説明

車載用ディスプレイ装置

【課題】薄型化に好適であると共に、ディスプレイ本体を移動させる動力伝達機構の構成を簡素化できる「車載用ディスプレイ装置」を提供すること。
【解決手段】モータ4を駆動源として第1および第2の回転領域内を回転するメインレバー12と、前後方向へ移動可能な可動フレーム6と、可動フレーム6に回動可能に軸支されたサブレバー15と備え、可動フレーム6の前端部にディスプレイ本体2を回動可能に支持する。メインレバーが第1の回転領域内を回転するとき、係合ピン15dが第1ガイド溝13a内を移動することでサブレバーが直進運動し、それに伴って可動フレームとディスプレイ本体が前後進する。メインレバーが第2の回転領域内を回転するとき、係合ピン15dが第2ガイド溝13b内を移動することでサブレバーが回転運動し、この回転が固定側ギア部20に伝達されてディスプレイ本体2上下方向に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されてナビゲーションシステムの地図情報やテレビ番組等を表示可能な車載用ディスプレイ装置に係り、特に、ディスプレイ本体を格納可能かつ起立姿勢に立ち上げ可能な車載用ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車載用ディスプレイ装置は、非使用時にディスプレイ本体をダッシュボード等に横臥姿勢で格納しておくことができ、使用時にはディスプレイ本体を前方へ突出させたうえで起立姿勢に立ち上げることができるため、搭乗者が見やすい場所にディスプレイ本体を配置させることができる。
【0003】
このようにディスプレイ本体が格納位置と起立位置との間で移動可能な車載用ディスプレイ装置においては、近年、モータの駆動力によってディスプレイ本体を移動させるように構成したものが一般的である。例えば、ディスプレイ本体が所定の格納位置にあるときに、モータの回転駆動力をギアやレバー等からなる動力伝達機構を介してディスプレイ本体に伝達することにより、このディスプレイ本体を手前側へ移動させて起立姿勢に立ち上がらせることができる。また、立ち上がっているディスプレイ本体を格納するときには、モータの逆向きの回転駆動力を前記動力伝達機構を介してディスプレイ本体に伝達することにより、このディスプレイ本体を傾倒させて格納位置まで奥側へ移動させることができる。
【0004】
モータの駆動力を利用した従来の車載用ディスプレイ装置においては、通常、多数のギアをレバーやラックと組み合わせて動力伝達機構が構成されており、ディスプレイ本体の左右両側には筋交い状の回動アーム(支持アーム)が取り付けられている。そのため、この種の車載用ディスプレイ装置は、動力伝達機構の構成が複雑で部品点数も多く、小型薄型化や低コスト化を図り難いという問題があった。また、ディスプレイ本体を起立させると左右両側に筋交い状の回動アームが露出して外観が損なわれるため、高品位な外観デザインに設計することも困難であった。
【0005】
これに対して、特許文献1に記載されている従来の車載用ディスプレイ装置では、モータの駆動力で回転駆動される第1レバーの先端に第2レバーを回動可能に連結し、この第2レバーの先端にディスプレイ本体の背面下端部から延出するガイド部を回動可能に連結することにより、第1レバーを前方へ回転させるのに伴ってディスプレイ本体が斜め上方へせり上がるようになっている。それゆえ、かかる従来の車載用ディスプレイ装置は、ディスプレイ本体を移動させる動力伝達機構に多数のギアを用いる必要がなく、比較的構成が簡素化されていると共に、ディスプレイ本体を起立させてもその支持構造がほとんど露出しないため、意匠性も高めやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−538774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の車載用ディスプレイ装置においては、ディスプレイ本体を斜め下方へ引き込んで格納させるため、鉛直面内で回転する第1および第2レバーやガイド部の回転スペースを確保する必要があり、それによって装置全体の薄型化が妨げられるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、薄型化に好適であると共に、ディスプレイ本体を移動させる動力伝達機構の構成を簡素化できる車載用ディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ディスプレイ本体が格納位置と突出位置との間を移動可能であると共に、このディスプレイ本