ部24は重畳メッセージm2を受信し、重畳メッセージm2のデータフィールド44から変調信号s1を分離してCANメッセージm1とする。CAN受信部25はローパスフィルタ部24からCANメッセージm1を受信し、CAN制御部21を介して処理部40にCANメッセージm1を送信する。処理部40はCANメッセージm1を用いて所定の処理を行う。
【0037】
次に、変調信号通信部30の動作について説明する。
ハイパスフィルタ部35は重畳メッセージm2を受信し、重畳メッセージm2のデータフィールド44から変調信号s1を分離して変調信号s1とする。変調信号受信部36は変調信号s1を受信して復調部37に送信する。
復調部37では、受信した変調信号s1を復調し変調データd1とし、変調データd1を記憶部31に送信して記憶する。処理部40は記憶部31から変調データd1を読み出す。
【0038】
処理部40は、記憶部31から読み出した受信した変調データd1と、CAN通信部20を介して受信したCANメッセージm1を用いて所定の処理を行う。
処理部40は、CANメッセージm1のデータフィールド44に格納されたデータと、変調データd1の2つのデータを受信することができ、変調信号通信部30、CAN通信部20のどちらから受信したかを判別することでデータを区別している。
【0039】
前記構成とすることで、電子制御ユニットはCANメッセージm1のデータフィールド44に格納されたデータに加え、変調信号s1に含まれるデータを同時に送信することができ、メッセージが送信できる情報量を増やすことができる。
【0040】
また、変調信号通信部30は、CANメッセージm1の通信制御方式を利用してCAN通信部20のCANメッセージm1のデータフィールド44の送信時に送信されたタイミング信号tsを受信し、該タイミング信号tsに基づいて変調信号s1の送信タイミングを判断している。さらに、CANメッセージm1のアービトレーションフィールド42には変調信号s1を重畳しないことで、他のECU10のCANメッセージm1との衝突が起こった場合に、変調信号通信部30は調停に関与せず、CAN通信部20が調停を行う。
このように、変調信号s1の送受信にはCAN通信部20のCANの通信制御機能を利用しているので、変調信号通信部30に変調信号s1の送受信を制御するための高度な通信方式を新たに設ける必要がなく、変調信号通信部30はCAN通信部20からのタイミング信号tsの受信と、変調データd1から変調信号s1への変調又は復調を行うだけでよい。
【0041】
なお、本実施形態では変調信号通信部30の変調部33において、変調データd1の周波数変調を行っているが、周波数変調に限定されるものではなく、例えば振幅変調や位相変調、振幅偏移変調、位相偏移変調、周波数偏移変調、直交偏移変調、直交周波数分割多重変調などを用いてもよい。
また、ECU10から加算部41を削除して、CAN通信部20のCAN送信部23と変調信号通信部30の変調信号送信部34をCAN通信線11に直接接続して、CANメッセージm1と変調信号s1を重畳してもよい。
さらに、本発明のECU10はゲートウェイ(中継接続ユニット)であり、複数のCAN通信線11と接続して異なるCAN通信線11と接続したECU10間のCANメッセージm1の中継送信を行っていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明である車載用の電子制御ユニットの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】電子制御ユニットの処理部の動作を示すフローチャートである。
【図3】電子制御ユニットのCAN通信部の動作を示すフローチャートである。
【図4】電子制御ユニットの変調信号通信部の動作を示すフローチャートである。
【図5】(A)はCANメッセージのフォーマット、(B)はタイミング信号の波形、(C)はCANメッセージの波形、(D)は変調信号の波形、(E)は重畳メッセージの波形である。
【符号の説明】
【0043】
10 電子制御ユニット(ECU)
11 CAN通信線
20 CAN通信部
21 CAN制御部
22 タイミング発生部
24 ローパスフィルタ部
30 変調信号通信部
31 記憶部
32 タイミング制御部
33 変調部
35 ハイパスフィルタ部
37 復調部
40 処理部
41 加算部
42 アービトレーションフィールド
44 データフィールド
d1 変調データ
m1 CANメッセージ
m2 重畳メッセージ
s1変調信号
ts タイミング信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAN通信線を介して他の電子制御ユニットと接続される車載用の電子制御ユニットであって、
CAN通信部と変調信号通信部を備え、
前記CAN通信部は、前記CAN通信線にCANメッセージを送信するCAN制御部と、
前記CAN制御部と接続され前記CANメッセージのデータフィールドの送信時を検知してタイミング信号を送信するタイミング発生部とを有し、
前記変調信号通信部は、データを記憶した記憶部と、前記記憶部と接続されると共に前記タイミング発生部と接続され前記タイミング発生部からタイミング信号を受信したときに前記記憶部からデータを読み出すタイミング制御部と、前記タイミング制御部と接続され該データを前記CANメッセージに格納されたデータ信号とは周波数及び/または振幅の異なる変調信号に変調する変調部とを有し、
前記CAN通信部が送信するCANメッセージのデータ信号に変調信号通信部が送信する変調信号を重畳して前記CAN通信線に送信することを特徴とする車載用の電子制御ユニット。
【請求項2】
前記CAN通信部は、前記他の電子制御ユニットから受信した前記CANメッセージに前記変調信号が重畳された重畳メッセージからCANメッセージを取り出すフィルタを備えると共に、
前記変調信号通信部は、前記受信した重畳メッセージから変調信号を取り出すフィルタと、該フィルタで取り出した変調信号を復調する復調部を備えた請求項1に記載の車載用の電子制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−290538(P2008−290538A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136960(P2007−136960)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】