体が前記突出位置から起立位置へ立ち上げ可能となっている車載用ディスプレイ装置において、ベース板に搭載されたモータと、このモータを駆動源として前記ベース板に沿う第1および第2の回転領域内を回転するメインレバーと、このメインレバーの回転に伴って前記ベース板の前後方向へ移動可能な可動フレームと、この可動フレームに軸支されて前記ベース板に沿って回動可能なサブレバーと、前記可動フレームの前端部に回動可能に支持された前記ディスプレイ本体と、前記メインレバーの回転角度に応じて前記サブレバーの回転動作が制御可能な制御カム手段とを備え、前記メインレバーが前記第1の回転領域内を回転するとき、前記制御カム手段が前記サブレバーの回転を規制すると共に、このサブレバーを介して前記メインレバーが前記可動フレームを前後方向へ駆動することによって、前記ディスプレイ本体が前記格納位置と前記突出位置との間を移動するようになし、かつ、前記メインレバーが前記第2の回転領域内を回転するとき、前記制御カム手段が前記サブレバーの回転を許容すると共に、このサブレバーを前記メインレバーが駆動して回転させることによって、前記ディスプレイ本体が前記突出位置と前記起立位置との間で前記可動フレームに対して回転するようになした。
【0010】
このように構成された車載用ディスプレイ装置では、ベース板の板面に沿って回転するメインレバーがサブレバーと可動フレームを押し込んで前進させることにより、ディスプレイ本体を格納位置から手前へ突出させることができ、メインレバーがさらに回転してサブレバーをベース板に沿って回転させることによってディスプレイ本体を立ち上がらせることができ、これらメインレバーとサブレバーは極めて低背なスペースで動作可能である。また、メインレバーの回転角度に応じてサブレバーの回転動作が制御可能な制御カム手段を備えており、サブレバーの直進運動と回転運動の切換えがカム形状によって容易に設定できる。それゆえ、この車載用ディスプレイ装置は、ディスプレイ本体を移動させるための動力伝達機構の構成を簡素化しやすく、装置全体の薄型化も促進しやすい。また、可動フレームに軸支されたサブレバーが、この可動フレームの前端部に回動可能に支持されたディスプレイ本体を回転駆動して立ち上がらせることができるため、ディスプレイ本体の左右両側を筋交い状の回動アーム等で支持する必要がなくなり、外観上の品位が高めやすくなっている。
【0011】
上記の構成において、制御カム手段が、ベース板に設けられたカム溝と、サブレバーに設けられて該カム溝内を移動可能な係合ピンとで構成されており、該カム溝が、ベース板の前後方向へ直線状に延びる第1ガイド溝と、この第1ガイド溝の前端部からサブレバーの回転方向に沿って円弧状に延びる第2ガイド溝とを有していると、単純なカム形状でサブレバーの直進運動と回転運動の切換えが確実に行えるため好ましい。すなわち、係合ピンが第1ガイド溝内に位置するときは、メインレバーの回転角度が増大するのに伴い、サブレバーは回転が規制されたまま第1ガイド溝に沿って前進するので、可動フレームとディスプレイ本体はサブレバーに駆動されて前進する。しかるに、係合ピンが第1ガイド溝の前端部に到達した状態でメインレバーの回転角度が増大すると、係合ピンが第1ガイド溝から第2ガイド溝内へと進むため、サブレバーは前進せずに回転するようになり、メインレバーの回転角度が増大するのに伴ってサブレバーの回転角度も増大していく。したがって、可動フレームはそれ以上前進せずに停止し、ディスプレイ本体は次第に立ち上がっていく。
【0012】
また、上記の構成において、サブレバーには、その回転方向に沿って円弧状に延びる外周縁に可動側ギア部が設けられており、この可動側ギア部に噛合する中継歯車を介してサブレバーの回転がディスプレイ本体に動力伝達されるようにしてあると、中継歯車によって回転方向を変更した動力伝達が容易に行えるため、サブレバーの回転に伴ってディスプレイ本体を立ち上がらせるという簡素で信頼性の高い機構が実現できる。
【0013】
この場合において、ディスプレイ本体には中継歯車と噛合する固定側ギア部が設けられており、この固定側ギア部の回転中心がディスプレイ本体の回転中心に合致させてあると、固定側ギア部と一体的に同心で回転するディスプレイ本体の回転動作を安定させやすくなるため好ましい。さらに、中継歯車が、可動側ギア部と固定側ギア部との間に介設された複数のギアで構成されていれば、中継歯車に特殊なギアを用いる必要がなくなるため、コストアップを回避できる。また、固定側ギア部をディスプレイ本体の幅方向略中央に配置させると共に、可動フレームの前端部に設けられてディスプレイ本体を回動可能に支持するヒンジ部を、固定側ギア部とディスプレイ本体の幅方向両端との間にそれぞれ配置させれば、ディスプレイ本体の回転動作を一層安定させやすくなる。
【0014】
また、上記の構成において、可動フレームが、ベース板に対して略平行に延在する回路基板を保持していると、この回路基板にディスプレイ本体用の駆動制御回路を設けることができるため、配線経路を短縮できて回路構成の簡素化および省スペース化が容易となる。この場合において、ディスプレイ本体が格納位置にあるときに、可動フレームおよび回路基板とベース板とに挟まれた空間内で、サブレバーがメインレバー上に重なり合って配置されていると、装置全体が小型化されてもサブレバーの配置スペースを容易に確保できるため好ましい。
【0015】
また、上記の構成において、ベース板を底板部となすシャーシと、このシャーシの左右両側部に保持されて前後方向に延びる一対のガイドシャフトとを備え、これら一対のガイドシャフトが可動フレームの左右両側部を摺動自在に支持していると、メインレバーが第1の回転領域内を回転するときに、可動フレームを傾くことなく円滑に前後方向へスライド移動させることができるため、この可動フレームに取り付けられたディスプレイ本体の前後進動作を安定させやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車載用ディスプレイ装置は、低背なスペースで動作可能なメインレバーとサブレバーによってディスプレイ本体を格納位置から突出位置、起立位置へと移動させることができると共に、サブレバーの直進運動と回転運動の切換えが制御カム手段のカム形状によって容易に設定できるため、動力伝達機構の構成が簡素化しやすく、かつ装置全体の薄型化が促進しやすいという顕著な効果を奏する。また、可動フレームに軸支されたサブレバーがディスプレイ本体を回転駆動して立ち上がらせることができるため、ディスプレイ本体の左右両側を筋交い状の回動アーム等で支持する必要がなくなり、外観上の品位を高めやすいという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置でディスプレイ本体が格納されている状態を斜め上方から見た斜視図である。
【図2】図1の状態のディスプレイ装置を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】図2中のシャーシを省略して内部構造を示す斜視図である。
【図4】該ディスプレイ装置のシャーシを覆う位置に取り付けられるカバー部材を示す斜視図である。
【図5】該ディスプレイ装置のディスプレイ本体を前方へ突出させた状態を斜め下方から見た斜視図である。
【図6】該ディスプレイ装置のディスプレイ本体を立ち上げている途中の状態を斜め下方から見た斜視図である。
【図7】図6の状態のディスプレイ装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図8】図6の状態のディスプレイ装置の下面図である。
【図9】該ディスプレイ装置のディスプレイ本体を起立させた状態を斜め下方から見た斜視図である。
【図10】図9の状態のディスプレイ装置の側面図である。
【図11】図9の状態のディスプレイ装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図12】図9の状態のディスプレイ装置の上面図である。
【図13】図9の状態のディスプレイ装置の背面図である。
【図14】図9の状態のディスプレイ装置の下面図である。
【図15】図14中のシャーシを省略して内部構造を示す下面図である。
【図16】図9の状態において図4のカバー部材に対するディスプレイ本体の起立位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例を図1〜図16を参照しながら説明する。本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置1は、LCD等からなる表示装置を有するディスプレイ本体2がシャーシ3内に横臥姿勢で格納できると共に、このディスプレイ本体2をシャーシ3の前方へ突出させたうえで起立姿勢に立ち上げられるようになっている。ディスプレイ本体2を格納位置と起立位置との間で移動させる駆動源はモータ4であり、このモータ4の駆動力が後述する動力伝達機構を介してディスプレイ本体2に伝達される。そして、シャーシ3を図4に示すカバー部材5で覆うことによって筐体が構成されており、この筐体の内部にモータ4や動力伝達機構、可動フレーム6、回路基板7、ガイドシャフト8等が配設されている。
【0019】
モータ4はシャーシ3の底板部であるベース板9上に搭載されており、このモータ4の駆動力がギア10,11を介してメインレバー12に伝達される。これらギア10,11およびメインレバー12はベース板9上に回動可能に軸支されており、ギア10,11およびメインレバー12の回転平面はいずれもベース板の板面9に対して平行である。
【0020】
ベース板9にはスリット状のカム溝13が形成されている。このカム溝13は、ベース板9の前後方向(X1−X2方向)へ直線状に延びる第1ガイド溝13aと、第1ガイド溝13aの前端部から円弧状に延びる第2ガイド溝13bとからなり、第2ガイド溝13bは後述するサブレバー15の回転方向に沿って延びている。また、ベース板9の左右両側にはシャーシ3の側壁部である一対の起立壁14が立設されている。これら起立壁14には前後方向へ延びるガイドシャフト8がそれぞれ保持されており、各ガイドシャフト8は可動フレーム6の左右両側部を摺動自在に支持している。なお、一方の起立壁14の近傍位置におけるベース板9には丸孔9aが形成されており、この丸孔9aに図示せぬ支軸がかしめ固定されている。
【0021】
メインレバー12には、基端側に形成された軸孔12aと、軸孔12aから大きく離れた先端側に形成された長孔12bと、ギア11に噛合するギア部12cとが設けられており、軸孔12aはベース板9に固定された前記支軸に回転可能に挿入されている。このメインレバー12は、軸孔12a(前記支軸)を中心として回転角度が増大していくと、まず第1の回転領域内を回転し、次いで第2の回転領域内を回転する。そして、メインレバー12が第1の回転領域内で回転しているときには、後述するサブレバー15の係合ピン15dが第1ガイド溝13a内でX1−X2方向へ前後進し、メインレバー12が第2の回転領域内で回転しているときには、該係合ピン15dが第2ガイド溝13a内で回転するようになっている。
【0022】
可動フレーム6はサブレバー15を回転可能に軸支しており、このサブレバー15はベース板9の板面に沿って回動できるようになっている。また、可動フレーム6の前端部にはディスプレイ本体2を回動可能に支持する一対のヒンジ部16が突設されており、各ヒンジ部16にはディスプレイ本体2を立ち上がらせる向きに常時付勢する図示せぬトーションばねが組み込まれている。このトーションばねによってヒンジ部16とディスプレイ本体2との間のガタを吸収できるため、ラットルノイズと呼ばれる異音が発生し難くなっている。
【0023】
サブレバー15には、メインレバー12の長孔12b内に摺動自在に挿入された被駆動ピン15aと、円弧状の外周縁に可動側ギア部15bが形成された扇形状部15cと、扇形状部15cから垂下してカム溝13内に摺動自在に挿入された係合ピン15dと、扇形状部15cの基端部上に形成された回動軸15e(図13参照)とが設けられており、回動軸15eは可動フレーム6の図示せぬ軸受部に挿入されている。このサブレバー15は、メインレバー12の回転によって被駆動ピン15aが押圧駆動され、それに伴って係合ピン15dがカム溝13に沿って移動するようになっている。ただし、係合ピン15dが第1ガイド溝13a内を移動するときには、サブレバー15の回転が規制されているため、メインレバー12の回転に伴ってサブレバー15は直進運動し、このサブレバー15の直進運動によって可動フレーム6とディスプレイ本体2がX1−X2方向へ前後進する。また、係合ピン15dが第2ガイド溝13b内を移動するときには、サブレバー15の回転が許容されるため、メインレバー12の回転に伴ってサブレバー15が回動軸15eを中心に回転運動し、このサブレバー15の回転運動によってディスプレイ本体2が可動フレーム6に対して上下方向へ回転する。なお、扇形状部15cの円弧状の外周縁はサブレバー15の回転方向に沿って延びており、この外周縁に可動側ギア部15bが形成されている。
【0024】
また、可動フレーム6はベース板9の板面に対して略平行に延在する回路基板7を保持しており、この回路基板7に配設された各種の電子部品19や図示せぬ配線パターンによって、ディスプレイ本体2用の駆動制御回路が構成されている。図1に示すように、ディスプレイ本体2がシャーシ3内に格納されているときには、可動フレーム6(および回路基板7)とベース板9とに挟まれた空間内でサブレバー15がメインレバー12上に重なり合って配置されている。
【0025】
ディスプレイ本体2は、起立状態における下端部が格納状態で奥側の端部となり、この端部の幅方向中央部に固定側ギア部20が設けられている。固定側ギア部20とサブレバー15との間には後述する中継歯車17,18,21が介在されており、固定側ギア部20の回転中心を通る直線上でディスプレイ本体2の両端部近傍が可動フレーム6のヒンジ部16に回転可能に連結されている。これにより、サブレバー15の回転駆動力が中継歯車17,18,21を介して固定側ギア部20に伝達され、それに伴ってディスプレイ本体2が可動フレーム6の前端部を回動支点として上下方向へ回転するようになっている。
【0026】
図3に示すように、中継歯車17は軸線方向の両端側に平歯部17aとウォーム部17bとを有しており、平歯部17aはサブレバー15の可動側ギア部15bに噛合し、ウォーム部17bは中継歯車18に噛合している。中継歯車18はもう一つの中継歯車21に噛合しており、この中継歯車21がディスプレイ本体2の固定側ギア部20に噛合している。これら中継歯車18,21はいずれも平歯であり、中継歯車17の回転軸と両中継歯車18,21の回転軸とは直交している。
【0027】
このように構成された車載用ディスプレイ装置1は、モータ4の駆動力がギア10,11を介してメインレバー12に伝達されると、このメインレバー12が回転してサブレバー15の被駆動ピン15aを駆動し、それに伴って係合ピン15dがカム溝13に沿って移動するようになっている。これら係合ピン15dとカム溝13は、メインレバー12の回転角度に応じてサブレバー15の回転動作を制御する制御カム手段を構成しており、前述したように、係合ピン15dがカム溝13の第1ガイド溝13a内を移動するときにサブレバー15の回転を規制し、係合ピン15dがカム溝13の第2ガイド溝13b内を移動するときにサブレバー15の回転を許容する。そのため、係合ピン15dが第1ガイド溝13a内を移動するときには、サブレバー15が直進運動することによって可動フレーム6とディスプレイ本体2は前後進するが、係合ピン15dが第2ガイド溝13b内を移動するときには、サブレバー15が回転運動することによってディスプレイ本体2が可動フレーム6に対して上下方向に回転する。その際、サブレバー15の回転駆動力は中継歯車17,18,21を介してディスプレイ本体2の固定側ギア部20に伝達される。つまり、この車載用ディスプレイ装置1の動力伝達機構は、ギア10,11とメインレバー12とサブレバー15と中継歯車17,18,21と固定側ギア部20とによって構成されている。
【0028】
次に、車載用ディスプレイ装置1の動作を各図を参照しながら詳しく説明する。図1〜図3はディスプレイ本体2がシャーシ3内に格納されている状態を示しており、図5はディスプレイ本体2をシャーシ3の前方へ突出させた状態を示している。また、図6〜図8はディスプレイ本体2を立ち上げている途中の状態を示しており、図9〜図15はディスプレイ本体2を起立させた状態を示している。
【0029】
ディスプレイ本体2は横臥姿勢でシャーシ3内に格納されており、この状態でディスプレイ本体2の表示画面2aはベース板9の前端部から中央部に至る領域と対向し、可動フレーム6と回路基板7はベース板9の後端寄りの領域と対向している。モータ4とギア10,11はベース板9の後端部上に配置されているが、メインレバー12の回転領域(第1の回転領域と第2の回転領域)はベース板9の前端部から後端部に至る広い領域と対向している。サブレバー15の移動領域はベース板9のカム溝13付近であり、ディスプレイ本体2がシャーシ3内に格納されているとき、サブレバー15は扇形状部15cの一部を除いてメインレバー12上に重なり合っている(図1と図3参照)。また、ディスプレイ本体2が格納されているとき、図3に示すように、係合ピン15dが第1ガイド溝13a内の最奥部に位置していると共に、メインレバー12の長孔12bがシャーシ3内の奥部に後退している。
【0030】
モータ4は正逆両方向へ回転可能であり、ディスプレイ本体2がシャーシ3内に格納されているときにモータ4を一方向(例えば正転方向)に回転すると、モータ4の出力軸に固着されたウォームギア4aに噛合するギア10が回転を開始するため、ギア10に噛合するギア11がギア部12cを回転駆動し、メインレバー12が長孔12bを中心に回転し始める。これにより、メインレバー12の先端側に形成された長孔12bの内壁が被駆動ピン15aを介してサブレバー15を押し込むが、サブレバー15の係合ピン15dは第1ガイド溝13aの規制により直進運動のみ可能であり、かつ、被駆動ピン15aは長孔12b内でスライド移動が許容されているため、メインレバー12の回転に伴ってサブレバー15は回転することなくX1方向へ前進していく。さらに、前進するサブレバー15が回動軸15eを介して可動フレーム6を前方へ押し込み、この可動フレーム6の前端部にヒンジ部16を介して連結されたディスプレイ本体2も前進していく。
【0031】
したがって、かかるメインレバー12の回転に伴ってサブレバー15と可動フレーム6およびディスプレイ本体2の三者が一体的に前進し、ディスプレイ本体2がカバー部材5の開口部5a(図4参照)から手前側へ徐々に突出してくる。その際、可動フレーム6は左右両側部がガイドシャフト8に対して摺動するため、サブレバー15に押圧駆動される可動フレーム6は傾くことなく円滑に前進し、よってディスプレイ本体2も傾くことなく円滑に前進する。
【0032】
このようなディスプレイ本体2の突出動作は係合ピン15dがカム溝13の折曲部(第1ガイド溝13aの前端部)13cに到達するまで行われ、係合ピン15dが折曲部13cに到達した時点で図5に示す状態となる。この状態のとき、ディスプレイ本体2は横臥姿勢のまま最も突出した位置に配置されており、可動フレーム6はシャーシ3内の最前部に配置されている。なお、このように係合ピン15dが第1ガイド溝13aの後端部から折曲部13cまで移動する間にメインレバー12の回転する領域、すなわち、格納位置(図1参照)にあるディスプレイ本体2を図5に示す突出位置まで移動させる間にメインレバー12の回転する領域が前述した第1の回転領域に相当する。
【0033】
図5に示す状態でメインレバー12がさらに回転すると、それ以上前進できない係合ピン15dが折曲部13cを経由して第2ガイド溝13b内へ進むため、サブレバー15は前進する代わりに回転するようになり、メインレバー12の回転角度が増大するのに伴ってサブレバー15の回転角度も増大していく。その際、サブレバー15の回動軸15eは可動フレーム6に対して回転するだけなので、この可動フレーム6はシャーシ3内の最前部に配置されたまま停止している。なお、係合ピン15dがカム溝13の折曲部13cに到達する際に、被駆動ピン15aは長孔12b内を軸孔12aへ向かってスライド移動するため、折曲部13cに到達した係合ピン15dには第2ガイド溝13bへ向かう力が作用する。それゆえ、係合ピン15dを第1ガイド溝13aから第2ガイド溝13bへ導き入れる動作は円滑に行える。
【0034】
このように係合ピン15dが第2ガイド溝13bへ導かれた状態でメインレバー12が回転を続行すると、被駆動ピン15aを介して押圧駆動されるサブレバー15が回転するため、係合ピン15dが第2ガイド溝13b内を始端部(折曲部13c)から終端部へ向かって移動する。また、かかるサブレバー15の回転に伴って可動側ギア部15bが中継歯車17を回転駆動するため、中継歯車17の回転が中継歯車18,21を介して固定側ギア部20に伝達される。これにより固定側ギア部20が回転し始め、それに伴って横臥姿勢のディスプレイ本体2が徐々に立ち上がっていき、例えば、係合ピン15dが第2ガイド溝13bの中間付近まで移動した時点で、ディスプレイ本体2は図6〜図8に示すような傾斜姿勢となる。
【0035】
そして、メインレバー12のさらなる回転によって係合ピン15dが第2ガイド溝13bの終端部まで移動すると、ディスプレイ本体2は図9〜図15に示すような起立姿勢となる。図16はかかる起立姿勢のディスプレイ本体2とカバー部材5との位置関係を示しており、この起立姿勢でディスプレイ本体2の表示画面2aが搭乗者側から見やすくなる。こうしてディスプレイ本体2が所望の起立姿勢に立ち上がった時点でモータ4を停止すると、メインレバー12とサブレバー15の回転は停止する。また、図15に示すように、この状態でメインレバー12はギア部12cの一端部がギア11と噛合し、サブレバー15は可動側ギア部15bの一端部が中継歯車17と噛合している。なお、このように係合ピン15dが第2ガイド溝13bの始端部から後端部まで移動する間にメインレバー12の回転する領域、すなわち、突出位置(図5参照)にあるディスプレイ本体2を起立位置に立ち上がらせるまでの間にメインレバー12が回転する領域が前述した第2の回転領域に相当する。
【0036】
また、起立姿勢にあるディスプレイ本体2をシャーシ3内に格納させる際には、モータ4を他方向(逆転方向)に回転して図15に示すメインレバー12を反時計回りに回転させれば良いが、この動作は上記の動作を逆転させただけで基本的な動作メカニズムは同等であるため、その説明は省略する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置1においては、ベース板9の板面に沿って回転するメインレバー12がサブレバー15と可動フレーム6を押し込んで前進させることにより、ディスプレイ本体2を格納位置から手前へ突出させることができ、メインレバー12のさらなる回転でサブレバー15をベース板9に沿って回転させることによりディスプレイ本体2を立ち上がらせることができる。すなわち、極めて低背なスペースで動作可能なメインレバー12とサブレバー15によって、ディスプレイ本体2を格納位置から突出位置を経て起立位置へと移動させることができる。また、メインレバー12の回転角度に応じてサブレバー15の回転動作が制御可能な制御カム手段を備えており、カム溝13のカム形状に沿う係合ピン15dの移動によってサブレバー15の直進運動と回転運動の切換えが行えるようになっている。そのため、この車載用ディスプレイ装置1は、ディスプレイ本体2を移動させるための動力伝達機構の構成が簡素化されており、装置全体の薄型化も促進しやすくなっている。
【0038】
しかも、この車載用ディスプレイ装置1では、可動フレーム6に軸支されたサブレバー15が、可動フレーム6の前端部に回動可能に支持されたディスプレイ本体2を回転駆動することによって、ディスプレイ本体2を所望の起立姿勢に立ち上がらせることができる。つまり、この車載用ディスプレイ装置1は、ディスプレイ本体2の左右両側を筋交い状の回動アーム等で支持する必要がなくなり、外観上の品位が高めやすくなっている。
【0039】
また、本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置1においては、サブレバー15の係合ピン15dを案内するカム溝13が、ベース板9の前後方向へ直線状に延びる第1ガイド溝13aと、この第1ガイド溝13aの前端部からサブレバー15の回転方向に沿って円弧状に延びる第2ガイド溝13bとからなるため、単純なカム形状でサブレバー15の直進運動と回転運動の切換えを確実に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置1においては、サブレバー15の円弧状の外周縁に可動側ギア部15bが設けられており、この可動側ギア部15bに噛合する中継歯車17や他の中継歯車18,21を介してサブレバー15の回転がディスプレイ本体2に動力伝達されるようにしてある。しかも、ディスプレイ本体2には中継歯車21に噛合する固定側ギア部20が設けられており、この固定側ギア部20の回転中心がディスプレイ本体2の回転中心に合致させてある。そのため、中継歯車17,18,21によって回転方向を変更した動力伝達が容易に行えると共に、固定側ギア部20と一体的に同心で回転するディスプレイ本体2の回転動作が安定させやすく、サブレバー15の回転に伴ってディスプレイ本体2を立ち上がらせるという簡素で信頼性の高い機構が実現されている。
【0041】
また、本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置1においては、ベース板9の板面に対して略平行に延在する回路基板7を可動フレーム6が保持しており、この回路基板7にディスプレイ本体2の駆動制御回路が設けられているため、配線経路を短縮できて回路構成の簡素化や省スペース化が容易である。しかも、ディスプレイ本体2が格納位置にあるときに、可動フレーム6および回路基板7とベース板9とに挟まれた空間内で、サブレバー15がメインレバー12上に重なり合って配置されているため、装置全体が小型化されてもサブレバー15の配置スペースを容易に確保することができる。
【0042】
また、本実施形態例に係る車載用ディスプレイ装置1においては、ベース板9を底板部となすシャーシ3の左右両側部(起立壁14)に、前後方向に延びる一対のガイドシャフト8が保持されており、これら一対のガイドシャフト8が可動フレーム6の左右両側部を摺動自在に支持しているため、メインレバー12が第1の回転領域内を回転するときに可動フレーム6を傾くことなく円滑に前後方向へスライド移動させることができる。それゆえ、可動フレーム6に取り付けられたディスプレイ本体2の前後進動作が安定して位置ずれを起こし難くなっている。
【符号の説明】
【0043】
1 車載用ディスプレイ装置
2 ディスプレイ本体
3 シャーシ
4 モータ
6 可動フレーム
7 回路基板
8 ガイドシャフト
9 ベース板
10,11 ギア
12 メインレバー
12a 軸孔
12b 長孔
12c ギア部
13 カム溝
13a 第1ガイド溝
13b 第2ガイド溝
13c 折曲部
14 側壁部
15 サブレバー
15a 被駆動ピン
15b 可動側ギア部
15d 係合ピン
15e 回動軸
16 ヒンジ部
17,18 中継歯車
19 電子部品
20 固定側ギア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ本体が格納位置と突出位置との間を移動可能であると共に、このディスプレイ本体が前記突出位置から起立位置へ立ち上げ可能となっている車載用ディスプレイ装置において、
ベース板に搭載されたモータと、このモータを駆動源として前記ベース板に沿う第1および第2の回転領域内を回転するメインレバーと、このメインレバーの回転に伴って前記ベース板の前後方向へ移動可能な可動フレームと、この可動フレームに軸支されて前記ベース板に沿って回動可能なサブレバーと、前記可動フレームの前端部に回動可能に支持された前記ディスプレイ本体と、前記メインレバーの回転角度に応じて前記サブレバーの回転動作が制御可能な制御カム手段とを備え、
前記メインレバーが前記第1の回転領域内を回転するとき、前記制御カム手段が前記サブレバーの回転を規制すると共に、このサブレバーを介して前記メインレバーが前記可動フレームを前後方向へ駆動することによって、前記ディスプレイ本体が前記格納位置と前記突出位置との間を移動するようになし、
かつ、前記メインレバーが前記第2の回転領域内を回転するとき、前記制御カム手段が前記サブレバーの回転を許容すると共に、このサブレバーを前記メインレバーが駆動して回転させることによって、前記ディスプレイ本体が前記突出位置と前記起立位置との間で前記可動フレームに対して回転するようになしたことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記制御カム手段が、前記ベース板に設けられたカム溝と、前記サブレバーに設けられて前記カム溝内を移動可能な係合ピンとで構成されており、前記カム溝が、前記ベース板の前後方向へ直線状に延びる第1ガイド溝と、この第1ガイド溝の前端部から前記サブレバーの回転方向に沿って円弧状に延びる第2ガイド溝とを有していることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記サブレバーには、その回転方向に沿って円弧状に延びる外周縁に可動側ギア部が設けられており、この可動側ギア部に噛合する中継歯車を介して前記サブレバーの回転が前記ディスプレイ本体に動力伝達されるようにしたことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記ディスプレイ本体には前記中継歯車と噛合する固定側ギア部が設けられており、この固定側ギア部の回転中心が前記ディスプレイ本体の回転中心に合致させてあることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記中継歯車が、前記可動側ギア部と前記固定側ギア部との間に介設された複数のギアで構成されていることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項4または5の記載において、前記固定側ギア部を前記ディスプレイ本体の幅方向略中央に配置させると共に、前記可動フレームの前端部に設けられて前記ディスプレイ本体を回動可能に支持するヒンジ部を、前記固定側ギア部と前記ディスプレイ本体の幅方向両端との間にそれぞれ配置させたことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項1の記載において、前記可動フレームが、前記ベース板に対して略平行に延在する回路基板を保持していることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項7の記載において、前記ディスプレイ本体が前記格納位置にあるときに、前記可動フレームおよび前記回路基板と前記ベース板とに挟まれた空間内で、前記サブレバーが前記メインレバー上に重なり合って配置されていることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項1の記載において、前記ベース板を底板部となすシャーシと、このシャーシの左右両側部に保持されて前後方向に延びる一対のガイド軸とを備え、これら一対のガイド軸が前記可動フレームの左右両側部を摺動自在に支持していることを特徴とする車載用ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−224123(P2012−224123A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91349(P2011−91349)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】